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ツィメルマン、2回目 ショパンもドビュッシーもシマノフスキも、そして、アンコールのラフマニノフもすべて最高水準の演奏・・・深く感銘するのみ@サントリーホール 2023.12.13

ツィメルマンの2回目のリサイタルです。前回は横浜みなとみらいホールで聴きました。アンコール曲以外、すべて同じ曲目です。チケット購入時点では曲目が発表されていませんでしたので、違う曲目になると思っていましたが、予想に反して、まったく同じ曲目。少し残念ですが、前回のリサイタルを聴いて、素晴らしい演奏だったので、再び、あの素晴らしい演奏が聴けるのかと思い、むしろ、楽しみになりました。

前回は、前半のプログラム、ショパンの夜想曲とピアノ・ソナタ第2番「葬送」はツィメルマンのレベルで考えると、もう一つ、期待外れの演奏に感じましたが、今日は違います。ツィメルマンの演奏が変わったのか、saraiの感じ方が変わったのか、分かりませんが、まったくレベルの違う演奏に思えます。今回のリサイタルはこの後、所沢でのリサイタルを残すのみで、会場がサントリーホールということもあり、ツィメルマンの気合いが入っていたことは間違いありません。とは言え、決して、肩の力が入っていたわけではなく、余裕の自然体の演奏です。さすが、巨匠らしさが感じられます。
夜想曲は夜の静寂の中、瞑想にあふれた詩情が横溢します。4曲の夜想曲の選択と構成もよく考え抜けており、まるでそういう曲集であるかのごとくの演奏です。とりわけ、最初の有名な2曲ではなく、後半の2曲がとびぬけて素晴らしい演奏です。特に最後の夜想曲 第18番 Op.62-2は圧巻の演奏で、夜想曲4曲を締め括りました。
ピアノ・ソナタ第2番「葬送」は情熱と平静な気持ちの間を揺れ動く内面を表出するような、実に繊細極まる演奏が第1楽章、第2楽章と続きます。第1楽章の冒頭の拙速とも思えるフレーズはあえて響きの美しさを犠牲にしてまでの演奏ですが、情感が極まる様を体現する圧倒的な演奏です。そして、その情感がおさまると実に静謐で美しい演奏に変わります。この情熱と静謐な美を交互に弾き分けて、内面の揺れる気持ちを表現します。ショパンはどんな心境だったのかと想像を巡らせてしまいます。そして、第3楽章の葬送行進曲に入ると、まるでしずしずと己の死に向かって歩むかのごとくの心情を吐露します。その暗い気分がトリオに入ると一転して、天に向かって救済を求めるように美しさの限りを尽くしたような音楽が胸を打ちます。そして、また、己の死に向かう葬送行進曲に回帰します。最後は狂おしいまでの情熱の爆発が短い第4楽章で表現されて、この内面のドラマが完結します。これがツィメルマンの表現するピアノ・ソナタ第2番「葬送」でした。
夜想曲と言い、ピアノ・ソナタ第2番「葬送」と言い、ツィメルマンのショパンはひとつの到達点だと思います。前回の感想はすべて撤回します。saraiの聴き方が浅かったようです。

ツィメルマンは後半のプログラムでもsaraiの期待を上回る演奏を聴かせてくれました。
まず、ドビュッシーの版画。3曲からなる曲集です。1曲目の塔(パゴダ)はガムラン音楽、2曲目のグラナダの夕べはスペイン音楽、3曲目の雨の庭はフランス童謡の引用 という世界各地の音楽から霊感を得たものですが、いずれもピアノの表現力の限界を極めるようにそのシーンの風景と印象を描き尽くします。1曲目の塔(パゴダ)は朝もやの光に包まれたアジアの平原の中に浮かび上がる幻想的な塔をくっきりと現出させます。ツィメルマンのその研ぎ澄まされたピアノの響きの美しさはあのミケランジェリにも迫るものです。特に高域の音の響きの美しさときたら、耳が洗われる思いです。
続く2曲目のグラナダの夕べは黄昏の光りに包まれたグラナダの街の雑踏をくっきりと現出させます。これは中音域の音の響きの美しさに感銘を覚えます。ここまではピアノがきらきらした光を美しく描きました。
最後の3曲目の雨の庭は激しく降る雨の様を表現します。雨の粒が飛び散るような感覚を覚えます。
無論、ドビュッシーの音楽そのものが素晴らしいのですが、それを表現するツィメルマンの音楽的感性も見事なんです。それにしても、ここで到達したドビュッシーの印象派音楽のピアノの表現がここまで素晴らしいとは、今日のツィメルマンの演奏を聴いて、初めて実感しました。

最後のシマノフスキのポーランド民謡の主題による変奏曲は表題で予想する音楽の枠を大きく超えた音楽であることは前回も実感した通りです。今日は前回よりも平静に音楽に耳を傾けました。第7変奏まではとても美しい変奏が続きます。ツィメルマンはスケールの大きい演奏で、熱く燃え上がるような情熱に満ちた音楽を聴かせてくれます。そして、第8変奏の葬送行進曲からの音楽の盛り上がりは半端なものではありません。ショパンの葬送行進曲のように暗い内面に閉じこもるのではなく、狂おしいような感情の表出で死への憧れのような音楽が展開されます。そして、第10変奏のフィナーレで音楽は最高に高潮し、白熱していきます。中間部の素晴らしいフーガの後、圧巻のコーダになだれこんでいきます。最後は圧倒的な完結部に息を呑みます。今日も素晴らしい演奏でした。そして、また、前回とは異なる味わいがあり、実演を聴く喜びは一入です。

アンコールのラフマニノフの前奏曲はあれっ、違う曲だ! でも、素晴らしい演奏です。そして、やはり、前回と同様にラフマニノフの前奏曲 Op.23-4も弾いてくれます。今日も極めて美しい演奏でした。ツィメルマンのラフマニノフを2曲も聴けて、満足です。


今日のプログラムは以下です。


  ピアノ:クリスチャン・ツィメルマン

  ショパン:夜想曲 第2番 変ホ長調 Op.9-2
       夜想曲 第5番 嬰へ長調 Op.15-2
       夜想曲 第16番 変ホ長調 Op.55-2
       夜想曲 第18番 ホ長調 Op.62-2
  ショパン:ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調「葬送」Op.35

   《休憩》

  ドビュッシー:版画
  シマノフスキ:ポーランド民謡の主題による変奏曲 Op.10
  
   《アンコール》
     ラフマニノフ:13の前奏曲 嬰ト短調 Op.32-12
     ラフマニノフ:10の前奏曲 ニ長調 Op.23-4
     

最後に予習について、まとめておきます。(前回と同じです。)

1~4曲目のショパンの夜想曲は以下のCDを聴きました。

 イリーナ・メジューエワ ショパン:ノクターン集 (21曲) 2009年7月、9月、10月、新川文化ホール(富山県魚津市) セッション録音

素晴らしく美しい演奏です。

 
5曲目のショパンのピアノ・ソナタ第2番「葬送」は以下のCDを聴きました。

 イリーナ・メジューエワ 京都リサイタル 2013 & 2015 2013年11月15日、京都コンサートホール アンサンブルホールムラタ ライヴ録音
 
メジューエワの気魄の演奏です。


6曲目のドビュッシーの版画は以下のCDを聴きました。

 イリーナ・メジューエワ 京都のイリーナ・メジューエワ ~ ライヴ録音集2007-2012 2012年10月19日、京都コンサートホール ライヴ録音

大変、力強い見事な演奏です。。


7曲目のシマノフスキのポーランド民謡の主題による変奏曲は以下のCDを聴きました。

 クリスチャン・ツィメルマン シマノフスキ:ピアノ作品集  2022年6月18日-22日、福山、ふくやま芸術文化ホール
 
素晴らしく明晰な演奏で、録音も素晴らしいです。

 
アンコールのラフマニノフの前奏曲 Op.23-4は以下のCDを聴きました。

 スヴィヤトスラフ・リヒテル 1959年4月28日~5月2日 ワルシャワ セッション録音
 
リヒテルは不思議なピアニスト。何とも美しいラフマニノフです。録音もステレオで素晴らしいです。なお、アンコール曲は他の会場でのコンサートで予想されたので、予習しておきました。



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       ツィメルマン,  

ツィメルマン、白熱のシマノフスキ そして、やすらぎのラフマニノフの前奏曲@横浜みなとみらいホール 2023.12.2

ツィメルマンの今日のリサイタルはチケット購入時点では曲目が発表されていませんでしたが、彼の最近の充実ぶりからは何を弾いても素晴らしい演奏が期待されたので、あえて、信用買いしました。

しかし、前半のプログラム、ショパンの夜想曲とピアノ・ソナタ第2番「葬送」はツィメルマンのレベルで考えると、もう一つ、期待外れの演奏です。並みのピアニストならば合格点なのでしょうが、彼なら、うーんと唸らせる演奏を聴きたいものです。ピアノ・ソナタ第2番「葬送」は美しい響きも情熱的なダイナミズムもありましたが、どうしてもホロヴィッツの硬質な響きの名演やアルゲリッチの天才的なひらめきの演奏が頭をよぎってしまいます。これがツィメルマンのショパンだという強烈なメッセージが聴きたかったんです。

ところが、やはり、ツィメルマンは只者ではありません。後半のプログラムでsaraiの不満を一掃してくれました。
まず、ドビュッシーの版画。3曲からなる曲集です。1曲目の塔(パゴダ)はガムラン音楽、2曲目のグラナダの夕べはスペイン音楽、3曲目の雨の庭はフランス童謡の引用 という世界各地の音楽から霊感を得たものですが、その研ぎ澄まされたピアノの響きの美しさに感銘を受けます。特に高域の音の響きの美しさときたら、耳が洗われる思いです。ドビュッシーの音楽そのものが素晴らしいのですが、それを表現するツィメルマンの音楽的感性も見事なんです。ただ、これはまだ序の口でした。
最後のシマノフスキのポーランド民謡の主題による変奏曲は表題で予想する音楽の枠を大きく超えた音楽でした。もっとも、ツィメルマンが昨年録音したCDでは標題通りの変奏曲に収まった演奏でした。ですから、今日のライヴ演奏が凄かったんです。曲の途中からは変奏曲というよりも《幻想曲》という標題のほうがふさわしいと思いながら聴いていました。同じポーランドのショパンよりもシューマンの音楽を継承するような魅力に満ちた音楽です。民俗的な音楽などではありません。ツィメルマンはスケールの大きい演奏で、熱く燃え上がるような情熱に満ちた音楽を聴かせてくれます。とりわけ、第8変奏の葬送行進曲からの音楽の盛り上がりは半端なものではありません。そして、第10変奏のフィナーレで音楽は最高に高潮し、白熱していきます。圧巻のコーダに感動します。これは一期一会のライヴ演奏です。ライヴで聴く楽しみはここにあります。決してCDなどでは味わえないスリルと興奮に満ちた音楽の世界です。

アンコールのラフマニノフの前奏曲 Op.23-4も極めて美しい演奏でした。うっとりと聴き入りました。1959年のワルシャワでのリヒテルの名演にも引けを取らない素晴らしさでした。ツィメルマンのラフマニノフもまとめて聴かせてほしいと感じます。


今日のプログラムは以下です。


  ピアノ:クリスチャン・ツィメルマン

  ショパン:夜想曲 第2番 変ホ長調 Op.9-2
       夜想曲 第5番 嬰へ長調 Op.15-2
       夜想曲 第16番 変ホ長調 Op.55-2
       夜想曲 第18番 ホ長調 Op.62-2
  ショパン:ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調「葬送」Op.35

   《休憩》

  ドビュッシー:版画
  シマノフスキ:ポーランド民謡の主題による変奏曲 Op.10
  
   《アンコール》
     ラフマニノフ:前奏曲 ニ長調 Op.23-4
     

最後に予習について、まとめておきます。

1~4曲目のショパンの夜想曲は以下のCDを聴きました。

 イリーナ・メジューエワ ショパン:ノクターン集 (21曲) 2009年7月、9月、10月、新川文化ホール(富山県魚津市) セッション録音

素晴らしく美しい演奏です。

 
5曲目のショパンのピアノ・ソナタ第2番「葬送」は以下のCDを聴きました。

 イリーナ・メジューエワ 京都リサイタル 2013 & 2015 2013年11月15日、京都コンサートホール アンサンブルホールムラタ ライヴ録音
 
メジューエワの気魄の演奏です。


6曲目のドビュッシーの版画は以下のCDを聴きました。

 イリーナ・メジューエワ 京都のイリーナ・メジューエワ ~ ライヴ録音集2007-2012 2012年10月19日、京都コンサートホール ライヴ録音

大変、力強い見事な演奏です。。


7曲目のシマノフスキのポーランド民謡の主題による変奏曲は以下のCDを聴きました。

 クリスチャン・ツィメルマン シマノフスキ:ピアノ作品集  2022年6月18日-22日、福山、ふくやま芸術文化ホール
 
素晴らしく明晰な演奏で、録音も素晴らしいです。

 
アンコールのラフマニノフの前奏曲 Op.23-4は以下のCDを聴きました。

 スヴィヤトスラフ・リヒテル 1959年4月28日~5月2日 ワルシャワ セッション録音
 
リヒテルは不思議なピアニスト。何とも美しいラフマニノフです。録音もステレオで素晴らしいです。なお、アンコール曲は他の会場でのコンサートで予想されたので、予習しておきました。



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       ツィメルマン,  

熟成のツィメルマン、圧巻のバッハ、ブラームス、ショパン@サントリーホール 2021.12.13

今日からサントリーホールに3日間、通います。まず、第1弾は今や巨匠ピアニストになったクリスチャン・ツィメルマン。今年は海外からのピアニストは年末になって、ヴァレリー・アファナシエフ、エフゲニー・キーシンと重量級のコンサートを聴きましたが、その締めが今日のクリスチャン・ツィメルマンです。ツィメルマンは今や、saraiにとって、聴き逃がせないピアニストの一人です。来日公演は曲目によらずに聴き逃がさないようにしています。今年はバッハが初聴きです。ブラームスとショパンは彼の得意の音楽です。

どんなバッハになるのかと思っていたら、実に軽いタッチの響きです。もっと重厚に弾くのかと思っていました。ツィメルマンは常に作曲家に寄り添う演奏をします。自己の音楽に引き寄せた演奏はしません。そうなると、こういう軽み(かろみ)のバッハになるのかな。実際、無理のない自然なスタイルの演奏が続きます。それでも次第に熱を帯びてくるのが不思議です。彼の演奏にぐっと惹き付けられます。2曲目のアルマンドあたりからは清聴の感じです。後半のサラバンドあたりからはぐっと演奏のレベルが上がります。もはや、軽い演奏ではありません。
それでも次に弾いたパルティータ第2番の演奏の質は第1番の比ではありません。1曲目のシンフォニアから熱演です。さらに後半のサラバンドからはさらにギアを上げます。最後のカプリッチョの凄いこと。正確なテンポ感のもと、切れのよい技巧の素晴らしいこと。音楽のノリも最高です。終わってみれば、パルティータ2曲の全体の構成感を練り上げた高精度な演奏であったことが分かります。細部の磨き上げと全体の統合、これは交響曲で言えば、マーラーみたいなものです。ツィメルマンも熟達の境地にさしかかったのでしょうか。

後半のブラームス。ツィメルマンのブラームスの晩年の作品を聴くのは初めてです。さすがに見事な演奏です。ブラームスの晩年の作品群、Op.116~Op.119の中でも一番ロマンの美しい3つの間奏曲 Op.117を極めて美しく演奏します。第1曲の子守歌の抒情的なメロディーの歌わせ方、第2曲の美しい分散和音の響かせ方、第3曲の陰影の付け方、うっとりするような演奏に浸ります。ブラームスは若い頃の作品の熱いロマンと晩年の枯れた詩情を弾き分けるのが困難ですが、ツィメルマンのように作曲家に寄り添うピアニストは見事に弾き分けることができます。シフやレーゼルに肉薄するレベルのブラームスを聴かせてもらいました。
最後はお得意のショパン。ここでツィメルマンは本来の自分に立ち返ったような奔放さで思いっ切り、ピアノを叩きます。第1楽章からショパンの香気が立ち上ります。特に優美な第2主題の美しさには魅惑されます。軽快な第2楽章のスケルツォを経て、第3楽章のラルゴの詩情の輝きと言ったら、ショパン好きではないsaraiでさえ、うっとりとしてしまいます。そして、第4楽章の豪快なピアニズムの凄いこと。弾き終わったツィメルマンもさすがに一時、放心状態になるほどです。弾き切ったという感じですね。そうそう、何故か、第2楽章の後で、彼はちょっとステージから去りました。体調があまりよくなかったのでしょうか。普通はこういう場面はありませんね。それでもステージに戻ってきた後の第3楽章以降の凄まじい演奏はまったく体調の悪さなどは微塵も感じさせませんでした。

いつもの通り、アンコールはなしです。それでも今日は最後にお茶目にサンタクロースの格好に扮して、ステージに現れて、大サービスでした。ご苦労様でした。


今日のプログラムは以下のとおりでした。

  ピアノ:クリスチャン・ツィメルマン

  J. S. バッハ:パルティータ第1番 変ロ長調 BWV 825
  J. S. バッハ:パルティータ第2番 ハ短調 BWV 826

   《休憩》

  ブラームス:3つの間奏曲 Op. 117
  ショパン:ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 Op. 58

   《アンコール》
     なし


最後に予習について、まとめておきます。

1~2曲目のJ.S.バッハのパルティータを予習したCDは以下です。

  クラウディオ・アラウ 1991年3月26日~4月7日 セッション録音

ピアノの巨匠クラウディオ・アラウが齢88歳にして、死の2か月前に初録音したバッハのパルティータ集です。残念なことに第4番と第6番は録音する前に亡くなってしまいました。saraiの愛聴盤のうち、こんなに繰り返し聴いた演奏はほかにはありません。何十回聴いたでしょう。久しぶりに聴いて、またその演奏に魅せられました。老齢故におぼつかなげな指回しすらも魅力です。何と言ってもその美しい響きはまさに天国の音楽です。これからも聴き続けることになりそうです。


3曲目のブラームスの3つの間奏曲を予習したCDは以下です。

  ペーター・レーゼル 1972-74年 ドレスデン・ルカ教会 セッション録音 ブラームス・ピアノ独奏曲全集(5CD)

ブラームスはレーゼルかカッチェンの録音で決まりです。シフが録音すれば、それに割ってはいるでしょう。レーゼルは今年、最後の来日を果たしてくれました。このブラームスは7年前の来日時の演奏で聴きました。ずっしりと重い演奏で聴き応えがありました。


4曲目のショパンのピアノ・ソナタ第3番を予習したCDは以下です。

  マルタ・アルゲリッチ 1967年1月 ドイツ、ミュンヘン セッション録音

今日のツィメルマン同様、アルゲリッチはショパン・コンクールの覇者。その優勝の2年後の演奏です。天才ならではの音楽がここにあります。



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       ツィメルマン,  

若きブラームスの狂奔するロマン クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル@横浜みなとみらいホール 2019.3.16

何せ、このリサイタルのチケットは曲目未定で購入したものです。クリスチャン・ツィメルマンなら、何を弾かせてもきっと満足させてくれるだろうと思った由。そして、その通り、素晴らしい演奏でした。悔しかったのはほかのコンサートホールのリサイタルも同じ曲目だろうとにらんでこのみなとみらいホールだけのチケットを購入したら、何と2種類のプログラムになったことです。ほかも聴きたかった! もっとも、ショパンのスケルツォ全4曲は共通プログラムでブラームスのピアノ・ソナタ第3番が聴けないだけですが、やはり、そのブラームスも気になります。

実際、今日はブラームスのピアノ・ソナタ第2番が素晴らしかったんです。ブラームスの若い頃の作品であまり演奏機会はありませんが、名曲であることを実感させてくれるような熱い演奏でした。以前聴いたヤンソンス&バイエルン放送交響楽団とのブラームスのピアノ協奏曲第1番の演奏にも匹敵するような内容でした。若いブラームスのロマンの奔流を感じさせてくれるような燃え上がる演奏でした。このピアノ・ソナタ第2番は番号こそ第2番ですが、これは楽譜の出版の順番であって、実際は最初に書かれた作品です。第1番のソナタより以前の、1852年11月にハンブルクで完成された作品で、ブラームスが19歳のときの作品です。この翌年の1853年にブラームスはデュッセルドルフのシューマン夫妻のもとを訪れます。そして、ロベルト・シューマンに聴かせたピアノ作品はこの年に作曲した第1番のソナタです。演奏の途中で中断させて、クララを呼びにいったほどの気に入りようで、結局、ブラームスはシューマン宅に1か月も居候することになります。ですから、多分、この第2番のソナタも聴かせたんでしょう。実際、第2番のソナタは1954年に改訂後、クララ・シューマンに献呈することになります。こういう熱情的なロマンはシューマンにはないので、シューマンも感じ入るところが多かったのではないでしょうか。もちろん、ブラームスの晩年の渋くて精神性の深いピアノ作品群は最高に好きですが、この若いころの作品にも目を開かせられました。あえて、晩年の作品ではなく、この最初のピアノ・ソナタをプログラムに入れたツィメルマンの思いを汲み取りました。

ショパンのスケルツォもブラームスに負けずに熱いロマンが迸りますが、ブラームスを聴いた後では、ショパンのお洒落で完成度の高いスケルツォよりもドイツ的なブラームスの武骨さのほうに心が傾きます。無論、ツィメルマンの演奏は素晴らしかったんですけどね。ショパンのスケルツォ全曲をこのレベルで弾けるのは、やはり、ショパンの同郷のツィメルマンならではのことでしょう。迫力もあり、抒情も極まる名演でした。

いつものようにアンコールはなしです。

今日のプログラムは以下です。

  ピアノ:クリスチャン・ツィメルマン

  ショパン:4つのマズルカ Op. 24
   第14番 ト短調 Op. 24-1
   第15番 ハ長調 Op. 24-2
   第16番 変イ長調 Op. 24-3
   第17番 変ロ短調 Op. 24-4

  ブラームス:ピアノ・ソナタ 第2番 嬰へ短調 Op. 2

   《休憩》

  ショパン:スケルツォ全4曲
   第1番 ロ短調 op.20
   第2番 変ロ短調 op.31
   第3番 嬰ハ短調 op.39
   第4番 ホ長調 op.54

   《アンコール》

  なし


最後に予習したCDをまとめておきます。

ショパンの4つのマズルカ Op. 24は以下のCDを聴きました。

 ジャン=マルク・ルイサダ、1985年 ワルシャワ 第11回ショパンコンクール
 サンソン・フランソワ、1956年2月/3月 パリ、サル・ドゥ・ラ・ミュチュアリテ

ジャン=マルク・ルイサダはこの1985年の第11回ショパンコンクールで5位。きっと不本意な結果だったでしょう。この素晴らしい演奏を聴けば分かります。日本の小山実稚恵が4位、そして、優勝はブーニンでした。ルイサダはこの後、1990年~1991年、2008年の2回、マズルカ全曲を録音しています。マズルカと言えば、ルイサダですね。
そして、やはり、ショパンと言えば、サンソン・フランソワ。まさに名人芸としか言えない素晴らしい演奏です。


ブラームスのピアノ・ソナタ 第2番は以下のCDを聴きました。

 ジュリアス・カッチェン、1963年9月 セッション録音 ロンドン デッカ第3スタジオ
 ペーター・レーゼル、1972年 セッション録音 ドイツ ドレスデン ルーカス教会
 クラウディオ・アラウ、1973年6月 セッション録音 ドイツ
 スヴャトスラフ・リヒテル、1986年5月27日 ライヴ録音 イタリア マントヴァ 
 クリスチャン・ツィメルマン、1979年6月 セッション録音 ミュンヘン ヘルクレスザール

ジュリアス・カッチェン、ペーター・レーゼル、クラウディオ・アラウの3人はいずれもブラームスを得意にしたピアニスト。究極の演奏を聴かせてくれます。とりわけ、アラウの美音といったら、その透明感に酔いしれます。しかし、1枚とるのなら、やはり、天才カッチェンを置いて、他はないでしょう。まさにパーフェクトでブラームスの真髄を聴かせてくれます。彼の弾くブラームスはどれも最高の演奏です。巨匠スヴャトスラフ・リヒテルも老境に至って、素晴らしいブラームスを残してくれました。この1986年のマントヴァのライヴの2年後にも、1988年6月19日のフランスのトゥールでのライヴを残してくれました。いずれもブラームス好きには必聴のものです。70代とは思えない素晴らしい響きの演奏です。肝心のクリスチャン・ツィメルマンのCDですが、これは彼が若い頃の演奏です。なかなか素晴らしいのですが、4人の巨匠には及びません。現在のクリスチャン・ツィメルマンが再録音すれば、素晴らしいCDになりそうです。


ショパンのスケルツォ集は以下のCDを聴きました。

 シプリアン・カツァリス、1984年1月 セッション録音 テルデック・スタジオ、ベルリン

これはとても素晴らしい演奏です。これを聴けば、もう、ほかのCDを聴く気になりません。迸る情熱、ロマンティックな抒情、これ以上の演奏はないでしょう。



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       ツィメルマン,  

クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル@横浜みなとみらいホール 2016.1.10

昨年聴いたヤンソンス&バイエルン放送交響楽団とのブラームスのピアノ協奏曲第1番の演奏に感銘を受けたクリスチャン・ツィメルマンのピアノをちゃんと聴いてみたいと思い、このリサイタルを聴いてみることにしました。
結果、凄いシューベルトでした。何が凄いって、これはツィメルマンが自分のピアノを表現しようというのではなく、あくまでもシューベルトの音楽の表現だけに徹しているという稀有な演奏なんです。最初聴いているうちはあまりに没個性に思えて、物足りない感じでしたが、曲が進むにつれて、シューベルトの音楽の美しさに心が洗われる思いになります。

前半のプログラムのピアノ・ソナタ第20番イ長調D.959は聴いているsaraiの集中力の欠如もあり、表現力が不足しているピアノというふうに誤認してしまったきらいがありました。もったいない聴き方をしてしまったかもしれません。

後半のプログラムに入り、saraiの集中力も高まり、ツィメルマンのシューベルトにただただ奉仕していく姿勢のピアニズムにぐっと聴き入ってしまいます。ピアノ・ソナタ第21番変ロ長調D.960は素晴らしいとしか言えない演奏です。特に第2楽章の美しさはもう大変なものです。シューベルトの憧れ、そして、ため息とも思える音楽はこの世のものとは思えません。何て、人生は美しいんだろう!っていうシューベルトの音楽に共感してしまいます。これがシューベルトの最後のピアノ・ソナタのメッセージなんでしょうか。限りある命を生きている人間だからこそ、その人生は美しいという憧れにも似た燃える思い・・・シューベルトのロマンにあふれた抒情をツィメルマンのピアノはしっかりと聴衆に伝えてくれました。一転して、楽し気な様子の第3楽章を経て、第4楽章では、ツィメルマンがためていた思いのたけを一挙に爆発させます。聴いているsaraiを一緒に高みに飛翔させてくれる感動のフィナーレです。

素晴らしいシューベルトでした。このピアノ・ソナタ第21番変ロ長調D.960は内田光子ピリスの素晴らしい演奏も聴いてきましたが、シューベルトの音楽に忠実という点において、今日のツィメルマンの演奏が一番に思えます。

今日のプログラムは以下です。

  ピアノ:クリスチャン・ツィメルマン

  シューベルト:7つの軽快な変奏曲 ト長調
  シューベルト:ピアノ・ソナタ第20番 イ長調 D.959

   《休憩》

  シューベルト:ピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調 D.960

   《アンコール》

  なし

アンコールは不要に思えたコンサートでした。この究極とも思えるピアノ・ソナタ第21番変ロ長調D.960を聴いた後に一体、何が聴けるでしょう。たとえ、名曲である即興曲でさえもきっと蛇足に思えるでしょう。



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Author:sarai
首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
たまには、旅ブログも書きます。

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10/07 08:57 堀内えり

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08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
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その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

もろともにあはれとおもへ山ざくら 花よりほか

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