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河村尚子、これぞラフマニノフ! with 読売日本交響楽団@東京芸術劇場コンサートホール 2020.10.25

河村尚子のラフマニノフが聴きたくて、急遽、チケットを購入して、コンサートに駆けつけました。期待以上の演奏に感動しました。まず、その硬質なタッチのピアノの響きに魅了されます。先日のリサイタルでのモーツァルト、シューベルト、ショパンもよかったけれど、今日のラフマニノフはまさに自由奔放な演奏で軛から解放されたみたいで、本領発揮です。切れのある演奏にしびれます。その素晴らしい河村尚子のピアノの響きを見事に支えるのは老境の小林研一郎。ピアノがメロディーを弾いても、分散和音を散りばめても、オーケストラはピアノの響きを際立たせます。素晴らしいサポートです。変奏がどんどん進み、第17変奏の素晴らしい分散和音のピアノが音楽を盛り上げていき、遂に有名な第18変奏の美しいメロディーに至ります。ロシアを去り、ルツェルンの湖畔に居を構えたラフマニノフの故国へのノスタルジックな思いが凝縮されたような哀愁を誘うメロディーが素晴らしく美しい音色で演奏され、saraiは感極まります。音楽は頂点を迎え、独奏ピアノにオーケストラの美しい弦が重なります。普通はオーケストラを思いっきりドライブするところですが、小林研一郎の指揮は微妙に音量を抑え、ピアノの響きを浮き立たせます。もう、うるうるしながら、この美しい音楽に耳を傾けるsaraiです。頂点を過ぎて、最後にまた回想するようにピアノのソロで抒情的なメロディーが歌われます。うーん、最高! そして、第19変奏に入り、ピアノは勢いよく突進していきます。その素晴らしいタッチに魅了されます。思わず、河村尚子の足がペダルを踏む様を観察します。左足でリズムをとりながら、右足で軽くペダルに触れています。実に歯切れのよいピアノはほぼノンペダルですね。《怒りの日》の旋律も交えながら、フィナーレに向かって疾走。最後は痛快にフィナーレ。素晴らしい演奏でした。こんなラフマニノフが弾けるのだから、もう、ショパンは弾かなくてもいいのにと内心思ってしまいます。そんなsaraiの思いを嘲笑うがごとく、小林研一郎にステージの袖でうながされて、弾き始めたアンコール曲は何とショパンの夜想曲(遺作)です。これがまた、飛びっきり美しいショパンです。内心苦笑しつつもそのショパンに魅了される、情けないsaraiです。
でも、今度はショパンじゃなくて、プロコフィエフの戦争ソナタが聴きたいよ ⇒ 河村尚子

今日のコンサートはグリンカの歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲で始まりました。80歳の御年とは思えない小林研一郎の元気良い指揮で派手な演奏。さすがに読響のアンサンブルは最高です。それに今日は小森谷巧と長原幸太のダブルコンマスと気合がはいっています。後で知りましたが、小林研一郎は代役だったんですね。本来は何とロトだったんです。コロナがなければ、ウィーンで聴けた筈のロト・・・。うーん、でも我が国が誇る至宝、小林研一郎が代役ですから、何も問題ありません。

後半はベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」。小林研一郎はどんな「英雄」を聴かせてくれるんでしょう。まず、冒頭のジャン、ジャン。素晴らしい響きです。その後は何と美しいアンサンブルの響きが続きます。雄渾さとか勢いとかは完全封印。小林研一郎の手もほとんど動きません。テンポは中庸でほぼインテンポ。読響の美しいアンサンブルの響きが静かに流れていきます。この曲は作曲当時、革新的な作品として登場しましたが、今日は古典美に満ちた作品として演奏されます。小林研一郎は齢80にして、この境地に至ったのでしょうか。でも、枯れた演奏ではなく、この曲を静謐に室内オーケストラのようにあえて演奏しているようです。むしろ、80歳にして、思い切って、こういう演奏にチャレンジしたかのようです。そのまま、第2楽章に入ります。どうやら、彼はこの第2楽章を中心に据えた演奏を試みているようです。どっしりとした葬送行進曲ではなく、深い抒情味に満ちたベートーヴェンの精神世界を表現しています。うーん、こんな演奏もあるのね。読響の美しいアンサンブルなくしては成立しない音楽表現です。若い指揮者がこんな演奏をしたら、何を言われるか、分かりませんが、80歳の巨匠ゆえに許される音楽表現です。まあ、第2楽章までは納得できました。第3楽章、第4楽章も路線変更はなく、緩やかな音楽、室内オーケストラの箱庭的な表現が続きます。そういう響きできびきびとテンポアップすれば、最近はやりのオリジナル志向の音楽ですが、テンポはゆったりです。80歳の思い切った挑戦は面白かったのですが、音楽的にはあまり成功しなかったような気がします。やはり、この曲はフルトヴェングラー的なアプローチしかないでしょう。コバケン健在だけが印象付けられた演奏でした。

最後にマスクを着けたまま(今日の演奏者でマスクを着用していたのは指揮者の小林研一郎のみ!)、ご挨拶がありました。顔はマスクで隠されていますが、声を聴いて、小林研一郎だと確認できました。そして、アンコール曲が演奏されます。弦楽だけで飛びっきり美しいダニーボーイです。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:小林研一郎
  ピアノ:河村尚子
  管弦楽:読売日本交響楽団  コンサートマスター:小森谷巧

  グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
  ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 Op.43
   《アンコール》ショパン:ノクターン第20番 嬰ハ短調 遺作

   《休憩》

  ベートーヴェン:交響曲第3番 変ホ長調 Op.55「英雄」

   《アンコール》
    ダニーボーイ(アイルランド民謡)


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のグリンカの歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲は以下のCDを聴きました。

 エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団 1981年11月29日 レニングラード・フィルハーモニック大ホール ライヴ録音
 
ムラヴィンスキーの鋼鉄のような指揮で鉄壁の演奏です。


2曲目のラフマニノフの《パガニーニの主題による狂詩曲》は以下のCDを聴きました。

 ヴァレンティナ・リシッツァ、マイケル・フランシス指揮 ロンドン交響楽団 2010年3月 ロンドン ライヴ録音
 
ヒラリー・ハーンの伴奏のような形で初めて聴いたときのリシッツァは正直、あまり感心しませんでしたが、今や、大きく成長しました。このラフマニノフの協奏曲全集も素晴らしい出来です。


3曲目のベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」は以下のLPを聴きました。

 ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル 1950年6月20日 ベルリン ライヴ録音
 
先日購入したRIAS全集のLPレコードです。感想は不要でしょう。これ以上の演奏はフルトヴェングラーのほかの録音以外にはありません。



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       河村尚子,  

河村尚子のさらなる飛翔@紀尾井ホール 2020.10.13

河村尚子のたゆまない努力が大きな果実を結んだといえる、とても充実した内容のピアノ・リサイタルでした。昨年までの4回にわたるベートーヴェン・ピアノ・ソナタ・プロジェクトでも、はっきりと分かっていたことですが、彼女はピアノ・リサイタルに向けて、途轍もない準備を重ねてきています。どれだけ、練習を積み、どれだけ、曲の解釈を重ねることで、ここまでの高いレベルの演奏につなげることが出来たのでしょう。一音一音、1フレーズ1フレーズが丹念に練り上げられていて、そこはそう弾くのねって、驚きを感じながら、ひたすら、彼女のピアノの響きに引き込まれます。彼女のオリジナリティが随所に感じられて、それでいて、作曲家の意図の枠からはみ出ることのない誠実さも感じます。完璧に弾き込まれた楽譜は高いテクニックで超高速のパッセージも破綻をみせません。

モーツァルトの有名なソナタも新鮮さを湛え乍ら、心地よく聴くことができ、一切、退屈さを感じさせません。とりわけ、第1楽章の変奏曲はまるで、語り部がモノローグを語るような風情で変奏ごとに色んな表情を見せて、長大な楽章がまるで物語絵巻のように展開されます。第3楽章、トルコ行進曲はちょっと早めのテンポで心地よい響きを残して、駆け抜けていきます。

今日、一番、素晴らしかったのは、シューベルトの中期のソナタです。あえて、後期のソナタを弾かずに中期のソナタを弾いた意味が分かるような演奏でした。青春の永遠の憧れを秘めたような演奏は、この曲が持つ明るさやくったくのなさの内に秘めた、シューベルトの心の内のロマンを余すところなく表現していました。特に第3楽章の充実度はいかばかりか、大きな感銘を覚えました。しかし、saraiはその演奏の素晴らしさを少し聴き逃がしていたようです。アンコールで第2楽章が弾かれましたが、これこそ若きシューベルトの永遠へのロマンそのものではないですか。シューベルトとしてはとても短いソナタですが、ぎっしりした内容の音楽をたっぷりと聴かせてもらいました。河村尚子は今後、シューベルトの後期の遺作ソナタ3曲に向けて、そのキャリアを発進させたようです。どういうシューベルトになるか、ちゃんと聴かせてもらいますよ。これからも十分な準備をふまえて、素晴らしい高みに至るシューベルトを期待しています。

後半のショパンも前半のモーツァルト、シューベルトと同様に素晴らしい演奏でした。が、やはり、ここはシューマンを弾いてもらいたいところでした。saraiの個人的な趣味ですが、河村尚子の才能はドイツ・オーストリアものにこそ、向いていると勝手に思ってしまいました。交響的練習曲、クライスレリアーナ、幻想曲・・・


今日のプログラムは以下です。


  モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第11番 イ長調 K.331
  シューベルト:ピアノ・ソナタ 第13番 イ長調 D664 Op.120

   《休憩》

  藤倉 大:「春と修羅」(栄伝亜夜バージョン)
  ショパン:夜想曲第17番 ロ長調 Op.62-1
  ショパン:スケルツォ 第4番 ホ長調 Op.54
  ショパン:ポロネーズ 第7番「幻想」変イ長調 Op.61

   《アンコール》

    ショパン:夜想曲 第8番 変ニ長調 作品27-2
    ショパン:幻想即興曲 嬰ハ短調 作品66
    シューベルト:ピアノ・ソナタ第13番 イ長調 D664 より、第2楽章「アンダンテ」


最後に予習について、まとめておきます。以下のCDを聴きました。

1曲目のモーツァルトのピアノ・ソナタ 第11番は以下のCDを聴きました。

 マリア・ジョアン・ピリス 1990年5月 ハンブルク、フリードリヒ・エーベルト・ハレ セッション録音
 
ピリスの純粋無垢な演奏に心打たれます。ハイレゾで音質も最高です。


2曲目のシューベルトのピアノ・ソナタ 第13番は以下のCDを聴きました。

 田部京子 2010年2月20日 1999年3月30日~4月2日 豊田市コンサートホール セッション録音
 
シューベルトのスペシャリストである田部京子の奥行のある演奏です。


4曲目のショパンの夜想曲第17番は以下のCDを聴きました。

 ダン・タイ・ソン 1986年9月23日~28日 福島市音楽堂 セッション録音
 
ショパン・コンクールでの優勝の6年後の演奏です。定評通りの素晴らしい演奏。


5曲目のショパンのスケルツォ 第4番は以下のCDを聴きました。

 マウリツィオ・ポリーニ 1990年9月 ミュンヘン セッション録音
 
ポリーニのスケルツォですから、文句ない演奏。意外に中間部の抒情的な演奏が美しいです。


6曲目のショパンのポロネーズ 第7番「幻想」は以下のCDを聴きました。

 マウリツィオ・ポリーニ 1975年11月 ウィーン セッション録音
 
ポリーニのポロネーズも文句ない演奏。幻想的な美しさが表出されています。



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       河村尚子,  

河村尚子のラストスパートは見事なピアノ・ソナタ 第32番 ハ短調 Op.111 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ・プロジェクト Vol.4@紀尾井ホール 2019.11.13

河村尚子の2年間、4回にわたるベートーヴェンのピアノ・ソナタ・ツィクルスが今日のコンサートで完了。若手ピアニストが全力で取り組んだ成果は十分に受け止めました。全曲ツィクルスとはなりませんでしたが、とても聴きどころが満載でした。彼女のピアノは切れ味のよいタッチの美しい響きで音楽を奏でていき、技巧が安定していること。それはベートーヴェンのピアノ・ソナタでも遺憾なく発揮されました。それに十分な準備をしたと思われる仕上がりのよさも感じられました。今後、彼女がさらなる成熟の道を歩み、いつの日か、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲ツィクルスに挑戦することを楽しみにしていましょう。

今日は最後のコンサートであり、ベートーヴェンの後期ピアノ・ソナタ3曲というとても重い選曲です。正直言って、ちょっともどかしく感じるところもありましたが、彼女のピアノは次第に熱を帯びていきます。そして、第32番ハ短調のソナタでは素晴らしい演奏にじっと聴き入りました。とりわけ、第1楽章の圧倒的な迫力には特別なオーラを感じるほどの出来栄え。第2楽章アリエッタの最後に回帰したフーガの美しい演奏にも魅了されました。アンコールで弾いた第30番の終結部分はプログラム本番での演奏以上の素晴らしさ。それとも、プログラム本番ではきちんと聴き取れていなかっただけだったのでしょうか。

4回のツィクルスを通じて、最高の演奏だったのは難曲の《ワルトシュタイン》でした。あれはずっと記憶に残る凄絶な演奏でした。河村尚子の飛躍を今後も見届けたいと思っています。


今日のプログラムは以下です。

  <オール・ベートーヴェン・プログラム>

  ピアノ・ソナタ 第30番 ホ長調 Op.109
  ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調 Op.110

   《休憩》

  ピアノ・ソナタ 第32番 ハ短調 Op.111

   《アンコール》

    ピアノ・ソナタ 第30番 ホ長調 Op.109より、第3楽章の第6変奏と回想主題


最後に予習について、まとめておきます。以下のCDを聴きました。

 田部京子 2015年8月12日-14日 東京 稲城iプラザ セッション録音

田部京子の演奏はいつもながら詩情が漂っていて、強い感銘を覚えます。演奏技術が大変優れていて、ピアノの響きも美しい上に音楽性が豊かなのですから、言うことがありません。是非ともベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲の録音をお願いしたいところです。全曲ツィクルスの実演ならさらに結構ですけどね。



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       河村尚子,  

河村尚子の成熟への道 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ・プロジェクト Vol.3@紀尾井ホール 2019.4.25

軽い気持ちで聴き始めた河村尚子が弾くピアノ・ソナタ・プロジェクトですが、1回目は“疾走”、2回目は“パトス”と毎回、驚嘆する演奏が続きます。今回はいよいよ、後期のソナタにさしかかります。しかも難しいプログラムです。で、今回も驚嘆しました。それほど気合いを入れずに聴きに行きましたが、ええっ!こんなにうまくなったのか!と絶句です。とりわけ、後半に弾いた第29番 変ロ長調 Op. 106「ハンマークラヴィーア」の第3楽章の中間以降の成熟した演奏の深みのある表現、さらに第4楽章の圧倒的な迫力に脱帽です。実はベートーヴェンのピアノ・ソナタの中では、この「ハンマークラヴィーア」はsaraiの苦手の曲ですが、今日はこの大作の素晴らしさを初めて体感させてくるような最高の演奏でした。後期の3曲とも比肩できる内容に思える素晴らしさを味わわせてもらいました。

前半の2曲もとても美しい演奏でした。ですが、これは想定内の演奏。既に彼女なら、これくらいは弾くだろうと思っていたレベルの演奏。もちろん、これほどの演奏は相当の弾き込みを要したことは想像できます。文句ない演奏でした。ある意味、ロマンを感じさせる繊細な演奏でした。

後半は前半の2曲とは一変して、冒頭から、鍵盤を叩きつけるような凄まじい演奏。大変、気魄に満ちた演奏。ミスを恐れない突っ込んだ演奏ですが、それでいて、ミスがない凄い演奏です。長大な第1楽章もあっという間に終わります。短い第2楽章も切れの良い演奏です。そして、少し間を空けて、第3楽章の静謐な演奏が始まります。緊張して聴いていると、中間あたりで突如、何とも言えない高揚感に満ちた美しい表情の音楽が始まります。まさにベートーヴェンの後期特有の味わい深い表情の音楽です。河村尚子の成熟ぶりがまざまざと感じられます。誰がこれほどの高みに上り詰めた演奏ができるでしょう。哀切極まりない極上の音楽です。美の世界を味わい尽くせました。
第4楽章は徹底して対位法にこだわった音楽ですが、河村尚子はスケール感のある切れのよい演奏で弾きこなしていきます。そして、コーダの和音がピタッとはまって、最高のしめくくり。後期のソナタ群に共通するフーガの幕開きを高らかに告げるかのような圧倒的な演奏でした。

11月のこのシリーズの4回目、ラストの後期の大傑作の3曲は途轍もない演奏になる予感がします。後期のピアノ・ソナタと言えば、日本人ピアニストでは田部京子という大天才が素晴らしい演奏を聴かせてくれていますが、河村尚子も肉薄した演奏を聴かせてくれそうです。

先走って言えば、河村尚子がここまでのベートーヴェンのピアノ・ソナタを弾いた以上、次は、シューベルト、シューマン、ブラームスというドイツ本流のピアノ作品をチクルスで挑戦してもらいたいものです。田部京子のシューベルト・プラスに続け!!

今日のプログラムは以下です。

  <オール・ベートーヴェン・プログラム>

  ピアノ・ソナタ 第26番 変ホ長調 Op. 81a「告別」
  ピアノ・ソナタ 第27番 ホ短調 Op. 90

   《休憩》

  ピアノ・ソナタ 第29番 変ロ長調 Op. 106「ハンマークラヴィーア」

   《アンコール》

    ピアノ・ソナタ 第26番 変ホ長調 Op. 81a「告別」より、第3楽章


最後に予習について、まとめておきます。以下のCDを聴きました。

 エミール・ギレリス 
  ピアノ・ソナタ 第26番「告別」 1974年12月 ベルリン セッション録音
  ピアノ・ソナタ 第27番 1974年12月 ベルリン セッション録音
  ピアノ・ソナタ 第29番「ハンマークラヴィーア」 1982年10月 ベルリン セッション録音

予習ではありますが、このところ、エミール・ギレリスの演奏を名演鑑賞会として聴いています。透明感のある美しい響きと見事なテクニックの演奏にはほれぼれと聴き入ってしまいます。もちろん、アラウのベートーヴェンも大好きなので、第27番だけは比較して聴いてみました。アラウの重厚な響きもドイツ的な感性を感じさせる見事な演奏ですが、ギレリスの演奏はどの曲も安定感があります。ギレリスが標準の定番で、アラウはその至芸を楽しめる曲では最高という感じでしょうか。もちろん、録音も含めるとアンドラーシュ・シフの演奏がそれに割ってはいります。いやいや、そんなに限定できませんね。ポリーニ、ケンプ、ゼルキン、グルダ、リヒテル、ホロヴィッツ、ソロモン、イーヴ・ナット等々、見事な演奏が目白押しです。とても全部はなかなか聴けません。



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       河村尚子,  

河村尚子の迸るパトス ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ・プロジェクト Vol.2@紀尾井ホール 2018.11.29

前回、河村尚子が弾くベートーヴェンのピアノ・ソナタを聴いて、予想以上の演奏内容に驚嘆しました。彼女の演奏の特徴を一言で表現すると、“疾走”でした。文句なしに彼女のベートーヴェン:ピアノ・ソナタ・プロジェクトを聴き続けることにして、今日は2回目のリサイタルです。いやはや、前回以上にその素晴らしさに感嘆しました。どれだけ弾き込み、どれだけアナリーゼしたんでしょうか。とんでもない努力と才能の賜物が今日の演奏に結実していました。
(今回、河村尚子をユーザータグに登録しました。本文中で河村尚子にリンクを張ったので、クリックすると、過去、河村尚子が演奏した記事のすべてが表示されます。現在、計7記事です。)

最初の第18番 変ホ長調 Op.31-3はその素晴らし過ぎる演奏に驚愕。出だしこそ、少し硬かったのですが、その後の音の響きの美しさ、タッチの切れのよさ、考え抜かれたアーティキュレーションには圧倒されました。正直なところ、大好きな《テンペスト》を演奏してくれないことは残念でしたが、この第18番がこれほどの完成度で演奏されたことは嬉しいです。とりわけ、第4楽章の圧倒的な迫力には脱帽です。

そして、今日の極め付きだったのは次に演奏されたピアノ・ソナタ 第21番「ワルトシュタイン」です。最初の入りが凄く早いので、大丈夫かなと思っていたら、それでよかったんです。確かに完璧な演奏ではなかったかもしれませんが、音楽って、完璧に演奏すればいいものじゃありません。しかもこれは実演です。彼女の熱いパトスの迸りを感じるためにはこのテンポが必要でした。まさに一期一会とも思える凄い演奏に感動しました。第1楽章も凄かったけど、第3楽章の凄さといったら、言葉では表せません。河村尚子の人生を賭けたような演奏にこちらも人生を賭けて聴き入りました。そこには音楽を超えた何かが確かに存在しました。魂同士がつながるような凄まじい演奏にインスパイアされました。これ以上は書く言葉が見つかりません。しかし、疲れた! 聴いていたsaraiもアドレナリンが出尽くした感じです。河村尚子もそうだったんじゃないでしょうか。

後半はピアノ・ソナタ 第24番「テレーゼ」が美しく演奏されます。アドレナリン不足のsaraiも何とか、ついていけます。パーフェクトとも思える演奏があっと言う間に終わります。拍手を受けた河村尚子はそのままピアノの前に座り、じっと集中した後、ピアノ・ソナタ 第23番「熱情」を弾き始めます。見事な演奏ではありますが、先ほどの「ワルトシュタイン」のパトスは蘇りません。もっとも、こちらのアドレナリンも復活しませんから、集中力に欠けています。フツーに素晴らしい「熱情」でした。

結局、今日は「ワルトシュタイン」の日でした。忘れられない感動の演奏でした。

次回から、いよいよ、後期のピアノ・ソナタに突入します。そして、来年11月の4回目、ラストの後期の大傑作の3曲はどんな演奏になるんでしょう。楽しみですが、不安でもあります。日本人ピアニストでは田部京子という大天才が素晴らしい演奏を聴かせてくれていますが、河村尚子がどこまで肉薄できるでしょうか。

今日のプログラムは以下です。

  <オール・ベートーヴェン・プログラム>

  ピアノ・ソナタ 第18番 変ホ長調 Op.31-3
  ピアノ・ソナタ 第21番 ハ長調 Op.53「ワルトシュタインWaldstein」
   《休憩》

  ピアノ・ソナタ 第24番 嬰ヘ長調 Op.78「テレーゼTherese」
  ピアノ・ソナタ 第23番 ヘ短調 Op.57「熱情(アパッショナータ)Apassiponata」

   《アンコール》

    バガテル『エリーゼのためにFür Elise』 イ短調 WoO59

最後に予習について、まとめておきます。以下のCDを聴きました。

 エミール・ギレリス 
  ピアノ・ソナタ 第18番 1981年10月録音
  ピアノ・ソナタ 第21番「ワルトシュタイン」1972年1月録音
  ピアノ・ソナタ 第23番「熱情」1973年6月録音
 マウリツィオ・ポリーニ
  ピアノ・ソナタ 第24番「テレーゼ」 2002年録音

予習ではありますが、以前、ピアノ・ソナタ 第23番「熱情」をまとめて、33枚聴いた際に最高と思えた演奏がエミール・ギレリスでした。ですから、今回は楽しみも含めて、彼のピアノで中期のピアノ・ソナタを聴いてみることにしました。しかし、残念ながら、ピアノ・ソナタ 第24番「テレーゼ」は録音を残してくれませんでした。第32番も見録音でしたが、他にこの第24番と第1番, 第9番, 第22番も未録音のまま、68歳で亡くなってしまいました。亡くなる年に録音した第30番、第31番は素晴らしい演奏でしたから、ベートーヴェンの全集を完成できなかったことは誠に残念の極みです。今回聴いた3曲はテクニック、音の響き、タッチ、アーティキュレーションなどどれをとっても最高です。予習というよりも名演鑑賞になってしまいました。で、ピアノ・ソナタ 第24番「テレーゼ」は天才ポリーニにご登場願いました。これはパーフェクトな演奏です。非の打ちどころのない演奏とはこのことです。後でアンドラーシュ・シフも聴けばよかったと思いましたが、また、名演鑑賞会を開きましょう。



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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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えりちゃさん、お久しぶりです。saraiです。

なかなか、海外渡航の見通し、立ちませんね。来年あたりはどうでしょうね。長期戦覚悟で我慢するしかありませんね。

こちら

04/10 02:37 sarai

saraiさま、
お久しぶりです!
お元気にコンサートや旅行を楽しんでおられますね!
ブログ、楽しく拝見しています。おフランス、良いね😊
私は春だというのに、仕事と用事以

04/09 05:29 えりちや

気になってたずねても 
誰にも知らんと言われなんやろ
と思いつづけて居ました❗
写真みつけてこれだと思いました❕スッとしました
教えて下さって嬉しいです
ありがとうご

02/13 22:26 みーちゃん

みーちゃんさん、saraiです。

あの謎の建物は雄琴沖総合自動観測所という施設で琵琶湖の水質を測定しているそうです。

https://www.water.go.jp/kansai/biwako/html/repo

02/13 21:40 sarai

ずーと前にうきみどうに行きました
やはり、琵琶湖の真ん中の建物が何なのか気になったままです
分かりましたか
教えてください

02/13 20:54 みーちゃん

五十棲郁子さん、コメントありがとうございます。

水道水のこと、tap waterって言うんですね。知らなかった。単にwaterで通していました。ましてや、フランス語はほとんど

02/11 00:12 sarai

フランスも地方へ行くと英語が通じないでしょう。tap water ぐらいフランス語で言えないとね。

02/10 12:54 五十棲郁子
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