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そして、10年ぶりに聴いた今日の演奏はさらに高レベルのものになっていました。ですから、ウィーン・フィルの首席指揮者に推挙したわけです。ウィーン・フィルは実質的な首席指揮者だったカール・ベームが1981年に亡くなってからは決まった首席指揮者はいません。カール・ベームの前はフルトヴェングラーだったことを考えれば、そうそう、そのあたりの指揮者が重責を担うわけにはいきませんけどね。
ともあれ、今日の最初の曲、R. シュトラウスの交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』は冒頭のトランペットの響きが美しく、ぐっと惹き付けられます。《2001年 宇宙の旅》で有名になった冒頭部分が圧巻の演奏で背中がぞくぞくします。そして、続くVon den Hinterweltlern(世界の背後を説く者について)にはいると、ウィーン・フィルのまろやかな弦の響きで「人間」を象徴する“憧憬の動機”が何とも魅力的に奏でられます。コラールの陶酔の響きに魅了されて、もう、ウィーン・フィルの世界にどっぷりと引き込まれます。ソヒエフの指揮、表現も見事としか言えません。夢のような世界を彷徨いつつ、Von der Wissenschaft(学問について)では弦の対位法的展開にまたまた、魅了されて、第1ヴァイオリンの奏でる高音の美しさはウィーン・フィルを体現するものです。続くDer Genesende(病より癒え行く者)の長大なパートを味わいながら、次も長大なDas Tanzlied(舞踏の歌)に入ります。ウィーン・フィルの面目躍如たるワルツのリズムを刻みつつ、コンサートマスターのライナー・ホーネックの独奏ヴァイオリンが美しく響きます。昔、ウィーン・フィルでこの曲を聴いたときはライナー・キュッヒルの独奏ヴァイオリンだったことを思い出します。そして、音楽が高潮していき、突如、真夜中の12時を告げる鐘の音が響きます。うーん、これは夢のような時間が終わりを告げるようなシンデレラの世界だななんて、馬鹿なことを思いつつ、音楽は終焉していきます。第1ヴァイオリンがロ長調の和音(「人間」)を奏で、低音のハ音(「自然」)と結局は調和することなく、美しくも暗黒の未来を象徴しながら、音が途絶えます。凄い演奏でした。交響詩としては、明日、ベルリン・フィルで聴く《英雄の生涯》と肩を並べる傑作であることを実感しました。
休憩後、おまけのようなドヴォルザークの交響曲第8番がウィーン・フィルの贅沢過ぎる音響で奏でられました。saraiが子供の頃から愛する曲です。とりわけ、第3楽章の舞曲の高弦と木管の美しさは究極の響きです。ソヒエフの巧みな表現で各楽章が素晴らしく演奏されます。そして、第4楽章のコーダの盛り上がりの凄まじさはどうでしょう。もったいないような演奏に恐れ入りました。
アンコールは無論、ウィンナーワルツ。これは凄いね! 文句なし。
今回がウィーン・フィルを聴く33回目のコンサートでした。ほとんどはこの10年間にウィーン、ザルツブルク、東京で聴きました。もっとも、実質、ウィーン・フィルのウィーン国立歌劇場はほぼ40回聴いているので、やっぱり、ウィーン・フィルはオペラを聴くオーケストラかな。オペラはこの30年間、まんべんなく聴いてきましたが、もう、ウィーンに行かないので、これからはウィーン・フィルのコンサートを東京で聴くのみですね。
明日からはベルリン・フィルを聴くモードに移行します。これもワクワク。
今日のプログラムは以下のとおりです。
指揮:トゥガン・ソヒエフ
管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 コンサートマスター:ライナー・ホーネック
R. シュトラウス:交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』Op.30
《休憩》
ドヴォルザーク:交響曲第8番 ト長調 Op.88(B 163)
《アンコール》
J. シュトラウスⅡ世:ワルツ『芸術家の生活』Op.316
J. シュトラウスⅡ世:ポルカ・シュネル『雷鳴と稲妻』Op.324
最後に予習について、まとめておきます。
R. シュトラウスの交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』を予習したCDは以下です。
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(ヴァイオリン・ソロ:ウィリー・ボスコフスキー) 1959年 ウィーン、ゾフィエンザール セッション録音
カラヤンがウィーン・フィルとの録音をとりわけ、DECCA録音で熱望して、実現した第1弾のアルバム。1950年代のウィーン・フィルの爛熟した響きと壮年期でかっこよかった頃のカラヤンの名演が聴けます。普通はカラヤンの録音は避けますが、この頃のウィーン・フィルとのR.シュトラウスだけは例外です。実に素晴らしい演奏です。キューブリック監督の《2001年 宇宙の旅》(1968年)でも、この演奏の冒頭部分が使われています。太陽、月、地球が直列したシーンです。以来、この曲のアルバムは宇宙をイメージするデザインが多くなっています。
ドヴォルザークの交響曲第8番を予習した演奏は以下です。
ジョージ・セル指揮チェコ・フィル 1969年 ライヴ録音(ルツェルン音楽祭) audite 48kHz/24bit PCM ダウンロード音源
ハイレゾで聴くセルとチェコ・フィルの一期一会の圧倒的名演。セルがこんなにオーケストラを伸び伸びと演奏させているのは、いつものクリーヴランド管弦楽団ではなく、チェコ・フィルとのライヴだからでしょう。それでいて、セルらしく、きっちりと統率しているのは見事。これもカラヤンとウィーン・フィルで聴こうと準備はしましたが、やはり、空前絶後のこの演奏は何度聴いても凄いと言わざるを得ません。
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