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ただただ、その詩情に満ちたピアノの響きに耳を傾けるだけ 田部京子ピアノ・リサイタル《シューベルト・プラス第9回》@浜離宮朝日ホール 2022.6.26

こんな素晴らしいピアノを聴いて、言葉もありません。田部京子が紡ぎ出す音楽は天上の世界です。田部京子のピアノが聴けるのが、日本人として生まれた特権だとさえ思えます。それほど評判にならないのが不思議ですが、かくいうsaraiも彼女の素晴らしさに気づいて、はまってしまったのは、たった5年前のことです。今日聴いている田部京子ピアノ・リサイタル《シューベルト・プラス》@浜離宮朝日ホールの2回目を聴いたのが実質的な初めての遭遇です。結局、そのとき受けた印象が今でも変わっていません。saraiの文章力のなさに情けなくなりますが、そのとき以上の文章は書けません。ですから、そのときの文章を以下に引用します。

------------------ここから引用開始-----------------------
いつも書くことですが、素晴らしい演奏を言葉で表現することは大変難しいことです。何とか表現してみましょう。田部京子の演奏は素晴らしいテクニックをベースとして、実に丁寧なアーティキュレーションとフレージングの表現が見事で、聴くものがその音楽にぐっと惹きつけられます。しかし、本当に凄いのはそういうことではなくて、彼女の優しく心の襞を撫でてくれるような深い詩情、あるいは味わい(初めて経験するような感覚なので適用な言葉が思い当たりません)に満ちた演奏です。
------------------ここまで引用終了-----------------------

やはり、今日の演奏も最初に聴いた時の印象と同じです。特に前半のブラームスとシューベルトの晩年の作品はがっちりと心をつかまれるようなしみじみとした音楽でした。音楽の恍惚感に浸ってしまうだけで、音楽と一体化した自分を感じます。この人のピアノを聴きながら、自分が老いていく幸福感は最上のものです。

最初のブラームスの3つの間奏曲 Op.117ではブラームスの枯淡の境地を感じさせる最高のロマンを味わわせてくれます。これでブラームスのOp.117~Op.119までが弾かれ、Op.116を除くブラームス晩年の作品群がすべて弾かれたことになります。このシューベルトプラスシリーズでは中心軸のシューベルトの周辺にシューマン、ベートーヴェンとブラームスの後期作品を配して、ドイツ・オーストリア音楽の古典からロマン派までの真髄を稀有の才を持つピアニスト、田部京子が最高のレベルで開示してくれました。実に驚異的なシリーズだったと、このブラームスを聴いただけで実感しました。

そして、シューベルトの重要な作品でただひとつだけ残っていた3つの小品 D.946が遂に演奏されます。第1曲の哀切極まりない音楽に続き、第2曲のロンドの第二エピソードの美しい抒情には感極まります。第3曲は趣きが異なり、躍動感に満ちたものです。シューベルト最晩年の傑作中の傑作を田部京子は見事に奏で上げてくれました。これで田部京子のシューベルトは完結です。D.958~D.960の3つの遺作ソナタの極上の演奏を中心にシューベルトのすべてを聴いた思いです。

後半はシューマンのピアノ・ソナタ 第1番です。スケール感に満ちた壮大な演奏です。若きシューマンの燃えるような思いがそこに込められています。フロレスタン的な要素が印象的で、他のシューマン作品のようなフロレスタン的な要素とオイゼビス的な要素が目まぐるしく交代するような作品ではありませんが、かえって、シューマンの一途な思いが迫ってきます。この難しい作品を田部京子は見事に演奏しました。有名なピアノ・ソナタ第2番 Op.22も聴きたいところでした。最近聴いた藤田真央の凄い演奏と対比してみたかったですね。

遂に12月でこのシリーズも完結するそうです。最後はブラームス、ベートーヴェン、シューベルトの最後の作品(正確な表現ではありませんが)を弾くそうです。なかでもシューベルトの遺作ソナタD.960は田部京子の代名詞とも言うべきもの。このシリーズでは3回目の登場です。最後を締めくくるにふさわしいものです。心して謹聴しましょう。


今日のプログラムは以下です。

  田部京子ピアノ・リサイタル
   《シューベルト・プラス第9回》

  ピアノ:田部京子
 
  ブラームス:3つの間奏曲 Op.117
  シューベルト:3つの小品 D.946

  《休憩》

  シューマン:ピアノ・ソナタ 第1番 Op.11

  《アンコール》
   シューマン:交響的練習曲 Op.13 変奏4(遺作) ??(確信はありません。違う曲だったかも)
   シューマン(リスト編曲):献呈(君に捧ぐ)~歌曲集『ミルテの花』の第1曲

最後に予習について、まとめておきます。

ブラームスの3つの間奏曲 Op.117を予習したCDは以下です。

 田部京子 2011年8月22日、23日、25日 上野学園 石橋メモリアルホール セッション録音

田部京子のブラームスの後期ピアノ作品集。これは名盤です。どれも素晴らしい。Op.116が収録されていないのが残念。


シューベルトの3つの小品 D.946を予習したCDは以下です。

 田部京子 1993年10月20〜22日 秋川キララ・ホール セッション録音

田部京子のシューベルト、流石の素晴らしい演奏です。もう、30年ほど前の録音ですが、実に完成された録音です。


シューマンのピアノ・ソナタ 第1番を予習したCDは以下です。

 アンドラーシュ・シフ 2010年6月20-22日 ノイマルクト、ライトシュターデル セッション録音

シフの弾くシューマンの素晴らしさは群を抜いています。そして、この曲の演奏では多分、ベストだと思うほどの美しさです。



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       田部京子,  

田部京子のシューベルトは世界初演のピアノ協奏曲? 藤岡 幸夫&東京シティ・フィル@ティアラこうとう(江東公会堂)大ホール 2022.1.29

恐いものみたさでこのコンサートに足を運んでみました。何と言っても、ピアノ曲の最高峰のひとつであるシューベルトのピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調D.960を協奏曲に編曲というのですから凄い。しかし、これを原曲と比較するというのは野暮過ぎます。そりゃーね、saraiが愛してやまぬシューベルトのピアノ・ソナタ第21番ですからね。先月も田部京子の演奏で素晴らしい演奏を聴いたばかりです。まだ、頭の中にそのときの演奏が残っています。
もっとも、編曲した吉松隆さんもそもそも田部京子さんの弾くシューベルトのピアノ・ソナタ第21番に魅せられて、この編曲を行ったそうです。そういうシューベルトへの愛を聴くというのが正しい聴き方なのかもしれません。そういう意味では、隅々まで熟知した名曲を違った形で聴いて、楽しめました。編曲が一番成功していたのは第2楽章。寂漠としたところこそ、もうひとつでしたが、とても美しい音楽に仕上がっていました。田部京子のピアノは珍しくベーゼンドルファーでした。演奏はもちろん、お得意のシューベルトですから悪かろう筈はありません。ですが、ちょっとオーケストラに合わせ気味でテンポが平板な感じになっていたのが残念なところ。いつもの詩的表現が前面に出ていない印象でした。

実はこの東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団を聴くのは今日が初めてです。評判はこれまでも聞いていたので、お手並み拝見というところです。後半のシベリウスの交響曲第1番、とても見事な演奏でした。最高の演奏と言ってもいいでしょう。冒頭のクラリネットの独奏から素晴らしくて、ぐっと惹き込まれます。第1楽章は第1ヴァイオリンのアンサンブルがもうひとつに思えましたが、それを補って余りあるのが、管セクションの素晴らしい演奏。ヴィオラも見事です。第2楽章にはいると、第1ヴァイオリンも美しいアンサンブルに変わります。すべてのパートが素晴らしいアンサンブルで響きます。実に瑞々しいシベリウスです。響きも音楽表現も最高です。そのまま、第3楽章、第4楽章と進みます。そして、圧巻のフィナーレ。実演で聴いたこの曲の演奏では最高のものです。こういう響きでチャイコフスキーを聴いてみたいとふと思います。在京オーケストラでは、もっとアンサンブルのよいオーケストラもありますが、どこか魅力を感じさせて、音楽に惹き込む力があります。思わず、3月のマーラーの交響曲第9番も聴きたくなって、ぽちっとチケットを買ってしまいました。来季の春シーズンもとりあえず、聴いてみましょう。東響、読響、都響、N響に続いて、気になる存在が増えました。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:藤岡 幸夫(首席客演指揮者)
  ピアノ:田部 京子
  管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団  コンサートマスター:戸澤哲夫

  シューベルト(吉松隆編):ピアノ協奏曲・・・ピアノ・ソナタ 変ロ長調D.960(第21番)のピアノとオーケストラのための演奏用バージョン(世界初演)

   《休憩》

  シベリウス:交響曲第1番 ホ短調 Op.39


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のシューベルト(吉松隆編)のピアノ協奏曲は世界初演なので予習は原曲のピアノ・ソナタ 変ロ長調D.960(第21番)を聴きました。

 田部京子 1993年10月20~22日 秋川キララ・ホール セッション録音

これは田部京子のシューベルト作品集の最初の録音です。もう、30年近く前の録音です。最近も聴いたばかりでしたが、何度聴き直してみても、やはり、素晴らしい演奏です。聴き惚れてしまいました。今度はライヴで再録音してもらいたいものですが、たとえ、再録音されなくても満足の1枚です。


2曲目のシベリウスの交響曲第1番は以下のCDを聴きました。

 パーヴォ・ベルグルンド指揮ヨーロッパ室内管弦楽団 1997年10月 セッション録音
 
シベリウスの同郷人であるベルグルンドはシベリウスのスペシャリストとも言える最高の存在。その彼が最後に残した3回目の交響曲全集は何とフィンランドのオーケストラではなく、ヨーロッパ室内管弦楽団。彼がドリームチームと呼んだだけのことはあり、そのピュアーな響きは最高です。これがベルグルンドが最終的に見つけたシベリウスだったんですね。saraiの一番のお気に入りのシベリウスです。ベルグランドを含めたフィンランド人指揮者によるヘルシンキ・フィルのシベリウスも好きですが、一番のお気に入りはこのCDです。



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       田部京子,  

とびっきり極上のシューベルト、ピアノ・ソナタ第21番 田部京子ピアノ・リサイタル《シューベルト・プラス第8回》@浜離宮朝日ホール 2021.12.19

コロナ禍でシューベルト・プラス・シリーズは昨年はちょっと中断してしまいましたが、今年は無事、年2回のペースに戻りました。そして、このシリーズの目玉であるシューベルトのピアノ・ソナタ 第21番が再登場です。シューベルト・プラス・シリーズで同じ曲が2回弾かれるのは異例のことですが、この作品はこのシリーズの柱ですし、saraiの最愛のピアノ曲なので、大歓迎です。

今日の田部京子は最初から絶好調の演奏を聴かせてくれます。モーツァルトのピアノ・ソナタ 第17番は第2楽章が絶品。こんなに美しい演奏は聴いたことがありません。しかし、それは序章。

次のブラームスの6つの小品 Op.118は圧倒的な演奏です。第2曲は当然、絶美の演奏ですが、最後の第6曲のパトスと抒情の交錯する演奏の凄かったこと。曲の弾き始めの幻想的な味わいを実に深く、緊張感を持って、演奏してくれました。この幻想的なパートを詩情に満ちて演奏できるのは田部京子だけです。ここが素晴らしいので、パトスの迸る中間部が激しく高揚するんです。昨年聴いたシフの演奏も凄かったのですが、今日の田部京子の演奏は圧倒的でした。

でも、後半のシューベルトのピアノ・ソナタ 第21番を聴いて、前半の素晴らしい演奏は頭から吹っ飛びます。心技体、すべてが完璧な演奏です。3年前に聴いたときはこんなレベルではありませんでした。テクニックが不調なところを精神面で補った感がありましたが、今日はすべてが最高です。うーん、saraiも前のめりになって聴き惚れます。第1楽章の冒頭はそっと入ります。この時点ではどうなるか分かりませんでしたが、すぐに見事な演奏にsaraiが翻弄されます。美しい音と切れのあるタッチ。旋律を繰り返すたびに演奏の精度が高まっていきます。シューベルトが書いた奇跡のような音楽・・・田部京子の演奏も奇跡のようなものです。ミューズが舞い降りてきたとしか言えません。郷愁に満ちて、そして、永遠への憧れ。シューベルトの遺作ソナタの高みを最高の形で表現してくれます。そして、第2楽章。これは田部京子の独壇場であるロマンと抒情に満ち溢れた極上の演奏に酔い痴れます。音楽とはかくも美しいものなのか。ピアノ演奏の究極を聴いた思いです。鍵盤を走る田部京子の白い指の美しい動きにも見とれます。第2楽章までで30分以上も過ぎますが、演奏と一体になった緊張感、集中力は高まるばかりです。第3楽章は軽い疾走ですが、ピアノの響きの美しさはますます冴え渡ります。第4楽章は緊張感のあるパトスの高揚が続き、そして、圧巻のコーダに突入します。凄い高まりの中、シューベルトの最高の音楽が完結します。凄い音楽を聴いてしまいました。このシューベルト・プラス・シリーズで最高の演奏ではなかったでしょうか。まあ、天才ピアニスト、田部京子ならば、これくらい弾いて当然だったのかもしれません。それにしても、一音一音、実に丁寧にピアノを弾く姿勢には驚愕するだけです。

アンコールはシューベルトの即興曲。これまた名曲です。憧憬に満ちた素晴らしい演奏でした。そして、締めは田部京子スペシャルのアヴェ・マリア。最後の2音はアーメン・・・。

次回、来年の6月はいよいよ、シューベルトの後期作品で残っていた最晩年の名曲、D.946の3つの即興曲(3つの小品)が弾かれます。そして、ブラームスの晩年の3つの間奏曲 Op,117。すべてが完結に向かっています。来年の12月に予想される第10回が完結になるのでしょうか。もう、弾いていない曲はないと思いますが、2度目に弾く曲もありでしょう。いっそのことシューベルトの遺作ソナタ3曲をまとめて弾いたら、それは素晴らしいことになりますね。もっとも、次回はシューマンのピアノ・ソナタ第1番を弾くようですが、そうなると、残りのピアノ・ソナタ2曲も弾いてもらわないといけませんね。そうすると、このまま、シューマン・プラスに移行するしかありませんね。シューマンのピアノ曲はまだまだ、たくさんあります。


今日のプログラムは以下です。

  田部京子ピアノ・リサイタル
   《シューベルト・プラス第8回》

  ピアノ:田部京子
 
  モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第17番 変ロ長調 K.570
  ブラームス:6つの小品 Op.118

  《休憩》

  シューベルト:ピアノ・ソナタ 第21番 変ロ長調 D960

  《アンコール》
   シューベルト:即興曲 D899、Op.90から 第3曲 Andante 変ト長調
   シューベルト(吉松隆・田部京子 共同編曲):アヴェ・マリア

最後に予習について、まとめておきます。

モーツァルトのピアノ・ソナタ 第17番を予習したCDは以下です。

 マリア・ジョアン・ピリス 1974年1月~2月、東京、イイノホール セッション録音

ピリスが29歳の若さで録音したモーツァルトのピアノ・ソナタ全集。何とも純真な乙女の清新で瑞々しい演奏です。saraiはこれ以上の演奏は知りません。若いっていいですね。藤田真央がソニーからモーツァルトのピアノ・ソナタ全集をインターナショナルにリリースするそうですが、それも楽しみです。そう言えば、アンドラーシュ・シフのモーツァルトのピアノ・ソナタ全集も26歳頃の録音で素晴らしい演奏でした。


ブラームスの6つの小品 Op.118を予習したCDは以下です。

 田部京子 2011年8月22日、23日、25日 上野学園 石橋メモリアルホール セッション録音

田部京子のブラームスの後期ピアノ作品集。これは名盤です。どれも素晴らしい。Op.116が収録されていないのが残念。


シューベルトのピアノ・ソナタ 第21番を予習したCDは以下です。

 田部京子 1993年10月20~22日 秋川キララ・ホール セッション録音

これ田部京子のシューベルト作品集の最初の録音です。もう、30年近く前の録音ですが、今回、改めて聴き直してみましたが、やはり、素晴らしい演奏です。聴き惚れてしまいました。今度はライヴで再録音してもらいたいものですが、たとえ、再録音されなくても満足の1枚です。



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       田部京子,  

あまりに素晴らし過ぎるシューマンのクライスレリアーナ、その詩情に満ちた演奏に絶句 田部京子ピアノ・リサイタル《シューベルト・プラス第7回》@浜離宮朝日ホール 2021.7.24

前回の《シューベルト・プラス第6回》はコロナ禍前の一昨年の暮れに催されました。昨年の暮れの《シューベルト・プラス特別編》を挟んで、緊急事態宣言下で、ようやく、《シューベルト・プラス第7回》が再開されました。既にシューベルトの主要な作品、特に晩年の作品は弾き終わり、今日は若い頃のシューベルトが書いたピアノ・ソナタ第4番でプログラムが始まりました。冒頭はなんだか、田部京子らしくないピアノの響きです。力強さはありますが、美しい響きとは言えません。それでも弱音の抒情的なパート、特に第2楽章の主要テーマは素晴らしく魅力的ではありました。ほぼほぼ満足という感じです。
次のショパンのピアノ・ソナタ第2番「葬送」は第1楽章、第2楽章のダイナミックな演奏が素晴らしいのですが、やはり、田部京子らしくて、魅了されたのは第3楽章の中間部の抒情的なパートです。全般に素晴らしい演奏ではありましたが、曲自体がそれほど田部京子向きではないのが残念なところです。

今日はこんなものかなあと思っていたら、後半のシューマンのクライスレリアーナの凄かったこと! ピアノの響きも美しく、完璧とも思える演奏でした。昨年聴いた上原彩子の演奏も素晴らしかったのですが、あれはむらのある演奏でした。もっとも、それが魅力ではありました。今日の田部京子の演奏は魅力にあふれて、完璧でもありました。saraiの人生で最高のクライスレリアーナです。多分、これを超える演奏を聴くことはないでしょう。シューマンのピアノ曲で一番好きなクライスレリアーナの凄い演奏を聴いて、感無量です。迫力のあるパートも素晴らしかったのですが、やはり、シューマンの詩情に満ちた音楽をこのように演奏できるのは田部京子だけでしょう。いつもはこの曲は切れ込みの鋭い演奏に魅了されますが、抒情に満ちた詩情にこれほど魅了されたことはありません。シューベルトと同様、田部京子はシューマンの本質を描き出すことのできる稀有な天才ピアニストです。曲の詳細な演奏の感想を書きたいところですが、クライスレリアーナのような複雑な構造の作品は大づかみな印象しか、捉えることができません。それがシューマンの音楽の魅力だと思っています。これで田部京子のシューマンもこのクライスレリアーナで、これまでの幻想曲、交響的練習曲、謝肉祭など、主要な作品は聴かせてもらいました。もう満足です。あとはブラームスの後期作品、Op.116~Op.119が聴ければ満足です。既にOp,119は素晴らしい演奏を聴かせてもらいました。今年の暮れの次回のシューベルト・プラスでOp.118を聴かせてもえるようです。残りはOp.116とOp,117ですね。もちろん、シューベルトの最晩年のD.946の3つの即興曲(3つの小品)も残っています。シューベルト・プラスのシリーズも終盤にかかってきました。

そうそう、アンコールのトロイメライとショパンの夜想曲第20番もとびっきり、美しい演奏でした。最後はアヴェアリアで〆かと期待しましたけどね。


今日のプログラムは以下です。

  田部京子ピアノ・リサイタル
   《シューベルト・プラス第7回》

  ピアノ:田部京子
 
  シューベルト:ピアノ・ソナタ第4番イ短調D.537 Op.164
  ショパン:ピアノ・ソナタ第2番変ロ短調「葬送」Op.35

  《休憩》

  シューマン:クライスレリアーナ Op.16

  《アンコール》
   シューマン:『子供の情景』Op.15 より 第7曲 トロイメライ(夢) (Träumerei)
   ショパン:夜想曲第20番 嬰ハ短調 BI. 49「レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ(Lento con gran espressione)」(遺作)


最後に予習について、まとめておきます。

シューベルトのピアノ・ソナタ第4番を予習したCDは以下です。

 アルフレート・ブレンデル 1982年3月、ロンドン セッション録音

シューベルトのピアノ曲全集と言えば、やはり、ブレンデル。この曲も美しいピアノの響きが素晴らしいです。


ショパンのピアノ・ソナタ第2番「葬送」を予習したCDは以下です。

 ウラディミール・ホロヴィッツ 1962年 セッション録音

まさに鉄壁の演奏。何もいうことはありません。


シューマンのクライスレリアーナを予習したCDは以下です。

 ウラディミール・ホロヴィッツ 1985年 セッション録音

これも完璧な演奏。これにマルタ・アルゲリッチの録音があれば、ほかには何も必要ありません。ホロヴィッツの鉄壁な演奏とアルゲリッチの奔放な演奏が並び立ちます。



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       田部京子,  

田部京子、胸の熱くなる究極のモーツァルト with 佐渡裕&新日本フィルハーモニー交響楽団@すみだトリフォニーホール 2021.1.16

昨年は田部京子が弾くベートーヴェンのピアノ協奏曲を聴く機会が多くて、その素晴らしい演奏に魅了されました。しかし、今日のモーツァルトのピアノ協奏曲は別次元の素晴らしさ。ピアノの響き、タッチ、フレージング、切れ、音楽表現などのあまりの美しさに胸が熱くなりました。天才ピアニスト、田部京子にしても、この演奏レベルの素晴らしさに至るためには、このコンサートに向けて、よほどの準備を重ねたんでしょう。この演奏の素晴らしさを表現するには言葉を尽くしても足りません。

第1楽章、美しいオーケストラの音楽が雰囲気を高めていきます。力の抜けたバランスのよい演奏です。初聴きかもしれない佐渡裕の指揮も好感を持てます。いわゆるデモーニッシュな表現とは対極をいくような繊細な音楽が奏でられます。そのオーケストラの好演をエネルギーに変えて、田部京子の切れの良いタッチのピアノが純粋無垢な響きを奏でていきます。特に右手で奏でる高域の響きが心地よい旋律を浮き立たせます。聴いているsaraiの魂が揺さぶられます。その桃源郷のような世界に浸っているうちにカデンツァが始まります。ベートーヴェンの作ったカデンツァですね。カデンツァ終盤の見事なトリルはまるでベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番の第2楽章を想起させるような素晴らしい演奏です。

第2楽章はピアノのソロで始まります。冒頭はもうひとつの響きですが、オーケストラ、とりわけ、弦の美しい響きに触発されるかのようにピアノの響きも純化していきます。この楽章のトリオが終わった後、また、冒頭のメロディーが戻ってきたときは見違えるような美しい響きで細部の表現も磨き上げられたようなタッチで描き出されます。うっとりしながら、この楽章を終えます。

第3楽章は一転して、切れのよいピアニズムで進行します。それも音楽が進行するにつれて、実に流麗な音楽が流れ、saraiの心も浮き立ちます。いつしか、最後のカデンツァに突入し、田部京子の音楽表現の見事さに感動するのみです。最後は鍵盤上をダイナミックに指が左右に音階を奏でて、カデンツァが終わります。まるで独奏曲のフィナーレのようです。一瞬の間を置き、オーケストラが一気にテンポを上げて、コーダに向かっていきます。田部京子のピアノもそれに同期して、実に切れのよい響きを奏でていきます。そして、圧巻のフィナーレ。心の中でブラボーをコールします。最高のピアノ協奏曲第20番でした。

最愛のクララ・ハスキルとは違った音楽表現でしたが、丁寧で美しいタッチ、繊細さでは上回ったかもしれません。恐ろしいほど、緊張感に満ちた究極の演奏に呆然とするだけでした。佐渡裕指揮の新日フィルも素晴らしいサポートでした。特に高弦の美しいこと、この上ありません。

ベートーヴェンの交響曲2曲について、もはや、書くべき気力がありません。佐渡裕の思ったほど力みのない美しい表現でベートーヴェンを満喫しました。新日フィルのアンサンブルも特に最後に演奏した交響曲第6番「田園」で美しさの極みを発揮していました。終楽章の心の安寧を思わせる極上の世界に心を洗われました。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:佐渡裕
  ピアノ:田部京子
  管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団  コンサートマスター:崔文洙

  ベートーヴェン:交響曲第8番 ヘ長調 Op. 93
  モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K.466

   《休憩》

  ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調 Op.68「田園」


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目、3曲目のベートーヴェンの交響曲第8番、交響曲第6番「田園」は以下のCDを聴きました。

 ルドルフ・ケンペ指揮ミュンヘン・フィル 1971~73年、ミュンヘン、ビュルガーブロイケラー セッション録音
 
ケンペが首席指揮者を務めていたミュンヘン・フィルを使って録音したベートーヴェンの交響曲全集です。ケンペはこの全集を完成した3年後、65歳の若さで急逝しました。ケンペの残した遺産のひとつです。


2曲目のモーツァルトのピアノ協奏曲第20番は以下のCDを聴きました。

 田部京子、下野竜也指揮紀尾井シンフォニエッタ東京 2012年3月14-15日 上野学園 石橋メモリアルホール セッション録音
 
田部京子の美しい演奏がすべてです。しかし、今日の最高の演奏には及びません。今日のライヴ録音がCD化されないかな・・・。



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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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あの弦の響きにもうハマるのですよ!
あと2公演ありますが、もう既に同じプログラムを2回演奏しているので、ますます良くなるか、ち

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