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日本でこれほど素晴らしいバロック・オペラが聴けるとは ヘンデル 歌劇 《ジュリオ・チェーザレ》 鈴木優人指揮バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティコンサートホール 2023.10.11

昨年の新国オペラの開幕公演でこのヘンデルの歌劇《ジュリオ・チェーザレ》の素晴らしい公演を聴いたことが記憶に新しいですが、今日はセミ・ステージ形式とは言え、すべてにおいて、素晴らしい公演で最高の満足感に浸ることができました。

《ジュリオ・チェーザレ》はストーリー展開よりも、ダ・カーポ・アリアの連続が主たるものですが、そのダ・カーポ・アリアを歌う主要キャスト8人が皆素晴らしく、とても聴き応えがあるなんてものではありませんでした。とりわけ、出番の多いタイトルロールのチェーザレ役のティム・ミードとヒロインのクレオパトラ役の森 麻季の歌唱が見事で、アジリタも気持ちよく聴けました。これでこそ、ヘンデルのオペラです。コーネリア役のマリアンネ・ベアーテ・キーラントは大人の魅力たっぷりで、憂いを帯びた歌唱には魅了されました。最後に明るい歌唱を聴かせてくれましたが、これは逆に違和感を感じてしまいました。そういう持ち味の歌手ですね。ともかく存在感を放っていました。そのコーネリアの息子セスト役は松井亜希ですが、そのズボン姿でいつもの松井亜希とは全く違って見えますし、彼女の新境地を聴いた思いです。その透明感のある高域の美しい声で歌われるセストは実にフレッシュ。ある意味、今日、一番、輝きを放っていました。彼女はソプラノですが、意外にフィガロのケルビーノを歌っても素晴らしいのではと予感しました。トロメーオ役のアレクサンダー・チャンスは初めて聴きますが、なかなかよいカウンターテナーです。その名前から連想しましたが、やはり、カウンターテナーの有名歌手マイケル・チャンスのご子息です。親子2代のカウンターテナーですね。カウンターテナーも今後、続々と親子2代の歌手が出てくるのでしょう。カウンターテナーと言えば、ニレーノ役の藤木大地。歌唱もさることながら、おどけた演技で客席を沸かせました。彼のこんな一面、初めて見ましたし、そもそもその扮装で藤木大地とはとても思えませんでした。数少ない男声歌手ですが、アキッラ役の大西宇宙は見事な歌唱と見事な体躯で素晴らしい仕事をしました。このところ、彼は大活躍ですね。

今回の演出は佐藤美晴が、ステージ上のBCJのオーケストラを四方の通路で囲み、そこを歌手たちが巡るという形式での演技です。衣装は凝ったものを着ていたので、通常のオペラを見る感覚でした。バロックオペラはこれで十分ですね。こんな感じでバロックオペラの上演の頻度を高めていってほしいと思います。

最後に、このヘンデルの歌劇《ジュリオ・チェーザレ》の素晴らしい公演が聴けたのは、BCJの素晴らしい演奏があったればこそです。鈴木優人の指揮とチェンバロも素晴らしく、BCJの若松夏美率いる弦楽アンサンブル、そして、フラウト・トラヴェルソの菅きよみやオーボエの三宮正満などの木管、ホルンの福川伸陽、そして、何と言っても素晴らしい通奏低音群。これらのオーケストラ陣がしっかりしていなければ、ヘンデルの美しい音楽を楽しむことができません。バッハ・コレギウム・ジャパン改め、ヘンデル・コレギウム・ジャパンを名乗ってもいいのではないかと思いながら聴いていました。

ヘンデルのオペラの連続公演を鈴木優人とBCJが企画してくれることを切に願うものです。


今日のプログラムは以下です。

 鈴木優人プロデュース/BCJオペラシリーズ Vol.3
 
  ヘンデル 歌劇 《ジュリオ・チェーザレ》 全3幕 セミ・ステージ形式

  指揮・チェンバロ:鈴木優人
  チェーザレ:ティム・ミード(カウンターテナー)
  クレオパトラ:森 麻季(ソプラノ)
  コーネリア:マリアンネ・ベアーテ・キーラント(アルト)
  クーリオ:加藤宏隆(バス・バリトン)
  セスト:松井亜希(ソプラノ)
  トロメーオ:アレクサンダー・チャンス(カウンターテナー)
  アキッラ:大西宇宙(バリトン)
  ニレーノ:藤木大地(カウンターテナー)

  佐藤美晴(演出)

  管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン コンサートマスター:若松夏美
   フラウト・トラヴェルソ:菅きよみ
   リコーダー:太田光子、浅井愛
   オーボエ:三宮正満、小花恭花
   ホルン:福川伸陽、根本めぐみ、大野雄太、藤田麻理絵
   ヴァイオリンⅠ:若松夏美、荒木優子、廣海史帆
   ヴァイオリンⅡ:高田あずみ、堀内由紀、山内彩香
   ヴィオラ:成田寛、秋葉美佳
   チェロ:山本徹、上村文乃
   コントラバス:今野京
   ファゴット:河府有紀
   ヴィオラ・ダ・ガンバ:福澤宏 
   テオルボ・ギター:佐藤亜紀子
   リュート:野入志津子
   ハープ:伊藤美恵
   チェンバロ:重岡麻衣、根本卓也
   
予習は時間がなくて、できませんでした。



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深い感銘を覚えるシューベルトのミサ曲第5番 鈴木雅明指揮バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティコンサートホール 2023.9.17

バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)の演奏も素晴らしかったのですが、それ以上にシューベルトのミサ曲の素晴らしさに深い感銘を覚えました。予習のアーノンクールでは、第1曲のキリエの清澄さにひきかえ、第2曲以降は妙に力強さばかりが感じられましたが、今日の演奏ではBCJの美しい合唱の力、そして、鈴木雅明も見事な指揮でシューベルトの宗教曲の美しさが十全に表現されていました。

今日の演奏を振り返ってみましょう。

第1曲のキリエは美しいオーケストラ演奏に続き、すぐにBCJの合唱がそっとピアノではいってきます。静謐な合唱が美しく響きます。なかでもソプラノパートの美しさは際立っています。それもその筈、合唱といいながら、ソプラノパートにはいつもは独唱しているメンバーが揃っています。澤江衣里、中江早希、松井亜希という豪華なメンバーです。これがBCJの合唱の魅力のひとつです。バッハのカンタータや受難曲では、合唱のメンバーがソロも担当しますが、今日はシューベルトのミサ曲なので、合唱のメンバーはアリアなどのソロは歌わずに合唱に専念しています。ソプラノ・アルトパートがそれぞれ7名、テノール・バスパートがそれぞれ6名という少数精鋭の合唱団ですが、その質は極めて高いものです。後半には独唱4名も歌いますが、これも実力者揃い。素晴らしいソロ・重唱を聴かせてくれます。ソプラノの独唱を歌った安川みくの透明な歌唱が耳に心地よく響きます。キリエは終始、清澄な歌唱で清々しく心に響き、さすがシューベルトという感じで魅了してくれます。

第2曲のグローリアは冒頭から力強い合唱でキリエとは雰囲気が一変します。神の栄光をたたえる祝祭的な合唱ですが、シューベルトらしい精細さも感じられます。弦楽器の素早いパッセージで楽興も盛り上がります。終盤のフーガ《精霊とともに》は絶妙な演奏です。シューベルトのこのような素晴らしいフーガは初めて聴きました。シューベルトはフーガの技法も体得していたのですね。最後は合唱のアーメンで終わります。

第3曲のクレドは鋭い合唱で始まり、信仰の強さを表現する合唱が続きます。終盤では力強く盛り上がり、最後はまた、アーメンで終わります。

第4曲のサンクトゥスは合唱のサンクトゥスの響きが美しく歌い上げられます。シューベルトの純粋な思いが音楽に結実しています。そして、牧歌的な美しさのホザンナが続きます。

第5曲のベネディクトゥスは独唱と合唱でかみしめるように歌われます。最後はまた、ホザンナが歌われます。

第6曲のアニュス・デイは感銘に包まれた合唱と独唱で歌われて、感動が高まります。最後は《われらに平安をあたえたまえ》と愛と平和を希求するメッセージがシューベルトの美しい旋律で歌われて、深い感動を呼びます。

宗教曲の分野でもシューベルトは秀でた才能を発揮します。この素晴らしいミサ曲は何とベートーヴェンのミサ・ソレムニスに先駆けて作曲されたものだそうです。シューベルトはピアノ曲とリートで物凄い才能を発揮しましたが、他の分野でも天才ぶりをみせています。これから、シューベルトの音楽の再評価がもっともっと進みそうです。

あっ、書き洩らしましたが、独唱はソプラノの安川みくをはじめ、アルトの清水華澄、テノールの鈴木 准、バスの大西宇宙が素晴らしい歌唱を聴かせてくれました。もちろん、今日の主役はBCJの合唱団ですけどね。BCJのオーケストラも達人揃いの見事な演奏でした。最初に演奏された未完成については、あえて、感想を書きません。saraiの感性には合わなかったとだけ、書きます。


今日のプログラムは以下です。


  指揮:鈴木雅明
  ソプラノ:安川みく
  アルト:清水華澄
  テノール:鈴木 准
  バス:大西宇宙
  合唱:バッハ・コレギウム・ジャパン
  管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン コンサートマスター:寺神戸亮
   ヴァイオリンⅠ:高田あずみ
   ヴァイオリンⅡ:若松夏美
   ヴィオラ:成田寛
   チェロ:山本徹、上村文乃
   コントラバス:今野京
   フラウト・トラヴェルソ:鶴田洋子  
   オーボエ:三宮正満、荒井豪
   ホルン:福川伸陽
   トランペット:斎藤秀範
   オルガン:中田恵子 


  シューベルト:交響曲第7番 ロ短調《未完成》D 759

 《休憩》

  シューベルト:ミサ曲第5番 変イ長調 D 678



最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のシューベルトの交響曲第7番《未完成》は以下の演奏を聴きました。

 ベルナルト・ハイティンク指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2016年10月8日、ベルリン・フィルハーモニー ライヴ映像

昨日書いたベルリン・フィルのデジタル・コンサートホールの配信映像です。自然体で深い味わいの名演です。


2曲目のシューベルトのミサ曲第5番は以下の演奏を聴きました。

 ニコラウス・アーノンクール指揮ヨーロッパ室内管弦楽団 1995年 セッション録音
  リューバ・オルゴナソーヴァ(ソプラノ)
  ビルギット・レンメルト(アルト)
  デオン・ヴァン・デル・ヴァルト(テノール)
  ヴォルフガング・ホルツマイアー(バリトン)
  アントン・シャリンガー(バス)
  アルノルト・シェーンベルク合唱団

アーノンクールにしては、もう一つの出来でしょうか。



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ヘンデルの復活、どこをとっても素晴らし過ぎる演奏に深く感銘 鈴木優人指揮バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティコンサートホール 2023.5.7

バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)のバッハ演奏の素晴らしさは毎回味わっていますが、実はヘンデルの演奏も見事です。毎年、年末に恒例になっているメサイアを聴けば、それが分かりますし、2020年のオペラ「リナルド」も素晴らしい演奏でした。

今日のヘンデルのオラトリオ《復活》もヘンデルの音楽の素晴らしさを堪能させてくれる最高の演奏でした。オラトリオと言っても、イエス・キリストの復活を題材にしていて、さながら、コンサート形式のオペラを聴いている風情でした。

第1部と第2部に分かれている、この作品は各部の冒頭に置かれた導入のオーケストラ曲を除くと、ほとんどがアリアとレシタティーボという5人のソロ歌手の歌唱になっています。各部の終曲だけは合唱曲になっています。したがって、歌手のソロの歌唱を楽しむ構成になっていますが、今日の5人の出来が素晴らしく、それをサポートするBCJの演奏も極めて美しく、ただただ、賛美するだけです。

ヘンデルのほかの作品と同様にどの曲も旋律の美しさが尋常ではありません。そして、その旋律を修飾する楽器群の多彩な表現が見事です。BCJはそれを完璧過ぎるほどに演奏しますので、終始、その楽趣の素晴らしさに陶然として聴き入るのみです。

5人の歌唱ですが、まずはマッダレーナ(マグダラのマリア)役のソプラノのキャロリン・サンプソン。力強い表現の歌唱で音楽を盛り上げてくれました。無論、悲しみの表現も見事でした。
クレーオフェ役のアルトのマリアンネ・ベアーテ・キーラントは勢いのある歌唱から胸を突かれる表現まで、実に魅力的な歌唱で惹き付けられました。存在感で言えば、一番という印象でした。
天使役のソプラノの中江早希はオーケストラの後方で歌っていたので、位置的に不利ではありましたが、持ち前の美声で明るい天使の賛美的な歌唱を聴かせてくれました。
聖ジョヴァンニ役のテノールの櫻田 亮は得意のエヴァンゲリスト的な歌唱を聴かせてくれました。
ルチーフェロ役のバスの加耒 徹は悪役にふさわしい深みのある声を聴かせてくれました。
5人それぞれの役どころをおさえた歌唱で実にバランスがとれたアリアの連続で素晴らしいものでした。
もっとも、それ以上に素晴らしかったのは1部、2部の最後だけ登場するBCJの豪華な合唱隊。これだけしか歌わないのはもったいないほどの合唱でした。

BCJの器楽演奏も素晴らしく、若松夏美率いる弦楽アンサンブルの透き通るような演奏はヘンデルには欠かせないものです。三宮正満のオーボエを始めとする管楽アンサンブルも達人揃いの素晴らしい演奏。通奏低音にヴィオラ・ダ・ガンバ、リュート、テオルボなどを加えた多彩な演奏も驚くほどの演奏です。

そして、すべてを統括した指揮の鈴木優人の才人ぶりは今日も不動のものでした。

このヘンデルのオラトリオ《復活》は初めて聴く作品で、ヘンデルとしては珍しいイタリア語の作品ですが、実に素晴らしい作品です。同じイタリア時代のヘンデルのオペラ《アグリッピーナ》を聴きたくなりました。


今日のプログラムは以下です。


  指揮:鈴木優人
  マッダレーナ(ソプラノ):キャロリン・サンプソン
  天使(ソプラノ):中江早希
  クレーオフェ(アルト):マリアンネ・ベアーテ・キーラント
  聖ジョヴァンニ(テノール):櫻田 亮
  ルチーフェロ(バス):加耒 徹
  合唱:バッハ・コレギウム・ジャパン
  管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン コンサートマスター:若松夏美
   フラウト・トラヴェルソ:鶴田洋子  
   オーボエ:三宮正満、荒井豪
   トランペット:斎藤秀範 
   チェロ:山本徹
   ヴィオラ・ダ・ガンバ:福澤宏


  G.F. ヘンデル:オラトリオ《復活》HWV 47 第1部

 《休憩》

  G.F. ヘンデル:オラトリオ《復活》HWV 47 第2部



最後に予習について、まとめておきます。

 エマニュエル・アイム指揮ル・コンセール・ダストレエ
  天使:カミラ・ティリング(ソプラノ)
  ルチーフェロ:ルカ・ピサローニ(バス・バリトン)
  マグダラの聖マリア:ケイト・ロイヤル(ソプラノ)
  聖マリア・クレオフェ:ソニア・プリーナ(コントラルト)
  福音史家、聖ジョヴァンニ:トビー・スペンス(テノール)
      2009年4月15,17,18日、リール・オペラ座、フランス ライヴ録音

あのティリングがヘンデル?とも思いましたが、圧倒的な歌唱でアジリタも見事です。女性指揮者アイムの表現も素晴らしいです。あっ、無論、ソニア・プリーナの迫力ある歌唱も素晴らしいです。



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聖金曜日はマタイ受難曲を聴く日 鈴木雅明指揮バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティコンサートホール 2023.4.7

毎年、2018年以来、聖金曜日(復活祭の2日前の金曜日)にバッハ・コレギウム・ジャパンのマタイ受難曲を聴くのが習いになりました。この素晴らしいマタイ受難曲が極東の日本で聴けるのは幸せです。こういうレベルのマタイ受難曲が聴けるのは本場のオランダくらいでしょう。そのオランダでは、今年はオランダ・バッハ協会で鈴木優人が客演指揮をしているそうです。いつもは鈴木ファミリーが揃ってマタイ受難曲を演奏しているのが通例ですが今年は鈴木雅明が一人で頑張っています。その鈴木雅明がマタイ受難曲を指揮するのは今日でちょうど100回目だそうです。そのうち、saraiが聴いたのは6~7回です。毎回、変化があるのが凄いことです。saraiはあと10回ほどは聴けるでしょうか。

いつも素晴らしいマタイ受難曲なので、同じような感想になってしまいます。過去の記事を読んでみましたが、今年も同じような内容になってしまいます(笑い)。コピペするのも何なので、ポイントだけを列挙しておきましょう。

やはり、BCJ(バッハ・コレギウム・ジャパン)の肝は素晴らしい合唱に尽きます。その合唱は悪と善を歌い分けます。悪は群衆合唱です。ローマ総督ピラトが死罪を許するのはバラバ(極悪人)かイエスかと問うと、素晴らしい響きで“バラバ”と歌います。戦慄を覚えます。また、イエスを死罪に追い込む“十字架につけよ”と第45曲と第50曲で執拗に歌いますが、その迫力たるや、恐ろしいものがあります。一方、善はイエスの受難を優しく慰撫するコラール(讃美歌)です。なかでも計5回登場する受難コラールの美しく、優しく、そして、力づけてくれる合唱の完成度はいかばかりでしょう。あえて言えば、これが聴きたくて、このBCJのマタイ受難曲を聴くんです。今日は受難コラール以外のコラールもすべて素晴らしく、心の襞を優しく癒してくれました。

BCJの管弦楽も達人揃いで見事な演奏を聴かせてくれます。フラウト・トラヴェルソの菅きよみ、オーボエの三宮正満、ヴァイオリンの寺神戸亮、若松夏美、チェロの山本徹など、深くは触れませんが、人間国宝級の凄技を聴かせてくれました。

独唱者は毎回変わりますが、エヴァンゲリストのトマス・ホッブス、イエスのマーティン・ヘスラーなど海外勢は見事な歌唱。コロナ禍で海外勢の歌唱が聴けなかった鬱憤が晴らせます。一方、コロナ禍で成長した日本人歌手たちも見事な歌唱でした。とりわけ、カウンターテナーの久保法之の清澄な歌声には聴き惚れました。松井亜希、青木洋也、加耒 徹も流石の歌唱でした。櫻田亮の不在が残念でした。

無論、鈴木雅明の指揮は素晴らしく、最近のロマン的で力強い方向性には感銘を覚えます。これこそ至芸とも言うべきものです。

今日の演奏で一人だけ、MVPを与えるとしたら、やはり、エヴァンゲリストのトマス・ホッブスでしょうか。もうその熱唱には、頭が下がる思いです。美しいテノールですが、力強さも兼ね備えたスーパー歌唱でした。ブラボー!


今日のプログラムは以下です。


  指揮:鈴木雅明
  エヴァンゲリスト、テノール:トマス・ホッブス
  ソプラノ:ルビー・ヒューズ、松井亜希
  アルト:久保法之、青木洋也
  テノール:谷口 洋介
  イエス、バス:マーティン・ヘスラー
  バス:加耒 徹
  合唱:バッハ・コレギウム・ジャパン、東京少年少女合唱隊
  管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン コンサートマスター:寺神戸亮、若松夏美
   フラウト・トラヴェルソ、リコーダー:菅きよみ、前田りり子  
   オーボエ、オーボエ・ダモーレ、オーボエ・ダ・カッチャ:三宮正満、荒井豪 
   チェロ:山本徹、上村文乃
   オルガン:大塚直哉
   ヴィオラ・ダ・ガンバ:福澤宏


  J. S. バッハ:《マタイ受難曲》BWV 244 第1部

 《休憩》

  J. S. バッハ:《マタイ受難曲》BWV 244 第2部



最後に予習について、まとめておきます。

 ジョン・エリオット・ガーディナー指揮イングリッシュ・バロック・ソロイスツ、
  モンテヴェルディ合唱団、ロンドン・オラトリー少年合唱団
  アントニー・ロルフ・ジョンソン(福音史家)、アンドレアス・シュミット(イエス)
  バーバラ・ボニー、アン・モノイオス、アンネ・ゾフィー・フォン・オッター、
  マイケル・チャンス、ハワード・クルーク、オラフ・ベーア、コルネリウス・ハウプトマン
      1988年 セッション録音

素晴らしい合唱。独唱も素晴らしい。隙のない演奏です。



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入魂のモーツァルトのレクイエムに感動!鈴木優人指揮バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティコンサートホール 2022.10.30

鈴木優人自身の補筆校訂版によるモーツァルトのレクイエムの素晴らしい演奏でした。ジュスマイヤーの補筆完成版を骨格としているために何ら違和感はありません。唯一、第8曲 ラクリモーサ【涙の日】の後に置かれたアーメン・フーガが目新しいところですが、最近のCDではこれを含む版の演奏も多くなってきています。

やはり、モーツァルト自身が書いたとされる第8曲 ラクリモーサ【涙の日】の最初の部分までの音楽密度が高く、第1曲 レクイエム・エテルナム【永遠の安息を】の途中、森 麻季のピュアーなソプラノ独唱でsaraiの感動スイッチが入り、涙が滲んできます。若い頃にはsaraiはこの曲の真髄が分からずにいましたが、ようやく、この歳になって、この曲の素晴らしさを“感じる”ことができるようになってきたようです。第2曲 キリエ【憐れみの賛歌】もBCJ(バッハ・コレギウム・ジャパン)の素晴らしい合唱に心を奪われます。そして、第3曲 ディエス・イレ【怒りの日】の恐ろしいほどの迫力に心が舞い上がります。第4曲 トゥーバ・ミルム【奇しきラッパの響き】では、バスのドミニク・ヴェルナーの素晴らしく響く声とトロンボーンの響きに圧倒されます。そして、テノール、アルト、ソプラノ独唱が続き、最後は四重唱で和します。ここでも、好調な森 麻季の歌唱に心奪われる思いです。この後も素晴らしいBCJの合唱が続きます。そして、第8曲 ラクリモーサ【涙の日】の冒頭の8小節はモーツァルト自身の書いた音楽。何と素晴らしく心に沁みるのでしょう。ここまででsaraiは感動の極みに至りました。残る部分は音楽はともかく、BCJの合唱の響き、BCJのオーケストラの響き、そして、独唱者たちの歌唱の響きの素晴らしさに聴き入ります。そして、第14曲 ルックス・エテルナ【永遠の光】はモーツァルト自身によるイントロイトゥス【入祭唱】とキリエ【憐れみの賛歌】のコラージュです。最後にまた、魂の感動を覚えます。
死の床についていたモーツァルトが妻コンスタンツェの妹ゾフィーやジュースマイヤーとともに最後まで、ラクリモーサ・・・と歌っていたというイメージがsaraiの頭の中に反芻されて、この曲を聴くと、自然と感動してしまいます。天才作曲家の遺言を聴いている思いに駆られます。鈴木優人の素晴らしい補筆校訂版と彼自身の繊細で丁寧な指揮、そして、BCJの合唱の素晴らしさがモーツァルトの最後の傑作を見事に再現してくれました。モーツァルトの魂に合掌!

ところで、この鈴木優人の補筆校訂版のレクイエムは4年前の鈴木優人の首席指揮者就任記念演奏会で聴きましたが、そのときはレクイエムの後に本編でアヴェ・ヴェルム・コルプスが入っていて、とても違和感を感じました。だって、レクイエムの後に演奏できる曲ってあるわけないでしょう。そして、今日もやはり、どうしてもアヴェ・ヴェルム・コルプスを演奏したいらしく、アンコールでの演奏になりました。前回はとても違和感があったのに、今日のようにアンコールで演奏されると、レクイエムの後に演奏するなら、このアヴェ・ヴェルム・コルプスしかないという気持ちになりました。不思議なものですね。静謐なアヴェ・ヴェルム・コルプスに再び、心が洗われる思いになりました。やはり、名曲です。


今日のプログラムは以下です。


  指揮:鈴木優人
  ソプラノ:森 麻季
  アルト:藤木大地
  テノール:櫻田 亮
  バス:ドミニク・ヴェルナー
  合唱・管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン


  モーツァルト:交響曲第39番 変ホ長調 KV 543

 《休憩》

  モーツァルト:レクイエム KV 626 鈴木優人 補筆校訂版 モーツァルトの自筆譜及び、アイブラー、ジュスマイヤーの補筆完成版に基づく
   イントロイトゥス【入祭唱】
    第1曲 レクイエム・エテルナム【永遠の安息を】 (ニ短調 アダージョ 4分の4拍子 合唱・ソプラノ独唱)
    第2曲 キリエ【憐れみの賛歌】 (ニ短調 アレグロ 4分の4拍子 合唱)
   セクエンツィア【続唱】
    第3曲 ディエス・イレ【怒りの日】 (ニ短調 アレグロ・アッサイ 4分の4拍子 合唱)
    第4曲 トゥーバ・ミルム【奇しきラッパの響き】 (変ロ長調→ヘ短調 アンダンテ 2分の2拍子 バス、テノール、アルト、ソプラノ独唱・四重唱)
    第5曲 レックス・トレメンデ【恐るべき御稜威の王】 (ト短調 グラーヴェ 4分の4拍子 合唱)
    第6曲 レコルダーレ【思い出したまえ】 (ヘ長調 アンダンテ 4分の3拍子 四重唱)
    第7曲 コンフターティス【呪われ退けられし者達が】 (イ短調 アンダンテ 4分の4拍子 合唱)
    第8曲 ラクリモーサ【涙の日】 (ニ短調 ラルゲット 8分の12拍子 合唱)
       アーメン・フーガ
   オッフェルトリウム【奉献文】
    第9曲 ドミネ・イエス【主イエス】 (ト短調 アンダンテ・コン・モート 4分の4拍子 合唱・四重唱)
    第10曲 オスティアス【賛美の生け贄】 (変ホ長調 アンダンテ 4分の3拍子 合唱)
   サンクトゥス【聖なるかな】
    第11曲 サンクトゥス【聖なるかな】 (ニ長調 アダージョ 4分の4拍子 合唱)
    第12曲 ベネディクトゥス【祝福された者】(変ロ長調 アンダンテ 4分の4拍子 四重唱・合唱)
   アニュス・デイ【神の小羊】
    第13曲 アニュス・デイ【神の小羊】 (ニ短調 ラルゲット 4分の3拍子 合唱)
        コムニオ【聖体拝領唱】
    第14曲 ルックス・エテルナ【永遠の光】 (ニ短調 アダージョ 4分の4拍子 ソプラノ独唱・合唱)

 《アンコール》
  モーツァルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス ニ長調 K.618



最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のモーツァルトの交響曲第39番は演奏曲目を見落としていたので、予習なし。でも、スーパー有名曲ですから、まあ、いいでしょう。


2曲目のモーツァルトのレクイエムは以下のCDを聴きました。

 テオドール・クルレンツィス指揮ムジカエテルナ、ニュー・シベリアン・シンガーズ
   ジモーネ・ケルメス(S)、ステファニー・ウゼール(A)、マルクス・ブルッチャー(T)、アルノー・リシャール(B)
      2010年2月、ノヴォシビルスク劇場 セッション録音

クルレンツィスは日々進化しています。これは少し古い録音ですが、やはり、新鮮な響きが聴けます。賛否あるでしょうが、聴いておくべき演奏だと思います。ソプラノをナデージダ・パヴロヴァにして、再録音してほしいです。



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私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

もろともにあはれとおもへ山ざくら 花よりほか

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