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究極のピアニズム! ユリアンナ・アヴデーエワ ピアノ・リサイタル@東京オペラシティ コンサートホール 2019.2.19

ユリアンナ・アヴデーエワのソロ・ピアノ・リサイタルはおよそ2年半ぶりに聴きます。その間、グリーグのピアノ協奏曲とブラームスのピアノ協奏曲第1番は聴きましたから、ちゃんと毎年、彼女のピアノ演奏には接しています。それにしても、聴くたびにそのピアノ演奏に感銘させてくれるアヴデーエワは凄すぎるピアニストです。今日も素晴らしい演奏に恐れ入りました。ショパンも最高だし、シューマンも見事だし、シューベルトも聴き応え十分。さらにアンコールも素晴らしい。これ以上の満足はないピアノ・リサイタルでした。

前半のショパンはまさに有無を言わせぬ極上の素晴らしさ。マズルカ第36番Op.59-1の冒頭の美しいタッチの響きを聴いただけで心をどこかに持っていかれます。そもそもsaraiはそれほどのショパンのファンでないのに、この演奏を聴いていると、俄かのショパンのファンになってしまいます。本当はショパンって、こんな音楽なのねって再認識してしまいます。マズルカ第36番のロマンティックな美しさ、第37番の流れるような高揚、第38番はあの有名な旋律が魅惑的に響きます。繊細で微妙なルパートに心を奪われる思いです。それにしてもアヴデーエワのピアノの響きは美し過ぎます。神によって、無限の天分を与えられたピアニストとしか表現のしようがありません。
次のピアノ・ソナタ第3番はさらに素晴らしい演奏。生涯最高のショパンを聴きました。とりわけ、第1楽章の素晴らしさ。下降音型の第1主題の劇的な表現の後に演奏される第2主題のロマンティックな響きには心が溶けていきそうです。ロマンを極め尽くすような音楽に魅了されます。軽やかな第2楽章に聴き入っていると、休みなしに第3楽章の導入部に入ってしまいます。そして、実に抒情的な主題が美しく歌われます。長大な中間部も抒情を極めますが、その後に回帰する最初の主題が左手の印象的なバスを伴って、美しさの限りを極めていきます。何という素晴らしい演奏でしょう。これがショパンの音楽なのですね。第4楽章も間を置かずに続きます。高揚感のある見事なフィナーレでした。これ以上のショパンを聴くことはないと思わせるような究極の演奏でした。

後半はシューマンです。シューマンがクララに愛を捧げ始めていた頃の作品のひとつです。幻想小曲集はその題名のごとく、シューマンのロマンが結実したような作品です。アヴデーエワは抒情と情熱の交錯する複雑な音楽を素晴らしいピアニズムで表現していきます。8曲とも集中力の高い演奏で見事としか言いようがありません。第1曲の《夕べに》の美しい響きにはうっとりと聴き入りました。第3曲の《何故?》の繊細さを極めた抒情はピアノ演奏の奥義を見た思いです。第5曲の《夜に》の熱い思いはシューマンのクララへの愛ゆえかと想像させられるような情熱的な表現の演奏です。第8曲の《歌の終わり》のフィナーレの静謐さは実に微妙な表現の演奏によって、聴く者の心を酔わせます。素晴らしいシューマンでした。そう言えば、彼女のシューマンを聴くのは初めてです。これからはどんなシューマンを聴かせてくれるのでしょう。

最後はシューベルトの幻想曲ハ長調「さすらい人」です。テンションの高い素晴らしい演奏でした。しかし、予習に聴いた田部京子nの演奏が素晴らし過ぎて、それには及ばない感じです。やはり、シューベルトには詩情が感じられないと感動できません。そのsaraiの気持ちを見透かしたようにアンコールで素晴らしい楽興の時第3番を演奏してくれました。こんな素敵な楽興の時を聴いたことがありません。力が抜けた美しい響きでシューベルトの奥深さを表現してくれます。有名な通俗曲をこういう高いレベルで芸術的に演奏するのは並みのピアニストにできることではありません。やはり、アヴデーエワは天才的なピアニスト! バッハのイギリス組曲第2番の第5曲のブレーは前回のブラームスの協奏曲のアンコールでも聴きました。何度聴いても素晴らしいです。バッハ弾きに特化しても素晴らしいピアニストになりそうですが、多才過ぎて、そうもいかないのが残念ではあります。で、最後のシメはやはりショパン。とっても素敵なマズルカでした。

今回もアヴデーエワは最高のピアノを聴かせてくれました。できれば、毎年、日本でソロのリサイタルを開いてもらいたいですね。 → KAJIMOTO殿


今日のプログラムは以下です。

  ショパン:3つのマズルカ Op.59
  ショパン:ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 Op.58

   《休憩》

  シューマン:幻想小曲集 Op.12
  シューベルト:幻想曲 ハ長調 D760「さすらい人」

   《アンコール》

    シューベルト:楽興の時 D 780 から 第3番ヘ短調
    バッハ:イギリス組曲第2番 イ短調 BWV 807 から ブレーI アルテルナティヴマン (Bourrée I alternativement)
    ショパン:マズルカ 第7番 ヘ短調 Op.7-3

最後に今回の予習について、まとめておきます。

ショパンの3つのマズルカ Op.59は、以下のCDで予習しました。

  マルタ・アルゲリッチ 1965年録音 ハイレゾ
  
1965年のショパン・コンクールを制した直後の録音です。清新な演奏ですが、アルゲリッチにしては、まだ、演奏に磨きがかかったというレベルではありません。

  アルトゥール・ルービンシュタイン 1965年12月27~30日、1966年 1月3日、ニューヨーク、ウェブスター・ホール

いかにも手の内にはいっているという感じの明快な表現の納得の演奏です。やはり、ルビンシュタインはショパンの達人ですね。反面、スリリングな魅力には欠けますが、まあ、そういうものでしょう。これから、ルビンシュタインの演奏もぽちぽち聴いていきましょう。


ショパンのピアノ・ソナタ第3番は以下のCDで予習しました。

  マルタ・アルゲリッチ 1967年録音

さきほどの1965年のショパン・コンクールを制した直後にも録音していますが、これはその2年後の録音です。わずか2年で驚異的な進化を果たしています。見事な演奏です。

  アルフレッド・コルトー 1933年録音

これは昔から有名な録音です。細部まで磨き上げたインスピレーションに満ちた名演です。


シューマンの幻想小曲集 Op.12は以下のCDで予習しました。

  マルタ・アルゲリッチ 1978年5月7日 アムステルダム・コンセルトヘボウ ライヴ録音

アルゲリッチでライヴということでとっても熱い演奏です。アルゲリッチのこの曲への愛が感じられるような演奏に痺れます。

 クラウディオ・アラウ 1972年3月 ドイツ セッション録音

アラウらしい重厚でゆったりとした、素晴らしい響きの演奏です。不協和音を明確に響かせているのが印象的です。これはこれで聴き惚れてしまいます。

 アルフレッド・ブレンデル 1982年3月23-27日  ロンドン セッション録音

ブレンデルの繊細で軽いタッチで極めて美しい響きの演奏が光ります。アルゲリッチの熱さともアラウの重厚さとも異なるウィーン風とでもいうような素晴らしい演奏です。


シューベルトの幻想曲ハ長調「さすらい人」は以下のCDで予習しました。

  田部京子 2002年10月6-8日 群馬 笠懸野文化ホール

シューベルトと言えば、田部京子。詩情にあふれた素晴らしい演奏です。これを聴くと、アヴデーエワの本番が聴けなくなりそうです。

 アルフレッド・ブレンデル 1971年11月13日~19日 ザルツブルク、モーツァルテウム

美しい響きのいい演奏ですが、田部京子の最高の演奏を聴いてしまうと何か、ものたりない感じになります。




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ピアニッシモが心に沁みるブラームスのピアノ協奏曲・・・アヴデーエワ&フルシャ&バンベルク交響楽団@サントリーホール 2018.6.26

今日は久しぶりにお気に入りのピアニスト、ユリアンナ・アヴデーエワの演奏を聴きました。彼女はこれまであまりブラームスのピアノ協奏曲は弾いてこなかったそうですが、よほど、この日に向けて、この曲を研究し、練習してきたんでしょう。素晴らしい仕上がりぶりでした。
長大な第1楽章のどのパッセージも魅惑的な演奏で、そのロマンティックさときたら、これまで聴いたことがない素晴らしさ。かと言って、メロー過ぎるわけではなく、若き日のブラームスの音楽の枠にきっちりと収まっています。その美しさの極みのようなピアノにぴったりとオーケストラパートを寄り添わせるヤクブ・フルシャの指揮も見事です。バンベルク交響楽団はこれまで色んな事情があって、生で聴くのは多分、今日が初めてのような気がします。ブロムシュテットとのブルックナーの印象が強いせいか、ドイツ的な重心の低い響きを予想しましたが、モダンで美しい響きなのでびっくりです。次第に3者の息がぴったりと合ってきて、えもいわれぬブラームスのロマンティックな音楽が展開されます。いつもはこの曲はシュトルム・ウント・ドランクを思わせる強烈さと勢いを感じさせられますが、アヴデーエワが主導するロマンの香りの高い音楽で違う曲を聴いているように感じます。こんなに美しい第1楽章は初めて聴きました。そして、第2楽章に入ります。アヴデーエワの繊細さを極めつくしたようなピアニッシモの微妙な響きにただただ魅了されます。そのアヴデーエワのピアニッシモ以上に、フルシャはバンベルク響から抑えたピアニッシモの極みのような、かすかに聴こえるか、聴こえないような極上の響きを引き出します。音楽の美しさはピアニッシモにこそあると言ったのは故吉田秀和氏だったでしょうか。彼はそのピアニッシモをウィーン風と表現していました。ピアニッシモの競演が続く第2楽章は祈りの音楽というよりも、ブラームスのロベルト・シューマンへの哀悼の気持ちだけでなく、悲しみにくれるクララ・シューマンへの密やかな思いがやるせなく詰め込まれた愛情表現のように感じてしまいます。アヴデーエワはきっと、そんな風にピアノを弾いていたんではないかしら。第3楽章に入っても、この素晴らしかった第2楽章との心の切り換えができません。それはアヴデーエワも同じではなかったんでしょうか。第3楽章も半ばになって、ようやく、ノリの良い音楽にスイッチがはいります。ピアノとオーケストラが一緒になって、推進力のある音楽を展開していきます。フィナーレはピアノとオーケストラのかけあいが圧巻でした。
期待はしていましたが、アヴデーエワがここまでブラームスを弾きこなすとは思っていませんでした。素晴らしいブラームスが聴けました。先週も同じ曲を聴きましたが、完成度も音楽性もまるで比べ物になりません。現在、saraiの中ではピアノの3強はアンドラーシュ・シフ、田部京子、アンジェラ・ヒューイットですが、アヴデーエワも肉薄しています。来春、待ちに待ったアヴデーエワの来日ピアノ・リサイタルがあるとのこと。聴き逃がせません。そうそう、アヴデーエワがアンコールで弾いたバッハのイギリス組曲、とっても凄かった! こんなノリでバッハを弾けるのはアンデルジェフスキーくらいですが、さらに魅惑的です。アヴデーエワもどんどんレパートリーが広がりますね。

後半のドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」ですが、以前、フルシャがそのときの手兵だったプラハ・フィルと演奏したコンサートを聴いたことが思い出されます。今日のバンベルク響とはオーケストラのアンサンブル力が比べ物になりませんが、プラハ・フィルは何と言うか、ひたむきさがありました。音楽を超える何かです。今日のバンベルク交響楽団も素晴らしい演奏でしたが、まだ、フルシャがドライブしきれていないようにも感じました。ただ、今日のsaraiは体調があまりよくなくて、前半のブラームスで体力を使い果たして、後半は集中力の切れた状態でした。これ以上の感想は明後日に横浜みなとみらいホールで第8番、第9番を聴いた後で書くことにします。ところで今日の第2楽章冒頭でのイングリッシュ・ホルンの見事な独奏は若い日本人女性でしたね。あれは誰?

アンコールは予期したスラヴ舞曲ではなく、ハンガリー舞曲。今日演奏されたオーケストラ版のドヴォルザークの編曲したものかな? だから、ドヴォルザークの交響曲の後でアンコール曲にしたのかしら。


今日のプログラムは以下のとおりでした。

  指揮:ヤクブ・フルシャ
  ピアノ:ユリアンナ・アヴデーエワ
  管弦楽:バンベルク交響楽団

  ブラームス:ピアノ協奏曲第1番 ニ短調 Op.15
   《アンコール》
     J.S.バッハ:イギリス組曲第2番 イ短調 BWV807より第5曲ブーレ(ピアノ・アンコール)

   《休憩》

  ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 Op.95 「新世界より」

   《アンコール》
     ブラームス:ハンガリー舞曲第17番 嬰ヘ短調
     ブラームス:ハンガリー舞曲第21番 ホ短調 – ホ長調

最後に予習について、まとめておきます。

ブラームスのピアノ協奏曲第1番を予習したCDは以下です。

  エレーヌ・グリモー、クルト・ザンデルリンク指揮シュターツカペレ・ベルリン 1997年 ベルリン、シャウシュピールハウス ライヴ録音
  エミール・ギレリス、オイゲン・ヨッフム指揮ベルリン・フィル 1972年

グリモー盤はハイレゾで、ギレリス盤はLPレコードで聴きました。演奏は悪くはないですが、満足もしていません。今日のアヴデーエワの演奏が上回ります

ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」を予習したCDは明後日の横浜みなとみらいホールでのコンサートの記事でまとめてご紹介します。



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アヴデーエワの圧倒的なグリーグに感銘!読売日本交響楽団@みなとみらいホール 2017.4.23

いやはや、今回もアヴデーエワは圧巻の演奏を聴かせてくれました。こういう演奏を期待して、思わず、読売日本交響楽団のみなとみらいホリデー名曲シリーズの年間会員チケットを購入しましたが、見事に期待に応えてくれました。あの伝説的なリパッティにも匹敵する天才的なひらめきに満ちた演奏です。ひとつ間違えれば、崩壊するかもしれないような奔放さでしたが、最後まで集中力を持続して、熱い魂の燃焼を聴かせてくれました。ロマンティックであり、ヴィルトゥオーソ的でもある、鉄壁の演奏です。いくら褒め称えても褒め過ぎにならない素晴らしい演奏でした。些細なミスなど何の意味もありません。しかし、グリーグのピアノ協奏曲って、こんなに充実した音楽だったんですね。実はsaraiはこの曲に対して、苦い記憶を持っていたんです。それはsaraiが子供のときに遡ります。小学校(あるいは中学校?)で毎朝、ひどい音のスピーカーで流されていたのがこの曲だったんです。冒頭の妙に張り切ったようなフレーズがいやでいやでたまりませんでした。これがある意味、トラウマになっていました。今日のアヴデーエワの演奏でそれがようやく払拭されました。もちろん、いかにアヴデーエワに期待していたと言っても、グリーグのピアノ協奏曲を聴くかどうかは迷いに迷った挙句のチケット購入だったんです。しかし、トラウマは払拭されたものの、今後、このアヴデーエワの会心の演奏を上回る演奏をを聴けるような気がしないのも事実です。新たな壁ができて、結局、グリーグのピアノ協奏曲はsaraiに縁のない曲なのかもしれません。

指揮のサッシャ・ゲッツェルですが、昨年、神奈川フィルでマーラーの交響曲第5番の迷演を聴いて、今日もまったく期待していませんでした。ところが冒頭のプログラム、ウェーバーの歌劇「魔弾の射手」序曲がとても素晴らしい演奏でびっくり。オーケストラが変わっただけで、こうも変わるものかと驚かされます。読売日本交響楽団の独特の響き、特に低弦の充実ぶりには魅力を禁じ得ませんが、そのオーケストラを見事にドライブするゲッツェルの指揮も魅力的です。あの悪夢のようなマーラーはゲッツェルと神奈川フィルのあまりの相性の悪さ故の結果だったんでしょうか。グリーグのピアノ協奏曲でも見事なサポートぶりで、奔放なアヴデーエワの演奏にぴったりと寄り添ったオーケストラの演奏を聴かせてくれました。
圧巻だったのは後半のドヴォルザークの交響曲第7番です。終始、素晴らしい響きで魅了してくれました。まるでブラームスの交響曲第2.5番という感じです。これは褒め言葉ですよ。美しい響きのドヴォルザークにすっかり満足してしまいました。とりわけ、第3楽章と第4楽章に感銘を受けました。次は是非、ブラームスを聴かせてほしいところです。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:サッシャ・ゲッツェル
  ピアノ:ユリアンナ・アヴデーエワ
  管弦楽:読売日本交響楽団 長原幸太(コンサートマスター)

  ウェーバー:歌劇「魔弾の射手」序曲
  グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調 Op.16
   《アンコール》チャイコフスキー:瞑想曲(18の小品 Op.72 第5曲)

   《休憩》

  ドヴォルザーク: 交響曲第7番 ニ短調 Op.70




アヴデーエワの演奏に感激するあまり、CDを買い求め、彼女のサインをいただきました。(割と素直なサインですね。)

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素晴らしい演奏でしたと感想を述べると、彼女はにっこりしながら、Thank you!という言葉をかけてくれました。今や、彼女はsaraiのお気に入りピアニスト(海外)のベスト3の一人です。残りの二人はアンドラーシュ・シフとマレイ・ペライアです。それにしても今年はピアノの当たり年。既にシフとアヴデーエワの最高の演奏を聴き、今後、アンジェラ・ヒューイット、グリゴリー・ソコロフも初聴きの予定です。あっ、田部京子のシューベルトも聴きます。なんだかんだ言っても、saraiはピアノが大好きなんです。


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究極の“美”!!ユリアンナ・アヴデーエワ ピアノ・リサイタル@横浜みなとみらいホール 2016.11.3

このユリアンナ・アヴデーエワの素晴らしさは分かっていましたが、今日の超絶的な美しさには参りました。大変なピアニストです。saraiがこれまでに実演で聴いたピアニストの中で、ピアノから、これほどの“美”を紡ぎ出してくれる人はほかに誰もいません。今回の来日公演も本来は追っかけをしないといけなかったようです。今日の公演を聴くだけではもったいなかったと痛感しました。

前半のベートーヴェンはまさにベートーヴェンらしく、きっちりした演奏。とりわけ、《創作主題による32の変奏曲》と《ピアノ・ソナタ第26番 「告別」》は素晴らしい演奏で、心底、圧倒されました。ベートーヴェンという枠から逸脱することなく、彼女の音楽性を十分に発揮した見事な演奏でした。彼女のベートーヴェンは初めて聴きましたが、現存するベートーヴェン弾きの大家とも肩を並べる、高いレベルの演奏です。どうして、彼女はこんな風に何でも弾きこなせるのでしょう。音楽の芯がきっちりとできあがっているので、どんな作曲家の作品にも対応できるのかなと想像してしまいます。

でも、圧巻だったのは後半のリストです。前半のベートーヴェンは単なる前菜のようなものだったと感じさせるほどの凄まじく素晴らしい演奏でした。リストの最初の3曲は晩年の神秘主義的な作品。ワーグナーの死に絡んだ作品ですが、以前も同時期の別の3曲を聴いたことがあります。よほど、これらの珍しい曲に思い入れがあるんでしょう。沈み込んで、無調性も感じられる暗い音楽です。若い彼女がそれらを見事に表現します。そして、その3曲に続けて、間を置かず、《ピアノ・ソナタ ロ短調》を弾き始めます。フォルテの部分の凄まじい演奏、メロディアスな部分の極上の美を感じさせる演奏、それらが交錯して、ピアノ芸術の極限を感じさせます。saraiの頭の中はピアノの美しい響きで満たされて、幸福感の絶頂に至ります。これ以上のピアノ演奏はあり得ないと断じたい思いです。予習で聴いたクラウディオ・アラウの新旧録音(1970年、1985年)も大変素晴らしい演奏でしたが、今日のアヴデーエワの演奏はそれをはるかに凌駕する演奏です。ピアノ演奏の“美”とは、こういうものかと実感させられました。まだ、30歳そこそこのピアニストがここまでの高みに上りつめたとは大変な驚きです。《ピアノ・ソナタ ロ短調》は30分ほどの大曲ですが、終始、彼女のピアノの響き、美しい体の動作に魅了され続け、幸せな時間を過ごしました。アヴデーエワは間違いなく、ピアノの演奏技術と類稀なる音楽性を併せ持ったスーパーピアニストです。

アンコールのショパンも同じく、“美”そのものを感じさせる見事な演奏。流石に最後の英雄ポロネーズは少し乱暴な演奏になりましたが、お疲れだったのでしょう。

音楽が“美”の追求であるとすれば、今日のリサイタルは今年聴いた数々のコンサートの頂点に立つものでした。とても素晴らしい音楽に接することができて、とても幸せです。

今日のプログラムは以下です。

  ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第27番 ホ短調 op.90
  ベートーヴェン:創作主題による32の変奏曲 ハ短調 WoO.80
  ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第26番 変ホ長調 op.81a「告別」

   《休憩》

  リスト:悲しみのゴンドラⅠ
  リスト:凶星!
  リスト:リヒャルト・ワーグナー - ヴェネツィア
  リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調

   《アンコール》

    ショパン:ノクターン第8番 変ニ長調 op.27-2
    ショパン:マズルカ 変ロ長調 op.17-1
    ショパン:ポロネーズ第6番 変イ長調 「英雄」 op.53

今度の来日では、どういう喜びを与えてくれるでしょうか。


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詩情漂うショパンの響き、アヴデーエワ&ソヒエフ&トゥールーズ・キャピトル管@ミューザ川崎 2015.3.2

昨年聴いたユリアンナ・アヴデーエワのピアノ・リサイタルは素晴らしい演奏に心が震えました。それ以来、彼女はもう聴き逃せないピアニストになりました。
今日は彼女の得意のショパンです。期待するなと言うほうが無理な話。そして、今日の演奏は期待通りの素晴らしい演奏で、またまた、心が打ち震えました。彼女のショパンは聴きどころ満載です。なかでも第2楽章の詩情あふれる演奏には感動しました。聴き尽した感のあるショパンのピアノ協奏曲ですが、アヴデーエワが弾くと新鮮な音楽が心に響いてきます。どこにその演奏の秘密があるのかは分かりませんが、彼女の心の奥底から湧き出してくる音楽の悦びや感動がsaraiの心に共鳴するとしか表現できません。彼女の心にはミューズが住み着いているのか、あるいは彼女自身がミューズなのか、いやはや、大変なピアニストです。アンコールで弾いたショパンの大円舞曲の自由奔放とも思える演奏には圧倒される思いでした。これって、本当にショパンの大円舞曲の楽譜通りの演奏なのって感じに思えます。こんな演奏は聴いたことありません。昨年のリサイタルのアンコールでも別の円舞曲の演奏にびっくりした記憶があります。是非、ワルツの全曲を聴いてみたいものです。とてつもないリサイタルになりそうな気がします。そうそう、ソヒエフの指揮するオーケストラの演奏もかっちりした演奏でアヴデーエワの自由闊達な演奏を支えて立派な演奏でした。

前半のプログラムだけで超満足。後半のプログラムはおまけのようなものだと思っていましたが、これがなかなか素晴らしい。ソヒエフという人はオーケストラから多彩な響きを引き出して、見事にまとめあげる天分に恵まれているようです。以前、ウィーンの楽友協会で聴いたウィーン・フィルとの《幻想交響曲》も魅惑的な響きで魅了してくれたことを思い出します。ウィーン・フィルならば、造作もなく美しい響きが引き出せそうなものですが、やはり、指揮者の力量も重要な要素。今日の演奏を聴いて、ソヒエフの指揮でこそ、ウィーン・フィルもあの《幻想交響曲》の見事な演奏を聴かせてくれたことを痛感しました。それほど、今日の『シェヘラザード』も見事な演奏でした。まず、オーケストラの響きが多様な色彩感にあふれています。細かいところでの表情付けも見事。弦や木管の繊細な美しさから、金管の迫力ある響きまで、オーケストラから極限まで静と動の素晴らしい響きを引き出していました。初めて、ソヒエフが大変な逸材であることに気が付きました。ところで今日の『シェヘラザード』で残念だったのが一点。それは美人コンミスの独奏。出だしの独奏がもう一つの響き。天は二物を与えなかったのかと思いました。ところが実はこの後、しり上がりに調子を取り戻し、最後の独奏では実に美しい響き。最初からペースを上げて、美しい独奏を聴かせてくれなかったのが今日の唯一の不満でした。アンコールの《カルメン》の間奏曲では、ハープとフルートソロの演奏の美しかったこと。心を洗われる音楽とはこういう音楽です。アンコールを含めて、オーケストラの多彩な響きに魅了されました。今日のトゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団は世界のTop10のオーケストラと並ぶような美しい響きでsaraiを楽しませてくれました。

ところで、今日のプログラムは以下です。

  指揮:トゥガン・ソヒエフ
  ピアノ:ユリアンナ・アヴデーエワ
  管弦楽:トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団

  ショパン:ピアノ協奏曲第1番ホ短調 Op.11
   《アンコール》ショパン:ワルツ第5番変イ長調 Op.42

   《休憩》

  リムスキー=コルサコフ:交響組曲『シェヘラザード』Op.35

   《アンコール》
    ビゼー:歌劇《カルメン》より、第3幕への間奏曲
    チャイコフスキー:バレエ音楽《くるみ割り人形》より、トレパック
    ビゼー:歌劇《カルメン》より、第1幕への前奏曲


アヴデーエワとソヒエフのコンビはベルリンのオーケストラと今秋、再び、来日するそうです。ただ、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番を演奏するそうですから、ちょっと、躊躇しています。ミューズの舞い降りたアヴデーエワならば、きっと素晴らしい演奏をしそうな気がしますが、できたら、シューマンとかブラームスとかモーツァルトとかを演奏してほしいところです。


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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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昨日投稿した記事の一部に誤りがありました。ドイツ騎士団の中庭はパスしないで、ちゃんと見ていました。追記・修正しました。申し訳ありません。

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えりちゃさん、saraiです。お久しぶりです。

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07/20 12:41 sarai

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はじめまして。ブログ拝見させていただきました。私は、個人ブログを運営しているyuichironyjpと申します。フリーランサーとして活動しており、フリーランスで稼ぐ方法や、

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04/23 21:47 

マーラー6番ですか・・・ハンマー打撃は勘弁してほしいものです。あったとしても、3回目の打撃だけは・・・

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