今日のリゲティ生誕100年の記念コンサートはまあ、企画の勝利ですね。このところ、演奏機会の増えてきたリゲティはある意味、今日、最もホットな作曲家だとsaraiは思っています。実に刺激的でエネルギーに満ち、そのユニークさは誰にも真似のできないもので、それでいて、新奇なものではなく、音楽的に筋が通っています。バルトーク以降、最も評価すべき作曲家だと思います。現代音楽のあるべき道をバルトークから引き継いだ本流です。
今日はそのリゲティの作品の中でも評価の高い弦楽四重奏曲とピアノのためのエチュードが演奏されます。明日も引き続き、残りの作品が演奏されるので、是非、行きたかったのですが、どうしても聴きたいアンナ・ヴィニツカヤがラフマニノフのパガニーニの主題による狂詩曲を弾く都響の演奏会があるので、涙を飲んで、今日、1日に絞りました。
前半のリゲティの弦楽四重奏曲第1番《夜の変容》はクァルテット・インテグラの演奏がとても素晴らしく、息を吞むようにして、聴き入りました。冒頭の第1ヴァイオリンの三澤響果が弾く4音主題がとても美しく、それだけで、ぐっと惹き付けられました。もう、詳しくは述べませんが、4人の緊張度高い演奏は最高で、予習で聴いたベルチャ四重奏団や本命のアルディッティ四重奏団の素晴らしい演奏を凌駕するようなものでした。以前彼らが弾いたリゲティの第2番も素晴らしかったんですが、彼はよほど、リゲティに心を寄せているんでしょう。それほど、リゲティの作品が素晴らしいとも言えます。この第1番はバルトークの影響が大きく、さらに新たな要素も付加しており、saraiは秘かに、バルトークの弦楽四重奏曲第7番と呼んでいます。でも、今日の演奏を聴いたら、第7番どころか、第10番というくらいに完成度が高く思えます。
前半の終わりにチェンバロの作品が3曲弾かれましたが、これは初めて聴きますが、素晴らしいです。チェンバロの川口成彦も1段鍵盤のチェンバロと2段鍵盤のチェンバロを弾き分けて、美しい演奏を聴かせてくれました。
後半はリゲティのスペシャリストの一人、トーマス・ヘルが何とも素晴らしい演奏を聴かせてくれました。ピアノのためのエチュードが難曲であることを忘れさせてくれるような見事な演奏。シンプルなパートも複雑なパートもすっきりと弾いてくれます。特に最初に弾いたエチュード第3巻は作品の質も高く、素晴らしい音楽に魅了されました。
リゲティの作品はいずれも演奏が難しそうですが、現代の音楽家たちは弾きこなしてくれて、リゲティの作品の素晴らしさを我々に示してくれます。リゲティの素晴らしい演奏に接することのできる時代に生きる幸福さを感謝しながら、リゲティの生誕100年の日をお祝いしたいと思います。
ハッピーバースデー!リゲティ
今日のプログラムは以下です。
トーマス・ヘル(ピアノ)
川口成彦(チェンバロ)
クァルテット・インテグラ
三澤響果(1st ヴァイオリン)
菊野凜太郎(2nd ヴァイオリン)
山本一輝(ヴィオラ)
築地杏里(チェロ)
リゲティ:弦楽四重奏曲第1番《夜の変容》
リゲティ:チェンバロのための 〈ハンガリー風パッサカリア〉
リゲティ:チェンバロのための〈ハンガリアン・ロック(シャコンヌ)〉
リゲティ:チェンバロのための〈コンティヌウム〉
《休憩》
リゲティ:ピアノのためのエチュード第3巻(1995-2001)
(白の上の白/イリーナのために/息を切らして/カノンI)
リゲティ:ピアノのためのエチュード第2巻(1988-94)
(ガランボロン/メタル/眩暈/魔法使いの弟子・不安定なままに/組み合わせ模様/悪魔の階段/無限柱)
最後に予習について、まとめておきます。
1曲目のリゲティの弦楽四重奏曲第1番《夜の変容》を予習したCDは以下です。
ベルチャ四重奏団 2018年5月&12月、フィルハーモニー音楽堂、ルクセンブルク セッション録音
刺激的でありながら、どこか、古典的とも思わせる素晴らしい演奏です。
2~4曲目のリゲティのチェンバロのための作品を予習したCDは以下です。
エリーザベト・ホイナツカ リゲティ・エディション6 鍵盤楽器のための作品集 1994年-1998年 セッション録音
リゲティ・エディション全9CDはリゲティの75歳を記念して企画されたもの。つまり、存命中のリゲティが立ち会ったレコーディングです。このチェンバロの作品は比較的初期のもので、聴きやすい(?)ものです。
5,6曲目のリゲティのピアノのためのエチュードを予習したCDは以下です。
ピエール=ロラン・エマール リゲティ・エディション3 ピアノのための作品集 1994年-1998年 セッション録音
上記と同様のリゲティ・エディションの1枚ですが、ここではエマールの超絶技巧と高い音楽性が聴きものです。
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