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庄司紗矢香と仲間たちによる高貴な芸術の香りに深く感銘@サントリーホール 2023.9.25 (完成版)

庄司紗矢香を久しぶりに聴いたような気がしましたが、今年6月にノセダ指揮N響との共演で聴いたばかり。どれほど聴いても聴き足りない思いです。
庄司紗矢香の奏でる音楽はもはや音楽という範疇を超えて、高貴な芸術の香りを天空の彼方から伝えてくれる巫女のような存在に思えます。今回はフランス音楽の衣を纏って、何とも香り立つような芸術の真髄を感じさせてくれました。実はこれ以上のことを書くことはエセ芸術信奉家のsaraiには到底、無理なのですが、素人故の恥知らずで芸術論議を書いてみましょう。

まずは、圧倒的な名演だった後半のショーソンのヴァイオリン、ピアノと弦楽四重奏のための協奏曲についてです。
これはプルーストに登場願ったほうがよさそうです。プルーストの《失われた時を求めて》の中にヴァントゥイユの七重奏曲を聴くシーンが描かれていますが、そこで人が音楽を芸術として受容するとはどういうことかについて、長々と論じられています。今日の演奏はまさにそのとおりのような演奏でした。ここにプルーストがいれば、この演奏について、数十ページの論述を書き連ねてくれたことでしょう。しかし、昨年2022年がプルースト没後100年でした。いまさら、生き返ってくれるものでなく、恐れながら、saraiがなりかわって、駄文を書くしかありません。
第1楽章、ピアノが強い打鍵で主となる動機を奏でて、それを弦楽四重奏が引き継いで、動機を主題に発展させます。そして、その主題を庄司紗矢香が引き継いで演奏しますが、最初は何とも物足りない感じなんです。しかし、彼女が弾いていくうちにその主題は美しく磨き上げられます。これこそ、プルーストがヴァントゥイユのソナタの中で繰り返し、憧れ続けた小楽節のように光り輝きます。それはどれほど繰り返されても色褪せることなく、転調されるたびに更に輝きを放っていきます。庄司紗矢香を中心に色んな楽器の組み合わせで発展させられていく小楽節に魅了されながら、長大な楽章が終わります。
第2楽章、シシリエンヌの旋律が庄司紗矢香のヴァイオリンを中心に抒情に満ちた響きをかそけく聴かせてくれます。詩情に満ちた世界に感銘を受けます。
第3楽章、半音階で特異な印象の音楽が荘重に奏されていきます。その中でも庄司紗矢香のヴァイオリンが輝きを放っています。
第4楽章、早いテンポで音楽が奏でられて、色んな旋律も回想されて、華やかに音楽が高潮して、この複雑な構成の音楽の幕が閉じます。
この庄司紗矢香と仲間たちの冴えた演奏は何と表現すればいいのでしょう。フランス的なエスプリ、高貴な芸術の昇華、いずれにせよ、あり得ないような音楽的技量を発揮して、その演奏した音楽はまるで夢のようなポエムです。プルーストが提起した「芸術の中には人生よりももっと深い現実が存在するのだろうか」という根源的な問いに答えてくれるような演奏と音楽ではなかったかと自分の心に刻み付けるような時間でした。sarai流に言い換えるならば、この音楽が奏されている時間には、saraiは現実を離れて、芸術の中に現実では味わうことのできないもう一つの人生を生きていたような気がします。それはとても深い精神的な体験でした。こういう稀有な時間を体験させてくれた庄司紗矢香と仲間たちに特別な感謝を送りたい気持ちです。

さて、前半のプログラムに戻りましょう。
まず、武満徹の妖精の距離ですが、詩の朗読に続いて、その余韻の中にグローヴナーの美しいピアノの響きと庄司紗矢香の少し耳障りな弦をこする音のするヴァイオリンの響きで、武満徹のドビュッシー的な感覚の音楽が展開されます。一つの主題が少しずつ変容しながら繰り返されます。庄司紗矢香はあえて、ただ美しいだけのヴァイオリンの響きを抑えて、独特な美を発散させます。彼女がバッハの無伴奏でも用いた表現ですが、厳しく、音楽の本質に切り込むような魂の燃焼を感じさせます。聴く者は彼女の演奏に対峙して、真剣勝負するような気持ちになります。主題のさまざまな変容は高潮したり、沈潜したり、自在な演奏に翻弄されながら、詩情に満ちた時間を過ごしました。武満徹の若き日の傑作に心が昂ぶりました。

次はそのまま続けて、ドビュッシーのヴァイオリン・ソナタが演奏されます。これは深く内容に触れませんが、最高に素晴らしい演奏でした。ドビュッシーが苦しい闘病の中、残した最後の作品とは信じられない清澄さを湛えた美しい音楽です。この素晴らしい演奏だけは多くを語らず、そっと心の奥にしまっておきたい・・・そんな演奏でした。お察しください。

前半の最後はモディリアーニ弦楽四重奏団が登場して、ラヴェルの若き日の名作、弦楽四重奏曲を演奏します。この曲はsaraiの最近のお気に入りの曲のひとつです。それというのも、今回も予習で聴きましたが、エベーヌ・クァルテットの最高の演奏をCDで聴いて、この曲の何たるかが分かったんです。エベーヌ・クァルテットの実演で聴きたい曲、No.1です。さて、モディリアーニ弦楽四重奏団の演奏はエベーヌ・クァルテットと同じくフランス風ですが、全く性格を異にする演奏。エベーヌ・クァルテットは粋で派手で明確な素晴らしい演奏ですが、モディリアーニ弦楽四重奏団はエスプリを内に秘めて、内向的な演奏です。コンセルヴァトワール出身の彼らは無論、フランス的な雰囲気そのものの演奏で高貴な奥ゆかしさに満ちています。これはこれでまったく納得できる演奏です。ただ、ある意味、受容するのが難しい音楽かもしれません。この曲をさらに聴き込んでいけば、彼らの演奏の素晴らしさの一端が理解できるのかもしれません。庄司紗矢香があえて、フランスの仲間たちとして、彼らと行動を共にしたのも分かるような気がします。庄司紗矢香が内向的な音楽をフランス音楽に求めているのかもしれません。

庄司紗矢香の芸術的な進歩が体感できるコンサートでした。庄司紗矢香は次に11月、イスラエル・フィルと共演するベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を聴きます。きっと内省的な演奏になるような予感がします。


今日のプログラムは以下のとおりです。
  庄司紗矢香「フランスの風」

  ヴァイオリン:庄司紗矢香
  モディリアーニ弦楽四重奏団
  ピアノ:ベンジャミン・グローヴナー
  
    
  詩の朗読 瀧口修造:妖精の距離 (朗読:大竹直)
  武満徹:妖精の距離
  ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ
  ラヴェル:弦楽四重奏曲 ヘ長調
  
   《休憩》

  ショーソン:ヴァイオリン、ピアノと弦楽四重奏のための協奏曲 ニ長調 Op. 21
   
     
最後に予習について、まとめておきます。

1曲目の武満徹の妖精の距離を予習したCDは以下です。

 デュオ・ガッツァーナ 2011年3月、 スイス・イタリア語放送オーディトリオ、ルガーノ、スイス セッション録音

姉妹デュオ、ナターシャとラファエラ・ガッツァーナによる見事な演奏。


2曲目のドビュッシーのヴァイオリン・ソナタを予習した演奏は以下です。

 オーギュスタン・デュメイ、マリア・ジョアン・ピリス 1993年9、10月、 ミュンヘン セッション録音

デュメイの名演。


3曲目のラヴェルの弦楽四重奏曲を予習したCDは以下です。

 エベーヌ・クァルテット 2008年2月 セッション録音
 
これは素晴らし過ぎる演奏です。冒頭から美しい響きに魅了されます。音楽的表現も最高です。この作品の本命盤でしょう。


4曲目のショーソンのヴァイオリン、ピアノと弦楽四重奏のための協奏曲を予習したCDは以下です。

 イザベル・ファウスト、アレクサンドル・メルニコフ、サラゴン・カルテット 2016年6月、9月/テルデックス・スタジオ・ベルリン セッション録音
 
ファウストが「ヴュータン」と愛称のついたストラディヴァリで美しくも繊細な演奏を聴かせ、2004年結成、18世紀のレパートリーを中心に活動を展開する中堅のアンサンブル、サラゴン・カルテットもしっかりとファウストの独奏ヴァイオリンを支えます。メルニコフはいつも演奏を共にするファウストと息の合ったピアノの響きで、この録音の少ない名曲を気持ちよく聴かせてくれます。



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庄司紗矢香と仲間たちによる高貴な芸術の香りに深く感銘@サントリーホール 2023.9.25(未完)

庄司紗矢香を久しぶりに聴いたような気がしましたが、今年6月にノセダ指揮N響との共演で聴いたばかり。どれほど聴いても聴き足りない思いです。
庄司紗矢香の奏でる音楽はもはや音楽という範疇を超えて、高貴な芸術の香りを天空の彼方から伝えてくれる巫女のような存在に思えます。今回はフランス音楽の衣を纏って、何とも香り立つような芸術の真髄を感じさせてくれました。実はこれ以上のことを書くことはエセ芸術信奉家のsaraiには到底、無理なのですが、素人故の恥知らずで芸術論議を書いてみましょう。

まずは、圧倒的な名演だった後半のショーソンのヴァイオリン、ピアノと弦楽四重奏のための協奏曲についてです。
これはプルーストに登場願ったほうがよさそうです。プルーストの《失われた時を求めて》の中にヴァントゥイユの七重奏曲を聴くシーンが描かれていますが、そこで人が音楽を芸術として受容するとはどういうことかについて、長々と論じられています。今日の演奏はまさにそのとおりのような演奏でした。ここにプルーストがいれば、この演奏について、数十ページの論述を書き連ねてくれたことでしょう。しかし、昨年2022年がプルースト没後100年でした。いまさら、生き返ってくれるものでなく、恐れながら、saraiがなりかわって、駄文を書くしかありません。
第1楽章、ピアノが強い打鍵で主となる動機を奏でて、それを弦楽四重奏が引き継いで、動機を主題に発展させます。そして、その主題を庄司紗矢香が引き継いで演奏しますが、最初は何とも物足りない感じなんです。しかし、彼女が弾いていくうちにその主題は美しく磨き上げられます。これこそ、プルーストがヴァントゥイユのソナタの中で繰り返し、憧れ続けた小楽節のように光り輝きます。それはどれほど繰り返されても色褪せることなく、更に輝きを放っていきます。庄司紗矢香を中心に色んな楽器の組み合わせで発展させられていく小楽節に魅了されながら、長大な楽章が終わります。

 ・・・というところで、saraiの筆力つたなく、タイムオーバーです。明日の地域コミュニティ活動のための体力を残すために、これ以降の記述は明日以降に書きます。中途半端なところで終わって、ごめんなさい。でも、saraiを元気づけるためにブログランキングのポチは忘れずにお願いします。


今日のプログラムは以下のとおりです。
  庄司紗矢香「フランスの風」

  ヴァイオリン:庄司紗矢香
  モディリアーニ弦楽四重奏団
  ピアノ:ベンジャミン・グローヴナー
  
    
  武満徹:妖精の距離
  ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ
  ラヴェル:弦楽四重奏曲 ヘ長調
  
   《休憩》

  ショーソン:ヴァイオリン、ピアノと弦楽四重奏のための協奏曲 ニ長調 Op. 21
   
     




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庄司紗矢香の天上の音楽に魅了されるだけ ノセダ&NHK交響楽団@サントリーホール 2023.6.21

庄司紗矢香はさりげなく音楽を奏で始めて、すぐに音楽と一体化して、この世の物とは思われないような極上の音楽を聴かせてくれます。今更、saraiがどうのこうの言えるようなレベルの音楽ではありません。ただただ、うっとりと庄司紗矢香が作り出す音楽世界に浸るだけです。服装も佇まいもさりげない雰囲気で、すべてが最高の芸術に昇華しているとしか思えません。
庄司紗矢香がそこにいて、そして、不可侵の芸術世界に包まれているということを感じて、音楽を聴いて60年のsaraiが恐れ入って畏まるという構図です。最高の芸術家です。レスピーギのこの作品は初めて聴きますが、庄司紗矢香が弾けば、もう、どの曲でも同じことのような気がします。そうそう、アンコールのバッハの無伴奏パルティータのサラバンドはつい先日もヒラリー・ハーンがアンコールで弾きましたが、とうてい同じ曲には聴こえません。ヒラリーの演奏は美しさの限りでしたが、庄司紗矢香は美しさよりも音楽の本質に切り込むような厳しい演奏。どちらの演奏も好きです。それにしても庄司紗矢香はバッハの無伴奏も遂に極めたようです。是非、次はバッハの無伴奏全曲のリサイタルをお願いしたくなりました。

ノセダ&NHK交響楽団も庄司紗矢香を好サポートしていました。オーケストラの響きとの調和も素晴らしかったと思います。

ノセダ&NHK交響楽団の最初のバッハ(レスピーギ編)は厳かな雰囲気の中、弦の美しさが際立つ見事な演奏でした。

休憩後のラフマニノフの交響曲 第1番はノセダの本領発揮で燃えに燃えた演奏。NHK交響楽団のアンサンブルも素晴らしく、特にトゥッティでは弦を中心に恐ろしいほどのまとまりが決まっていました。相当にリハーサルを重ねたのでしょう。この曲も初めて聴きましたが、ラフマニノフの精神状態がおかしくなるほどの初演失敗だったとは思えないような青春の勢いに包まれた作品です。よほどに演奏が悪かったのでしょうか。指揮はグラズノフだったとのこと。不思議です。ともあれ、珍しい作品が素晴らしい演奏で聴けました。
今日は庄司紗矢香が聴けて、最高に幸せ気分です。

因みに今回の演奏をもって、NHK交響楽団の定期会員を引退します。最後になって、続けざまにいい演奏を聴かせてくれましたが、やはり、saraiとは相性がよくないようです。


今日のプログラムは以下のとおりです。


  指揮 : ジャナンドレア・ノセダ
  ヴァイオリン : 庄司紗矢香
  管弦楽:NHK交響楽団 コンサートマスター:郷古廉

  バッハ(レスピーギ編):3つのコラール
               第1曲〈きたれ、異教徒の救い主よ〉(BWV659)
               第2曲〈私の魂は主をあがめ〉(BWV648)
               第3曲〈目を覚ませと呼ぶ声が聞こえ〉(BWV645)
  レスピーギ:グレゴリオ風協奏曲
   《アンコール》
     J. S. バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ
      パルティータ第2番 ニ短調 より 第3曲 サラバンド BWV 1004

   《休憩》

  ラフマニノフ:交響曲 第1番 ニ短調 Op.13


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のバッハ(レスピーギ編)の3つのコラールを予習したCDは以下です。

  ジョン・ネシュリング指揮リエージュ王立フィルハーモニー管弦楽団 2017年9月 ベルギー、リエージュ、フィルハーモニーホール セッション録音

1947年サンパウロ生まれの指揮者ブラジルのジョン・ネシュリングが美しい演奏を聴かせてくれます。


2曲目のレスピーギのグレゴリオ風協奏曲を予習したCDは以下です。

   ワジム・ブロドスキー、フランチェスコ・ラ・ヴェッキア指揮ローマ交響楽団  2009年~2012年 ローマ セッション録音

きっちりした演奏で燃え上がるところは燃えるという風情。聴き応えがあります。


3曲目のラフマニノフの交響曲 第1番を予習したCDは以下です。

  アンドレ・プレヴィン指揮ロンドン交響楽団 1975年2月 ロンドン、アビー・ロード・スタジオ セッション録音

世評に高い歴史的な名盤。熱い演奏を聴かせてくれます。



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       庄司紗矢香,  

庄司紗矢香の弾くクロイツェルに言葉もなし@サントリーホール 2022.12.16

久々の庄司紗矢香ですが、曲目と言い、フォルテピアノとガット弦の演奏と言い、とても不安感があります。失礼ながら、モーツァルトはちゃんと弾けるのかなと配偶者にぶつぶつ。
前半はその予感が半ば的中とまでは言いませんが、カシオーリのフォルテピアノのプアーな高音の響きと庄司紗矢香の音楽表現の物足りなさにsaraiのテンションが下がります。恐れていたガット弦とクラシック弓のヴァイオリンの響きはそれほど悪くなく、美しい響きを聴かせてくれます。問題は個性的で魅力に満ちたモーツァルトが表現しきれていないことです。やはり、モーツァルトは難しいですね。
休憩時間中、配偶者にそういうことをぶつぶつ言っていました。

休憩後、そういうsaraiを庄司紗矢香は黙らせてくれました。C.P.E.バッハのファンタジアはヴァイオリンを聴くような曲に思えず、次のベートーヴェンはプアーなフォルテピアノの響きでたいした演奏にはならないだろうと悲観していました。ところが、クロイツェルの冒頭のヴァイオリン独奏の凄さに度肝を抜かれて、そのまま、第1楽章は何とも素晴らしい演奏が続きます。ヴァイオリンの美しい音色、響き、そして、見事なアーティキュレーションで完璧を通り越して、その圧倒的な演奏に驚愕するのみです。ガット弦とかスチール弦とかの問題ではありません。そして、次の第2楽章がさらに凄い。この単調になりがちの楽章が後半に向かって、光り輝くような演奏で、ただただ、うっとりと魅了されます。長大な楽章を圧倒的な演奏で弾き切りました。そして、第3楽章のノリのよくて、推進力に満ちた演奏にsaraiは感動して、もう、涙が滲みます。素晴らし過ぎる。こんなクロイツェルは聴いたことがありません。庄司紗矢香は何と言う高みに上り詰めたんでしょう。日本の至宝、いや、世界の至宝です。現役のヴァイオリニストでこれ以上のベートーヴェンを弾ける人はいないでしょう。

終演後、saraiは言葉もありませんでした。本当に素晴らしい音楽を聴いたときには言うべき言葉を持ちません。ただ、黙って、配偶者と帰途に着きました。きっと配偶者もsaraiの心中を察していたでしょう。


今日のプログラムは以下です。

  ヴァイオリン:庄司紗矢香
  フォルテピアノ:ジャンルカ・カシオーリ

  モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第28番 ホ短調 K. 304(300c)
  モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第35番 ト長調 K. 379(373c)

   《休憩》

C.P.E.バッハ:ファンタジア Wq. 80(H. 536)
  ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番 イ長調 Op. 47 「クロイツェル」
    
   《アンコール》
     C.P.E.バッハ:ヴァイオリン・ソナタ ハ短調 Wq.78より Ⅱ Adagio ma non troppo


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目、2曲目のモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ第28番と第35番を予習したCDは以下です。

  アンネ・ゾフィー・ムター、ランバート・オーキス 2006年2月、ミュンヘン セッション録音

ムターのさりげないようでいて、実に奥の深いモーツァルトにただただ、魅了されるのみです。


3曲目のC.P.E.バッハのファンタジアを予習したCDは以下です。

  タムシン・ウェイリー=コーエン、ジェームズ・ベイリュー 2018年9月10日-12日&2018年10月13日-14日、ブリテン・スタジオ(スネイプ・モルティングス、イギリス) セッション録音

C.P.E.バッハのヴァイオリンと鍵盤楽器(殆どはチェンバロ)のために書かれたオリジナル作品(Wq.71~Wq.80の10曲)をすべてを演奏した驚きのアルバムです。演奏の質も高いものです。タムシン・ウェイリー=コーエンは1986年ロンドン生まれの若手の才媛。と言っても、庄司紗矢香とほぼ同年齢ですね。


4曲目のベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」を予習したCDは以下です。

  ヘンリク・シェリング、アルトゥール・ルービンシュタイン 1958年12月30,31日、ニューヨーク、アメリカ芸術文化アカデミー セッション録音

この演奏は初めて聴きましたが、若きシェリングのヴァイオリンの素晴らしさはもちろんですが、ルビンシュタインのピアノの凄さに唖然となりました。ルビンシュタインのベートーヴェンって、こんなに凄いとは思ってもみませんでした。聴いてみないと分からないものですね。



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       庄司紗矢香,  

庄司紗矢香は音楽の求道者 庄司紗矢香&ヴィキングル・オラフソン デュオ・リサイタル@横浜みなとみらいホール 2020.12.13

バルトークの物凄い演奏に鳥肌が立ちました。異次元のレベルの演奏です。あれは何年前だったでしょう。庄司紗矢香が満を持して、バルトークとバッハの無伴奏ソナタを素晴らしい演奏で聴かせてくれましたが、今や、絶頂のときを迎えた彼女はまるで別人のような境地に至ったようです。今の彼女の演奏でバルトークとバッハの無伴奏を演奏したら、卒倒してしまうかもしれません。今日のバルトークの演奏のことを《極めた演奏》とでも表現するのかもしれません。

バルトークの極めて深い音楽を聴きながら、音楽の本質について、思いを致していました。時間芸術としての音楽は、作曲家が今から遠い過去の時代に自分の胸の内を音楽の譜面に書き留めて、時代を経た現在、演奏家がその譜面を解き明かして、音楽の響きとして、我々、聴衆に投げかけてきます。受け手である聴衆のほとんどは作曲家の書いた譜面を読むことなしに、演奏者が譜面を読み込み、解釈した内容を音楽として再現したものを聴き取って、その響きから、作曲家が創造した精神世界を理解し、共感します。つまり、作曲家の魂の精華を演奏者が共感して再現し、演奏者の魂の燃焼を聴衆が共感して、己が魂を共鳴させるわけです。今日の庄司紗矢香&ヴィキングル・オラフソンのバルトークの演奏は作曲家・演奏者・聴衆の3者が共感し、魂が共鳴した、最高のレベルの音楽の実現の場となりました。散文的な内容は皆無の絶対的な音楽が魔法のように響き渡っていました。言葉の介在は不可能な世界です。音楽とはかくあるべきものなのでしょう。こういう厳しい音楽を感じることができるのは、バルトークとバッハの音楽に共通した特徴です。その違いと言えば、バッハは音楽の愉悦、バルトークは実存の深い感情、精神世界と言ってもいいかもしれませんが、そういうものが音楽芸術として自立しているところです。今日のバルトークは作曲家・演奏者・聴衆がおのおのの実存にかけて、魂のゆらぎや燃焼を深く共感したものです。いやはや、若い庄司紗矢香にはいつもながら、インスパイアされます。途轍もない芸術家になりましたね。saraiもさらに精進して、彼女の演奏へのもっと深い共感・共鳴が得られるようにしたいと新たな思いを抱きました。

バルトークの音楽に先鞭をつけるような形で演奏されたバッハも厳しい音楽でした。第1楽章は美しい弱音のピアノのソロから始まり、第4の声部としてのヴァイオリンがそっと加わり、美しい音楽が実現します。そのあまりの楽興の深さに魂が共鳴し、嗚咽しそうになります。音楽の美しさの極限は厳しさです。散文的な言葉を持って表現することは不可能な世界です。庄司紗矢香の深い表現のヴァイオリンはもちろん素晴らしいのですが、ヴィキングル・オラフソンの美しく抑えたタッチの弱音の表現も見事です。仄暗い聖堂で密やかに奏でられるかのごとく、バッハの驚異の傑作に心が震えました。

前半のバッハとバルトークですっかり圧倒されました。後半はプロコフィエフの佳曲で軽く心を和ませ、ブラームスのロマンの世界を満喫しました。ブラームスの愛に満ちた音楽をピアノのオラフソンがまことにロマンティックな響きで表現し、そのピアノの響きの上に庄司紗矢香がヴァイオリン響きを柔らかく馴染ませて、味わい深い世界を創出します。考えてみれば、庄司紗矢香のヴァイオリンを初めて聴いたのはブラームスのヴァイオリン協奏曲でした。日本人がブラームスをこんなに演奏できるのかと驚愕したことをまざまざと思い出します。それ以来、もう20年近い月日が経ちました。そのときは想像できなかったような芸術的な高みに庄司紗矢香は達して、ブラームスの本質を深く味わわせてくれるような演奏で第2番のソナタを聴かせてくれました。こんなに共感させてくれるようなブラームスを聴くのは滅多にないことです。


アンコールは2曲。歌謡性に満ちたバルトークのルーマニア民俗舞曲は自在な演奏で楽しませてくれます。懐かしく静謐な曲はウィーンの女流作曲家のシチリアーノ。こういう曲は庄司紗矢香は見事な弱音で完璧に抒情味豊かに弾きこなすようになりました。もう世界トップレベルのヴァイオリニストです。そう言えば、彼女のツイッターでシゲティのルーマニア民俗舞曲を紹介していました。彼女のヴァイオリンの目標はシゲティなのかな。方向性は正しいとsaraiも1票。

庄司紗矢香は足を痛めているようです。痛々しいです。早い治癒を念願しています。


今日のプログラムは以下のとおりです。

  ヴァイオリン:庄司紗矢香
  ピアノ:ヴィキングル・オラフソン

  J. S. バッハ:ヴァイオリン・ソナタ第5番 ヘ短調 BWV 1018
  バルトーク:ヴァイオリン・ソナタ第1番 Sz. 75

   《休憩》

  プロコフィエフ:5つのメロディ Op. 35bis
  ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第2番 イ長調 Op. 100

   《アンコール》
    バルトーク:ルーマニア民俗舞曲
    マリア・テレジア・フォン・パラディス:シチリアーノ


最後に予習について、まとめておきます。

バッハのヴァイオリン・ソナタ第5番を予習したCDは以下です。

  ヘンリク・シェリング、ヘルムート・ヴァルヒャ 1969年6月5-8日,12,13日 パリ、リバン教会 セッション録音

決定盤です。二人の折り目正しい演奏はバッハの音楽に誠実です。


バルトークのヴァイオリン・ソナタ第1番を予習したCDは以下です。

  ギドン・クレーメル、マルタ・アルゲリッチ 1988年6月 ミュンヘン、ヘルクレスザール セッション録音

クレーメルの美しい演奏に心惹かれます。精神的にも高いレベルの演奏に思えましたが、今日の庄司紗矢香の前では色を失います。


プロコフィエフの《5つのメロディ》を予習したCDは以下です。

  アリーナ・イブラギモヴァ、 スティーヴン・オズボーン 2013年7月11-13日 ロンドン、ヘンリー・ウッド・ホール セッション録音

イブラギモヴァの安定した演奏です。


ブラームスのヴァイオリン・ソナタ第2番を予習したCDは以下です。

  ヨゼフ・シゲティ、ミエチスラフ・ホルショフスキ 1961年10月 セッション録音


シゲティのロマンティシズムに溺れ過ぎない至芸は襟を正して聴くべきものです。



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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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03/01 19:22 aokazuya

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10/07 08:57 堀内えり

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08/04 21:31 G線上のアリア

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07/08 15:53 じじい@

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