メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲全曲演奏、今日は作品44の3曲です。その前に作曲した第1番からはおよそ8年後で、30歳に近くなったメンデルスゾーンは交響曲第3番~第5番も書き終えて、充実した高みにありました。3曲とも実に成熟した作品ですが、メンデルスゾーンらしいロマンあふれる瑞々しさが横溢した音楽です。
最初に演奏された弦楽四重奏曲第4番は、特に両端楽章(第1楽章、第4楽章)が素晴らしい響きでうっとりと魅了されました。
続く弦楽四重奏曲第5番は第1楽章が見事な演奏でした。いずれも第1ヴァイオリンの小林幸子が他の3人のメンバーのサポートを受けながら、天馬空を行くという風情の超美しい演奏を聴かせてくれました。
休憩後、弦楽四重奏曲第3番です。これは今回の全曲サイクルの最後に持ってきただけのことはあり、作品の質の高さはもちろんですが、ロータス・カルテットの演奏は第1楽章から全開モードで目くるめく演奏を聴かせてくれます。勢いのある第1主題を軸に実に活き活きした演奏が続きます。第1主題が回帰するたびに心が高揚します。少し翳りを帯びた第2主題は交響曲第3番「スコットランド」の雰囲気を想起させられて、素晴らしいアクセントとして、ロータス・カルテットがしみじみとした演奏を聴かせてくれます。
第2楽章はメヌエット。昨日、アンコール曲として演奏された曲です。優美な音楽が奏でられます。途中、8分音符による細かく刻むパッセージが第1ヴァイオリンで演奏されますが、その見事なこと。ぐっと惹き込まれます。
第3楽章はアンダンテ。低弦部のピッツィカートの伴奏で穏やかな旋律がカンタービレで描き出されます。終盤、第1ヴァイオリンのカデンツァ風の独奏の美しさにうっとりと魅了されます。
第4楽章は一転して活気あふれる音楽になります。ロータス・カルテットの素晴らしいアンサンブルはぐんぐん推進力のある演奏を繰り広げ、そのまま、高潮して、コーダに突き進みます。そして、圧倒的なフォルテッシモで曲を閉じます。
この弦楽四重奏曲第3番は圧巻の演奏でした。
アンコール曲は驚きのアンダンテ・カンタービレ。美しい音楽をたっぷりと味わわせてくれました。
久々に聴くロータス・カルテットは以前にもまして、演奏の精度を高め、世界を代表するカルテットのひとつとして、大きな存在感を持つことを印象付けてくれました。コロナ禍の影響もなくなり、また、頻繁な来日公演が望まれます。いやはや、大変、満足しました。
今日のプログラムは以下のとおりでした。
ロータス・カルテット メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲全曲サイクル2023
ロータス・カルテット
小林幸子vn スヴァンチェ・タウシャーvn
山碕智子va 斎藤千尋vc
メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲 第4番 ホ短調 Op.44-2
弦楽四重奏曲 第5番 変ホ長調 Op.44-3
《休憩》
メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲 第3番 ニ長調 Op.44-1
《アンコール》
チャイコフスキー:弦楽四重奏曲第1番 ニ長調 Op.11 から 第2楽章 アンダンテ・カンタービレ
最後に予習について、まとめておきます。
メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲を予習したCDは以下です。
エマーソン弦楽四重奏団 メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲全集 2004年4月 ニューヨーク セッション録音
流石にエマーソン弦楽四重奏団、美しくて、完璧な演奏です。
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