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ウィーン・フィルの豊穣な音の奔流を見事にコントロールしたソヒエフの音楽の才に驚嘆 色彩感あふれる絵巻物のようなR.シュトラウスの《ツァラトゥストラはかく語りき》に没我の心地@サントリーホール 2023.11.19

ウィーン・フィルはいつ聴いても素晴らしい演奏を聴かせてくれますが、今日の演奏のように冒頭からアンコールに至るまで最高の状態で演奏してくれたのは覚えていません。多分、ソヒエフの指揮が実に丁寧で的確、かつ、素晴らしかったからだと思います。明日聴くベルリン・フィルも首席指揮者はロシア人のペトレンコなのだからということもありませんが、ウィーン・フィルも久々に首席指揮者として、ロシア人のソヒエフを据えればよいとsaraiは強く思いました。実はソヒエフがウィーン・フィルを振るのはちょうど10年前にウィーン楽友協会グローサーザールで聴いています。当時はソヒエフは30代半ばの若手でしたが、物凄い色彩感あふれるベルリオーズの幻想交響曲を振って、あまりの凄さにsaraiは高笑いしました(笑い)。

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そして、10年ぶりに聴いた今日の演奏はさらに高レベルのものになっていました。ですから、ウィーン・フィルの首席指揮者に推挙したわけです。ウィーン・フィルは実質的な首席指揮者だったカール・ベームが1981年に亡くなってからは決まった首席指揮者はいません。カール・ベームの前はフルトヴェングラーだったことを考えれば、そうそう、そのあたりの指揮者が重責を担うわけにはいきませんけどね。

ともあれ、今日の最初の曲、R. シュトラウスの交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』は冒頭のトランペットの響きが美しく、ぐっと惹き付けられます。《2001年 宇宙の旅》で有名になった冒頭部分が圧巻の演奏で背中がぞくぞくします。そして、続くVon den Hinterweltlern(世界の背後を説く者について)にはいると、ウィーン・フィルのまろやかな弦の響きで「人間」を象徴する“憧憬の動機”が何とも魅力的に奏でられます。コラールの陶酔の響きに魅了されて、もう、ウィーン・フィルの世界にどっぷりと引き込まれます。ソヒエフの指揮、表現も見事としか言えません。夢のような世界を彷徨いつつ、Von der Wissenschaft(学問について)では弦の対位法的展開にまたまた、魅了されて、第1ヴァイオリンの奏でる高音の美しさはウィーン・フィルを体現するものです。続くDer Genesende(病より癒え行く者)の長大なパートを味わいながら、次も長大なDas Tanzlied(舞踏の歌)に入ります。ウィーン・フィルの面目躍如たるワルツのリズムを刻みつつ、コンサートマスターのライナー・ホーネックの独奏ヴァイオリンが美しく響きます。昔、ウィーン・フィルでこの曲を聴いたときはライナー・キュッヒルの独奏ヴァイオリンだったことを思い出します。そして、音楽が高潮していき、突如、真夜中の12時を告げる鐘の音が響きます。うーん、これは夢のような時間が終わりを告げるようなシンデレラの世界だななんて、馬鹿なことを思いつつ、音楽は終焉していきます。第1ヴァイオリンがロ長調の和音(「人間」)を奏で、低音のハ音(「自然」)と結局は調和することなく、美しくも暗黒の未来を象徴しながら、音が途絶えます。凄い演奏でした。交響詩としては、明日、ベルリン・フィルで聴く《英雄の生涯》と肩を並べる傑作であることを実感しました。

休憩後、おまけのようなドヴォルザークの交響曲第8番がウィーン・フィルの贅沢過ぎる音響で奏でられました。saraiが子供の頃から愛する曲です。とりわけ、第3楽章の舞曲の高弦と木管の美しさは究極の響きです。ソヒエフの巧みな表現で各楽章が素晴らしく演奏されます。そして、第4楽章のコーダの盛り上がりの凄まじさはどうでしょう。もったいないような演奏に恐れ入りました。

アンコールは無論、ウィンナーワルツ。これは凄いね! 文句なし。

今回がウィーン・フィルを聴く33回目のコンサートでした。ほとんどはこの10年間にウィーン、ザルツブルク、東京で聴きました。もっとも、実質、ウィーン・フィルのウィーン国立歌劇場はほぼ40回聴いているので、やっぱり、ウィーン・フィルはオペラを聴くオーケストラかな。オペラはこの30年間、まんべんなく聴いてきましたが、もう、ウィーンに行かないので、これからはウィーン・フィルのコンサートを東京で聴くのみですね。

明日からはベルリン・フィルを聴くモードに移行します。これもワクワク。


今日のプログラムは以下のとおりです。

  指揮:トゥガン・ソヒエフ
  管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 コンサートマスター:ライナー・ホーネック

  R. シュトラウス:交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』Op.30

   《休憩》

  ドヴォルザーク:交響曲第8番 ト長調 Op.88(B 163)

   《アンコール》
    J. シュトラウスⅡ世:ワルツ『芸術家の生活』Op.316
    J. シュトラウスⅡ世:ポルカ・シュネル『雷鳴と稲妻』Op.324


最後に予習について、まとめておきます。

R. シュトラウスの交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』を予習したCDは以下です。

  ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(ヴァイオリン・ソロ:ウィリー・ボスコフスキー) 1959年 ウィーン、ゾフィエンザール セッション録音

カラヤンがウィーン・フィルとの録音をとりわけ、DECCA録音で熱望して、実現した第1弾のアルバム。1950年代のウィーン・フィルの爛熟した響きと壮年期でかっこよかった頃のカラヤンの名演が聴けます。普通はカラヤンの録音は避けますが、この頃のウィーン・フィルとのR.シュトラウスだけは例外です。実に素晴らしい演奏です。キューブリック監督の《2001年 宇宙の旅》(1968年)でも、この演奏の冒頭部分が使われています。太陽、月、地球が直列したシーンです。以来、この曲のアルバムは宇宙をイメージするデザインが多くなっています。


ドヴォルザークの交響曲第8番を予習した演奏は以下です。

  ジョージ・セル指揮チェコ・フィル 1969年 ライヴ録音(ルツェルン音楽祭) audite 48kHz/24bit PCM ダウンロード音源

ハイレゾで聴くセルとチェコ・フィルの一期一会の圧倒的名演。セルがこんなにオーケストラを伸び伸びと演奏させているのは、いつものクリーヴランド管弦楽団ではなく、チェコ・フィルとのライヴだからでしょう。それでいて、セルらしく、きっちりと統率しているのは見事。これもカラヤンとウィーン・フィルで聴こうと準備はしましたが、やはり、空前絶後のこの演奏は何度聴いても凄いと言わざるを得ません。



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煌めき立つ天才シューベルトのザ・グレイト ムーティ&ウィーン・フィル@サントリーホール 2021.11.12

ウィーン・フィルの今回の来日コンサートの最後を飾る公演です。きっと渾身の演奏を聴かせてくれることを確信していましたが、まさに期待通りの演奏でした。
前半のモーツァルトはアンサンブルも揃って、満足の演奏。終始、集中して聴けました。ただ、スロースターターのウィーン・フィルは余力を残した演奏で抑え気味の響きです。後半のシューベルトの大作に向けて、響きを整えているという様です。

後半のシューベルトの交響曲第8(9)番 「グレイト」は圧巻の演奏。あまり集中し過ぎて、後半は疲れて集中が切れかけるほどの素晴らしい演奏でした。何とか最後まで持ちこたえて、一音一音まで聴き洩らさないほど、のめりこんで聴きました。それにしても長い! 大交響曲、「グレイト」の名前通りの作品です。ベートーヴェンの交響曲とほぼ同時期に作られたことが信じられないような大傑作です。まさにシューマン、ブラームスはおろか、ブルックナーまでも視野にとらえるような時代を先取りした作品です。シューベルトがあと5年か、10年長生きしてくれれば、一体、どんな作品を作り上げたでしょう。ベートーヴェンで言えば、傑作の森に位置するような中期の作品です。突然の死がなければ、どんな晩年の傑作を書いたでしょう。音楽の世界では早過ぎる死を迎えた天才たちが少なからずいますが、saraiが一番、惜しむのはこのシューベルトの早過ぎる死です。交響曲、ピアノ・ソナタ、弦楽四重奏曲の名作が次々と生まれる筈でした。もしかしたら、オペラでも素晴らしい作品を残してくれたかもしれません。そういうことが頭をよぎるような素晴らしい演奏をムーティ&ウィーン・フィルが繰り広げてくれました。とりわけ、第2楽章の素晴らしかったこと。弦のユニゾンの素晴らしい響きが今でも頭に残っています。第2楽章の終盤での自在な演奏は天才シューベルトの音楽の耽美的とも思える美を余すことなく歌い上げてくれました。勇壮な第3楽章を経て、第4楽章の祝典的な喜びの爆発に心躍ります。これを聴き、saraiはシューマンの交響曲の終楽章の祝祭的な響きを思い起こします。シューベルトなくして、シューマンの交響曲は生まれなかったのではないかとも思います。シューベルトの突然の死で果たされなかった仕事をシューマンが引き継いで、あの素晴らしい4曲の交響曲を作り上げたのかと納得です。ともあれ、第4楽章はウィーン・フィルの優美で透徹した響きのアンサンブルが冴え渡り、最高の音楽を奏でていきます。そして、そして、管と弦がテンポのアップダウンをしながら、圧巻のコーダに突入します。完璧なフィナーレにsaraiは目を閉じながら、感動の心でいっぱいになります。

昨年のコロナ禍の異常な雰囲気の中のウィーン・フィルも凄かったのですが、今年は巨匠ムーティとともに昨年以上の音楽を聴かせてくれました。やはり、ウィーン・フィルは世界最高のオーケストラです。

おっと、まだ、アンコールがありますね。例によって、ムーティが聴衆のほうを振り向いて、張りのある深い声で・・・Johann Strauss Kaiser-Walzer
ウィーン・フィルの専売特許とも言えるヨハン・シュトラウスのウィンナーワルツ。贅沢過ぎるほどの特上の演奏に何も言うことなし。

今日はsaraiの今年99回目のコンサート。これまで1年の国内コンサートの最高は98回でしたから、新記録。聴き過ぎかな・・・


今日のプログラムは以下のとおりです。

  指揮:リッカルド・ムーティ
  管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 コンサートマスター:フォルクハルト・シュトイデ

  モーツァルト:交響曲第35番 ニ長調 K. 385「ハフナー」

   《休憩》

  シューベルト:交響曲第8(9)番 ハ長調 D. 944「グレイト」

   《アンコール》
    J. シュトラウスII世:『皇帝円舞曲』Op.437


最後に予習について、まとめておきます。

モーツァルトの交響曲第35番 「ハフナー」を予習したCDは以下です。

  リッカルド・ムーティ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1997年9月 ウィーン、ムジークフェラインザール セッション録音

ムーティ指揮ウィーン・フィルのモーツァルトシリーズからの一枚です。ウィーン・フィルの響きで聴くモーツァルト、何も言うことなし。黙って聴くだけです。


シューベルトの交響曲第8(9)番 「グレイト」を予習したCDは以下です。

  リッカルド・ムーティ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1986年2月 ウィーン、ムジークフェラインザール セッション録音

ムーティ指揮ウィーン・フィルのシューベルト交響曲全集からの一枚です。これは圧倒的に素晴らしい名演です。ムーティは若い頃にこんなに素晴らしい録音を残していたんですね。そう言えば、これまであまり、ムーティの演奏を聴いていませんでした。再認識させられました。この曲のベスト演奏の一枚と言えるでしょう。



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       ウィーン・フィル,  

音の奔流の渦に溺れる ムーティ&ウィーン・フィルの圧巻のメンデルスゾーン《イタリア》@サントリーホール 2021.11.8

ウィーン・フィルは日本人にとって、特別なオーケストラなのですね。コロナ禍の中、敢然と昨年に続き、来日して、素晴らしい演奏を聴かせてくれます。プログラムは2種類。どちらを聴こうか迷いましたが、結局、意志薄弱でどちらも聴きたくなり、どっちも聴くことにしました。多分、一つだけ聴くことにしたら、今日のコンサートは聴かなかったでしょう。聴いてよかった! こんなメンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」は一生、聴けなかったでしょう。大好きなウィーン・フィルの柔らかで美しい響きが最高で、パーフェクトな演奏に身も心も音楽と一体になりました。これ以上の聴き方はないほどの贅沢な時間でした。最前列中央に陣取り、我が家のリスニングルームにウィーン・フィルを招いたかのような緊張とリラックスがないまぜになったような最高の音楽を聴けました。今日のウィーン・フィルもいつものようにスロースターターで尻上がりに調子を上げて、最後のプログラムのメンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」に至り、ああ、これがウィーン・フィルの音だと再認識できる状態になりました。まさに忘我の境地でその素晴らしい音楽に身を委ねました。とりわけ、第3楽章の美しさといったら、この曲はこんな音楽だったのかと初めて、その本質を理解できるような素晴らしさ。実はこれまで、第3楽章だけが苦手だったんです。そして、第4楽章はその激しさではなく、精緻な音楽表現にあっけをとられました。ウィーン風の音楽表現は弱音の美しさに尽きます。フォルテの響きはピアノの響きを引きたてるためにあるのだと思い知らされました。
最近、ずっと在京オケばかり聴いて、その素晴らしさに満足していましたが、ウィーン・フィルはやはり、レベルが違うことに愕然としました。

アンコール・・・ムーティが聴衆の方に振り向きざま、一言、Verdi La Forza del Destino。いやはや、そのかっこよいこと、しびれました。そして、あの名曲です。これでは、まるでシュターツオーパーでヴェルディを聴いているようなものです。忽然と30年前の記憶が蘇ります。2回目のウィーン。1992年5月2日、シュターツオーパー。初めて、実演で《運命の力》を聴きました。冒頭、何故か、序曲なしでオペラが始まります。えっと思っていると、途中で、序曲が始まります。序曲が終わった後の大歓声。今でも忘れられません。因みにその翌日は《エレクトラ》。ヘッツェルとキュッヒルのダブルコンマスで素晴らしい演奏でした。ヘッツェルはその年の7月、ザンクト・ギルゲンのハイキング中に滑落事故で亡くなりました。そういうことが脳裏をよぎりながら、オペラさながらの『運命の力』序曲に聴き入っていました。それにしてもムーティはヴェルディが似合います。そう言えば、2000年のミラノ・スカラ座の引っ越し公演で《運命の力》を聴かせてくれたのはこのムーティでした。あれもグレギーナとリチートラが素晴らしい歌唱を聴かせてくれました。うーん、オペラが聴きたくなる! それもウィーンのシュターツオーパーで!

前半、シューベルトの交響曲第4番。後で思い返すと、ウィーン・フィルの響きは本来のものではなく、少し荒れたアンサンブル。そのときは力強いと思ったんですけどね。第2楽章の冒頭の主題は4つの即興曲D935、Op.142の第2曲の主題を想起させるような懐かしい音楽で、それはそれで楽しめましたが、柔らかく優美なウィーン・フィルの響きではありませんでした。

ストラヴィンスキーのディヴェルティメント~バレエ音楽『妖精の接吻』による交響組曲~は実に手際のよい完璧な演奏。個々のメンバーの実力が発揮された素晴らしい演奏でした。ただ、これがウィーン・フィルの響きかと言うと、その特徴はそんなに感じませんでした。もっとも、それは後半のメンデルスゾーンを聴いたからで、そのときはその凄い演奏に圧倒されていたんです。ウィーン・フィルの実力はどこまでのものか、分かりません。

ムーティ&ウィーン・フィルを聴くのは3年ぶりでした。ザルツブルク音楽祭で聴いたシューマンの交響曲第2番はとても素晴らしい演奏で、そのときから、ムーティを再認識したんです。今年、80歳になったムーティはこれから巨匠の道を歩んでいきそうな勢いです。次の公演でのモーツァルトとシューベルトが楽しみです。


今日のプログラムは以下のとおりです。

  指揮:リッカルド・ムーティ
  管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 コンサートマスター:フォルクハルト・シュトイデ

  シューベルト:交響曲第4番 ハ短調 D. 417「悲劇的」
  ストラヴィンスキー:ディヴェルティメント~バレエ音楽『妖精の接吻』による交響組曲~

   《休憩》

  メンデルスゾーン:交響曲第4番 イ長調 Op.90「イタリア」

   《アンコール》
    ヴェルディ:歌劇『運命の力』序曲


最後に予習について、まとめておきます。

シューベルトの交響曲第4番を予習したCDは以下です。

  リッカルド・ムーティ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1987年2月 ウィーン、ムジークフェラインザール セッション録音

ムーティ指揮ウィーン・フィルのシューベルト交響曲全集からの一枚です。ウィーン・フィルの響きが素晴らしいです。この頃、コンマスはゲルハルト・ヘッツェルでしたね。そう言えば、ヘッツェルの不慮の死の前、ヘッツェルがコンマスとして最後に演奏したコンサートで指揮したのがムーティでした。1992年6月21日のウィーン・フィル創立150年記念~ウィーン音楽祭終幕コンサートでのベートーヴェンの交響曲第3番 「英雄」だったのかな。


ストラヴィンスキーのディヴェルティメントを予習したCDは以下です。

  ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮ロイヤル・コンセルトへボウ管弦楽団 1997年4月27日 ライヴ録音(ラジオ用録音)

ロイヤル・コンセルトへボウ管弦楽団アンソロジー第6集1990-2000からの1枚です。コンセルトヘボウ管弦楽団の素晴らしいアンサンブルが聴けます。


メンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」を予習したCDは以下です。

  ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団 1967年5月25日 セッション録音

これは素晴らしい演奏です。これでトスカニーニからの呪縛が解けそうです。もちろん、ステレオ録音ですから、音質もいいしね。何と言っても鉄壁のアンサンブルです。第4楽章のサルタレロなどは申し分のない演奏を聴かせてくれます。セルは何を聴いても素晴らしい。当時、その素晴らしさに気づいていなかった自分を恥じるばかりです。1970年の最後の来日時は当時、学生だったsaraiは聴こうと思えば聴けた筈ですが、その真価が分かっていなかったのですから、情けない。



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       ウィーン・フィル,  

底知れぬ実力のマツーエフのプロコフィエフ、そして、ゲルギエフ&ウィーン・フィルの「悲愴」の深い慟哭に共感と感動@サントリーホール 2020.11.10

これは特別なコンサートです。コロナ禍の中、あり得ないような場に立ち会った思いです。今日、サントリーホールに集まった聴衆のみなさんはそれぞれ、深い思いを胸に刻んだことでしょう。こんなに真剣に演奏するウィーン・フィルは初めて見ました。聴衆と音楽家がこれほど共感しあったコンサートは稀有なことです。「悲愴」の演奏の前にウィーン・フィルの楽団長のダニエル・フロシャウアーから異例のメッセージがありました。世界中でコロナの犠牲になった人々にこの演奏を捧げ、演奏後は黙とうを捧げたいというものです。奇跡のように実現したウィーン・フィルの来日公演。彼らはこの後、帰国しても演奏の場はありません・・・少なくとも11月末まではウィーンの劇場は閉鎖しています。

ゲルギエフが全身全霊を傾けて指揮した「悲愴」は両端楽章の第1楽章と第4楽章の慟哭するような音楽がすべてでした。2004年に彼らが録音した演奏はゲルギエフの故郷、北オセチアの小学校における大惨事の直後だったので、まるで大地が慟哭するような演奏でしたが、今日はゲルギエフもウィーン・フィルも聴衆もコロナの影響下にあり、途轍もない共感が生まれ、人間の熱い感情、哀しみにあふれた慟哭がホール全体を包み込みました。これ以上、言葉で表す能力はsaraiにはありません。音楽のチカラにあらためて、驚かされるばかりです。終演後、saraiは隣席の見も知らぬ女性に素晴らしかったですねって、思わず声を掛けてしまいました。彼女もsaraiと同様に感動していたのが見てとれたからです。彼女はぽつりと、ウィーン・フィルが来てくれてよかった・・・と答えたきり、言葉を詰まらせます。深い思いがほとばしり、嗚咽しています。saraiも絶句します。同じ思いです。いえいえ、聴衆全員が同じ思いを共有していたと思います。コロナに感染しなかった人たちも心に深い傷を負ったと思います。その共通体験がこのウィーン・フィルの「悲愴」である意味、昇華したのかもしれません。この場に居合わせた誰もが忘れられないコンサートになったことでしょう。もちろん、saraiも隣席の女性も・・・。

前半の演奏も素晴らしかったんです。とりわけ、デニス・マツーエフのプロコフィエフの演奏には底知れぬ実力を思い知らされました。しかし、今日はそれを書く気力はありません。後半の「悲愴」で音楽の持つ途轍もないチカラを感じさせられましたからね。こういう音楽を聴くと、言葉はチカラを失います。ブログで音楽の感想を書けずに申し訳けありません。こういうコンサートに遭遇してしまったということです。一生に何回もあることではありません。ウィーン・フィルの面々にとってもそうだったのではと想像します。

こういう場を作ってくれたウィーン・フィル、ゲルギエフ、聴衆、関係者のみなさんに感謝の心を捧げ、コロナ禍で犠牲になった人々に哀悼の意を捧げるということでつたない記事を終えます。


今日のプログラムは以下のとおりです。

  指揮:ワレリー・ゲルギエフ
  ピアノ:デニス・マツーエフ
  管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 コンサートマスター:フォルクハルト・シュトイデ&アルベナ・ダナイローヴァ

  プロコフィエフ:バレエ音楽『ロメオとジュリエット』Op.64 より
    「モンタギュー家とキャピュレット家」
    「少女ジュリエット」
    「仮面」
    「ジュリエットの墓の前のロメオ」
  プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第2番 ト短調 Op.16
   《アンコール》グリーグ:組曲『ペール・ギュント』第1番 より 第4曲「山の魔王の宮殿にて」

   《休憩》

  チャイコフスキー:交響曲第6番 ロ短調 Op.74「悲愴」

   《アンコール》
    チャイコフスキー:『眠りの森の美女』より「パノラマ」


最後に予習について、まとめておきます。

プロコフィエフのバレエ音楽『ロメオとジュリエット』を予習したCDは以下です。

  リッカルド・ムーティ指揮シカゴ交響楽団 2013年10月 シカゴ、オーケストラ・ホール ライヴ録音

意外と言っては失礼ですが、シカゴ響の演奏能力を引き出して、ムーティは見事な演奏を聴かせてくれます。バレエのシーンを彷彿とさせてくれます。


プロコフィエフのピアノ協奏曲第2番を予習したCDは以下です。

  アンナ・ヴィニツカヤ、ギルバート・ヴァルガ指揮ベルリン・ドイツ交響楽団 2010年4月 セッション録音

これはもう10年前の録音ですが、アンナ・ヴィニツカヤのピアノは実演で聴いた通りの凄い演奏です。テクニックも切れ味もそして、豪快さも兼ね備えていますが、一番素晴らしいのは濃厚なロマン、もっと言えば、色気があることに驚愕します。彼女がこの曲でベルリン・フィルにデビューしたのは昨年、2019年のことです。恐るべきピアニストです。


チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」を予習したCDは以下です。

  ワレリー・ゲルギエフ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 2004年9月、ウィーン、ムジークフェラインザール ライヴ録音

当時話題になった、この録音ももう15年以上も前のことです。第1楽章、そして、第4楽章は大地が慟哭するような凄まじい演奏です。現在はあまり評価されていないのが不思議です。ゲルギエフの故郷、北オセチアの小学校において大惨事が起きた時期と重なり、何よりもロシア、なによりも故郷を愛するゲルギエフは最悪の状態だったと言うことで、コンサート中も涙を流しながらの指揮だったようです。なお、同年11月にウィーン・フィルを率いて来日した際には、サントリーホールにて「北オセチアに捧げる心の支援」と題して、この「悲愴」1曲だけのチャリティー・コンサートを行なったそうです。それを聴いた友人の話では終演後の拍手はなく、聴衆は無言で立ち去った感動のコンサートだったそうです。公演直前に新潟県中越地震が発生したため、収益の半分はこの地震の被災地に寄付されたそうです。



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ティーレマンが振るとウィーン・フィルが美しく鳴る:ブルックナーの交響曲第8番@サントリーホール 2019.11.11

チェリビダッケはブルックナーは美しくなければならないと言い、実際、彼とミュンヘン・フィルによるライヴ録音で交響曲第8番を聴くと卒倒するほどの究極の美しさに感動します(リスボンライヴ、東京ライヴ、ミュンヘンライヴ)。今日のティーレマンウィーン・フィルから引き出した響きはチェリビダッケとはまた質が違いますが、恐ろしいほどの美しさに満ちていました。巨匠ティーレマン、世界最高のオーケストラのウィーン・フィルの名に恥じない素晴らしい演奏に脱帽です。これまでウィーン・フィルのブルックナーは何度となく聴いてきましたが、これほどの美しい響きを聴いたのは初めてです。さすがにティーレマンです。そう言えば、このコンビでブルックナーを聴くのは初めてかな。サントリーホールがまるでウィーンの楽友協会大ホールにように音が鳴りまくっていました。その美しい響きをベースにブルックナーの精神性の高い音楽が奏でれるのですから、たまりません。いつもはこの第8番は第3楽章で頂点に達し、第4楽章で上り詰めるというのが常ですが、今日は第1楽章から、その音響美にうっとりして聴き入っていました。もちろん、第3楽章の超絶的な美しさも天国的でしたし、第4楽章の終盤、上昇音型が繰り返し現れるあたりからの盛り上がりは大変なものでした。圧倒的なフィナーレではティーレマンはいつものごとく、神のような存在と化していました。曲が終わっても神のごときティーレマンが指揮棒を下すまではホール内には完全な静寂が続きます。この静寂を作り出すサントリーホールの聴衆は世界最高の聴衆でもありますね。

アンコール曲は不要なブルックナーの交響曲第8番ですが、それでもアンコール曲を演奏できるのはウィーン・フィルならではでしょう。ウィンナーワルツという鉄板プログラムがありますからね。俄かにニューイヤーコンサートと化したサントリーホールでした。やんやの喝采で指揮者コールは2回でした。

今日のプログラムは以下のとおりです。

  指揮:クリスティアン・ティーレマン
  管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

  ブルックナー:交響曲第8番 ハ短調 WAB 108(ハース版)

   《アンコール》
    ヨーゼフ・シュトラウス:ワルツ『天体の音楽』Op.235


最後に予習について、まとめておきます。

ブルックナーの交響曲第8番を予習したCDは以下です。

  ベルナルト・ハイティンク指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 2007年8月22日 コンセルトヘボウ、アムステルダム ライヴ録音 非正規盤

saraiの生涯で聴いた最高のブルックナーの交響曲第8番は2013年の4月にアムステルダムで聴いたベルナルト・ハイティンク指揮のロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏でした。このCDはそのおよそ5年前の同じホール、同じコンビの演奏で同じノヴァーク版の演奏です。saraiが実演で聴いた究極の演奏には及びませんが素晴らしい演奏ではあります。



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Author:sarai
首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
たまには、旅ブログも書きます。

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