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イザベル・ファウストの弾く究極のバッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ@東京オペラシティ コンサートホール 2021.11.18

イザベル・ファウストのバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータを聴くのは2度目です。最初に聴いたのは5年前のザルツブルク音楽祭。このときにファウストを初めて聴いたんです。また、バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ全曲を実演で聴いたのも初めてでした。ザルツブルクのコレギエン教会で一挙に全6曲を聴いたんです。夜の8時半に始まり、深夜12時までのコンサート。たった一人で演奏したイザベル・ファウストの体力も凄いですが、聴く側のsaraiもへとへとになりました。その日はお昼にモーツァルトのオペラ《コジ・ファン・トゥッテ》を聴いたので、最後はもう修行のようなものでした。でも素晴らしい演奏で最後のシャコンヌは感涙ものでした。

今日は普通のコンサートホールで3曲だけ聴くので、ゆったりと聴けるでしょう。残りの3曲は昨日でした。saraiはキーシンのリサイタルと重なって、今日の分だけ聴きます。
ただ、今日は休憩なしだそうです。休憩を入れて、ゆったりと聴けると思っていましたが、あてが外れました。

パルティータ第3番から始まります。音量は少し小さいですが、素晴らしい響きがホールを貫きます。最初のプレリュードから胸に沁みます。練習曲のような風情ですが、格調の高い演奏です。続くルールも美しい響きの爽やかな演奏です。有名なガヴォットを楽しく聴き、メヌエットは優雅な演奏です。短いブーレを挟んで、ジーグで全曲をしめくくります。そんなに長い曲はないのですが、たっぷりと聴いたという満足感が残ります。実時間よりも充実した長い時間に思えました。

続いて、ソナタ第2番です。グラーヴェは重厚な演奏。ドイツを代表するヴァイオリニストらしく、重心の低い演奏です。そうそう、彼女は今日もいつものようにヴァイオリンはストラディヴァリの名器「スリーピング・ビューティー」で、バロック弓を使っての演奏です。その分、音量は下がりますが、音色は美しいですね。もちろん、ノン・ヴィブラートです。次のフーガは永遠に続くと思うほど、長大です。ここでも響きが素晴らしく美しいです。流石に聴くほうも疲れてきます。次のアンダンテはとても美しい曲。saraiも大好きです。極めて美しい演奏にうっとりとします。最後はアレグロ。軽快なテンポで走っていきます。ソナタは聴き応えがありました。これで20分ほどとは信じられません。

普通はここで休憩が入り、一息つくところですが、一気にパルティータ第2番に進みます。このパルティータは耳慣れた有名な曲が続きます。素晴らしいアルマンドで始まり、軽快なクーラントが続きます。でも、結構、ここまでもボリュームがあります。次は大好きなサラバンド。哀調に満ちた旋律にうっとりとなります。ゆったりとした音楽がいつまでも続きます。一転して、次のジーグは軽やかに疾走します。そして、いよいよ、真打ち登場。西洋音楽で器楽作品の最高峰にあるシャコンヌです。作品の長大さも群を抜いて、全曲の半分ほどをしめます。うーん、流石にファウストのシャコンヌは素晴らしい。冒頭の重音の響きが圧倒的で心を鷲掴みにされます。そして、次から次に心に迫る抒情的な旋律が美しく奏でられます。うっとりどころではありません。長大ですが、いつまでも終わってほしくない究極の音楽が続いていきます。いったん、頂点に達して、強い感動を覚えた後、最後はすっと終わります。長い静寂が続きます。バッハの無伴奏は本質的に静謐さを音楽の形にしたものです。音楽が終わっても、頭の中では静謐な音楽が続いています。今日の聴衆のみなさんはこのバッハの音楽の本質を理解している人たちです。長い静寂のあと、ブラーボの一声。ルール違反ですが、見事な一声でした。続いて盛大な拍手。素晴らしい無伴奏でした。

ファウストは今年1月に来日して、素晴らしいシューマンを聴かせてくれました。その後も長い滞在でした。そして、また、来日。1年に2回来日です。それもコロナ禍で制限を受けながらの来日。よほどの親日家なのでしょう。実力は凄いですが、地味な存在だと思うのですが、今日もほぼ満席。日本での人気も相当のようです。日本人のsaraiが言うのも何ですが、日本人の耳も肥えましたね。これからもたびたびの来日が楽しみです。

このオペラシティでは3年前にヒラリー・ハーンがバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータの全曲を演奏しました。あれは凄い演奏でした。オペラシティはBCJの演奏も含めて、バッハの聖地のようになってきましたね。


今日のプログラムは以下です。

  ヴァイオリン:イザベル・ファウスト

  バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ全曲コンサート 第2夜

  無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番 ホ長調 BWV 1006
   I. プレリュード Preludio
   II. ルール Loure
   III. ロンド風ガヴォット Gavotte en rondeau
   IV. メヌエットI-II Menuett I-II
   V. ブーレ Bourree
   VI. ジーグ Gigue

  無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第2番 イ短調 BWV 1003
   I. グラーヴェ Grave
   II. フーガ Fuga
   III. アンダンテ Andante
   IV. アレグロ Allegro

  無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番 ニ短調 BWV 1004
   I. アルマンド Allemanda
   II. クーラント Corrente
   III. サラバンド Sarabanda
   IV. ジーグ Giga
   V. シャコンヌ Ciaccona

   《アンコール》

     無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番 ト短調 BWV1001 から 第3楽章 シチリアーノ


最後に今回の予習について、まとめておきます。と言っても、もちろん、すべて、イザベル・ファウストを聴きました。

  イザベル・ファウスト 2009年9月1-4日 、2011年8月、9月 テルデックス・スタジオ(ベルリン) セッション録音
    使用楽器:1704年製ストラディヴァリ「スリーピング・ビューティー」 バロック弓

もう既に10年前の録音なのですね。バロック弓ということで地味な音を想像していましたが、素晴らしい響きです。演奏も最高。シェリング、ヒラリー・ハーンに並び立つ演奏です。



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       ファウスト,  

イザベル・ファウストのシマノフスキはミステリアスでありながら、チャーミング 熊倉 優&NHK交響楽団@東京芸術劇場コンサートホール 2021.2.12

イザベル・ファウストはコロナ禍の中、海外演奏家として入国制限の中、最後に入国し、1月から日本で演奏を続けています。とてもありがたいので、再び、その演奏を聴くために足を運びました。
先日聴いたシューマンとブラームスの室内楽はとても素晴らしかったのですが、今日のシマノフスキの協奏曲はまた、趣きが違って、とってもチャーミングな演奏。引き出しの多さに驚かされます。シマノフスキのヴァイオリン協奏曲第1番は独奏ヴァイオリンのパートがほぼ全曲にわたって、高音域の繊細でミステリアスな表現が続きますが、ファウストは驚くべき美音で聴き手を魅惑してくれました。特に左手の強めのヴィブラートは圧倒的。オリジナル演奏ではノンヴィブラートも得意なのに、彼女は多彩な表現力がありますね。若手の指揮者、熊倉 優率いるNHK交響楽団も色彩感あふれる響きで好サポートでした。ファウストは音楽だけでなく、シマノフスキにぴったりの奇妙なドレスもなかなかチャーミングでした。いつもは地味ないでたちなのに、今日は張り切っていますね。ともかく、日本に2か月も滞在して、日本の聴衆に音楽を聴かせてくれたことに感謝です。彼女がヨーロッパに戻ったら、しばらく、海外演奏家の演奏が聴けそうにありません。コロナがある程度収束して、何とか、海外からの演奏家が来日できることを願うばかりです。あるいは、ファウストがもうしばらく、日本で演奏活動を続けてくれないかな・・・。

後半のプログラム、ドヴォルザークの交響曲 第6番は熊倉 優の清新な指揮のもと、”MARO”こと篠崎史紀率いるNHK交響楽団の素晴らしい響きで魅了してくれました。一つだけ残念だったのは、ボヘミアの素朴な雰囲気が感じられなかったことですが、無理な要求かもしれません。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:熊倉 優
  ヴァイオリン:イザベル・ファウスト
  管弦楽:NHK交響楽団  コンサートマスター:篠崎史紀

  スメタナ:歌劇「売られた花嫁」─ 3つの舞曲(ポルカ/フリアント/道化師の踊り)
  シマノフスキ:ヴァイオリン協奏曲 第1番 Op.35
   《アンコール》ニコラ・マタイス:ヴァイオリンのためのエアー集 前奏曲/パッサージオ・ロット/アンダメント・ヴェローチェ

   《休憩》

  ドヴォルザーク:交響曲 第6番 ニ長調 Op.60


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のスメタナの歌劇「売られた花嫁」からの 3つの舞曲は以下のCDを聴きました。

 ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団 1963年 クリーヴランド セッション録音

セルのお国ものの演奏はさすがのレベルです。


2曲目のシマノフスキのヴァイオリン協奏曲 第1番は以下のCDを聴きました。

 バイバ・スクリデ、ワシーリー・ペトレンコ指揮オスロ・フィル 2013年2月14、15日 オスロ・コンサート・ホール セッション録音
 フランク・ペーター・ツィンマーマン、アントニ・ヴィト指揮ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団 2007年 セッション録音
 
いずれも熱演。スクリデのヴァイオリンは美しい高域の響きを聴かせてくれます。一方、ツィンマーマンは男性とは思えない繊細な美を表現してくれます。


3曲目のドヴォルザークの交響曲 第6番は以下のCDを聴きました。

 ズデニェック・コシュラー指揮スロヴァキア・フィル 1977年 セッション録音
 
弦セクションの美しさが際立ちます。見事な演奏です。



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       ファウスト,  

今日もシューマンの豊かなロマンの世界にうっとり ファウスト&メルニコフ@王子ホール 2021.1.27

昨日に引き続いて、イザベル・ファウストのヴァイオリン、アレクサンドル・メルニコフのピアノを聴きます。前半のプログラム、後半のプログラムのそれぞれ冒頭にシューマンがドレスデン時代に書いた短いけれども実に充実した作品が演奏されました。昨日のシューマンと同様に素晴らしい演奏でした。音楽的に深い内容の演奏にうっとりと聴き入りました。ファウストのヴァイオリンの音色はシューマンにぴったりで、彼女をシューマン弾きと呼びたいほどです。特に後半のプログラムで演奏された3つのロマンスの深い情感には強い感銘を覚えました。第2曲の抒情的なメロディーをファウストは柔らかいヴァイオリンの響きで歌い上げて、最高のシューマンの音楽を聴かせてくれました。本来、プログラム的には、シューマンの作品は前菜の位置づけですが、極上の前菜になっていました。2日間通して、こんな素晴らしいシューマンが聴けて、シューマン好きとしては最高の2日間になりました。

もちろん、メインの曲の演奏も素晴らしかったんです。前半のバルトークの緊張感の高い演奏も聴きものでした。第1楽章の夜を思わせる冷徹な表現、第2楽章の爆発的なエネルギー。素晴らしいバルトークでした。しかし、プログラム的にどうも落ち着きが悪かったのも事実です。せっかくだから、むしろ、シューマンの第3番のソナタを弾いてくれたほうがよかったかなと思っていたら、それはアンコールでプレゼントされました。

後半のメインのブラームスのクラリネット・ソナタ第1番のヴァイオリン版は昨日の第2番以上の素晴らしい演奏。第1楽章と第2楽章の爽やかなロマンはクラリネットで演奏する渋い世界とは別物のようで、ファウストのヴァイオリンの柔らかい響きが心を打ちます。そして、第4楽章の圧倒的なフィナーレ。ファウストのブラームスもいいですね。ヴァイオリン・ソナタも聴きたかったところです。リサイタルの3日目があれば、ブラームスのヴァイオリン・ソナタが聴けたでしょう。少々、残念です。

そして、最後のアンコールはシューマンで〆です。ヴァイオリン・ソナタ第3番の間奏曲というよりも『F.A.E.ソナタ』の間奏曲です。またまた、シューマンの世界にうっとり。ファウストの弾くシューマンの素晴らしさを堪能しました。

今でもシューマンのヴァイオリン・ソナタ 第2番の第3楽章のコラールの旋律が脳裏から離れず、ずっと、2日間、鳴り続けています。


今日のプログラムは以下のとおりでした。

  ヴァイオリン:イザベル・ファウスト
  ピアノ:アレクサンドル・メルニコフ

  シューマン:幻想小曲集 Op.73
  バルトーク:ヴァイオリン・ソナタ 第2番 Sz76

   《休憩》

  シューマン:3つのロマンス Op.94
  ブラームス:クラリネット・ソナタ 第1番 ヘ短調 Op.120-1(ヴァイオリン版)

   《アンコール》
     シューマン:ヴァイオリン・ソナタ 第3番 イ短調 WoO 27より 第3楽章 間奏曲(F.A.E.ソナタ第2楽章より転用)


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のシューマンの幻想小曲集はヴァイオリン版のよいものがなくて、チェロ版の以下のCDで予習しました。

  ミッシャ・マイスキー、マルタ・アルゲリッチ 1999年12月 ブリュッセル セッション録音

マイスキーらしいロマンティックな演奏です。


2曲目のバルトークのヴァイオリン・ソナタ 第2番を予習したCDは以下です。

  パトリツィア・コパチンスカヤ、ポリーナ・レシチェンコ 2017年6月 グルノーブル、MC2 セッション録音

コパチンスカヤが弾くとこうなるのねっていう、自在で凄い演奏です。


3曲目のシューマンの3つのロマンスを予習したCDは以下です。

  イザベル・ファウスト、アレクサンドル・メルニコフ 2014年9月 セッション録音

今日のリサイタルで演奏するファウストとメルニコフのコンビでの演奏です。


4曲目のブラームスのクラリネット・ソナタ 第1番はヴァイオリン版のよいものがなくて、ヴィオラ版を中心に以下のCDで予習しました。

  ウイリアム・プリムローズ(ヴィオラ)、ルドルフ・フィルクスニー 1958年 セッション録音
  ヨゼフ・スーク(ヴィオラ)、ヤン・パネンカ 1990年 セッション録音
  イェルク・ヴィトマン(クラリネット)、アンドラーシュ・シフ 2018年5月14-16日 ドイツ、ノイマルクト、Historischer Reitstadel セッション録音

プリムローズは古い録音ですが、おおらかな演奏で楽しませてくれます。スークはとても美しい、清々しい演奏。ヴィトマンとシフはこれぞ真打ちという深い演奏です。


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       ファウスト,  

極上のシューマンの夕べ ファウスト&メルニコフ@王子ホール 2021.1.26

ヴァイオリンのイザベル・ファウストはこれまで、バッハの無伴奏、ブラームスの協奏曲を聴きましたが、今日のような室内楽が最高です。それもシューマンがとっても似合います。彼女のヴァイオリンはまるでシューマンを演奏するためだけのようなヴァイオリンの響きです。リサイタルの最初と最後に演奏されたシューマンのソナタの素晴らしさはどうでしょう。これ以上のシューマンは決して聴けないでしょう。それにsaraiはシューマンが大好きですから、今日のリサイタルは忘れられないものになりました。シューマンの音楽は最高です。

最初に演奏されたシューマンのヴァイオリン・ソナタ第1番は暗い情感に満ちていて、ファウストの柔らかい表情のヴァイオリンの響きがロマンティックに歌い上げます。メルニコフの力強いタッチのピアノがそれを支えます。どこか、やるせない雰囲気もあります。ラフマニノフはロシアのやるせなさの音楽ですが、シューマンもドイツのやるせなさの音楽だったのかと今さらながら感じます。この曲はシューマンとしては後期のデュッセルドルフ時代に作曲されたものです。狂気に苛まれ始めたシューマンが美しいロマンの中にどこか苦しそうな感情を秘めたような音楽を書きました。傑作である以上にsaraiの愛する作品です。それは後で演奏される第2番のソナタも同様です。その愛する作品がこれ以上はないように演奏されるのですから、saraiはたまりません。身もだえするような気持ちで聴き入っていました。素晴らし過ぎるシューマンに魅了されました。

次のウェーベルンはとても短い曲ですが、恐ろしいほど緊張感に満ちた演奏に呪縛されました。

プログラムの前半、最後に演奏されたブラームスのクラリネット・ソナタ第2番はブラームスが生涯で最後に書いた室内楽作品です。今日はブラームス自身が編曲したヴァイオリン版です。もちろん、初めて聴きます。冒頭からブラームスらしい抒情的な旋律が流れますが、ファウストの柔らかい響きのヴァイオリンはまったく違和感がなく、美しさの極みです。詳細は書きませんが、今後はヴァイオリン版も演奏機会が増えそうな気がします。それほど素晴らしい演奏でした。ブラームスのヴァイオリン・ソナタは3曲ですが、クラリネット・ソナタ2曲のヴァイオリン版を入れて、これからはヴァイオリン・ソナタが5曲も聴けるのは嬉しいですね。

休憩後、一番、楽しみにしていたシューマンのヴァイオリン・ソナタ第2番です。冒頭で演奏された第1番と同じような雰囲気の素晴らしい演奏です。第1番ほどはやるせなさはありませんが、それ以上に暗い情感が前面に出ます。シューマンの自殺未遂事件の頃の作品です。ロマンや明るく勢いのある外面の背後にシューマンの狂気や苦しみが秘められています。そういう微妙な雰囲気を見事に表現するファウストの演奏です。この作品の聴きどころは第3楽章で哀しい調べのコラールが奏でられるところです。ピチカートに始まり、弓で単音、重音と弾き継がれます。ここで大きな感動があります。激しいトリオを経て、また、コラールに回帰します。ここでさらに感動が増します。ファウストのヴァイオリンも素晴らしいですが、メルニコフのピアノの伴奏の美しいこと! 第4楽章は祝典的にも思える音楽ですが、暗い狂気も秘めています。圧巻のフィナーレでした。

こんな素晴らしいシューマンは2度と聴けないような気がします。コロナ禍の中、よくもお二人は来日してくれました。素晴らしい音楽をありがとう!

そうそう、アンコールで演奏されたクララ・シューマンの美しいロマンス、うっとりと聴きました。いつぞや、コパチンスカヤの演奏でも聴きましたが、とても素晴らしい曲です。


今日のプログラムは以下のとおりでした。

  ヴァイオリン:イザベル・ファウスト
  ピアノ:アレクサンドル・メルニコフ

  シューマン:ヴァイオリン・ソナタ 第1番 イ短調 Op.105
  ウェーベルン:ヴァイオリンとピアノのための4つの小品 Op.7
  ブラームス:クラリネット・ソナタ 第2番 変ホ長調 Op.120-2(ヴァイオリン版)

   《休憩》

  シューマン:ヴァイオリン・ソナタ 第2番 ニ短調 Op.121

   《アンコール》
     クララ・シューマン :ピアノとヴァイオリンのための3つのロマンス Op.22より 第1楽章
 


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目、4曲目のシューマンの2つのヴァイオリン・ソナタを予習したCDは以下です。

  イザベル・ファウスト、ジルケ・アーヴェンハウス 1999年 セッション録音
  ギドン・クレーメル、マルタ・アルゲリッチ 1985年 セッション録音
  アドルフ・ブッシュ、ルドルフ・ゼルキン 1943年 ワシントン ライヴ録音

いずれも素晴らしい演奏。ブッシュは古い録音ですが、感動なしに聴けません。


2曲目のウェーベルンのヴァイオリンとピアノのための4つの小品を予習したCDは以下です。

  アンネ=ゾフィー・ムター、ランバート・オーキス 2000年5月 ライヴ録音
  ギドン・クレーメル、オレグ・マイセンベルク 1994年5月 ドイツ、ノイマルクト

これも名人2人の演奏は緊張感に満ちた素晴らしい演奏。


3曲目のブラームスのクラリネット・ソナタ 第2番はヴァイオリン版のよいものがなくて、ヴィオラ版を中心に以下のCDで予習しました。

  ウイリアム・プリムローズ(ヴィオラ)、ルドルフ・フィルクスニー 1958年 セッション録音
  ヨゼフ・スーク(ヴィオラ)、ヤン・パネンカ 1990年 セッション録音
  イェルク・ヴィトマン(クラリネット)、アンドラーシュ・シフ 2018年5月14-16日 ドイツ、ノイマルクト、Historischer Reitstadel セッション録音

プリムローズは古い録音ですが、おおらかな演奏で楽しませてくれます。スークはとても美しい、清々しい演奏。ヴィトマンとシフはこれぞ真打ちという深い演奏です。



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       ファウスト,  

ファウストの奏でるブラームスは一味違う・・・カンブルラン&読売日本交響楽団@みなとみらいホール 2018.1.21

なんと言ってもイザベル・ファウストの弾くブラームスのヴァイオリン協奏曲が注目のコンサートです。ブラームスの室内楽でも素晴らしい録音を実現しているファウストがどのような演奏を聴かせてくれるか、楽しみです。

地味なドレスのファウストが登場。オーケストラの長い前奏が始まります。シルヴァン・カンブルランが指揮する読売日本交響楽団は明るい響きのブラームスです。若干、違和感がありますが、フランス人指揮者のカンブルランにとってのブラームスは明るいイメージなのかな。このブラームスのヴァイオリン協奏曲が作曲されたヴェルター湖の夏の光は確かに明る過ぎるほどのものでした。この明るく、透明感に満ちた響きのオーケストラに対して、ファウストの独奏ヴァイオリンが決然とした雰囲気で入ってきます。いきなり、精神性の高いファウストの演奏が繰り広げられます。この演奏はハイリック・シェリングのヴァイオリンを思い起こさせるような感じです。しかし、シェリングとは精神性の高さでは似ていますが、そこまでの厳格さとは異なり、肩の力が抜けたような柔和さが醸し出されています。その適度の柔らかさが明るい響きのオーケストラと調和して、室内楽的なアンサンブルの雰囲気でブラームスの音楽を展開していきます。強い感動と言うよりも、音楽の楽しさを味わうといった風情です。こういう音楽の作り方が最高に素晴らしく感じられたのは、第2楽章です。天国的な美しさというか、天使が奏でるミューズの歌といった、究極の美がそこにはありました。ただただ、その美しい響きに耳を傾けて、楽趣を味わい尽くすのみです。そして、第3楽章は一転して、楽しい舞曲が展開されます。いつも聴くブラームスのヴァイオリン協奏曲とは異なる、大人の音楽でした。勢いで一気呵成に進行するのではなく、肩の力を抜いて、音楽の奥底にある美を楽しむという感覚でした。

アンコール曲はてっきりバッハの無伴奏を弾くのかと思っていたら、なんと現代曲です。誰の作品か、分かりませんでしたが、バルトークと同じハンガリーの作曲家クルタークの作品でした。「サインズ、ゲームとメッセージ」は弦楽のための作品集で、弦楽三重奏やヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの独奏曲の集合体です。その中のヴァイオリン・ソロのとても短い作品でした。バルトークを得意とするファウストはクルタークも演奏するんですね。

休憩後、最初の曲はマーラーが編曲したバッハの管弦楽組曲という珍しい曲目です。原曲に比べると、規模の大きい弦楽アンサンブルが主体になっています。バッハの音楽をムードミュージック風に聴かせる感じです。ここは難しいことは抜きにして、美しい響きに身を委ねます。

最後の曲はベートーヴェンの交響曲第5番ハ短調「運命」です。これは現代風の速いテンポのきびきびした演奏です。こういう演奏にはオーケストラのアンサンブル力が求められますが、さすがに読響のアンサンブルは素晴らしいです。まさに一糸乱れずといった感じの自在の演奏です。saraiは昔気質の音楽ファンなので、重厚な演奏を好みますが、まあ、これはこれで楽しめます。第4楽章は第1楽章ほどは走らずに圧巻の盛り上がりでした。感動はしませんが、気持ちよく聴けました。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:シルヴァン・カンブルラン
  ヴァイオリン:イザベル・ファウスト
  管弦楽:読売日本交響楽団 長原 幸太(コンサートマスター)

  ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77
   《アンコール》クルターク:「サインズ、ゲームとメッセージ」より

   《休憩》

  バッハ(マーラー編):管弦楽組曲から第2曲“ロンドとバディネリ”BWV1067,3曲“アリア”BWV1068,4曲“ガヴォット”BWV1068
  ベートーヴェン:交響曲 第5番 ハ短調 Op.67「運命」


ブラームスのヴァイオリン協奏曲を予習したCDは以下です。

 イザベル・ファウスト、ダニエル・ハーディング指揮マーラー・チェンバー・オーケストラ 2010年

なかなか、素晴らしい演奏です。カデンツァは珍しいブゾーニの作です。ティンパニの伴奏がずっと続くのには驚きます。なお、今日の演奏も同じものでした。

マーラー編曲のバッハの管弦楽組曲を予習したCDは以下です。

 リカルド・シャイー指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 2004年

この録音はマーラーの交響曲第3番の2枚組の余白に収録されたものです。やはり、バッハは原曲のほうがいいですね。演奏はとても立派なのですが・・・。

ベートーヴェンの交響曲第5番を予習したCDは以下です。

 オットー・クレンペラー指揮ウィーン・フィル 1968年

この録音は1968年のムジークフェラインでのウィーン音楽週間のライヴ録音です。晩年のクレンペラーがウィーン・フィルを振った素晴らしい演奏です。このときのライブ録音は8枚組のCDですが、どの演奏も歴史に残る素晴らしいものです。クレンペラーの巨匠性が遺憾なく発揮されています。その悠々とした演奏のスケール感の大きさは揺るぎないものです。saraiもこのところ、クレンペラーの偉大さに今さらながら魅了されています。



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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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