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イリーナ・メジューエワのショパン・リサイタル、破格のバラード第1番@東京文化会館・小ホール 2023.7.9

メジューエワは昨年の暮れ、突然、久々の東京でのリサイタル、日本コンサートデビュー25周年記念リサイタルでブラームス、リストを中心にした演奏を聴かせてくれて、大変、満足しました。今回から4回シリーズで「ショパンの肖像」と銘打ったコンサートを催してくれます。saraiはショパンのファンではないので、ショパンに対する思い入れはありませんが、お気に入りのメジューエワの演奏を聴けるのが楽しみです。

1回目の今回はショパンの初期から中期ということですが、プログラムを眺めるとショパンのファンではないsaraiでもよく知っているショパンの名曲ばかりで、ショパンの名曲コンサートという感じです。

前半はまず、遺作のノクターンと幻想即興曲が嬰ハ短調つながりで演奏されます。極めて美しいタッチでの演奏です。メジューエワの力強いタッチは封印して、美しさを追求した演奏です。だからといって、通俗的に走るわけではなく、真摯な演奏です。これでメジューエワのショパンの世界の開幕です。

続いて、Op.18の「華麗なる大円舞曲」。ワルツの中で最も有名な作品ですが、これは美しさは影をひそめ、だからといって、力強さを前面に押し出したわけでもない疑問符のつく演奏です。演奏のスタイルの意図がつかめません。今日の演奏の中で一番、分からなかった演奏です。次のロ短調 Op.69-2のワルツは憂愁を秘めた美しい演奏で安心します。これでこそ、ショパンのワルツの面目躍如ですね。

続いて、マズルカ3曲。ポーランドの民俗的な雰囲気はあまりありませんが、とても美しい演奏です。

前半の最後はアンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ。これは大曲です。後半のポロネーズはまさに華麗極まるもので、素晴らしい演奏に魅了されました。

休憩後、後半はショパンの大傑作、バラード第1番です。ここでメジューエワは持てる力をすべて開放して、破格のショパンを聴かせてくれます。凄まじいエネルギーと情熱の演奏に深く感銘を覚えます。

続いて、エチュード10曲。メジューエワの技巧の確かさに裏打ちされた演奏です。「革命」や「木枯らし」は圧巻の演奏です。

気が付けば、名曲アワーも終了。メジューエワの真摯な演奏によるショパンの名曲の数々を堪能しました。


今日のプログラムは以下です。

  イリーナ・メジューエワ ピアノ・リサイタル 「ショパンの肖像」第1回(全4回)


  ノクターン 嬰ハ短調(遺作)
  幻想即興曲 嬰ハ短調 Op.66(遺作)
  ワルツ(2曲)(変ホ長調 Op.18「華麗なる大円舞曲」/ロ短調 Op.69-2)
  マズルカ(3曲)(ホ短調 Op.17-2/イ短調 Op.17-4/ハ長調 Op.24-2)
  アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ Op.22

   《休憩》

  バラード第1番 ト短調 Op.23 
  エチュード(10曲)
  (変イ長調 Op.25-1/嬰ハ短調 Op.25-7/ホ短調 Op.25-5/ハ短調 Op.10-12「革命」/
  ヘ短調 Op.25-2/ヘ長調 Op.25-3/ヘ短調 Op.10-9/変ト長調 Op.10-5「黒鍵」/
  イ短調 Op.25-11「木枯らし」/ハ短調 Op.25-12)
 
   《アンコール》
     ショパン:ノクターン第5番 嬰ヘ長調 Op.15-2
     ショパン :エチュード Op.10-3 ホ長調「別れの曲」


最後に予習について、まとめておきます。

すべて、イリーナ・メジューエワの録音したCDを聴きました。聴いたアルバムは以下です。

 ショパン・リサイタル 2010 2010年7月15日 クロスランドおやべ・セレナホール(富山県小矢部市) ライヴ録音
 ショパン:19のワルツ集 2015年7月 & 9月、新川文化ホール(富山県魚津市) セッション録音
 日本デビュー20周年記念リサイタル 2017~2018 2017年11月18日 東京文化会館・小ホール ライヴ録音
 京都リサイタル2016 (ショパン・リサイタル) 2016年9月29日、京都コンサートホール〈アンサンブルホールムラタ〉 ライヴ録音
 ショパン:エチュード集(24曲) 2009年7月&9月 新川文化ホール(富山県魚津市) セッション録音

いずれも素晴らしく美しい演奏です。セッション録音とライヴ録音の違いがほとんどないのに驚きます。なるべく最新の演奏を聴きましたが、メジューエワのすべてのCDを所有しているわけではないので、すべて最新の演奏を聴いたわけではありません。それでも一番古い2009年の録音でも完成度の高い演奏を聴かせてくれます。



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       メジューエワ,  

イリーナ・メジューエワ、日本コンサートデビュー25周年記念リサイタルはバッハとブラームス、リストの大曲@トッパンホール 2022.12.12

メジューエワの久々の東京でのリサイタルです。コロナ禍でずっと聴けなかったので、じりじりしていたら、突然決まった日本コンサートデビュー25周年記念リサイタルですから、読響の定期演奏会のチケットを人に譲って、駆けつけることにしました。開催者の方のご好意で(知り合いではありません)、最前列の良い席を確保できました。

前半はまず、突然、場内のアナウンスでバッハの平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第12番 ヘ短調 BWV857 プレリュードが追加されることが告げられ、優しく、静謐な演奏が聴けました。メジューエワのバッハを聴くのは初めてですが、とても素晴らしい演奏。以前、朝日カルチャースクールで今後、バッハに注力していきたいと彼女が言っていたのを思い出します。実は突然、冒頭にバッハを弾いたのは、意味のあることだと後で分かります。

次はバッハのプレリュードにそのまま続けて、ブラームスの最後のピアノ・ソナタである第3番が演奏されます。最後と言っても、ブラームスが20歳という若さのときの作品です。彼はピアノ・ソナタは何故か、これで封印してしまいます。ブラームス特有の一つのジャンルの作品は多くは書かないということで言えば、不思議ではありません。晩年、ブラームスはピアノの作品はもっぱら、間奏曲などの小品を書いています。その晩年の枯れた渋い作品と比べると、同一人物の作品には思えない若さに満ち溢れた作品がこのピアノ・ソナタ第3番です。
ブラームスのピアノ・ソナタ第3番はピアノ・ソナタ第1番/第2番と同じ頃、すなわち、20歳頃のブラームスがデュッセルドルフのシューマン夫妻宅を訪れて、長期滞在した直後に作曲され、シューマンに講評を求めて譜面を送った最後の作品です。若さゆえの情熱とロマンに満ちた大作です。メジューエワの演奏は彼女らしい力強さにあふれたもので、すさまじい演奏でした。長大な第1楽章だけでも聴くsaraiも圧倒されて、疲れ果てます。力強いけれども、ロマンに満ちあふれた情熱のこめられた音楽です。でも、最高に素晴らしかったのは第2楽章のアンダンテです。これまた長大な楽章ですが、静謐でありながらもメジューエワの特質であるしっかりとした明晰なタッチの音楽が熱を込めて弾かれました。そして、終盤の熱い魂の盛り上がり。最後の回想するようなパッセージも見事でした。終楽章までレベルの高い演奏が続きました。最後の壮大な頂点で圧倒されました。若き日のブラームスは晩年の作品とは違う意味でとても素晴らしいですね。それにこれは大作です。メジューエワは記念リサイタルということで前半から大作で勝負です。

後半はリストの大作、《巡礼の年 第3年》。実演で聴くのは初めてです。いやはや、メジューエワ、渾身の演奏。途轍もない演奏です。第1曲だけはシンプルでしたが、第2曲以降はどれも長大で超絶的な曲ですが、メジューエワは無尽蔵な体力で全身をばねのようにして、激しく演奏していきます。無論、繊細な表現もちゃんと織り込んでいきます。とりわけ、有名な第4曲の《エステ荘の噴水》の水のしぶきの跳ね上がるような瑞々しい演奏の素晴らしさには魅了されるだけです。第6曲の葬送行進曲の荘厳さも圧倒的な迫力です。最後の第7曲が力強く高潮して終焉を迎えるときにはさすがのメジューエワも体力の限りを使い果たした態です。聴いているsaraiもヘトヘトですからね。とんでもない大曲でした。全部で50分ほどだったでしょうか。長大で壮大な作品で、こんなものを弾くとピアニストが体を壊すのではないかと心配になります。それでもメジューエワはちゃんとアンコール曲を弾いてくれます。

まずはリストの聖ドロテア。メジューエワの《巡礼の年 第3年》のCDでもアンコール曲風に併録された曲ですが、確かに大曲《巡礼の年 第3年》の後にはおさまりがよい曲です。一服の清涼剤に思えます。
次はブラームスの晩年の作品。20歳のときのピアノ・ソナタ第3番に対局しての演奏です。メジューエワはこういう力の抜けた曲も味わい深く演奏してくれます。
最後はバッハのコラール前奏曲《我ら悩みの極みにありて》 BWV641です。これを弾くためにメジューエワは冒頭でバッハの平均律を弾いたんです。このコラール前奏曲は未完の大作、フーガの技法の初版譜に未完で終わったフーガを補うような意味でコラール前奏曲『われ汝の御座の前に進み出て』BWV 668が併録されましたが、それはコラール前奏曲《我ら悩みの極みにありて》 BWV641の歌詞を変えただけのものです。バッハはこの作品を死の床で口述筆記させたと言われています。バッハの晩年の最高傑作の《フーガの技法》を暗示するようなコラール前奏曲を記念リサイタルの〆に置いたメジューエワの強いバッハへの思いが感じられます。彼女はこれから本気でバッハに取り組んでいくようです。楽しみですね。アンジェラ・ヒューイットのように全鍵盤作品の連続コンサートでもやってくれれば、saraiは卒倒するくらいに嬉しいんですけどね・・・。


今日のプログラムは以下です。

  日本コンサートデビュー25周年記念
   イリーナ・メジューエワ ピアノ リサイタル


  J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第12番 ヘ短調 BWV857 プレリュード
  ブラームス:ピアノ・ソナタ第3番 ヘ短調 Op.5

   《休憩》

  リスト:《巡礼の年 第3年》S.163
 
   《アンコール》
     リスト:聖ドロテア S.187
     ブラームス :6つの小品 Op.118 から 第5曲 ロマンス ヘ長調 Op.118-5
     J.S.バッハ(ヴェデルニコフ編):コラール前奏曲《我ら悩みの極みにありて》 BWV641


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のバッハの平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第12番 ヘ短調 BWV857 プレリュードは突然の追加でしたから、予習していません。


2曲目のブラームスのピアノ・ソナタ第3番は以下のCDを聴きました。

 イリーナ・メジューエワ 2021年9月29日~10月1日 新川文化ホール(富山県魚津市) セッション録音
 
メジューエワのコロナ禍中の録音です。とても力強く新鮮な演奏です。


3曲目のリストの《巡礼の年 第3年》は以下のCDを聴きました。

 イリーナ・メジューエワ 2017年4月8~9日 新川文化ホール(富山県魚津市) セッション録音

メジューエワ、日本コンサートデビュー20周年記念アルバムでした。力強く、かつ、繊細な演奏です。



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カルチャースクールのピアノでも、素晴らしかったイリーナ・メジューエワのショパン@朝日カルチャーセンター新宿 2022.3.14

フツーはカルチャースクールには行かないsaraiですが、1年以上もイリーナ・メジューエワの東京でのコンサートが聴けないのは寂しい・・・。これもコロナ禍のせいです。で、意を決して、カルチャースクールでのメジューエワのピアノを聴きに行きました。

1時間の講座です。前半は音楽評論家の下田 幸二さんによる今日のメジューエワの演奏する曲の実に詳細な解説。下田さんのピアノ演奏を交えた興味深いお話が聞けました。その後、いよいよ、メジューエワのピアノ演奏。45分だけのミニコンサートです。50人ほどの聴衆の聴く小さな部屋でYAMAHAの小ぶりなグランドピアノでの演奏です。いつもはフルコンサートピアノの演奏しか聴いていませんので、どんな音がするのかと思います。極論するとsaraiのオーディオルーム(防音室)にあるYAMAHAのグランドピアノと大差ない感じのピアノです。流石にメジューエワが弾くと凄い音が響きます。特に低音の迫力は凄いです。高音の煌めきだけは今一つでしょうか。もっともメジューエワのショパンを鑑賞するのには十分な音がします。最初のショパンのノクターン第1番の前半だけは少し違和感を感じますが、主題が回帰するあたりからは素晴らしい音に思えます。これもメジューエワの調整力なんでしょう。ノクターン第2番はショパンの全作品の中でも最も有名な作品ですが、そういうことではなくて、メジューエワの演奏はうっとりするような素晴らしい演奏です。彼女の鍵盤を叩く手を見ていると、そのしっかりしたタッチが彼女の音楽の原点であることが分かります。フォルテでしっかり叩くのは当然ですが、弱音でも鍵盤を深く叩いていることが分かります。微妙な繊細さは失われているような気もしますが、明快な音楽になっています。しかも力強さは凄いとしか言えません。ロシア人としては小柄で華奢な体格ですが、実にパワフルな音を生み出しています。その美点が最高に発揮されたのがスケルツォ第2番です。ヴィルトゥオーゾとしての圧巻の演奏に感動しました。冒頭の豪快で華麗な演奏も見事ですが、中間部の詩情に満ちた演奏は中間部終盤で熱く燃え上がります。感涙ものの最高の演奏です。こんなピアノで凄い音です。saraiの家のピアノで弾いてくれないかな・・・。終盤はまた凄まじい演奏で魅了してくれました。バラード第3番も後半の激しい演奏に魅せられました。最後はまた、ノクターン。第15番のゆったりと歩むような演奏の魅力的なこと。
考えてみると、今日のコンサートの構成は、最初はノクターンで夜の音楽に始まり、スケルツォ、バラードの明るい昼の音楽になり、最後はまた、ノクターンの夜の音楽で終わるという、よく考えられた構成になっていました。短いコンサートでしたが、ぎゅっと凝縮した演奏ですっかり満足です。

次はコンサートホールでスタインウェイのフルコンサートピアノでの演奏を聴かせてもらいましょう。そう言えば、最後のインタビューで彼女は今後、ショパンを再び、まとめて演奏していきたいとのことでした。そして、朗報ですが、バッハに力を入れていきたいとの意向を述べていました。バッハの連続演奏会もあるかもしれません。期待しましょう。

今日はこのメジューエワの演奏の後、夜は鶴見でクァルテット・エクセルシオの充実したショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲を聴きましたが、それについては明日の記事でご紹介します。


今日のプログラムは以下です。

  ピアノ:イリーナ・メジューエワ
  講師:音楽評論家・ピアニスト 下田 幸二

  <ピアノの名曲聴きどころ弾きどころ>

  ノクターン第1番 変ロ短調 Op.9-1
  ノクターン第2番 変ホ長調 Op.9-2
  ノクターン第7番 嬰ハ短調 Op.27-1
  スケルツォ第2番 変ロ短調 Op.31
  バラード第3番 変イ長調 Op.47
  ノクターン第15番 ヘ短調 Op.55-1
  ノクターン第16番 変ホ長調 Op.55-2


   《アンコール》
  マズルカ第45番 イ短調 Op.67-4



最後に予習について、まとめておきます。

ノクターン5曲は以下のCDを聴きました。

 イリーナ・メジューエワ 2009年7月、9月、10月 新川文化ホール(富山県魚津市) セッション録音

繊細というよりもしっかりとした演奏ですが、どこか温かみを感じる演奏です。メジューエワはこの後、2016年にライヴで再録音していますが、未聴です。


スケルツォ第2番は以下のCDを聴きました。

 イリーナ・メジューエワ 2018年9月29日~10月1日 新川文化ホール(富山県魚津市) セッション録音

新レーベルBIJIN CLASSICALのリリース第一弾として、録音された「ショパン:4つのスケルツォ」。スケルツォ集はメジューエワにとって16年ぶりの再録音です。これはメジューエワの美質にぴったりの曲で、実に力強く、華麗な演奏です。


バラード第3番は以下のCDを聴きました。

 アンナ・ヴィニツカヤ 2020年5月、6月 ハンブルク、フリードリヒ・エーベルト・ハレ セッション録音

スケールの大きなピアノ演奏が魅力のヴィニツカヤは実はショパンも得意にしています。そのヴィニツカヤの初のショパン・アルバム(バラード集、即興曲集)からの1曲です。実に魅力的な演奏です。



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極上のベートーヴェン 後期の3つのソナタ イリーナ・メジューエワ・ベートーヴェン・ピアノソナタ全曲演奏会@東京文化会館 小ホール 2020.12.5

イリーナ・メジューエワのベートーヴェン・ピアノソナタ全曲演奏会は今日の第7回目と第8回目で完了。と言ってもコロナ禍で第1回~第4回は中止になったため、全部で14曲聴いただけ。来年は中止になった分のピアノソナタを聴かせてくださいね。⇒ 関係者殿

まあ、それでも今日は後期の3つのソナタの素晴らしい演奏を聴いて、まるで全曲のソナタを締めくくったような錯覚に陥りました。メジューエワの第27番から第32番までの後期ソナタは素晴らしい演奏でした。

まず、マチネの第7回の公演では、前半の第13番と第14番はエンジンがかかりきれていませんでしたが、後半のプログラム、第18番で持ち直し、最後の第27番は最高の演奏でした。前回も書いた通り、メジューエワは日本を拠点に活躍しているとは言え、ロシア人ピアニストの強靭なピアニズムを聴かせてくれます。その男性的とも言えるピアノはベートーヴェンのピアノソナタで本領を発揮してくれます。ベートーヴェンの音楽を小細工なしに直線的な演奏で堪能させてくれます。そういうストレートな表現はベートーヴェンの後期の精神の高みに上り詰めた作品をまざまざと感じさせてくれます。第27番は中期に分類されますが、その本質は後期のソナタと同様に高い精神性を持つ作品であることを実感させてくれました。
やはり、メジューエワの演奏は後期のソナタにこそ、その特性が活かされると思っていたら、アンコールで第1番のソナタを弾いてくれて、その演奏がまた、素晴らしいものです。うーん、単に今日の前半はエンジンがかかっていなかっただけなのかしらね・・・。

夜の第8回公演まで、間があるので、早めの夕食をいただきましょう。前回は老舗の伊豆栄で鰻をいただきましたが、今日は老舗の井泉でとんかつをいただきます。上野界隈は老舗の料理店が多いので、舌も楽しめます。上野動物園前にあるスターバックスでコーヒーをいただいていると、夜の公演の時間が迫ってきます。

第8回公演はベートーヴェンの最後の3つのソナタ。後期の弦楽四重奏曲と並んで、ベートーヴェンの音楽の集大成と言えるものです。本当は今日はサントリーホールで東響の定期演奏会がありますが、そのチケットを他の方に譲って、この公演を選びました。メジューエワの後期のソナタを聴き逃がしたくないですからね。
その期待は報われました。まず、第30番のソナタの美しく、高邁な精神性の感じられる演奏に魅了されます。これ以上の音楽はあり得ないと思っていると、次の第31番のソナタは第1楽章の美しく澄み切った精神が感じられる素晴らしい音楽でうるうるの心情になります。さらにたたみかけるように第3楽章。《嘆きの歌》の最高の抒情と激しいフーガ。ベートーヴェンの音楽の最高峰とも思えます。メジューエワはこの傑作を見事に演奏。最高です。これ以上の音楽はないでしょう。
しかし、休憩後、最後の第32番のソナタ。第1楽章の冒頭から、激しい音楽が燃え上がります。魂の燃焼です。その燃え尽きた先に第2楽章の美しい変奏曲が続きます。魂を慰撫するような最高のベートーヴェンです。そして、フィナーレでカタルシスが持たされます。これこそが真にベートーヴェンの音楽の最高峰ですね。メジューエワは本当に素晴らしい演奏をしてくれました。満足です。


今日のプログラムは以下です。

  ピアノ:イリーナ・メジューエワ

  <ベートーヴェン 生誕250周年記念 イリーナ・メジューエワ ピアノソナタ全曲演奏会 第7回>

  ピアノソナタ第13番 変ホ長調 Op.27-1 『幻想曲風ソナタ』
  ピアノソナタ第14番嬰ハ短調 Op.27-2 『幻想曲風ソナタ』(『月光ソナタ』)

   《休憩》

  ピアノソナタ第18番 変ホ長調 Op.31-3
  ピアノソナタ第27番 ホ短調 Op.90


   《アンコール》
  ピアノソナタ第1番 ヘ短調 Op.2-1 から 第2楽章 ヘ長調 アダージョ


  <ベートーヴェン 生誕250周年記念 イリーナ・メジューエワ ピアノソナタ全曲演奏会 第8回>

  ピアノソナタ第30番 ホ長調 Op.109
  ピアノソナタ第31番 変イ長調 Op.110

   《休憩》

  ピアノソナタ第32番 ハ短調 Op.111


   《アンコール》
  6つのバガテル Op.126 から 第3番 変ホ長調 アンダンテ
  6つのバガテル Op.126 から 第5番 ト長調 クアジ・アレグレット


最後に予習について、まとめておきます。
ピアノソナタ第13番、第14番、第18番、第27番は以下のCDを聴きました。

 エミール・ギレリス ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ集 1972-1985年 セッション録音

ギレリスの男性的でありながら、磨き抜かれた響きの演奏は完璧です。


ピアノソナタ第30番、第31番、第32番は以下のCDを聴きました。

 アンドラーシュ・シフ ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集 2004~2006年 チューリッヒ、トーンハレ ライヴ録音

シフのベーゼンドルファーの美しい響きによる、とても深くて音楽的な演奏に聴き惚れるだけです。



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ベートーヴェン再発見の旅 圧巻の「ハンマークラヴィーア」 イリーナ・メジューエワ・ベートーヴェン・ピアノソナタ全曲演奏会@東京文化会館 小ホール 2020.9.6

コロナ禍で1回目から4回目までが中止になっていたイリーナ・メジューエワのベートーヴェン・ピアノソナタ全曲演奏会がようやく、第5回目と第6回目で開始になりました。
期待を上回る素晴らしい演奏で、saraiにつたない言葉で表現できない高次元のベートーヴェンを聴かせてくれました。日本に永く在住し、日本人ピアニストの一人とも思えるメジューエワですが、その演奏スタイルはまさにロシアが伝統としてきた強靭でスケールの大きい表現のベートーヴェンです。繊細で精神性を重んじるスタイルの対極にあるようなピアニズムですが、実に説得力のある演奏です。ある意味、エミール・ギレリスの演奏を生で聴いているような感覚です。もっともsaraiはギレリスを生で聴いたことはありません。

今日聴いた7曲のソナタはすべて、素晴らしい演奏でした。個々の演奏に触れませんが、彼女の強靭なスタイルの演奏が光ったのは、第28番と第29番「ハンマークラヴィーア」でした。とりわけ、対位法技法で書かれた極度に演奏困難なパートは凄まじいばかりに突き抜けた演奏で圧巻でした。そして、第29番「ハンマークラヴィーア」の長大な第3楽章の深い音楽表現、第4楽章の圧倒的な演奏は、正直、saraiの音楽的素養の枠をはみ出る高次元のものでした。予習が不十分だったことを露呈してしまいました。反省しています。これほどの演奏ならば、それなりに向き合っていかねばならないでしょう。
中途半端な感想しか書けませんでした。本当に凄い演奏を聴くと、音楽を言葉で表現することがむなしくなります。今日の演奏はそういうレベルの演奏でした。

後期ソナタ(第30番、第31番、第32番)はしっかり予習して聴かせてもらいます。楽しみでもあります。


今日のプログラムは以下です。

  ピアノ:イリーナ・メジューエワ

  <ベートーヴェン 生誕250周年記念 イリーナ・メジューエワ ピアノソナタ全曲演奏会 第5回>

  ピアノ・ソナタ第7番 ニ長調 Op.10-3
  ピアノ・ソナタ第8番 ハ短調 Op.13「悲愴」

   《休憩》

  ピアノソナタ第12番 変イ長調 Op.26
  ピアノソナタ第28番 イ長調 Op.101


  <ベートーヴェン 生誕250周年記念 イリーナ・メジューエワ ピアノソナタ全曲演奏会 第6回>

  ピアノソナタ第10番 ト長調 Op.14-2
  ピアノソナタ第15番ニ長調 Op.28「田園」

   《休憩》

  ピアノソナタ第29番 変ロ長調 Op.106「ハンマークラヴィーア」


   《アンコール》
  6つのバガテル Op.126 から 第1番 ト長調 アンダンテ・コン・モート


最後に予習について、まとめておきます。以下のCDを聴きました。

 エミール・ギレリス ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ集 1972-1985年 セッション録音
 アンドラーシュ・シフ ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集 2004~2006年 チューリッヒ、トーンハレ ライヴ録音

ギレリスの男性的な演奏、シフの美しく音楽的な表現、いずれも絶品です。



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