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涙なしに聴けない魂の演奏 The Bach Odyssey Ⅳ アンジェラ・ヒューイット@紀尾井ホール 2017.9.14

アンジェラ・ヒューイットの“バッハ オデッセイ”の4回目。パルティータの2日目です。

これほどの演奏が聴けるとは思ってもいませんでした。アンジェラ・ヒューイットの実力をなめていました。恐ろしいほどの能力を持ったピアニストです。また、それ以上に音楽に懸ける情熱の物凄さに圧倒される思いです。今日の最後に弾いたパルティータ第6番は鬼気迫るような気迫の演奏でした。そして、その魂のこもった音楽の素晴らしさに思わず、涙がこぼれおちました。一生に何回かしか出会えない奇跡のような音楽・・・今日は忘れられない夜になりました。

昨日聴いたパルティータ第4番も圧巻の演奏でしたが、今日の第6番とは感動のレベルが異なります。昨日のブログでも書きましたが、今回のプログラムは、1日目の最後が第4番で、2日目の最後が第6番。アンジェラ・ヒューイットもsarai同様にパルティータの中でこの2曲を格別に愛好しているのかなと想像していました。今日の彼女自身の解説文では、第4番のアルマンドに一番愛着を感じるけれども、第6番についてはバッハに「脱帽!」したいとのことです。そして、この第6番はバッハの最高傑作のひとつであり、最高の知性と情感を備えた構想で音楽が書かれていると述べています。そういう彼女の思いが乗り移ったような高い精神性と熱い情感に満ちた最高の演奏でした。

今日の演奏を振り返ってみましょう。前半の第3番のパルティータからノリノリの演奏です。楽し気であり、美しくもあります。素晴らしい演奏に満足感を覚えます。続く第5番もさらに楽しさが増します。そして、さらに壮麗に演奏されます。終曲のジーグのフーガの素晴らしさには圧倒される思いです。昨日の前半を上回る内容に後半への期待感が高まります。

後半はいったん、短い作品、パルティータ イ長調が演奏されます。ほとんど聴いたことのない作品ですが、アンジェラ・ヒューイットのバッハへの敬意はゆるぐことはなく、丁寧に美しく演奏されます。お陰でsaraiもこの作品への親近感が増したほどです。完璧な演奏でした。2曲目のエールは特に印象的な演奏でした。2度の拍手を受けた後、そのまま舞台に留まり、最後の第6番の演奏を始めます。どうやら、第6番を演奏するにあたって、短い作品で軽いステップを踏んだようです。腕慣らしというわけではないでしょうが、第6番に向けての気持ちを高めていったのでしょう。それほど、アンジェラはこの第6番への熱い思いを抱いていたようです。まなじりを決したような表情からもそれはうかがい知れます。聴く立場のこちらも気持ちを高めます。第1曲のトッカータの自由奔放とも思えるファンタジックさと激しい鍵盤の響きには、こちらの気持ちも一気に高揚します。そして、一転して、静謐とも思えるフーガが始まります。とても素晴らしいフーガが展開されていきます。徐々に熱く高揚していき、最後はまた、トッカータに収斂します。何という壮大なスケールの音楽でしょう。続くアルマンドはあまりに美しく、そして、哀しい音楽です。その対比の素晴らしさに心が溶けそうになります。2曲目のアルマンドで既に心は金縛り状態です。アンジェラは一心にピアノを弾き続けます。saraiも今までになく音楽に集中していきます。そして、3曲目のクーラントです。輝かしい音楽が驚異的な技巧で綴られていきます。シンコペーションや超絶的に細密なパッセージが織り込まれて、ありえないような音楽が展開されていきます。唖然として、聴き入ります。アンジェラは何というレベルのピアニストでしょう。もう、恐れ入るばかりです。しかし、決して技巧のみに走るのではなく、その音楽の造形はとても見事です。天才バッハの真髄に切り込んでいくアンジェラのピアノに魅せられていきます。続くエールで一息つきます。短いノリのいい音楽です。そして、この第6番の中核とも言えるサラバンドが始まります。トッカータと同様にファンタジックでもありますが、その本質は真摯な音楽です。アンジェラの解説では、孤高のバッハが創造の神と孤独な対話を交わしているとありましたが、まさにその通りの演奏です。超絶的な精神性、あまりの格調の高さに息を呑むばかりです。遂には、感情の昂ぶりに耐えかねて、涙が滲みます。こんな音楽、こんな演奏があるのかと魂が揺さぶられます。圧倒的な音楽のチカラの前に心が崩壊していきそうです。サラバンドの高揚は長く続きました。そして、いつしか終焉を迎え、次のガヴォットに移ります。静謐なサラバンドに対して、また、輝かしい音楽に変わります。しかし、本質は変わりません。形を変えた真摯さの連続です。音楽の高揚感は続きます。そして、遂に終曲のジーグが始まります。冒頭の長いフーガに呼応するような規模の大きなフーガです。名前こそ舞曲のジーグですが、バッハのパルティータはその舞曲の枠を大きく凌駕するフーガで全曲を締めくくります。フーガこそバッハの音楽の中核であることを高々と宣言するかの如き、神のようなフーガです。圧倒的な力で迫ってくるフーガの素晴らしさに聴く者はただひれ伏すのみです。まるで音楽のミューズの巫女のようにアンジェラは鍵盤にフーガを叩き付けます。微風と嵐が交錯するように長く続くフーガも最後、スローダウンし、鍵盤のキーが長く押さえられた後、沈黙します。アンジェラの手が高々と上げられて、この素晴らしい音楽の終わりを告げます。saraiは頭が真っ白で強い感動にふけったままです。こういう音楽は生涯に滅多に出会えません。アンジェラも会心の出来だったんでしょう。彼女の表情にそれがあらわれていました。この場に存在できたことだけで、感謝するのみです。こういう音楽を聴くために自分の人生の意味があるのだと深く確信しました。


今日のプログラムは以下です。

ピアノ:アンジェラ・ヒューイット
 
J.S.バッハ・プログラム Odyssey Ⅳ

パルティータ第3番 イ短調 BWV827
パルティータ第5番 ト長調 BWV829

  《休憩》

パルティータ イ長調 BWV832
パルティータ第6番 ホ短調 BWV830

  《アンコール》

J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第2巻より第9番 ホ長調 フーガ BWV878


最後に予習したCDですが、第6番の演奏はパルティータ全曲盤のみでしか聴けませんでした。
全曲盤は以下です。

 マレイ・ペライア 2008~2009年
 アンドラーシュ・シフ 新盤、2007年
 アンジェラ・ヒューイット 1996年、1997年

いずれの第6番も素晴らしい演奏です。とりわけ、シフの演奏は極上のレベルで完璧でした。しかし、今日のアンジェラの驚異的かつ気迫のこもった演奏の前には色を失います。第6番だけはアンジェラの再録音が望まれます。

もう、これ以上のバッハの演奏が聴けるとは思えませんが、次のThe Bach Odyssey Ⅴ/Ⅵは来年の5月22日、24日です。何と、以下のプログラムです。

 The Bach Odyssey Ⅴ  平均律クラヴィール曲集第1巻全曲
 The Bach Odyssey Ⅵ  ゴルドベルク変奏曲

いきなり、真打ち登場です。アンジェラもさらに精進して臨んでくるでしょう。こちらも万全の準備で臨みましょう。もちろん、チケットは申し込みましたよ!



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       アンジェラ・ヒューイット,  

さすがのパルティータ The Bach Odyssey Ⅲ アンジェラ・ヒューイット@紀尾井ホール 2017.9.13

アンジェラ・ヒューイットの“バッハ オデッセイ”の3回目。楽しみにしていたパルティータの1日目です。
パルティータと言えば、バッハの鍵盤音楽の中で最も愛する曲集です。思えば、今は亡き倉橋由美子の《シュンポシオン》の中でかおりさんという若い女性が桂子さんのリクエストでパルティータを演奏する場面がありました。それを読んだ頃は今ほどパルティータに傾倒していなかったので、へーっと思いながら、読み流しつつ、何となく、心の中に残っていました。パルティータを好きになったのは、クラウディオ・アラウの最後の録音《ファイナル・セッション》の超絶的に美しい演奏を聴いてからです。それこそ、毎日、通勤のお供にIPODで聴き続けていました。ただし、アラウが残した録音はパルティータの第1番~第3番と第5番のみ。第4番と第6番は残念ながら、彼の死によって、録音されませんでした。あと半年生きてくれれば、録音できたのに、かえすがえす残念です。ということで、saraiにとってのパルティータはずっと4曲でした。その頃はそれはそれでよいと思っていました。第4番と第6番は長くて、分かりづらいという印象があったんです。特に第1番と第2番を愛好していました。もちろん、これは誤解です。今は第4番と第6番に最高に魅せられています。今回のプログラムを見ると、1日目の最後が第4番。2日目の最後が第6番。アンジェラ・ヒューイットの思いも同じなのかなと想像しています。実際、今日の彼女自身の解説文を読むと、第4番のアルマンドが一番好きだと書いてあります。saraiも同じです。まだ、第6番への彼女の思いはまだ分かりません。どうなんでしょう。

で、今日の演奏ですが、前半のパルティータ第1番は綺麗な演奏ではありますが、まあ、普通の演奏。有名過ぎて、これまでも聴き過ぎて、生半可な演奏では満足できませんね。
心なしか、アンジェラの気持ちも乗っていないような気もします。次の第2番は曲としての複雑さもありますが、アンジェラの演奏も生きがよくなります。最高とまでは言えませんが、満足できるレベルです。そもそも、ためのきいた演奏になって、ぐっと惹きつけられます。最後のジーグはヒートアップした演奏で聴いているほうも高揚します。ちょっとしたミスもありますが、それも勢いでしょう。うん、なかなか、いいね。

後半はいったん、パルティータを離れて、ソナタ ニ短調が演奏されます。これって、無伴奏ヴァイオリン・ソナタが原曲だったのね。予習したときは、迂闊なことに気が付きませんでした。あんなによく知っている曲なのに、楽器がピアノに置き換えられるとずい分、印象が異なります。今度は注意深く聴くと、たしかに無伴奏ヴァイオリン・ソナタでした。第3楽章のアンダンテを聴くと、ヴァイオリンの響きが頭の中で重なります。ヴァイオリンでは最高に美しい曲ですが、ピアノでも美しい響きです。どちらがいいかなんていう比較は無用です! 第2楽章、第4楽章はピアノでばりばり弾かれると、まあ、ヴァイオリン・ソナタとは別物ですね。結構、頭の中が混乱します。まったく別の曲として、分離して聴いたほうがよさそうです。バッハのほかの曲同様、楽器を選ばない名曲です。

で、いよいよ、第4番。これは文句なしに凄い演奏でした。のっけの(フランス風)序曲から物凄い気迫で圧巻の演奏。フーガも素晴らしい勢いです。次のアルマンド。実に心がこもっていました。バッハの素晴らしさは精神性の高さだと常々思っていますが、それを如実に示すような演奏です。深く頭を垂れて、聴き入るのみでした。アンジェラの顔の表情にも感動があふれていました。ピアノ演奏技術を超えた何かがそこにあります。これこそバッハ・・・これこそ真の音楽です。次のクーラントは一転して、躍動します。音楽の喜びがほとばしります。saraiはもう幸福感でいっぱいです。短いアリアを経て、またしても入魂のサラバンド。格調が高く、しみじみとした演奏に究極の永遠を感じます。終わりのない音楽・・・終わってほしくない音楽です。でも、いつしか最後の1音で終わりを迎えます。次はメヌエットと言うには激し過ぎる高揚が沸き起こります。素晴らしい突進です。そして、最後のジーグはさらに高揚します。アンジェラの情熱は熱く燃え上がります。感動のフィナーレです。もっと完璧な演奏記録もあるかもしれませんが、ライヴで聴く最高の音楽がここにありました。この場で演奏者と共有した時間こそが何物にも代えがたいものでした。

今日のプログラムは以下です。

ピアノ:アンジェラ・ヒューイット
 
J.S.バッハ・プログラム Odyssey Ⅲ

パルティータ第1番 変ロ長調 BWV825
パルティータ第2番 ハ短調 BWV826

  《休憩》

ソナタ ニ短調 BWV964
パルティータ第4番 ニ長調 BWV828

  《アンコール》

J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻より第5番ニ長調フーガ BWV850


最後に予習したCDをご紹介しておきましょう。まずはこれです。最高の1枚です。

 クラウディオ・アラウ:ファイナル・セッションズ(第1番、第2番)

全曲盤は以下です。

 マレイ・ペライア 2008~2009年
 アンドラーシュ・シフ 新盤、2007年
 アンジェラ・ヒューイット 1996年

いずれも素晴らしい演奏で文句のつけようがありません。ペライアは特に大曲の第4番が見事な演奏です。自然な表現でかつ感動的です。シフは旧盤では物足りなかったのですが、この新盤は圧倒的な素晴らしさです。強いて文句をつけるとすると、完璧過ぎるところくらいです。全曲盤では、素晴らしい録音もあいまって、これを超えるものはないでしょう。ヒューイットも録音もよく、素晴らしい演奏です。再録音は不要に思えるレベルの素晴らしいCDです。

単発ものは以下です。

 第1番のみ ディヌ・リパッティ 1950年 セッション録音、ライヴ録音(最後のブザンソン演奏会)
 第2番のみ マルタ・アルゲリッチ 1979年 セッション録音 1978~1979年 ライヴ録音(アムステルダム・コンセルトヘボウ)
 第1番、第4番 フィオレンティーノ 1996年10月 スタジオ録音(ベルリン)

これはどれも聴き逃せないものばかり。リパッティは最晩年の演奏。若過ぎる死でしたが、素晴らしい録音を残してくれました。セッション録音はよほど体調がよかったのか、堂々たる演奏ですが、若さゆえか、少し意気込み過ぎの感じです。むしろ、体調の悪さをおして、無理して行った最後のブザンソンでの演奏会はほどよく力が抜けて、かろみを感じさせる見事な演奏です。ある意味、彼しか弾けないような音楽です。アルゲリッチですが、今から40年ほど前の絶頂時の演奏です。まさに天才のみがなしうる演奏と言っても過言でありません。よく言われた天馬空を往くという表現がぴったりです。アルゲリッチの数あるCDでも最高のものでしょう(セッション録音)。アムステルダム・コンセルトヘボウでのライヴもとてもライヴとは思えない完成度の高さです。同じ時期の演奏ですから、どちらを聴いても満足できます。フィオレンティーノは何故か、そんなに名前が知られていませんが、このバッハを聴けば、びっくりします。ともかく緩徐楽章が天国的なテンポで、完璧に弾き切っています。とりわけ、第4番のアルマンドは15分を超える長さに仰天します(普通は8分くらい)。そして、その素晴らしさに魅了されること、請け合います。じっくりとバッハの精神性を味わいたい方にはお勧めです。

ここであれっと思ったあなた。そうです。今回はグレン・グールドは聴いていません。彼ほど予習に向かない人はいませんからね。復習ならいいかもしれません。評判のフェルツマンも聴いていません。何とCDを持っていないんです。聴いてみたいのですが、どこかに安いCDはないでしょうか。あと、今回はピアノのみ絞りました。予習ですからね。なお、チェンバロならば、レオンハルトの賑やかな響きは苦手で、スコット・ロスの静謐な響きが好きです。と書いていると、ロスの演奏を聴きたくなりました。そう言えば、ロスも若過ぎる死でしたね。高齢のアラウがバッハの素晴らしい演奏をしたんですから、バッハ弾きは長生きをして、高齢演奏を残してほしいものです。ゴールドベルク変奏曲などは最後の力をふりしぼって、究極の美しさに至ってもらいたいものです。ペライアとシフとヒューイットには是非、成し遂げてもらいたいものです。saraiは聴けそうにないのが残念ですが・・・。

ちょっと書き過ぎましたね。もう深夜です。明日のパルティータ後半もあるので、このへんで。第6番が楽しみです。きっと凄い演奏になるでしょう。



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       アンジェラ・ヒューイット,  

奇跡のような名演!!The Bach Odyssey Ⅱ アンジェラ・ヒューイット@紀尾井ホール 2017.5.30

アンジェラ・ヒューイットの“バッハ オデッセイ”の2回目。こんなバッハが聴けるなんて、望外の幸せです。一生に何回も聴けるようなコンサートではありません。冒頭からフランス組曲の素晴らしい演奏が続きます。前半に演奏された第1番と第2番の見事なこと。ただただ、聴き惚れるだけです。しかし、これは単なる序章でしかありませんでした。後半は前半を上回る圧巻の演奏です。素晴らしい第6番に続いて、第3番は天国的な美演に驚愕します。そして、最後の第5番も極上の素晴らしさ。感動あるのみです。

今日のプログラムは以下です。

ピアノ:アンジェラ・ヒューイット
 
J.S.バッハ・プログラム Odyssey Ⅱ

フランス組曲 第1番 ニ短調 BWV812
フランス組曲 第2番 ハ短調 BWV813
フランス組曲 第4番 変ホ長調 BWV815

  《休憩》

フランス組曲 第6番 ホ長調 BWV817
フランス組曲 第3番 ロ短調 BWV814
フランス組曲 第5番 ト長調 BWV816

  《アンコール》

ラモー:タンブラン


第1番~第3番の短調の曲の哀調を帯びた美しさ。第1番~第6番のサラバンドの静謐な美しさ。第3番と第5番はすべての曲の素晴らしい演奏に心がとろけるような気持ちにさせられました。アンジェラ・ヒューイットは考え抜いた解釈のもとにごく自然な演奏をしていただけです。しかし、それがバッハの最高の演奏になっていました。凄い演奏に深い感銘を覚えました。演奏の細かいことに触れる必要はないでしょう。バッハの音楽を愛するものにとって、これ以上はないというフランス組曲でした。


アンコールは舞曲つながりでラモーの有名なタンブラン。のりのりの素晴らしい演奏でした。

9月はパルティータ全曲演奏です。パルティータはsaraiが最も愛する鍵盤音楽です。物凄い演奏が聴けそうです。



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       アンジェラ・ヒューイット,  

The Bach Odyssey Ⅰ アンジェラ・ヒューイット@紀尾井ホール 2017.5.29

“バッハ オデッセイ”と銘打ったアンジェラ・ヒューイットの渾身の大プロジェクトがいよいよ日本でもスタートしました。4年間、全12回のコンサートシリーズで当世きってのバッハ弾きと目されるアンジェラ・ヒューイットがバッハの全ソロ鍵盤曲を完奏するという大企画です。saraiもこの企画に乗ることにしました。人生でこういう経験ができるって、何て幸運なんでしょう。まずは今日と明日が1回目と2回目のリサイタルです。ちなみに海外では、ニューヨーク、ロンドン、オタワ、フィレンツェなどの各地でこのコンサートシリーズが催行されるそうです。既に昨年の8月にイギリスのオールドバラで1回目のリサイタルがスタートしています。

今日のプログラムは以下です。

ピアノ:アンジェラ・ヒューイット
 
J.S.バッハ・プログラム Odyssey Ⅰ

幻想曲 ハ短調 BWV906
イタリア風のアリアと変奏 BWV989
2声のインヴェンション(15曲) BWV772-786

  《休憩》

3声のインヴェンション(シンフォニア)(15曲) BWV787-801
カプリッチョ 変ロ長調“最愛の兄の旅立ちにあたって”BWV992
カプリッチョ ホ長調 “ヨハン・クリストフ・バッハをたたえて” BWV993
幻想曲とフーガ イ短調 BWV904

  《アンコール》

ゴールドベルク変奏曲BWV.988~アリア


今日のリサイタルは2声のインヴェンションと3声のシンフォニアが中心です。まずは幻想曲 ハ短調で開幕です。開幕にふさわしいバッハの響きに満足。極上の滑り出しです。アンジェラ・ヒューイットの実演を聴くのは初めてですが、想像していたよりも力強いタッチで明快な演奏にうっとりと聴き入ります。
続いて、イタリア風のアリアと変奏です。美しいアリアと変奏曲と言えば、まるでゴールドベルク変奏曲みたいなものです。アリアの主題提示部自体で様々な弾き方をしてくれるので、それも変奏のように聴こえます。ピアノの機能性を活かしたアーティキュレーションで弾かれていくアリアと変奏は素晴らしいとしか言えません。まさにバッハの鍵盤音楽がピアノで演奏される楽しさがここに凝縮しています。
前半の最後は2声のインヴェンション、全15曲です。子供の練習曲と言って、なめてはいけません。バッハの鍵盤音楽の基本がここにあります。長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さはここにもちゃんとあることをヒューイットのピアノは見事に表現してくれます。第9曲 ヘ短調と第15曲 ロ短調の演奏が心に沁みます。

後半は3声のインヴェンション(シンフォニア)、全15曲でスタートします。2声のインヴェンションに比べると響きが豊かになります。ここでも長調の闊達さが耳に心地よく響きますが、心に沁みるのは短調の曲です。とりわけ、第2曲 ハ短調、第7曲 ホ短調、第9曲 ヘ短調に酔わされました。
続いて、カプリッチョ 変ロ長調“最愛の兄の旅立ちにあたって”です。6楽章から成る作品ですが、アダージッシモの第3楽章のパッサカリアは心のこもった演奏で胸に迫ってきます。バッハが10代で作曲したそうですが、やはり、若くとも天才音楽家は素晴らしい作品を作り出しています。また、ヒューイットの類稀なる音楽性にも驚きを禁じ得ません。
圧巻だったのは最後に演奏された“幻想曲とフーガ イ短調”です。幻想曲は極めて表現力の高い演奏で魂がゆさぶられます。終盤では感動してしまいました。感動も束の間、すぐにフーガが始まります。フーガは2つのパートから成り、後半の下降音型によるフーガは構築性に富んだスケールの大きな演奏です。終結部では2つのフーガのテーマが交錯し、バッハならではの高度な対位法の世界を感じさせられます。ヒューイットの素晴らしい演奏に圧倒的な感銘を受けました。

アンコールに先立って、ヒューイットから今後の“バッハ オデッセイ”についての挨拶があり、今後を予告する意味もあって、ゴールドベルク変奏曲のアリアが演奏されました。そのアリアの筆舌尽くし難い演奏には瞼が熱くなりました。彼女のゴールドベルク変奏曲を聴けるのはきっと2020年、オリンピックの年になるでしょう。それまでは何としても、元気にこの“バッハ オデッセイ”を聴き続けるぞ!! 素晴らしきかな、アンジェラ・ヒューイットのバッハ。明日はフランス組曲全曲演奏です。楽しみです。



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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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えりちゃさん、お久しぶりです。saraiです。

なかなか、海外渡航の見通し、立ちませんね。来年あたりはどうでしょうね。長期戦覚悟で我慢するしかありませんね。

こちら

04/10 02:37 sarai

saraiさま、
お久しぶりです!
お元気にコンサートや旅行を楽しんでおられますね!
ブログ、楽しく拝見しています。おフランス、良いね😊
私は春だというのに、仕事と用事以

04/09 05:29 えりちや

気になってたずねても 
誰にも知らんと言われなんやろ
と思いつづけて居ました❗
写真みつけてこれだと思いました❕スッとしました
教えて下さって嬉しいです
ありがとうご

02/13 22:26 みーちゃん

みーちゃんさん、saraiです。

あの謎の建物は雄琴沖総合自動観測所という施設で琵琶湖の水質を測定しているそうです。

https://www.water.go.jp/kansai/biwako/html/repo

02/13 21:40 sarai

ずーと前にうきみどうに行きました
やはり、琵琶湖の真ん中の建物が何なのか気になったままです
分かりましたか
教えてください

02/13 20:54 みーちゃん

五十棲郁子さん、コメントありがとうございます。

水道水のこと、tap waterって言うんですね。知らなかった。単にwaterで通していました。ましてや、フランス語はほとんど

02/11 00:12 sarai

フランスも地方へ行くと英語が通じないでしょう。tap water ぐらいフランス語で言えないとね。

02/10 12:54 五十棲郁子
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