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クリスマスにはメサイアを・・・バッハ・コレギウム・ジャパン@サントリーホール 2021.12.24

サントリーホールでのクリスマスシーズンのヘンデルのメサイアの公演は今年が21回目。saraiが聴くのは2回目です。ヘンデルのメサイアはイエスの生涯を描いたものなので、当然、誕生から受難、復活までが描かれていますが、その明るく明瞭な音楽はクリスマスにふさわしい雰囲気がありますね。

ヘンデルのメサイアと言えば、シュテファン・ツヴァイクの《人類の星の時間》の中の1章「ゲオルク・フリードリッヒ・ヘンデルの復活」で脳溢血の後遺症から立ち直った53歳のヘンデルが、24日間、不眠不休でメサイアを書き続けて完成させる劇的なシーンが描かれています。書き上げた途端、ヘンデルは17時間爆睡し、爆睡から目覚めたヘンデルは物凄い食欲で食べまくり、飲みまくったそうです。このメサイアはそういう特別な作品で、ヘンデルの最高傑作、記念碑的な作品です。

メサイアには、ヘンデルの特徴であるメロディアスな美しさ、骨組みのがっちりした力強さはもちろんですが、天上の音楽のような無私の精神性が貫かれています。今日の演奏は正直言って、第1部はもうひとつ物足りませんでしたが、第2部、第3部で独唱陣がようやくエンジンがかかり、鈴木雅明率いるバッハ・コレギウム・ジャパンの合唱と管弦楽の素晴らしく安定した、高いレベルの演奏と絡み合って、最後には圧倒的な演奏になりました。終わりよければ、すべてよしです。最後のアーメンコーラスのアーメン、アー~メン!!は身震いするほどの高潮感に浸りました。

目立ったところでは、第3部の第43曲のバリトンのアリア、《トランペットが鳴り響くと・・・》が大西宇宙の素晴らしい歌唱と斎藤秀範の見事なトランペットでヘンデルの音楽の真髄を聴かせてくれ、満足しました。何と森麻季がこの曲で曲に乗って、体を揺らしていたのも印象的でした。第2部の第20曲のアルトのアリア、《彼は蔑まれ、人々に見捨てられ・・・》で湯川亜也子が見事な歌唱で魅了してくれたのも印象的でした。まあ、本当に素晴らしかったのがBCJの合唱の美しさだったんですけどね。どの合唱曲も美しく歌い上げられました。

ところで、今日のコンサートが今年、saraiが聴いた120回目のコンサート。月に10回もコンサートに通ったことになります。まだ、今日が聴き納めではなく、サントリーホールでのジョナサン・ノット&東響の《第九》とミューザ川崎の東響のジルヴェスターコンサートが残っています。最後の最後まで音楽を楽しみ尽くします。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:鈴木雅明
  合唱・管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン
  ソプラノ:森麻季(松井亜希と当日変更、元々はレイチェル・ニコルズの予定)
  アルト(メゾ・ソプラノ):湯川亜也子
  テノール:西村悟
  バス(バリトン):大西宇宙(元々はベンジャミン・ベヴァンの予定)

  ヘンデル:オラトリオ『メサイア』 HWV 56

   1部と2部の間に《休憩》

   《アンコール》
    トラディショナル(鈴木優人編):いけるものすべて

なお、予習したCDは以下です。

 カール・リヒター指揮ミュンヘン・バッハ管弦楽団・合唱団
   グンドゥラ・ヤノヴィッツ(S)、マルガ・ヘフゲン(A)、エルンスト・ヘフリガー(T)、フランツ・クラス(B) 1964年録音 ドイツ語による歌唱

 鈴木雅明指揮バッハ・コレギウム・ジャパン
   鈴木美登里(S)、米良美一(CT)、ジョン・エルウィス(T)、デイヴィッド・トーマス(B) 1996年12月録音

リヒターはドイツ語歌唱のハンディはあるものの彼らしい明瞭な表現で感銘のある演奏を聴かせてくれます。何故か、第3部後半の数曲のカットがあるのが残念です。
鈴木雅明はオリジナル楽器の素朴さを前面に出した美しい演奏です。



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名人たちのクリスマス・オラトリオ:バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル 2021.11.26

まさに名人たちの饗宴。まあ、バッハ・コレギウム・ジャパンのいつもの風景ではあります。プログラム前半は鈴木雅明のパイプオルガンの独奏でバッハのトッカータとフーガ ヘ長調が圧巻の迫力で演奏され、待降節第1日曜、すなわち、今年で家えば、明後日ですが、その日のために作られた第61番《いざ来ませ、異邦人の救い主よ》BWV 61がシンプルな構成の管弦楽の伴奏で奏されます。今年もアドベントの季節に入るのですね。

そして、そのアドベントの先にあるクリスマスのために作られたクリスマス・オラトリオが後半のプログラムです。これはしっかりした編成の管弦楽と合唱団で演奏されます。今日は
 第1部 降誕節第1祝日(12/25)
 第2部 降誕節第2祝日(12/26)
 第3部 降誕節第3祝日(12/27)
の前半、3部が演奏されます。できれば、
 第4部 新年・キリストの割礼と命名祝日(1/1)
まで聴きたかったところです。

聴きどころ満載の演奏でしたが、とりわけ、第3部の第31曲 アルトのアリアは若松夏美のヴァイオリン独奏のオブリガートと鈴木秀美のチェロ、そして、アルトの青木洋也の見事な演奏に魅了されました。
第2部の第15曲 テノールのアリアも菅きよみのフラウト・トラヴェルソとテノールの櫻田 亮も耳をそばだてて聴く素晴らしい演奏でした。三宮正満のオーボエの演奏もいつものように素晴らしかったことは言うまでもありません。第1部の冒頭の合唱や第3部の終曲の合唱も管弦楽の華やかな演奏も交えて、BCJの合唱団の素晴らしい合唱が見事に響き渡りました。そして、合唱と言えば、コラールの数々も心に平安をもたらす絶唱でした。とりわけ、第1部の第5曲のコラールはさながら、マタイ受難曲のコラールを思わせる珠玉の演奏でした。そうそう、独唱では、唯一、海外からの参加であるバスのドミニク・ヴェルナーの深い響きの歌唱には心を打たれました。それに通奏低音が鈴木秀美のチェロの参加で驚くほどのレベルに達していたことが一番、印象的でした。

うーん、やはり、BCJのバッハは素晴らしいですね。


今日のプログラムは以下です。


  指揮:鈴木優人
  ソプラノ:森 麻季
  アルト:青木洋也
  テノール:櫻田 亮
  バス:ドミニク・ヴェルナー
  パイプオルガン:鈴木雅明
  フラウト・トラヴェルソ:菅きよみ
  オーボエ:三宮正満
  ヴァイオリン(コンサートマスター):若松夏美
  チェロ:鈴木秀美
  合唱・管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン


  J. S. バッハ:トッカータとフーガ ヘ長調 BWV 540
  J. S. バッハ:カンタータ第61番《いざ来ませ、異邦人の救い主よ》BWV 61

   《休憩》

   J. S. バッハ:クリスマス・オラトリオ BWV 248から第1部、第2部、第3部


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のトッカータとフーガ ヘ長調を予習したCDは以下です。

 トン・コープマン 1994-99年 セッション録音

迫力はありますが、もう少し明晰に弾いてもらいたいですね。


2曲目のカンタータ第61番《いざ来ませ、異邦人の救い主よ》BWV 61を予習したCDは以下です。

 鈴木雅明指揮バッハ・コレギウム・ジャパン 1997年 セッション録音
  イングリッド・シュミットヒューゼン(S),桜田亮(T),ペーター・コーイ(B)

清明な演奏です。


3曲目のクリスマス・オラトリオ BWV 248を予習したCDは以下です。

 鈴木雅明指揮バッハ・コレギウム・ジャパン 1998年、埼玉芸術劇場 セッション録音
  モニカ・フリンマー、米良美一、ゲルト・テュルク、ペーター・コーイ

これも清明な演奏で、素晴らしいです。



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バッハだけでなく、ベートーヴェンの声楽曲も完璧!:バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル 2021.9.26

今日のバッハ・コレギウム・ジャパン(以下、BCJと略します)はオール・バッハならぬ、オール・ベートーヴェン。昨年は生誕250年のベートーヴェン・イヤーでミサ曲 ハ長調も演奏し、ベートーヴェンの交響曲第9番も定例化しつつありますが、ますます、ベートーヴェンの作品を取り上げていきそうな勢いです。そして、そのベートーヴェンがバッハに負けないくらい素晴らしい演奏だったのに驚かされました。

まず、最初は《静かな海と楽しい航海》。曲名をかろうじて知っているくらいでもちろん、これまで聴いたことはありません。曲はピアノで極めて静粛に始まります。このピアノの表現が秀逸です。特に合唱の静かな表現が見事でぐっと惹き付けられます。低音部を支えるバスとアルトが極めて美しく、時折、その上にソプラノが乗ってきます。まさに“静かな海”を体現しています。こんな美しいベートーヴェンってあるのですね。そして、後半の“楽しい航海”になると、ベートーヴェンらしい雄弁さが歌い上げられます。ゲーテの詩にインスピレーションを得て書かれた名作ですね。よいものを演奏してくれました。

次は交響曲第2番。期待していましたが、精緻な表現であるものの、オリジナル演奏らしいアクセントを付けた表現はともかく、リズムにのって颯爽としたところがもうひとつ表現されていません。これがオリジナル演奏のためか、どうかは定かではありませんが、予習で聴いたジョージ・セルの演奏のレベルと比べると、今一つの印象です。もちろん、悪い演奏だったのではなく、期待していたレベルでの満足感の問題です。

休憩後、今日のメインのオラトリオ《オリーヴ山のキリスト》です。これは最高の演奏でした。特に独唱の3人の出来が素晴らしくて、感涙ものの歌唱でした。まず、イエス役を歌ったテノールの鈴木 准が声がよく出ていて、まるで、ヘルデンテノールを思わせる雄大な歌唱です。イエスがかっこよく歌い上げるというのもバッハ的に言えば、妙な感じですが、まあ、実に人間的で英雄的なイエスというのがベートーヴェンが表現したかったものなんでしょう。天使、セラフィム役のソプラノの中江早希はテノールの鈴木 准と拮抗するような素晴らしい歌唱。声の響きが美しく、声量も十分で高域まで楽々と歌い上げます。そう言えば、昨年もリナルドのアルミーダ役で素晴らしい歌唱を聴かせてくれましたし、さらにベートーヴェンのハ長調ミサ曲のソプラノソロではもっと素晴らしい歌唱を聴かせてくれました。このタイプのソプラノでは今、一番、脂がのっているソプラノですね。ともかく、豊かでピュアーな声は聴くものを魅了してくれます。まさに天使の歌声です。ペテロ役のバスの加耒 徹は聴くたびにいつも安定した素晴らしい歌唱を聴かせてくれるようになりました。ここ1~2年の成長が著しい歌手です。まあ、それでも今日はテノールとソプラノのソロが主役ですから、それを支えるところに落ち着いてもらいます。もちろん、BCJの合唱は素晴らしく、終盤の合唱はまるで勝利の歌声のようです。オペラのフィデリオを思わせるオラトリオですが、宗教曲であることを意識しなければ、この作品はなかなかの傑作です。そして、その傑作を鈴木雅明率いるBCJは素晴らしい演奏で提示してくれました。今後、BCJが定期的に取り上げていってもらいたい作品です。


今日のプログラムは以下です。


  指揮:鈴木雅明
  ソプラノ:中江早希
  テノール:鈴木 准
  バス:加耒 徹
  合唱・管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン


L. v. ベートーヴェン

  静かな海と楽しい航海 Op.112
  交響曲 第2番 ニ長調 Op.36

   《休憩》

  オラトリオ《オリーヴ山のキリスト》Op.85



最後に予習について、まとめておきます。

1曲目の《静かな海と楽しい航海》を予習したCDは以下です。

 ジョン・エリオット・ガーディナー指揮オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティーク,モンテヴェルディ合唱団 1989年11月 ロンドン、オールセインツ教会 セッション録音

きっちりした演奏で言うことなし。


2曲目の交響曲 第2番を予習したCDは以下です。

 ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団 1964年 クリーヴランド、セヴェランス・ホール セッション録音

こんなに素晴らしい演奏は聴いたことがありません。完璧でノリのよい演奏。セルのベートーヴェンをなめていました。こんなに凄いとは驚きです。全9曲聴いてみなければいけませんね。特に曲の傾向の似ている英雄と第7番はどんな演奏なんでしょう。


3曲目のオラトリオ《オリーヴ山のキリスト》を予習したCDは以下です。

 サイモン・ラトル指揮ロンドン交響楽団、ロンドン交響合唱団 2020年1月19日、2月13日 ロンドン、バービカン・ホール ライヴ録音
  エルザ・ドライシヒ(ソプラノ)、パヴォル・ブレスリク(テノール)、デイヴィッド・ソアー(バリトン)

ベートーヴェン生誕250年を記念したアルバムです。さすがにラトルは健在ですね。素晴らしい演奏です。



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歌姫、松井亜希の清らかなソプラノと鈴木雅明の名解説によるバッハの名曲集:バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル 2021.8.7

5月に予定されていたコンサートがコロナ禍のために延期されていました。今日、無事にコンサートが催されましたが、結局、今も緊急事態宣言下である皮肉。それも東京オリンピックの終盤と重なるとはね。
ともかく、今日はバッハの多彩な音楽が展開され、素晴らしい楽興の時を過ごしました。
前半は小編成のオーケストラによる管弦楽曲とアンナ・マグダレーナの音楽帖よりの歌曲集です。
冒頭は管弦楽組曲 第4番で華やかに始まります。弦が8名、トランペット3名、ティンパニ、オーボエ3名、ファゴット(通奏低音も兼ねる)、通奏低音(チェロ、コントラバス、チェンバロ)という編成ですが、響きの豊かさに魅了されます。長大な序曲の華やかな演奏に続き、比較的短いブーレ、ガヴォット、メヌエット、レジュイサンスがすっきりとした雰囲気で演奏されます。今日のコンサートの幕開けにふさわしいものでした。
この曲の演奏が終わると、指揮者の鈴木雅明がマイクを手に取り、軽妙洒脱な解説をしてくれます。今日のテーマはケーテンの愛と題されています。バッハのケーテン時代の作品に焦点を合わせています。
バッハは宮廷楽長として、アンハルト=ケーテン侯レオポルトとよい関係にあり、幸福な時代を過ごしたそうです。しかし、1720年5月に妻が急死するという突然の不幸に見舞われます。傷心のバッハでしたが、何と翌年には宮廷ソプラノ歌手のアンナ・マクダレーナ・ヴィルケと再婚します。有名な『アンナ・マクダレーナ・バッハのための音楽帳』は彼女のためにバッハが贈った楽譜帳です。次はその中にある歌曲が4曲演奏されます。いずれも短い小品で、これまで、バッハ・コレギウム・ジャパンの定期演奏会では取り上げてこなかったそうです。
《ジョヴァンニーニのアリア》は軽妙な世俗曲で、ソプラノの松井亜希とテノールの櫻田 亮が鈴木雅明のチェンバロの伴奏で掛け合いで歌います。松井亜希の透明な声に魅了されます。彼女の最近の好調さはとても印象的です。
《御身が共にあるならば》はその松井亜希がチェロとオルガンを伴奏にまたまた美しい歌声を聴かせてくれます。チェロとオルガンの演奏も素晴らしく、まるで、トリオソナタの風情です。うっとりと聴き入りました。今日一番の演奏に思えました。
《汝、汝、ヤハウェよ》は第1節と第8節が4重唱で、その間の第3節が松井亜希のソロで演奏されます。なかなか凝った構成の演奏ですね。ここでも松井亜希のソロが光ります。
レチタティーヴォ《私は、満ち足りた》~アリア《眠るがよい、疲れた眼よ》は小編成のオーケストラ(フラウト・トラヴェルソ、弦3名、チェンバロ、チェロ、オルガン)を伴奏につけて、また、松井亜希のソロです。レチタティーヴォはなんとなく、モーツァルトの《フィガロの結婚》のレシタティーヴォを思わせる雰囲気です。スザンナのレシタティーヴォですね。アリアはたっぷり、松井亜希の美声に魅了されて、うっとりです。今日の松井亜希は実に素晴らしい!

この歌曲を挟んで、前半の最後は有名なブランデンブルク協奏曲 第5番です。舞台にたつ演奏者たちを見て、そのあまりの小編成にあっと驚きます。これで演奏できるのって感じです。弦が3名、フラウト・トラヴェルソ、チェンバロ、チェロ、コントラバス(ヴィオローネ)という編成です。演奏が始まると、この編成でも十分であることがその響きの豊かさで分かります。不思議な感じです。最小限に切り詰めた編成で、室内楽的に美しい響きが満ちてきます。独奏楽器はフラウト・トラヴェルソの鶴田洋子、ヴァイオリンの若松夏美、チェンバロの鈴木雅明が担当します。いずれも名人級の演奏です。第1楽章の終盤にはチェンバロの長大なカデンツァが鈴木雅明によって、見事に奏されます。凄い演奏です。続く第2楽章はロ短調の美しい調べが独奏者3人で演奏されます。とても素晴らしい演奏にうっとりです。本当はフラウト・トラヴェルソは菅きよみに演奏してもらいたかったのですが、それは贅沢ですね。鶴田洋子も十分に見事な演奏です。もちろん、ヴァイオリンの若松夏美、チェンバロの鈴木雅明はこれ以上、望めないようなレベルの演奏を聴かせてくれます。いやはや、この第2楽章は素晴らしい演奏で陶然としてしまいました。第3楽章のフーガもさすがの演奏でした。

後半はカンタータ第120番a 《主なる神、万物の支配者よ》。結婚式用カンタータが華やかに演奏されました。オーケストラは小編成ながら、バッハ・コレギウム・ジャパンの合唱隊が参加して、素晴らしい響きを味わえました。4人の独唱者たちも見事な歌唱を聴かせてくれました。コロナ禍以降は日本人の独唱ですが、全然、問題のない歌唱を聴かせてくれています。それでもそろそろ、海外の声楽家も来てもらいたいものですね。なお、第4曲のオルガンと管弦楽により奏されたシンフォニアは、何と「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番ホ長調BWV1006」の前奏曲と同じ音楽でした。これだけ、構成が変わるとまったく別の曲のように聴こえます。これもバッハがよくやった曲の使いまわしですね。天才は曲を使いまわしても、単なる使いまわしに終わらないのが凄いところです。

すべての演奏が終わって、拍手が続く中、突然、鈴木雅明がマイクを手に取り、今日は十分に長いコンサートだったが、最後にもう1曲演奏しますというメッセージ。何とミサ曲ロ短調の第2部:ニケア信経からの合唱曲で、コロナ禍の鎮静を祈るとのことです。《死者のよみがえりと来世の生命を待ち望む》という名曲・名演奏でコンサートをしめくくってくれました。


今日のプログラムは以下です。


  指揮:鈴木雅明
  ソプラノ:松井亜希
  アルト:青木洋也
  テノール:櫻田 亮
  バス:渡辺祐介
  オルガン:大塚直哉
  ヴァイオリン:若松夏美
  フラウト・トラヴェルソ:鶴田洋子
  合唱・管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン


J. S. バッハ

  管弦楽組曲 第4番 BWV 1069

  アンナ・マグダレーナの音楽帖より歌曲集
   《ジョヴァンニーニのアリア》BWV518
   《御身が共にあるならば》BWV508
   《汝、汝、ヤハウェよ》BWV299から第1,3,8節
   レチタティーヴォ《私は、満ち足りた》~アリア《眠るがよい、疲れた眼よ》BWV82より

  ブランデンブルク協奏曲 第5番 BWV 1050

   《休憩》

  カンタータ第120番a 《主なる神、万物の支配者よ》BWV120a

   《アンコール》

    J.S.バッハ:ミサ曲ロ短調 第2部:ニケア信経より 第9曲 合唱《死者のよみがえりと来世の生命を待ち望む》


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目の管弦楽組曲 第4番を予習したCDは以下です。

 カール・リヒター指揮ミュンヘン・バッハ管弦楽団 1960~61年 セッション録音

昔から、この演奏がずっと定番でした。今回聴き直してみても、若干の古さは感じるものの実に精神レベルの高い演奏に襟を正す思いです。


2~5曲目のアンナ・マグダレーナの音楽帖よりの歌曲集を予習したCDは以下です。

 エリー・アメリング、グスタフ・レオンハルトほか 1966年 セッション録音

アメリングの清らかな歌唱がすべてです。


6曲目のブランデンブルク協奏曲 第5番を予習したCDは以下です。

 鈴木雅明指揮バッハ・コレギウム・ジャパン 2008年6月 ミューザ川崎シンフォニーホール セッション録音

寺神戸亮(Vn)、鈴木秀美(Vc)、菅きよみ(fl)、島田俊雄(tp)などが参加したブランデンブルク協奏曲全6曲のアルバムです。極めて小編成での見事な演奏です。


7曲目のカンタータ第120番aを予習したCDは以下です。

 鈴木雅明指揮バッハ・コレギウム・ジャパン 2011年6月 神戸松蔭女子学院大学チャペル セッション録音
  ハナ・ブラシコヴァ(Sop)
  ダミアン・ギヨン(C-T)
  クリストフ・ゲンツ(Ten)
  ペーター・コーイ(Bs)

鈴木雅明指揮バッハ・コレギウム・ジャパンのバッハ、カンタータ全集の一枚。高いレベルの演奏ですが、なかでも、ハナ・ブラシコヴァのソプラノの美しさが際立っています。



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コロナ禍の聖金曜日に心に沁みるマタイ受難曲のコラール:バッハ・コレギウム・ジャパン@サントリーホール 2021.4.2

今日は長い一日になりました。1時過ぎに新国立劇場に行って、オペラのゲネプロを聴き、そのまま、サントリーホールに移動して、6時ごろに到着。バッハ・コレギウム・ジャパンの恒例の聖金曜日のマタイ受難曲を聴いて、サントリーホールを出たのは10時ごろ。全部で9時間くらいを費やして、正味6時間ほど、音楽に浸りました。

新国立劇場のオペラのゲネプロはストラヴィンスキーの《夜鳴きうぐいす》とチャイコフスキーの《イオランタ》の2本立て。特に《イオランタ》が素晴らしくて、感動で涙が出ました。その感想は明日書くことにして、今日はバッハ・コレギウム・ジャパンのマタイ受難曲について、感想を綴ってみます。やはり、聖金曜日の音楽はその日にその感動を書きたいですからね。昨年はコロナ禍のために聖金曜日に聴くことがかなわず、延期になって、真夏のマタイになってしまいました。聖金曜日にマタイを聴くのは2年ぶりです。来年も再来年もずっと聖金曜日にBCJ(バッハ・コレギウム・ジャパン)のマタイを聴ければ、この上ない幸せです。

今日だけはsaraiは己のおかしてきた罪や恥ずべき行いを省みながら、バッハの神聖な作品に向き合います。宗教の枠を超えて、自分にそう思わせるような破格の音楽です。うなだれながら聴き入るsaraiを優しく慰撫してくれるのは、マタイ受難曲の中核をなすコラールの数々です。中でも5回登場する受難コラールは西洋音楽の最高峰であるマタイ受難曲の中で、音楽を超える力を持つ特別のものです。BCJは合唱と器楽のありったけの力でこの受難コラールを歌い上げてくれます。それも5回とも表現を変えながら、最高のものをもたらしてくれます。特に4回目に登場する第54曲(第63曲)のコラール「おお、血と涙にまみれし御頭」の極限に至るような美しさは格別でした。繰り返しでぐっと抑えた表現の優しさはまるでコロナ禍で苦しむ全人類を慰撫するかのようです。最後の5回目の登場はイエスが十字架で亡くなった直後に歌われます。
第62曲(第72曲)の コラール「いつの日かわれ去り逝くとき」です。このフリギア旋法で歌われるコラールは弔いの歌にしか聴こえません。死すべき運命にあるすべての人々に優しく救いをもたらすようにしみじみと歌われます。頭を垂れて、じっと聴き入りました。BCJの最高の音楽です。これを聴ければ、また、来年まで、心穏やかに生きていけるような気がします。

コロナ禍で日本人だけでの演奏になりましたが、BCJの実力はますます底上げされて、海外演奏家が参加できないギャップをはねのけてくれます。もともと器楽奏者たちは名人揃いですから、素晴らしい演奏です。今年は配置も普通の間隔に密集したせいか、昨年よりも無理のない演奏です。合唱隊も同様です。合唱もアリアもすべて素晴らしかったのですが、今年のベストの演奏は第49曲(第58曲)のソプラノのアリアです。菅きよみのフラウト・トラヴェルソのソロが主導して、アウス・リーベAus Liebe、ヴィル・マイン・ハイラント・シュテルベンWill Mein Heiland Sterben(愛故にわが救い主は死にたまわんとす)とソプラノの森麻季が歌い上げます。あえて、ソプラノの森麻季がステージの奥でひっそりと歌っていたのが印象的です。終盤に「アウス・リーベ」(愛故に)が幾度も繰り返されるところの清澄さには胸を撃たれました。菅きよみのフラウト・トラヴェルソの朴訥とした響きも見事です。

今年から、マタイの指揮は鈴木雅明から息子の鈴木優人にバトンタッチ。父親とはまた違う表現で最高の演奏を聴かせてくれました。あっ、やはり、エヴァンゲリストの櫻田 亮の美声と卓抜な表現力には触れておかないといけませんね。BCJの最新のCDでは彼がエヴァンゲリストを歌っていませんが、是非とも、櫻田 亮がエヴァンゲリストを歌うBCJ3回目のCDの録音を願わざるを得ません。

来年のBCJのマタイ受難曲の演奏が今から楽しみです。


今日のプログラムは以下です。


  指揮:鈴木優人
  エヴァンゲリスト:櫻田 亮
  イエス:加耒 徹
  ソプラノ:森 麻季、松井亜希
  アルト:久保法之、青木洋也
  テノール:櫻田 亮、谷口洋介
  バス:加耒徹、加藤宏隆
  フラウト・トラヴェルソ/リコーダー:菅きよみ
  オーボエ:三宮正満
  ヴァイオリン(コンサートマスター):若松夏美、高田あずみ
  チェロ:山本徹
  ヴィオラ・ダ・ガンバ:福沢宏
  合唱・管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン


J. S. バッハ

マタイ受難曲 BWV 244

第1部

 《休憩》

第2部


最後に予習について、まとめておきます。

以下のCDを聴きました。

 鈴木雅明指揮バッハ・コレギウム・ジャパン 2019年4月 彩の国さいたま芸術劇場 セッション録音
  ベンヤミン・ブルンス(エヴァンゲリスト)
  クリスティアン・イムラー(バスI/イエス)
  キャロリン・サンプソン(ソプラノI)
  松井亜希(ソプラノII)
  ダミアン・ギヨン(アルトI)
  クリント・ファン・デア・リンデ(アルトII)
  櫻田 亮(テノールI)
  ザッカリー・ワイルダー(テノールII)
  加耒 徹(バスII/ユダ/ピラト/大祭司カヤパ/祭司長I)
  鈴木優人(オルガン)

旧盤も素晴らしい演奏でしたが、新盤は録音もよく、よりロマンティックな演奏になっています。予習の時間が取れず、慌てて、前日の18時から聴きだして、21時までかかり、それまで夕食を待ってくれた配偶者に感謝です。



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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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11/09 10:56 えりちゃ

えりちゃさん、お久しぶりです。saraiです。

なかなか、海外渡航の見通し、立ちませんね。来年あたりはどうでしょうね。長期戦覚悟で我慢するしかありませんね。

こちら

04/10 02:37 sarai
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