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カーチュン・ウォンのがっちりした古典的様式感とロマンが交錯した最高のブラームス1番 日本フィルハーモニー交響楽団@サントリーホール 2023.10.22

カーチュン・ウォンのブラームス、初めて聴きますが、交響曲第1番の第1楽章の冒頭の序奏の分厚い響きを聴いただけで、すっかり、魅了されます。実に力強くて美しいです。まさにブラームスの世界観を体現した響きにうっとりと魅了されるのみです。序奏冒頭部が再び奏されて、これだけで1曲聴いたような満足感です。主部のアレグロに入り、ベートーヴェンを意識したような堂々たる古典的様式感にブラームスのロマンが付け加わった独特な音楽が粛々と進行していきます。カーチュン・ウォンは指揮棒を大きく使ったスケール感のある指揮で日本フィルを鼓舞して、腰の据わったブラームスを奏でます。コーダはハ長調に転じて静かに曲を閉じます。うーん、やりますね。

第2楽章のアンダンテ・ソステヌートは抒情的な音楽が弦で奏でられた後、オーボエのソロが物哀しい旋律を歌い上げます。トリオでもオーボエのソロが活躍します。再現部では、ホルンに続いて、コンサートマスターの扇谷 泰朋の美しく、よく響くソロが主導して、この楽章を閉じます。カーチュン・ウォンの見事な表現力に感銘を受けます。

第3楽章は間奏曲風の短い楽章です。牧歌的な雰囲気を醸し出しながら、続く第4楽章を暗示しつつ、優雅な音楽を奏でます。

そして、間を置かず、すぐに第4楽章の重い序奏が始まります。やがて、序奏の第2部でホルンが朗々とした主題を歌い上げ、金管がコラール風に展開していきます。第1楽章の序奏をさらに拡大したような序奏をカーチュン・ウォンと日本フィルは堂々と演奏。
長い序奏が静かに終わると、ベートーヴェンの第9番の歓喜の歌を想起する第1主題が弦楽合奏で美しく奏で上げられます。日本フィルの弦楽アンサンブルの素晴らしさを感じずにはいられません。続いて、第2主題も弦楽合奏で演奏され、提示部の小結尾は高らかに高潮していきます。次いで、再び、第1主題がさきほどと同じ形で弦楽合奏で奏でられて、その後、展開されていきます。そして、音楽は高揚していきます。カーチュン・ウォンが凄まじい勢いで弦の各パートを鼓舞して、圧倒的に盛り上がります。そして、再現部を経て、コーダに入ります。そして、コラール風主題がファンファーレのように高らかに奏で上げられて、音楽の頂点を形成していきます。そして、主和音の四連打を経て、劇的に曲を閉じます。実に壮大なフィナーレでした・・・拍手が早過ぎる! 言いたくありませんが、このような素晴らしい演奏の後は感動をかみしめたいものです。ここはサントリーホールですよ!

ともあれ、素晴らしいカーチュン・ウォンのブラームスでした。
カーチュン・ウォンの存在感が次第に大きくなってきました。今後がますます楽しみです。

前半のショパンのピアノ協奏曲第1番、亀井聖矢は好演でしたが、むしろ、アンコール2曲目のリストのラ・カンパネラが素晴らしい演奏でした。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:カーチュン・ウォン[首席指揮者]
  ピアノ:亀井聖矢
  管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団 コンサートマスター:扇谷 泰朋

  ショパン:ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 Op.11
  
   《アンコール》ショパン:マズルカ Op. 59-2
          リスト:ラ・カンパネラ

   《休憩》
   
  ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 Op.68


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のショパンのピアノ協奏曲第1番を予習した演奏は以下です。

 マウリツィオ・ポリーニ、クリスティアン・ティーレマン指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2016年1月16日 ベルリン・フィルハーモニー ライヴ収録 (ベルリン・フィル デジタル・コンサートホール)

老境のポリーニ、流石のショパンに聴き惚れました。


2曲目のブラームスの交響曲第1番を予習した演奏は以下です。

 サー・サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2018年5月27日 ベルリン・フィルハーモニー ライヴ収録 (ベルリン・フィル デジタル・コンサートホール)

ベルリン・フィルの達人たち、見事な演奏です。管のソロはホルンはシュテファン・ドール、フルートはエマニュエル・パユ、クラリネットはアンドレアス・オッテンザマー、オーボエはアルブレヒト・マイヤーという豪華な布陣。コンマスはダニエル・シュタブラーヴァ。



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カーチュン・ウォンの空前絶後のマーラー3番 日本フィルハーモニー交響楽団@サントリーホール 2023.10.13

saraiが過大な期待を持って臨んだカーチュン・ウォンのマーラーの交響曲第3番は見事に期待通りの素晴らしい演奏でした。

第1楽章から、恐るべき演奏が続きましたが、本当に素晴らしかったのは第6楽章。静謐に弦楽の演奏が続き、その繊細過ぎる表現に心が痺れるようです。そして、次第に音楽が高潮していき、もう、息もできないほどの感動と緊張感。このまま、倒れてしまいそうになります。そして、凄かったのは圧倒的なコーダ。こういうマーラーが聴きたかったんです。音楽と自分が一体化して、天上の世界に上り詰めそうです。カーチュン・ウォンの天才的とも言えるマーラーでした。これ以上、何を望むものがあるでしょうか。

カーチュン・ウォンの日本フィルへの要求水準は高過ぎるほどで、正直、どんなオーケストラも完璧な演奏は困難でしょう。しかし、日本フィルはほぼ、最高水準の演奏を聴かせてくれました。とりわけ、弦楽パートの素晴らしさは驚嘆すべきものでした。よく、破綻せずに持ちこたえたものです。カーチュン・ウォンの日本フィルのドライブも見事でした。どれだけ、リハーサルを重ねたんでしょうか。ヴィオラの健闘が印象的でした。何故、首席奏者の席にカルテット・アマービレの中恵菜がいたんでしょう。彼女は新日フィルの首席奏者の筈ですが・・・。
第3楽章の舞台裏のポストホルン独奏はオッタビアーノ・クリストーフォリ。素晴らしい演奏でした。ポストホルンをコルネットで代用したようです。
第1楽章の冒頭から、ホルンが響き渡りました。第3楽章あたりから、若干、不安定なところもありましたが、最後まで素晴らしい演奏を聴かせてくれました。
アルト独唱の山下牧子は最前面ではなく、舞台の右手の奥にちょっと引っ込んだところで歌いましたが、十分な声量で素晴らしい歌唱を聴かせてくれました。
女声合唱と児童合唱はP席に陣取って、しっかりした合唱を聴かせてくれました。

第6楽章以外では、長大な第1楽章でアッター湖の自然を思う存分に表現してくれました。シュタインバッハの作曲小屋を訪れたのは、もう10年前になりますが、脳裏に美しいアッター湖の自然がありありと蘇ります。続く第2楽章の自在とも思える演奏と表現は超絶的でした。ここまでの表現は聴いたことがありません。凄いの一語です。

語れば、きりがないような素晴らしいマーラーの第3番でした。カーチュン・ウォンの才能に惹かれて、今シーズンから日本フィルの定期会員になりましたが、その期待に応えてくれました。下期にはマーラーの交響曲第9番も聴かせてくれます。saraiが最も愛する音楽ですが、きっと、耽溺させてくれるような凄い演奏を聴かせてくれるでしょう。
カーチュン・ウォンが日本フィルを振ると、ヨーロッパの超一流オーケストラに匹敵する音が響きます。ジョナサン・ノットの東響とカーチュン・ウォンの日本フィル。目を離せない存在です。


今日のプログラムは以下です。

 【カーチュン・ウォン 首席指揮者就任披露演奏会】

  指揮:カーチュン・ウォン[首席指揮者]
  メゾ・ソプラノ:山下牧子
  女声合唱:harmonia ensemble
  児童合唱:東京少年少女合唱隊
  管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団 コンサートマスター:田野倉 雅秋

  マーラー:交響曲第3番 ニ短調
  
   《休憩なし》


最後に予習について、まとめておきます。

マーラーの交響曲第3番を予習したCDは以下です。

 ベルナルド・ハイティンク指揮シカゴ交響楽団 2006年10月19、20&21日 シカゴ、シンフォニーセンター、オーケストラ・ホール ライヴ録音
   ミシェル・デ・ヤング(Ms)
   シカゴ交響楽団女声合唱団
   デュアイン・ウルフ(合唱指揮)
   シカゴ児童合唱団
   ジョセフィン・リー(児童合唱指揮)

2006年よりシカゴ交響楽団の首席指揮者に就任した巨匠ハイティンクがシーズンのオープニングコンサートで取り上げたマーラー第3交響曲ライヴ録音です。カーチュン・ウォン同様、マーラーの演奏に絶対の自信を持つハイティンクも奇しくも同じ第3番を首席指揮者就任披露演奏会に選びました。演奏は実に自然でゆるぎないもので、終楽章のフィナーレの壮大で圧倒的な演奏に驚嘆しました。



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次期首席指揮者カーチュン・ウォンと日本フィルハーモニー交響楽団によるプレ披露公演は明快で雄大な《展覧会の絵》、そして、素晴らしきアンコール@ミューザ川崎シンフォニーホール 2023.8.9

次期首席指揮者カーチュン・ウォンの就任記念コンサートは10月のマーラー、交響曲第3番ですが、それに先駆けての言わば、プレ披露コンサートみたいなものなので、これは聴き逃がせません。

メインは後半のムソルグスキー(ラヴェル編曲)の組曲『展覧会の絵』です。ここから、緊張して聴きます。冒頭の金管によるプロムナードは無難な入り。第1曲の小人はアンサンブルの揃った明快な演奏です。以降もカーチュン・ウォンの丁寧な指揮で引き締まった演奏が続いていきます。第9曲のバーバ・ヤガーあたりから、高潮した演奏になっていきます。そして、最後のキエフの大門(キーウの大門?)は圧巻の演奏です。期待に違わぬカーチュン・ウォンの素晴らしい演奏と言いたいところですが、saraiはもう一つ上の演奏を期待していました。カーチュン・ウォンならば、もっと凄い演奏になる筈でしたが、もしかしたら、リハーサル不足だったのでしょうか。

10月のマーラーの交響曲第3番は万全の演奏を期待しています。

ところで、今日は何とアンコール曲が演奏されました。予想外のことで、saraiも肩の力が抜けていました。ウーン、これは何の曲だ? 何やら厳粛な雰囲気の曲。よく知っている曲です。記憶を辿ります。あー、エルガーのエニグマですね。英国では、この第9変奏のニムロッドは戦没者の追悼などに演奏されるそうです。米国のバーバーの『弦楽のためのアダージョ』みたいなものです。何とも素晴らしい演奏に感銘を受けます。本編で演奏された曲よりも素晴らしい演奏です。これぞ、カーチュン・ウォンの実力! じっと聴き入りました。よく考えてみれば、本編の組曲『展覧会の絵』の終曲の《キエフの大門(キーウの大門?)》はウクライナ戦争に思いを馳せる曲です。その後にこのニムロッドということは、明らかにウクライナ戦争の被害者への追悼。それに今日は長崎の原爆投下の日でもありました。これほど、アンコールにふさわしい曲はありません。カーチュン・ウォンと日本フィルの素晴らしい演奏に感謝しつつ、戦争の犠牲者に追悼の心を送ります。カーチュン・ウォン、ありがとう・・・。


前半のヴェルディの歌劇『運命の力』序曲も圧倒的に素晴らしい演奏でした。そして、菅野祐悟のサクソフォン協奏曲はサックスの須川展也の素晴らしい演奏にうっとりしていました。ちょっと甘過ぎる曲ですが、まあいいでしょう。


今日のプログラムは以下です。

  フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2023

  指揮:カーチュン・ウォン(首席客演指揮者、次期首席指揮者)
  サックス:須川展也
  管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団  コンサートマスター:田野倉雅秋

  ヴェルディ:歌劇『運命の力』序曲
  菅野祐悟:サクソフォン協奏曲『Mystic Forest』
   《アンコール》真島俊夫:シーガルより
  
   《休憩》

  ムソルグスキー(ラヴェル編曲):組曲『展覧会の絵』
  
   《アンコール》
    エルガー:『エニグマ変奏曲』Op.36 より 第9変奏 "Nimrod" (ニムロッド) 変ホ長調、アダージョ
     
最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のヴェルディの歌劇『運命の力』序曲は以下のCDを聴きました。

  ジョルジュ・プレートル指揮スカラ座フィルハーモニー管弦楽団 2016年2月22日 ミラノ、スカラ座 ライヴ録音

プレートルは高齢になった後、思い出に残る数々の演奏を聴かせてくれました。ベートーヴェン、ヴェルディ、オッフェンバックとラヴェルの作品のプログラムで聴衆と演奏者を魅了し大成功を収めたこの2016年2月22日のミラノ・スカラ座でのコンサートが最後のコンサートとなりました。この『運命の力』序曲はラストコンサートとは思えぬ、勢いに満ちた、いかにもプレートルらしい素晴らしい演奏です。


2曲目の菅野祐悟のサクソフォン協奏曲は予習していません。


3曲目のムソルグスキー(ラヴェル編曲)の組曲『展覧会の絵』は以下のCDを聴きました。

  セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィル 1986年9月23日 ベルリン ライブ録音

レーベルはAUDIORの伝説的なCDです。最後のキエフの大門でチェリビダッケの気合を入れるような声が響き渡り、ぞくぞくってします。中古盤を大枚をはたいて入手した宝物です。チェリビダッケのファンならば、このCDとブルックナーの交響曲第8番のリスボンライブは必聴です。いずれもレーベルはAUDIORで高価な海賊盤の中古盤を購入することになりますが・・・報われることはsaraiが保証します。と言いつつ、配偶者には、その遅い演奏が不評でした。残念です。やはり、個性的な演奏ですから、好みが分かれます。



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カーチュン・ウォン凄し! ヤナーチェクのシンフォニエッタは圧巻の超名演 日本フィルハーモニー交響楽団@サントリーホール 2023.5.13

このところ、カーチュン・ウォンの演奏が聴き逃がせなくなっています。今回もプログラムが凝っています。ミャスコフスキーという珍しいロシアもの、それに芥川、最後はヤナーチェクという心憎い組み合わせ。いかにも新鮮ではありませんか。ミャスコフスキーと芥川也寸志は初聴き。それにヤナーチェクのシンフォニエッタはいつ聴いたか思い出せないほど聴いていません。

最初のミャスコフスキーは交響曲といっても単一楽章だけの短いものでソナタ形式でもなく、表題にある通り、幻想曲のようなものです。これをカーチュン・ウォンは実に美しく響かせて演奏します。なかなか魅力的な演奏でした。ミャスコフスキー自体、名前は知っているという程度で1曲も聴いたことがなく、入門編としては最適のものでした。

次は芥川也寸志のチェロとオーケストラのための《コンチェルト・オスティナート》。チェロの佐藤晴真は難関のミュンヘン国際音楽コンクールを制した気鋭の若手。多分、初めて聴きます。チェロは日本の若手がどんどん輩出してきている感もありますが、佐藤晴真はテクニック、音楽性でも抜きんでた存在であることを実感しました。彼が芥川也寸志のもはや古典ともなった作品を見事に演奏し、カーチュン・ウォンはは素晴らしいサポートを聴かせてくれました。わくわくするような演奏を聴き、気持ちが昂ぶりました。

休憩後、カーチュン・ウォンは彼の得意でもあり、そして、かなり入れ込んでいる様子のヤナーチェクのシンフォニエッタを圧巻の演奏で聴かせてくれました。意外なほど、ヤナーチェクの民俗色は強調せずにインターナショナルとも思える演奏です。通常はそういう演奏はあまり受け入れ難いのですが、素直に納得して聴ける演奏です。それはカーチュン・ウォンがヤナーチェクを自分の同調できるものとして、彼の体内にいったん取り込んで、分かりやすい形で明快な演奏を聴かせてくれたからだと思えます。カーチュン・ウォンの特質がだんだん分かってきましたが、彼はアジア出身という自身の成り立ちを素直に表出し、彼なりの表現で無理のない形で音楽を造形していっているようです。決して、押しつけがましく音楽を表現することなく、それでいて、彼の並外れた知性のフィルターを通して、明快に造形された音楽を聴衆に提示してくれているようです。我々聴くものは何ら無理をせずにカーチュン・ウォンの音楽ワールドを受容すればよいのでしょう。普通はこういう指揮者の音楽は物足りなく感じることもありますが、そうならないのがカーチュン・ウォンの天才的な音楽力です。とりあえず、バルトークやヤナーチェク、そして、マーラーは素晴らしい演奏が期待できます。今日のヤナーチェクも素晴らしい演奏でした。それに彼が振る日本フィルの音の響きの素晴らしいこと。弦はもとより、木管も金管も素晴らしく鳴ります。

こんな凄い指揮者がこれから日本フィルの首席指揮者になるのですから、日本フィルは上昇が続くでしょう。やはり、来季からは日本フィルの定期会員にならねばなりません。saraiにそう思わせるようなコンサートでした。


今日のプログラムは以下です。


  指揮:カーチュン・ウォン[首席客演指揮者]
  チェロ:佐藤晴真
  管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団 コンサートマスター:田野倉 雅秋

  ミャスコフスキー:交響曲第21番《交響幻想曲》嬰ヘ短調 Op.51
  芥川也寸志:チェロとオーケストラのための《コンチェルト・オスティナート》
   《アンコール》J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲 第1番 ト長調 BWV1007 から 第4曲 サラバンド(Sarabande)

   《休憩》

  ヤナーチェク:シンフォニエッタ


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のミャスコフスキーの交響曲第21番《交響幻想曲》を予習したCDは以下です。

 エフゲニー・スヴェトラーノフ指揮ロシア国立交響楽団 ミャスコフスキー:交響曲全集 1991-1993年 セッション録音

ミャスコフスキーの全27曲の交響曲全集の中の1枚。何とも暗くて深みのある演奏です。


2曲目の芥川也寸志のチェロとオーケストラのための《コンチェルト・オスティナート》を予習したCDは以下です。

 岩崎洸、若杉弘指揮日本フィルハーモニー交響楽団 1971年 セッション録音

古い録音ですが、チェロもオーケストラも見事な演奏。チェンバロの演奏効果が浮き立っています。


3曲目のヤナーチェクのシンフォニエッタを予習したCDは以下です。

 ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団 1981年10月16日 ライヴ録音

クーベリックのライヴの熱い演奏が聴きものです。



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天才指揮者カーチュン・ウォンのバルトークの管弦楽のための協奏曲は真髄を抉り出す超名演 日本フィルハーモニー交響楽団@サントリーホール 2023.1.20

カーチュン・ウォンの凄い評判は聞いていたので、一体、バルトークをどう演奏するのかと思って、初めて聴いてみました。まさに驚天動地の凄まじい演奏でした。昨年のマケラの春の祭典にも優るとも劣らないような圧倒的な名演でした。昔、ベルティーニが都響を指揮して、みなとみらいホールでマーラーの交響曲第5番を演奏したときに受けた衝撃を思い出しました。指揮者によって、日本フィルがシカゴ響レベルにグレードアップするのを目の当たりにして、驚かざるを得ませんでした。もう、これ以上は書くことがありませんが、それもなんですから、もう少し書いてみましょう。

前半は昨日に続いて日本人作曲家の作品が演奏されます。伊福部昭のシンフォニア・タプカーラです。まず、たっぷりした抒情が歌われますが、その響きの素晴らしさに圧倒されます。そして、さらにテンポアップしたパートのノリに乗った演奏と指揮にあっけに取られます。カーチュン・ウォンは完璧にこの曲を掌握し、最高の演奏を聴かせてくれました。素晴らしい作品に素晴らしい演奏です。もっとも初めて聴くので比較はできませんが、きっと最高レベルの演奏だったでしょう。日本的でもあり、インターナショナルでもある曲と演奏です。演奏後、カーチュン・ウォンはスコアを持ち上げて、作品を讃えていました。saraiとしては指揮したカーチュン・ウォンを讃えたい気持ちです。そうそう、第4楽章はまるでバルトークを思わせるパートもあり、この後に演奏されるバルトークに期待してしまいます。

で、そのバルトークの管弦楽のための協奏曲は無論、細部に至るまでsaraiも把握していますから、十分に演奏のレベルを評価することができます。しかし、そのsaraiを嘲笑うようにカーチュン・ウォンは聴いたこともないようなフレーズを深く掘り下げた演奏で驚嘆させます。ううっ、これは本当はこんな曲だったのかと次から次へと新しい驚きを繰り出してきます。しかも日本フィルの響きの素晴らしさにも驚嘆します。目をつぶって聴いていれば、世界のビッグ5のオーケストラのひとつが演奏していると思ってしまいまいそうです。特にヴィオラのパートの素晴らしさには目を瞠ります。管も絶好調です。
第1楽章は完璧でした。ここまでの完成度の演奏は聴いたことがありません。実演でもCDでもそうです。第2楽章は部分的に少しレベルが落ちたところもありましたが、それは第1楽章が凄過ぎたせいでしょう。第3楽章以降は持ち直し、またもや、完璧の上をいくレベルです。第3楽章の夜の歌のダークな演奏も秀逸です。第4楽章のノリは異常に凄いとしか言えません。こんな演奏が可能だとは想像だにできません。第5楽章の急速なパッセージははらはらするようなスピード感ですが、見事に弾きこなしていきます。凄いぞ!日本フィル。特にヴァイオリンとヴィオラは凄まじい! そして、対位法的な音楽が見事に構成されていきます。緊張感で息もできないほどですが、演奏者、特に指揮者は緊張感だけでなく、楽興的でもあります。これが真のバルトークですね。神業のような演奏が高潮して、圧倒的なフィナーレ。一瞬の沈黙がありました。振り向いたカーチュン・ウォンを見て初めて気が付きましたが、彼は暗譜での指揮でした。そうですね・・・これって、暗譜でなくてはあんな指揮はできませんね。

こんな凄い指揮者がこれから日本フィルの首席指揮者になるとは何と言う僥倖でしょう。カーチュン・ウォン&日本フィルはジョナサン・ノット&東響と並ぶ存在になりそうです。saraiの心の中で日本フィルの位置づけが大きくなりました。2023年シーズンから、定期会員になろうかな・・・そのためには、どこかのオーケストラと縁を切らないとね。


今日のプログラムは以下です。


  指揮:カーチュン・ウォン[首席客演指揮者]
  管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団 コンサートマスター:田野倉 雅秋

  伊福部昭:シンフォニア・タプカーラ

   《休憩》

  バルトーク:管弦楽のための協奏曲


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目の伊福部昭のシンフォニア・タプカーラを予習したCDは以下です。

 広上淳一指揮日本フィルハーモニー管弦楽団 1995年8&9月 セッション録音

伊福部昭の芸術シリーズのCDで、作曲家自身の立ち合いの下、録音された記念碑的なCDです。実に熱のある素晴らしい演奏です。


2曲目のバルトークの管弦楽のための協奏曲を予習したCDは以下です。

 フリッツ・ライナー指揮シカゴ交響楽団 1955年 セッション録音

実は新たにユニバーサルプレーヤーを購入し、このSACDを初めて聴いてみました。ハイブリッドCDなので、これまでは通常のCD面を聴いていましたが、70年ほど前の録音とは思えない瑞々しさに改めて、感銘を受けました。50年前にレコードでこの演奏を聴いて、バルトークに夢中になっていた日々が蘇りました。



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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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06/18 08:33 五十棲郁子

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