前半が上原彩子が弾くラフマニノフのパガニーニの主題による狂詩曲。saraiと配偶者の席は左側の前方の席。上原彩子がピアノを弾く後ろ姿を眺める感じですが、指が鍵盤の上を動きまわる様はよく見えます。演奏は第1変奏から淡々と平穏に進んでいきます。なかなか切れのよいタッチですが、上原彩子ならば、当然のこと。東響の弦の響きも冴え渡ります。第10変奏のグレゴリオ聖歌の「怒りの日」の旋律が登場するあたりから、音楽は徐々にヒートアップしていきます。そして、いよいよ、有名な第18変奏にはいります。まず、ピアノ独奏であの甘美な旋律(パガニーニの主題の反行形(上下を反対にした形))が奏でられます。上原彩子の抒情味を帯びたクリアーな音色の演奏の美しいこと、この上なし。うっとりと魅了されながら聴き惚れます。そして、その甘美な旋律がオーケストラに受け継がれ、東響の弦が美しく演奏します。そして、ピアノが分散和音的に修飾していきます。saraiの耳には上原彩子のピアノの響きだけが聴こえてきて、そのピアノの響きをオーケストラが修飾しているように感じます。いやはや、素晴らしい! うっとりしているうちに第18変奏も終盤にはいり、ピアノの独奏が甘美な旋律を回想します。第19変奏以降はピアノの超絶技巧が炸裂しまくり、圧倒的です。鍵盤の上を動き回る上原彩子の手のかっこよさにもしびれます。第23変奏で主題が明快に回帰して圧倒的な音楽の高まりになり、最後の第24変奏ではオーケストラが強烈に「怒りの日」を演奏した後、独奏ピアノが主題をさりげなく弾いて、おしゃれに音楽を閉じます。うーん、今日も上原彩子のピアノは凄かった!! 魂の燃え上がる燃焼度の高い演奏に加えて、クリアーなピアノの響きと抒情味のある音楽表現・・・言うことがありません。東響の弦と木管の美しさも華を添えました。
後半のエルガーの交響曲第2番は大友直人の素晴らしい指揮のもと、東響の素晴らしいアンサンブルが美しい響きで魅了してくれました。第4楽章の後半、東響の素晴らしい響きが盛り上がり、その後、静謐に曲が終わります。早過ぎる拍手で一気に楽興をそがれましたが、それがなければ、とてもよいイギリス音楽が聴けました。音楽は演奏家と聴衆が作り出すものですが、今日はそれが裏目に出ましたね。エルガーはよくも悪くもイギリス音楽の真髄を抉り出した作品を作ったことが感じられました。まさにBBCプロムスの世界そのものです。
今日のプログラムは以下です。
指揮:大友直人(東京交響楽団 名誉客演指揮者)
ピアノ:上原彩子
管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:小林壱成
ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 Op. 43
《アンコール》 ラフマニノフ:前奏曲集 Op.23-2
《休憩》
エルガー:交響曲第2番 変ホ長調 Op. 63
最後に予習について、まとめておきます。
1曲目のラフマニノフのパガニーニの主題による狂詩曲を予習したCDは以下です。
アンドレイ・ガヴリーロフ、リッカルド・ムーティ指揮フィラデルフィア管弦楽団 1989年4&5月 セッション録音
ユジャ・ワン、クラウディオ・アバド指揮マーラー室内管弦楽団 2010年4月 フェラーラ,テアトロ・コムナーレ セッション録音
ガヴリーロフは昔はテクニックは凄かったですが、実に端正な演奏をしていました。今なら思いっ切り、したい放題の演奏をするでしょう。そこがもう一つ、物足りません。
ユジャ・ワンは凄い演奏です。テクニック抜群で音も美しいです。そして、煌めくような音楽表現に魅了されます。アバド指揮のマーラー室内管とのバランスも見事です。これ以上の演奏はないでしょう。
2曲目のエルガーの交響曲第2番を予習したCDは以下です。
アンドレ・プレヴィン指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 1992年 アムステルダム、コンセルトヘボウ ライヴ録音
大変、美しい演奏です。
↓ saraiのブログを応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね
いいね!