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自然なモーツァルトに衝撃! 上原彩子ピアノ・リサイタル@東京オペラシティ コンサートホール 2020.3.25

上原彩子にはまっていたsaraiもここ3年半ほど、彼女の演奏から遠ざかっていました。それは彼女の演奏がラフマニノフ、チャイコフスキーなどのロシアものがあれほど素晴らしいのに、モーツァルト、ベートーヴェンなどのドイツ・オーストリアなどの古典音楽~ロマン派があまりにも不満だらけで、それを聴くのが怖くなって、コンサートに行ってなかったんです。まさか、久しぶりに聴くコンサートがウイルスが蔓延する異常な状況下で開かれるとは・・・絶句です。今日のコンサートは、期待というよりも不安だらけというのが正直なところです。

1曲目はモーツァルトのキラキラ星変奏曲・・・いきなり、モーツァルトです。大丈夫でしょうか。えっ、これって、ちゃんとモーツァルトの響き、音楽になっています。こんな上原彩子、ここ10年以上、聴いてきましたが、初めてです。今まで響かせ過ぎだった演奏はすっかり、スタイルが変わって、saraiが理想とするモーツァルトの音楽になっています。ピュアーな響きも美しいし、音階もスムーズです。肩の力が抜けたというか、無理のない自然なモーツァルトです。だからと言って、くぐもった響きではなく、ピーンと立った響きが明快に聴こえてきます。単調な演奏ではなく、活き活きとした音楽が適度な緊張感のもとで聴こえてきます。この3年半の間に何か劇的な変化があったようです。鍵盤の上を走る手を見ても無理のない運指が見てとれます。手はほとんど鍵盤に張り付いたままで10本の指だけがハンマーのように鍵盤を叩いて、美しく純粋な音色を奏でています。その響きは品格の高さすら感じます。この曲は結構長いのですが、終始、楽しく、心躍らせながら、聴き入りました。素晴らしい演奏でした。遂に上原彩子がモーツァルトを弾きこなしました。クララ・ハスキルの気品の高い演奏とまではいかないにしても、モーツァルト弾きのピアニストと言っても過言ではありません。上原彩子のファンとしては嬉しいばかりです。

2曲目はチャイコフスキーの創作主題と変奏。ぱっとモーツァルトとは弾き方を変えます。上原彩子のお得意のチャイコフスキーですから、安心して聴けます。ダイナミックな素晴らしい演奏です。遂に上原彩子は作曲家によって、スタイルを変えて、弾き分けるようになったんですね。さらに次のチャイコフスキーの「四季」からの2曲はテクニックではなく、音楽性で聴かせてくれます。ロシアの憂鬱感を表出した素晴らしい演奏です。特に 3月「ひばりの歌」の暗い情感に魅了されました。

前半最後はまた、モーツァルト。これも問題ありません。すっかりとモーツァルトの様式感をマスターしたようです。非凡と言ってもよい素晴らしい演奏です。何と言っても、その響きの美しさが最高です。緩徐楽章での抒情味あふれる演奏も素晴らしいし、終楽章の素早いパッセージの技巧も見事。モーツァルトらしさを表出しただけでなく、やはり、上原彩子が弾く音楽としての輝きも感じる演奏です。もう、完全にモーツァルトを征服したようです。どの曲を弾かせても素晴らしい演奏をすることは予想できます。

後半のプログラムのモーツァルトも万全の演奏でした。ですが、圧巻だったのは最後のチャイコフスキーのグランド・ソナタ。この難曲、大曲を熱く燃え上がるようにバリバリと歌い上げました。素晴らしかったのは両端楽章です。超絶的な演奏で圧倒されるのみ。これ以上の演奏は望めないというレベルです。モーツァルトもよかったけど、やっぱり、上原彩子の弾くチャイコフスキーは凄過ぎ!

また、saraiが大好きだった上原彩子がレベルアップして、戻ってきてくれました。また、これからは安心して、聴きまくります。


今日のプログラムは以下です。

  モーツァルト:キラキラ星変奏曲 ハ長調 K. 265
  チャイコフスキー:創作主題と変奏 ヘ長調 Op. 19-6
  チャイコフスキー:「四季」 Op. 37bisより 3月「ひばりの歌」、6月「舟歌」
  モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第12番 ヘ長調 K. 332 

   《休憩》

  モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第4番 変ホ長調 K. 282
  チャイコフスキー:グランド・ソナタ ト長調 Op. 37

   《アンコール》

    チャイコフスキー/上原彩子編曲:6つの歌曲Op.6より第5曲「なぜ」
    モーツァルト:ピアノ・ソナタ第11番 イ長調K.331「トルコ行進曲つき」第1楽章
    チャイコフスキー:18の小品 Op.72より第14曲「悲しい歌」


最後に予習について、まとめておきます。以下のCDを聴きました。

まず、モーツァルトはアンドラーシュ・シフの21枚組のモーツァルト・アルバムを聴きました。

 アンドラーシュ・シフ/モーツァルト録音集(21CD) 1980-94年

シフの若い頃の録音ですが、素晴らしく美しい響きです。どの曲も手抜きのない丁寧な演奏で魅了されます。このレベルの演奏ならば、再録音の必要はありません。

チャイコフスキーは以下の超ど級アルバムです。

 ヴァレンティーナ・リシッツァ チャイコフスキー・ソロ・ピアノ作品全集(10CD) 2017年12月~2018年4月 ウィーン

若くてめきめきと頭角を現してきたウクライナ出身の女性ピアニスト、ヴァレンティーナ・リシッツァが何とも驚くべきアルバムを作り上げました。その超絶的なテクニックと音楽性で、チャイコフスキーのピアノ作品を網羅してくれました。チャイコフスキー好きにはたまらないアルバムです。グランド・ソナタは何とも凄まじい演奏です。



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       上原彩子,  

上原彩子の《展覧会の絵》は熱く燃焼!!@浜離宮朝日ホール 2016.10.20

まあ、上原彩子という人はなかなか理解しがたいところがあります。このところ、非常に素晴らしい演奏ばかり聴かせてもらいましたが、今日は起伏の多い内容で玉石混交の演奏でした。神をも恐れぬ業で今日の演奏を採点してみると、モーツァルトは可、シューマンは良、ムソルグスキーは特優、アンコールのラフマニノフは特優ということになります。つまり、ロシアもの、あるいは近代ものだけが素晴らしかったということになります。ドイツ・オーストリア系、あるいは古典およびロマン派はもう一つだったということです。よく考えると、これは今日だけのことではなくて、ずっとそうだったような気がします。ラフマニノフを中心にプロコフィエフ、チャイコフスキーなどのロシアもので、はずれはなかったような気がします。もっともロシアもの以外ではショパンのコンチェルトが素晴らしかったことを思い出します。ショパンも元をたどれば、東欧がルーツですから、ロシアに近いですね。あっ、ラヴェルも素晴らしかったこともありました。フランスものも意外に得意なのかな。何故、こんなことをつらつらと書き綴るかと言うと、上原彩子がバッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、シューマンというドイツ系の音楽で本領を発揮できないかが不思議だからです。もっとも、saraiとしては別にラフマニノフだけを聴いていても一向に構いませんけどね。とても余人が対抗できないほどの素晴らしさです。

ということで、もうすでに今日のコンサートの内容は俯瞰してしまいましたが、一応、もう一度、おさらいしてみましょう。

最初のモーツァルトのピアノ・ソナタ第10番ですが、そもそもピアノの響きがsaraiが思い描くモーツァルトの響きとはかけ離れています。シンプルに粒立ちのよいタッチで弾いてもらいたいのですが、響かせ過ぎに思え、響きがピュアーでありません。音階の運びもスムーズさを欠きます。ピリスやペライアのような響き、さらに言うと古くはハスキルのような美しい響きを目指してほしいというのがsaraiの願いです。音楽的には第2楽章などは気持ち良くは聴けたんです。上原彩子にはもっともっと高いレベルで演奏を望みます。

次はシューマンの謝肉祭です。これはモーツァルトほど違和感はありませんが、やはり響かせ過ぎのように感じます。第1曲の《前口上Préambule》は急ぎ過ぎで響きが少し濁り、うるさい感じが残ります。ただ、弾き進めるにつれて、こちらの耳が慣れてきたのか、あるいは上原彩子のピアノの響きが洗練されてきたのか、第13曲《エストレラEstrella》あたりからは心に沁みるような響きに思えます。熱情的な演奏が迫力を増します。何となく、謝肉祭にしては熱すぎるような感はありますが、こういう演奏もありでしょう。もう少しピュアーな響きだったらベストだったでしょう。

休憩後、ムソルグスキーの組曲《展覧会の絵》です。前にも一度、上原彩子のピアノで聴いたことがありますが、そのときと同様に安定していて、それでいて、迫力のある切れ味十分な演奏です。第9曲の《ババ・ヤーガ》に至って、急に演奏がヒートアップします。物凄い迫力です。まるでリヒテルの伝説の名演を再現するかのようです。もちろん、ミスタッチも増えますが、そういうことは気にならないほどの迫力です。終曲の《キエフの大門》も凄まじい演奏。いやあ、見事な演奏でした。すっかり、満足しました。

アンコール曲のクライスラー原曲の《愛の悲しみ》は編曲とは言え、ラフマニノフそのものという曲。ラフマニノフを弾くときの上原彩子は鬼気迫るものがあります。素晴らしい演奏でした。この日、最高の演奏だったと思います。

今日のプログラムは以下です。

  モーツァルト:ピアノ・ソナタ第10番ハ長調 K.330
  シューマン:謝肉祭 Op.9

   《休憩》

  ムソルグスキー:組曲《展覧会の絵》

   《アンコール》

    クライスラー(ラフマニノフ編曲):愛の悲しみ

また、ラフマニノフを中心に据えたロシアもののプログラムを聴きたいものです。


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       上原彩子,  

鬼神のごとき上原彩子のプロコフィエフ_ゲッツェル&神奈川フィル@神奈川県民ホール 2016.9.22

連日、素晴らしいコンサートが続きます。今日は上原彩子、お得意のプログラム、プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番です。saraiの期待を裏切らない上原彩子のピアノ演奏でした。ちょうど、鍵盤の上を走る彼女の手がよく見える席でしたが(もちろん、偶然にそういう席に座ったわけじゃありません)、聴覚ばかりでなく視覚でも、その凄まじい演奏に釘付けになりました。切れのよいタッチ、硬質の美しい響き、それでいて繊細な音楽表現、究極とも思えるピアノ演奏でした。このプロコフィエフの難曲をパーフェクトに弾き切っただけでなく、オーケストラともぴったりと合わせたのも驚きです。もっともゲッツェル&神奈川フィルが好サポートしたとも言えます。第1楽章の見事な演奏、第2楽章の繊細さとスリリングさの交差する演奏、第3楽章は走りまくる凄まじい演奏にsaraiは高揚するばかり。この鬼神のごとき上原彩子の演奏でsaraiはエネルギーをたっぷりと注入してもらった感じでエネルギー量が倍増して、元気一杯になれました。元気印のような上原彩子に感謝です。先週はアンナ・ヴィニツカヤのダイナミックな超絶技巧の大迫力のピアノでプロコフィエフのピアノ協奏曲 第2番を聴いたばかりです。こうして、プロコフィエフの名曲を素晴らしい演奏で堪能できて、幸せです。そうそう、上原彩子の弾いたアンコールのラフマニノフのプレリュードの美しさといったら、これはもうたまりませんでした。この曲って、こんなのだったっけと思い返すほどです。ラフマニノフを弾かせると無敵の上原彩子です。

《展覧会の絵》には触れないでおきましょう。もうちょっと管が頑張ってくれればね・・・。《展覧会の絵》と言えば、近くフォーレ四重奏団の演奏でピアノ四重奏版の珍しい《展覧会の絵》を聴きます。素晴らしい演奏が聴けそうな予感です。さらに上原彩子のピアノ独奏でも聴く予定です。これも素晴らしい筈です。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:サッシャ・ゲッツェル
  ピアノ:上原彩子
  管弦楽:神奈川フィル

  ムソルグスキー:交響詩「はげ山の一夜」
  プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番ハ長調Op.26
   《アンコール》ラフマニノフ:プレリュードOp.32-5

   《休憩》

  ムソルグスキー(ラヴェル編曲):展覧会の絵




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       上原彩子,  

上原彩子、究極のピアニズム ラフマニノフのプレリュード@東京オペラシティ コンサートホール 2016.6.3

まあ、言うべき言葉がありません。実際に何を書いたらいいのか、途方にくれます。ただ、上原彩子がピアノを弾き、ひたすら、その響きに身を委ねていた自分がいた・・・ただ、それだけのこと。音楽の純粋さに向き合ってしまうと音楽自身がすべてであって、それを言葉に言い換えることなど何の意味があるでしょう。それにしてもこのところの上原彩子の音楽的充実度はどれほどのものでしょう。その素晴らしさがsaraiから言葉を奪ってしまいます。
上原彩子の演奏するラフマニノフは恐ろしいほど豊潤な響きの音楽に到達してきました。前回、彼女の弾くラフマニノフのピアノ・ソナタ第2番を聴いて、やるせなくて、狂おしいラフマニノフの魂の叫びを感じましたが、今日はラフマニノフではあっても、そういうロシア的な魂よりも純粋に高められた音楽の響き、ピアノの音自身といってもいいかもしれませんが、無垢なピアノの音響が聴き取れました。これは何でしょう。ラフマニノフを聴くという点においては不満の残る演奏だったかもかもしれませんが、そういうことではなくて、作曲家や演奏家の個性を超えた音楽のミューズ的な本質に迫る演奏であったようにも思えます。芸術はその道具たる音楽や絵画を通して、神の領域に至る試みであるとすれば、そういう意味では、芸術が神に近づいた一夜を上原彩子は作り出してくれたとも思えます。

面倒なことを書きましたが、実はラフマニノフは上記のようなことしか書けないほど、豊潤なピアノの響きの奔流であったということです。一方、スクリャービンはロシア的な個性の音楽に仕立てあがっていました。よく、初期のスクリャービンはショパンの影響うんぬんを言われますが、上原彩子の弾くスクリャービンはラフマニノフ同様、ロシア的な精神に満ちた音楽であることを実感させてくれました。アンコールの最後で弾いたスクリャービンの練習曲は上原彩子とスクリャービンの魂が同化したかと思えるような凄絶な演奏でした。この音楽で感動しない人はいないでしょう。saraiはこの短い音楽で心を揺さぶられて、涙が滲みました。

今日のプログラムは以下です。

  ラフマニノフ:前奏曲「鐘」幻想的小品集 Op.3より第2番
  ラフマニノフ:10の前奏曲 Op.23より 第4番、第5番、第6番、第7番
  スクリャービン:24の前奏曲 Op.11

   《休憩》

  ラフマニノフ:13の前奏曲 Op.32

   《アンコール》

    ラフマニノフ:楽興の時第5番Op.16-5
    スクリャービン:練習曲嬰ニ短調「悲愴(Pathetic)」Op.8-12

予習したCDは以下です。

 ラフマニノフ  リヒテルの1960年10月28日のカーネギーホールのライブ(リヒテル ザ・コンプリート・アルバム・コレクションより)
 スクリャービン ヴェルデニコフ(ロシア・ピアニズム名盤選より)

リヒテルのライブCDはモノラルですが、音質は鑑賞には差し支えないレベル。演奏は圧倒的です。今日の上原彩子の演奏とは異なり、ラフマニノフの魂と同調するような凄まじいものです。前奏曲が抜粋で半分ほどの曲しか聞けないが残念ですが、こういうCDを聴くとほかのCDが聴けなくなります。
ヴェルデニコフのスクリャービンは静かで美しい演奏。ある意味、上原彩子の今日の演奏とは対極にあるような演奏です。



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       上原彩子,  

上原彩子、衝撃のラフマニノフ@サントリーホール 2016.2.8

今日は浜松国際ピアノアカデミー・第20回開催記念コンサートシリーズ・東京公演と銘打ったコンサートに出かけました。実際の内容はピアノの上原彩子河村尚子、チョ・ソンジンの3人のガラ・コンサートのようなものです。最初に浜松国際ピアノアカデミーを代表して、ピアニストの中村紘子さんのご挨拶がありました。病気休業中と聞いていましたが、お元気なご様子で安心しました。彼女からは今日出演する3人の小さな頃のエピソードが紹介されて、大変興味深く拝聴しました。特に11歳の上原彩子がペダルにも足が届かない状態でショパンの24のプレリュードやバッハのパルティータ6番を弾き切った話には驚きました。天才とはそういうものなのですね。

最初は河村尚子がモーツァルトのピアノ・ソナタ 第12番を弾きます。どう弾くのかと思っていたら、完璧なテクニック、そして、ピュアーな響きでの演奏・・・しかも、実に深い内容の演奏です。あまりの素晴らしさにあっけにとられて聴き入っていました。河村尚子と言えば、前回、素晴らしいプロコフィエフの戦争ソナタを聴き、バリバリのテクニッシャンだと思っていましたが、古典ものを弾かせても、こんなに弾けるんですね。ある意味、無敵のようなピアニストです。ますます、これからが楽しみな人です。現在、saraiが上原彩子に次いで、注目しているピアニストでしたが、それはやはり、間違いではありませんでした。次回は山田和樹指揮バーミンガム市交響楽団と共演するラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を聴きますが、とっても期待できそうです。

次は今回のお目当てだった上原彩子の登場です。ラフマニノフの前奏曲(Op.32-5)とピアノ・ソナタ 第2番を弾きます。彼女のお得意のラフマニノフですから、とても期待していました。予習したのは、ホロヴィッツ(前奏曲とソナタ)とフィオレンティーノ(ソナタだけ)の二人の凄絶とも思える演奏。上原彩子は今日はYAMAHAのピアノを弾きます。それもいいかもしれません。ガンガンと弾くにはいいでしょう。まずは前奏曲ですが、この短い曲を実に静謐に演奏します。高域のタッチの美しい響きに聴き惚れます。なんとも美しい演奏。ホロヴィッツも美しい演奏でしたが、それ以上に雰囲気のある天国的な演奏です。前奏曲の響きも残るまま、ソナタに突入していきます。上原彩子らしい激しいタッチの演奏が始まります。燃え上がる火花のような激情に包まれたダイナミックな演奏です。それは時として静まりはしますが、ふつふつと燃える感情は消えることはありません。下降音型のパッセージに込められたラフマニノフの思いが上原彩子に乗り移ったかのように鬼気迫る演奏が続き、スリリングな第1楽章があっという間に終わり、また、休みなしに第2楽章が始まります。ラフマニノフのやるせない情感の音楽が見事に表現されていきます。情念に満ちた音楽は終盤、燃え盛っていきます。少し抑まったところで、いきなり、激しいタッチで第3楽章が弾き始められます。ラフマニノフの行き所のないようなやるせない感情が爆発していきます。抑まっては強まり、次第に激情にかられて、物凄い高揚感に満ちたフィナーレにはいっていきます。ある意味、暴力的とも思える音楽を超えた音楽。saraiの頭も真っ白になり、思わず、涙が滲んできます。フィナーレでは彼岸に飛ばされてしまいました。何というラフマニノフでしょう。でも、これがラフマニノフの真の音楽だったんですね。初めて理解できたような気がします。己のどうしようもない、やるせない気持ちと格闘し、それをピアノの鍵盤にぶつけたのがラフマニノフだったというのが上原彩子が伝えてくれたものです。音楽を創造するというのは、これほど自己との葛藤を乗り越えていかないといけないものだとは・・・絶句です。
上原彩子の演奏は実に衝撃的でした。彼女のピアノを長く聴いてきましたが、これがこれまでで最高の演奏です。しかし、彼女は上昇を続けていますから、これで終わることはないでしょう。どこまで上り詰めていくのは、恐ろしいような予感もします。

休憩後は注目のチョ・ソンジンの演奏です。昨年のショパン・コンクールを制した話題のピアニストを初めて聴きます。ですが、まだ、先ほどの上原彩子の衝撃的な演奏が頭に残っています。もしかしたら、チョ・ソンジンも聴いてしまったのかもしれません。ショパンのピアノ・ソナタ 第2番を弾き始めた彼の気合も凄いものです。よい演奏なのですが、少し、肩に力が入り過ぎたような感じもあります。微妙にタッチの美しさが損なわれているような感も否めません。ようやく美しい音楽が感じられるようになったのは第3楽章の中間部あたりからです。今日の彼の演奏で、ショパン・コンクールの覇者の実力を判断するわけにはいきませんね。もう一度、ちゃんと聴かせてもらいましょう。

残りのプログラムはお楽しみのプログラムです。モーツァルトの2台のピアノのためのソナタは河村尚子&上原彩子のお二人が楽しそうに演奏しました。名人の二人ですから、素晴らしい演奏ではありますが、まあ、完璧とまではいきませんね。第3楽章では河村尚子が脱線して、トルコ行進曲のフレーズをサービスしてくれたりします。楽しい音楽・・・ただ、それだけではあります。
最後は3人が1台のピアノに並んで、3人連弾です。滅多に聴けない珍しい曲が聴けて、これも楽しかったというところ。それでも、ロマンスはラフマニノフらしさが散りばめられていたのは流石。

ともかく、今日は上原彩子の凄さに圧倒されたコンサートでした。

今日のプログラムは以下です。

 浜松国際ピアノアカデミー 第20回開催記念コンサートシリーズ 東京公演

  ピアノ:上原彩子
  ピアノ:河村尚子
  ピアノ:チョ・ソンジン

  モーツァルト: ピアノ・ソナタ 第12番 ヘ長調 K.332(河村尚子)
  ラフマニノフ: 前奏曲 ト長調 Op.32-5 (上原彩子)
  ラフマニノフ: ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調 Op .36 (上原彩子)
  
   《休憩》

  ショパン: ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調 Op.35 (チョ・ソンジン)
  モーツァルト: 2台のピアノ・ソナタ ニ長調 K.448 (河村尚子&上原彩子)
  ラフマニノフ: 6手のためのワルツとロマンス (河村尚子&上原彩子&チョ・ソンジン)

   《アンコール》 なし

次回の上原彩子はラフマニノフの前奏曲尽くしを聴きます。どんなラフマニノフを聴かせてくれるでしょう。


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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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ありがたいコメント、嬉しいです。マーラーのファンのかたにこそ、読んでいただきたかったので、気持ちを共有できた思いです。自然の中にこそ、マーラーの音楽の本質はあり

04/23 23:45 sarai

マーラーの作品を聴きながら、ブログを読ませていただいています。
読みながら画像を見て、マーラーの過ごした風景に想いを馳せて楽しんでいます。
素敵なブログをありがと

04/23 21:47 

マーラー6番ですか・・・ハンマー打撃は勘弁してほしいものです。あったとしても、3回目の打撃だけは・・・

04/11 18:10 sarai

まさにマーラー6番な状況です笑

04/11 17:51 kico

お互い、残念でしたね。今年でヨーロッパ遠征を終わりにする予定でしたが、悲劇的な状況になりました。天はまだ我に旅を続けよというご託宣を与えたのでしょうか。1年延期

04/11 03:13 sarai

以前にもコメントさせていただいた者です。来ましたね、楽友協会からのメール。私たちはとりあえず1年延期としましたが、どうでしょうね。困っている人が多い中贅沢な悩み

04/11 00:33 kico

お返事ありがとうございます。
本当に!私もレイルジェットや美術館の手配もしているので、祈るような気持ちです。

03/10 19:06 kico
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