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天才R.シュトラウスの音響世界を描き尽すティーレマン&シュターツカペレ・ドレスデン@サントリーホール 2016.11.22

この5日間、ロベルト・ホルの《白鳥の歌》の絶唱をはさんで、サントリーホールで素晴らしいオーケストラコンサートを聴き続けて、これ以上の満足はないくらいです。特に昨日のMTT&サンフランシスコ交響楽団のマーラー、今日のティーレマン&シュターツカペレ・ドレスデンのR.シュトラウスは絶品中の絶品で感動の極み。

今日はティーレマンもさることながら、シュターツカペレ・ドレスデンの素晴らし過ぎる響きに酔いしれました。最初のベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番での何とも言えない弦楽合奏の響きは音響的に聴いているだけで気持ちよくなります。音楽以前の素晴らしさです。やはり、世界最高峰に並び立つオーケストラです。そして、後半のR.シュトラウスのアルプス交響曲ではオーケストラ演奏の極みとも言うべき痺れるような官能美に満ちた音響を響き渡らせてくれました。弦楽パートの素晴らしいことはもちろんですが、金管がこれほどのレベルにあるのはシカゴ交響楽団くらいしか思い当たりません。そのシカゴ交響楽団を聴いたのも随分以前のことですから、saraiがしっかりと記憶に留めている超一流のオーケストラのなかではこのシュターツカペレ・ドレスデンが最強です。トータルな力量で言えば、シカゴ交響楽団を番外にすると、ウィーン・フィル、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団と並んで世界の3強です。ティーレマンが首席指揮者に就任後はますます強力なアンサンブルに上りつめている印象もあります。今度の日曜日にヤンソンス指揮のバイエルン交響楽団を聴きますが、この3強に食い込める実力が感じられるでしょうか。ベルリン・フィルは音響的には素晴らしいですが、音楽的表現で3強の後塵をはいしている感じが否めません。もちろん、ハンティンクやティーレマンが振れば、その実力を発揮するかもしれませんけどね。ペトレンコはまだ聴いたことがないので、これからベルリン・フィルがどうなるのか、予想もできません。

さて、肝心のティーレマンですが、もちろん、シュターツカペレ・ドレスデンのアンサンブル力だけによって音楽を構成しているわけではありません。ワーグナー、ブルックナー、そして、R.シュトラウスを振るときには尋常ではない力を思い知らされることになります。シュターツカペレ・ドレスデンとのR.シュトラウスでは、英雄の生涯、メタモルフォーゼン、ばらの騎士(オペラ)と聴いてきて、思わぬことに気が付きました。意外に正統派的な指揮で、その剛直さを隠して、とても美しい演奏を展開するんです。多分、よほど、R.シュトラウスは相性がよくて、余計な力を入れないで、真っ正面から音楽美・音響美を追求できるのではないでしょうか。実は今日のアルプス交響曲も高らかに音響美を追求した演奏でした。もちろん、それだけに終わったら、下手な描写音楽に堕することになりますが、ティーレマン流の綿密な音楽設計が底流にあります。見かけ上はシュターツカペレ・ドレスデンのアンサンブルの音響美が聴こえてくるわけですが、その実、本当に素晴らしかったのはティーレマンの音楽解釈です。後半まではとても美しい自然描写とも思える音響が流れます。後半、嵐の中を下山した後に音楽の本当の山場がやってきます。予習したティーレマンが指揮したウィーン・フィルとの演奏でもそうでした。激しい起伏のある音楽のあとにやってくるカタルシスとも思える安らかな音楽が極め付きなんです。自然の中に己を置いて、自然の大きさ・豊かさを感じ、自然と自分を一体化して、安らかで優しい気持ちになり、来るべき死を受け入れる。これこそ、天才R.シュトラウスの究極のテーマではないでしょうか。それをティーレマンは最高の形で表現してくれます。晩年のR.シュトラウスは《4つの最後の歌》でもこういう最終的な安寧さを提示してくれましたし、最後の2つの楽劇《ダナエの愛》、《カプリッチョ》でも最終的な安寧さで聴く者を感銘させてくれました。晩年にはまだ遠かったアルプス交響曲でも既にこの終生のテーマは埋め込まれていたことをティーレマンは見事に表現してくれました。シュターツカペレ・ドレスデンの音響美をベースに究極の音楽表現を完成したティーレマンの偉大な才能に敬意を表したいと思います。saraiはこの終盤の美しさ、安らかさ、優しさに大変な感動を味わうことができました。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:クリスティアン・ティーレマン
  ピアノ:キット・アームストロング
  管弦楽:シュターツカペレ・ドレスデン

  ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 Op.19
   《アンコール》 J.S.バッハ:パルティータ第1番 変ロ長調 BWV825 メヌエット(ピアノ・アンコール)

   《休憩》

   R.シュトラウス:アルプス交響曲 Op.64


ところでブロンフマンの代役を務めたキット・アームストロングは見事なピアノを聴かせてくれました。このモーツァルトもどきとも言えるベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番に関しては、恐らく、ブロンフマンと同等以上のピアノ演奏を繰り広げてくれたという印象です。ブロンフマンの真骨頂はプロコフィエフにありますから、今回の曲目はもともと、そんなに期待していませんでした。キット・アームストロングは粒立ちのよいクリアーな響きでモーツァルト、あっ違った、ベートーヴェンの協奏曲を美しく表現しました。モーツァルト的な音階も見事な演奏でした。アンコールのバッハは音量を少し抑えて、バッハの静謐な音楽を美しく演奏。何と言っても、このパルティータがsaraiが偏愛する曲なので、そんなに簡単に最高だったとは言いませんが、これならば、リサイタルでも聴いてもいいかなと思えるほどの演奏ではありました。楽しみな若手のピアニストの一人が現れました。

音楽の秋のコンサートはほとんど、これでおしまい。残すはヤンソンス指揮バイエルン放送交響楽団のマーラーの交響曲第9番を残すのみ。まだ、最後の楽しみが残っています。それを聴いた後にsaraiの重大な発表を予定しています。お楽しみにね。



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       ティーレマン,        シュターツカペレ・ドレスデン,  

ティーレマンが振るとワーグナーの音楽が輝く!!《ラインの黄金》シュターツカペレ・ドレスデン@サントリーホール 2016.11.18

ティーレマンの指揮はやはり凄いです。やや地味な印象の《ラインの黄金》もティーレマンが振れば、こうも輝かしい響きになるのですね。ティーレマンが振るワーグナーのオペラを聴くのはウィーン国立歌劇場での《パルジファル》に続いて、2回目ですが、その素晴らしさに圧倒されてしまいます。ティーレマンにはワーグナーが一番、似合っています。今日は終始、椅子に座ったままでの指揮で、それほどの大きなアクションもありませんでしたが、それでこの迫力でした。終幕後、振り返ったティーレマンの顔は大変紅潮していましたから、なかなかの熱気に満ちた指揮だったようです。

今日のオペラはコンサート形式ではなく、ホールオペラです。舞台後方の巨大なパイプオルガンの下に中空のミニステージを設置して、一夜限り(実際は日曜も公演があるので2夜限り)のサントリー歌劇場の出現です。ミニステージの下のオーケストラが陣取る舞台がまるでオペラハウスのオーケストラピットのようにも見えます。ワーグナーの楽劇はシンプルな舞台セットでOKなので、こういう形式で十分にオペラの上演が可能です。この調子で来年もティーレマンが《ワルキューレ》をやってくれないかと淡い望みを抱いてしまいます。4年かけてのリング上演です。

歌手はちゃんと衣装を着けての登場です。最初から圧倒的な歌唱を聴かせてくれたのはアルベリッヒ役のアルベルト・ドーメンです。まるで主役のような堂々たる歌唱。ミヒャエル・フォッレのヴォータンもよかったのですが、食ってしまった印象があります。そういえば、2年前にバルセロナのリセウ劇場で《ワルキューレ》を聴いたときには、ドーメンが素晴らしいヴォータンを歌ってくれました。今日もドーメンのヴォータンでもよかったんでしょうが、やはり、アルベリッヒはキーになる登場人物なので、ドーメンが歌ったのが正解なんでしょう。とは言え、ドーメンとフォッレを入れ替えたら、どうだったんだろうという興味もあります。藤村実穂子のフリッカもやはり、期待通りの素晴らしさ。ますます、声に磨きがかかってきたようです。ただ、歌う場面が少ないのが残念なところです。やはり、2年前のバルセロナのリセウ劇場での《ワルキューレ》でも彼女がフリッカを歌いましたが、こちらは出番が多かった分、その素晴らしさが際立っていました。これ以外の歌手も粒よりで素晴らしい歌唱を聴かせてくれて、満足しました。

とは言え、この舞台での主役はティーレマンであり、彼が指揮したシュターツカペレ・ドレスデンです。このコンビの演奏を聴くのは昨年の2月のサントリーホールでのブルックナーとR・シュトラウス以来、約1年半ぶりですが、その美しい響き、それでいて、重厚な迫力もある響きは見事です。ウィーン・フィル、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団に並ぶ存在ですね。もうすぐバイエルン放送交響楽団も聴けますが、どうでしょうね。もちろん、ベルリン・フィルも忘れたわけじゃありません。来週はオペラではなく、コンサートでティーレマン&シュターツカペレ・ドレスデンのR・シュトラウスを聴きますので、そのときに詳細な感想を書きましょう。

キャストは以下です。

  指揮:クリスティアン・ティーレマン
  演出:デニー・クリエフ

  ヴォータン:ミヒャエル・フォッレ
  フリッカ:藤村実穂子
  フライア:レギーナ・ハングラー
  アルベリッヒ:アルベルト・ドーメン
  ミーメ:ゲアハルト・ジーゲル
  ローゲ:クルト・シュトライト
  ドンナー:アレハンドロ・マルコ=ブールメスター
  フロー:タンセル・アクゼイべク
  ファーゾルト:ステファン・ミリング
  ファフナー:アイン・アンガー
  ヴォークリンデ:クリスティアーネ・コール
  ヴェルグンデ:サブリナ・ケーゲル
  フロスヒルデ:シモーネ・シュレーダー
  エルダ:クリスタ・マイヤー
  管弦楽:シュターツカペレ・ドレスデン

ああ、やっぱり、バイロイトでティーレマンを聴きたくなりました。それもリングとパルジファル。2020年以降にそれは実現するんでしょうか。今回は予習はバイロイトのライブを中心に聴きました。

 1956年 クナッパーツブッシュ バイロイト音楽祭 ホッター、ナイトリンガー、グラインド
 1958年 クナッパーツブッシュ バイロイト音楽祭 ホッター、アダム、グラインドル
 1958年 ゲオルク・ショルティ ウィーン・フィル ロンドン、スヴァンホルム、フラグスタート、ナイトリンガー
 1980年 ピエール・ブーレーズ バイロイト音楽祭 マッキンタイア、サルミネン、シュヴァルツ、ベヒト

クナッパーツブッシュの迫力は言うまでもありませんが、今回、ティーレマンを聴いて、彼こそ、クナッパーツブッシュを継ぐものという思いを強くしました。



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       ティーレマン,  

純化されたブルックナーの響き、ティーレマン&シュターツカペレ・ドレスデン@サントリーホール 2015.2.24

2日間にわたるティーレマン&シュターツカペレ・ドレスデンのコンサートも今日で終わり。R・シュトラウスの晩年の名作メタモルフォーゼンは何と実演では初聴きです。そして、最後はブルックナーの未完の大作である交響曲第9番。演奏者も聴衆もそれなりの覚悟でないと臨めないプログラムです。特にブルックナーの交響曲第9番は、同じくブルックナーの交響曲第8番、マーラーの交響曲第9番、ベートーヴェンの交響曲第9番、バッハのミサ曲ロ短調とマタイ受難曲、ワーグナーの《パルジファル》と《トリスタンとイゾルデ》という音楽を愛する者にとって、特別な曲のひとつに位置づけられます。滅多に聴く曲ではありません。

コンサートに先だって、十分に予習をしました。R・シュトラウスのメタモルフォーゼンはここ。ブルックナーの交響曲第9番はここ

今日は事前にお昼寝をして、十分英気を養い、シュターツカペレ・ドレスデンの黄色いネクタイを締めて、気を引き締めて出かけます。国内でネクタイをするのは多分、退職後初めて。それほど今日の演奏会には気合いを入れています。ティーレマンの振るブルックナーの9番ですからね。

最初のR・シュトラウスのメタモルフォーゼンは深い音楽でしたが、謎めいた演奏でした。それについて書くと話が長くなり、本論からずれるので、後述することにします。

休憩後、いよいよ、ブルックナーの交響曲第9番です。第1楽章から細部まで丹念に表情付けされた素晴らしい演奏に酔いしれます。ただ、不思議に感動には至りません。今日は不発に終わるのかなと思っていたら、第3楽章後半に不意にしびれるような甘美な感動が襲ってきました。感動の頂点はフィナーレの5分前の大強奏。そのあとはカタルシスを覚えながらも頭は甘美な感動の余韻。フィナーレの後の静寂がなんとも贅沢な時間でした。
比較するのもなんですが、2年前に聴いたハイティンクとロンドン交響楽団の演奏が究極のマイベスト。今日の演奏は第3楽章後半は同質の感動がありました。
今日のティーレマンの音楽表現は事前の予想と異なるもの。腰の低い推進力で押してくる迫力のあるものを予期していましたが、なんと丁寧なニュアンスを表現しつつ、音楽の純化を極めるものでした。誤解されるかもしれませんが、テンポを別にすれば、これはチェリビダッケ路線を思わせます。もちろん、ティーレマンらしい迫力はありましたが、それ以上にピュアーな響きが目立って聴こえてきたんです。シュターツカペレ・ドレスデンの内在する響きを活かしたのかもしれませんが、ティーレマンの音楽性の幅広さを見た思いです。
やはり、ティーレマンは噂されているベルリン・フィルではなく、このドレスデン、あるいはウィーン・フィルこそ、いるべき場所だと思えてなりません。一音楽ファンの思いに過ぎませんけどね。

ところで、今日のプログラムは以下です。

  指揮:クリスティアン・ティーレマン
  管弦楽:シュターツカペレ・ドレスデン

  R・シュトラウス:メタモルフォーゼン

   《休憩》

  ブルックナー:交響曲第9番ニ短調

もちろん、アンコールはなし。ブルックナーの交響曲第9番にアンコールはあり得ません。
さて、冒頭のメタモルフォーゼンですが、この曲は1945年、第2次世界大戦終盤、ミュンヘンが破壊され、ベルリン国立歌劇場、ドレスデン国立歌劇場(ゼンパーオパー)、ウィーン国立歌劇場が爆撃で破壊されたことで、芸術・文化に身を捧げてきたR・シュトラウスは深い喪失感に襲われて、作曲に至ったと言われています。ヨーロッパ文化の終焉への絶望感と過去のヨーロッパへの懐かしい思いがないまぜになったような悲しみに満ちた曲です。戦禍をくぐり抜けてきた巨匠たちは自らの思いも重ねて、フルトヴェングラー、クレンペラー、ケンペの演奏は凄絶です。しかるにティーレマンは如何なる思いで演奏するんでしょう。彼の演奏を聴いていて、一体、何を表現しようとしているか全然、イメージできませんでした。演奏が終わった後もずっと考え込んでしまいました。文化の喪失感とか戦争への悲しみとか、そういうものは感じられません。しかし、音楽は美しく、深い表現に満ちていました。結論としては、ティーレマンはそういう曲の背景やイメージをすべて排して、作品の純粋な音楽表現だけに徹したのではないかということです。作品名にあるように、変奏ではなく、変容という新しいスタイルの音楽を思いっ切り、美しく演奏してみたんでしょうか。ある意味、センセーショナルな演奏だったのかもしれません。一応、謎めいた演奏はそういうことだったということにしておきましょう。しかし、大作のブルックナーの演奏の前にこういう難しい曲は困りますね。気持ちの切り替えが必要になります。ハイティンクのようにモーツァルトのピアノ協奏曲あたりが適当ですが、ティーレマンはモーツァルトはレパートリーにないしね・・・。

昨日の《英雄の生涯》に続き、今日も素晴らしいブルックナーに大満足したティーレマンとシュターツカペレ・ドレスデンの来日コンサートでした。
明日はアンデルシェフスキの期待のピアノ・リサイタルです。


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       ティーレマン,  

完璧なR・シュトラウスの響き、ティーレマン&シュターツカペレ・ドレスデン@サントリーホール 2015.2.23

やはり、ティーレマンは大変な天才指揮者。saraiの予想や期待をあざ笑うかのように想像を絶する音楽を聴かせてくれます。リストもワーグナーもR・シュトラウスも最高の演奏でした。

リストの交響詩《オルフェウス》は初聴きの曲。予習で聴いたところでは、聴きやすいメロディアスな曲。ところがティーレマンの手にかかると、実に甘美な名曲に変身。オーケストラの響きも最高です。のっけから、ティーレマンの音楽の魔法にかかり、陶然としてしまいます。

次のワーグナーの《ジークフリート牧歌》は極上の名演。予習したすべての演奏を凌駕する驚くべき演奏でした。かのクナッパーツブッシュ、フルトヴェングラーの名演も霞んでしまいます。ティーレマンの演奏の基調は静かで穏やかな音楽ですが、音楽性がぎっしりと詰まった密度の濃いもので、綺麗で退屈な演奏とは対極にあるような素晴らしい演奏。そして、熱が高まってくるとロマンの極致に至り、感動で頭がいっぱいになります。ティーレマンがとびっきりのワーグナー指揮者であることを再認識させてくれました。

休憩後は今日のメインのプログラムのR・シュトラウスの《英雄の生涯》。ティーレマンの指揮でこの曲を聴くのはこれが2度目。以前、ミュンヘンのガスタイクでミュンヘン・フィルの演奏で聴きましたが、そのときとは比較にならないほどの素晴らしさ。広大なガスタイクのホールの遠い席で聴いたせいもあるかもしれませんが、今日の演奏は格別の出来に思えます。今日の演奏を聴いていると、ティーレマンとシュターツカペレ・ドレスデンは大変な蜜月状態にあり、ティーレマンのオーケストラのコントロールがきっちりと決まっており、ティーレマンの意図する音楽が存分に表現できているのが分かります。ティーレマンのドレスデン移籍は大成功だったのが確認できました。これまでsaraiが聴いた《英雄の生涯》の最高の演奏はハイティンク+シカゴ交響楽団のみなとみらいホールでの演奏(残念ながらブログ記事未掲載)。まさか、その演奏を上回るものを聴くことになることは想像だにできませんでしたが、今日はまさにその奇跡のようなことが起こったんです。
ティーレマンはこの《英雄の生涯》から様々なものを引き出してくれました。多くは音楽的な響きによるものです。R・シュトラウスが若干35歳で作曲したこの作品は彼の最後の交響詩であり、それまでの交響詩作品を俯瞰しつつ、その後の楽劇を見据えた驚異的な作品と言えます。ティーレマンはオペラ指揮者としての経験をもとに、この作品でR・シュトラウスの過去の交響詩を総括するだけではなく、随所で後の楽劇(オペラ作品)を彷彿とさせる響きを明確に織り込んでいきます。特に《ばらの騎士》、《サロメ》の響きが感じられました。終盤では、《4つの最後の歌》の響きが聴こえてきます。この45分ほどの《英雄の生涯》でR・シュトラウスの全音楽人生を響かせてくれたのがティーレマンの演奏でした。R・シュトラウス好きにはたまらない音楽的充実度の高い《英雄の生涯》でした。
そうそう、コンサートマスターのマティアス・ヴォロングの見事なソロにも触れないわけにもいかないでしょう。シカゴ交響楽団のロバート・チェンとも拮抗する素晴らしい演奏でした。特に最後の最高音がきっちりと響いていたしね。
予習でもハイティンクとティーレマンが響きという点でとりわけ優れていると感じたのは、間違いではなかったようです。予習についてはここに書きました。

ところで、今日のプログラムは以下です。

  指揮:クリスティアン・ティーレマン
  管弦楽:シュターツカペレ・ドレスデン

  リスト:交響詩『オルフェウス』
  ワーグナー:ジークフリート牧歌

   《休憩》

  R・シュトラウス:交響詩『英雄の生涯』

   《アンコール》
    ワーグナー:楽劇『ローエングリン』第3幕への前奏曲

もっと書きたいこともあるのですが、まだ、明日のブルックナーも控えているので、このあたりで止めて、早々に寝ます。


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       ティーレマン,  

ティーレマン+シュターツカペレ・ドレスデン@サントリーホールのコンサートに向けて・・・ブルックナー予習編

明日からはティーレマン+シュターツカペレ・ドレスデン@サントリーホールのコンサートが始まります。
前回はR・シュトラウスの《英雄の生涯》を中心とした予習について書きましたが、今回はブルックナーの交響曲第9番です。

ブルックナーの交響曲第9番と言えば、2年前に、ハイティンク+ロンドン交響楽団のコンサートに向けてCDを聴き込みました。そのときに聴いたCDは以下の10枚です。

  ジュリーニ+ウィーン・フィル
  ヨッフム+ミュンヘン・フィル
  マタチッチ+チェコ・フィル
  チェルビダッケ+ミュンヘン・フィル1995年ライブ
  ヴァント+ミュンヘン・フィル、ベルリン・フィル、北ドイツ響_来日盤
  ハイティンク+コンセルトヘボウ1965年、コンセルトヘボウ1981年、シカゴ響2009年(2010年?)

その時の記事はここここです。
そのときの結論としては、ベストがハイティンクのコンセルトヘボウとの新盤(1981年)で、それに次ぐのが同じくハイティンクのコンセルトヘボウとの旧盤(1965年)で、ヴァントの2枚、ミュンヘン・フィルとベルリン・フィルの演奏も素晴らしいという感想でした。チェリビダッケのミュンヘン・フィルとの演奏の美しさも忘れられないものでした。

今回はそのときに聴けなかったCDを聴いてみます。特別にベスト盤のハイティンクのコンセルトヘボウとの新盤(1981年)とチェリビダッケの美し過ぎるミュンヘン・フィル1995年ライブも聴きます。

CDを聴いたのは以下の13の演奏です。

 フルトヴェングラー指揮/ベルリン・フィル(1944年10月7日。放送用録音)
 ハンス・クナッパーツブッシュ指揮/ベルリン・フィル(1950年1月28日。放送用録音)
 カール・シューリヒト指揮/ウィーン・フィル(1961年録音、スタジオ録音)
 オイゲン・ヨッフム指揮/ベルリン・フィル(1964年、スタジオ録音)
 カルロ・マリア・ジュリーニ指揮/シカゴ交響楽団(1976年、スタジオ録音)
 ギュンター・ヴァント指揮/ケルン放送交響楽団(1979年、スタジオ録音)
 セルジュ・チェリビダッケ指揮/ミュンヘン・フィル(1981年、ライヴ録音)
 ベルナルト・ハイティンク指揮/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(1981年、スタジオ録音)。以前聴いたsaraiのベストCD
 ラファエル・クーベリック指揮/バイエルン放送交響楽団 (1985年、ライヴ録音)。クーベリックが手兵だった同オケと最後に共演した録音
 セルジュ・チェリビダッケ指揮/ミュンヘン・フィル(1995年、ライヴ録音)。前回も聴いたCD
 サイモン・ラトル指揮/ベルリン・フィル(2012年、ライヴ録音)。第4楽章補筆版付き
 ベルナルト・ハイティンク指揮/ウィーン・フィル(2012年、ライヴ録音)
 ベルナルト・ハイティンク指揮/ロンドン交響楽団(2013年、ライヴ録音)

結論から言えば、1980年代の3つの演奏、チェリビダッケ指揮/ミュンヘン・フィル(1981年)、ハイティンク指揮/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(1981年)、クーベリック指揮/バイエルン放送交響楽団 (1985年)が一番、心に迫った演奏でした。
チェリビダッケは1995年ライヴも極めて美しい演奏ですが、如何せん、遅過ぎる演奏です。1981年ライブは普通の遅さでこれも極上の美しい演奏。これ以上美しい演奏はありえないと思える演奏です。
ハイティンクはsaraiのベストCDですが、実はロンドン交響楽団(2013年)もこれに迫る素晴らしい演奏です。ただ、2013年の来日演奏(みなとみらいホール)の実演には及ばないというのが正直なところ。
クーベリックは曲の冒頭から、その荘厳さに圧倒されました。全曲、壮大かつ荘厳な演奏です。クーベリックのブルックナーがこんなに素晴らしいとは今まで気が付きませんでした。ハイティンク同様、マーラー指揮者にして、ブルックナー指揮者でもありますね。

ほかには、フルトヴェングラーの熱い演奏も素晴らしかったし、シューリヒトは世評の通り、大変素晴らしい演奏でもう一度聴いてみたい演奏です。ジュリーニの演奏はシカゴ響の素晴らしい響きも合わせて、その音楽的な深さには感動しました。ヴァントのブルックナーはやはり素晴らしいのですが、ケルン放送響のアンサンブルが若干弱いのが残念です。ラトルの演奏で初めて第4楽章補筆版付きを聴いてみましたが、フーン・・・って感じ。一度は聴いてみる価値はありました。

あと、ハイティンクの非正規盤を2枚聴く予定でしたが、CDの取り寄せが間に合わなかったので、後で聴いてみましょう。
*聴きました。コンサート前ぎりぎりに入手できて、慌てて聴きました。1981年のコンセルトヘボウとの演奏以降はほぼ似たような傾向の演奏です。2010年のバイエルン放送交響楽団と2013年のロンドン交響楽団が特に優れているように感じました。2012年のウィーン・フィルは期待ほどではないように感じましたが、もう一度聴き直さないと、ちゃんと評価できません。ハイティンクの演奏は実に自然な演奏なので、特別の緊張感を持って聴かないとその本質が聴き取れません。その点、チェリビダッケはすっと耳に入ってくるので、楽に音楽を聴きとれます。ただ、あまりに長いので疲れ果てますけどね。

 ベルナルト・ハイティンク指揮/ベルリン・フィル(1989年、ライヴ録音)
 ベルナルト・ハイティンク指揮/バイエルン放送交響楽団(2010年、ライヴ録音)

これでブルックナーの交響曲第9番の名盤はほぼ聴き尽したかなという感じです。

続いて、ワーグナーの《ジークフリート牧歌》もまとめて聴いてみました。聴いたのは以下の11枚のCD。

 フルトヴェングラー指揮/ウィーン・フィル(1949年。ライヴ録音)
 トスカニーニ指揮/NBC交響楽団(1952年。ライヴ録音)
 カール・シューリヒト指揮/シュトゥットガルト放送響(1955年。ライヴ録音)
 ハンス・クナッパーツブッシュ指揮/ミュンヘン・フィル(1962年。スタジオ録音)
 オットー・クレンペラー指揮/フィルハーモニア管弦楽団 (1961年、スタジオ録音)
 オットー・クレンペラー指揮/ウィーン・フィル(1968年、ライヴ録音)
 ベルナルト・ハイティンク指揮/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(1974年、スタジオ録音)
 ハインツ・レーグナー指揮/ベルリン放送響(1978年、スタジオ録音)
 ラファエル・クーベリック指揮/バイエルン放送交響楽団 (1979年、スタジオ録音)
 カラヤン指揮/ウィーン・フィル(1987年、ザルツブルク音楽祭ライヴ録音)。カラヤンが亡くなる2年前の晩年の演奏
 セルジュ・チェリビダッケ指揮/ミュンヘン・フィル(1993年、ライヴ録音)。

オリジナル編成に近いと思われるクレンペラーの2つの録音と大きな編成でのクナッパーツブッシュの録音が素晴らしいです。
クレンペラーはオリジナル編成(15人の1管編成)に近い編成での演奏ですが、いずれも感銘深い演奏です。より自然で無理のない演奏ではフィルハーモニア管弦楽団、響きの美しさではウィーン・フィルですが、聴きやすかったのはフィルハーモニア管弦楽団の演奏でした。
普通の編成のオーケストラ演奏ではクナッパーツブッシュが感銘深い演奏です。文句なしで何度も聴きたい演奏と言えます。
フルトヴェングラー、シューリヒト、クーベリック、チェリビダッケも素晴らしい演奏でした。カラヤンも美しくてよいのですが、作り物めいた演奏は少し抵抗があります。

準備は終えて、あとはティーレマンの演奏を待つだけです。楽しみでワクワクです。


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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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たかぼんさん、初めまして。saraiです。

嬉しいコメント、ありがとうございます。ブッシュ四重奏団は素晴らしいですよ。とりわけ、第14番は最高です。
もっとも、ブッシュ

09/17 02:04 sarai

とても素晴らしいお話をお聞かせ頂き感謝いたします。
私は今まで、後期の4曲はブダペスト四重奏団できまり!と思っておりました。
ブッシュ四重奏団は別なレコード(死

09/16 13:52 たかぼん

ミケランジェロさん、saraiです。

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06/23 23:50 sarai

こんにちは。

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マエストロは数年前のイ

06/14 08:27 michelangelo

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11/09 22:13 sarai

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あの弦の響きにもうハマるのですよ!
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えりちゃさん、お久しぶりです。saraiです。

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こちら

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