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天才、上原彩子の爆演、コバケンのロマンあふれるマンフレッド交響曲・・・ 小林研一郎80歳記念チャイコフスキー交響曲チクルス@サントリーホール 2021.7.13

小林研一郎80歳(傘寿)記念&チャイコフスキー生誕180周年記念チャイコフスキー交響曲全曲チクルスの4回目です。

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このコンサートはようやくコロナ禍を乗り越えて、交響曲全6曲の演奏は前回終えて、今回はピアノ協奏曲とマンフレッド交響曲。エピローグ編のようなものですね。

最初のピアノ協奏曲第1番はロシアものが大得意な上原彩子が物凄い熱演。熱演というよりも爆演ですね。ここまでやるかといういう演奏です。少々のミスタッチは気にせずにどこまで思い切った踏み込みができるというチャレンジャブルな演奏でした。いいとか悪いとかの冷静な評価は意味がないでしょう。日本人演奏家でここまで気魄を前面に出せるのは彼女だけです。ライブ演奏ならでは迫力を楽しめました。
それにしても上原彩子はずい分、弾き込んできたのでしょう。あんな演奏は聴いたことがありません。まるで若い頃のリヒテルみたいです。このレベルでムソルグスキーの《展覧会の絵》の豪快な演奏を聴いてみたいものです。もちろん、この演奏に対して、否定的な意見もあるでしょうが、それは演奏者自身も織り込み済みの上での確信犯的な演奏だったのですから、それは彼女の思う壺です。きっと、小林研一郎80歳(傘寿)記念の贈り物だったのでしょう。アンコールの瞑想曲は極めて美しい演奏。ピアノ協奏曲の対極にあるような演奏でした。天才、上原彩子の懐の深さが窺い知れます。

後半のマンフレッド交響曲はこれこそチャイコフスキーを得意とするコバケンならではの演奏。日フィルの弦楽パートの素晴らしいアンサンブルを使って、壮大なロマンの世界を表現しました。こんな演奏は滅多に聴けません。ここまで情緒あふれるロマンはやり過ぎかもしれませんが、80歳を超えた巨匠なら許されるでしょう。何度も情感あふれる弦楽アンサンブルのパートが繰り返されて、その高潮の果てにパイプオルガンの響きによる救済がもたらされます。圧倒的なフィナーレでした。そして、また、ご丁寧にもその終結部分がアンコールされました。実に行き届いた(過剰な?)サービスでした。

小林研一郎の80歳のチャイコフスキー交響曲チクルスはライブCDが作成されているので、おまけの協奏曲シリーズもライヴCDになるのであれば、これは楽しみです。是非、今日の上原彩子の爆演をCD化してもらいたいものです。もう一度、我が家のリスニングルームでその演奏の詳細を冷静に聴き直してみたいですね。


今日のプログラムは以下です。

  小林研一郎80歳(傘寿)記念&チャイコフスキー生誕180周年記念チャイコフスキー交響曲全曲チクルス

  指揮:小林研一郎 
  ピアノ:上原彩子
  管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団  コンサートマスター:木野 雅之

  チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 Op.23
   《アンコール》チャイコフスキー:瞑想曲 Op.72-5

   《休憩》

  チャイコフスキー:マンフレッド交響曲 Op.58

   《アンコール》
    チャイコフスキー:マンフレッド交響曲 から 第4楽章の終結部分(パイプオルガンが奏でられるところから)

最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番は以下のCDを聴きました。

 ニコライ・ルガンスキー、ケント・ナガノ指揮ロシア・ナショナル管弦楽団 2003年2月 セッション録音

若きルガンスキーの熱演。


2曲目のチャイコフスキーのマンフレッド交響曲は以下のCDを聴きました。

 セミョン・ビシュコフ指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 2017年4月24-27日 プラハ、ルドルフィヌム セッション録音
 
セミョン・ビシュコフは2016年からのチャイコフスキー・プロジェクトの1枚です。高水準の演奏と言えます。



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       上原彩子,  

鬼神のごとき、上原彩子のパガニーニ狂詩曲は音楽の極致! 尾高忠明&東京フィルハーモニー交響楽団@サントリーホール 2021.6.18

上原彩子の物凄い演奏に圧倒されました。こういうピアノ演奏を聴いてしまうと、もう誰の演奏を聴いても満足できなくなりそうです。それにラフマニノフは上原彩子に似合います。

上原彩子の弾くラフマニノフのピアノ協奏曲第3番は何度か聴いて、その素晴らしさに感動しました。そして、いずれの日か、きっと、《パガニーニの主題による狂詩曲》を聴かせてもらいたいと願っていました。今日、その夢が叶いました。期待を裏切らない、それどころか、こんな演奏は想像すらできないような圧倒的な演奏でした。ピアノはテクニックや音楽性も重要ですが、それ以上に一番大事なのは、魂の燃焼であることをまざまざと教えられました。こんなに凄い気魄で、恐ろしいほどに集中して演奏するピアニストはほかに知りません。彼女のどこから、こんなに凄いエネルギーが湧き出すのでしょう。彼女の弾く《パガニーニの主題による狂詩曲》はどのフレーズをとってみても実に新鮮で、まさに一期一会を思わせるような、今日、一度だけの演奏で、2度は聴けないと感じさせる即興性に満ちたものでした。すべてが魅惑的でしたが、やはり、第18変奏の美しさといったら、卒倒してしまいそうな美の極致です。ラフマニノフ自身でさえも、こんなに弾けたんでしょうか(古い録音を再度、チェックしてみましょう)。メロディーがオーケストラに移っても、上原彩子の弾くピアノの分散和音だけが耳に入ってきます。強烈に叩き上げるピアノの音の迫力に感動します。最後にもう一度、ピアノでメロディーを回帰して、第18変奏を終えます。ふーっと息が抜ける思いです。ここからはさらに上原彩子はギアーを上げて、超絶技巧を連発しますが、そのピアノの響きの凄さを上回るような彼女の気魄のほうに圧倒され、感動します。オーケストラと完璧にシンクロしていますが、聴こえるのはピアノの響きのみ。強烈に音楽が高潮していき、それは留まるところがありません。その頂点で、さっと、音楽が終わります。ここ数年で最高の音楽を聴きました。聴いたのは音楽だったのか、上原彩子の魂の燃焼と気魄だったのか、さだかではありません。音楽というのは音の響きを通じて、人間の魂の叫びを感じ、心と心がつながるものだということを深く心に刻みました。なんとも凄い演奏でした。

そうそう、アンコールはもちろん、ラフマニノフ。それもプレリュードです。最高に美しい音楽を聴かせてくれました。上原彩子のラフマニノフはきらきら光る宝石のように輝きます。これ以上の音楽はありません。

こういう演奏を聴いてしまうと、後半のラフマニノフの交響曲第2番の素晴らしい演奏を聴いても、どこか物足りなさを感じてしまいます。今日の東フィルのアンサンブルは尾高忠明が見事に磨き上げていましたが、音楽以上の何かを聴いてしまった後では、もうひとつにしか感じませんでした。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:尾高忠明
  ピアノ:上原彩子
  管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団  コンサートマスター:近藤薫

  ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 Op.43

   《アンコール》 ラフマニノフ:《10の前奏曲》Op.23より 第4番

   《休憩》

  ラフマニノフ:交響曲第2番 ホ短調 Op.27


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のラフマニノフの《パガニーニの主題による狂詩曲》を予習したCDは以下です。

 ヴァレンティーナ・リシッツァ、マイケル・フランシス指揮ロンドン交響楽団 2010年3月8日 ロンドン、アビー・ロード・スタジオ、スタジオ1 セッション録音

ヴァレンティーナ・リシッツァの驚異的なラフマニノフ全集(ピアノとオーケストラ)は凄いとしか言えません。チャイコフスキー全集ともども、素晴らしいものです。日本でも聴かせてもらいたいものです。ヒラリー・ハーンの伴奏で来日したときには、こんな凄いピアニストとは認識できませんでした。


2曲目のラフマニノフの交響曲第2番を予習したCDは以下です。

 アンドレ・プレヴィン指揮ロンドン交響楽団 1973年1月 セッション録音

プレヴィンはこの曲を得意にしていて、これは2回目の録音です。素晴らしい演奏です。その美しさにうっとりしてしまいます。



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       上原彩子,  

上原彩子の熱いシューマン、秋山和慶の爽やかなシューマン 新日フィル・オール・シューマン・プログラム@すみだトリフォニーホール 2020.10.30

今日は新日フィルのオール・シューマン・プログラム。なかでも上原彩子が弾くシューマンのピアノ協奏曲が注目されます。ロシアものからレパートリーを広げてきた上原彩子がドイツのロマン派の中核をなすシューマンに挑戦します。

前半、まずは劇音楽『マンフレッド』の序曲です。新日フィルの美しい弦パートはシューマンのロマンに満ちた名作に向いた響きです。爽やかな演奏で魅了してくれました。
次いで、上原彩子が弾くピアノ協奏曲。冒頭、ちょっと力が入り過ぎた感がありますが、すぐに修正します。第1楽章、第2楽章はまあまあの出来でしょうか。彼女が真骨頂を発揮し始めたのは第3楽章の中盤からです。細かいパッセージを切れの良いタッチで見事に演奏し、次第に音楽が高潮していきます。ヴィルトゥオーソ的にスケールが大きく、力強い演奏で熱く燃え上がっていきます。高い集中力を発揮する演奏は彼女の持ち味です。フィナーレは熱いシューマンでした。まだまだ、課題は残すものの及第点のシューマンだったでしょう。
アンコールで弾いたトロイメライはとても丁寧に心を込めた演奏でしみじみと聴かせてもらいました。先日も《子供の情景》を聴いたばかりでしたが、今日は格別の演奏でした。

後半は交響曲第3番「ライン」。これは素晴らしい演奏でした。秋山和慶の若々しく爽やかな表現を志向する指揮で、新日フィルの弦楽パートの美しいアンサンブルが憧れに満ちたシューマンの名作を歌い上げます。とりわけ、第4楽章は素晴らしい演奏です。ケルンの大聖堂にインスピレーションを得て、シューマンが作曲したと言われますが、そういう重厚さよりも、哀愁に満ちた音楽が心を打ちます。シューマンが晩年に作り上げた音楽はその後の彼の悲劇を予感するものでもあります。狂気こそ感じられませんが、滅びの美しさを秘めた美しい音楽が魂を揺さぶります。最後の第5楽章はそれを振り払うように祝典的に勢いよく盛り上がり、シューマンの実質的に最後の交響曲をパーフェクトに演奏し切りました。これぞシューマンという素晴らしい演奏でした。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:秋山和慶
  ピアノ:上原彩子
  管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団  コンサートマスター:崔文洙

  シューマン:劇音楽『マンフレッド』序曲 Op.115
  シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調 Op.54

   《休憩》

  シューマン:交響曲第3番 変ホ長調 Op.97「ライン」


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のシューマンの『マンフレッド』序曲は以下のCDを聴きました。

 ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団 1978年9月27-30日 ミュンヘン、ヘルクレスザール セッション録音
 
クーベリックのシューマンはいいですね。saraiに初めて、シューマンのオーケストラ作品のよさを教えてくれたのがクーベリック指揮バイエルン放送交響楽団です。


2曲目のシューマンのピアノ協奏曲は以下のCDを聴きました。

 スヴャトスラフ・リヒテル、リッカルド・ムーティ指揮ウィーン・フィル 1972年8月17日 ザルツブルク音楽祭、祝祭大劇場 ライヴ録音
 
期待して聴きましたが、期待以上の演奏ではありません。もちろん、水準以上の演奏だし、第3楽章は素晴らしいです。この曲は演奏が難しく、なかなか、これというものがありません。結局、古いリパッティやハスキルの演奏に行きつきます。


3曲目のシューマンの交響曲第3番「ライン」は以下のCDを聴きました。

 ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮シュターツカペレ・ドレスデン 1972年9月1-12日 ドレスデン、ルカ教会 セッション録音

シュターツカペレ・ドレスデンらしい明快な響きの演奏。サヴァリッシュも手堅い指揮。



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       上原彩子,  

期待を上回るシューマン、完璧なラフマニノフ 上原彩子 ピアノ・リサイタル@横浜上大岡ひまわりの郷ホール 2020.10.18

以前、のめりこんでいた上原彩子。その演奏の中心はロシアもの。中でもラフマニノフは素晴らしかった。一方、ドイツ・オーストリアものはいつも失望させられました。今年、久しぶりにピアノ・リサイタルに行ってみると、何と何と、モーツァルトを完全に弾きこなしていました。肩の力の抜けた美しい響きの演奏でした。で、また、上原彩子を聴いてみる気になりました。

今日はシューマンとラフマニノフ。もちろん、シューマンをどう弾くのかが期待半分、不安半分で、一番の関心事でした。ラフマニノフはどう転んでも凄い演奏をすることは分かっていました。結果、やはり、天才気質の上原彩子は凄いシューマンを聴かせてくれました。とりわけ、クライスレリアーナは上原彩子のためにシューマンが作曲してくれた感のあるような、最高の演奏。今年は聴ける筈だった田部京子のクライスレリアーナがコロナのためにコンサート・キャンセルで聴けずに残念に思っていましたが、こういうクライスレリアーナは田部京子も弾けないでしょう。田部京子はもっと詩情に満ちた演奏になるでしょうが、上原彩子は実に奔放な演奏です。特に激しいパッセージの切れのある演奏にはすっかり魅了されました。むらのある演奏で完璧とは言えませんが、それが逆に上原彩子の天才的な美質を示しているとも言えます。演奏中の恐ろしいほどの集中力には恐れ入りました。不意に最近、再放送で見た《のだめカンタービレ》を思い出しました。まるで、のだめちゃんのような演奏です。低音部をガンガン響かせるところも新鮮で、昔レコードで若いころのアルゲリッチの演奏でこのクライスレリアーナに魅了されたことも思い出しました。間違いなく、saraiが実演で聴いた最高のクライスレリアーナです。ずっとこんな演奏を聴きたかったのですが、まさか、上原彩子が聴かせてくれるとは想像だにしていませんでした。今でも脳裏に上原彩子のクライスレリアーナの激しさと抒情の交錯する響きがこだましています。
最初に弾いた《子供の情景》もクライスレリアーナほどではありませんでしたが、十分に楽しんで聴けるシューマンでした。肩の力の抜けた優しいタッチは以前の上原彩子では想像できなかった音楽です。もちろん、優しくて子供向けというレベルの演奏ではなく、シューマンのロマンに満ちた音楽に仕上がっていました。ただ、上原彩子にはクライスレリアーナのほうが向いていました。今度はシューマンのピアノ協奏曲を聴く予定です。よい演奏が期待できそうです。どんどん、シューマンにチャレンジしてもらいましょう。

後半のラフマニノフの《ショパンの主題による変奏曲》は何も言うことはありません。ただただ、完璧な演奏でした。どこかのレコード会社がラフマニノフのピアノ独奏曲の全曲録音を企画してほしいものです。フィオレンティーノがライヴで一気に独奏曲を全曲弾いた素晴らしい全集がCD6枚組で出ていますから、上原彩子も同じようなチャレンジしてくれないかな。

このsaraiの地元の小さなホールで上原彩子のピアノを聴くのが夢でしたが、コロナ禍という状況下で遂に実現し、嬉しくて、嬉しくて・・・。主催者・プロデューサーの平井さんに感謝してもしきれません。長年、要望していたことです。もちろん、最前列の中央で上原彩子のピアノの響きすべてを子細に聴かせてもらいました。残りの夢はここで庄司紗矢香を聴くことだけです。


今日のプログラムは以下です。


  シューマン:子供の情景 Op.15
  シューマン:クライスレリアーナ Op.16

   《休憩》

  ラフマニノフ:ショパンの主題による変奏曲 Op.22

   《アンコール》

    シューマン(リスト編曲):献呈(君に捧ぐ)~歌曲集『ミルテの花』の第1曲
    ラフマニノフ:前奏曲 Op.32-12 嬰ト短調


最後に予習について、まとめておきます。以下のCDを聴きました。

1曲目のシューマンの《子供の情景》は以下のCDを聴きました。

 伊藤恵:シューマニアーナ5 1993年9月8-10日 田園ホール・エローラ(松伏町中央公民館) セッション録音
 
伊藤恵のシューマン全曲録音からの1曲です。バランスのよい演奏です。


2曲目のシューマンのクライスレリアーナは以下のCDを聴きました。

 伊藤恵 2014年1月6-8日 北上市文化交流センター さくらホール セッション録音
 
伊藤恵のシューマン全曲録音の最初の録音がこのクライスレリアーナでした。これは新録音。実に27年ぶりの録音です。聴いたこともないような明解な分析的ともいえる演奏。正直、saraiが思い浮かべるクライスレリアーナではありませんが、刺激を受けた演奏でもありました。ところでこのCDで伊藤恵が弾いているピアノはファツィオリです。何とね。


3曲目のラフマニノフの《ショパンの主題による変奏曲》は以下のCDを聴きました。

 ダニール・トリフォノフ 2015年3月 ニューヨーク セッション録音
 
こういう難曲では、トリフォノフの素晴らしいテクニックが光ります。彼もこれから注目すべきピアニストです。



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       上原彩子,  

自然なモーツァルトに衝撃! 上原彩子ピアノ・リサイタル@東京オペラシティ コンサートホール 2020.3.25

上原彩子にはまっていたsaraiもここ3年半ほど、彼女の演奏から遠ざかっていました。それは彼女の演奏がラフマニノフ、チャイコフスキーなどのロシアものがあれほど素晴らしいのに、モーツァルト、ベートーヴェンなどのドイツ・オーストリアなどの古典音楽~ロマン派があまりにも不満だらけで、それを聴くのが怖くなって、コンサートに行ってなかったんです。まさか、久しぶりに聴くコンサートがウイルスが蔓延する異常な状況下で開かれるとは・・・絶句です。今日のコンサートは、期待というよりも不安だらけというのが正直なところです。

1曲目はモーツァルトのキラキラ星変奏曲・・・いきなり、モーツァルトです。大丈夫でしょうか。えっ、これって、ちゃんとモーツァルトの響き、音楽になっています。こんな上原彩子、ここ10年以上、聴いてきましたが、初めてです。今まで響かせ過ぎだった演奏はすっかり、スタイルが変わって、saraiが理想とするモーツァルトの音楽になっています。ピュアーな響きも美しいし、音階もスムーズです。肩の力が抜けたというか、無理のない自然なモーツァルトです。だからと言って、くぐもった響きではなく、ピーンと立った響きが明快に聴こえてきます。単調な演奏ではなく、活き活きとした音楽が適度な緊張感のもとで聴こえてきます。この3年半の間に何か劇的な変化があったようです。鍵盤の上を走る手を見ても無理のない運指が見てとれます。手はほとんど鍵盤に張り付いたままで10本の指だけがハンマーのように鍵盤を叩いて、美しく純粋な音色を奏でています。その響きは品格の高さすら感じます。この曲は結構長いのですが、終始、楽しく、心躍らせながら、聴き入りました。素晴らしい演奏でした。遂に上原彩子がモーツァルトを弾きこなしました。クララ・ハスキルの気品の高い演奏とまではいかないにしても、モーツァルト弾きのピアニストと言っても過言ではありません。上原彩子のファンとしては嬉しいばかりです。

2曲目はチャイコフスキーの創作主題と変奏。ぱっとモーツァルトとは弾き方を変えます。上原彩子のお得意のチャイコフスキーですから、安心して聴けます。ダイナミックな素晴らしい演奏です。遂に上原彩子は作曲家によって、スタイルを変えて、弾き分けるようになったんですね。さらに次のチャイコフスキーの「四季」からの2曲はテクニックではなく、音楽性で聴かせてくれます。ロシアの憂鬱感を表出した素晴らしい演奏です。特に 3月「ひばりの歌」の暗い情感に魅了されました。

前半最後はまた、モーツァルト。これも問題ありません。すっかりとモーツァルトの様式感をマスターしたようです。非凡と言ってもよい素晴らしい演奏です。何と言っても、その響きの美しさが最高です。緩徐楽章での抒情味あふれる演奏も素晴らしいし、終楽章の素早いパッセージの技巧も見事。モーツァルトらしさを表出しただけでなく、やはり、上原彩子が弾く音楽としての輝きも感じる演奏です。もう、完全にモーツァルトを征服したようです。どの曲を弾かせても素晴らしい演奏をすることは予想できます。

後半のプログラムのモーツァルトも万全の演奏でした。ですが、圧巻だったのは最後のチャイコフスキーのグランド・ソナタ。この難曲、大曲を熱く燃え上がるようにバリバリと歌い上げました。素晴らしかったのは両端楽章です。超絶的な演奏で圧倒されるのみ。これ以上の演奏は望めないというレベルです。モーツァルトもよかったけど、やっぱり、上原彩子の弾くチャイコフスキーは凄過ぎ!

また、saraiが大好きだった上原彩子がレベルアップして、戻ってきてくれました。また、これからは安心して、聴きまくります。


今日のプログラムは以下です。

  モーツァルト:キラキラ星変奏曲 ハ長調 K. 265
  チャイコフスキー:創作主題と変奏 ヘ長調 Op. 19-6
  チャイコフスキー:「四季」 Op. 37bisより 3月「ひばりの歌」、6月「舟歌」
  モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第12番 ヘ長調 K. 332 

   《休憩》

  モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第4番 変ホ長調 K. 282
  チャイコフスキー:グランド・ソナタ ト長調 Op. 37

   《アンコール》

    チャイコフスキー/上原彩子編曲:6つの歌曲Op.6より第5曲「なぜ」
    モーツァルト:ピアノ・ソナタ第11番 イ長調K.331「トルコ行進曲つき」第1楽章
    チャイコフスキー:18の小品 Op.72より第14曲「悲しい歌」


最後に予習について、まとめておきます。以下のCDを聴きました。

まず、モーツァルトはアンドラーシュ・シフの21枚組のモーツァルト・アルバムを聴きました。

 アンドラーシュ・シフ/モーツァルト録音集(21CD) 1980-94年

シフの若い頃の録音ですが、素晴らしく美しい響きです。どの曲も手抜きのない丁寧な演奏で魅了されます。このレベルの演奏ならば、再録音の必要はありません。

チャイコフスキーは以下の超ど級アルバムです。

 ヴァレンティーナ・リシッツァ チャイコフスキー・ソロ・ピアノ作品全集(10CD) 2017年12月~2018年4月 ウィーン

若くてめきめきと頭角を現してきたウクライナ出身の女性ピアニスト、ヴァレンティーナ・リシッツァが何とも驚くべきアルバムを作り上げました。その超絶的なテクニックと音楽性で、チャイコフスキーのピアノ作品を網羅してくれました。チャイコフスキー好きにはたまらないアルバムです。グランド・ソナタは何とも凄まじい演奏です。



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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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えりちゃさん、お久しぶりです。saraiです。

なかなか、海外渡航の見通し、立ちませんね。来年あたりはどうでしょうね。長期戦覚悟で我慢するしかありませんね。

こちら

04/10 02:37 sarai

saraiさま、
お久しぶりです!
お元気にコンサートや旅行を楽しんでおられますね!
ブログ、楽しく拝見しています。おフランス、良いね😊
私は春だというのに、仕事と用事以

04/09 05:29 えりちや

気になってたずねても 
誰にも知らんと言われなんやろ
と思いつづけて居ました❗
写真みつけてこれだと思いました❕スッとしました
教えて下さって嬉しいです
ありがとうご

02/13 22:26 みーちゃん

みーちゃんさん、saraiです。

あの謎の建物は雄琴沖総合自動観測所という施設で琵琶湖の水質を測定しているそうです。

https://www.water.go.jp/kansai/biwako/html/repo

02/13 21:40 sarai

ずーと前にうきみどうに行きました
やはり、琵琶湖の真ん中の建物が何なのか気になったままです
分かりましたか
教えてください

02/13 20:54 みーちゃん

五十棲郁子さん、コメントありがとうございます。

水道水のこと、tap waterって言うんですね。知らなかった。単にwaterで通していました。ましてや、フランス語はほとんど

02/11 00:12 sarai

フランスも地方へ行くと英語が通じないでしょう。tap water ぐらいフランス語で言えないとね。

02/10 12:54 五十棲郁子
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