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中村恵理、清冽な絶唱!『ラ・ボエーム』@宮崎芸術劇場 2019.5.19

中村恵理の清冽で圧倒的な歌唱には今日も言葉はありません。第1幕の有名なアリア《私の名はミミ》の可憐な歌唱に胸を熱くし、第3幕の《ミミの別れ》の哀しくも美しい歌唱に心を打たれ、第4幕の最期の恋の歌に涙をこらえきれず、その素晴らしい絶唱に魅了され尽くしました。彼女の透き通った声の魅力は無限に心に沁み通ってきます。ラ・ボエームのミミはミレッラ・フレーニで永遠に封印したつもりでしたが、遂にその封印を解く最高のソプラノが登場しました。ミレッラ・フレーニのミミを初めてウィーン国立歌劇場で聴いたのは27年前の5月でした。その時、フレーニは既に57歳。素晴らしい歌唱でしたが、若い頃の可憐な声質はもっと強靭な声に変っていました。30歳頃の声でミミを聴きたかったと思ったのも事実。今日聴いた中村恵理はsaraiが理想とするミミの声、そのものでした。遂に生きているうちに最高のミミが聴けたという思いで深い感動を覚えました。

これで昨年の蝶々夫人と合わせて、プッチーニのリリックなソプラノがタイトルロールを歌う2つの名作を中村恵理の最高の歌唱で聴けました。タイトルロールではありませんが、リリックなソプラノの役はもう一つ、《トゥーランドット》のリューです。これもこの夏、東京で中村恵理の歌唱を聴けます。もう素晴らしい歌唱が聴けるのは確信しています。オペラにはまったきっかけはプッチーニのリリックなソプラノの歌です。遂に最高の歌い手に巡り会えて、その歌唱を聴きとおすことができます。オペラ好きとしてはこれで思い残すことはありません。ん・・・、もう一つ、あるかな。リリックな歌唱と言えば、モーツァルトの《フィガロの結婚》のスザンナ、そして、《コジ・ファン・トゥッテ》のフィオルディリージも聴きたいところ。これも中村恵理の美しい歌唱で聴いてみたい。それにR.シュトラウスのいくつかのリリックな役も聴きたい。もう少し長生きして、中村恵理の美しい歌唱を聴きながら、人生を過ごしていきたい。オペラ好きの欲は果てしないものです。

今日のオペラはコンサート形式と言いながら、とても聴きどころが多かったんですが、結局、中村恵理の絶唱を思い出すと、あとはどうでもよくなるというのが本音です。まあ、それも何なので、少しだけ、オペラで感じた点を触れておきましょう。
歌手では福井敬(テノール)、鷲尾麻衣(ソプラノ)、甲斐栄次郎(バリトン)の3人は素晴らしい歌唱でオペラを盛り立ててくれました。中村恵理の美しい歌唱に傾注できたのも、この3人のサポートがあればこそでした。福井敬は特に中村恵理との2重唱で素晴らしく声を張り上げてくれました。鷲尾麻衣は第2幕のムゼッタのワルツ《私が街を歩けば》での熱演だけでなく、第4幕でのミミを気遣う優しい歌声で涙を誘ってくれました。甲斐栄次郎は終始、張りのある歌唱で存在感を示しましたが、第3幕でのミミとの掛け合いで優しくミミを支える見事な歌唱。さすがにウィーン国立歌劇場で活躍した人材です。

広上淳一率いる宮崎国際音楽祭管弦楽団は即席のオーケストラとは思えない、繊細で美しいプッチーニのメロディーを見事に奏でてくれました。そして、何と言っても、コンサートマスター席にはウィーン国立歌劇場で長年、オペラを支えてきたライナー・キュッヒルの姿がありました。終始、オーケストラをリードしたばかりでなく、ソロのヴァイオリンの響きの美しかったこと! 中村恵理とキュッヒルのソロの掛け合いの素晴らしさには鳥肌が立つ思いでした。ウィーン国立歌劇場で何回も聴いてきたキュッヒルのヴァイオリンの響きは今も健在。これが日本で聴けるとは望外の喜びです。

宮崎の合唱団、とりわけ、少年少女合唱団の美しい歌声も素晴らしかったです。よくぞ、ここまで練り上げましたね。さぞや、厳しい練習を積んだのでしょう。さらには、第2幕でバンダ、そして、会場内を行進した宮崎のブラスバンドの女性たちの素晴らしい演奏には度肝を抜かれました。彼女たちも鍛錬を積んだのでしょう。今後、音楽の道を進んでいってほしいと願います。

最後にひるがえって、

ソプラノ、中村恵理、恐るべし!!!


プログラムは以下です。

 第24回宮崎国際音楽祭 プッチーニの世界「青春の光と影」

  プッチーニ:歌劇『ラ・ボエーム』(全曲) コンサート形式
   ミミ:中村恵理(ソプラノ)
   ロドルフォ:福井敬(テノール)
   ムゼッタ:鷲尾麻衣(ソプラノ)
   マルチェッロ:甲斐栄次郎(バリトン)
   ショナール:今井雅彦(バリトン)
   コッリーニ:伊藤純(バス)
   ブノア/アルチンドロ:松森治(バス)
   パルピニョール:清水徹太郎(テノール)
   指揮:広上淳一
   宮崎国際音楽祭管弦楽団 コンサートマスター:ライナー・キュッヒル
   宮崎国際音楽祭合唱団(宮崎県合唱連盟有志)
   合唱指揮:浅井隆仁
   宮崎県吹奏楽連盟有志
 
  《アンコール》
    第2幕終盤 出演:全員


今年の宮崎音楽祭はこれで打ち止め。と言っても、saraiは昨夜の最終便で横浜から駆け付け、今年はこれだけ聴きました。しかし、それで十分に満足しました。来年の5月はウィーン遠征を予定しているので、残念ながら、宮崎音楽祭は聴けないかもしれません。宮崎音楽祭がますます発展していくことを祈っています。



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       中村恵理,        キュッヒル,  

宮崎国際音楽祭 モーツァルト:弦楽五重奏曲ト短調@宮崎県立芸術劇場 2017.5.6

今年も宮崎国際音楽祭に遠征。ライナー・キュッヒルとウィーン・フィルのメンバー、ミッシャ・マイスキーが演奏するモーツァルトの弦楽五重奏曲ト短調を聴くことにしました。有名曲ですが、意外に聴けそうで聴けない曲です。それに演奏メンバーが興味あります。
たっぷりと予習して、本番に臨みました。
予習した演奏は以下です。最高の1枚はアマデウス四重奏団&アロノヴィッツの新盤です。

アマデウス四重奏団、アロノヴィッツ
スメタナ四重奏団、スーク
ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団、シュタングラー
ラルキブデッリ
ブダペスト弦楽四重奏団、トランプラー
メロス四重奏団、バイアー
アルバン・ベルク四重奏団、ヴォルフ
ザロモン四重奏団、ウィストラー

意外によかったのが、アルバン・ベルク四重奏団&ヴォルフとメロス四重奏団&バイアーの2枚です。8枚のCDを聴いて思ったのは、この曲はなかなか、表現の難しい曲だということです。シンプルでありながら、深い味わいを持った傑作を十分、表現し尽くすのは並大抵のことではありません。過去において、バリリ四重奏団が録音を残してくれなかったのが残念です。まあ、アマデウス四重奏団&アロノヴィッツの演奏を聴いていると、十分、感銘を受けますけどね。ハーゲン・カルテットあたりの挑戦も期待したいところです。

で、今日の演奏ですが、冒頭の第1楽章はかなりの高速演奏であっさり目の表現です。いささか淡白な演奏が第2楽章まで続きます。それはそれで無駄な贅肉のない演奏ではあります。第3楽章にはいって、がらっと雰囲気が変わり、緊張感が高まります。ゆったりとした演奏ながら、パウゼの緊張感、抒情的な表現は一気に音楽の味わいを深めていきます。実演ならではの緊迫感です。ぐぐっと演奏に気持ちが引き込まれます。そして、第4楽章の冒頭の悲哀を感じさせる演奏の質の高さに感銘を受けます。キュッヒルのヴァイオリンの美しくも柔らかい響きが感興を高めます。悲哀感が頂点に達するとき、明るい長調に転換し、音楽は飛翔していきます。第1ヴァイオリンのキュッヒルの推進力とチェロのマイスキーの控え目とも言えるサポートによって、見事なフィナーレに収斂していきました。古典性と現代的な表現がマッチした名演でした。これで第1楽章の味わい深さが表現できていればとも思いましたが、これは聴くものの好みの問題かもしれませんね。

最初に演奏されたモーツァルトの《ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 第1番》はとても珍しい曲。これまで聴いたことはなく、このコンサートの予習で初めて聴きました。モーツァルトの中期の作品ですから、それなりに完成度の高い作品です。キュッヒルのヴァイオリン、コルのヴィオラで堪能させてもらいました。ウィーン・フィルのコンビの演奏で見事な演奏でした。

休憩後、メンデルスゾーンの弦楽八重奏曲です。このメンデルスゾーンの若いときの作品はあまり聴く機会がありません。これも以下のようにたっぷりと予習しました。

ラルキブデッリ
エマーソン四重奏団(多重録音)
イタリア合奏団
アカデミー室内管弦楽団
スメタナ四重奏団,ヤナーチェク四重奏団

室内合奏団のシンフォニックなアプローチと弦楽四重奏団主体の室内楽的なアプローチがありますが、スメタナ四重奏団&ヤナーチェク四重奏団の緻密な演奏がとても魅力的でした。

で、今日の演奏はミニ・ウィーン・フィルを思わせるシンフォニックな演奏で大変、気魄のこもった素晴らしい演奏でした。何と言っても、ライナー・キュッヒルの大変な力演が印象的でした。かって、ウィーン・フィルのコンサートマスター席に座っていたときの表情を思い出させるものでしたし、演奏の踏み込み方はそのとき以上のものでした。残りの7人のアンサンブルのサポートも見事でした。このまま、CD化してもらいたいくらいのレベルです。これまでウィーン風のシンフォニックな演奏がなかっただけに、決定盤になるかもしれません。それほど期待していなかったので、ある意味、嬉しい誤算の素晴らしい演奏でした。

今日のプログラムは以下です。

  モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 第1番 ト長調 K.423
     ヴァイオリン:ライナー・キュッヒル
     ヴィオラ:ハインリヒ・コル

  モーツァルト:弦楽五重奏曲 第4番 ト短調 K.516
     ヴァイオリン:ライナー・キュッヒル
     ヴァイオリン:ダニエル・フロシャウアー
     ヴィオラ:ハインリヒ・コル
     ヴィオラ:川崎雅夫
     チェロ:ミッシャ・マイスキー

   《休憩》

  メンデルスゾーン:弦楽八重奏曲 変ホ長調 Op.20
     ヴァイオリン:ライナー・キュッヒル
     ヴァイオリン:ダニエル・フロシャウアー
     ヴァイオリン:漆原啓子
     ヴァイオリン:川田知子
     ヴィオラ:川崎雅夫
     ヴィオラ:ハインリヒ・コル
     チェロ:ミッシャ・マイスキー
     チェロ:古川展生


最後、アンコール演奏がなかったのが残念です。せめて、メンデルスゾーンの弦楽八重奏曲の終楽章を演奏してもらいたかったんですけどね・・・。
来年はこのメンバーにウィーンのシュミードルを招いて、モーツァルトのクラリネット五重奏曲でもやってくれないかなあ。



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       キュッヒル,  

キュッヒルの美しい響きのゴルトマルク_神奈川フィル@横浜みなとみらいホール 2016.9.17

8月末でウィーン・フィルを退団のライナー・キュッヒルが早速、日本で演奏するというので聴くことにしました。演目はゴルトマルクのヴァイオリン協奏曲第1番。もちろん、ゴルトマルクの曲なんて聴いたことがありませんから、予習は欠かせません。幸い、この曲にはミルシテインが1957年にハリー・ブレック指揮、フィルハーモニア管と録音した素晴らしいCDがあります。ミルシテインの演奏の中でも傑出したもので、そのヴィルトゥオーソ的な演奏にはまったく魅了されるばかりです。今更ながら、ミルシテインの素晴らしさを再認識し、ゴルトマルクのヴァイオリン協奏曲第1番の聴きばえのする音楽にも魅惑されます。で、今日のキュッヒルの演奏ですが、出だしが固い演奏になったことを除いて、正確無比な音程と艶やかな響きは見事なものでした。ミルシテインのようなヴィルトゥオーソではありませんが、ウィーン風といった感じの魅力に満ちており、ゴルトマルクのヴァイオリン協奏曲第1番の美しさを十分に味わうことができました。特に第2楽章の魅惑的な美しさ、第3楽章の切れの良く、迫力に満ちた表現はさすがの演奏に思えました。ウィーン・フィル退団後のライナー・キュッヒルのソロや室内楽での一層の活躍は大いに期待できそうです。

後半のプログラム、マーラーの交響曲第5番ですが、第3楽章までは聴かなかったことにしましょう。何か書くと愚痴になってしまいます。出だしのトランペットのソロからつまづいたのですから仕様がありませんね。第4楽章は有名なアダージェット。神奈川フィルの弦楽パート、特にヴァイオリンのセクションの透明な響きが魅力です。少しばかり、テンポがスロー過ぎたので間延びしたのは指揮者のゲッツェルに帰するものがあります。ノーマルなテンポならば、もっと美しい演奏になったのが悔やまれるところではあります。第5楽章も弦楽セクションの健闘が目立ち、不調の管楽セクションをカバーしていました。指揮のゲッツェルがもう少しきめ細かい表現をしてくれたらと思うところもありましたが、第4楽章、第5楽章はそれなりに心地よく聴けました。全体的にはもう一つの演奏で残念でした。以前聴いたマーラーの交響曲第6番(金聖響指揮、2014.3.20)では素晴らしい演奏を聴かせてくれた神奈川フィルの今後の健闘を祈りたいと思います。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:サッシャ・ゲッツェル
  ヴァイオリン:ライナー・キュッヒル
  管弦楽:神奈川フィル

  ゴルトマルク:ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調Op.28
   《アンコール》バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番から サラバンド

   《休憩》

  マーラー:交響曲第5番嬰ハ短調




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       キュッヒル,  

ウィーンフィルのブラームスの響き:キュッヒル・カルテット ベートーヴェンサイクルⅥ@サントリーホール 2014.6.21

今日はキュッヒル・カルテットのベートーヴェン弦楽四重奏曲チクルスの第6回目、最終回です。
昨日、予習について触れなかったので、まず、それから。

初期の2曲、第5番と第6番はヴェーグ・カルテットの新盤(1972年)。くまどりのはっきりした個性的な演奏で、初期とは思えないほどの深みを感じさせられる素晴らしさです。是非、ヴェーグ・カルテットの演奏で後期も聴いてみましょう。
中期・後期の第11番と第16番はエマーソン・カルテットのライヴ録音。鋭角的な迫力に満ちた演奏です。一度、エマーソン・カルテットの実演を聴いてみたいと思っていますが、なかなか機会に恵まれません。
ピアノ・ソナタ第9番はクラウディオ・アラウの新盤と旧盤で聴きました。本当に素晴らしい演奏。先週、アラウの追悼演奏会が開かれたウィーン近郊のミュルツシュラークのブラームス博物館に行ったことが強い思い出として定着しそうです。実はこの演奏会はアラウ自身がブラームス博物館の開館記念に演奏する予定だったようですが、この1991年にアラウが亡くなったために代役として、イエルク・デムスが追悼演奏会を行ったそうです。そのときのライヴ録音がCDになっていて、素晴らしいブラームスが演奏されています。そのCD が欲しくて、わざわざミュルツシュラークまで足を運びました。
話を戻して、つぎはそのピアノ・ソナタ第9番をベートーヴェン自身が編曲した弦楽四重奏曲ですが、あまりCD 化されておらず、手持ちのスメタナ・カルテットの全集の中に見つけましたので聴きました。はじめて聴いたとは思えないほど耳馴染みがあります。もちろん、ピアノ・ソナタとして、耳に残っていますが、まるで最初から弦楽四重奏曲として作曲されたみたいに感じます。さすがにベートーヴェン自身が編曲しただけのことはありますね。
最後に弦楽五重奏曲Op.29はやはりCD が少く、手持ちではバリリ・カルテット(+ヒューブナー)だけです。これは力の入った演奏。典雅で軽やかというバリリ・カルテットの印象をいい意味でくつがえすものです。1953年の録音とは思えないほどのリッチなサウンドでもありました。
予習は以上です。昨年、ハーゲン・カルテットのベートーヴェン弦楽四重奏曲チクルスの折にまとめて予習したので、そのときに漏れてしまった演奏を聴いてみました。

さて、今日のプログラムは以下です。

  弦楽四重奏:キュッヒル・カルテット
   第1ヴァイオリン:ライナー・キュッヒル
   第2ヴァイオリン:ダニエル・フロシャウアー
   ヴィオラ:ハインリヒ・コル
   チェロ:ロベルト・ノーチ
  ヴィオラ:店村眞積
  ピアノ:河村尚子

  ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第6番変ロ長調 Op.18-6
  ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第9番ホ長調 Op.14-1

   《休憩》

  ベートーヴェン:弦楽四重奏曲ヘ長調 Hess34(ピアノ・ソナタ第9番の作曲家自身による編曲)
  ベートーヴェン:弦楽五重奏曲ハ長調 Op.29

   《アンコール》
    ブラームス:弦楽五重奏曲 第2番ト長調 Op.111 第2楽章
    ブラームス:弦楽五重奏曲 第2番ト長調 Op.111 第3楽章

最初の第6番は昨日の第5番とは違って、同じ初期ではありますが、バランスのよいアンサンブルで終始、満足して聴けました。

次はピアノ・ソナタ第9番。独奏は河村尚子。ちゃんと聴くのは初めてです。最近の彼女の評判を聞いて、聴きたいと思っていた人です。第1楽章を弾き出して、いきなり、がっかり。音の粒だちももうひとつだし、それ以上に音楽の流れが自然ではありません。別に予習したアラウと比較したわけではありませんが、何かせっかちな印象で間合いもとれていません。第2楽章に移ると落ち着いたのか、音楽に伸びやかさが出てきました。圧巻だったのは第3楽章。それまでの演奏が嘘だったように、音の響きは素晴らしく、音楽も自然に流れます。それに何と言っても音楽が生き生きと輝いています。全部で15分ほどの短い曲ですから、この調子で最初から弾き直して欲しいと真剣に思うほど、第3楽章の演奏は素晴らしいものでした。ということで、河村尚子の評価は持ち越しです。

休憩後はそのピアノ・ソナタ第9番をベートーヴェン自身が編曲した弦楽四重奏曲。何も言うことのない爽やかな演奏。ゆったりと楽しみました。

いよいよ最後の弦楽五重奏曲Op. 29。都響の特任首席でいつもお馴染みのヴィオラ奏者の店村が加わります。1人増えるとこんなに変わるものかと驚くほど、音の響きが豊かになります。普通の室内楽の団体ではこういうことはないかもしれませんが、今日のメンバーはいつもオーケストラで演奏している人たち。まるでちょっとした弦楽オーケストラの風情です。中期に向かうベートーヴェンの充実した音楽が響き渡ります。第1ヴァイオリンのキュッヒルはまさにコンサートマスターの引き締まった顔になり、メンバーに時折、鋭い視線を送ります。最初、ぎこちなかった店村も次第に溶け込んでいき、生き生きとした演奏。滅多に聴けないレアーな曲で、今日聴けたのはラッキー。大満足の演奏で幕となりました。

これで終わりと思ったら大間違い。この後のアンコールの凄かったこと! もしかしたら、本割よりも凄かったかもしれません。
ブラームスの弦楽五重奏曲ですが、まるでウィーン・フィルで聴くブラームスの交響曲を聴いているようです。少なくとも、コンサートマスターじゃなかった、第1ヴァイオリンのキュッヒルのヴァイオリンの響きはまさにウィーン・フィルが奏でるブラームスの交響曲の響きそのものです。キュッヒルのヴァイオリンは1人でもウィーン・フィルです。今度はキュッヒルと彼の仲間たちで是非、ブラームスの弦楽五重奏曲、弦楽六重奏曲を聴いてみたいものです。これまでCDで聴いてきたものとは一線を画すものになるような予感がします。

よろしくお願いします→サントリーホール殿。





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       キュッヒル,        河村尚子,  

4人だけのウィーン・フィル:キュッヒル・カルテット ベートーヴェン・サイクルⅤ@サントリーホール 2014.6.20

今日は帰国して早速のコンサート。ウィーンでは不在だったキュッヒルさんが主宰するキュッヒル・カルテットのベートーヴェン弦楽四重奏曲チクルス全6回のうちの第5回目です。本当は全部聴こうと思っていましたが、あいにく、ヨーロッパ遠征のスケジュールと重なってしまい、最後の2回だけ、聴くことになってしまいました。ちょうど、キュッヒルさんが日本に出かけたころにsaraiがウィーンに到着したのですから皮肉なものです。お陰で一番聴きたかった第14番、第13番(大フーガ付き)、第15番は聴き逃す羽目になり、トホホ。まあ、それでも珍しい弦楽四重奏曲ヘ長調Hess34と弦楽五重奏曲ハ長調Op.29が聴けるのでよかったと思いましょう。

今日のプログラムは以下です。

  弦楽四重奏:キュッヒル・カルテット
   第1ヴァイオリン:ライナー・キュッヒル
   第2ヴァイオリン:ダニエル・フロシャウアー
   ヴィオラ:ハインリヒ・コル
   チェロ:ロベルト・ノーチ

  ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第5番イ長調 Op.18-5
  ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第11番ヘ短調 Op.95「セリオーソ」

   《休憩》

  ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第16番ヘ長調 Op.135

   《アンコール》
    ハイドン:弦楽四重奏曲 第73番 op.74-2 第1楽章
    ハイドン:弦楽四重奏曲 第73番 op.74-2 第3楽章

1曲目の第5番はあれっという感じです。第1ヴァイオリンのキュッヒルが1人でがんがん弾きまくっているだけで他のメンバーの音はあんまり聴こえてきません。第1ヴァイオリン主導のカルテットにしても、これはちょっとアンサンブルが偏り過ぎです。しかし、第3楽章の途中からはほかのメンバーの音も鳴り始め、全員がんがん弾きまくって、響かせ過ぎかもしれませんが、これはこれで、面白い演奏です。前期の曲はモーツァルト的な典雅な演奏が多く、えてして覇気のない演奏になってしまうこともあります。今日の演奏は賛否両論あるでしょうが、まるで中期以降の曲を弾いているような感じで、気迫に満ちた演奏です。少し潤いには欠けるかもしれませんが、これもまたベートーヴェン演奏のひとつと言えるでしょう。大変面白く聴けました。

2曲目は正真正銘、中期の最後を飾る第11番、いわゆる、「セリオーソ」です。これは先程の第5番以上に全員、激しい気迫に満ちた演奏で圧倒的な迫力。強い響きは小さなホールには収まりきれないほどで、これはちょっとしたオーケストラなみ。まるでミニのウィーン・フィルを聴いているようです。ちょっと響き過ぎの感もありますが、それほど四人の楽器はよく響きます。十分に満足できる素晴らしい演奏でした。

休憩後は後期、そして、ベートーヴェン作品の最後を飾ると言ってもいい第16番 作品135です。先程までと一転して、抑えた響きで内省的な演奏に変わります。しみじみとした語り口でベートーヴェンが到達した境地を描いてみせてくれます。第13~15番の長大な傑作に比べて、物足りないと内心思っていた自分自身の不明さを恥じるばかりです。それほど充実した演奏でした。

このチクルス全体のプログラムを見てびっくり。毎回、前期、中期、後期と3曲並べ、それもそれぞれの最初の曲から順に並べただけの単純な構成です。しかし、今日のコンサートを聴いて、十分に納得がいきました。前期、中期、後期と順に聴いていくと、曲の深みが増していき、どんどんと引き込まれていきます。いかにベートーヴェンがこのジャンルで発展を遂げていったのかが胸に沁み込んでいきます。そういう構成では、実質、今回が最終回のコンサートです。前期だけが6曲で今回が第5番、中期と後期は5曲ずつですから、今回で終わり。残りは前期の第6番だけになります。今日は総仕上げとも言えるコンサートでした。中期と後期の第11番と第16番は圧巻の演奏で、感銘の大きいコンサートでした。

明日は残った前期の第6番と珍しい弦楽四重奏曲ヘ長調Hess34と弦楽五重奏曲ハ長調Op.29を組み合わせたコンサート。気楽に楽しめそうです。





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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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昨日投稿した記事の一部に誤りがありました。ドイツ騎士団の中庭はパスしないで、ちゃんと見ていました。追記・修正しました。申し訳ありません。

08/07 00:28 sarai

えりちゃさん、saraiです。お久しぶりです。

これは昨年の9月のウィーンですが、現在のコロナ禍では、古き良き日という風情ですね。もう、ポスト・コロナでは、行けたにし

07/20 12:41 sarai

Saraiさま、
お元気ですか?
新型コロナウィルス、自粛中。
このウィーンの散策を読んでいると、なんだか切なくて悲しくなってきました。
次はいつ行けるのかな、とか思う

07/20 05:08 えりちゃ

はじめまして。ブログ拝見させていただきました。私は、個人ブログを運営しているyuichironyjpと申します。フリーランサーとして活動しており、フリーランスで稼ぐ方法や、

06/14 23:46 Yuichironyjp

ありがたいコメント、嬉しいです。マーラーのファンのかたにこそ、読んでいただきたかったので、気持ちを共有できた思いです。自然の中にこそ、マーラーの音楽の本質はあり

04/23 23:45 sarai

マーラーの作品を聴きながら、ブログを読ませていただいています。
読みながら画像を見て、マーラーの過ごした風景に想いを馳せて楽しんでいます。
素敵なブログをありがと

04/23 21:47 

マーラー6番ですか・・・ハンマー打撃は勘弁してほしいものです。あったとしても、3回目の打撃だけは・・・

04/11 18:10 sarai
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