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圧巻のバルトークに感動 アリーナ・イブラギモヴァ・無伴奏ヴァイオリン・リサイタル@王子ホール 2022.9.8

アリーナ・イブラギモヴァは5年前に都響との共演でバルトークのヴァイオリン協奏曲第2番を聴き、何か不思議な魅力にとらわれました。以来、実演を聴きたいと思っていたのですが、コロナ禍もあり、その機会がなく、CDでその演奏をよく聴くようになっています。また、彼女が率いるキアロスクーロ四重奏団の演奏もCDでよく聴きます。saraiにとっては今や目を離せないメジャーな存在になってきています。今日、ようやく、彼女のリサイタルを聴けます。今後、どんどん聴けることになるでしょう。今日も期待に違わぬというか、期待以上の演奏でした。今や、世界のヴァイオリニストでトップレベルと言っても過言でありません。バッハからバルトークまでここまで弾ける人はいないでしょう。

最初はベリオのセクエンツァ Ⅷ。これは譜面を見ての演奏。それはそうでしょう。演奏を始めると、絶句します。超絶的な難曲をたやすく弾きこなします。それも実に迫力のある演奏です。動と静を交錯させながら、美しい響きと激しい響きを見事に両立させて、ぐいぐいと心に迫ってきます。その素晴らしさに圧倒されているうちに音楽は不意に終わります。現代のシャコンヌを聴いた思いになりました。うーん、凄い!

次はバッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第2番。もちろん、譜面は置きませんね。実に安定した美しい演奏です。ある意味、少し曲に距離をとった演奏とも言えます。この曲はヴァイオリニストにとって聖典とも言えるものですから、あえて、音楽をリスペクトして、自分の気持ちを入れ込み過ぎないようにあくまでも主役はバッハの音楽自体に置こうとしているのでしょう。第5曲のシャコンヌに至ると、音楽自体が輝きを増します。特に後半になると、音楽が高潮していきます。その頂点で音楽は終了。もっと気魄を込めた演奏もあるでしょうが、そうすることは恐れ多いとも言えますね。この路線でさらに完成度を高めていくのでしょう。音楽の難しさを感じる演奏でした。

休憩後、ビーバーの「ロザリオのソナタ」からのパッサカリア。これは譜面を見ながらの演奏。とても気合の入った演奏です。ベリオのセクエンツァと同様に動と静を交錯させた思い切りのある素晴らしい演奏です。とてもバロック音楽とは思えない自由奔放な演奏です。もちろん、古典の様式美はあり、素晴らしい演奏です。彼女の演奏でこの「ロザリオのソナタ」全曲を聴いてみたものです。これも聴き入っているうちに不意に終わります。どの曲も魅了されて、集中して聴いています。

素晴らしい演奏が続きますが、もう最後のバルトークの無伴奏ヴァイオリン・ソナタです。これは何とも凄い演奏。このバルトークの最晩年の最高傑作も遂にこんなに完璧に演奏される日がやってきたという深い感慨を覚えます。実に新鮮でエネルギーに満ちて、病に侵されたバルトークが渾身の力で自らを奮い立たせて書き上げた音楽の根幹に初めて触れる思いになります。猛烈な力に満ちた第1楽章と第2楽章の凄まじい演奏に身震いしていたら、第3楽章はバルトーク特有の夜の音楽。もう現世を離れて、闇の世界で哀感に満ちた音楽です。イブラギモヴァのヴァイオリンはとても美しく冴え渡ります。これ以上は誰も弾けないでしょう。第4楽章はバルトークの世界を完結させるような圧巻の演奏です。バルトークに完璧に共感して、あり得ないような演奏をイブラギモヴァは聴かせてくれました。バッハの無伴奏ソナタ&パルティータ以降、最高に昇華したバルトークの無伴奏ソナタの何たるかを我々に提示してくれるような至高の名演でした。凄い演奏に驚愕しました。

先日の都響とのブラームスのコンツェルトは聴き逃がしましたが、今後は最優先で聴くべき音楽家の一人になりました。コパチンスカヤとは感性が異なりますが、不思議な魅力では共通するものを感じます。


今日のプログラムは以下のとおりでした。

  ヴァイオリン:アリーナ・イブラギモヴァ

  ベリオ: セクエンツァ Ⅷ
  J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第2番 ニ短調 BWV1004

   《休憩》

  ビーバー:「ロザリオのソナタ」より パッサカリア ト短調 
  バルトーク:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ Sz117

   《アンコール》なし


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のベリオのセクエンツァ Ⅷを予習したCDは以下です。

  ジャンヌ=マリー・コンケール 1994年10月~1997年7月 パリ、IRCAMスタジオ セッション録音

アンサンブル・アンテルコンタンポランの達人たちの演奏、そして、ベリオ自身の監修によるセクエンツァ1~13に含まれるものです。文句ない演奏です。


2曲目のバッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第2番を予習したCDは以下です。

  アリーナ・イブラギモヴァ 2009年2月 ロンドン、ヘンリー・ウッド・ホール セッション録音

今日演奏するイブラギモヴァの13年前の録音です。実に見事な演奏に魅了されました。


3曲目のビーバーの「ロザリオのソナタ」からのパッサカリアを予習したCDは以下です。

  アンドルー・マンゼ 003年1月4-7日 ロンドン セッション録音

これは感動的な素晴らしい演奏です。深い祈りや聖的な何かを感じます。


4曲目のバルトークの無伴奏ヴァイオリン・ソナタを予習したCDは以下です。

  ギドン・クレーメル クレーメル&アルゲリッチ/ベルリン・リサイタル 2006年12月、ベルリン、フィルハーモニー ライヴ録音

2006年12月、ベルリン・フィルハーモニーでのライヴ・リサイタルの録音です。クレーメルの気魄の演奏です。



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       イブラギモヴァ,  

不思議な魅力のイブラギモヴァ・・・東京都交響楽団@サントリーホール 2017.10.25

バルトークのヴァイオリン協奏曲第2番は正直なところ、ちゃんとついていけたわけではありません。アリーナ・イブラギモヴァのヴァイオリンはそれほど美音ではないのですが、何かくぐもった響きの先に凄いものがあるような感じを抱きつつ、それが何なのかがよく分からないまま最後までいってしまいました。静と動が交錯する中、動は迫力のある響きでちゃんと受け止めることができますが、静は不思議な精神性というか、幻想性が漂う高度に芸術的とも思える演奏で、なかなか、その音楽の核心をつかみ取ることができませんでした。大好きなバルトークで素晴らしい演奏のようにも思えたのに、saraiの感受性が不足していたとしか言いようのない、悔しい聴き方になってしまいました。都響の演奏はとても美しい響きで、ある意味、イブラギモヴァのヴァイオリンと音楽性の違いがあったのですが、それはそれで却って面白い対照になっていました。彼女のヴァイオリンをもう一度聴き直す機会があればと反省する結果になりました。

後半はフランクの交響曲 ニ短調。小泉和裕の指揮も手堅く、ロマン派の香り高い、美しい響きの演奏でした。大変、満足しました。とりわけ、弦と木管の響きに都響のレベルの高さを感じずにはいられせんでした。

今日のプログラムは以下のとおりでした。

  指揮:小泉和裕
  ヴァイオリン:アリーナ・イブラギモヴァ
  管弦楽:東京都交響楽団

  バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第2番 Sz.112

   《休憩》

  フランク:交響曲 ニ短調

ところで都響の来年度のプログラムが送られてきましたが、なんとも魅力に欠ける内容にがっくり。来季も定期の会員を続けるかどうか迷っています。読響と東響に鞍替えしようかとも本心で思っています。都響のアンサンブルの良さには満足しているのですけどね。2010年に定期会員になって、以来8年間聴き続けてきただけに残念な気もしますが・・・。



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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
たまには、旅ブログも書きます。

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金婚式、おめでとうございます!!!
大学入学直後からの長いお付き合い、素晴らしい伴侶に巡り逢われて、幸せな人生ですね!
京都には年に2回もお越しでも、青春を過ごし

10/07 08:57 堀内えり

 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

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