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やっはり凄かった天才指揮者ロトの異次元の演奏@サントリーホール 2022.7.4

昨日はちょっと肩透かし気味だったロトですが、今日は本来の姿を見せてくれました。さすが、ロトでしか聴けない素晴らしい音楽でした。

まずはベートーヴェンの序曲『レオノーレ第3番』。冒頭の音の響きを聴いただけで、素晴らしい演奏を確信できました。弱音の見事な音楽表現、そして、強音の素晴らしい響き。どこをとっても素晴らしい。この短い音楽の中に音楽のすべてが詰まっていました。普通は舞台裏で吹くトランペットのファンファーレを2階客席で吹かせたのもよかったです。オペラ《フィデリオ》が凝縮したような演奏でした。

次はサン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番。最近、辻彩奈の素晴らしい演奏で堪能しましたが、さすがに樫本大進も負けていませんね。ベルリン・フィルのコンサートマスター就任後、初めて聴くソロ演奏でしたが、少しも腕は鈍っていませんね。これだけ弾けるんなら、やはり、ソロ活動に専念したらとも思いました。ロト指揮ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団のサポートも見事でした。一つ間違えれば、安っぽくなりそうな音楽ですが、樫本大進の気品あふれる演奏には参りました。

後半は期待のシューマンの交響曲第3番「ライン」。序盤はあれっと思いましたが、すぐに素晴らしいレベルのシューマンの世界が始まります。特に第3楽章以降は繊細さの限りを尽くして、まるで室内楽のシューマンを聴く感じです。第4楽章のケルンの大聖堂をイメージする音楽は圧倒的に素晴らしく、第5楽章の祝典的に高揚する音楽も最高です。精神に不調をきたすデュッセルドルフ時代のシューマンもこの作品では、永遠の青春の輝きとロマンを感じさせてくれます。シューマンのそういう面を引き出して、素晴らしい表現をしてくれたロトにシューマニアーナの一人として、感謝を捧げたいと思います。

遂に海外オーケストラの公演が本格的に始まりました。ファンとしては嬉しい限りです。何とケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団は初来日(オペラ以外では)なんですね。コロナ禍以降でドイツのオーケストラの来日も初めてだそうです。この秋は海外オーケストラの来日ラッシュになりそうです。もっとも、個人的には財政的にそうそうは聴けませんけどね。


今日のプログラムは以下のとおりです。


  指揮:フランソワ=グザヴィエ・ロト
  ヴァイオリン:樫本大進
  管弦楽:ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団

  ベートーヴェン:序曲『レオノーレ第3番』 ハ長調 Op.72b
  サン=サーンス:ヴァイオリン協奏曲第3番 ロ短調 Op.61
  《アンコール》J. S. バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番 BWV1004 より 第3曲 サラバンド

  《休憩》

  シューマン:交響曲第3番 変ホ長調 Op. 97 「ライン」

  《アンコール》
   ベルリオーズ:歌劇「ベアトリスとベネディクト」序曲


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のベートーヴェンの序曲『レオノーレ第3番』を予習したCDは以下です。

  ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団 1963年4月5日、クリーヴランド、セヴェランス・ホール セッション録音

素晴らしいアンサンブルです。見事としか形容できません。


2曲目のサン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番を予習したCDは以下です。

  チョン・キョンファ、ローレンス・フォスター指揮ロンドン交響楽団 1975年5月 ロンドン セッション録音

チョン・キョンファの熱い演奏に心が震えます。凄いヴァイオリニストですね。


3曲目のシューマンの交響曲第3番「ライン」を予習したCDは以下です。

  ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団 1960年10月21日、セヴェランス・ホール、クリーヴランド セッション録音

これは文句なしに素晴らしい演奏です。



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       ロト,  

待ちわびた天才指揮者ロトの異形のブルックナー@東京オペラシティコンサートホール 2022.7.3

今、一番注目している指揮者はクルレンツィスと今日、聴くロトです。コロナ禍がなければ、一昨年のウィーン遠征でロトがウィーン交響楽団に客演して、ウェーベルン/ベルク/シェーンベルクを聴かせてくれる筈でした。それ以来、待ちに待ったロトが来日してくれました。今回はレ・シエクルではなく、ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団を帯同しての来日です。

まずは主役は我らが河村尚子。今日を皮切りに来月、再来月にかけて彼女のコンサートが連続して聴けます。今日は彼女にしては珍しい曲目、モーツァルトのピアノ協奏曲第20番です。冒頭のオーケストラは抑えた感じの入りです。そして、河村尚子がまろやかな響きでピアノを弾き始めます。もっと切れのよい演奏を想像していましたが、ぴーんと張り詰めたような響きではなく、美しい響きではありますが、優し気なタッチです。オーケストラもデモーニッシュな演奏ではなく、ごく普通のモーツァルトです。これはこれでいいでしょう。終始、ニ短調の思い詰めたような雰囲気はなく、優し気なモーツァルトの演奏でした。不満もありませんが、特別な感銘もないという中道を行くような演奏でした。

次はいよいよ、注目のブルックナーの交響曲第4番 《ロマンティック》の1874年第1稿による演奏です。あらかじめ、予習しておいたので、驚きはしませんが、やはり、いつも聴く第2稿の演奏とは大きく異なるので、何かしっくりしません。saraiとしては第2稿のほうがよいと思いますけどね。演奏はロトがきっちりとオーケストラの響きを鍛え上げた圧巻のブルックナーです。特にトゥッティの凄まじい響きはさすがにドイツの名門オケだけのことはあります。金管は凄いです。ブルックナーの交響曲第4番 《ロマンティック》の1874年第1稿は異形のブルックナーの感です。珍しいものを聴いたという感懐はありますが、もうひとつ、心に響いてこなかったのが残念です。これも聴き慣れれば、普通に聴けるのかもしれませんが・・・。

明日は会場をサントリーホールに移しての公演を聴きます。シューマンの交響曲第3番《ライン》が楽しみです。


今日のプログラムは以下のとおりです。


  指揮:フランソワ=グザヴィエ・ロト
  ピアノ:河村尚子
  管弦楽:ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団

  モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K466
  《アンコール》シューベルト:楽興の時 第3番 D780-3

  《休憩》

  ブルックナー:交響曲第4番 変ホ長調《ロマンティック》(1874年第1稿)


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のモーツァルトのピアノ協奏曲第20番を予習したCDは以下です。

  田部京子、下野竜也指揮紀尾井シンフォニエッタ東京 2012年3月14日-15日 上野学園 石橋メモリアルホール セッション録音

田部京子の安定したピアノの響きが心に沁みます。


2曲目のブルックナーの交響曲第4番 《ロマンティック》(1874年第1稿)を予習したCDは以下です。

  ゲルト・シャラー指揮フィルハーモニー・フェスティヴァ 2021年7月25日 ドイツ、バイエルン州、エーブラハ、旧エーブラハ大修道院付属教会 セッション録音

2024年のブルックナー生誕200年に向けて、ブルックナーの交響曲全バージョン録音を刊行中のゲルト・シャラーとフィルハーモニア・フェスティヴァによる演奏です。この第1稿は初めて聴くので、面くらいました。これって、本当に交響曲第4番なのって感じです。演奏自体は美しいものです。



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       ロト,        河村尚子,  

フランソワ=グザヴィエ・ロト・・・鮮やかな手腕で趣味のよさが光る天才的な指揮 東京都交響楽団@東京文化会館大ホール 2020.2.3

都響の東京文化会館定期演奏会は次々と超一流の指揮者が登場。アラン・ギルバートも素晴らしかったですが、今回のフランソワ=グザヴィエ・ロトはその天才ぶりが光ります。都響には2回目の出演ですが、前回の初登場では、ポスト・ピリオド時代の旗手として、強烈な印象を残してくれました。ある意味、クルレンツィスと共にsaraiが最も注目している指揮者です。手兵のレ・シエクルを引き連れてきた来日公演でのストラヴィンスキーのバレエ音楽《春の祭典》は凄まじい迫力の音楽でした。で、今回のコンサートですが、saraiの期待を裏切らない素晴らしい演奏でした。前半のフレンチ・バロックの精度の高い音楽、そして、圧倒的だったのは後半のラヴェルの《ダフニスとクロエ》です。1時間近い全曲を高い緊張感を保ちつつ、ラヴェルらしいピュアーな音色で魅了してくれました。saraiは初めて、この曲の魅力が分かりました。普通はこういう曲は寝落ちしますが、その演奏の魅力に惹き込まれて、集中して聴くことができました。都響もノンビブラートの美しいアンサンブルでパーフェクトに思える演奏でしたし、何より、彼ら自身が楽しんで演奏していることが伝わってきました。弦楽セクションと木管セクションの演奏は見事でした。フルートの柳原祐介の演奏には痺れました。聴きどころは満載で、書き切れませんが、《ダフニスとクロエ》第3部の何とも美しい演奏には感動しました。もちろん、終結部のまるでダッタン人の踊りを思わせる部分の大迫力は誰もが感銘を受けたことでしょう。合唱の栗友会合唱団の健闘も称えたいと思います。いやはや、素晴らしかった!!

フランソワ=グザヴィエ・ロトはこれで3回聴いたことになりますが、今年は4月末のウィーンでも聴く予定です。ウィーン交響楽団に客演して、ウェーベルン/ベルク/シェーンベルクを聴かせてくれます。絶対に素晴らしい演奏になることを確信しています。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:フランソワ=グザヴィエ・ロト
  合唱:栗友会合唱団
  管弦楽:東京都交響楽団  コンサートマスター:矢部達哉

  ラモー:オペラ=バレ『優雅なインドの国々』組曲
   第1曲 ヘーベーとその一行の登場
   第2曲 第1&第2リゴードン
   第3曲 第1&第2タンブーラン
   第4曲 未開人たちの踊り
   第5曲 シャコンヌ

  ルベル:バレエ音楽《四大元素》
   第1曲 カオス         
   第2曲 第1ルール「土と水」   
   第3曲 シャコンヌ「火」    
   第4曲 さえずり「空気」    
   第5曲 夜うぐいす       
   第6曲 第2ルール「狩り」
   第7曲 第1&第2タンブーラン
   第8曲 シシリエンヌ
   第9曲 ロンド―「愛の妖精のための歌」
   第10曲 カプリス


   《休憩》

  ラヴェル:バレエ音楽《ダフニスとクロエ》(全曲:第1部、第2部、第3部)


1曲目のラモーの『優雅なインドの国々』組曲を予習したCDは以下です。

 フィリップ・ヘレヴェッヘ指揮ラ・シャペル・ロワイヤル  1983年6月 セッション録音

素晴らしいとまでは言えませんが、水準以上の演奏です。

 
2曲目のルベルのバレエ音楽《四大元素》を予習したCDは以下です。

 ジョルディ・サヴァール指揮ル・コンセール・デ・ナシオン 2015年7月19日、ナルボンヌ(フランス)、フォントフロイド修道院 ライブ録音
 
これは素晴らしい演奏です。


3曲目のラヴェルのバレエ音楽《ダフニスとクロエ》(全曲)を予習したCDは以下です。

 フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮ル・シエクル、アンサンブル・エデス(合唱) 2016年録音
 ピエール・モントゥー指揮ロンドン交響楽団 1959年録音

ロト指揮ル・シエクルのCDはこの曲の世界初のピリオド楽器録音ですが、あまり、そういうことは感じさせない演奏で素晴らしい音楽を展開しています。モントゥーはこの曲の初演を行った指揮者ですが、さすがに手の内にはいった演奏は素晴らしいです。初演後、47年後の録音でオーケストラも異なりますが、新鮮な演奏で深くスコアを読み込んだことが感じられます。



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       ロト,  

何という《春の祭典》・・・ロト、レ・シエクル@東京オペラシティ コンサートホール 2018.6.12

前半のドビュッシー、ラヴェルも素晴らしかったんですが、後半のストラヴィンスキーのバレエ音楽《春の祭典》を聴くと、このコンビ、指揮者のフランソワ=グザヴィエ・ロトと管弦楽のレ・シエクルはこの曲を演奏するためだけに存在するのかと思ってしまいます。

ちょっと、話は飛びますが、今日のロト&レ・シエクル、来年のクルレンツィス&ムジカ・エテルナ、これは日本の音楽ファンは決して聴き逃がせませんね。それにこの2つが聴けるのは何という喜びなんでしょう。誤解のないように言っておきますが、saraiは決してピリオド奏法の信奉者ではありません。ピリオドとかモダンとか、そういうことではなくて、ただただ、よい音楽が聴きたいだけなんです。指揮者ではティーレマン、ハイティンク、ラトルなど、オーケストラではウィーン・フィル、コンセルトヘボウ、シュターツカペレ・ドレスデンなど旧世代の精度の高いアンサンブルも大好きで聴き逃がせません。しかし、旬と言えば、ロト&レ・シエクル、クルレンツィス&ムジカ・エテルナはまさに今、聴きたいんです。saraiの年齢ではぎりぎりセーフで聴けたって感じです。

さて、今日の肝心の演奏についてですが、後半のストラヴィンスキーのバレエ音楽《春の祭典》は前半の演奏から一段も二段もギアを上げたということで、アンサンブルも音楽の中身も別次元のものでした。ですから、あえて、《春の祭典》に絞って、感想を書かせてもらいます。もちろん、ロト&レ・シエクルの話題になったCDはずっと前に購入済でしたが、これまで実はまだ聴いていませんでした。あえて、今回のコンサートの直前まで聴くのを控えていました。聴いてみると意外におとなしい演奏で拍子抜け。もっともsaraiはあまりストラヴィンスキーのよい聴き手ではありません。中学・高校を過ごした地方都市で唯一のクラシックレコード屋さんのお馴染みになった店員のお兄さんからはいつもsarai君はストラヴィンスキーよりもショスタコーヴィチだよねってからかわれるくらい、20世紀の音楽ではショスタコーヴィチに入れ込んでいました。思い出すと、地方都市では20世紀のモダンな作品って言えば、当時はストラヴィンスキーかショスタコーヴィチだったんですね。まだ、マーラーやR.シュトラウスは視野に入っていませんでした。saraiがようやくバルトークに入れ込み始めたのは大都市の大学に進学した後のことだし、マーラー、ブルックナー、R.シュトラウスはずっと後です。で、今でもそんなにストラヴィンスキーには入れ込んでいないのが実情です。ですから、《春の祭典》にあれこれ言う資格はないにも等しいのですが、今日の《春の祭典》は凄かったです。最初は初演当時の楽器だとか、スコアということに気を取られていましたが、そんなことよりも耳に聴こえてくる音楽がどうかということが重要でしょう。オーケストラのアンサンブルの精度で言えば、もっとうまいオーケストラはあるでしょう。もしかしたら、日本のトップオケならば、よりよいアンサンブルで演奏するかもしれません。でも、心に迫ってくる緊張感や迫力は大変なものでした。これが初演に近い演奏かどうかはsaraiには知る由もありませんが、ともかく、凄まじい迫力の音楽でした。ありきたりかもしれませんが、変拍子のリズム感、間の取り方、弱音と強音のダイナミズム、それらを複合したバーバリズムの迫力と緊張は最高でした。どこかCDの録音のおとなしく感じた印象とは様変わりです。CDの聴き方を誤ったのかな。今日の演奏はパーフェクトの上に、いまだコンテンポラリーの音楽でありつづけるという緊張感がみなぎっていました。まさに期待を裏切らなくて、ライヴならでは一発勝負の演奏を聴かせてもらって感謝です。

これからはロトとクルレンツィス、それにミンコフスキの時代なのかな。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:フランソワ=グザヴィエ・ロト
  管弦楽:レ・シエクル

  
ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
    ドビュッシー:バレエ音楽《遊戯》
    ラヴェル:ラ・ヴァルス

     《休憩》

    ストラヴィンスキー:バレエ音楽《春の祭典》

     《アンコール》
       ビゼー:「アルルの女」第1組曲 より アダージェット

最後に予習について触れておきます。
1/2曲目のドビュッシーの牧神の午後への前奏曲、バレエ音楽《遊戯》は以下のCDを聴きました。

 ピエール・ブーレーズ指揮ニューフィルハーモニア管 1966、68年録音
 ピエール・ブーレーズ指揮クリーヴランド管弦楽団 1991年録音

ブーレーズの新旧録音です。当時はブーレーズがロトのような立場の新鋭だった筈ですね。とりわけ、1960年代は尖った演奏を聴かせてくれていました。しかし、今回、新旧を合わせて聴くと、音質はもちろん、1991年の新録音の完璧さが強く感じられました。今日のロトと比べると、クリーヴランド管弦楽団のアンサンブル力の見事さが際立っています。ロト&レ・シエクルも万全の準備をすれば、もっと素晴らしい演奏が可能でしょう。

3曲目のラヴェルのラ・ヴァルスは以下のCDを聴きました。

 ピエール・ブーレーズ指揮ニューヨーク・フィル 1973,74年録音
 ピエール・ブーレーズ指揮ベルリン・フィル 1993年3月録音 ベルリン、イエス・キリスト教会

これもブーレーズの新旧録音です。1970年代のニューヨーク・フィルとの油ののった演奏も素晴らしいです。しかし、新旧を合わせて聴くと、音質はもちろん、ベルリン・フィルとの1993年の新録音が高いレベルです。ラ・ヴァルスのモダンさが最高に表現されています。今日のロトはウィーンへの哀感よりもグロテスクさを前面に打ち出した個性的な演奏で、それに対する評価は分かれるかもしれません。ラヴェルの真意はどこにあったのでしょうか。saraiはウィーンへの思いをパリ風にオシャレに表現しながら、ハプスブルク帝国の栄光の挽歌にするというスタンスが思い描きやすいのですが、果たしていかがでしょう。

4曲目のストラヴィンスキーのバレエ音楽《春の祭典》は以下のCDを聴きました。

 ピエール・ブーレーズ指揮クリーヴランド管弦楽団 1969年録音
 ピエール・ブーレーズ指揮クリーヴランド管弦楽団 1991年録音
 フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮レ・シエクル 2013年
 テオドール・クルレンツィス指揮ムジカエテルナ 2013年 スタジオ録音 ドイツ、ケルン

ブーレーズの新旧録音はドビュッシー、ラヴェルの場合とそう感覚が違いませんが、ただ、旧録音はLPレコード、新録音はハイレゾで聴いたという違いはあります。どちらも素晴らしい演奏です。ロトとクルレンツィスは1913年の初演の100年後ということでの録音です。ロトは資料的価値はありますが、saraiはあまりピンとこない録音です。今日の演奏をCDにしてもらったほうがよい感じ。そうすると、クルレンツィスのCDといい勝負になります。クルレンツィスの演奏は一聴の価値のある凄まじさです。弱音パートの緊張感ある演奏も魅了されました。ストラヴィンスキーご本人指揮のCDとイーゴリ・マルケヴィチのCDも合わせて聴くべきでした。すると、saraiもストラヴィンスキーについて、もう少し、語れるかな・・・。



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       ロト,  

新時代の幕開けか・・・ロト&東京都交響楽団@サントリーホール 2016.4.7

今日は都響B定期(サントリーホール定期)の新シーズンの幕開け。と共にポスト・ピリオド時代の旗手フランソワ=グザヴィエ・ロトの指揮した都響の清新な演奏は新時代の幕開けを予感させるものでもありました。昨年12月のミンコフスキ指揮のコンサートでも都響は新しい響きを聴かせてくれていましたから、今日のような演奏は本当は驚くことはないのかもしれません。しかし、今日の演奏は色んなこと、そして、今後の可能性を考えさせてくれたんです。ベースにあるのはピリオド奏法の熟成です。それはノントナール、無調音楽の熟成を思い起こさせます。現代音楽では、ノントナール音楽は金科玉条のように守り通すものではなく、音楽表現のひとつとして、トナール音楽と使い分ける、あるいは組み合わせるようになっています(saraiの勝手な妄想かもしれませんが)。同様にピリオド奏法も音楽表現のひとつとして、普通の奏法と使い分け、組み合わせるものとなってきたようです。これがポスト・ピリオド時代です。今日のロトの音楽創造は実に変幻自在。彼は自己の音楽表現を実現させるために、驚くほどに様々な奏法を使いこなしていきます。それも高いレベルでの実現です。

まず、最初はウェーベルンが編曲したシューベルトのドイツ舞曲。予習したブーレーズのCDでは、ウェーベルンにしては平凡とも思える編曲だなと感じました。シューベルトのオリジナルのピアノ独奏版をアンドラーシュ・シフの演奏で聴きましたが、やっぱり、オリジナルがよっぽどいいと感じました。ところが今日のロト&都響を聴いて、印象は一変。シューベルトの音楽には違いありませんが、表現はウェーベルン。音楽の二重性を綱渡りのような巧みさで実現しています。ロトはあのブーレーズを超える才能なのかと驚嘆します。ポスト・ピリオド時代の音楽表現はその音楽が創られた時代の空気感を再生させることなのかもしれません。そういう意味では、ロトならではの音楽がこのウェーベルン編曲のシューベルトなのかもしれません。1930年代のウェーベルンが100年前のウィーンの先輩作曲家の音楽を再創造した頃の時代の空気感を見事に描き出したということです。まあ、2度と聴けないような素晴らしい音楽でした。

次はR.シュトラウスのメタモルフォーゼン。これはR.シュトラウスの晩年、すなわち、1945年頃の時代を直球勝負で描き出した演奏。通常の意味でのピリオド奏法ではなく、ある意味、普通の音楽表現です。しかし、表層的な意味で言うピリオド奏法ではないにしても、その時代を表現するという意味では真のピリオド奏法と言えるだろうし、室内楽的な明瞭さの演奏で本質にアプローチするところはまさにピリオド奏法の真骨頂といえるかもしれません。まあ、そういうことは抜きにしても、心にしみじみと語りかけてくる素晴らしい演奏だったんです。都響を長く聴いてきましたが、ついにここまで来たかという感慨にひたりました。都響のメンバーもこういう演奏を目指してやってきたんでしょう。一つの到達点に達しましたね。それにしてもR.シュトラウスの晩年の音楽は素晴らしいです。管弦楽曲では、この《メタモルフォーゼン》。声楽曲では《4つの最後の歌》。オペラでは、《カプリッチョ》。いずれも内面の深いところにしみじみとしたものを残してくれる傑作です。つらい時代の中、高齢で創造した珠玉の作品群です。芸術にすべてを捧げ尽くした天才が我々に残してくれた遺産です。そういうものをプログラムの中心にすえたロトの意図は明確でしょう。彼はこのR.シュトラウスの音楽を愛しており、それを我々聴衆と共有したかったんでしょう。十分にそういう気持ちが伝わってくる名演でした。

休憩後、ベートーヴェンの交響曲第3番《英雄》です。まあ、これはロトのやりたい放題の演奏。第1楽章はいかにもピリオド奏法の典型のような演奏スタイル。早めのテンポで強いアクセント。きびきびとした切れのいい演奏。これは挨拶代わりのようなものでしょう。軽めの表現に違和感は覚えますが、シューベルトのドイツ舞曲と同様にふわっとした飛翔感のある演奏には好感も感じます。重量感のある《英雄》を期待していると肩透かしに合います。ところが第2楽章にはいると一転します。ゆったりしたテンポでオーケストラの繊細な響きでしみじみとした演奏を繰り広げます。この楽章はある意味、メタモルフォーゼンの表現と連続性を持たせて、《英雄》の音楽的中心に据えたようです。第1楽章の軽み(かろみ)もそのための布石だったようです。ロマンティックな表現にも思えるほどの熱演に引き込まれてしまいました。それでもピリオド奏法を裏切らないのは、響きが濁らずにピュアーなことです。都響の素晴らしさもありますが、この純粋な響きの演奏は驚異的とも思えます。第3楽章はスケルツォですから、早めのテンポに戻りますが、他の指揮者と比べて、特に早いテンポには思えません。それほどピリオドっぽくは感じません。響きの純粋さは相変わらずです。この短い楽章が終わり、それなりに間を置いて、第4楽章に入ります。これはピリオドとかそういうことではなく、独自性にあふれる素晴らしい演奏です。いきいきと活力に満ちて、響きの純粋さに耳を奪われます。ここぞというところで踊るような動作でオーケストラを鼓舞すると、これまで聴いたことのないような強いアクセントで新鮮な響きが生まれます。ロトは己の生み出したい音楽表現がきっちりと頭の中にできていて、それを体の動作でオーケストラに伝えて、その通りの音楽が実現されるんです。これって、できそうでなかなかできないことです。ロトの音楽表現にすっかりと引き込まれてしまいました。滅多にできない音楽体験になりました。

今日のプログラムは以下のとおりでした。

  指揮:フランソワ=グザヴィエ・ロト
  管弦楽:東京都交響楽団

  シューベルト(ウェーベルン編曲):ドイツ舞曲 D820
  R.シュトラウス:メタモルフォーゼン~23の独奏弦楽器のための習作

   《休憩》

  ベートーヴェン:交響曲第3番 変ホ長調 op.55《英雄》

インバルは今後も都響の音楽の軸ですが、今日のロト、そして、ミンコフスキがこれからの都響の将来を左右しそうな予感がします。


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 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

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