まずはベートーヴェンの序曲『レオノーレ第3番』。冒頭の音の響きを聴いただけで、素晴らしい演奏を確信できました。弱音の見事な音楽表現、そして、強音の素晴らしい響き。どこをとっても素晴らしい。この短い音楽の中に音楽のすべてが詰まっていました。普通は舞台裏で吹くトランペットのファンファーレを2階客席で吹かせたのもよかったです。オペラ《フィデリオ》が凝縮したような演奏でした。
次はサン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番。最近、辻彩奈の素晴らしい演奏で堪能しましたが、さすがに樫本大進も負けていませんね。ベルリン・フィルのコンサートマスター就任後、初めて聴くソロ演奏でしたが、少しも腕は鈍っていませんね。これだけ弾けるんなら、やはり、ソロ活動に専念したらとも思いました。ロト指揮ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団のサポートも見事でした。一つ間違えれば、安っぽくなりそうな音楽ですが、樫本大進の気品あふれる演奏には参りました。
後半は期待のシューマンの交響曲第3番「ライン」。序盤はあれっと思いましたが、すぐに素晴らしいレベルのシューマンの世界が始まります。特に第3楽章以降は繊細さの限りを尽くして、まるで室内楽のシューマンを聴く感じです。第4楽章のケルンの大聖堂をイメージする音楽は圧倒的に素晴らしく、第5楽章の祝典的に高揚する音楽も最高です。精神に不調をきたすデュッセルドルフ時代のシューマンもこの作品では、永遠の青春の輝きとロマンを感じさせてくれます。シューマンのそういう面を引き出して、素晴らしい表現をしてくれたロトにシューマニアーナの一人として、感謝を捧げたいと思います。
遂に海外オーケストラの公演が本格的に始まりました。ファンとしては嬉しい限りです。何とケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団は初来日(オペラ以外では)なんですね。コロナ禍以降でドイツのオーケストラの来日も初めてだそうです。この秋は海外オーケストラの来日ラッシュになりそうです。もっとも、個人的には財政的にそうそうは聴けませんけどね。
今日のプログラムは以下のとおりです。
指揮:フランソワ=グザヴィエ・ロト
ヴァイオリン:樫本大進
管弦楽:ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団
ベートーヴェン:序曲『レオノーレ第3番』 ハ長調 Op.72b
サン=サーンス:ヴァイオリン協奏曲第3番 ロ短調 Op.61
《アンコール》J. S. バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番 BWV1004 より 第3曲 サラバンド
《休憩》
シューマン:交響曲第3番 変ホ長調 Op. 97 「ライン」
《アンコール》
ベルリオーズ:歌劇「ベアトリスとベネディクト」序曲
最後に予習について、まとめておきます。
1曲目のベートーヴェンの序曲『レオノーレ第3番』を予習したCDは以下です。
ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団 1963年4月5日、クリーヴランド、セヴェランス・ホール セッション録音
素晴らしいアンサンブルです。見事としか形容できません。
2曲目のサン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番を予習したCDは以下です。
チョン・キョンファ、ローレンス・フォスター指揮ロンドン交響楽団 1975年5月 ロンドン セッション録音
チョン・キョンファの熱い演奏に心が震えます。凄いヴァイオリニストですね。
3曲目のシューマンの交響曲第3番「ライン」を予習したCDは以下です。
ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団 1960年10月21日、セヴェランス・ホール、クリーヴランド セッション録音
これは文句なしに素晴らしい演奏です。
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