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期待を上回るシューマン、完璧なラフマニノフ 上原彩子 ピアノ・リサイタル@横浜上大岡ひまわりの郷ホール 2020.10.18

以前、のめりこんでいた上原彩子。その演奏の中心はロシアもの。中でもラフマニノフは素晴らしかった。一方、ドイツ・オーストリアものはいつも失望させられました。今年、久しぶりにピアノ・リサイタルに行ってみると、何と何と、モーツァルトを完全に弾きこなしていました。肩の力の抜けた美しい響きの演奏でした。で、また、上原彩子を聴いてみる気になりました。

今日はシューマンとラフマニノフ。もちろん、シューマンをどう弾くのかが期待半分、不安半分で、一番の関心事でした。ラフマニノフはどう転んでも凄い演奏をすることは分かっていました。結果、やはり、天才気質の上原彩子は凄いシューマンを聴かせてくれました。とりわけ、クライスレリアーナは上原彩子のためにシューマンが作曲してくれた感のあるような、最高の演奏。今年は聴ける筈だった田部京子のクライスレリアーナがコロナのためにコンサート・キャンセルで聴けずに残念に思っていましたが、こういうクライスレリアーナは田部京子も弾けないでしょう。田部京子はもっと詩情に満ちた演奏になるでしょうが、上原彩子は実に奔放な演奏です。特に激しいパッセージの切れのある演奏にはすっかり魅了されました。むらのある演奏で完璧とは言えませんが、それが逆に上原彩子の天才的な美質を示しているとも言えます。演奏中の恐ろしいほどの集中力には恐れ入りました。不意に最近、再放送で見た《のだめカンタービレ》を思い出しました。まるで、のだめちゃんのような演奏です。低音部をガンガン響かせるところも新鮮で、昔レコードで若いころのアルゲリッチの演奏でこのクライスレリアーナに魅了されたことも思い出しました。間違いなく、saraiが実演で聴いた最高のクライスレリアーナです。ずっとこんな演奏を聴きたかったのですが、まさか、上原彩子が聴かせてくれるとは想像だにしていませんでした。今でも脳裏に上原彩子のクライスレリアーナの激しさと抒情の交錯する響きがこだましています。
最初に弾いた《子供の情景》もクライスレリアーナほどではありませんでしたが、十分に楽しんで聴けるシューマンでした。肩の力の抜けた優しいタッチは以前の上原彩子では想像できなかった音楽です。もちろん、優しくて子供向けというレベルの演奏ではなく、シューマンのロマンに満ちた音楽に仕上がっていました。ただ、上原彩子にはクライスレリアーナのほうが向いていました。今度はシューマンのピアノ協奏曲を聴く予定です。よい演奏が期待できそうです。どんどん、シューマンにチャレンジしてもらいましょう。

後半のラフマニノフの《ショパンの主題による変奏曲》は何も言うことはありません。ただただ、完璧な演奏でした。どこかのレコード会社がラフマニノフのピアノ独奏曲の全曲録音を企画してほしいものです。フィオレンティーノがライヴで一気に独奏曲を全曲弾いた素晴らしい全集がCD6枚組で出ていますから、上原彩子も同じようなチャレンジしてくれないかな。

このsaraiの地元の小さなホールで上原彩子のピアノを聴くのが夢でしたが、コロナ禍という状況下で遂に実現し、嬉しくて、嬉しくて・・・。主催者・プロデューサーの平井さんに感謝してもしきれません。長年、要望していたことです。もちろん、最前列の中央で上原彩子のピアノの響きすべてを子細に聴かせてもらいました。残りの夢はここで庄司紗矢香を聴くことだけです。


今日のプログラムは以下です。


  シューマン:子供の情景 Op.15
  シューマン:クライスレリアーナ Op.16

   《休憩》

  ラフマニノフ:ショパンの主題による変奏曲 Op.22

   《アンコール》

    シューマン(リスト編曲):献呈(君に捧ぐ)~歌曲集『ミルテの花』の第1曲
    ラフマニノフ:前奏曲 Op.32-12 嬰ト短調


最後に予習について、まとめておきます。以下のCDを聴きました。

1曲目のシューマンの《子供の情景》は以下のCDを聴きました。

 伊藤恵:シューマニアーナ5 1993年9月8-10日 田園ホール・エローラ(松伏町中央公民館) セッション録音
 
伊藤恵のシューマン全曲録音からの1曲です。バランスのよい演奏です。


2曲目のシューマンのクライスレリアーナは以下のCDを聴きました。

 伊藤恵 2014年1月6-8日 北上市文化交流センター さくらホール セッション録音
 
伊藤恵のシューマン全曲録音の最初の録音がこのクライスレリアーナでした。これは新録音。実に27年ぶりの録音です。聴いたこともないような明解な分析的ともいえる演奏。正直、saraiが思い浮かべるクライスレリアーナではありませんが、刺激を受けた演奏でもありました。ところでこのCDで伊藤恵が弾いているピアノはファツィオリです。何とね。


3曲目のラフマニノフの《ショパンの主題による変奏曲》は以下のCDを聴きました。

 ダニール・トリフォノフ 2015年3月 ニューヨーク セッション録音
 
こういう難曲では、トリフォノフの素晴らしいテクニックが光ります。彼もこれから注目すべきピアニストです。



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       上原彩子,  

自然なモーツァルトに衝撃! 上原彩子ピアノ・リサイタル@東京オペラシティ コンサートホール 2020.3.25

上原彩子にはまっていたsaraiもここ3年半ほど、彼女の演奏から遠ざかっていました。それは彼女の演奏がラフマニノフ、チャイコフスキーなどのロシアものがあれほど素晴らしいのに、モーツァルト、ベートーヴェンなどのドイツ・オーストリアなどの古典音楽~ロマン派があまりにも不満だらけで、それを聴くのが怖くなって、コンサートに行ってなかったんです。まさか、久しぶりに聴くコンサートがウイルスが蔓延する異常な状況下で開かれるとは・・・絶句です。今日のコンサートは、期待というよりも不安だらけというのが正直なところです。

1曲目はモーツァルトのキラキラ星変奏曲・・・いきなり、モーツァルトです。大丈夫でしょうか。えっ、これって、ちゃんとモーツァルトの響き、音楽になっています。こんな上原彩子、ここ10年以上、聴いてきましたが、初めてです。今まで響かせ過ぎだった演奏はすっかり、スタイルが変わって、saraiが理想とするモーツァルトの音楽になっています。ピュアーな響きも美しいし、音階もスムーズです。肩の力が抜けたというか、無理のない自然なモーツァルトです。だからと言って、くぐもった響きではなく、ピーンと立った響きが明快に聴こえてきます。単調な演奏ではなく、活き活きとした音楽が適度な緊張感のもとで聴こえてきます。この3年半の間に何か劇的な変化があったようです。鍵盤の上を走る手を見ても無理のない運指が見てとれます。手はほとんど鍵盤に張り付いたままで10本の指だけがハンマーのように鍵盤を叩いて、美しく純粋な音色を奏でています。その響きは品格の高さすら感じます。この曲は結構長いのですが、終始、楽しく、心躍らせながら、聴き入りました。素晴らしい演奏でした。遂に上原彩子がモーツァルトを弾きこなしました。クララ・ハスキルの気品の高い演奏とまではいかないにしても、モーツァルト弾きのピアニストと言っても過言ではありません。上原彩子のファンとしては嬉しいばかりです。

2曲目はチャイコフスキーの創作主題と変奏。ぱっとモーツァルトとは弾き方を変えます。上原彩子のお得意のチャイコフスキーですから、安心して聴けます。ダイナミックな素晴らしい演奏です。遂に上原彩子は作曲家によって、スタイルを変えて、弾き分けるようになったんですね。さらに次のチャイコフスキーの「四季」からの2曲はテクニックではなく、音楽性で聴かせてくれます。ロシアの憂鬱感を表出した素晴らしい演奏です。特に 3月「ひばりの歌」の暗い情感に魅了されました。

前半最後はまた、モーツァルト。これも問題ありません。すっかりとモーツァルトの様式感をマスターしたようです。非凡と言ってもよい素晴らしい演奏です。何と言っても、その響きの美しさが最高です。緩徐楽章での抒情味あふれる演奏も素晴らしいし、終楽章の素早いパッセージの技巧も見事。モーツァルトらしさを表出しただけでなく、やはり、上原彩子が弾く音楽としての輝きも感じる演奏です。もう、完全にモーツァルトを征服したようです。どの曲を弾かせても素晴らしい演奏をすることは予想できます。

後半のプログラムのモーツァルトも万全の演奏でした。ですが、圧巻だったのは最後のチャイコフスキーのグランド・ソナタ。この難曲、大曲を熱く燃え上がるようにバリバリと歌い上げました。素晴らしかったのは両端楽章です。超絶的な演奏で圧倒されるのみ。これ以上の演奏は望めないというレベルです。モーツァルトもよかったけど、やっぱり、上原彩子の弾くチャイコフスキーは凄過ぎ!

また、saraiが大好きだった上原彩子がレベルアップして、戻ってきてくれました。また、これからは安心して、聴きまくります。


今日のプログラムは以下です。

  モーツァルト:キラキラ星変奏曲 ハ長調 K. 265
  チャイコフスキー:創作主題と変奏 ヘ長調 Op. 19-6
  チャイコフスキー:「四季」 Op. 37bisより 3月「ひばりの歌」、6月「舟歌」
  モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第12番 ヘ長調 K. 332 

   《休憩》

  モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第4番 変ホ長調 K. 282
  チャイコフスキー:グランド・ソナタ ト長調 Op. 37

   《アンコール》

    チャイコフスキー/上原彩子編曲:6つの歌曲Op.6より第5曲「なぜ」
    モーツァルト:ピアノ・ソナタ第11番 イ長調K.331「トルコ行進曲つき」第1楽章
    チャイコフスキー:18の小品 Op.72より第14曲「悲しい歌」


最後に予習について、まとめておきます。以下のCDを聴きました。

まず、モーツァルトはアンドラーシュ・シフの21枚組のモーツァルト・アルバムを聴きました。

 アンドラーシュ・シフ/モーツァルト録音集(21CD) 1980-94年

シフの若い頃の録音ですが、素晴らしく美しい響きです。どの曲も手抜きのない丁寧な演奏で魅了されます。このレベルの演奏ならば、再録音の必要はありません。

チャイコフスキーは以下の超ど級アルバムです。

 ヴァレンティーナ・リシッツァ チャイコフスキー・ソロ・ピアノ作品全集(10CD) 2017年12月~2018年4月 ウィーン

若くてめきめきと頭角を現してきたウクライナ出身の女性ピアニスト、ヴァレンティーナ・リシッツァが何とも驚くべきアルバムを作り上げました。その超絶的なテクニックと音楽性で、チャイコフスキーのピアノ作品を網羅してくれました。チャイコフスキー好きにはたまらないアルバムです。グランド・ソナタは何とも凄まじい演奏です。



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       上原彩子,  

上原彩子の《展覧会の絵》は熱く燃焼!!@浜離宮朝日ホール 2016.10.20

まあ、上原彩子という人はなかなか理解しがたいところがあります。このところ、非常に素晴らしい演奏ばかり聴かせてもらいましたが、今日は起伏の多い内容で玉石混交の演奏でした。神をも恐れぬ業で今日の演奏を採点してみると、モーツァルトは可、シューマンは良、ムソルグスキーは特優、アンコールのラフマニノフは特優ということになります。つまり、ロシアもの、あるいは近代ものだけが素晴らしかったということになります。ドイツ・オーストリア系、あるいは古典およびロマン派はもう一つだったということです。よく考えると、これは今日だけのことではなくて、ずっとそうだったような気がします。ラフマニノフを中心にプロコフィエフ、チャイコフスキーなどのロシアもので、はずれはなかったような気がします。もっともロシアもの以外ではショパンのコンチェルトが素晴らしかったことを思い出します。ショパンも元をたどれば、東欧がルーツですから、ロシアに近いですね。あっ、ラヴェルも素晴らしかったこともありました。フランスものも意外に得意なのかな。何故、こんなことをつらつらと書き綴るかと言うと、上原彩子がバッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、シューマンというドイツ系の音楽で本領を発揮できないかが不思議だからです。もっとも、saraiとしては別にラフマニノフだけを聴いていても一向に構いませんけどね。とても余人が対抗できないほどの素晴らしさです。

ということで、もうすでに今日のコンサートの内容は俯瞰してしまいましたが、一応、もう一度、おさらいしてみましょう。

最初のモーツァルトのピアノ・ソナタ第10番ですが、そもそもピアノの響きがsaraiが思い描くモーツァルトの響きとはかけ離れています。シンプルに粒立ちのよいタッチで弾いてもらいたいのですが、響かせ過ぎに思え、響きがピュアーでありません。音階の運びもスムーズさを欠きます。ピリスやペライアのような響き、さらに言うと古くはハスキルのような美しい響きを目指してほしいというのがsaraiの願いです。音楽的には第2楽章などは気持ち良くは聴けたんです。上原彩子にはもっともっと高いレベルで演奏を望みます。

次はシューマンの謝肉祭です。これはモーツァルトほど違和感はありませんが、やはり響かせ過ぎのように感じます。第1曲の《前口上Préambule》は急ぎ過ぎで響きが少し濁り、うるさい感じが残ります。ただ、弾き進めるにつれて、こちらの耳が慣れてきたのか、あるいは上原彩子のピアノの響きが洗練されてきたのか、第13曲《エストレラEstrella》あたりからは心に沁みるような響きに思えます。熱情的な演奏が迫力を増します。何となく、謝肉祭にしては熱すぎるような感はありますが、こういう演奏もありでしょう。もう少しピュアーな響きだったらベストだったでしょう。

休憩後、ムソルグスキーの組曲《展覧会の絵》です。前にも一度、上原彩子のピアノで聴いたことがありますが、そのときと同様に安定していて、それでいて、迫力のある切れ味十分な演奏です。第9曲の《ババ・ヤーガ》に至って、急に演奏がヒートアップします。物凄い迫力です。まるでリヒテルの伝説の名演を再現するかのようです。もちろん、ミスタッチも増えますが、そういうことは気にならないほどの迫力です。終曲の《キエフの大門》も凄まじい演奏。いやあ、見事な演奏でした。すっかり、満足しました。

アンコール曲のクライスラー原曲の《愛の悲しみ》は編曲とは言え、ラフマニノフそのものという曲。ラフマニノフを弾くときの上原彩子は鬼気迫るものがあります。素晴らしい演奏でした。この日、最高の演奏だったと思います。

今日のプログラムは以下です。

  モーツァルト:ピアノ・ソナタ第10番ハ長調 K.330
  シューマン:謝肉祭 Op.9

   《休憩》

  ムソルグスキー:組曲《展覧会の絵》

   《アンコール》

    クライスラー(ラフマニノフ編曲):愛の悲しみ

また、ラフマニノフを中心に据えたロシアもののプログラムを聴きたいものです。


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       上原彩子,  

鬼神のごとき上原彩子のプロコフィエフ_ゲッツェル&神奈川フィル@神奈川県民ホール 2016.9.22

連日、素晴らしいコンサートが続きます。今日は上原彩子、お得意のプログラム、プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番です。saraiの期待を裏切らない上原彩子のピアノ演奏でした。ちょうど、鍵盤の上を走る彼女の手がよく見える席でしたが(もちろん、偶然にそういう席に座ったわけじゃありません)、聴覚ばかりでなく視覚でも、その凄まじい演奏に釘付けになりました。切れのよいタッチ、硬質の美しい響き、それでいて繊細な音楽表現、究極とも思えるピアノ演奏でした。このプロコフィエフの難曲をパーフェクトに弾き切っただけでなく、オーケストラともぴったりと合わせたのも驚きです。もっともゲッツェル&神奈川フィルが好サポートしたとも言えます。第1楽章の見事な演奏、第2楽章の繊細さとスリリングさの交差する演奏、第3楽章は走りまくる凄まじい演奏にsaraiは高揚するばかり。この鬼神のごとき上原彩子の演奏でsaraiはエネルギーをたっぷりと注入してもらった感じでエネルギー量が倍増して、元気一杯になれました。元気印のような上原彩子に感謝です。先週はアンナ・ヴィニツカヤのダイナミックな超絶技巧の大迫力のピアノでプロコフィエフのピアノ協奏曲 第2番を聴いたばかりです。こうして、プロコフィエフの名曲を素晴らしい演奏で堪能できて、幸せです。そうそう、上原彩子の弾いたアンコールのラフマニノフのプレリュードの美しさといったら、これはもうたまりませんでした。この曲って、こんなのだったっけと思い返すほどです。ラフマニノフを弾かせると無敵の上原彩子です。

《展覧会の絵》には触れないでおきましょう。もうちょっと管が頑張ってくれればね・・・。《展覧会の絵》と言えば、近くフォーレ四重奏団の演奏でピアノ四重奏版の珍しい《展覧会の絵》を聴きます。素晴らしい演奏が聴けそうな予感です。さらに上原彩子のピアノ独奏でも聴く予定です。これも素晴らしい筈です。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:サッシャ・ゲッツェル
  ピアノ:上原彩子
  管弦楽:神奈川フィル

  ムソルグスキー:交響詩「はげ山の一夜」
  プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番ハ長調Op.26
   《アンコール》ラフマニノフ:プレリュードOp.32-5

   《休憩》

  ムソルグスキー(ラヴェル編曲):展覧会の絵




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       上原彩子,  

上原彩子、究極のピアニズム ラフマニノフのプレリュード@東京オペラシティ コンサートホール 2016.6.3

まあ、言うべき言葉がありません。実際に何を書いたらいいのか、途方にくれます。ただ、上原彩子がピアノを弾き、ひたすら、その響きに身を委ねていた自分がいた・・・ただ、それだけのこと。音楽の純粋さに向き合ってしまうと音楽自身がすべてであって、それを言葉に言い換えることなど何の意味があるでしょう。それにしてもこのところの上原彩子の音楽的充実度はどれほどのものでしょう。その素晴らしさがsaraiから言葉を奪ってしまいます。
上原彩子の演奏するラフマニノフは恐ろしいほど豊潤な響きの音楽に到達してきました。前回、彼女の弾くラフマニノフのピアノ・ソナタ第2番を聴いて、やるせなくて、狂おしいラフマニノフの魂の叫びを感じましたが、今日はラフマニノフではあっても、そういうロシア的な魂よりも純粋に高められた音楽の響き、ピアノの音自身といってもいいかもしれませんが、無垢なピアノの音響が聴き取れました。これは何でしょう。ラフマニノフを聴くという点においては不満の残る演奏だったかもかもしれませんが、そういうことではなくて、作曲家や演奏家の個性を超えた音楽のミューズ的な本質に迫る演奏であったようにも思えます。芸術はその道具たる音楽や絵画を通して、神の領域に至る試みであるとすれば、そういう意味では、芸術が神に近づいた一夜を上原彩子は作り出してくれたとも思えます。

面倒なことを書きましたが、実はラフマニノフは上記のようなことしか書けないほど、豊潤なピアノの響きの奔流であったということです。一方、スクリャービンはロシア的な個性の音楽に仕立てあがっていました。よく、初期のスクリャービンはショパンの影響うんぬんを言われますが、上原彩子の弾くスクリャービンはラフマニノフ同様、ロシア的な精神に満ちた音楽であることを実感させてくれました。アンコールの最後で弾いたスクリャービンの練習曲は上原彩子とスクリャービンの魂が同化したかと思えるような凄絶な演奏でした。この音楽で感動しない人はいないでしょう。saraiはこの短い音楽で心を揺さぶられて、涙が滲みました。

今日のプログラムは以下です。

  ラフマニノフ:前奏曲「鐘」幻想的小品集 Op.3より第2番
  ラフマニノフ:10の前奏曲 Op.23より 第4番、第5番、第6番、第7番
  スクリャービン:24の前奏曲 Op.11

   《休憩》

  ラフマニノフ:13の前奏曲 Op.32

   《アンコール》

    ラフマニノフ:楽興の時第5番Op.16-5
    スクリャービン:練習曲嬰ニ短調「悲愴(Pathetic)」Op.8-12

予習したCDは以下です。

 ラフマニノフ  リヒテルの1960年10月28日のカーネギーホールのライブ(リヒテル ザ・コンプリート・アルバム・コレクションより)
 スクリャービン ヴェルデニコフ(ロシア・ピアニズム名盤選より)

リヒテルのライブCDはモノラルですが、音質は鑑賞には差し支えないレベル。演奏は圧倒的です。今日の上原彩子の演奏とは異なり、ラフマニノフの魂と同調するような凄まじいものです。前奏曲が抜粋で半分ほどの曲しか聞けないが残念ですが、こういうCDを聴くとほかのCDが聴けなくなります。
ヴェルデニコフのスクリャービンは静かで美しい演奏。ある意味、上原彩子の今日の演奏とは対極にあるような演奏です。



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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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天野さん

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09/27 14:15 sarai

充実した心豊かなご様子に励まされます.
情報、有り難うございました.
いつか、ふらっと訪ねてみたいです.

09/27 09:23 天野哲也

昨日投稿した記事の一部に誤りがありました。ドイツ騎士団の中庭はパスしないで、ちゃんと見ていました。追記・修正しました。申し訳ありません。

08/07 00:28 sarai

えりちゃさん、saraiです。お久しぶりです。

これは昨年の9月のウィーンですが、現在のコロナ禍では、古き良き日という風情ですね。もう、ポスト・コロナでは、行けたにし

07/20 12:41 sarai

Saraiさま、
お元気ですか?
新型コロナウィルス、自粛中。
このウィーンの散策を読んでいると、なんだか切なくて悲しくなってきました。
次はいつ行けるのかな、とか思う

07/20 05:08 えりちゃ

はじめまして。ブログ拝見させていただきました。私は、個人ブログを運営しているyuichironyjpと申します。フリーランサーとして活動しており、フリーランスで稼ぐ方法や、

06/14 23:46 Yuichironyjp

ありがたいコメント、嬉しいです。マーラーのファンのかたにこそ、読んでいただきたかったので、気持ちを共有できた思いです。自然の中にこそ、マーラーの音楽の本質はあり

04/23 23:45 sarai
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