FC2ブログ
 
  

圧倒的なフィナーレ バッハ:イギリス組曲第4番~第6番ほか The Bach Odyssey Ⅹ アンジェラ・ヒューイット@紀尾井ホール 2019.10.4

アンジェラ・ヒューイットの“バッハ オデッセイ”の10回目。前回(10月1日)と今回(10月4日)でイギリス組曲全曲演奏という嬉しい機会が続いています。

今日の演奏は、アンジェラ・ヒューイットが最後の第6番で実に素晴らしい演奏を聴かせてくれました。今回のイギリス組曲で最高の演奏でした。前奏曲の冒頭では分散和音の美しい響きで魅惑的な演奏。続くフーガも勢いに満ちた深い響き。この前奏曲だけで十分に感銘を受けました。
次のアルマンドがとびっきりの素晴らしさ。その真珠のような煌めきにただただ魅了されるだけです。何でしょう、この美しさ! 次のクーラントはテンポよい切れのある演奏。
そして、サラバンド。アンジェラ・ヒューイットの思いのたけを込めた、渾身の演奏。スローで思いっ切りルバートをかけた演奏が永遠の時を刻んでいくようです。何という演奏でしょう。いつしか気が付くと、ドゥーブルのインテンポの美しい演奏に変わっています。何と素晴らしいのでしょう。うっとりと聴き惚れるだけです。
次はガヴォット。耳慣れたメロディーが心地よく響きます。少しずつ旋律線を変えながら、綺麗な演奏が続いていきます。
そして、最後のジーグ。対位法を織り交ぜながら、圧倒的な演奏が高潮していきます。何という見事な演奏でしょう。高度なテクニックに基づいて、スケールの大きな音楽を展開していきます。ファツィオリのピアノも美しい響きをホールに充満させていきます。音楽が最高潮に達し、フィナーレ。
最高の演奏に強い感銘を受けました。

長く続いたアンジェラ・ヒューイットのThe Bach Odysseyも来年5月の2回を残すのみになりました。フランス風序曲、フーガの技法が楽しみです。


今日のプログラムは以下です。

ピアノ:アンジェラ・ヒューイット
 
J.S.バッハ・プログラム Odyssey Ⅹ

 イギリス組曲第4番ヘ長調BWV809
 イギリス組曲第5番ホ短調BWV810


 《休憩》


 ソナタ ニ長調BWV963
 イギリス組曲第6番ニ短調BWV811

《アンコール》

 クープラン:クラヴサン曲集 第3巻 第14組曲 1. 恋するナイチンゲール


最後に予習したCDですが、もちろん、アンジェラ・ヒューイットのCDを軸に聴きました。

 バッハ:イギリス組曲等
  アンジェラ・ヒューイット 2003年頃 ヘンリー・ウッド・ホール、ロンドン ピアノ:スタインウェイ

バッハのイギリス組曲は少し前のスタインウェイでの演奏です。第2番と第3番と第6番は見事な演奏。曲によっては物足りない演奏もあります。実演ではきっと、最高の演奏を聴かせてくれるでしょう。ファツィオリでどんな響きになるかも楽しみです。



↓ saraiのブログを応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね

 いいね!







テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

       アンジェラ・ヒューイット,  

ゆるぎない安定感と流麗なバッハ:イギリス組曲第1番~第3番ほか The Bach Odyssey Ⅸ アンジェラ・ヒューイット@紀尾井ホール 2019.10.1

アンジェラ・ヒューイットの“バッハ オデッセイ”の9回目。今回と次回(10月4日)でイギリス組曲全曲演奏という嬉しい機会です。前回のトッカータ全曲演奏を聴いて、今日はほぼ半年ぶりのアンジェラ・ヒューイットのバッハ演奏です。イギリス組曲全曲を聴くのは初めてです。楽しみにしていました。

で、今回の演奏ですが、アンジェラ・ヒューイットが今、旬の時を迎えていることを確信させる見事な演奏。イギリス組曲はその名前が示すように、フランス組曲、パルティータと並ぶ、アルマンド、クーラント、サラバンド、ブーレ、ジーグなどの舞曲を連ねた組曲の形をとったもので、saraiがバッハの音楽の形式の中でも特に好む形式です。割に若いときの作品ですが、若さゆえの勢いや様式感を探るような多様性があり、不発の曲や楽しく、面白い曲、哀感の漂う曲などが混在している印象です。

冒頭の第1番は曲としてはバッハらしからぬ、まとまりを欠く感じですが、アンジェラ・ヒューイットの演奏はゆるぎない確信に満ちた堂々たるもので、その流麗な流れには、音響的に聴き映えがします。まあ、退屈と言えば、退屈ですが、ここはヒューイットの妙技と素晴らしい響きに体を委ねます。

第2番は一転して、格調の高い名演奏に強い感銘を覚えます。前奏曲のテンポの早い演奏に驚かされますが、そのテンポで一気に弾き切るテクニックは素晴らしいです。それに新鮮でダイナミックでもあります。アルマンド以降はテンポも落ち着き、深く心に浸透するような音楽が流れます。ピアノがファツィオリのせいか、以前のヒューイットの演奏とは一線を画し、オリジナリティと格調の高さが印象的です。よほど譜面を読み直したのではないでしょうか。表層的な演奏とは次元が異なる演奏です。イギリス組曲ではない別の音楽を聴いているような錯覚に陥るほどです。サラバンドの深い抒情性、颯爽としたジーグ、素晴らしい演奏に絶句します。ただし、saraiの受容力を超えた演奏でもあり、CDに再録音してもらって、じっくりと聴き直したい感じです。

後半の最初はまったく聴いたことのない組曲ヘ短調BWV823。楽譜の残存する3曲のみでバッハの真作であるかどうかも議論があるそうです。このうち、最初の2曲、前奏曲とサラバンドは単純な作品ながら、なかなか、面白い作品で、ヒューイットの演奏も素晴らしいです。初めて聴いたとは思えないのが、かえって、真作らしくないのかもしれませんが、ともかく、聴いていて楽しい演奏でした。3曲目のジーグはとてもバッハの作品には思えないものですね。

次はイギリス組曲第3番。これは前奏曲のダイナミックな演奏から惹き付けられます。アルマンドもクーラントも流麗でゆるぎない安定感に満ちた素晴らしい演奏。サラバントはかみしめるような思いに満ちた、ゆったりした圧巻の演奏。続くガヴォットは実に軽やかな魅惑的な演奏で耳に楽しいばかり。最後のジーグはフーガの精神にあふれた壮麗さにあふれた演奏で全曲を締めくくります。素晴らしい演奏に感銘を受けました。

最後は前奏曲とフーガ イ短調BWV894。どこか懐かしさを秘めていながら、テンポの早い勢いのある演奏で、とても聴き映えがします。フーガもそれほど対位法を感じさせない小気味のよい演奏で、フィナーレは華やかに高潮して終わります。

ともかく、イギリス組曲の第2番と第3番が圧巻の素晴らしさでした。3日後の残り3曲も楽しみです。


今日のプログラムは以下です。

ピアノ:アンジェラ・ヒューイット
 
J.S.バッハ・プログラム Odyssey Ⅸ

 イギリス組曲第1番イ長調BWV806
 イギリス組曲第2番イ短調BWV807


 《休憩》


 組曲ヘ短調BWV823
 イギリス組曲第3番ト短調BWV808
 前奏曲とフーガ イ短調BWV894

《アンコール》

 ラモー:新クラブサン組曲またはクラブサン曲集第2集(第4組曲)より第5曲ファンファリネット


最後に予習したCDですが、もちろん、アンジェラ・ヒューイットのCDを軸に聴きました。

 バッハ:イギリス組曲等
  アンジェラ・ヒューイット 2003年頃 ヘンリー・ウッド・ホール、ロンドン ピアノ:スタインウェイ

バッハのイギリス組曲は少し前のスタインウェイでの演奏です。第2番と第3番と第6番は見事な演奏。曲によっては物足りない演奏もあります。実演ではきっと、最高の演奏を聴かせてくれるでしょう。ファツィオリでどんな響きになるかも楽しみです。


来年の2回のコンサート、バッハ・オデュッセイ11と12は次のようなプログラムになります。これで4年間にわたるバッハ・オデュッセイも大団円です。もちろん、saraiもチケットの優先予約を申し込みましたよ。

バッハ・オデュッセイ11 2020年5月25日

 4つのデュエット BWV.802-805
 18の小前奏曲 BWV.924-928,930,933-943,999
 幻想曲とフーガ イ短調 BWV.944
 フランス風序曲ロ短調 BWV.831
 イタリア協奏曲ヘ長調 BWV.971

バッハ・オデュッセイ12 2020年5月27日

 フーガの技法 BWV 1080




↓ saraiのブログを応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね

 いいね!







テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

       アンジェラ・ヒューイット,  

熟成のバッハ:トッカータ全曲,半音階的幻想曲とフーガ The Bach Odyssey Ⅷ アンジェラ・ヒューイット@紀尾井ホール 2019.3.13

アンジェラ・ヒューイットの“バッハ オデッセイ”の8回目。トッカータ全曲演奏という稀有な機会です。遂に前回の平均律第2巻を聴き逃がし、今日はほぼ1年ぶりにアンジェラ・ヒューイットのバッハを聴きます。実に楽しみにしていました。何と言っても前回聴いたゴルトベルク変奏曲はsaraiの音楽体験の中でも際立って素晴らしい、人生で一度きりのコンサートと言っても過言のないないものでした。

で、今回の演奏ですが、さすがの演奏。曲がバッハの若いときの作品なので、ゴルトベルク変奏曲とか平均律とかに比べられませんが、深さや精神性よりも、自由でファンタジックな演奏をリラックスして聴けました。まあ、楽しい演奏だったというべきでしょうか。saraiの趣味で言えば、ハ短調のトッカータBWV911の中間部のコラール風のパートや、ト長調のBWV916の第2部のアダージョのような抒情味のある演奏に心惹かれました。もちろん、フーガはどれも素晴らしい演奏で、特にバス主題が浮き立つところなどは見事なものでした。

トッカータ全7曲をまとめて、最高レベルの演奏で聴けて、その上、同様な曲調の半音階的幻想曲とフーガをシメのような形で聴け、満足のコンサートでした。今後、トッカータをこういう形で聴けることはないでしょうから、価値あるものになりました。

次回はいよいよ、イギリス組曲全曲が2回のコンサートに分けて、演奏されます。このアンジェラ・ヒューイットの大企画も終盤です。

バッハ・オデュッセイ9

 イギリス組曲第1番/第2番/第3番
 組曲ヘ短調 BWV.823
 前奏曲とフーガ イ短調 BWV.894

バッハ・オデュッセイ10

 イギリス組曲第4番/第5番/第6番
 ソナタ ニ長調 BWV.963

来年の2回のコンサート、バッハ・オデュッセイ11と12は次のようなプログラムになります。

バッハ・オデュッセイ11

 4つのデュエット BWV.802-805
 小前奏曲 BWV.924-928,930,933-943,999
 幻想曲とフーガ イ短調 BWV.944
 イタリア協奏曲ヘ長調 BWV.971
 フランス風序曲ロ短調 BWV.831

バッハ・オデュッセイ12

 フーガの技法 BWV 1080

何とかすべて聴けそうですね。あっ、バッハ・オデュッセイ7の平均律第2巻は聴き損ないました!(代わりにシフの演奏を聴きました・・・)

今日のプログラムは以下です。

ピアノ:アンジェラ・ヒューイット
 
J.S.バッハ・プログラム Odyssey ⅤIII

トッカータ全曲 BWV910-916

 トッカータ ハ短調 BWV911
 トッカータ ト長調 BWV916
 トッカータ 嬰へ短調 BWV910
 トッカータ ホ短調 BWV914

 《休憩》


 トッカータ ニ短調 BWV913
 トッカータ ト短調 BWV915
 トッカータ ニ長調 BWV912


半音階的幻想曲とフーガ ニ短調BWV903

《アンコール》

世俗カンタータ『楽しき狩こそわが悦び』(通称『狩のカンタータ』)BWV208より、第9曲アリア《羊は安らかに草を食み》(ピアノ編曲版:メアリー・ハウ編)


最後に予習したCDですが、もちろん、アンジェラ・ヒューイットのCDを軸に聴きました。

トッカータBWV911は以下のCDを聴きました。

 ウラディミール・ホロヴィッツ、1949年1月17日, プライヴェート・コレクション音源
 フリードリヒ・グルダ、1955年3月14日、プライヴェート・ライヴ録音、イタリア トリエステ
 マルタ・アルゲリッチ、1979年2月6-9日、ベルリン、Studio Lankwitz
 アンジェラ・ヒューイット、1985年10月、セッション録音、スイス、ラ・ショー=ド=フォン、サル・ド・ムジーク
 アンジェラ・ヒューイット、2002年1月、セッション録音、ロンドン、ヘンリー・ウッド・ホール

大ピアニストが好んで演奏しているようです。ホロヴィッツがバッハを演奏するのは珍しいですが、さすがの演奏です。グルダも音質はともかく、見事なバッハです。グルダにはもっとバッハを録音しておいてほしかったと思わせるような演奏です。そのグルダの弟子のアルゲリッチですが、これは会心の演奏です。1970年代のアルゲリッチは凄かった。その最後を飾るようなバッハ・アルバムの中の1曲です。このアルバムはsaraiの愛聴盤の1枚です。
さて、肝心のアンジェラ・ヒューイットですが、1994年から録音を開始したバッハの鍵盤音楽全集以前に若干27歳でトロント国際バッハ・ピアノ・コンクールで優勝した直後にバッハ・アルバムを録音しています。その中にこのトッカータBWV911が含まれています。まだ、生硬な表現ですが、そのひたむきなバッハへの傾倒には心打たれます。その17年後に録音したトッカータ集はアンジェラ・ヒューイットがいかに成長したかが分かる素晴らしいものです。天才アルゲリッチと真のバッハ弾きのヒューイット、どちらも比べることのできない素晴らしさです。

トッカータBWV916は以下のCDを聴きました。

 スヴャトスラフ・リヒテル、1991年11月、ライヴ録音、ドイツ ノイマルクト
 アンジェラ・ヒューイット、2002年1月、セッション録音、ロンドン、ヘンリー・ウッド・ホール

リヒテルの晩年の演奏。素晴らしいですが、もっと若いときの演奏を聴きたいものです。ヒューイットは文句なし。

トッカータBWV910は以下のCDを聴きました。

 アマンディーヌ・サヴァリー、2013年4月2-4日、セッション録音
 アンジェラ・ヒューイット、2002年1月、セッション録音、ロンドン、ヘンリー・ウッド・ホール

若手のサヴァリーの一発勝負のようなトッカータ集。なかなかの聴き応えです。しかし、ヒューイットの演奏とは比べられませんね。

トッカータBWV914は以下のCDを聴きました。

 クララ・ハスキル、1952年2年14日、ライヴ録音、オランダ ヒルヴェルスム カジノ
 クララ・ハスキル、1952年5年31日、ライヴ録音、ミュンヒェン ザイドルハウス
 クララ・ハスキル、1953年4年11日、ライヴ録音、ルトヴィヒスブルグ 城・オルデンザール
 アンジェラ・ヒューイット、2002年1月、セッション録音、ロンドン、ヘンリー・ウッド・ホール

クララ・ハスキル、孤高のバッハです。誰とも比べられない演奏です。とりわけ、1953年のルトヴィヒスブルグのリサイタルは音質も素晴らしく(最近リリースされたアルバム)、何度でも聴きたくなる最高の演奏です。ヒューイットの演奏もよいのですが、ハスキルとは別次元。違う曲を聴いている感じになります。

トッカータBWV913は以下のCDを聴きました。

 スヴャトスラフ・リヒテル、1991年11月、ライヴ録音、ドイツ ノイマルクト
 アンジェラ・ヒューイット、2002年1月、セッション録音、ロンドン、ヘンリー・ウッド・ホール

BWV916と同様です。

トッカータBWV915は以下のCDを聴きました。

 アマンディーヌ・サヴァリー、2013年4月2-4日
 アンジェラ・ヒューイット、2002年1月、セッション録音、ロンドン、ヘンリー・ウッド・ホール

BWV910と同様です。

トッカータBWV912は以下のCDを聴きました。

 ヴィルヘルム・ケンプ、1975年4月、セッション録音、ドイツ、ハノーファー
 ユリアンナ・アヴデーエワ、2017年3月8-10日、セッション録音、ドイツ、ノイマルクト、ライツターデル
 アンジェラ・ヒューイット、2002年1月、セッション録音、ロンドン、ヘンリー・ウッド・ホール

ケンプは滋味あふれる演奏。さすがです。ユリアンナ・アヴデーエワは満を持してのバッハ・アルバム。このトッカータはちょっと気負い過ぎでしょうか。期待したのですが・・・。むしろ、一緒に収録されているイギリス組曲第2番のほうが素晴らしいです。アンジェラ・ヒューイットは一日の長のある演奏。文句ありません。


半音階的幻想曲とフーガは以下のCDを聴きました。

 ニコライ・ルガンスキー、1990年3月13日、ライヴ録音、モスクワ音楽院、ラフマニノフ・ホール
 アンドラーシュ・シフ、1983年9月、セッション録音、ロンドン
 ヴィルヘルム・ケンプ、1953年3月、セッション録音、ロンドン、ウェスト・ハムステッド、デッカ・スタジオ
 アンジェラ・ヒューイット、1994年1月、セッション録音、ドイツ、ハノーファー、ベートーヴェンザール

ニコライ・ルガンスキー、期待して聴きましたが、これは何と17歳のときのアルバム。今、録音すれば、もっと違ったものになるでしょう。アンドラーシュ・シフも若い時の録音ですが、これは素晴らしいです。ただ、今なら、もっと美しい演奏になりそうです。ケンプは古い録音です。演奏は美しいものです。ヒューイットもバッハ鍵盤音楽全集の最初のアルバムです。これもいいのですが、今なら違った演奏になるでしょう。と思っていたら、DVDで新しい演奏が出ているのですね。そのうちに聴いてみましょう。



↓ saraiのブログを応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね

 いいね!



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

       アンジェラ・ヒューイット,  

人生で一度きりのコンサート:ゴルトベルク変奏曲 The Bach Odyssey Ⅵ アンジェラ・ヒューイット@紀尾井ホール 2018.5.24

アンジェラ・ヒューイットの“バッハ オデッセイ”の6回目。ゴルトベルク変奏曲の全曲演奏です。

人生で一度しかコンサートが聴けないとしたら、迷うことなく、今日のこのコンサートを選ぶでしょう。まさにsaraiにとって、かけがいのない価値があるコンサートでした。

バッハは偉大です。そのバッハには、マタイ受難曲、ロ短調ミサ曲という西欧音楽の最高峰とも思える大傑作がありますが、saraiは器楽曲も愛してやみません。無伴奏ヴァイオリン・ソナタ/パルティータ、無伴奏チェロ組曲もあるし、鍵盤曲では最愛のパルティータ全6曲もありますし、平均律クラヴィーア曲集全2巻もあります。しかし、やはり、ゴルトベルク変奏曲は特別な作品であることが今日、はっきりと認識できました。意思薄弱なsaraiは明日になると、また、別のことを思うかもしれませんが、きっと、今日のアンジェラ・ヒューイットが弾いたゴルトベルク変奏曲はsaraiの音楽体験の中で燦然と輝き続ける究極のコンサートになるでしょう。それほど素晴らしい音楽だったし、演奏でした。

演奏が始まる前は頭の中に不安感が渦巻いていました。1時間を超える長大な作品を集中力を切らさずに聴き続けられるかということです。また、一昨日のコンサートで少し体調が悪そうに思えたアンジェラ・ヒューイットがこの長大な作品を休憩なしで最高のパフォーマンスで弾き切ることができるのかということもありました。まずはステージに登場したアンジェラ・ヒューイットの様子を見て、一安心です。一昨日とは打って変わって、とても元気そうです。弾き始めたアリアの美しいこと。インテンポの演奏は格調の高さが感じられます。上々の滑り出しです。変奏が続きますが、何とかsaraiも集中力を保っています。最初の山は第9変奏です。3度のカノンの美しさが心に沁みます。第12変奏の4度の反行カノンも見事な演奏です。そして、期待していた第13変奏はゆったりとした素晴らしい演奏です。本当に美しい演奏に魅了されます。saraiの集中力も高まっていきます。続く第14変奏も素晴らしくて、いよいよ、前半の最後の第15変奏に入ります。最初のト短調の変奏で5度の反行カノンです。哀調を帯びた旋律に酔わされます。ここまでが前半ですが、アンジェラ・ヒューイットの演奏は次第に精度の高い演奏になってきました。それにライヴとは思えないパーフェクトな演奏です。音の美しさも最高です。

後半、と言っても前半からそのまま連続して続きますが、第16変奏のフランス風序曲が荘重に奏でられます。この後、後半はすべての変奏が素晴らしくて、saraiの集中力も高まる一方です。アンジェラの演奏は第20変奏、第23変奏という、チェンバロの2段鍵盤の曲で冴え渡ります。耳だけでなく、目でもその超絶的な技巧が楽しめます。ト短調の残りの2つの変奏、第21変奏も第25変奏も美しくも哀しい演奏でうっとりと聴き惚れます。特に第25変奏が安っぽいロマンに走らずに格調高く弾かれたので、納得できました。第26変奏以降は水際立った凄い演奏です。2段鍵盤の曲を苦も無く、弾き切ります。そして、その技巧以上に素晴らしい音楽性に魅了されました。だんだん、終局に近づきます。第29変奏のトッカータ風のダイナミックな演奏を聴いて、気持ちが高揚していきます。そして、最後の第30変奏のクオドリベットで俗謡をベースにした演奏で曲調が変わります。懐かしさにあふれるようなフレーズで心が癒されるようです。フィナーレの高まりでsaraiも感極まります。感動の頂点です。最終音が長く引き伸ばされます。感動の心のままで最後のアリアが弱音で美しく始まります。アリアでさらに感動が高まり、音楽と心が一体化した思いです。何という音楽、何という演奏でしょう。アリアはスローダウンして静かに終わります。そして、長い長い静寂が続きます。saraiは感動のあまり、涙が流れます。CDを聴いていては味わえない音楽体験です。ライヴで聴いてこそのゴルトベルク変奏曲でした。

コンサートが終わっても、saraiの感動は続いていて、言葉さえ発することができません。同行の友人と駅で別れるまで無言のままでした。友人には申し訳ない態度を取ってしまいました。ブログを通じて、お詫びする次第です。ごめんなさい。

今日のプログラムは以下です。

ピアノ:アンジェラ・ヒューイット
 
J.S.バッハ・プログラム Odyssey Ⅴ

ゴルドベルク変奏曲(アリアと30の変奏曲)ト長調BWV988

 《休憩なし》《アンコールなし》


最後に予習したCDですが、最近、ロバート・ヒルのチェンバロのリサイタルに向けて、チェンバロ演奏のCDを聴いています。以下、再掲します。

=====================================
予習は夭逝した天才チェンバロ奏者スコット・ロスの残した晩年の2つの録音を聴きました。

 スコット・ロス 1985年 ライヴ録音 ERATO
 スコット・ロス 1988年 セッション録音 EMI

いずれも素晴らしい演奏ですが、1988年の録音がsaraiの長い間の愛聴盤です。よりテンポがゆっくりでかみしめるように弾いています。
=====================================

ピアノ演奏のCDですが、実は今日、本番前の最終予習でまだ半分しか聴いていなかったアンジェラ・ヒューイットの旧盤を聴き、あんまり納得がいかなかったので、再度、新盤も聴いてしまいました。したがって、今日はアンジェラ・ヒューイットのゴルトベルク変奏曲を3回も聴いたんです(笑い)。今日のコンサートへのsaraiの思い入れが分るでしょう。今日聴いたアンジェラ・ヒューイットのCDは以下です。

 アンジェラ・ヒューイット、1999年、セッション録音、スタインウェイのピアノ
 アンジェラ・ヒューイット、2015年、セッション録音、ファツィオリのピアノ

再度聴き直した新盤の演奏は素晴らしいです。後述しますが、アンドラーシュ・シフの新盤、マレイ・ペライアと合わせて、2000年以降に録音された最高の3枚です。

アンジェラ・ヒューイット以外の予習CDは以下です。

 クラウディオ・アラウ、1942年、セッション録音、モノラル
 グレン・グールド、1955年、セッション録音、モノラル
 グレン・グールド、1981年、セッション録音
 ウラディーミル・フェルツマン、1991年、ライヴ録音、モスクワ音楽院大ホール
 マレイ・ペライア、2000年、セッション録音、スイス
 アンドラーシュ・シフ、2001年10月30日、ライヴ録音、スイス、バーゼル

いずれも素晴らしい演奏です。まず、ゴルトベルク変奏曲と言えば、再び、グレン・グールドの旧盤と新盤を聴いてみないといけないでしょう。saraiが初めてゴルトベルク変奏曲を聴いたのはこの旧盤。次に聴いたのは新盤。つまり、ゴルトベルク変奏曲はグレン・グールドがすべてだったんです。今再び聴いてみると、やはり、天才グレン・グールドでしか弾けないと思うところも多くあります。しかし、現在のsaraiの耳ではやりすぎに思える部分も多々あります。その中ではやはり、新盤に軍配を上げます。クラウディオ・アラウは今回初めて聴いてみましたが、これがアラウらしい構えの大きい素晴らしい演奏です。古い録音ですが、音の状態は十分、鑑賞に堪えます。晩年に再録音してくれなかったのは残念ですが、この録音でも十分に満足できます。マレイ・ペライアは何と言ってもその美音で魅了してくれます。すべての変奏がすべてベストではありませんが、変奏によってはベストと思えるものも多くあります。そして、最高の演奏はアンドラーシュ・シフの新盤(2001年)です。ライヴとは思えない素晴らしい音と演奏。パーフェクトです。今回、1982年録音の旧盤を聴く時間はありませんでしたが、この新盤を聴いてしまうとそれで満足してしまいます。1969年録音のヴィルヘルム・ケンプはアリアだけ聴きましたが、節回しが好みでなかったのでパス。1982年録音のソコロフもアリアだけ聴きましたが、これは美しい演奏。全曲聴く時間がなかったのが残念です。チェンバロもレオンハルト(1976年録音)くらいは聴きたかったのですが、これも時間切れ。若干、予習が不足気味ではありますが、今日の演奏が素晴らしかったので、まあ、いいでしょう。



↓ saraiのブログを応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね

 いいね!



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

       アンジェラ・ヒューイット,  

圧巻のロ短調フーガ:平均律クラヴィーア曲集第1巻 The Bach Odyssey Ⅴ アンジェラ・ヒューイット@紀尾井ホール 2018.5.22

アンジェラ・ヒューイットの“バッハ オデッセイ”の5回目。平均律クラヴィーア曲集第1巻の全曲演奏です。

昨年の素晴らしかったパルティータ全曲に続いて、この平均律クラヴィーア曲集に期待感が高まってきていました。そして、その期待は叶えられました。

前半の第12曲までの演奏は何か、沈んだ印象があります。長調の曲もどこか哀調をたたえて、まるで短調の曲のように思えます。しかし、何か元気のない演奏ですね。その代わり、短調の曲は恐ろしいほどの美しさを感じさせる凄い演奏です。とりわけ、第4曲、第8曲、第10曲、第12曲の美しさは無類のものでした。第8曲のプレリュード、そして、フーガは凄まじい美しさに包まれていて、うっとりと聴き入りました。

後半に入り、ほんのわずかな印象ですが、アンジェラ・ヒューイットは勢いを取り戻した演奏に変わります。長調は弾むような感じで弾き切り、短調は力強くて、フーガは構築力に優れた演奏になります。ただ、前半のような短調の曲の凄絶な美しさは感じられません。第20番のイ短調はそれなりに美しい演奏ではありましたけどね。しかし、終盤に向けて、演奏は徐々に高潮していきます。いつしか、終曲の第24番のロ短調のプレリュードが始まります。切れ味のよい素晴らしい演奏です。その魅力にあふれる音楽にじっと聴き入っていしまいます。大変、感銘を受けます。そして、最後のフーガです。静かに始まり、魂の込められたフーガが深く沈潜しながら続いていきます。その究極を思わせるフーガに身も心もすっかり囚われてしまします。アンジェラ・ヒューイットがここまでで使い残したすべての力を注ぎこんで演奏に没頭している姿に心を打たれます。バッハのフーガも凄い曲ですが、演奏するアンジェラ・ヒューイットの集中力も物凄いです。いきおい、聴いているsaraiものめりこんで聴き入ります。今日の平均律クラヴィーア曲集第1巻の全曲演奏はただ、このフーガを演奏し、それを聴くという1点に集約されます。そして、フィナーレ。高らかにフォルティシモに上り詰めて、ただただ感動するのみです。会場も一瞬、息を呑んだような静寂が広がります。バッハの最高のフーガを聴いた思いです。曲を閉じた後、帰路につくときもsaraiの頭の中ではあの究極のフーガが鳴り続けていました。

今回もあまりに素晴らしいアンジェラ・ヒューイットの“バッハ オデッセイ”でした。もしかしたら、今日のアンジェラ・ヒューイットは体調が悪かったのかもしれませんが、それをはねのけるような演奏を聴かせてくれました。頭が下がる思いです。

今日のプログラムは以下です。

ピアノ:アンジェラ・ヒューイット
 
J.S.バッハ・プログラム Odyssey Ⅴ

平均律クラヴィーア曲集第1巻 第1曲~第12曲 BWV846~857

  《休憩》

平均律クラヴィーア曲集第1巻 第13曲~第24曲 BWV858~869


最後に予習したCDですが、最近、既に以下のCDを聴いていました。

 スヴャトスラフ・リヒテル、1970年7月、セッション録音、ザルツブルク、クレスハイム宮およびエリーザベト教会
 スヴャトスラフ・リヒテル、1973年、ライヴ録音、インスブルック
 フリードリヒ・グルダ、1972年、セッション録音
 アンドラーシュ・シフ、2011年、セッション録音、スイス、ルガーノ

いずれも素晴らしい演奏ですが、とりわけ、グルダはフーガを恐ろしくスローに、しかも明晰に弾き、顕微鏡的な演奏を聴かせてくれます。リヒテルのインスブルック・ライヴも最高に素晴らしい演奏で音質も上々です。第8番や第24番のフーガは感銘して聴き入ってしまいました。
そして、もちろん、アンジェラ・ヒューイットのCDも予習しました。

 アンジェラ・ヒューイット、2008年、セッション録音

これはファツィオリのピアノで弾いた新盤です。1997年のスタインウェイで弾いた旧盤以上に生命力を感じさせてくれる素晴らしい演奏です。

いよいよ、明後日はこのアンジェラ・ヒューイットの“バッハ オデッセイ”で一番楽しみにしていたゴルトベルク変奏曲です。きっと素晴らしい演奏を聴かせてくれるでしょう。



↓ saraiのブログを応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね

 いいね!



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

       アンジェラ・ヒューイット,
人気ランキング投票、よろしくね
ページ移動
プロフィール

sarai

Author:sarai
オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

来訪者カウンター
CalendArchive
最新記事
カテゴリ
指揮者

ソプラノ

ピアニスト

ヴァイオリン

室内楽

演奏団体

リンク
Comment Balloon

お返事ありがとうございます。
本当に!私もレイルジェットや美術館の手配もしているので、祈るような気持ちです。

03/10 19:06 kico

kicoさん、初めまして。saraiです。

心配ですね。私はそのまま、沈静化するのを待っています。シュターツオーパーのチケットも購入しました。何としても行こうとは思って

03/09 22:12 sarai

はじめまして。私も同じ時期にウィーン滞在の計画をしており、楽友協会でのベルリンフィルのチケットを購入しました。が、新型コロナの件で、そもそも旅行に出られるのかど

03/09 16:59 kico

お役に立てて、なによりです。我が家では今でもメインのCDプレーヤーとして活躍しています。ただ、最近はCDはいったんリッピングしてHDDに格納し、USBオーディオでオーディ

01/18 15:18 sarai

父からアンプとセットで譲り受けたもののトレイが動かず困っていましたが、
ブログを見て自分で購入・修理することができました。
利益目的でもなくまた素人でも分かる記事

01/18 13:50 hisa

のりしんさん

saraiです。コメントお寄せいただき、ありがとうございました。
同じ追っかけ仲間、今後ともよろしくお願いいたします。
彼女の声は素晴らしいですね。

12/01 12:07 sarai

私も中村さんの追っかけやっております。昨日の演奏も圧倒的でしたね。中村さんの歌を聴いていると、なぜか涙腺が緩んで来ます。

12/01 09:39 のりしん
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR