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素晴らしいシューマン、そして、鳥肌の立つようなバルトーク 北村朋幹 ピアノ・リサイタル@東京文化会館小ホール 2023.2.25

今、注目の若手ピアニスト、北村朋幹(きたむら ともき)のピアノ・リサイタルです。5日連続コンサート中の2日目。毎日、心に残る演奏が続きます。北村朋幹のリリシズムあふれる個性的なピアノにはいつも敬服します。ある意味、日本人離れしたピアニストです。いつも尖がったプログラムで、ジョン・ケージだけのプログラムだと、saraiも尻込みしてしまいますが、今日はシューマン、バルトークにホリガー、ノーノを組み合わせた意欲的、かつ魅力的なプログラムです。特にシューマンの独奏曲を聴きたいとかねがね思っていましたが、普通の有名曲ではなく、森の情景と暁の歌です。いずれも実演で聴くのは初めてです。森の情景の予言の鳥だけはアンコール曲として、何度も聴きましたけどね。まあ、いずれの曲も北村朋幹らしい瑞々しい演奏で堪能しましたが、とりわけ、バルトークの「戸外にて」は鳥肌の立つような凄い演奏でした。

まずはシューマンの森の情景。シューマン好きにはたまらない演奏です。静かで懐かしい曲の演奏が心に沁みます。有名な第7曲の「予言の鳥」はまさにミステリアスな雰囲気で最高です。途中、普通の雰囲気の音楽に切り換わって、また、冒頭のミステリアスな音楽に変わる対比が素晴らしい。

次はホリガーのエリス-3つの夜曲-。先鋭的な響きですが、何故か心地よく感じられます。オーボエ奏者として知っているホリガーですが、実に趣味のよい曲を書いています。途中、ピアノの中に手を突っ込んで音色を変えていましたが、プリペアド・ピアノのようなことをしていたのかな。

前半の最後はバルトークの「戸外にて」。第1曲から、この曲の打楽器的な性格が表れていて、北村朋幹がその風貌から想像のできないようなエネルギッシュな演奏を繰り広げます。こちらも気持ちが高揚していきます。この作品の中心は最長の第4曲の「夜の音楽」ですが、北村朋幹は左手のアルペッジョで夜の雰囲気を醸し出しながら、右手で夜に出没する様々な自然の生き物を描き出していきます。その見事なピアノ表現に惹き付けられていきます。そして、第5曲は一転して、激しい狩りの音楽に変わります。バルトークの夜と並んで主要なモティーフである追跡Chaseの音楽です。ピアノが打楽器的に演奏されて、興奮の極致に至ります。北村朋幹が最高のバルトークを聴かせてくれました。次は是非、ピアノ・ソナタを聴かせてほしいものです。

休憩後、ノーノの . . .苦悩に満ちながらも晴朗な波. . .。あらかじめ、マウリツィオ・ポリーニのピアノの録音が電子的に編集されたテープが用意されて、その再生音と北村朋幹がコラボするように音楽を作り上げていきます。いやはや、ライヴでこんな演奏が聴けるとは凄い。素晴らしい現代音楽の演奏でした。北村朋幹ならではの会心の演奏です。

最後はまた、シューマンに戻ります。シューマンの晩年の作品、暁の歌です。もはや、ピアノの年のシューマンではありません。第1曲はまさしくコラールで静謐な宗教色に染まっています。まるでシューマン自身の心や体を癒すような音楽です。北村朋幹はリリシズムにあふれた優しく繊細な音楽を奏でていきます。色々な性格の曲を経て、最後の第5曲はまた、最初のコラールに戻って、シューマンの人生を閉じるような風情で静かに曲を閉じます。何と痛々しいシューマンなんでしょう。

アンコールは再び、シューマンの2曲がリリシズムに満ちて演奏されます。思っていた通り、北村朋幹にはシューマンがとっても似合います。
素晴らしいピアノ・リサイタルでした。


今日のプログラムは以下です。

  北村朋幹 ピアノ・リサイタル

  ピアノ:北村朋幹
 
  シューマン:森の情景 Op.82
  ホリガー:エリス-3つの夜曲-
  バルトーク:戸外にて Sz.81 BB89

  《休憩》

  ノーノ: . . .苦悩に満ちながらも晴朗な波. . .[エレクトロニクス:有馬純寿]
  シューマン:暁の歌 Op.133

  《アンコール》
   シューマン:「子供のためのアルバム Op.68」より 第15曲 春の歌
   シューマン:「森の情景 Op.82」より Ⅸ. 別れ


最後に予習について、まとめておきます。

シューマンの森の情景を予習したCDは以下です。

 ヴィルヘルム・ケンプ 1973年2月、ベートーヴェンザール、ハノーバー、ドイツ セッション録音

シューマンを愛奏したケンプ、とてもいいです。


ホリガーのエリス-3つの夜曲-を予習したCDは以下です。

 ヘルベルト・シュフ 2008年8月 セッション録音

ホリガーの作曲した曲を聴くのは初めてですが、なかなか素晴らしい曲で演奏も素晴らしい。


バルトークの戸外にてを予習したCDは以下です。

 ゾルタン・コチシュ 1996年6月、ハンブルク セッション録音

バルトークのピアノ独奏曲全集からの1曲です。見事な演奏です。


ノーノの . . .苦悩に満ちながらも晴朗な波. . .を予習したCDは以下です。

 マウリツィオ・ポリーニ 1977年9月 ミュンヘン セッション録音

ポリーニが初演した作品。確信に満ちた素晴らしい演奏です。


シューマンの暁の歌を予習したCDは以下です。

 アンドラーシュ・シフ 1997年1月、テルデック・スタジオ、ベルリン、ドイツ セッション録音

シフのシューマン、見事です。



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       北村朋幹,  

シューベルトのピアノ三重奏曲、飛びっきり素晴らしい第2番に感動! 郷古廉×横坂源×北村朋幹@浜離宮朝日ホール 2022.9.28

日本人の若手の男性音楽家の中でも注目される人材(郷古廉×横坂源×北村朋幹)による室内楽ということ、そして、シューベルトの晩年のピアノ三重奏曲の傑作を網羅した意欲的なプログラムなので、これは聴かないわけにはいきませんね。saraiは日本人のピアニストやヴァイオリニストは女性だけに注目しているわけではありません。特に今日のピアノの北村朋幹の個性的で情感に満ちた演奏には注目しています。

今日の演奏ですが、前半の「ノットゥルノ」の抒情的な美しさ、ピアノ三重奏曲第1番の第2楽章の見事な演奏に魅了されました。とりわけ、ここぞというときのチェロの横坂源のメロディーを歌うような演奏は光ります。ピアノの北村朋幹もよいのですが、ちょっと引っ込んでいる感じです。もっと前面に出て、引っ張るような演奏が望ましいところです。もっとも、アンサンブルという点では3人のバランスがよかったことも事実です。saraiとしてはもっと個々の主張があったほうがよかったという贅沢な注文です。

圧巻だったのは後半のピアノ三重奏曲第2番です。第1楽章から明快な演奏で引き込まれます。そして、第2楽章の魅惑的なこと。冒頭のピアノに誘われるようにチェロが素晴らしいメロディーを奏でます。この主題の原型はスウェーデンの民謡「Se solen sjunker(太陽は沈み)」ですが、シューベルトはそれを最高に素晴らしい抒情的な旋律に仕立て上げています。歌謡調の素晴らしさではシューベルトの右に出る人はいませんね。この旋律を中核に様々な展開でうっとりするような演奏が続きます。まさに天国的な世界です。長大な楽章も聴き惚れているうちにいつの間にか終わります。カノンの手法を使ったスケルツォの第3楽章がさらっと終わり、さっと第4楽章に入ります。この楽章はもともと長いのですが、今日はノーカットですべての繰り返しを入れた原典版のベーレンライター版の楽譜で演奏されます。最初の出版時にカットされた展開部の98小節を含め、846小節にも及ぶ実に長大なものですが、その長大さが素晴らしかったんです。3人の気合いの入り方が尋常ではありません。美しいロンド主題をもとにこれぞシューベルトという演奏に聴くほうもぐいぐい引き込まれます。そして、後半に入ると、それまでの楽章も回想されます。中でも第2楽章の主題がチェロで美しく歌い上げられて、音楽的な頂点に至ります。何度も繰り返されて、まさに天国に昇り詰めるような心地になります。そして、圧倒的なフィナーレ。多分、50分を超えるような演奏だったでしょうが、一瞬たりとも緊張感を損なうことはありませんでした。現代の聴衆はこういう長大なシューベルトを聴くことができて幸せです。それにしても郷古廉×横坂源×北村朋幹の3人は何とも素晴らしい演奏を聴かせてくれました。最高のシューベルトでした。

ところで今日のコンサートはsaraiの今年聴いたコンサートのちょうど100回目。節目にふさわしい素晴らしいコンサートでした。


今日のプログラムは以下です。

  【浜離宮朝日ホール開館30周年記念】
   郷古廉×横坂源×北村朋幹
    シューベルトのピアノ三重奏曲

  郷古廉(ヴァイオリン)、横坂源(チェロ)、北村朋幹(ピアノ)
 
  シューベルト:
   ピアノ三重奏曲 変ホ長調「ノットゥルノ」 D897 Op.148
   ピアノ三重奏曲第1番 変ロ長調 D898 Op.99

  《休憩》

   ピアノ三重奏曲第2番 変ホ長調 D929 Op.100


最後に予習について、まとめておきます。

すべて、予習したのはボザール・トリオの演奏です。CDは以下です。

 ボザール・トリオ/シューベルト:ピアノ三重奏曲全集 1984年 セッション録音
  メナヘム・プレスラー、イシドア・コーエン、バーナード・グリーンハウス

「ノットゥルノ」と第1番は最高に素晴らしいです。特にメナヘム・プレスラーのピアノは素晴らしい演奏です。第2番の演奏も見事ですが、ほかのグループの演奏も聴きたいところではあります。



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       北村朋幹,  

北村朋幹、磨き抜かれた感性のラヴェル デュトワの老練で完成度の高いフランス音楽 新日本フィルハーモニー交響楽団@東京芸術劇場 2022.6.9

シャルル・デュトワの久々の来日公演。実はsaraiは彼の実演はあまり聴いていなくて、調べてみると、第10回宮崎音楽祭(2005年)にチョン・キョンファが登場するというので、わざわざ聴きに行った際、共演がシャルル・デュトワ指揮NHK交響楽団でした。もしかしたら、その時だけしか実演は聴いていないかもしれません。いずれにせよ、17年ぶりに聴くことになります。
一方、ピアノの北村朋幹は昨年聴いて、ずっと注目しています。昨年は4回聴きましたが、今年は初めてです。大変、期待して聴きます。

前半、最初の曲目、フォーレの組曲「ペレアスとメリザンド」は実に素晴らしい演奏です。肌触りが繊細でとても優しい演奏。フランス音楽の粋を聴く思いです。デュトワの意を組んだ新日フィルのアンサンブルもソット・ヴォーチェのようなタッチの味わい深い音楽を奏でます。第1曲の前奏曲がとりわけ見事でうっとりと聴き入ります。第3曲のシシリエンヌは有名なフルート独奏のメロディーが優しく流れます。そして、第4曲の“メリザンドの死”は劇的でありながら、繊細な音楽の範疇からはみでることはありません。フランスの気品ある精神性の高い音楽に深く感銘を覚えました。さすがにデュトワはフランス音楽の何たるかを語ってくれます。

次はラヴェルのピアノ協奏曲。冒頭はもうひとつに思えた北村朋幹のピアノも第1楽章の途中からは繊細で切れのあるタッチで魅了してくれます。まるでガーシュウィンの音楽のようにジャズっぽい音楽が流れます。そして、第2楽章。北村朋幹のピアノ独奏が切々と抒情的な旋律を歌い上げていきます。素晴らしい演奏に惹き込まれます。どこまでも続いて欲しいピアノ独奏。中間あたりからオーケストラが加わってきます。しかし、主役はピアノのまま。オーケストラが主要旋律を奏でますが、その上で動き回るピアノの響きのピュアーで美しいこと。最後はコールアングレが旋律を奏でる上をピアノが細かい動きで修飾していきますが、そのピアノの響きの美しさはあり得ないような素晴らしさ。北村朋幹の才能がきらきらと輝きます。第3楽章は北村朋幹のピアノが切れのあるタッチで音楽を高揚させます。勢いのある演奏が盛り上がったところでいきなりのフィナーレ。素晴らしい演奏でした。
でも、それ以上に秀逸だったのは北村朋幹のアンコールの演奏。武満徹のピアノ曲を極限まで美しく奏でます。いやはや、凄い才能です。

後半はドビュッシーの交響詩「海」。これもデュトワの手腕が冴えますが、どうもsaraiはこの曲が苦手。曲に入り込めないまま、終わります。なかなかの演奏ではありました。
最後はラヴェルの「ラ・ヴァルス」。高齢ながらデュトワの剛腕が光ります。ウィンナーワルツのような、フランス音楽のような、その境界線上の音楽を素晴らしい響きで奏でます。うーん、なんとも素晴らしい! 聴き惚れているうちに短い曲が終わります。最後はデュトワの音楽に魅せられました。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:シャルル・デュトワ
  ピアノ:北村朋幹
  管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団  コンサートマスター:崔文洙

  フォーレ:組曲「ペレアスとメリザンド」 Op. 80
  ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調
   《アンコール》武満徹:《雨の樹 素描II―オリヴィエ・メシアンの追憶に―》

   《休憩》

  ドビュッシー:交響詩「海」
  ラヴェル:管弦楽のための舞踏詩「ラ・ヴァルス」


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のフォーレの組曲「ペレアスとメリザンド」は以下のCDを聴きました。

 シャルル・デュトワ指揮モントリオール交響楽団 1987年10月、モントリオール、聖ユスターシュ教会 セッション録音
 
実に繊細で優しい響きの演奏です。


2曲目のラヴェルのピアノ協奏曲は以下のCDを聴きました。

 パスカル・ロジェ、シャルル・デュトワ指揮モントリオール交響楽団 1982年6月、モントリオール、聖ユスターシュ教会 セッション録音
 
パスカル・ロジェのピアノは素晴らしい響きです。


3曲目のドビュッシーの交響詩「海」は以下のCDを聴きました。

 シャルル・デュトワ指揮モントリオール交響楽団 1989年5月、モントリオール、聖ユスターシュ教会 セッション録音
 
1980年代、デュトワとモントリオール交響楽団のコンビはフランス音楽の膨大な録音を残しました。いずれも素晴らしい演奏ばかりです。


4曲目のラヴェルの「ラ・ヴァルス」は以下のCDを聴きました。

 シャルル・デュトワ指揮モントリオール交響楽団 1981年7月、モントリオール、聖ユスターシュ教会 セッション録音
 
これも素晴らしいエスプリに満ちた演奏です。



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       北村朋幹,  

北村朋幹の瑞々しくてリリシズムにあふれた極美のモーツァルト デイヴィッド・レイランド&東京都交響楽団@サントリーホール 2021.9.10

若手のピアニストの北村朋幹に注目しています。今年の3月にこのサントリーホールで東響と共演したベートーヴェンのピアノ協奏曲 第4番の個性的でリリシズムにあふれる演奏に驚愕して以来、彼の演奏をたびたび聴いています。とりわけ、モーツァルトを聴いてみたかったので、このコンサートに駆けつけました。やはり、saraiの期待した通り、あるいはそれ以上の素晴らしい演奏に深く魅了されました。このところ、日本人ピアニストの弾くモーツァルトのピアノ協奏曲に感心しきりです。ベテランでは田部京子(20番)、伊藤恵(20番)、若手では岡田奏(25番)、 藤田真央(21番)が素晴らしい演奏を聴かせてくれました。そして、今日、北村朋幹の弾いたピアノ協奏曲第24番も彼らと肩を並べるか、あるいはそれ以上とも思えるレベルの演奏を聴かせてくれました。何と言っても、そのピアノの響きのピュアーな美しさとリリシズムあふれる音楽表現は群を抜いています。このハ短調の協奏曲は深くて暗い闇を感じさせられる曲ですが、北村朋幹はピュアーな音楽美に満ちた個性的な演奏を聴かせてくれました。きっとニ短調の第20番でも同様な雰囲気の音楽を聴かせてくれるんでしょう。是非、そちらも聴いてみたいし、第21番や第23番の長調の協奏曲でのさらに美しさにあふれる演奏も聴いてみたいものです。ピアノ・ソナタも聴きたくなりました。うーん、藤田真央と言い、最近の日本人の若手は素晴らしいですね。今日の演奏ではどの楽章も素晴らしかったのですが、やはり、第2楽章のシンプルな美しさにはうっとりと魅了されました。とりとめのない感想になりましたが、本当によい演奏に出会うとあまり、分析的な聴き方ができずに、音楽に没頭してしまいます。ですから、文章で音楽を表現することができなくなります。そうそう、デイヴィッド・レイランド指揮の東京都交響楽団のサポートも素晴らしく、弦の演奏は美しいし、ピアノと対話する木管も素晴らしかった。やはり、モーツァルトはピアノ協奏曲とオペラが最高に素晴らしいことを今日も実感しました。
北村朋幹のアンコールも秀逸な演奏でした。シューマンの作ったシューマンの最後のピアノ曲、実に痛々しい作品ですが、それを深い抒情を込めて演奏してくれました。それを表現する言葉もありません。こういう演奏をできるのは本当に音楽に愛を抱いている人であることはよく分かります。うーん、彼が弾くシューマンも聴いてみたい・・・。

モーツァルトのピアノ協奏曲に先立って、冒頭で演奏されたのはシューマンの歌劇『ゲノフェーファ』序曲。まるで短いオペラを鑑賞したような気になりました。素晴らしいシューマンでした。

休憩後のシューマンの交響曲第2番は先週、東響のコンサートで聴いたばかりですね。実に爽やかな演奏で、永遠の青春、ロマンの憧れと不安に満ちたシューマンの本質を突いたものでした。デイヴィッド・レイランドの指揮も都響のアンサンブルも最高でした。シューマン尽くしだったので、北村朋幹のアンコールもシューマンだったのか、それとも、彼がシューマン好きなのか・・・。そう言えば、ベートーヴェンの協奏曲を弾いたときのアンコールもシューマンの別の曲でした。

今日は最後まで北村朋幹のピアノ演奏が頭から離れません。


今日のプログラムは以下のとおりでした。

  指揮:デイヴィッド・レイランド
  ピアノ:北村朋幹
  管弦楽:東京都交響楽団 コンサートマスター:四方恭子

  シューマン:歌劇『ゲノフェーファ』序曲 Op.81
  モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番 ハ短調 K.491
   《アンコール》シューマン:精霊の主題による変奏曲より 主題

   《休憩》

  シューマン:交響曲第2番 ハ長調 Op.61

最後に予習について、まとめておきます。

シューマンの歌劇『ゲノフェーファ』序曲を予習したCDは以下です。

  ラファエル・クーベリック指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1964年9月9日 ベルリン、イエス・キリスト教会 セッション録音

クーベリックのシューマンは実に爽やかでロマンにあふれています。交響曲全集と一緒に収録されています。交響曲もこのCDで予習してもよかったかな。


モーツァルトのピアノ協奏曲第24番を予習したCDは以下です。

  クララ・ハスキル、イーゴル・マルケヴィッチ指揮コンセール・ラムルー管弦楽団 1960年11月14-18日 パリ セッション録音

ハスキルのステレオ録音なので、これを聴きましたが、残念ながら、ハスキルの真価は発揮されていません。モノラル録音ですが、1955年のクリュイタンス、1956年のデザルツェンスとの演奏は、ハスキルのモーツァルト演奏の中でも究極を思わせる素晴らしいものです。やはり、そちらを聴くべきでした。


シューマンの交響曲第2番を予習したCDは以下です。

  ジュゼッペ・シノーポリ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1983年、ムジークフェラインザール、ウィーン セッション録音

シノーポリのグラモフォンへのデビューした頃の録音です。やはり、シノーポリは颯爽としていましたね。なかなかの好演です。シノーポリはこの10年後にもシュターツカペレ・ドレスデンと再録音しています。



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       北村朋幹,  

北村朋幹 ピアノ・リサイタル@神奈川県立音楽堂 2021.5.20

今、注目の若手ピアニスト、北村朋幹(きたむら ともき)のピアノ・リサイタルを聴きに神奈川県立音楽堂に出かけました。神奈川県立音楽堂といえば、横浜・桜木町から歩いてすぐのところですが、紅葉坂の急な坂道を上らないといけないので、高齢者には優しくないホールです。今回は幸い予約すれば、シャトルバスに乗せてもらえたので、らくちんで訪れることができました。

なお、このリサイタルは三日前に聴いたものですが、別のコンサートが重なって、記事を書くのが遅くなりました。

さて、北村朋幹のピアノ独奏を聴くのは初めてです。それがいきなり、ドビュッシーの前奏曲集 第2巻だとはね。どう弾くのかと思っていたら、例によって、北村朋幹らしいリリックなピアノ表現です。いささか、線が細い感じですが、かえって、瑞々しい雰囲気でいい感じです。ドビュッシーらしい音の響きを十分、楽しみます。とりわけ、《月の光が降り注ぐテラス》が素晴らしいです。彼は独特の感性でこの印象派の名曲のそこはかとした雰囲気を醸し出してくれました。ここまでがプログラム前半です。

休憩後、バルトークの4つの挽歌。初めて聴く曲です。こういう珍しい曲を弾くとは、かなり、バルトークに思い入れがあるのでしょう。題名通り、深く沈んだ曲調です。バルトークとしてはハンガリー民謡をベースにしている以外は聴いたことのない感じ。でも、珍しいものを聴けて、バルトークファンとしては嬉しいところです。
次はベルクの名作、ピアノ・ソナタ。この曲は12音技法の曲ではありませんが、半音を多用することで無調っぽい響きの作品です。北村朋幹は素晴らしいテクニックを駆使して、すっきりとしたテーストでこの難曲を弾きこなします。耳に心地よく響きます。saraiの趣味では、もっとねっとりとした情感も感じさせてほしいところではあります。
最後はラフマニノフの《音の絵》Op. 39からの3曲です。抒情味はよく表出された演奏ですが、スケール感に乏しいのが残念なところです。ラフマニノフはあまり彼には合わない感じです。もっとロシアの大地にねづいたやるせなさを表現してもらいものです。テクニックは見事ですけどね。

アンコールは東響とのバルトークのピアノ協奏曲第1番のときのアンコールと同じバルトーク。これはとても素晴らしい演奏。文句なしです。よほど、弾き込んでいるんですね。実にチャーミングな演奏でした。

今度はもっと彼の美点のリリックさが全面に出るプログラムで聴いてみたいものです。今日のプログラムはとてもマニアックな組み立てでした。


今日のプログラムは以下です。

  北村朋幹 ピアノ・リサイタル

  ピアノ:北村朋幹
 
  ドビュッシー:前奏曲集 第2巻
   霧
   枯葉
   ヴィーノの門
   妖精たちはあでやかな踊り子
   ヒース
   奇人ラヴィーヌ将軍
   月の光が降り注ぐテラス
   水の精
   ピクウィック殿をたたえて
   カノープ
   交代する三度
   花火

  《休憩》

   バルトーク: 4つの挽歌 Op.9a BB58 Sz45

  ベルク: ピアノ・ソナタ Op.1

  ラフマニノフ:絵画的練習曲《音の絵》Op. 39より
   第2曲 イ短調
   第5曲 変ホ短調
   第9曲 ニ長調

  《アンコール》
   バルトーク:チーク地方の3つのハンガリー民謡 Sz35a BB45b


最後に予習について、まとめておきます。

ドビュッシーの前奏曲集 第2巻を予習したCDは以下です。

 クリスティアン・ツィマーマン 1991年8月、ドイツ セッション録音

ツィマーマンはどのアルバムも完成度が高いですが、彼の唯一のドビュッシーのこのアルバムの出来も素晴らしいです。何と言っても音楽性が尋常ではありません。


バルトークの4つの挽歌は直前のプログラム変更で入った曲なので予習していません。実は聴いたこともない曲です。


ベルクのピアノ・ソナタを予習したCDは以下です。

 エレーヌ・グリモー 2010年8月 ベルリン セッション録音

グリモーの演奏はちょうど10年前にこの神奈川県立音楽堂で生演奏を聴きました。CDよりも素晴らしいベルクでした。


ラフマニノフの絵画的練習曲《音の絵》Op. 39を予習したCDは以下です。

 ニコライ・ルガンスキー 1992年、モスクワ セッション録音

ルガンスキーはsaraiが注目しているピアニストです。音が綺麗で音楽性も高い演奏を聴かせてくれます。このラフマニノフは期待したほどではありませんでした。



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