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バッハの不滅のフーガ、アンジェラ・ヒューイット、感動の永遠の静寂 The Bach Odyssey 12@紀尾井ホール 2022.5.25

15日連続コンサートの6日目です。

5年前に始まった全12回の大企画、アンジェラ・ヒューイットが世界の大都市でバッハのすべての鍵盤音楽(オルガンを除く)を演奏するプロジェクトも東京では遂に今日で完結しました。
やはり、最後はバッハが晩年にかけて、フーガを集大成した大曲、フーガの技法でしめくくります。フリードリッヒ大王から与えられた主題をもとにフーガを極めた名曲、『音楽の捧げもの』では、フーガの展開がまだ、不十分として、自らのフーガの基本主題とした最後の大作、フーガの技法をバッハは作曲します。しかし、最後の第18曲は未完のまま残されました。本来ならば、4重フーガとなる筈が3重フーガに発展した時点で終わっています。何故、未完に終わったのかはバッハの音楽の最大の謎です。

アンジェラ・ヒューイットは休憩なしにこの大曲をほぼ1時間半で真摯に演奏しました。楽譜に忠実に実に明晰な表現の演奏が繰り広げられました。途中、水を飲みながらの力演です。この演奏を一言で表現すると、バッハの音楽に奉仕した演奏と言えます。遊びは一切なく、不要な即興演奏的な要素もなく、楽譜に書かれた音楽を美しく表現することだけが脳裏にあるような演奏です。終曲の3つの主題による4声のフーガ(コントラプンクトゥス XIV)はその前の5度の転回対位法による12度のカノンから、ほぼ、間を置かずに演奏されます。基本主題を連想させるような最初の主題が実にゆったりと演奏されます。まるでもう急ぐ必要はなく、むしろ、終わることへの哀惜の気持ちがあるかのごとくです。美しいフーガが演奏されて、次いで第2の主題が不意に現れます。この主題のフーガも丁寧に展開され、3つ目の主題はバッハの名前をもとにした音形 (B-A-C-H)です。この主題によるフーガが展開されて、さらにそれまでの主題と組み合わせて3重フーガになったところで突然の終わり。フーガはここで永遠の終焉を迎え、ただ、静寂のみが漂います。少しして、コラール前奏曲『われ汝の御座の前に進み出て (Vor deinen Thron tret Ich hiermit)』 が粛々と奏されます。これはフーガの技法の初版譜に未完で終わったフーガを補うような意味で併録されたものです。バッハはこの作品を死の床で口述筆記させたと言われており、まるでアンコールのような意味合いの曲になっています。コラール前奏曲が終わったところでホールは完全な静寂に包まれます。The Bach Odysseyとして、バッハを回想する旅を続けてきたアンジェラ・ヒューイット、そして、その偉業を聴いてきた聴衆が感動を共有する長い沈黙でした。

これまでのバッハを巡る旅の軌跡を振り返ると、

奇跡のような名演だったフランス組曲、
涙なしに聴けない魂の演奏、パルティータ、なかでも第6番は卓越した精神性の音楽、
圧巻のロ短調フーガ:平均律クラヴィーア曲集第1巻、
人生で一度きりのコンサートなら、迷うことなく、これを選ぶ究極のゴルトベルク変奏曲、
そして、たった1回聴き洩らしたコンサートは平均律クラヴィーア曲集第2巻(マーラー:交響曲第9番・・・ラトル&ロンドン交響楽団に浮気しました)

やはり、白眉はゴルトベルク変奏曲でした。ですが、鍵盤音楽の全曲演奏The Bach Odysseyを通して、バッハの素晴らしさを味わわせてくれたアンジェラ・ヒューイットに最後に感謝しましょう。saraiの音楽人生でも稀有の体験でした。


今日のプログラムは以下です。

ピアノ:アンジェラ・ヒューイット
 
J.S.バッハ・プログラム Odyssey 12

 フーガの技法 BWV1080
 コラール前奏曲『われ汝の御座の前に進み出て (Vor deinen Thron tret Ich hiermit)』BWV 668a

《アンコール》なし


最後に予習したCDですが、もちろん、アンジェラ・ヒューイットのCDです。

  アンジェラ・ヒューイット 2013年8月7-9日 ベルリン、イエス・キリスト教会 ピアノ:ファツィオーリ セッション録音
   (コラール『われ汝の御座の前に進みいで』 BWV.668a含む)

見事な演奏です。何も言葉はありません。アンジェラ・ヒューイットのバッハの到達点を示す1枚。



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       アンジェラ・ヒューイット,  

帰ってきたアンジェラ・ヒューイット、感動の最終章へ 愉悦のフランス風序曲 The Bach Odyssey 11@紀尾井ホール 2022.5.23

15日連続コンサートの4日目です。

今日は待ちに待ったアンジェラ・ヒューイットの“バッハ オデッセイ”の11回目。前回はコロナ禍の始まる前の2019年10月、イギリス組曲全曲を聴きました。その後、悪夢のような日々が続き、アンジェラ・ヒューイットはおろか、海外の音楽家の来日はほぼすべて、ままならなくなりました。そして、2年半以上も経った今日、遂にアンジェラ・ヒューイットが日本のステージに帰ってきました。もう、それだけで十分です。しかし、彼女は愉悦に満ちたバッハで感動の音楽を聴かせてくれて、全12回にわたるバッハの鍵盤音楽の全曲演奏の最終章を完璧な形でしめくくるべく、1日目の演奏を終えました。

前半はあまり、ポピュラーでない曲ばかり。鍵盤音楽全曲演奏ならでは曲目です。ある意味、なかなか普段は聴けない曲で貴重な機会ではありました。前半で一番、印象に残ったのは、最後に演奏された幻想曲とフーガ イ短調 BWV944の素晴らしいフーガの演奏です。とても勢いのある演奏でした。実はこのフーガ部分はオルガン曲に転用されて、前奏曲とフーガ イ短調 BWV 543に改訂されています。ちょうど、昨日、バッハ・コレギウム・ジャパンの鈴木雅明の素晴らしいオルガン独奏で聴いたばかりでした。ピアノとオルガン、それぞれの特性があり、とても同じ曲には思えませんけどね。切れ味鋭いピアノ版、豪快なオルガン版、どちらも素晴らしいフーガです。

後半、傑作のフランス風序曲。アンジェラ・ヒューイットの自在な演奏に魅了されます。冒頭の序曲は実に荘重な演奏。メロディアスさを抑えて、堂々とした演奏に仕立てています。フーガの部分に入ると、実に流暢さを強調した演奏でその切り替えが効果的です。再び、荘重な部分に回帰して、序曲は終了。続いて、舞曲集が始まります。パルティータです。クーラントの精密な演奏、ガヴォットの明快な演奏、パスピエの活き活きした演奏に続き、深い味わいのサラバンドにはうっとりとしてしまいます。その後は一気にブレー、ジーグ、エコーとたたみかけるような演奏には楽興と愉悦を感じます。アンジェラも時折、笑みを浮かべて、その愉悦を聴衆と共有する余裕の演奏です。いやはや、素晴らしい演奏でした。
最後は超有名なイタリア協奏曲。もう、愉悦以外の何ものでもありません。第2楽章では哀愁を味わわせてくれましたが、第3楽章は圧巻の勢いで終了。音楽って、最高の楽しみですね。

アンコールの2曲目はこれまた、有名な《主よ、人の望みの喜びを》です。マイラ・ヘス編曲版でしょうか。ちょっと違うような気もします。いずれにせよ、魂のこもった感動的な演奏でした。胸にジーンときますね。彼女も何か心に思うことがあるようです。

長く続いたアンジェラ・ヒューイットのThe Bach Odysseyもようやく明後日の最終回を残すのみになりました。最後はやはり、フーガの技法です。


今日のプログラムは以下です。

ピアノ:アンジェラ・ヒューイット
 
J.S.バッハ・プログラム Odyssey 11

 4つのデュエット BWV802-805
 18の小前奏曲 BWV924-928,930,933-943,999
 幻想曲とフーガ イ短調 BWV944


 《休憩》


 フランス風序曲(パルティータ)ロ短調 BWV831
 イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV971

《アンコール》

 ゴットフリート・ハインリヒ・シュテルツェル(アンジェラ・ヒューイット編曲):私があなたとともにいるのなら(歌劇「ディオメデス」より)
 J.S.バッハ:主よ、人の望みの喜びを


最後に予習したCDですが、もちろん、アンジェラ・ヒューイットのCDを軸に聴きました。

 バッハ:4つのデュエット、フランス風序曲、イタリア協奏曲
  アンジェラ・ヒューイット 2000年10月4-7日 ヘンリー・ウッド・ホール、ロンドン ピアノ:スタインウェイ セッション録音

 バッハ:18の小前奏曲
  アンジェラ・ヒューイット 1995年6&8月 ピアノ:スタインウェイ セッション録音

 バッハ:幻想曲とフーガ イ短調 BWV944
  アンジェラ・ヒューイット 2004年 ピアノ:スタインウェイ セッション録音


いずれもアンジェラ・ヒューイットらしい、一点の曇りもない明晰な演奏です。



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       アンジェラ・ヒューイット,  

圧倒的なフィナーレ バッハ:イギリス組曲第4番~第6番ほか The Bach Odyssey Ⅹ アンジェラ・ヒューイット@紀尾井ホール 2019.10.4

アンジェラ・ヒューイットの“バッハ オデッセイ”の10回目。前回(10月1日)と今回(10月4日)でイギリス組曲全曲演奏という嬉しい機会が続いています。

今日の演奏は、アンジェラ・ヒューイットが最後の第6番で実に素晴らしい演奏を聴かせてくれました。今回のイギリス組曲で最高の演奏でした。前奏曲の冒頭では分散和音の美しい響きで魅惑的な演奏。続くフーガも勢いに満ちた深い響き。この前奏曲だけで十分に感銘を受けました。
次のアルマンドがとびっきりの素晴らしさ。その真珠のような煌めきにただただ魅了されるだけです。何でしょう、この美しさ! 次のクーラントはテンポよい切れのある演奏。
そして、サラバンド。アンジェラ・ヒューイットの思いのたけを込めた、渾身の演奏。スローで思いっ切りルバートをかけた演奏が永遠の時を刻んでいくようです。何という演奏でしょう。いつしか気が付くと、ドゥーブルのインテンポの美しい演奏に変わっています。何と素晴らしいのでしょう。うっとりと聴き惚れるだけです。
次はガヴォット。耳慣れたメロディーが心地よく響きます。少しずつ旋律線を変えながら、綺麗な演奏が続いていきます。
そして、最後のジーグ。対位法を織り交ぜながら、圧倒的な演奏が高潮していきます。何という見事な演奏でしょう。高度なテクニックに基づいて、スケールの大きな音楽を展開していきます。ファツィオリのピアノも美しい響きをホールに充満させていきます。音楽が最高潮に達し、フィナーレ。
最高の演奏に強い感銘を受けました。

長く続いたアンジェラ・ヒューイットのThe Bach Odysseyも来年5月の2回を残すのみになりました。フランス風序曲、フーガの技法が楽しみです。


今日のプログラムは以下です。

ピアノ:アンジェラ・ヒューイット
 
J.S.バッハ・プログラム Odyssey Ⅹ

 イギリス組曲第4番ヘ長調BWV809
 イギリス組曲第5番ホ短調BWV810


 《休憩》


 ソナタ ニ長調BWV963
 イギリス組曲第6番ニ短調BWV811

《アンコール》

 クープラン:クラヴサン曲集 第3巻 第14組曲 1. 恋するナイチンゲール


最後に予習したCDですが、もちろん、アンジェラ・ヒューイットのCDを軸に聴きました。

 バッハ:イギリス組曲等
  アンジェラ・ヒューイット 2003年頃 ヘンリー・ウッド・ホール、ロンドン ピアノ:スタインウェイ

バッハのイギリス組曲は少し前のスタインウェイでの演奏です。第2番と第3番と第6番は見事な演奏。曲によっては物足りない演奏もあります。実演ではきっと、最高の演奏を聴かせてくれるでしょう。ファツィオリでどんな響きになるかも楽しみです。



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       アンジェラ・ヒューイット,  

ゆるぎない安定感と流麗なバッハ:イギリス組曲第1番~第3番ほか The Bach Odyssey Ⅸ アンジェラ・ヒューイット@紀尾井ホール 2019.10.1

アンジェラ・ヒューイットの“バッハ オデッセイ”の9回目。今回と次回(10月4日)でイギリス組曲全曲演奏という嬉しい機会です。前回のトッカータ全曲演奏を聴いて、今日はほぼ半年ぶりのアンジェラ・ヒューイットのバッハ演奏です。イギリス組曲全曲を聴くのは初めてです。楽しみにしていました。

で、今回の演奏ですが、アンジェラ・ヒューイットが今、旬の時を迎えていることを確信させる見事な演奏。イギリス組曲はその名前が示すように、フランス組曲、パルティータと並ぶ、アルマンド、クーラント、サラバンド、ブーレ、ジーグなどの舞曲を連ねた組曲の形をとったもので、saraiがバッハの音楽の形式の中でも特に好む形式です。割に若いときの作品ですが、若さゆえの勢いや様式感を探るような多様性があり、不発の曲や楽しく、面白い曲、哀感の漂う曲などが混在している印象です。

冒頭の第1番は曲としてはバッハらしからぬ、まとまりを欠く感じですが、アンジェラ・ヒューイットの演奏はゆるぎない確信に満ちた堂々たるもので、その流麗な流れには、音響的に聴き映えがします。まあ、退屈と言えば、退屈ですが、ここはヒューイットの妙技と素晴らしい響きに体を委ねます。

第2番は一転して、格調の高い名演奏に強い感銘を覚えます。前奏曲のテンポの早い演奏に驚かされますが、そのテンポで一気に弾き切るテクニックは素晴らしいです。それに新鮮でダイナミックでもあります。アルマンド以降はテンポも落ち着き、深く心に浸透するような音楽が流れます。ピアノがファツィオリのせいか、以前のヒューイットの演奏とは一線を画し、オリジナリティと格調の高さが印象的です。よほど譜面を読み直したのではないでしょうか。表層的な演奏とは次元が異なる演奏です。イギリス組曲ではない別の音楽を聴いているような錯覚に陥るほどです。サラバンドの深い抒情性、颯爽としたジーグ、素晴らしい演奏に絶句します。ただし、saraiの受容力を超えた演奏でもあり、CDに再録音してもらって、じっくりと聴き直したい感じです。

後半の最初はまったく聴いたことのない組曲ヘ短調BWV823。楽譜の残存する3曲のみでバッハの真作であるかどうかも議論があるそうです。このうち、最初の2曲、前奏曲とサラバンドは単純な作品ながら、なかなか、面白い作品で、ヒューイットの演奏も素晴らしいです。初めて聴いたとは思えないのが、かえって、真作らしくないのかもしれませんが、ともかく、聴いていて楽しい演奏でした。3曲目のジーグはとてもバッハの作品には思えないものですね。

次はイギリス組曲第3番。これは前奏曲のダイナミックな演奏から惹き付けられます。アルマンドもクーラントも流麗でゆるぎない安定感に満ちた素晴らしい演奏。サラバントはかみしめるような思いに満ちた、ゆったりした圧巻の演奏。続くガヴォットは実に軽やかな魅惑的な演奏で耳に楽しいばかり。最後のジーグはフーガの精神にあふれた壮麗さにあふれた演奏で全曲を締めくくります。素晴らしい演奏に感銘を受けました。

最後は前奏曲とフーガ イ短調BWV894。どこか懐かしさを秘めていながら、テンポの早い勢いのある演奏で、とても聴き映えがします。フーガもそれほど対位法を感じさせない小気味のよい演奏で、フィナーレは華やかに高潮して終わります。

ともかく、イギリス組曲の第2番と第3番が圧巻の素晴らしさでした。3日後の残り3曲も楽しみです。


今日のプログラムは以下です。

ピアノ:アンジェラ・ヒューイット
 
J.S.バッハ・プログラム Odyssey Ⅸ

 イギリス組曲第1番イ長調BWV806
 イギリス組曲第2番イ短調BWV807


 《休憩》


 組曲ヘ短調BWV823
 イギリス組曲第3番ト短調BWV808
 前奏曲とフーガ イ短調BWV894

《アンコール》

 ラモー:新クラブサン組曲またはクラブサン曲集第2集(第4組曲)より第5曲ファンファリネット


最後に予習したCDですが、もちろん、アンジェラ・ヒューイットのCDを軸に聴きました。

 バッハ:イギリス組曲等
  アンジェラ・ヒューイット 2003年頃 ヘンリー・ウッド・ホール、ロンドン ピアノ:スタインウェイ

バッハのイギリス組曲は少し前のスタインウェイでの演奏です。第2番と第3番と第6番は見事な演奏。曲によっては物足りない演奏もあります。実演ではきっと、最高の演奏を聴かせてくれるでしょう。ファツィオリでどんな響きになるかも楽しみです。


来年の2回のコンサート、バッハ・オデュッセイ11と12は次のようなプログラムになります。これで4年間にわたるバッハ・オデュッセイも大団円です。もちろん、saraiもチケットの優先予約を申し込みましたよ。

バッハ・オデュッセイ11 2020年5月25日

 4つのデュエット BWV.802-805
 18の小前奏曲 BWV.924-928,930,933-943,999
 幻想曲とフーガ イ短調 BWV.944
 フランス風序曲ロ短調 BWV.831
 イタリア協奏曲ヘ長調 BWV.971

バッハ・オデュッセイ12 2020年5月27日

 フーガの技法 BWV 1080




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       アンジェラ・ヒューイット,  

熟成のバッハ:トッカータ全曲,半音階的幻想曲とフーガ The Bach Odyssey Ⅷ アンジェラ・ヒューイット@紀尾井ホール 2019.3.13

アンジェラ・ヒューイットの“バッハ オデッセイ”の8回目。トッカータ全曲演奏という稀有な機会です。遂に前回の平均律第2巻を聴き逃がし、今日はほぼ1年ぶりにアンジェラ・ヒューイットのバッハを聴きます。実に楽しみにしていました。何と言っても前回聴いたゴルトベルク変奏曲はsaraiの音楽体験の中でも際立って素晴らしい、人生で一度きりのコンサートと言っても過言のないないものでした。

で、今回の演奏ですが、さすがの演奏。曲がバッハの若いときの作品なので、ゴルトベルク変奏曲とか平均律とかに比べられませんが、深さや精神性よりも、自由でファンタジックな演奏をリラックスして聴けました。まあ、楽しい演奏だったというべきでしょうか。saraiの趣味で言えば、ハ短調のトッカータBWV911の中間部のコラール風のパートや、ト長調のBWV916の第2部のアダージョのような抒情味のある演奏に心惹かれました。もちろん、フーガはどれも素晴らしい演奏で、特にバス主題が浮き立つところなどは見事なものでした。

トッカータ全7曲をまとめて、最高レベルの演奏で聴けて、その上、同様な曲調の半音階的幻想曲とフーガをシメのような形で聴け、満足のコンサートでした。今後、トッカータをこういう形で聴けることはないでしょうから、価値あるものになりました。

次回はいよいよ、イギリス組曲全曲が2回のコンサートに分けて、演奏されます。このアンジェラ・ヒューイットの大企画も終盤です。

バッハ・オデュッセイ9

 イギリス組曲第1番/第2番/第3番
 組曲ヘ短調 BWV.823
 前奏曲とフーガ イ短調 BWV.894

バッハ・オデュッセイ10

 イギリス組曲第4番/第5番/第6番
 ソナタ ニ長調 BWV.963

来年の2回のコンサート、バッハ・オデュッセイ11と12は次のようなプログラムになります。

バッハ・オデュッセイ11

 4つのデュエット BWV.802-805
 小前奏曲 BWV.924-928,930,933-943,999
 幻想曲とフーガ イ短調 BWV.944
 イタリア協奏曲ヘ長調 BWV.971
 フランス風序曲ロ短調 BWV.831

バッハ・オデュッセイ12

 フーガの技法 BWV 1080

何とかすべて聴けそうですね。あっ、バッハ・オデュッセイ7の平均律第2巻は聴き損ないました!(代わりにシフの演奏を聴きました・・・)

今日のプログラムは以下です。

ピアノ:アンジェラ・ヒューイット
 
J.S.バッハ・プログラム Odyssey ⅤIII

トッカータ全曲 BWV910-916

 トッカータ ハ短調 BWV911
 トッカータ ト長調 BWV916
 トッカータ 嬰へ短調 BWV910
 トッカータ ホ短調 BWV914

 《休憩》


 トッカータ ニ短調 BWV913
 トッカータ ト短調 BWV915
 トッカータ ニ長調 BWV912


半音階的幻想曲とフーガ ニ短調BWV903

《アンコール》

世俗カンタータ『楽しき狩こそわが悦び』(通称『狩のカンタータ』)BWV208より、第9曲アリア《羊は安らかに草を食み》(ピアノ編曲版:メアリー・ハウ編)


最後に予習したCDですが、もちろん、アンジェラ・ヒューイットのCDを軸に聴きました。

トッカータBWV911は以下のCDを聴きました。

 ウラディミール・ホロヴィッツ、1949年1月17日, プライヴェート・コレクション音源
 フリードリヒ・グルダ、1955年3月14日、プライヴェート・ライヴ録音、イタリア トリエステ
 マルタ・アルゲリッチ、1979年2月6-9日、ベルリン、Studio Lankwitz
 アンジェラ・ヒューイット、1985年10月、セッション録音、スイス、ラ・ショー=ド=フォン、サル・ド・ムジーク
 アンジェラ・ヒューイット、2002年1月、セッション録音、ロンドン、ヘンリー・ウッド・ホール

大ピアニストが好んで演奏しているようです。ホロヴィッツがバッハを演奏するのは珍しいですが、さすがの演奏です。グルダも音質はともかく、見事なバッハです。グルダにはもっとバッハを録音しておいてほしかったと思わせるような演奏です。そのグルダの弟子のアルゲリッチですが、これは会心の演奏です。1970年代のアルゲリッチは凄かった。その最後を飾るようなバッハ・アルバムの中の1曲です。このアルバムはsaraiの愛聴盤の1枚です。
さて、肝心のアンジェラ・ヒューイットですが、1994年から録音を開始したバッハの鍵盤音楽全集以前に若干27歳でトロント国際バッハ・ピアノ・コンクールで優勝した直後にバッハ・アルバムを録音しています。その中にこのトッカータBWV911が含まれています。まだ、生硬な表現ですが、そのひたむきなバッハへの傾倒には心打たれます。その17年後に録音したトッカータ集はアンジェラ・ヒューイットがいかに成長したかが分かる素晴らしいものです。天才アルゲリッチと真のバッハ弾きのヒューイット、どちらも比べることのできない素晴らしさです。

トッカータBWV916は以下のCDを聴きました。

 スヴャトスラフ・リヒテル、1991年11月、ライヴ録音、ドイツ ノイマルクト
 アンジェラ・ヒューイット、2002年1月、セッション録音、ロンドン、ヘンリー・ウッド・ホール

リヒテルの晩年の演奏。素晴らしいですが、もっと若いときの演奏を聴きたいものです。ヒューイットは文句なし。

トッカータBWV910は以下のCDを聴きました。

 アマンディーヌ・サヴァリー、2013年4月2-4日、セッション録音
 アンジェラ・ヒューイット、2002年1月、セッション録音、ロンドン、ヘンリー・ウッド・ホール

若手のサヴァリーの一発勝負のようなトッカータ集。なかなかの聴き応えです。しかし、ヒューイットの演奏とは比べられませんね。

トッカータBWV914は以下のCDを聴きました。

 クララ・ハスキル、1952年2年14日、ライヴ録音、オランダ ヒルヴェルスム カジノ
 クララ・ハスキル、1952年5年31日、ライヴ録音、ミュンヒェン ザイドルハウス
 クララ・ハスキル、1953年4年11日、ライヴ録音、ルトヴィヒスブルグ 城・オルデンザール
 アンジェラ・ヒューイット、2002年1月、セッション録音、ロンドン、ヘンリー・ウッド・ホール

クララ・ハスキル、孤高のバッハです。誰とも比べられない演奏です。とりわけ、1953年のルトヴィヒスブルグのリサイタルは音質も素晴らしく(最近リリースされたアルバム)、何度でも聴きたくなる最高の演奏です。ヒューイットの演奏もよいのですが、ハスキルとは別次元。違う曲を聴いている感じになります。

トッカータBWV913は以下のCDを聴きました。

 スヴャトスラフ・リヒテル、1991年11月、ライヴ録音、ドイツ ノイマルクト
 アンジェラ・ヒューイット、2002年1月、セッション録音、ロンドン、ヘンリー・ウッド・ホール

BWV916と同様です。

トッカータBWV915は以下のCDを聴きました。

 アマンディーヌ・サヴァリー、2013年4月2-4日
 アンジェラ・ヒューイット、2002年1月、セッション録音、ロンドン、ヘンリー・ウッド・ホール

BWV910と同様です。

トッカータBWV912は以下のCDを聴きました。

 ヴィルヘルム・ケンプ、1975年4月、セッション録音、ドイツ、ハノーファー
 ユリアンナ・アヴデーエワ、2017年3月8-10日、セッション録音、ドイツ、ノイマルクト、ライツターデル
 アンジェラ・ヒューイット、2002年1月、セッション録音、ロンドン、ヘンリー・ウッド・ホール

ケンプは滋味あふれる演奏。さすがです。ユリアンナ・アヴデーエワは満を持してのバッハ・アルバム。このトッカータはちょっと気負い過ぎでしょうか。期待したのですが・・・。むしろ、一緒に収録されているイギリス組曲第2番のほうが素晴らしいです。アンジェラ・ヒューイットは一日の長のある演奏。文句ありません。


半音階的幻想曲とフーガは以下のCDを聴きました。

 ニコライ・ルガンスキー、1990年3月13日、ライヴ録音、モスクワ音楽院、ラフマニノフ・ホール
 アンドラーシュ・シフ、1983年9月、セッション録音、ロンドン
 ヴィルヘルム・ケンプ、1953年3月、セッション録音、ロンドン、ウェスト・ハムステッド、デッカ・スタジオ
 アンジェラ・ヒューイット、1994年1月、セッション録音、ドイツ、ハノーファー、ベートーヴェンザール

ニコライ・ルガンスキー、期待して聴きましたが、これは何と17歳のときのアルバム。今、録音すれば、もっと違ったものになるでしょう。アンドラーシュ・シフも若い時の録音ですが、これは素晴らしいです。ただ、今なら、もっと美しい演奏になりそうです。ケンプは古い録音です。演奏は美しいものです。ヒューイットもバッハ鍵盤音楽全集の最初のアルバムです。これもいいのですが、今なら違った演奏になるでしょう。と思っていたら、DVDで新しい演奏が出ているのですね。そのうちに聴いてみましょう。



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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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ミケランジェロさん、saraiです。

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