fc2ブログ
 
  

ハッピーバースデー!リゲティ 生誕100年@トッパンホール 2023.5.28

お昼の上大岡、ひまわりの郷でのフランク・ブラレイのピアノ・リサイタルの後、この記念すべきコンサートに駆けつけました。なお、お昼のフランク・ブラレイのピアノ・リサイタルの感想は後日、書きます。

今日のリゲティ生誕100年の記念コンサートはまあ、企画の勝利ですね。このところ、演奏機会の増えてきたリゲティはある意味、今日、最もホットな作曲家だとsaraiは思っています。実に刺激的でエネルギーに満ち、そのユニークさは誰にも真似のできないもので、それでいて、新奇なものではなく、音楽的に筋が通っています。バルトーク以降、最も評価すべき作曲家だと思います。現代音楽のあるべき道をバルトークから引き継いだ本流です。

今日はそのリゲティの作品の中でも評価の高い弦楽四重奏曲とピアノのためのエチュードが演奏されます。明日も引き続き、残りの作品が演奏されるので、是非、行きたかったのですが、どうしても聴きたいアンナ・ヴィニツカヤがラフマニノフのパガニーニの主題による狂詩曲を弾く都響の演奏会があるので、涙を飲んで、今日、1日に絞りました。

前半のリゲティの弦楽四重奏曲第1番《夜の変容》はクァルテット・インテグラの演奏がとても素晴らしく、息を吞むようにして、聴き入りました。冒頭の第1ヴァイオリンの三澤響果が弾く4音主題がとても美しく、それだけで、ぐっと惹き付けられました。もう、詳しくは述べませんが、4人の緊張度高い演奏は最高で、予習で聴いたベルチャ四重奏団や本命のアルディッティ四重奏団の素晴らしい演奏を凌駕するようなものでした。以前彼らが弾いたリゲティの第2番も素晴らしかったんですが、彼はよほど、リゲティに心を寄せているんでしょう。それほど、リゲティの作品が素晴らしいとも言えます。この第1番はバルトークの影響が大きく、さらに新たな要素も付加しており、saraiは秘かに、バルトークの弦楽四重奏曲第7番と呼んでいます。でも、今日の演奏を聴いたら、第7番どころか、第10番というくらいに完成度が高く思えます。

前半の終わりにチェンバロの作品が3曲弾かれましたが、これは初めて聴きますが、素晴らしいです。チェンバロの川口成彦も1段鍵盤のチェンバロと2段鍵盤のチェンバロを弾き分けて、美しい演奏を聴かせてくれました。

後半はリゲティのスペシャリストの一人、トーマス・ヘルが何とも素晴らしい演奏を聴かせてくれました。ピアノのためのエチュードが難曲であることを忘れさせてくれるような見事な演奏。シンプルなパートも複雑なパートもすっきりと弾いてくれます。特に最初に弾いたエチュード第3巻は作品の質も高く、素晴らしい音楽に魅了されました。

リゲティの作品はいずれも演奏が難しそうですが、現代の音楽家たちは弾きこなしてくれて、リゲティの作品の素晴らしさを我々に示してくれます。リゲティの素晴らしい演奏に接することのできる時代に生きる幸福さを感謝しながら、リゲティの生誕100年の日をお祝いしたいと思います。

 ハッピーバースデー!リゲティ


今日のプログラムは以下です。

  トーマス・ヘル(ピアノ)
  川口成彦(チェンバロ)
  クァルテット・インテグラ
   三澤響果(1st ヴァイオリン)
   菊野凜太郎(2nd ヴァイオリン)
   山本一輝(ヴィオラ)
   築地杏里(チェロ)

  リゲティ:弦楽四重奏曲第1番《夜の変容》
  リゲティ:チェンバロのための 〈ハンガリー風パッサカリア〉
  リゲティ:チェンバロのための〈ハンガリアン・ロック(シャコンヌ)〉
  リゲティ:チェンバロのための〈コンティヌウム〉

   《休憩》

  リゲティ:ピアノのためのエチュード第3巻(1995-2001)
   (白の上の白/イリーナのために/息を切らして/カノンI)
  リゲティ:ピアノのためのエチュード第2巻(1988-94)
   (ガランボロン/メタル/眩暈/魔法使いの弟子・不安定なままに/組み合わせ模様/悪魔の階段/無限柱)

  
最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のリゲティの弦楽四重奏曲第1番《夜の変容》を予習したCDは以下です。

 ベルチャ四重奏団 2018年5月&12月、フィルハーモニー音楽堂、ルクセンブルク セッション録音
 
刺激的でありながら、どこか、古典的とも思わせる素晴らしい演奏です。


2~4曲目のリゲティのチェンバロのための作品を予習したCDは以下です。

  エリーザベト・ホイナツカ リゲティ・エディション6 鍵盤楽器のための作品集 1994年-1998年 セッション録音
  
リゲティ・エディション全9CDはリゲティの75歳を記念して企画されたもの。つまり、存命中のリゲティが立ち会ったレコーディングです。このチェンバロの作品は比較的初期のもので、聴きやすい(?)ものです。
  

5,6曲目のリゲティのピアノのためのエチュードを予習したCDは以下です。

  ピエール=ロラン・エマール リゲティ・エディション3 ピアノのための作品集 1994年-1998年 セッション録音
  
上記と同様のリゲティ・エディションの1枚ですが、ここではエマールの超絶技巧と高い音楽性が聴きものです。  
  


↓ saraiのブログを応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね

 いいね!








テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

       クァルテット・インテグラ,  

若さの特権か、情感にあふれたヤナーチェクの「クロイツェル・ソナタ」のやりたい放題の圧巻の演奏 クァルテット・インテグラ@鶴見サルビアホール 2023.5.8

日本の若手の四重奏団の先頭を切るだけでなく、やりたい放題の演奏を聴かせてくれて、エネルギーを注入してくれるクァルテット・インテグラは今夜も素晴らしい演奏を聴かせてくれました。

最初のショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲 第6番で思い切りのよい演奏で素晴らしい響きをホールに充満させてくれます。新鮮で気持ちのよい演奏です。明るい響きで押し通した演奏は独自性もあり、好感を持てます。それにしても第1ヴァイオリンの三澤響果は冴え渡った美音で魅力を発散します。内声部の二人の男性奏者の力強いサポートを受けて、そのヴァイオリンの美音はどこまでも飛翔していきます。

次はヤナーチェクの弦楽四重奏曲 第1番「クロイツェル・ソナタ」。近年ますます光を放つのは中欧のリゲティとヤナーチェク。そう言えば、クァルテット・インテグラはリゲティでも素晴らしい演奏を聴かせてくれていますが、今日はヤナーチェク。彼らのヤナーチェクを聴くのは初めてかもしれません。冒頭から、豊かな響きで情感にあふれた演奏で突っ込んでいきます。4人の奏者がヤナーチェクの音楽に心酔したような演奏をしているのが聴衆にも伝わってきて、熱い思いを共感します。やり過ぎの気配もありますが、ここは若者の特権で、弾きたいように弾けばよいでしょう。そのあふれんばかりのエネルギーが年老いたsaraiの魂を揺さぶります。ヤナーチェク独特の世界が展開される中、あっと言う間に第1楽章が終わります。うーん、素晴らしい! 第2楽章に入っても、その熱い情感は高まるばかり。ヤナーチェクが老いらくの恋で書き上げた作品を現代の若者が共感して演奏する様に、聴くものの心は高潮するばかり。いやはや、凄まじい音楽がこの狭いホールに響き渡ります。何とも表現しがたい人の心の熱いほとばしりが演奏者と聴衆の間で火花を散らすような風情で、このヤナーチェクの稀有な音楽が実に濃厚な時間を作り出して、圧巻の演奏が終わります。こういう音楽が聴きたくて、日々、コンサートホールに足を運ぶのだという思いを噛みしめていました。

休憩後、シューベルトの弦楽四重奏曲 第14番「死と乙女」。有名過ぎるほどの作品です。クァルテット・インテグラが弾くと新鮮な思いで聴けます。天才シューベルトだけが作り出せた傑作であることを実感しながら、何とも贅沢な時間を過ごせました。いまさら何を言うことがあるでしょう。とても素晴らしい演奏だったとしか言えません。結構、長大な作品ですが、シューベルトにしては短いことが不満と言えば不満。ぎっしりと詰まった楽趣を楽しみました。

今月末はリゲティの生誕100年のバースデーコンサート。クァルテット・インテグラの演奏も楽しめます。音楽の楽しみは尽きません。

今日のプログラムは以下のとおりです。
  クァルテット・インテグラ
    三澤響果 vn   菊野凜太郎 vn   山本一輝 va   築地杏里 vc
    
  ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲 第6番 ト長調 Op.101

  ヤナーチェク:弦楽四重奏曲 第1番「クロイツェル・ソナタ」

   《休憩》

  シューベルト:弦楽四重奏曲 第14番 ニ短調 D.810「死と乙女」
   
   《アンコール》
     ハイドン:弦楽四重奏曲第74番 ト短調 Op.74-3 Hob. III: 74『騎士』 から 第2楽章 ラルゴ・アッサイ
     
     
最後に予習について、まとめておきます。

ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲 第6番を予習したCDは以下です。

  ルビオ・カルテット 2002年4月~9月 Roman Church、ミュレム、フランダース、ベルギー セッション録音
 
ルビオ・カルテットのショスタコーヴィチはsaraiの最も愛好するCDです。この演奏も精密でダイナミックなものです。


ヤナーチェクの弦楽四重奏曲 第1番「クロイツェル・ソナタ」を予習したCDは以下です。

 ベルチャ四重奏団 2018年5月&12月、フィルハーモニー音楽堂、ルクセンブルク セッション録音
 
美しい音色で表現力も豊かな演奏です。


シューベルトの弦楽四重奏曲 第14番「死と乙女」を予習したCDは以下です。

 アマデウス弦楽四重奏団 1959年4月 ハノーファー、ベートーヴェンザール セッション録音
 
古典的な響きの美しい夢見るような演奏です。



↓ saraiのブログを応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね

 いいね!









テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

       クァルテット・インテグラ,  

クァルテット・インテグラの充実したアンサンブルのベートーヴェン、バルトーク、ブラームスの弦楽四重奏曲第1番セット@第一生命ホール 2023.1.28

この第一生命ホールは勝どき駅近くの晴海トリトンスクエアの中にあり、建物の4階から上のフロアに作られた新しいホールです。座席767席という中規模のホールですが、オーバル型という結構、横長の形をしていて、室内楽としては大きめのホールです。残響の少ないデッドな響きで、音響的にあまり響くとは言えませんが、その変わり、響きが明瞭に聴き取れます。そのせいかもしれませんが、若手クァルテットのクァルテット・インテグラのいつもの生硬とも言える瑞々しさがそれほど感じられずに、代わりにベテランのクァルテットのような熟成さが感じられます。ホールの特性なのか、それとも現在、活動拠点をアメリカに移しているためなのか、判然としません。5月にいつもの鶴見サルビアホールで聴くので、はっきりと分かるでしょう。

今回は3大Bのシリーズの1回目ということで、ベートーヴェン、バルトーク、ブラームスの弦楽四重奏曲の第1番をずらっと並べたプログラムです。来年の第2回は第2番、再来年の第3回は第3番ということだそうです。ブラームスはそれで結構ですが、バルトークが6曲のうち、半分だけというのは中途半端ですね。いっそのこと、バルトークの第4番~第6番を並べたコンサートを企画してほしいですね。

最初はベートーヴェンの第1番。これは安定した響きのたいそう素晴らしい演奏でした。ベートーヴェンの後期よりもよい演奏です。やはり、彼らはベートーヴェンの後期四重奏曲はしばらく後に演奏したほうがいいのではと余計な心配をしてしまいます。それにベートーヴェンの作品18の6曲は後期ほどでないとしても、音楽的に大変充実していて、saraiは大好きです。そういう意味でも、この3大Bのシリーズはクァルテット・インテグラのベートーヴェンの第1番~第3番が聴けるといういい機会になります。しかし、そうなると、残りの第4番~第6番も聴きたくなりますね。

次はバルトークの第1番。これは最高に素晴らしい演奏でした。落ち着きと緊張感が融合して、素晴らしいアンサンブルが展開されました。とりわけ、各楽章でチェロが主導するところで、築地杏里が深い響きで魅了してくれました。全体的に緊密なアンサンブルが見事に機能し、後期ロマン派の輝きをみせるバルトークの名曲に酔いしれました。終楽章である第3楽章の後半はさらにアンサンブルの精度が高まり、ありえないような演奏を聴かせてくれました。

休憩後、ブラームスの第1番。実はこれがとてもよかったんです。バルトークよりもよかったかもしれません。ブラームスとしては最初の弦楽四重奏曲として、交響曲第1番と同様に、練りに練った作品です。saraiはこういう力の入り過ぎた作品は苦手ですが、クァルテット・インテグラはほどよいバランスで素晴らしいブラームスを聴かせてくれました。第2楽章のそこはかとない抒情など、素晴らしい演奏です。ところが第4楽章に入ったところで、saraiの集中力はぷっつりと切れてしまいます。ここまで結構、重たい曲が続きましたからね。第4楽章をちゃんと聴けていれば、このブラームスが今日一番の演奏だったかもしれません。まあ、第3楽章までは素晴らしい演奏が聴けたので、いいでしょう。

アンコール曲は最近も聴かせてもらったハイドンの弦楽四重奏曲第74番「騎手」Op.74-3。第2楽章のラルゴは美しい抒情の漂う世界を丁寧かつ緊張感高く歌っていきました。ハイドンの真骨頂を若い彼らが見事に演奏してくれました。

クァルテット・インテグラの着実な前進が感じられたコンサートでした。次、どれほどの演奏を聴かせてくれるか、楽しみです。


今日のプログラムは以下です。

  弦楽四重奏:クァルテット・インテグラ
   三澤響果 vn  菊野凜太郎 vn 
   山本一輝 va  築地杏里 vc

  ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第1番 ヘ長調 Op.18-1
  バルトーク:弦楽四重奏曲 第1番 Sz.40 BB52

   《休憩》

  ブラームス:弦楽四重奏曲 第1番 ハ短調 Op.51-1
 
   《アンコール》
     ハイドン:弦楽四重奏曲第74番 ト短調 Op.74-3 Hob. III: 74「騎手」から 第2楽章

最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第1番は以下のCDを聴きました。

 ベルチャ四重奏団 2011年 オールドバラ、スネイプ・モルティングス、ブリテン・スタジオ セッション録音
 
これがベルチャ四重奏団のベートーヴェンu弦楽四重奏曲全集の聴き始めでしたが、過大な期待ほどの演奏ではなく、少々、残念です。もっと、抒情に満ちた演奏を期待していました。


2曲目のバルトークの弦楽四重奏曲 第1番は以下のCDを聴きました。

 ベルチャ四重奏団 2007年 セッション録音

ベルチャ四重奏団はこちらのバルトークは大変、素晴らしい演奏ですっかり魅了されました。響きの美しさと幽玄な音楽表現は新たなバルトーク像を表出したものです。


3曲目のブラームス:弦楽四重奏曲 第1番は以下のCDを聴きました。

 ベルチャ四重奏団 2003年 セッション録音
 
ベルチャ四重奏団はブラームスの弦楽四重奏曲第2番が大変素晴らしい演奏だったので、期待して聴きましたが、この曲は相性が悪かったようで、もう一つの演奏。聴く側のsaraiの趣味の問題もありますが、どうもベルチャ四重奏団は曲によって、出来、不出来が極端にぶれます。どうやら、抒情的な作品への大胆な踏み込みがよいようです。かっちりした作品は今一つに思えます。しばらく、ほかの曲も聴いてみましょう。



↓ saraiのブログを応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね

 いいね!








テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

       クァルテット・インテグラ,  

クァルテット・インテグラのチャレンジャブルなハイドン、ウェーベルン、ベートーヴェン後期に感銘!@上大岡 ひまわりの郷 2022.11.7

平日のお昼、実に低料金で今、輝きを放つ若手クァルテットのクァルテット・インテグラを聴きました。ほぼ1ヵ月前に鶴見で聴いたばかりです。さすがにそれから成長したとは思えませんが、何とも若々しい演奏に魅了されました。ベテランのクァルテットほどの熟成はありませんが、代わりに生硬とも言える瑞々しさが眩しいほどです。輝かしい将来に向けての無限の可能性が感じられます。その成長過程の今が何とも聴いていて楽しい限りです。

最初の曲はハイドンの後期の弦楽四重奏曲第74番「騎手」Op.74-3。第1楽章と第4楽章は演奏している彼らも聴いているsaraiも弾むように楽しい音楽です。一方、第2楽章のラルゴは美しい抒情の漂う世界を丁寧かつ緊張感高く歌っていきます。弦楽四重奏曲の様式を確立したハイドンの真骨頂を若い彼らが見事に演奏してくれました。

次のウェーベルンは今や彼の十八番の演目。前回のコンサートでも聴かせてくれた無調で幽玄な世界をさらに高い精度で素晴らしく演奏。ともかく、ウェーベルンらしく、極限まで切り詰められた音楽を高い緊張感で演奏してくれて、saraiも集中して拝聴。第3楽章と第6楽章の素晴らしい演奏に魅了されました。

休憩後、今日のメインの演目であるベートーヴェンの弦楽四重奏曲第13番 変ロ長調 Op.130 + Op.133「大フーガ付き」。第1楽章の自由な曲想を弁証法的に弾き進めていきます。ベートーヴェンの晩年の高く深い精神性の込められた音楽が表現されます。若手の音楽家としては実に精度の高い音楽が響き、とても魅了されます。第2楽章も抑えた演奏で密やかな音楽が見事に奏でられます。第3楽章は美しい緩徐楽章。これも素晴らしい演奏です。続く第4楽章はレントラー。特に中間部の美しさが見事です。いよいよ、この作品の中核部である第5楽章に入ります。ベートーヴェンが書いたもっとも美しい音楽であるカヴァティーナです。クァルテット・インテグラの演奏も美しいのですが、これはもっと美しく弾いてほしかった感があります。特に第1ヴァイオリンがもっと自己主張してでも豊かな演奏にしてほしかったと思います。以前、何度も聴いたロータス・クァルテットの美しくて、とろけるような演奏が思い出されます。そして、今日の終楽章は大フーガです。saraiはベートーヴェンが書き直した終楽章よりも、もともとのこの大フーガを終楽章とした演奏を好みます。クァルテット・インテグラはこの雄大な大フーガを冒頭からがんがんと弾き進めます。とてもよいですね。実に長大で深遠な音楽が語られます。素晴らしい演奏ではありましたが、クァルテット・インテグラの演奏はまだまだ熟成への時間が必要だと思えました。

やんやの拍手でアンコールは再び、カヴァティーナ。心なしか、肩の力が抜けて、本編での演奏よりも美しい演奏に思えました。

最近は若手も臆することなく、西洋音楽の最高峰、ベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲に挑みます。彼らがこの素晴らしい音楽をどう熟成させていくかを聴いていくのも興味深いところです。来年1月には、クァルテット・アマービレの演奏で、このベートーヴェンの弦楽四重奏曲第13番 変ロ長調 Op.130 + Op.133「大フーガ付き」を聴きます。楽しみは尽きません。


今日のプログラムは以下です。

  弦楽四重奏:クァルテット・インテグラ
   三澤響果 vn  菊野凜太郎 vn 
   山本一輝 va  築地杏里 vc

  ハイドン:弦楽四重奏曲第74番 ト短調 Op.74-3「騎手」
  ウェーベルン:弦楽四重奏のための6つのバガテル Op.9

   《休憩》

  ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第13番 変ロ長調 Op.130 + Op.133「大フーガ付き」
 
   《アンコール》
     ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第13番 変ロ長調 Op.130 から 第5楽章 カヴァティーナ

最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のハイドンの弦楽四重奏曲第74番「騎手」Op.74-3は以下のCDを聴きました。

 リンゼイ弦楽四重奏団 2003年1月21-23日 聖トリニティ教会、ウェントワース、ヨークシャー、英国 セッション録音
 
リンゼイ四重奏団のハイドンはどれも素晴らしいです。


2曲目のウェーベルンの弦楽四重奏のための6つのバガテルは以下のCDを聴きました。

 ラサール弦楽四重奏団 1968年、1970年 ミュンヘン セッション録音
 エマーソン・カルテット 1992年10月  ニューヨーク州立大学パーチェス校、パフォーミングアーツセンター セッション録音

ラサール弦楽四重奏団の新ウィーン楽派の弦楽四重奏曲集は永遠の金字塔です。一方、エマーソン・カルテットの演奏の完成度の高さはウェーベルンが今や、古典であることを実感させます。


3曲目のベートーヴェンの弦楽四重奏曲第13番 変ロ長調 Op.130 + Op.133「大フーガ付き」は以下のCDを聴きました。

 リンゼイ四重奏団 1983年 聖トリニティ教会,ウェントワース、ヨークシャー、英国 セッション録音
 
リンゼイ四重奏団の旧盤のベートーヴェンの弦楽四重奏団全集からの1枚です。新盤もいいのですが、旧盤はさらに感銘深い演奏です。第13番の第6楽章は大フーガに差し換えて聴きました。PCのHDDの音源で聴いているので、差し換えは簡単なんです。



↓ saraiのブログを応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね

 いいね!








テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

       クァルテット・インテグラ,  

クァルテット・インテグラにはバルトークが似合う、そして、ウェーベルンも凄い!@鶴見サルビアホール3F音楽ホール 2022.9.30

ミュンヘンのコンクールで2位入賞を果たしたクァルテット・インテグラ。その成長ぶりが体感できたコンサートでした。

何と言っても、後半のバルトーク、熱い演奏でした。やはり、クァルテット・インテグラの若々しい演奏でのバルトークは凄まじいエネルギーを感じました。そして、メストの悲哀のこもった演奏もその真摯さが伝わる演奏でした。メストに始まり、第1楽章から第3楽章までのエネルギーの爆発の末、第4楽章はメストの悲哀と熱い情熱の昂ぶりに満ちた感動の演奏でした。

前半のハイドンの弦楽四重奏曲 第36番 Op.50-1も実に楽趣に満ちた演奏で、彼らが心から音楽を愛し、楽しんでいる様に魅了されました。素晴らしいハイドンでした。
続くウェーベルンの2曲は後期ロマン派の濃密な抒情から、ウェーベルンの究極とも思える切り詰め、凝縮した音楽まで、素晴らしく描き分けた演奏でした。アンコールでいみじくも今日はウェーベルン祭りと宣言した通り、再び、ウェーベルンのまだ切り詰めていない濃厚な中に無調の響きが炸裂する音楽をいかにも若武者らしく奏で切って、聴くsaraiも年甲斐もなく、興奮してしまいました。まるでバルトークの音楽の出現を予告するような凄まじい音楽を聴いて、まぶしい思いに駆られました。

いやはや、今日はプログラムの構成も素晴らしく、演奏も若さとエネルギーの燃えたぎるもので、何も言うことがありません。若者よ! 荒野を目指せ!


今日のプログラムは以下です。

  弦楽四重奏:クァルテット・インテグラ
   三澤響果 vn  菊野凜太郎 vn 
   山本一輝 va  築地杏里 vc

  ハイドン:弦楽四重奏曲 第36番 Op.50-1
  ウェーベルン:弦楽四重奏のための緩徐楽章
  ウェーベルン:弦楽四重奏のための6つのバガテル Op.9

   《休憩》

  バルトーク:弦楽四重奏曲第6番 Sz.114

   《アンコール》
   ウェーベルン:弦楽四重奏のための5つの楽章 Op.5 から 第1楽章 激しい動きで(Heftig bewegt)


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のハイドンの弦楽四重奏曲は曲目変更になったので、予習していません。

2~3曲目のウェーベルンは以下のCDを聴きました。

 ラサール弦楽四重奏団 1968年、1970年 ミュンヘン セッション録音

ラサール弦楽四重奏団の新ウィーン楽派の弦楽四重奏曲集は永遠の金字塔です。


4曲目のバルトークの弦楽四重奏曲第6番は以下のCDを聴きました。

 タカーチ弦楽四重奏団 1996年8月25-30日、9月9-13日 ノイマルクト、ライトシュターデル セッション録音
 
素晴らしいバルトーク。名演です。



↓ saraiのブログを応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね

 いいね!








テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

       クァルテット・インテグラ,
人気ランキング投票、よろしくね
ページ移動
プロフィール

sarai

Author:sarai
首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
たまには、旅ブログも書きます。

来訪者カウンター
CalendArchive
最新記事
カテゴリ
指揮者

ソプラノ

ピアニスト

ヴァイオリン

室内楽

演奏団体

リンク
Comment Balloon

金婚式、おめでとうございます!!!
大学入学直後からの長いお付き合い、素晴らしい伴侶に巡り逢われて、幸せな人生ですね!
京都には年に2回もお越しでも、青春を過ごし

10/07 08:57 堀内えり

 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

もろともにあはれとおもへ山ざくら 花よりほか

月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR