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上原彩子はリストのロ短調ソナタでも魂の燃焼、デビュー20年の軌跡を実感@日経ホール 2022.5.11

天才、上原彩子のデビュー20周年記念のピアノリサイタル、2月のデビュー20周年記念のコンチェルト編に続くものです。あのラフマニノフとチャイコフスキーのコンチェルトは凄かった!! 今日の独奏はお得意のロシアものはムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」1曲に絞り、シューマンとリストというピアノの王道をいく作品を選んで勝負しました。その比類ない演奏を聴いて、彼女はこの20年間で如何にその才能に磨きをかけてきたか、しっかりと実感できました。彼女はこの間、もがき苦しみ、成長と挫折の過程を乗り越えてきたように思えます。saraiが15年間、聴き続けてきた率直な感想です。今日のシューマンとリスト、そして、アンコールで弾いたモーツァルトで彼女は鉄壁のピアニストに飛躍したことを確信しました。

さて、まずはシューマンです。最近聴いたクライスレリアーナが素晴らしかったので、期待して聴きます。幻想小曲集 Op.12はシューマンの他の作品に比べて、それほどコンサートでとりあげられない曲目ですが、あえて、記念リサイタルでこの曲を弾くのですから、相当の思いがあるのでしょう。第1曲の《夕べに》はそっと、そっと、思いを沈潜させて弾いていきます。夢見るシューマン・・・心惹かれる演奏です。その後の曲もシューマンらしく、曲想を大きく変えながら、見事に弾いていきます。シューマンの根幹にあるロマンをしっかりと表現して、無類の演奏です。シューマン好きのsaraiも納得の演奏。クライスレリアーナも素晴らしい演奏でしたが、さらにシューマンを磨き上げた演奏です。

次は大曲、リストのピアノ・ソナタ ロ短調。うーん、何とも素晴らしい演奏でした。これが聴衆の前で初めて弾いたとは信じられません(正確には広島で弾いたようですが・・・)。完璧なテクニックはもちろんですが、上原彩子らしい魂の燃焼を重ねた演奏には絶句するしかありません。重量感のある低音、輝きに満ちた高音。ピアノの響きの魅力をたっぷりと聴かせてくれた上に熱い音楽的高揚とくれば、これ以上のものはありません。凄まじいリストでした。

後半はお手の物のムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」。当たり前のように素晴らしい演奏。終曲の《キーウの大門》(キエフの大門ではありませんよ)の凄さには脱帽です。

アンコールのチャイコフスキーは心に沁み入る演奏。やはり、ロシアものは最高です。そして、鳴りやまぬ拍手に応えて、最後はモーツァルトのソナタ。素晴らしい演奏です。昔はあんなにモーツァルトが弾けなかったのに、今やモーツァルト弾きのような自在な演奏です。記念コンサートで一番得意のラフマニノフを封印したとは驚きでした。次は封印を解いて、ラフマニノフを聴かせてくださいね。


今日のプログラムは以下です。


 上原彩子デビュー20周年記念ピアノ・リサイタル

  ピアノ:上原彩子

  シューマン:幻想小曲集 Op.12
   1 夕べに、2 飛翔、3 なぜ、4 気まぐれ、5 夜に、6 寓話、7 夢のもつれ、8 歌の終わり

  リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調 S. 178 / R. 21

   《休憩》

  ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」

   《アンコール》
     チャイコフスキー:ロマンス へ短調 Op.5
     モーツァルト:ピアノソナタ ハ長調 K.330 から 第1楽章


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のシューマンの幻想小曲集を予習したCDは以下です。

 伊藤恵 シューマニアーナ1 1987年11月10-12日、鹿嶋勤労文化会館 セッション録音

伊藤恵のシューマン作品を網羅したシューマニアーナシリーズはほぼ20年かけて、全13枚のCDで完結しました。その冒頭を飾る記念碑的CDで、実に完成度の高い演奏を聴かせてくれます。


2曲目のリストのピアノ・ソナタ ロ短調を予習したCDは以下です。

 イリーナ・メジューエワ リスト作品集 2011年4月、6月、9月 新川文化ホール(富山県魚津市) セッション録音

メジューエワは唖然とするほど、繊細かつスケールの大きな演奏を聴かせてくれます。その響きの美しさは録音の素晴らしさも相俟って、凄い!


3曲目のムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」を予習したCDは以下です。

 イリーナ・メジューエワ りゅーとぴあライヴ2016 2016年12月3日、りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館コンサートホール ライヴ録音

メジューエワらしいスケールの大きな力強さは並外れた演奏を聴かせてくれます。



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       上原彩子,  

魂を燃え尽くす上原彩子の究極のラフマニノフとチャイコフスキー 原田慶太楼&日本フィルハーモニー交響楽団@サントリーホール 2022.2.27

天才、上原彩子の比類ない演奏を聴いて、彼女は天才ではなく、超天才であると確信しました。努力だけでは達することのできない領域に足を踏み入れています。

今日は上原彩子のデビュー20周年の記念コンサート。ずっと彼女の応援をしてきた(物理的な意味ではなく精神的にね)saraiも感慨深いものがあります。初めて上原彩子の演奏を聴いたのが、ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番。日本人でこんなにラフマニノフが弾けるのかと驚愕して、ほぼ15年聴いてきました。彼女の成長も挫折も聴いてきました。彼女は今、安定して飛躍のときを迎えています。さあ、今日はどんな演奏を聴かせてくれるでしょうか。

冒頭は上原彩子の演奏に先立って、オーケストラの指慣らし。指揮者の原田慶太楼が指揮台に駆け上がり、拍手の静まるのも待たずにグリンカの歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲の演奏を始めます。これが凄い演奏。失礼ながら、これが日本フィルとはにわかに信じがたい鉄壁のアンサンブル。そして、原田慶太楼の指揮が凄い。圧倒的な演奏に口あんぐり状態でした。よほど、入念にリハーサルを重ねたんでしょうね。

さて、いよいよ、今日の主役、上原彩子が登場し、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番。上原彩子の弾くラフマニノフのピアノ協奏曲第3番は何度か聴いて、その素晴らしさに感動しました。そして、いずれの日か、きっと、《パガニーニの主題による狂詩曲》やピアノ協奏曲第2番を聴かせてもらいたいと願っていました。《パガニーニの主題による狂詩曲》は昨年、ようやく聴かせてもらいました。最高の演奏でした。そして、今日、遂にピアノ協奏曲第2番です。そもそも、上原彩子はラフマニノフのスペシャリストと言ってもいいほど、協奏曲も独奏曲も素晴らしい演奏を聴かせてくれます。その根幹は熱い魂の燃焼です。ラフマニノフの何たるかのかなりの部分は彼女の演奏で教えられました。以前は特に独奏曲はどこがよいのか分からずにsaraiにとっては苦手だったんです。今やラフマニノフはsaraiの大好物です。
ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番はsaraiが高校生あたりで親しんでいた曲。映画音楽として、特に第3楽章を好んでいました。それ以降は第2番を聴くことは稀になり、もっぱら、第3番を聴いていました。何故か、ピアノの名手たちの録音も第3番に集中しています。今日の演奏を聴いて、第2番の素晴らしさをまた、上原彩子に教えられました。親しみやすいパートの盛り上がりだけでなく、難解そうなパートもすべて、超絶的なテクニックと音楽を超えた魂の燃焼で圧倒的にsaraiの心に迫ってきます。ピアノの分散和音に乗って、オーケストラが抒情的なメロディーを演奏し、興を高めた後にピアノがそのメロディーを引き継ぐところの素晴らしい雰囲気、そして、ピアノとオーケストラが真っ向からぶつかり合う圧倒的な高まり、ピアノが素早い動きのパッセージで官能的な音楽を演出する見事さ、挙げていけばきりのない様々なパートでの上原彩子の傑出したピアノ演奏に感動するのみでした。そして、その超絶的なピアノ演奏をサポートする原田慶太楼の丁寧極まりないオーケストラコントロールにも脱帽です。第3楽章の終盤のピアノとオーケストラの盛り上がりは身震いするほどの凄まじさでした。あらゆる意味で究極のラフマニノフでした。もっと言えば、ラフマニノフの音楽を土台にした上原彩子の魂の声に指揮者もオーケストラもそして、もちろん、聴衆も共鳴して、コンサートホールはひとつの有機生命体に融合した思いに駆られました。saraiはこんな音楽が聴きたかったんだと今更ながら、実感しました。音楽は耳で聴くのではなく、心の深いところで感じるものです。そして、孤独な魂が思いをひとつにして、心と心がつがって、あらゆる閾を取り払って、すべてを共有すること。saraiが理想とする音楽がここに実現した思いです。少し感傷的になり過ぎましたが、そう思わせるような上原彩子のメッセージを受け取りました。

次のチャイコフスキーのピアノ協奏曲も冒頭からスケールの大きな音楽を上原彩子は発します。ラフマニノフ以上に隅々まで熟知した音楽ですが、上原彩子のチャイコフスキーはやはり、熱く燃え上がります。音楽自体よりも魂の燃焼を感じる気配です。昨年、小林研一郎80歳(傘寿)記念&チャイコフスキー生誕180周年記念チャイコフスキー交響曲全曲チクルスで上原彩子の演奏を聴いたばかりで、あのときの演奏も凄かったのですが、今日はもっとバランスのよい演奏に思えます。暴走せずに節度のある魂の燃焼という風情です。それに自在にピアノを弾きまくる上原彩子を原田慶太楼が巧みに支えつつ、さらにエネルギーを付加していくという離れ業をやってのけています。フィナーレではとてつもないエネルギーの爆発という形で圧巻の音楽が完結しました。いやはや、ラフマニノフとチャイコフスキーの凄い演奏の2連発。上原彩子も疲れたでしょうが、聴く側も体力を使い果たしました。ぼーっとしている時間は1秒たりもありませんでしたからね。

アンコールはコバケンのときと同じ曲、チャイコフスキーの「瞑想曲」です。美しい演奏に疲れた心が癒されました。

今年はまだ2月ですが、これが今年最高のコンサートになることは決まったも同然です。というか、saraiの人生でもここまで素晴らしいコンサートは何回聴いたでしょう。一生、心に残るコンサートです。


今日のプログラムは以下です。


 上原彩子デビュー20周年 2大協奏曲を弾く!

  指揮:原田慶太楼
  ピアノ:上原彩子
  管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団 コンサートマスター:田野倉 雅秋

  グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
  ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 Op.18

   《休憩》

  チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 Op.23

   《アンコール》チャイコフスキー:『18の小品』より「瞑想曲」Op.72-5 ニ長調


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のグリンカの歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲を予習したCDは以下です。

 エウゲニ・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィル 1965年2月23日 ライヴ録音

この曲だけは、ムラヴィンスキーとレニングラード・フィルのコンビで聴くしかないですね。完璧とはこのためにある言葉かと思ってしまいます。


2曲目のラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を予習したCDは以下です。

 スヴャトスラフ・リヒテル、スタニスラフ・ヴィスロツキ指揮ワルシャワ・フィル 1959年 セッション録音

リヒテルの剛腕、あるいは爆演が聴けるかと思っていたら、意外に冷静な演奏で素晴らしいラフマニノフを聴かせてくれます。


3曲目のチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を予習したCDは以下です。

 マルタ・アルゲリッチ、クラウディオ・アバド指揮ベルリン・フィル 1994年12月8-10日 ベルリン、フィルハーモニー ライヴ録音

チャイコフスキーを得意にするアルゲリッチの真打ちとも言える演奏です。やはり、ライヴの緊張感がいいですね。



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       上原彩子,  

天才、上原彩子の爆演、コバケンのロマンあふれるマンフレッド交響曲・・・ 小林研一郎80歳記念チャイコフスキー交響曲チクルス@サントリーホール 2021.7.13

小林研一郎80歳(傘寿)記念&チャイコフスキー生誕180周年記念チャイコフスキー交響曲全曲チクルスの4回目です。

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このコンサートはようやくコロナ禍を乗り越えて、交響曲全6曲の演奏は前回終えて、今回はピアノ協奏曲とマンフレッド交響曲。エピローグ編のようなものですね。

最初のピアノ協奏曲第1番はロシアものが大得意な上原彩子が物凄い熱演。熱演というよりも爆演ですね。ここまでやるかといういう演奏です。少々のミスタッチは気にせずにどこまで思い切った踏み込みができるというチャレンジャブルな演奏でした。いいとか悪いとかの冷静な評価は意味がないでしょう。日本人演奏家でここまで気魄を前面に出せるのは彼女だけです。ライブ演奏ならでは迫力を楽しめました。
それにしても上原彩子はずい分、弾き込んできたのでしょう。あんな演奏は聴いたことがありません。まるで若い頃のリヒテルみたいです。このレベルでムソルグスキーの《展覧会の絵》の豪快な演奏を聴いてみたいものです。もちろん、この演奏に対して、否定的な意見もあるでしょうが、それは演奏者自身も織り込み済みの上での確信犯的な演奏だったのですから、それは彼女の思う壺です。きっと、小林研一郎80歳(傘寿)記念の贈り物だったのでしょう。アンコールの瞑想曲は極めて美しい演奏。ピアノ協奏曲の対極にあるような演奏でした。天才、上原彩子の懐の深さが窺い知れます。

後半のマンフレッド交響曲はこれこそチャイコフスキーを得意とするコバケンならではの演奏。日フィルの弦楽パートの素晴らしいアンサンブルを使って、壮大なロマンの世界を表現しました。こんな演奏は滅多に聴けません。ここまで情緒あふれるロマンはやり過ぎかもしれませんが、80歳を超えた巨匠なら許されるでしょう。何度も情感あふれる弦楽アンサンブルのパートが繰り返されて、その高潮の果てにパイプオルガンの響きによる救済がもたらされます。圧倒的なフィナーレでした。そして、また、ご丁寧にもその終結部分がアンコールされました。実に行き届いた(過剰な?)サービスでした。

小林研一郎の80歳のチャイコフスキー交響曲チクルスはライブCDが作成されているので、おまけの協奏曲シリーズもライヴCDになるのであれば、これは楽しみです。是非、今日の上原彩子の爆演をCD化してもらいたいものです。もう一度、我が家のリスニングルームでその演奏の詳細を冷静に聴き直してみたいですね。


今日のプログラムは以下です。

  小林研一郎80歳(傘寿)記念&チャイコフスキー生誕180周年記念チャイコフスキー交響曲全曲チクルス

  指揮:小林研一郎 
  ピアノ:上原彩子
  管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団  コンサートマスター:木野 雅之

  チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 Op.23
   《アンコール》チャイコフスキー:瞑想曲 Op.72-5

   《休憩》

  チャイコフスキー:マンフレッド交響曲 Op.58

   《アンコール》
    チャイコフスキー:マンフレッド交響曲 から 第4楽章の終結部分(パイプオルガンが奏でられるところから)

最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番は以下のCDを聴きました。

 ニコライ・ルガンスキー、ケント・ナガノ指揮ロシア・ナショナル管弦楽団 2003年2月 セッション録音

若きルガンスキーの熱演。


2曲目のチャイコフスキーのマンフレッド交響曲は以下のCDを聴きました。

 セミョン・ビシュコフ指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 2017年4月24-27日 プラハ、ルドルフィヌム セッション録音
 
セミョン・ビシュコフは2016年からのチャイコフスキー・プロジェクトの1枚です。高水準の演奏と言えます。



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       上原彩子,  

鬼神のごとき、上原彩子のパガニーニ狂詩曲は音楽の極致! 尾高忠明&東京フィルハーモニー交響楽団@サントリーホール 2021.6.18

上原彩子の物凄い演奏に圧倒されました。こういうピアノ演奏を聴いてしまうと、もう誰の演奏を聴いても満足できなくなりそうです。それにラフマニノフは上原彩子に似合います。

上原彩子の弾くラフマニノフのピアノ協奏曲第3番は何度か聴いて、その素晴らしさに感動しました。そして、いずれの日か、きっと、《パガニーニの主題による狂詩曲》を聴かせてもらいたいと願っていました。今日、その夢が叶いました。期待を裏切らない、それどころか、こんな演奏は想像すらできないような圧倒的な演奏でした。ピアノはテクニックや音楽性も重要ですが、それ以上に一番大事なのは、魂の燃焼であることをまざまざと教えられました。こんなに凄い気魄で、恐ろしいほどに集中して演奏するピアニストはほかに知りません。彼女のどこから、こんなに凄いエネルギーが湧き出すのでしょう。彼女の弾く《パガニーニの主題による狂詩曲》はどのフレーズをとってみても実に新鮮で、まさに一期一会を思わせるような、今日、一度だけの演奏で、2度は聴けないと感じさせる即興性に満ちたものでした。すべてが魅惑的でしたが、やはり、第18変奏の美しさといったら、卒倒してしまいそうな美の極致です。ラフマニノフ自身でさえも、こんなに弾けたんでしょうか(古い録音を再度、チェックしてみましょう)。メロディーがオーケストラに移っても、上原彩子の弾くピアノの分散和音だけが耳に入ってきます。強烈に叩き上げるピアノの音の迫力に感動します。最後にもう一度、ピアノでメロディーを回帰して、第18変奏を終えます。ふーっと息が抜ける思いです。ここからはさらに上原彩子はギアーを上げて、超絶技巧を連発しますが、そのピアノの響きの凄さを上回るような彼女の気魄のほうに圧倒され、感動します。オーケストラと完璧にシンクロしていますが、聴こえるのはピアノの響きのみ。強烈に音楽が高潮していき、それは留まるところがありません。その頂点で、さっと、音楽が終わります。ここ数年で最高の音楽を聴きました。聴いたのは音楽だったのか、上原彩子の魂の燃焼と気魄だったのか、さだかではありません。音楽というのは音の響きを通じて、人間の魂の叫びを感じ、心と心がつながるものだということを深く心に刻みました。なんとも凄い演奏でした。

そうそう、アンコールはもちろん、ラフマニノフ。それもプレリュードです。最高に美しい音楽を聴かせてくれました。上原彩子のラフマニノフはきらきら光る宝石のように輝きます。これ以上の音楽はありません。

こういう演奏を聴いてしまうと、後半のラフマニノフの交響曲第2番の素晴らしい演奏を聴いても、どこか物足りなさを感じてしまいます。今日の東フィルのアンサンブルは尾高忠明が見事に磨き上げていましたが、音楽以上の何かを聴いてしまった後では、もうひとつにしか感じませんでした。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:尾高忠明
  ピアノ:上原彩子
  管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団  コンサートマスター:近藤薫

  ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 Op.43

   《アンコール》 ラフマニノフ:《10の前奏曲》Op.23より 第4番

   《休憩》

  ラフマニノフ:交響曲第2番 ホ短調 Op.27


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のラフマニノフの《パガニーニの主題による狂詩曲》を予習したCDは以下です。

 ヴァレンティーナ・リシッツァ、マイケル・フランシス指揮ロンドン交響楽団 2010年3月8日 ロンドン、アビー・ロード・スタジオ、スタジオ1 セッション録音

ヴァレンティーナ・リシッツァの驚異的なラフマニノフ全集(ピアノとオーケストラ)は凄いとしか言えません。チャイコフスキー全集ともども、素晴らしいものです。日本でも聴かせてもらいたいものです。ヒラリー・ハーンの伴奏で来日したときには、こんな凄いピアニストとは認識できませんでした。


2曲目のラフマニノフの交響曲第2番を予習したCDは以下です。

 アンドレ・プレヴィン指揮ロンドン交響楽団 1973年1月 セッション録音

プレヴィンはこの曲を得意にしていて、これは2回目の録音です。素晴らしい演奏です。その美しさにうっとりしてしまいます。



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       上原彩子,  

上原彩子の熱いシューマン、秋山和慶の爽やかなシューマン 新日フィル・オール・シューマン・プログラム@すみだトリフォニーホール 2020.10.30

今日は新日フィルのオール・シューマン・プログラム。なかでも上原彩子が弾くシューマンのピアノ協奏曲が注目されます。ロシアものからレパートリーを広げてきた上原彩子がドイツのロマン派の中核をなすシューマンに挑戦します。

前半、まずは劇音楽『マンフレッド』の序曲です。新日フィルの美しい弦パートはシューマンのロマンに満ちた名作に向いた響きです。爽やかな演奏で魅了してくれました。
次いで、上原彩子が弾くピアノ協奏曲。冒頭、ちょっと力が入り過ぎた感がありますが、すぐに修正します。第1楽章、第2楽章はまあまあの出来でしょうか。彼女が真骨頂を発揮し始めたのは第3楽章の中盤からです。細かいパッセージを切れの良いタッチで見事に演奏し、次第に音楽が高潮していきます。ヴィルトゥオーソ的にスケールが大きく、力強い演奏で熱く燃え上がっていきます。高い集中力を発揮する演奏は彼女の持ち味です。フィナーレは熱いシューマンでした。まだまだ、課題は残すものの及第点のシューマンだったでしょう。
アンコールで弾いたトロイメライはとても丁寧に心を込めた演奏でしみじみと聴かせてもらいました。先日も《子供の情景》を聴いたばかりでしたが、今日は格別の演奏でした。

後半は交響曲第3番「ライン」。これは素晴らしい演奏でした。秋山和慶の若々しく爽やかな表現を志向する指揮で、新日フィルの弦楽パートの美しいアンサンブルが憧れに満ちたシューマンの名作を歌い上げます。とりわけ、第4楽章は素晴らしい演奏です。ケルンの大聖堂にインスピレーションを得て、シューマンが作曲したと言われますが、そういう重厚さよりも、哀愁に満ちた音楽が心を打ちます。シューマンが晩年に作り上げた音楽はその後の彼の悲劇を予感するものでもあります。狂気こそ感じられませんが、滅びの美しさを秘めた美しい音楽が魂を揺さぶります。最後の第5楽章はそれを振り払うように祝典的に勢いよく盛り上がり、シューマンの実質的に最後の交響曲をパーフェクトに演奏し切りました。これぞシューマンという素晴らしい演奏でした。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:秋山和慶
  ピアノ:上原彩子
  管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団  コンサートマスター:崔文洙

  シューマン:劇音楽『マンフレッド』序曲 Op.115
  シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調 Op.54

   《休憩》

  シューマン:交響曲第3番 変ホ長調 Op.97「ライン」


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のシューマンの『マンフレッド』序曲は以下のCDを聴きました。

 ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団 1978年9月27-30日 ミュンヘン、ヘルクレスザール セッション録音
 
クーベリックのシューマンはいいですね。saraiに初めて、シューマンのオーケストラ作品のよさを教えてくれたのがクーベリック指揮バイエルン放送交響楽団です。


2曲目のシューマンのピアノ協奏曲は以下のCDを聴きました。

 スヴャトスラフ・リヒテル、リッカルド・ムーティ指揮ウィーン・フィル 1972年8月17日 ザルツブルク音楽祭、祝祭大劇場 ライヴ録音
 
期待して聴きましたが、期待以上の演奏ではありません。もちろん、水準以上の演奏だし、第3楽章は素晴らしいです。この曲は演奏が難しく、なかなか、これというものがありません。結局、古いリパッティやハスキルの演奏に行きつきます。


3曲目のシューマンの交響曲第3番「ライン」は以下のCDを聴きました。

 ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮シュターツカペレ・ドレスデン 1972年9月1-12日 ドレスデン、ルカ教会 セッション録音

シュターツカペレ・ドレスデンらしい明快な響きの演奏。サヴァリッシュも手堅い指揮。



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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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06/23 23:50 sarai

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ジョナサン・ノット氏の公演鑑賞を拝読したく参りました。毎回とても沢山の公演記録を私達に届けて下さり、ありがとうございます。

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あの弦の響きにもうハマるのですよ!
あと2公演ありますが、もう既に同じプログラムを2回演奏しているので、ますます良くなるか、ち

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私は春だというのに、仕事と用事以

04/09 05:29 えりちや

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誰にも知らんと言われなんやろ
と思いつづけて居ました❗
写真みつけてこれだと思いました❕スッとしました
教えて下さって嬉しいです
ありがとうご

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