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ジルヴェスターコンサート@横浜みなとみらいホール 2016.12.31

あけまして、おめでとうございます。今年もsaraiのブログ、よろしくお願いします。

大晦日は恒例のジルヴェスターコンサート@みなとみらいホールで年越しです。saraiと配偶者、娘と婿さんの4人です。

コンサートに先立って、1年を締めくくる贅沢をします。みなとみらいグランドセントラルテラスにある本格イタリアン「LEONE MARCIANO レオーネ マルチアーノ」でのディナーです。レストラン前のアプローチが美しい照明で煌いています。

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お店の入口です。

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美しい内装の店内です。予約してあるので、さっとテーブルに案内されます。まずはワインを注文。チョイスは娘に一任。スプマンテが出てきます。

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泡立つグラスで乾杯。

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スプマンテはいったん、氷のバケツに入ります。

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これが今日のコースのメニュー。お土産付きです。

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まずはバーニャカウダ。しゃきしゃきの野菜が美味しいです。

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2皿目は・・・写真を撮るのを忘れました。生ハムと燻製チーズの美味しい一皿でした。

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もう、ここでスプマンテは飲み切って、娘と婿さんは赤ワインに切り換えです。

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3皿目は2種類のパスタ。もちもちで美味しいパスタです。

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娘と婿さんは次々と赤ワインを飲み続けています。付き合い切れません。

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4皿目はメインの鴨肉のソテー。柔らくて美味しいです。

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最後はデザート。
これは盛り合わせ。パンナコッタ、ソルベなど。

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ゴルゴンゾーラチーズとホワイトチョコレート。デザートは2つからのチョイスになります。

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コーヒーでシメです。

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豪華なディナーを楽しんで、みなとみらいホールに移動。レストランを出ると、ライトアップされたみなとみらいの街が文字通り輝いています。

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みなとみらいホールのジルヴェスターコンサートは今年で第18回目。そして、saraiがジルヴェスターコンサートに通うのもこれで18回。全部聴いてます。よく通ったものです。
今回のプログラムは以下です。

《第1部》

池辺晋一郎:ヨコハマ・ファンファーレ
モーツァルト:オペラ「後宮からの逃走」序曲
ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番 イ短調Op.77より(Vn:吉田南)
グラナドス:スペイン舞曲集Op.37より第5番"アンダルーサ"(Pf:中野翔太)
ガーシュウィン:The Man I Love、A Foggy Day(Pf:中野翔太)
ドニゼッティ:オペラ《リタ》より「この清潔で愛らしい宿よ」(Sop:鷲尾麻衣)
ワーグナー:オペラ《ニュルンベルクのマイスタージンガー》第3幕より優勝の歌「朝は薔薇色に輝き」(Ten:望月哲也)
テレマン:2つのヴァイオリンのための協奏曲(Vn:漆原啓子、漆原朝子)
ライヒ:「クラッピング・ミュージック」(打楽器奏者6名)
カリンニコフ:交響曲第1番 ト短調より第4楽章

《休憩》

《第2部》

ラヴェル:弦楽四重奏曲 ヘ長調より第1楽章(ヴァイオリン/漆原啓子&漆原朝子、ヴィオラ/百武由紀、チェロ/堀了介)
モーツァルト:オペラ《ドン・ジョヴァンニ》より「恋人よ、さあこの薬で」(Sop:鷲尾麻衣)
レオンカヴァッロ:「朝の歌(マッティナータ)」(Ten:望月哲也)
ドニゼッティ:オペラ《愛の妙薬》より二重唱「ラララ」(Sop:鷲尾麻衣、Ten:望月哲也)
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調Op.64より第1楽章(Vn:徳永二男)
シベリウス:交響詩「フィンランディア」Op.26【カウントダウン曲】
コダーイ:組曲「ハーリ・ヤーノシュ」よりウィーンの音楽時計
J.シュトラウス2世:美しく青きドナウ
J.シュトラウス1世:ラデツキー行進曲

【出 演】

音楽監督:池辺晋一郎、飯森範親(Cond)、徳永二男(エグゼクティブ・ディレクター/Vn)、朝岡聡(MC)
横浜みなとみらいホール ジルヴェスターオーケストラ(コンサートマスター:会田 莉凡、石田泰尚、扇谷泰朋、神谷未穂、高木和弘、藤原浜雄、ファビアン・ヴェットシュタイン)

今回のジルヴェスターコンサートは昨年と同様に前から2列目の中央の席で聴きました。とってもよく響く最高の席でした。

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ジルヴェスターコンサートはお祭りのようなガラコンサートですから、そんなに素晴らしい音楽ばかりが聴けるわけではありません。
印象を書くほどのことはありませんが、ヴァラエティに富んだ音楽が次々に聴けて、結構、楽しめました。

モーツァルトのオペラ「後宮からの逃走」序曲はなかなか良い演奏で、モーツァルトの音楽の素晴らしさを感じました。

テノールの望月哲也はワーグナーの名アリアを立派に歌い切ってくれました。これほどはなかなか歌えないでしょう。

カリンニコフの交響曲第1番は予想外に見事な演奏でした。

前半のプログラムで目立ったものはこれくらいかな。

休憩後の後半のプログラムはなかなか、よい演奏が続きます。

ソプラノの鷲尾麻衣が歌ったモーツァルトのオペラ《ドン・ジョヴァンニ》よりのアリア「恋人よ、さあこの薬で」はとても気持ちよく聴けました。この人はモーツァルト向きかな。

レオンカヴァッロの「朝の歌(マッティナータ)」はまたまた、テノールの望月哲也が見事に歌ってくれました。素晴らしいテノールですね。

で、続く《愛の妙薬》の二重唱も鷲尾麻衣、望月哲也のお二人が楽しく、そして、ドニゼッティらしく、歌い切ってくれました。

この日の最大の衝撃がメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲。ヴァイオリニストの徳永二男って、こんなに弾けるんですね。失礼ながら、これまで甘く見ていました。これなら、是非、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲も全曲を聴いてみたいものです。奇をてらわずに楽譜そのまま弾いているようで、素晴らしく美しい音楽になっています。ヴァイオリンの美音にも聴き惚れました。

カウントダウン曲のシベリウスの交響詩「フィンランディア」は迫力あふれる演奏。カウントダウンに気をとられたのが残念なところでした。ところでカウントダウンは完全成功!!

最後は例年通り、ラデツキー行進曲を手拍子してコンサート完了。

今年も音楽で新年が始まりました。また、音楽聴きまくりの1年になりそうです。


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saraiの音楽総決算2016:オーケストラ・声楽曲編

今年の音楽の総決算もいよいよ最後になりました。そして、ブログも今年の書き納めです。

今回はオーケストラ・声楽曲編です。
このジャンルは今年もたくさんのコンサートを聴きました。ウィーン・フィルやシュターツカペレ・ドレスデンというスーパーオーケストラも素晴らしかったんですが、マイケル・ティルソン・トーマスの指揮したサンフランシスコ交響楽団の精妙なマーラーにとても感銘を受けました。
ちなみに昨年の結果はここです。

で、今年はベスト10は以下です。

1位 マイケル・ティルソン・トーマス、感動のマーラー!、そして、ユジャ・ワンの圧倒的なショスタコーヴィチ! サンフランシスコ交響楽団@サントリーホール 2016.11.21

2位 天才R.シュトラウスの音響世界を描き尽すティーレマン&シュターツカペレ・ドレスデン@サントリーホール 2016.11.22

3位 マーラーはやっぱりウィーン・フィルで聴かないとね@ザルツブルク音楽祭(祝祭大劇場) 2016.8.6

4位 マタイ受難曲、ラ・プティット・バンド@東京オペラシティ コンサートホール 2016.3.5

5位 マタイ受難曲、トーマス教会合唱団&ゲヴァントハウス管弦楽団@サントリーホール 2016.3.9

6位 新時代の幕開けか・・・ロト&東京都交響楽団@サントリーホール 2016.4.7

7位 心に沁みる晩年のシューベルト:ロベルト・ホル《白鳥の歌》@上大岡ひまわりの郷 2016.11.20

8位 鉄壁のアンサンブルのショスタコーヴィチ・・・インバル&東京都交響楽団@サントリーホール 2016.9.20

9位 感動のドイツ・レクィエム・・・チェン・レイス&ノット&東響@ミューザ川崎シンフォニーホール 2016.4.23

10位 マーラーの描くもの・・・薄明の先の無、ヤンソンス&バイエルン放送交響楽団@サントリーホール 2016.11.27


今年の1位は、マイケル・ティルソン・トーマスとサンフランシスコ交響楽団によるマーラーの交響曲第1番《巨人》。因みに昨年の1位はハイティンク指揮ロンドン交響楽団のマーラーの交響曲第4番。やはり、マーラーの交響曲は聴き応えがあるということでしょうか。それにしても、マイケル・ティルソン・トーマスの細かい表情を付けた丁寧な指揮はマーラーの真髄を余すところなく表現する最高のものでした。次の来日でまたマーラーのほかの作品を聴かせてもらいたいものです。

2位はティーレマン&シュターツカペレ・ドレスデンが演奏したR・シュトラウスのアルプス交響曲。この曲はR・シュトラウスの中期の傑作ですが、内容的には晩年の名作群につながっている素晴らしい作品であることを如実に示してくれるような深い表現に満ちた演奏でした。1位に選んだマイケル・ティルソン・トーマスとサンフランシスコ交響楽団によるマーラーと甲乙つけがたいコンサートでした。どちらを1位に選んでもよかったんですが、既にティーレマンの名演はたくさん聴いていますから、ここはマイケル・ティルソン・トーマスに1位を譲ってもらいましょう。

3位はザルツブルク音楽祭でのズビン・メータ指揮のウィーン・フィルのコンサートです。とりわけ、マティアス・ゲルネが歌ったマーラーの《亡き子をしのぶ歌》は歌もオーケストラも素晴らしい演奏でした。

4位、5位はマタイ受難曲。いずれも聖金曜日の3週間ほど前に聴きました。クイケン率いるラ・プティット・バンドはピリオド奏法&OVPP(One Voice per Part:合唱の1声部を一人で歌う)でコラールの美しい響きに感動しました。一方、トーマス教会合唱団&ゲヴァントハウス管弦楽団は独唱が素晴らしく、特にイエス役のクラウス・ヘーガーが傑出した出来でした。

6位はポスト・ピリオド時代の旗手フランソワ=グザヴィエ・ロトの指揮した都響のサントリー定期演奏会。ロトの清新な演奏は新時代の幕開けを予感させるものでした。ウェーベルン編曲のシューベルトのドイツ舞曲、R.シュトラウスの晩年の名作メタモルフォーゼン、ベートーヴェンの交響曲第3番《英雄》、いずれも目から鱗の素晴らしい演奏に驚嘆しました。これから、ロトの指揮するコンサートは聴き逃がせません。

7位はロベルト・ホルが歌ったシューベルトの晩年の名作《白鳥の歌》。昨年もロベルト・ホルの《冬の旅》を聴いて、感銘を受けましたが、今年は《白鳥の歌》を聴いて、それ以上に心に沁みました。今年は他にテノールのユリアン・プレガルディエンの素晴らしい《白鳥の歌》を聴きました。テノールのユリアン・プレガルディエンとバス・バリトンのロベルト・ホルという違いがあるにせよ、いずれも素晴らしい歌唱でした。それはシューベルトの《白鳥の歌》がいかに名曲であるかということを再認識することでもありました。

8位はインバル&東京都交響楽団の演奏したショスタコーヴィチの交響曲第8番。インバルの80歳記念&都響デビュー25年記念のアニバーサリーコンサートシリーズ(全3回)の最後を飾るコンサートでした。このコンサートシリーズはいずれも素晴らしい出来栄えで、どれほどリハーサルを重ねたのかと思うほどのものでした。インバルが振ると、都響は素晴らしい演奏をします。このショスタコーヴィチの交響曲第8番も奇をてらうことなく、楽譜通りの演奏ではありましたが、その音楽的な完成度の高さは驚くべきものでした。

9位はジョナサン・ノット指揮の東京交響楽団によるブラームスのドイツ・レクイエム。ソプラノのチェン・レイスの素晴らしい歌唱も相まって、感動的な演奏でした。前半で演奏されたシェーンベルクの《ワルシャワの生き残り》が出色の出来でしたし、ベルクの「ルル」組曲も意欲的な取り組みで楽しめました。音楽監督のジョナサン・ノットは東京交響楽団と10年間の長期契約(異例?)を結んだようなので、これからは注目ですね。年末のコンサート形式オペラの《コジ・ファン・トゥッテ》も素晴らしい出来でした。

10位はヤンソンス&バイエルン放送交響楽団のマーラーの交響曲第9番。良い演奏ではありましたが、残念ながら、saraiとは波長が合わなかったのこのランク。別の日に聴けば、もっと感じるものはあったのかもしれません。


ジャジャーン!
ここで今年の大賞発表です。

今年は迷いに迷った挙句、やはり、初のザルツブルグ音楽祭でのオペラを選定しました。

 モーツァルト《コジ・ファン・トゥッテ》@ザルツブルク音楽祭(フェルゼンライトシューレ)

記事はここです。
決して、スーパーキャストだったわけでもなく、オーケストラもウィーン・フィルでなく、ザルツブルク・モーツアルテウム。しかし、素晴らしいオペラ上演でした。モーツァルト生誕の地ザルツブルクでこんな素晴らしいものが体験できて、saraiは幸せ以外のなにものでもありませんでした。

因みに最後まで大賞の選定で迷ったのはマイケル・ティルソン・トーマスとサンフランシスコ交響楽団およびユジャ・ワンのコンサート。オーケストラ部門と協奏曲部門のダブル1位だった素晴らしかったコンサートです。

 マイケル・ティルソン・トーマス、感動のマーラー!、そして、ユジャ・ワンの圧倒的なショスタコーヴィチ! サンフランシスコ交響楽団@サントリーホール

このコンサートは上に書いたとおりです。特にマーラーはまた、このコンビで是非聴かせてもらいたいものです。交響曲第9番で今度は大賞に選定したいものです。

来年の感動に期待しながら、今年の総括は幕としましょう。

今年も当ブログを読んでいただいたみなさんには感謝です。また、来年も引き続き、ご愛読ください。

saraiはこれから、みなとみらいホールのジルヴェスターコンサートに出かけます。今年も音楽で年越しです。

皆さま、よいお年を!!


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saraiの音楽総決算2016:協奏曲編

さて、前回に引き続き、今年の音楽の総決算です。

今回は協奏曲編です。
今年はユジャ・ワンのピアノが聴けたのが最大の収穫でした。凄まじくスリリングな演奏に興奮させられました。
ちなみに昨年の結果はここです。

今年は以下をベスト10に選びました。

1位 マイケル・ティルソン・トーマス、感動のマーラー!、そして、ユジャ・ワンの圧倒的なショスタコーヴィチ! サンフランシスコ交響楽団@サントリーホール 2016.11.21

2位 上原彩子、魂ゆさぶるチャイコフスキー@みなとみらいホール 2016.1.6

3位 ヴィニツカヤは美貌だけじゃなかった!!衝撃のプロコフィエフ・・・インバル&東京都交響楽団@東京文化会館 2016.9.15

4位 鬼神のごとき上原彩子のプロコフィエフ_ゲッツェル&神奈川フィル@神奈川県民ホール 2016.9.22

5位 庄司紗矢香のパーフェクトな響き《ブリテン:ヴァイオリン協奏曲》・・・インキネン&日本フィル@サントリーホール 2016.4.22

6位 キュッヒルの美しい響きのゴルトマルク_神奈川フィル@横浜みなとみらいホール 2016.9.17

7位 オーギュスタン・デュメイの冴え渡るモーツァルトと支えるインバル&東京都交響楽団の鉄壁のアンサンブル@サントリーホール 2016.9.20

8位 河村尚子の熱いラフマニノフ_山田和樹&バーミンガム市交響楽団@サントリーホール 2016.6.28

9位 庄司紗矢香、意欲的なデュティユー・・・東京都交響楽団@サントリーホール 2016.11.19

10位 菊池洋子の至福のモーツァルトwith名古屋フィル&神奈川フィル@横浜みなとみらいホール 2016.6.25


ユジャ・ワンは実質、初聴きでしたが、saraiは即、恋に落ちました。ヴィジュアル的にも音楽的にも素敵でお洒落なピアニスト。こんなキュートな芸術家って、いるんですね。ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲の演奏の迫力とスリリングさ・・・言葉を失うほど凄かった!! それに2曲弾いたアンコールのお洒落さには脱帽です。マイケル・ティルソン・トーマス率いるサンフランシスコ交響楽団の高速パートのサポートも見事の一語でした。

上原彩子の弾くチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番。彼女の弾くロシアものは素晴らしいです。ラフマニノフ、プロコフィエフ、そして、チャイコフスキーは最高です。上原彩子の凄まじい気魄の演奏に心底、魂が揺さぶられて、大変な感動を味わいました。

アンナ・ヴィニツカヤの凄い美貌とそれ以上に凄い超絶技巧に圧倒されたコンサートでした。インバル&都響のサポートも見事でした。プロコフィエフのピアノ協奏曲 第2番がこんなに凄い難曲、しかも名曲だということも初めて知りました。いやあ、驚いた。

次もプロコフィエフのピアノ協奏曲ですが、これは第3番。ポピュラーな名曲です。これも難曲ですが、第2番を聴いた後だったので、それに比べるとちょっとシンプルに思えてしまいます。上原彩子のお得意の曲ですが、まさに鬼神のごとく、物凄い気魄の演奏、大変な興奮と感動を味わいました。

ブリテンのヴァイオリン協奏曲を初めて聴きましたが、大変な傑作です。庄司紗矢香はヴァイオリンの響きの美しさ、音楽の表現の両面でパーフェクトとも思える快演を聴かせてくれました。

ウィーン・フィルを引退したばっかりのライナー・キュッヒルのソロで、日本では演奏機会の少ないゴルトマルクのヴァイオリン協奏曲第1番を聴きました。ヴィルトゥオーソ的な演奏ではありませんが、ウィーン風といった感じの魅力に満ちた美しい演奏にうっとりとしました。

一度、オーギュスタン・デュメイの実演を聴いてみたいと思っていましたが、その艶やかなヴァイオリンの音色は期待以上のものでした。モーツァルトのヴァイオリン協奏曲をこんなに心地よく聴いたことはあったでしょうか。ピアノ協奏曲と同じくらいの愉悦をもたらせてくれました。インバル指揮の東京都交響楽団もこれ以上はないと思えるほどのアンサンブルでモーツァルトの美しい響きを聴かせてくれました。

河村尚子が弾くラフマニノフのピアノ協奏曲第3番はこうなのねって感じで、ラフマニノフの音楽を満喫できました。第3楽章のフィナーレの熱さにはしびれました。

庄司紗矢香が意欲的に取り組んだデュティユーのヴァイオリン協奏曲《夢の樹》。半分は満足し、残り半分は彼女ならば、もっと弾けたんじゃないかという残念な思いが残りました。で、このあたりのランクになりました。是非、再チャレンジしてもらいたいと思います。

菊池洋子の見事なモーツァルトが聴けて、まったく、満足、満足のコンサートでした。もっと、高いランクにしてもよかったですね。

いよいよ、次回は最終回、大賞も発表します。そして、大晦日でもありますね。


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saraiの音楽総決算2016:オペラ・オペレッタ・バレエ編

さて、前回に引き続き、今年の音楽の総決算です。

今回はオペラ・オペレッタ・バレエ編です。
今年はオペレッタとバレエは見ていません。オペラもたったの8回しか見ていません。そのうち5回は海外です。今年は低調でした。
ちなみに昨年の結果はここです。

で、今年は以下をベスト5に選びました。

1位 最高のモーツァルト!!《コジ・ファン・トゥッテ》@ザルツブルク音楽祭(フェルゼンライトシューレ) 2016.7.31

2位 静謐の美に深く感動!!《ダナエの愛》@ザルツブルク音楽祭(祝祭大劇場) 2016.8.5

3位 ティーレマンが振るとワーグナーの音楽が輝く!!《ラインの黄金》シュターツカペレ・ドレスデン@サントリーホール 2016.11.18

4位 アデスの新作オペラ《皆殺しの天使》@ザルツブルク音楽祭(モーツァルト劇場) 2016.8.1

5位 モラヴィアの深い響き:オペラ《イェヌーファ》@新国立劇場 2016.3.8


人生初めてのザルツブルク音楽祭遠征で初めて見たオペラがこの《コジ・ファン・トゥッテ》。モーツァルト生誕の地で見るモーツァルトの傑作オペラは素晴らしいものでした。いやあ、こんな凄い公演が聴けるなんて、さすがにザルツブルク音楽祭ですね。もう満足を通り越して、唖然としてしましました。文句なしの今年のトップです。

次もまた、ザルツブルク音楽祭に因縁のあるR・シュトラウスの晩年の傑作オペラの《ダナエの愛》。このオペラをザルツブルク音楽祭でウィーン・フィルの演奏で聴けただけでも満足ですが、第3幕の後半、ウィーン・フィルが美しい音楽を奏でて、ダナエ役のストヤノヴァが心の平安と愛をしっとりと歌い上げるところから後はもう静謐な美に包まれて、静かな感動に心を浸すのみでした。R・シュトラウスの音楽を愛するものとしては何も言うべき言葉を持たない、極上の体験でした。

《ラインの黄金》はサントリーホールのホールオペラでしたが、ちゃんとしたオペラハウスでのオペラ上演にも匹敵するような素晴らしい内容でした。それにティーレマンにはワーグナーが一番、似合っています。ティーレマンが振るシュターツカペレ・ドレスデンの響きは黄金のように輝いていました。

昨年もウィーン国立歌劇場で現代のオペラの旗手アデスによるオペラ《テンペスト》を聴いて感銘を受けましたが、今年はザルツブルク音楽祭で世界初演となるアデスの新作オペラ《皆殺しの天使》を聴きました。特に女声歌手たちの驚異的な歌唱には圧倒されました。なかでもフォン・オッターの素晴らしい歌唱は特筆すべきものでした。また、終幕の荘厳なレクイエム(ルクス・エテルナ)ももう一度聴いてみたいほどの圧倒的な迫力でした。

ヤナーチェックの作曲した《イェヌーファ》を新国立劇場が見事に公演し、深い感動を覚えました。ヤナーチェックの音楽、簡素で音楽志向の演出、粒よりの歌手陣、ホールトーンの響き、すべてが相俟って、最高のオペラに仕上がっていました。中でも女声3人、ミヒャエラ・カウネ、ジェニファー・ラーモア、ハンナ・シュヴァルツの素晴らしい歌唱に感銘を受けました。

次回はオーケストラ・声楽曲編です。


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saraiの音楽総決算2016:ピアノ・室内楽編

今年もブログの締めくくりはsarai恒例の音楽総決算です。

今年は国内・海外合わせて、厳選したコンサート・オペラに計80回足を運びました。それらについてはすべて当ブログで報告済みですが、今回から4回のシリーズでそれらからベストの音楽会を選んで、今年の音楽の総決算としたいと思います。
今回はピアノ・リサイタルと室内楽編です。今年はこのジャンルをたくさん聴きました。計36回です。内、ピアノ・リサイタルが8回、ヴァイオリン・リサイタルが7回、チェロとハープが3回、3人以上のメンバーによる室内楽が18回です。ちょっとピアノ・リサイタルが少なかったのが残念ですが、よい演奏に恵まれました。で、今年に限って、ピアノ・リサイタルとそれ以外に分けて、ランキングしてみます。
ちなみに昨年の結果はここです。

まず、ピアノ・リサイタル部門です。ベスト5は次の通りです。ともかく、アヴデーエワが圧倒的に素晴らしく、上原彩子のラフマニノフも神がかり的です。ツィメルマンのシューベルトの遺作ソナタD.960も感涙ものでそた。

1位 究極の“美”!!ユリアンナ・アヴデーエワ ピアノ・リサイタル@横浜みなとみらいホール 2016.11.3
2位 上原彩子、衝撃のラフマニノフ@サントリーホール 2016.2.8
3位 クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル@横浜みなとみらいホール 2016.1.10
4位 圧巻のベートーヴェン!!ルドルフ・ブッフビンダー・ピアノ・リサイタル@ザルツブルク音楽祭(祝祭大劇場) 2016.8.2
5位 上原彩子、究極のピアニズム ラフマニノフのプレリュード@東京オペラシティ コンサートホール 2016.6.3

ユリアンナ・アヴデーエワはピアノの響きの究極の美を教えられた素晴らしい演奏でした。リストのロ短調ソナタのあまりの素晴らしさに頭が真っ白になりました。

上原彩子のラフマニノフの凄さは年々増すばかりです。一体、どこまでの高みまで達するのか、恐ろしいほどです。この日のラフマニノフのピアノ・ソナタはラフマニノフの真髄を感じさせられるような演奏でした。大変な衝撃を受けました。因みにこの日の河村尚子のモーツァルトも素晴らしい演奏でした。

クリスチャン・ツィメルマンの弾いたシューベルト最後のピアノ・ソナタの第21番 変ロ長調 D.960は最高の演奏でした。何も変わったことをしているわけではなく、ただただ、シューベルトの音楽を忠実に弾いているだけでいたが、その内容の深さは圧巻でした。

またまた、上原彩子のラフマニノフですが、もう、その素晴らしさは絶賛するしかありません。


次はピアノを除いた器楽・室内楽部門です。いやはや、世界は広い。初聴きのパヴェル・ハース・カルテットの素晴らしい表現力に圧倒的されました。ベスト10は次のとおりです。

1位 シューベルトの響きに酔いしれる:パヴェル・ハース・カルテット@鶴見サルビアホール 2016.12.9
2位 精妙にして音楽的:ハーゲン・クァルテット@東京オペラシティ コンサートホール 2016.9.14
3位 至芸と言うべきでしょうか・・・ヨーヨー・マ J.S.バッハ 無伴奏チェロ組曲全曲演奏会@サントリーホール 2016.9.21
4位 またまた圧巻のブラームス:フォーレ四重奏団@横浜みなとみらいホール 2016.10.5
5位 尖がったバルトーク、最高!!庄司紗矢香@川口リリアホール 2016.5.27
6位 明日への希望!!パシフィカ・クァルテット:ショスタコーヴィチ・プロジェクト第3回@鶴見サルビアホール 2016.6.14
7位 納得のシューベルト・・・ロータス・カルテット・リサイタル@SQSサルビアホール 2016.3.11
8位 昔も今もさすがのバッハ!ヒラリー・ハーン ヴァイオリン・リサイタル@横浜みなとみらいホール 2016.6.12
9位 トッパンホール室内楽フェスティバル:2日目@トッパンホール 2016.5.16
10位 感銘!異形のブラームス:ユリア・フィッシャー ヴァイオリン・リサイタル@トッパンホール 2016.10.16

パヴェル・ハース・カルテットは素晴らしい実力の持ち主でした。特にシューベルトの最後の弦楽四重奏曲の第15番 D.887の素晴らしかったこと、驚きました。現代におけるシューベルト演奏の規範と言っても言い過ぎではないと思います。ウェーベルン、ショスタコーヴィチも見事な演奏でまさに今年最高の室内楽コンサートでした。

ハーゲン・カルテットの進化は止まりませんね。昔のバリバリ弾いた時と比べて、表現が深くなってきました。毎年のように、来日コンサートが聴けるのは嬉しい限りです。来年のショスタコーヴィチ&シューベルト ツィクルスが今から楽しみです。今年同様、きっと期待を裏切らないでしょう。

ヨーヨー・マのJ.S.バッハの無伴奏チェロ組曲全曲演奏は圧巻でした。特に中盤以降、響きがよくなって、バッハの素晴らしさを堪能させてくれました。

フォーレ四重奏団のブラームスのピアノ四重奏曲第1番は文句なしに素晴らしい演奏でした。特に第4楽章ではsaraiの心は高揚するばかりでした。

庄司紗矢香の弾いたバルトークとバッハの無伴奏は素晴らしい演奏でした。いずれもsaraiの愛する曲。満足感、幸福感に満たされたリサイタルでした。これを1位にすればよかったかな。

パシフィカ・クァルテットによるショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲全15曲チクルスの3回目のコンサートでした。第12番の圧倒的な演奏にとってもインスパイアされました。パシフィカ・クァルテットも凄い実力のグループでした。

ロータス・カルテットにチェロのペーター・ブック(元メロス・カルテット)が加わったシューベルトの弦楽五重奏曲はとても豊かな響きの素晴らしい演奏でした。今年は素晴らしいシューベルトの音楽をたくさん聴けた年になりました。シューベルトの晩年の作品はとても素晴らしく、それがよい演奏で聴けると感動するしかありません。

ヒラリー・ハーンはこのところ、以前のような美しい響きがなかなか聴けませんが、このリサイタルでのバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ハ長調 BWV1005の演奏は素晴らしいものでした。これが復活の兆しであればと願わずにいられません。

トッパンホール室内楽フェスティバルはクリスティアン・テツラフを中心に仲間たちが結集したコンサートでした。全6回のうちの3回を聴きましたが、テツラフの知的なアプローチが印象的でした。この2日目のコンサートではシューマンのピアノ三重奏曲第1番 ニ短調 Op.63に魅了されました。特にテツラフのヴァイオリンが見事でシューマンの室内楽をすっかり満喫しました。

ユリア・フィッシャーはとても個性のあるヴァイオリニストですが、それがよい方向にも悪い方向にも働きます。ブラームスのヴァイオリン・ソナタ 第3番 ニ短調 Op.108もある意味、ブラームスらしくない演奏でしたが、saraiはそのスケール感のある演奏にとても魅了されました。

一応、この部門全体を通した最上位を決めておきましょう。それは以下です。

 ユリアンナ・アヴデーエワのピアノ・リサイタル@横浜みなとみらいホール

ともかく、今年はsaraiにとって、室内楽の年と言ってもいいような年になりました。ほかにもいい室内楽をたくさん聴けました。

次回はオペラ・オペレッタ編です。


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明晰なマルティヌー、これ以上は望むべくはないショスタコーヴィチ・・・フルシャ&東京都交響楽団@東京文化会館 2016.12.19

久しぶりに聴くヤクブ・フルシャはやはり、只者ではありませんでした。実は先週のサントリーホールの公演も聴く予定でしたが、やむを得ない事情で行けず、友人に代わりに聴きに行ってもらいました。
しかし、本命は今日の公演です。何故かと言うと、マルティヌーの交響曲が聴けるからです。フルシャのマルティヌーの交響曲シリーズは既に第6番、第4番を聴いています。残念ながら第3番は聴き逃がしましたが残りは是非とも聴きたいものです。今日の第5番と来シーズンの第1番と第2番で完結です。なかなか、本場チェコの指揮者でマルティヌーを聴く機会はないので、フルシャの指揮するマルティヌーを聴き逃がせません。

まずは予習。以下のCDを聴いて、万全の準備をしました。

 カレル・アンチェル指揮チェコ・フィル 1955年録音
 ヴァーツラフ・ノイマン指揮チェコ・フィル 1978年録音
 イルジー・ビエロフラーヴェク指揮チェコ・フィル 2007年録音
 ネーメ・ヤルヴィ指揮バンベルク交響楽団 1988年録音

アンチェルはモノラル録音ですが、音質もよく、繊細さと強靭さを兼ね備えた鉄壁の演奏。マルティヌー特有のリズムの刻みが素晴らしいです。ノイマンは期待ほどでない演奏。時折、つぼを外した感じ。全般的にはよいのでちょっと惜しいです。逆にビエロフラーヴェクはつぼを押さえた素晴らしい演奏です。ネーメ・ヤルヴィはアンチェルの強靭さはありませんが、豊かな響きの素晴らしい演奏でアンチェルに並び立つ演奏です。

今日のフルシャの演奏は師匠のビエロフラーヴェクを思わせる演奏で、ともかく、明晰この上ない演奏。各声部がクリアーに聴こえてきます。どんな大音量でも音がつぶれることはありません。ただ、少し、スケール感が不足して、アンチェルのような鉄の強靭さに欠けるのが残念なところ。まあ、入門者にとっては分かりやすい演奏ではありました。特に高揚感は素晴らしいものでした。実演でこういうマルティヌーが聴けるのだから、大満足ではありました。

今日、素晴らしかったのはむしろ、後半に演奏されたショスタコーヴィチの交響曲第10番。賛否両論はあるかもしれませんが、ともかく、明晰でダイナミックな演奏で、とっても分かりやすく、エンターテインメント的にパーフェクトとも思える演奏です。沈痛さや晦渋さはほどほどで痛快とも言っていい演奏です。聴いていて楽しいと言えば、これ以上望むべくはないという印象です。もちろん、軽薄さとは無縁の演奏で、純音楽的に素晴らしい内容です。ショスタコーヴィチと言えば、あまりに指揮者が無理な解釈を施すことがありますが、音楽そのものをストレートに表出した素晴らしい演奏でした。まあ、ゲルギエフのような暗い沈痛な演奏も嫌いじゃありませんけどね。ショスタコーヴィチを聴いて、こんなにインスパイアされたのは久しぶりです。それも第10番とくれば、初めての経験かもしれません。この調子で第4~8番を聴いてみたくなりました。

今日のプログラムは以下のとおりでした。

  指揮:ヤクブ・フルシャ
  管弦楽:東京都交響楽団

  マルティヌー:交響曲第5番 H.310

   《休憩》

  ショスタコーヴィチ:交響曲第10番 ホ短調 Op.93

ヤクブ・フルシャの指揮ぶりはまるでスポーツマンみたい。こんなに運動神経の凄い指揮者って、いないんじゃない? それを見ているだけで驚かされてしまいます。ましてや、その動きが音楽とぴったりと連動しているのは恐るべきことです。でも、相当に疲れるでしょうね。

ところで、今日は今年最後に聴くコンサートでした(ジルヴェスターコンサートを除いて)。きっと、生涯で最高にコンサートに通った1年でした。来年は少しセーブしないとね。疲れますから・・・。



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モーツァルトの最高傑作オペラかな・・・《コジ・ファン・トゥッテ》@東京芸術劇場 2016.12.11

モーツァルトのオペラは楽しくて、楽しくて、とっても幸福な気持ちになります。本当に音楽を聴く喜びでいっぱいになります。
なかでも、今年は何故か、縁がある《コジ・ファン・トゥッテ》は今、モーツァルトのオペラの中で一番のお気に入りです。聴けば聴くほど、モーツァルトの天才ぶりが随所にうかがわれます。恋心を歌うアリアの数々、活き活きとした重唱の数々、出番は少なくても勢いのある合唱、どれをとっても天才ならではの深さを感じさせられます。ストーリー自体は無理があっても、モーツァルトの天才的な曲作りによって、単なる恋愛ゲームが感動的なラブストーリーに昇華していく様はまるで魔法のように思えます。特に第2幕の充実した音楽の素晴らしさは例えようもありません。

今日のオペラはコンサート形式ではありましたが、舞台セットがないことと舞台衣装をまとっていないことを除けば、舞台の上を自在に動き回りながらの演技があったので、さながらオペラを見ているような感じでした。トーマス・アレンを除いて、それほどのスター歌手が出演していたわけではありませんが、音楽的にもとても充実した内容でした。本当はこの公演はフィオルディリージ役で出演予定だったミア・パーション目当てでチケットを購入したので、公演直前に彼女が出演キャンセルのニュースを聞いて、とてもがっかりしていたんです。でも、オペラ自体は素晴らしい出来だったので、満足です。もちろん、ミア・パーションが歌ってくれたら、今年のザルツブルグ音楽祭と同じくらい感激したかもしれませんけどね。そうそう、今年はザルツブルグ音楽祭で素晴らしい《コジ・ファン・トゥッテ》を聴きました。特にフィオルディリージ役のユリア・クライターの歌唱が素晴らしかったんです。これで今日、ミア・パーションのフィオルディリージを聴けば、saraiがひそかに現在の最高のフィオルディリージ歌いと思っている2人(ミア・パーションとユリア・クライター)を聴くことができたのに、とっても残念です。ともあれ、今日のキャスト6人は皆素晴らしい歌唱を聴かせてくれました。ミア・パーションの代役を務めたヴィクトリヤ・カミンスカイテは予想外の素晴らしい歌唱。ミア・パーションほどでないにしても、まったく、満足の歌唱でした。グリエルモ役のマルクス・ウェルバの張りのあるバリトンの美声も聴きものでした。トーマス・アレンはベテランらしく、舞台を引き締めていました。そう言えば、彼は今年のザルツブルグ音楽祭のアデスの新作オペラ《皆殺しの天使》にも出演していましたが、女声陣のあまりの素晴らしさの陰であまり存在感を発揮していませんでした。今日はたっぷりと彼の渋い歌唱を聴かせてもらいました。
今日の本当の主役は指揮のジョナサン・ノットではなかったでしょうか。モーツァルトのオペラを実に楽しそうに指揮している姿は絵になりました。これから、ダ・ポンテ3部作をコンサート形式で聴かせてくれるようですから、楽しみです。特にフィガロは聴き逃がせませんね。今度こそ、ミア・パーションをスザンナ役で聴きたいものです。きっとチャーミングでしょう。

ということで、7月のザルツブルグ音楽祭と今日の公演で《コジ・ファン・トゥッテ》を聴いたsaraiはモーツァルトのオペラの最高傑作は《コジ・ファン・トゥッテ》かなと思っています。でも、フィガロを聴けば、また、フィガロが最高傑作と思うんだろうなあ・・・。ドン・ジョヴァンニも魔笛も捨て難いオペラだしね。モーツァルトはやっぱり、オペラとピアノ協奏曲が最高に素晴らしいという思いを新たにしました。

キャストは以下です。

  指揮&ハンマーフリューゲル:ジョナサン・ノット
  舞台監修:トーマス・アレン

  フィオルディリージ:ヴィクトリヤ・カミンスカイテ
  ドラベッラ:マイテ・ボーモン
  デスピーナ:ヴァレンティナ・ファルカス
  フェルランド:アレック・シュレイダー
  グリエルモ:マルクス・ウェルバ
  ドン・アルフォンソ:トーマス・アレン
  合唱:新国立劇場合唱団
  管弦楽:東京交響楽団



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       ジョナサン・ノット,  

シューベルトの響きに酔いしれる:パヴェル・ハース・カルテット@鶴見サルビアホール 2016.12.9

今年は多くの室内楽コンサートに足を運びましたが、今日のコンサートが今年最後の室内楽コンサートです。まさに1年を締めくくるにふさわしい最高のコンサートとなりました。

20世紀の作品と古典を組み合わせた王道を行くプログラムですが、その内容たるや、いずれも聴き応えのある曲ばかりです。逆に言えば、演奏する立場からは大変な曲ばかりでしょう。

前半はウェーベルンとショスタコーヴィチという20世紀の作品ですが、いずれも素晴らしい演奏。ウェーベルンの《弦楽四重奏のための5つの楽章》はノントナールの作品とは思えないような抒情に満ちた演奏が印象的で大変、感銘を覚えました。もちろん、切り込むべきところは鋭く、ダイナミックな演奏でもありました。10分ほどの短い作品ですが、永遠の時間を感じさせるような見事な演奏に聴き惚れました。
ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第2番は第1楽章こそ、あまりに響かせ過ぎの感でしたが、第2楽章以降は美しい響きと迫力のある響きを織り交ぜた見事な演奏が続きます。圧巻だったのは第4楽章の後半です。第4楽章は主題と変奏という古典的とも思えるパターンで始まりますが、それで終わらないのがショスタコーヴィチの面白いところです。後半は古典的なパターンから外れた壮絶とも思える展開になりますが、そのあたりでのパヴェル・ハース・カルテットの凄まじい演奏に身震いを覚えます。フィナーレの強奏では何か、悲しみを感じさせられました。ショスタコーヴィチの初期の大曲を会心の演奏で聴かせてくれました。

後半は正直言って、あまりに前半の演奏が素晴らしかったので、聴く前から不安感を持っていましたが、最初の1音を聴いただけでその不安感は払拭されます。演奏されるのはシューベルトの弦楽四重奏曲第15番。シューベルトが書いた最後の弦楽四重奏曲です。シューベルトはこの作品を書いた2年後、最晩年にチェロを加えた大作、弦楽五重奏曲を書きますが、この最後の弦楽四重奏曲も長大な長さの傑作です。パヴェル・ハース・カルテットはこのシューベルトをパーフェクトに演奏しました。響き、表現、アーティキュレーション・・・すべてが最高でした。これ以上の演奏は考えられないほどです。特に第2楽章の美しいメロディーのロマンティックなこと、うっとりと聴き惚れます。そして、第3楽章のトリオも美しい響きで魅了されます。圧巻だったのは第4楽章の迫力ある演奏。シューベルトの素晴らしさに酔いしれました。

今日のプログラムは以下です。

  弦楽四重奏:パヴェル・ハース・カルテット
   ヴァイオリン:ヴェロニカ・ヤルツコヴァ ヴァイオリン:マレク・ツヴィーベル
   ヴィオラ:ラディム・セドミドブスキ チェロ:ペテル・ヤルシェク

  ウェーベルン:弦楽四重奏のための5つの楽章 Op.5
  ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲 第2番 Op.68

   《休憩》

  シューベルト:弦楽四重奏曲 第15番 D.887

   《アンコール》
    ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第12番ヘ長調 Op.96, B.179『アメリカ』から第4楽章ヴィヴァーチェ・マ・ノン・トロッポ

アンコールはこのチェコのカルテットのお国もののドヴォルザーク。スメタナ四重奏団のヴィオラ奏者のミラン・シュカンパから直伝の素晴らしい演奏でした。何も言うことはない見事過ぎる演奏にただただ耳を傾けるのみでした。

ところで今日は聴き応えのある曲ばかりだったので、名演の誉れ高い録音をCDでしっかりと予習しました。
まず、ウェーベルンの《弦楽四重奏のための5つの楽章》で予習したCDは以下です。

 ジュリアード四重奏団
 ラサール四重奏団
 エマーソン・カルテット

いずれも素晴らしい演奏です。ジュリアード四重奏団の先鋭的な演奏、ラサール四重奏団のソフィストケイトされた演奏を繰り返し、聴きました。でも、こういう曲はやはり、実演で聴くに限りますね。実に刺激的です。

続いて、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第2番で予習したのは以下のCDです。

 ブロドスキー四重奏団
 ルビオ・カルテット

特にルビオ・カルテットの豊かな響きで切れ込むような演奏の素晴らしさは最高です。

最後に、シューベルトの弦楽四重奏曲第15番で予習したのは以下のCDです。

 ブッシュ四重奏団
 ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団
 メロス四重奏団 

ブッシュ四重奏団はやはり素晴らしい演奏ですが、如何せん、録音が古過ぎます。カンパー率いるウィーン・コンツェルトハウス四重奏団のウィーン風の演奏は最高に素晴らしいものです。メロス四重奏団は大変な迫力の演奏ですが、もっと抒情が欲しいところ。その点、今日のパヴェル・ハース・カルテットはとてもバランスのとれた見事な演奏でした。現代におけるシューベルト演奏の規範と言っても言い過ぎではないと思います。



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12月7日はクララ・ハスキルの日

今日はsaraiの最愛のピアニスト、クララ・ハスキルが56年前に亡くなった日です。これから12月7日はハスキルの日にすることにします。

saraiがクララ・ハスキルに夢中になったのは今年に入ってからです。もちろん、若い頃から彼女のレコードは聴いていましたが、こんなに凄いピアニストであることは分かっていませんでした。現在のところ、モーツァルトのピアノ協奏曲を集中的に聴いています。きっかけになったCDはフリッチャイとコンビを組んで録音したピアノ協奏曲第19番ヘ長調K.459を聴いたことです。これですっかり、虜になってしまい、入手できそうなモーツァルトのCDはほとんどコレクションしました。

クララ・ハスキルが世界の檜舞台で活躍するようになったのは第2次世界大戦後のこと。若い頃はいろいろあって、花が開きませんでした。ほとんどの録音は1950年代のものです。ハスキルが55歳を超えてからのことです。同時代を生きた音楽家に讃えられる存在になりました。本人はあくまでも謙虚で決して自信家ではありませんでしたが、彼女の演奏を耳にした人はすべからく、その演奏に惹き付けられたようです。そのキャリアが頂点に達した1960年に悲劇が起きます。パリのシャンゼリゼ劇場でアルトゥール・グリュミオーとヴァイオリン・ソナタのリサイタルを開いた12月1日の数日後、12月6日に彼女はパリからブリュッセルに鉄道で移動します。ブリュッセルでアルトゥール・グリュミオーとリサイタルを開くためです。ブリュッセル南駅ではグリュミオーの代わりにグリュミオー夫人が迎えに来ていました。その駅の階段でクララ・ハスキルは転倒して、頭を打ちますが、意識はあったそうです。救急車で病院に運ばれたクララ・ハスキルはその日のうちに開頭手術を受けますが、その後、意識が戻ることはなかったそうです。そして、翌日の12月7日の午前1時に帰らぬ人になりました。彼女は現在、パリのモンパルナス墓地Cimetière du Montparnasseで静かに眠っています。彼女は常々、自分がピアノが弾けなくなる前に神様が天国に連れていってほしいと言っていたそうですから、この悲劇も運命として、彼女自身も我々も受け入れるべきなのかもしれません。

ハスキルの日には彼女のCDを聴いて過ごすことにしましょう。何を聴こうかな。もちろん、モーツァルトですが、たまにはピアノ協奏曲ではなく、ピアノ・ソナタを聴きましょう。彼女の残した録音は第2番と第10番だけです。以下がその一覧です。(*は所有しているもの)

 ピアノ・ソナタ第2番 K.280

 *(1)...60/05/05-06、ルツェルン (DGG)


 ピアノ・ソナタ第10番ハ長調 K.330

  *(1)...54/05/05-06、アムステルダム (Philips)
 *(2)...57/08/08、ザルツブルク音楽祭ライブ(モーツァルテウム) (ORF)
 *(3)...57/08/23、エジンバラ音楽祭ライブ (THARA)

1957年のザルツブルグ音楽祭で弾いたピアノ・ソナタ第10番 K.330を聴きましょう。ほぼ、60年前の演奏です。このCDには、ほかに以下の曲が録音されています。

 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第18番変ホ長調 Op.31-3
 シューベルト:ピアノ・ソナタ第21番変ロ長調 D.960

期待通り、会心の演奏でした。ハスキルらしい芯のしっかりしたタッチの純度の高い響きで、そのピアノの音を聴いているだけで天国的な気持ちになります。モーツァルトのこのソナタはハ長調というシンプルな調ですが、ハスキルのピアノはその単純さの奥に深い精神性をかいま見せてくれます。一方、ベートーヴェンはしっかりした音楽をハスキルらしいピュアーな響きとともに聴かせてくれます。そして、最高だったのはシューベルトの最後のソナタです。これはどうのこうのと言う演奏ではなく、ハスキルとシューベルトが魂の深いところでつながっているようなパーフェクトな演奏です。ああ、そこはそんな風に弾くのねって、終始、感銘を受けながら聴き続けました。特に第2楽章の美しさが心に沁みました。それに第4楽章の超絶的な世界は凄い。いつも、この曲は第1楽章に魅了されますが、この演奏は全楽章、惹き付けられて、長さを感じさせません。なお、ハスキルが残したシューベルトのソナタの録音はこの第21番のほかには第16番があるだけですが、この第16番も美しい演奏です。

ここで聴き終えても満足ですが、やっぱり、ハスキルと言えば、モーツァルトのピアノ協奏曲、それも第19番を聴きたいですね。今日はどのCDを聴きましょうか。以下が彼女の残した全録音、8種です。

 ピアノ協奏曲第19番ヘ長調 K.459

  *(1)...50/09/23-24、ヴィンタートゥール ヘンリー・スウォボダ、ヴィンタートゥール交響楽団(Westminster)
  *(2)...52/05/30、ケルン フェレンツ・フリッチャイ、ケルン放送(WDR)交響楽団(MEDICI MASTERS)
 *(3)...53/01/20、ベルリン フェレンツ・フリッチャイ、RIAS交響楽団(THARA)
 *(4)...55/09/21-22、ベルリン フェレンツ・フリッチャイ、ベルリン・フィル(DGG)
 *(5)...56/07/04、ルドヴィクスブルク カール・シューリヒト、シュトゥットガルト放送交響楽団(Hanssler Swr Music)
  *(6)...56/09/06、ブザンソン(市立劇場) イェジー・カトレヴィッツ、パリ音楽院管弦楽団(INA)
  *(7)...57/10/04、ローザンヌ ヴィクトル・デザルツェンス、ローザンヌ室内管弦楽団(Claves)
  *(8)...59/02/19、パリ(シャンゼリゼ劇場) コンスタン・シルヴェストリ、フランス国立管弦楽団(INA)

フリッチャイとの3種の録音も素晴らしいですが、実はsaraiはオーケストラはともかくとして、少なくともハスキルのピアノに関してはどの演奏も好きなんです。今日は7番目の1957年のデザルツェンス指揮ローザンヌ室内管弦楽団のCDを聴きましょう。一緒に録音された以下の演奏も聴きます。

 ピアノ協奏曲第24番ハ短調 K.491

オーケストラはまあ、そこそこの演奏ですが、ハスキルのピアノは何度聴いてもインスパイアされます。ピアノの響きは彼女にしか出せない響きです。ハスキルの第19番は最高です。第24番のほうもいいのですが、ピアノの高域の響きがワーンと反響した感じでよく聴き取れないのが残念です。

saraiのこれからの人生はハスキルとともにあると言っても過言でないほど、彼女のピアノに恋しています。


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       ハスキル,  

ブラームス_弦楽五重奏曲第2番を熱演:プラジャーク・カルテット@鶴見サルビアホール 2016.12.2

プラジャーク・カルテットは40年以上のキャリアを誇るチェコの名門アンサンブルです。2010年になって、カルテット設立時から第一ヴァイオリンを担ってきたヴァーツラフ・レメシュが引退を余儀なくされたため、何人かのヴァイオリニストがその役を引き受けてきましたが、ようやく、昨年より、現在の若手女性ヴァイオリニストのヤナ・ヴォナシュコーヴァがその任を負うことになりました。プラジャーク・カルテットの新時代が始まったようです。今日の演奏を聴くと、安定したアンサンブルが醸し出されていました。

前半はまず、ハイドンの弦楽四重奏曲 第81番(第66番) Op.77-1が演奏されます。ハイドンの晩年の作品で、未完成の第83番を含めると、最後から3番目の弦楽四重奏曲です。既にメロディーの美しさに頼らずに骨格のしっかりした傑作だと思える作品です。今日の演奏は水準以上の演奏で、すっかりとその響きに惹き込まれてしまいました。特に第1楽章のリズミカルでありながら、時折、大胆にテンポを変える、熟達した演奏は素晴らしいものでした。予習したCDは以下です。

 エマーソン・カルテット
 エンジェルス・カルテット

いずれも素晴らしい演奏ですが、全集盤の1枚であるエンジェルス・カルテットの演奏の美しさには驚愕しました。今日のプラジャーク・カルテットの演奏もそれに迫るものでした。

前半の最後はブルックナーの弦楽四重奏曲。弦楽五重奏曲は有名ですが、この四重奏曲はブルックナーの初期の作品です。まだ、交響曲を作曲するのはこの後になります。初期の作品とは言え、後期ロマン派の香りの漂うロマンティックで美しい作品です。今日の演奏もまったく美しい演奏で、大変、満足しました。それに滅多に聴けない珍しい作品ですから、それが聴けた喜びもあります。

後半はブラームスの弦楽五重奏曲 第2番 Op.111です。プラジャーク・カルテットにロータス・カルテットのヴィオラ奏者の山碕智子が加わっての演奏です。これもあまり演奏機会の多い作品ではないので、しっかりと聴かせてもらいましょう。予習したのは以下のCDです。

 ブダペスト四重奏団、トランプラー
 ハーゲン・カルテット、コセ
 アマデウス四重奏団、アロノヴィッツ

ブダペスト四重奏団はベートーヴェン演奏では素晴らしい演奏を聴かせてくれますが、この演奏はもうひとつです。硬い響きの演奏でこの作品の良さが引き出せていません。一方、アマデウス四重奏団はとても美しい演奏です。さらに素晴らしいのがハーゲン・カルテットです。ブラームスの晩年の作品の素晴らしさを実感させてくれます。メロス・カルテットのCDも評判がよいのですが、未聴です。

さて、今日の演奏ですが、第1楽章のスケール感と分厚い響きに聴き入りました。ちょっと弾き込み不足で完璧なアンサンブルでなかったのは残念ですが、この曲の持つ雰囲気は十分に伝わってきました。第2楽章と第3楽章の魅惑的な美しさは万全の演奏で大変聴き入ってしまいました。第4楽章はもともとブラームスの創作力が衰えたと感じさせるものなので、それなりにしか、心に響いてきません。第4楽章さえ、万全に作曲されていたら、この作品は大傑作になったんですけどね・・・。もっとも、この翌年にあの名曲、クラリネット五重奏曲が生まれるんですから、まあ、いいでしょう。ともあれ、全体としては大変、充実した演奏でした。ブラームスらしい美しいメロディーの数々には酔わされてしまいました。

今日のプログラムは以下です。

  弦楽四重奏:プラジャーク・カルテット
   ヴァイオリン:ヤナ・ヴォナシュコーヴァ ヴァイオリン:ヴラスティミル・ホレク
   ヴィオラ:ヨセフ・クルソニュ チェロ:ミハル・カニュカ
  ヴィオラ:山碕智子=ロータス・カルテット

  ハイドン:弦楽四重奏曲 第81番(第66番) Op.77-1
  ブルックナー:弦楽四重奏曲

   《休憩》

  ブラームス:弦楽五重奏曲 第2番 Op.111

   《アンコール》
    モーツァルト:弦楽五重奏曲第1番変ロ長調 K.174から第3楽章メヌエット・マ・アレグレット



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マーラーの描くもの・・・薄明の先の無、ヤンソンス&バイエルン放送交響楽団@サントリーホール 2016.11.27

素晴らしいエンディングでした。美しい弱音で表現される人生の終わりを告げるような薄明の世界に強い感銘を受けて、目を閉じながら、演奏に耳と心を集中します。そして、遂に弦楽器の響きが途絶えます。そこにはぽっかりと虚無の暗黒が広がるのみです。ヤンソンスが表現したのは甘美な死の世界ではなく、残酷過ぎる絶対的な死の世界。この先、何にもありはしません。渺渺たる暗黒の世界を覗き込むような沈黙がホールを包み込みます。それが長い時間だったか、短い時間だったのか、気が付くとホールに歓声と大きな拍手があふれています。saraiは拍手もできず、呆然としていました。大多数の聴衆とは気持ちが共有できなかったようです。
第4楽章の後半までは、もうひとつ心に響くものが足りない演奏に思えました。オーケストラの響きは素晴らしいし、ヤンソンスの指揮も的確ですが、感動がありません。マーラーの交響曲第9番で感動がなければ、致命的です。美しい音楽が頭の中を通り過ぎていくだけ。何故、こんなに空疎に思えるのか、不思議でした。思い当たったのはオーケストラの姿勢の問題です。いくら超一流のオーケストラであっても、マーラーの交響曲第9番で聴衆に感動を与えるためには、圧倒的に曲にのめり込む気持ちが不可欠です。今日のバイエルン放送交響楽団には、その思い詰める気持ちが不足していたのではないでしょうか。指揮者のヤンソンスにも責任の一端はあるでしょうが、バイエルン放送交響楽団ほどのオーケストラならば、指揮者に煽り立てられなくてもマーラーの交響曲第9番が何たるものかを心得るべきでしょう。ラファエル・クーベリックが培ってきたマーラー演奏の伝統は継承されなかったのか・・・まあ、今日はたまたま日が悪かったのかもね。終わりよければ、すべてよしということにしましょう。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:マリス・ヤンソンス
  管弦楽:バイエルン放送交響楽団

  
マーラー:交響曲第9番 ニ長調


ちなみに比べるのも変な話ですが、1週間前に聴いたマイケル・ティルソン・トーマスの超絶的なマーラー(こちらは交響曲第1番でしたが)の素晴らしさが思い出されました。サンフランシスコ交響楽団の懸命に打ち込む演奏、それを統率したマイケル・ティルソン・トーマスは尊敬すべきものでした。こちらで第9番を聴きたかったくらいです。

今回の予習はベルナルト・ハイティンクの最近の録音を聴きました。

 2009年 ロンドン交響楽団 ライブ、非正規盤
 2011年 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 ライブ、非正規盤
 2011年 バイエルン放送交響楽団 ライブ、正規盤

実は巨匠ハイティンクの指揮でもバイエルン放送交響楽団の演奏はもうひとつで、ほぼ、今日の演奏と同じようなものだったんです。もっとも、このときの演奏はヤンソンス指揮の予定だったのが、ヤンソンスが健康不良でハイティンクは代役の指揮でした。準備不足もあったかもしれません。その2年前のロンドン交響楽団の演奏はテンポも遅めで実に気合のはいった名演。CDではありますが、感動しました。ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏はその中間くらいの出来です。ハイティンクのこの曲の初録音は1969年のアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団ですから、ほぼ半世紀にわたって指揮してきていることになります。全部で9種類の録音が残されています。

何故、こんなにハイティンクの演奏だけを聴いたかと言えば、ここだけの話、来年のザルツブルグ音楽祭でのハイティンク指揮ウィーン・フィルのマーラーの交響曲第9番を聴きにいこうとひそかに計画しているからです。saraiの人生の総仕上げに、是非ともハイティンク指揮でマーラーの交響曲第9番を聴きたかったし、是非ともウィーン・フィルの演奏でマーラーの交響曲第9番を聴きたかった・・・その夢が一挙に実現できるんです。それほど、saraiにとって、マーラーの交響曲第9番は特別な曲なんです。この夢が実現できれば、もう思い残すことはありません。長く続けてきたヨーロッパ、音楽の旅も完了してもいいかなと思っています。



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美しきカヴァティーナ:ダンテ・カルテット@鶴見サルビアホール 2016.11.25

今年はずい分、室内楽を聴きましたが、今日からは100席という小さな室内楽専用ホールで聴く鶴見サルビアホール・クァルテット・シリーズを1年の締めとして聴きます。3回シリーズの幕開けはイギリスで活躍するダンテ・カルテットです。このカルテットは初めて聴きましたが、その素晴らしく美しい響きが魅力です。その美質で魅了してくれたのは、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲 第13番の第5楽章のカヴァティーナです。ベートーヴェンが創造した音楽の中でも最も美しい音楽のひとつである、このカヴァティーナをうっとりするような美しい響きで聴かせてくれました。カヴァティーナに続く大フーガはもう少しデモーニッシュさが欲しいところではありましたが、豊かな響きで圧倒されました。また、冒頭で演奏されたメンデルスゾーンの弦楽四重奏のためのカプリッチョも極めて、美しい響きで魅了されました。

今日のプログラムは以下です。

  弦楽四重奏:ダンテ・カルテット
   ヴァイオリン:クリシア・オソストヴィッツ ヴァイオリン:オスカー・パークス
   ヴィオラ:井上祐子 チェロ:リチャード・ジェンキンソン

  メンデルスゾーン:弦楽四重奏のためのカプリッチョ Op.81-3
  スタンフォード:弦楽四重奏曲 第5番

   《休憩》

  ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第13番 Op.130「大フーガ(Op.133)付」

   《アンコール》
    コダーイ:ガヴォット

2番目に演奏されたスタンフォードの弦楽四重奏曲ですが、スタンフォードと言えば、イギリスのマイナーな作曲家で、これまで交響曲くらいしか聴いたことがありません。弦楽四重奏曲も音源を探しましたが結局、入手できず、今日がまったくの初聴きです。演奏者による異例の解説がありましたが、19世紀の有名なヴァイオリニストのヨーゼフ・ヨアヒムと作曲者スタンフォードが親交を結んだことから一連の弦楽四重奏曲が生まれたとのことで、今日演奏された第5番はヨアヒムの死後、彼の思い出に捧げられたそうです。4楽章に共通しているテーマはヨアヒムのヴァイオリン小品《ロマンス》だそうで、そのテーマを事前に演奏してくれました。美しいメロディーです。そういう作曲の経緯があるせいか、全4楽章にわたって、とても美しい響きの音楽が続きました。珍しい音楽を聴けました。

ところでベートーヴェンの弦楽四重奏曲 第13番の予習は以下の2枚のCDを聴きました。

 ヴェーグ弦楽四重奏団(新盤)
 ブッシュ弦楽四重奏団

ヴェーグ弦楽四重奏団のとても美しい演奏に心を奪われました。第6楽章は大フーガが使われていますが、改訂版の第6楽章もその後に付加されています。やはり、大フーガのほうがいいですね。ブッシュ弦楽四重奏団は大フーガを録音していません。残念です。弦楽合奏版の大フーガをブッシュ・チェンバー・プレーヤーズで録音しているのみです。


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天才R.シュトラウスの音響世界を描き尽すティーレマン&シュターツカペレ・ドレスデン@サントリーホール 2016.11.22

この5日間、ロベルト・ホルの《白鳥の歌》の絶唱をはさんで、サントリーホールで素晴らしいオーケストラコンサートを聴き続けて、これ以上の満足はないくらいです。特に昨日のMTT&サンフランシスコ交響楽団のマーラー、今日のティーレマン&シュターツカペレ・ドレスデンのR.シュトラウスは絶品中の絶品で感動の極み。

今日はティーレマンもさることながら、シュターツカペレ・ドレスデンの素晴らし過ぎる響きに酔いしれました。最初のベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番での何とも言えない弦楽合奏の響きは音響的に聴いているだけで気持ちよくなります。音楽以前の素晴らしさです。やはり、世界最高峰に並び立つオーケストラです。そして、後半のR.シュトラウスのアルプス交響曲ではオーケストラ演奏の極みとも言うべき痺れるような官能美に満ちた音響を響き渡らせてくれました。弦楽パートの素晴らしいことはもちろんですが、金管がこれほどのレベルにあるのはシカゴ交響楽団くらいしか思い当たりません。そのシカゴ交響楽団を聴いたのも随分以前のことですから、saraiがしっかりと記憶に留めている超一流のオーケストラのなかではこのシュターツカペレ・ドレスデンが最強です。トータルな力量で言えば、シカゴ交響楽団を番外にすると、ウィーン・フィル、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団と並んで世界の3強です。ティーレマンが首席指揮者に就任後はますます強力なアンサンブルに上りつめている印象もあります。今度の日曜日にヤンソンス指揮のバイエルン交響楽団を聴きますが、この3強に食い込める実力が感じられるでしょうか。ベルリン・フィルは音響的には素晴らしいですが、音楽的表現で3強の後塵をはいしている感じが否めません。もちろん、ハンティンクやティーレマンが振れば、その実力を発揮するかもしれませんけどね。ペトレンコはまだ聴いたことがないので、これからベルリン・フィルがどうなるのか、予想もできません。

さて、肝心のティーレマンですが、もちろん、シュターツカペレ・ドレスデンのアンサンブル力だけによって音楽を構成しているわけではありません。ワーグナー、ブルックナー、そして、R.シュトラウスを振るときには尋常ではない力を思い知らされることになります。シュターツカペレ・ドレスデンとのR.シュトラウスでは、英雄の生涯、メタモルフォーゼン、ばらの騎士(オペラ)と聴いてきて、思わぬことに気が付きました。意外に正統派的な指揮で、その剛直さを隠して、とても美しい演奏を展開するんです。多分、よほど、R.シュトラウスは相性がよくて、余計な力を入れないで、真っ正面から音楽美・音響美を追求できるのではないでしょうか。実は今日のアルプス交響曲も高らかに音響美を追求した演奏でした。もちろん、それだけに終わったら、下手な描写音楽に堕することになりますが、ティーレマン流の綿密な音楽設計が底流にあります。見かけ上はシュターツカペレ・ドレスデンのアンサンブルの音響美が聴こえてくるわけですが、その実、本当に素晴らしかったのはティーレマンの音楽解釈です。後半まではとても美しい自然描写とも思える音響が流れます。後半、嵐の中を下山した後に音楽の本当の山場がやってきます。予習したティーレマンが指揮したウィーン・フィルとの演奏でもそうでした。激しい起伏のある音楽のあとにやってくるカタルシスとも思える安らかな音楽が極め付きなんです。自然の中に己を置いて、自然の大きさ・豊かさを感じ、自然と自分を一体化して、安らかで優しい気持ちになり、来るべき死を受け入れる。これこそ、天才R.シュトラウスの究極のテーマではないでしょうか。それをティーレマンは最高の形で表現してくれます。晩年のR.シュトラウスは《4つの最後の歌》でもこういう最終的な安寧さを提示してくれましたし、最後の2つの楽劇《ダナエの愛》、《カプリッチョ》でも最終的な安寧さで聴く者を感銘させてくれました。晩年にはまだ遠かったアルプス交響曲でも既にこの終生のテーマは埋め込まれていたことをティーレマンは見事に表現してくれました。シュターツカペレ・ドレスデンの音響美をベースに究極の音楽表現を完成したティーレマンの偉大な才能に敬意を表したいと思います。saraiはこの終盤の美しさ、安らかさ、優しさに大変な感動を味わうことができました。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:クリスティアン・ティーレマン
  ピアノ:キット・アームストロング
  管弦楽:シュターツカペレ・ドレスデン

  ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 Op.19
   《アンコール》 J.S.バッハ:パルティータ第1番 変ロ長調 BWV825 メヌエット(ピアノ・アンコール)

   《休憩》

   R.シュトラウス:アルプス交響曲 Op.64


ところでブロンフマンの代役を務めたキット・アームストロングは見事なピアノを聴かせてくれました。このモーツァルトもどきとも言えるベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番に関しては、恐らく、ブロンフマンと同等以上のピアノ演奏を繰り広げてくれたという印象です。ブロンフマンの真骨頂はプロコフィエフにありますから、今回の曲目はもともと、そんなに期待していませんでした。キット・アームストロングは粒立ちのよいクリアーな響きでモーツァルト、あっ違った、ベートーヴェンの協奏曲を美しく表現しました。モーツァルト的な音階も見事な演奏でした。アンコールのバッハは音量を少し抑えて、バッハの静謐な音楽を美しく演奏。何と言っても、このパルティータがsaraiが偏愛する曲なので、そんなに簡単に最高だったとは言いませんが、これならば、リサイタルでも聴いてもいいかなと思えるほどの演奏ではありました。楽しみな若手のピアニストの一人が現れました。

音楽の秋のコンサートはほとんど、これでおしまい。残すはヤンソンス指揮バイエルン放送交響楽団のマーラーの交響曲第9番を残すのみ。まだ、最後の楽しみが残っています。それを聴いた後にsaraiの重大な発表を予定しています。お楽しみにね。



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       ティーレマン,        シュターツカペレ・ドレスデン,  

マイケル・ティルソン・トーマス、感動のマーラー!、そして、ユジャ・ワンの圧倒的なショスタコーヴィチ! サンフランシスコ交響楽団@サントリーホール 2016.11.21

今日は何と豪華なコンサートだったでしょう。前半はユジャ・ワンの切れ味鋭く、迫力満点のショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番とお洒落なアンコール演奏。後半はマイケル・ティルソン・トーマスことMTT(マイケル・ティルソン・トーマスのイニシャルでMTTと呼ばれるそうなので、以後、MTTと略します)の精密極まるマーラーの交響曲第1番「巨人」の演奏に大変な感動を覚えました。今年は膨大な数のコンサートに足を運びましたが、多分、記憶の限りでは、今日が今年最高のコンサートでした。

順番は逆になりますが、まずは後半のマーラーの「巨人」について触れます。実はMTTの実演は初聴きなんです。MTT指揮サンフランシスコ交響楽団のマーラー交響曲全集のCDに魅せられてしまって、どうしても実演を聴きたくて、今日の公演のチケットを購入しました。しかし、本当はMTTのマーラー全集の中では、今日演奏する「巨人」はあまり良い出来ではないんです。精密さが不足した演奏に思えます。それでも第4楽章は盛り上がっていますから、そのあたりに期待ということです。ところでMTTのマーラー全集はすべて、ライブ録音ですが、とてもライブとは思えないような完成度の高い演奏ばかりです。そのあたり、実際に生演奏はどうなのかも興味津々です。
出だしはそれほどの出来には思えません。MTTの指揮もインテンポを刻んだ少し単調なものに思えます。それでもサンフランシスコ交響楽団の緊張感高い演奏には、saraiの集中力も高まります。次第にMTTの指揮は決してインテンポではなく、微細にテンポを変えていることが分かります。ちょっとした仕草にオーケストラが敏感に反応していることが分かります。だんだんとテンポや強弱の細かい変化が多くなっていきます。さほどにアンサンブルが素晴らしいとも思えませんが、何と言うか、実にセンシティブなオーケストラの響きです。MTTの指揮は繊細さを極めた精密なもので、それにオーケストラが見事に反応していきます。オーケストラはテンポや強弱といったアーティキュレーションを見事に表現しているという意味ではアンサンブルは良いと言えるのでしょう。ただ、この第1楽章では、響きそのものが格段に素晴らしいわけではありません。第2楽章になって、MTTの指揮の動作が大きくなって、オーケストラの響きも劇的に素晴らしくなります。色んな意味で指揮者とオーケストラが一体になっている感じです。saraiも段々と演奏に惹き込まれていきます。第2楽章の中間部はゲネラルパウゼの後、弦による優美なレントラーが歌われますが、そのタッチの柔らかさ、優しさには心を打たれます。技術を超えた何かが感じられます。なんて素晴らしいマーラーなんでしょう。第3楽章は実に精妙さに満ちた葬送の音楽が続きます。ですが、この第3楽章まではまだ序章に過ぎません。嵐のように始まる第4楽章の素晴らしさといったら、言葉を失います。ヴァイオリンで演奏される第2主題の美しさと言ったら、メローでありながら、心の隅々まで沁み込んできて、大きな感動を味わいます。展開部、再現部と進むにつれて、心が大きく高揚します。ここには既に第9番までの予感に満ちた音楽があります。輝かしさの陰に来るべき甘美な死の予感が潜んでいます。今日の演奏でそれを実感します。そして、高らかに歌い上げるフィナーレに駆けあがっていきます。あまりの感動に涙が滲んできます。頂上で音楽が止んだ後は呆然自失に陥ります。ブラヴォーや拍手が沸き起こりますが、saraiはしばし、感動の余韻に浸っていました。
これがMTTとサンフランシスコ交響楽団のマーラーなんですね。とっても完成度の高いライブ演奏です。このまま、この演奏を収めた海賊盤が出たら、saraiの最高の1枚になりそうです。

前半のユジャ・ワンのショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番に話を戻しましょう。実は生ユジャ・ワンを見るのはこれが2回目ですが、コンサートで聴くのは初めてなんです。ユジャ・ワンも初めて、MTTも初めてという実に楽しみなコンサートだったんです。で、ユジャ・ワンはそれはもう、期待通りの凄い演奏を聴かせてくれました。sarai好みのピュアーなタッチの響きではないのですが、そんなことは跳ね飛ばすような勢いの迫力のピアノです。これを聴いて興奮しないわけにはいきません。低音部も叩きまくり、高音部も音が割れても叩きまくり、それはもう凄まじい演奏です。それでいて、実に切れのある鋭い演奏なので、聴いていて、気持ちがいい会心の演奏です。実はsaraiはかぶりつきの席、多分、彼女に最も近い席で聴いていたので、ヴィジュアル的にも楽しめてしまいました。背中の空いた素敵なドレスのユジャ・ワンはとってもチャーミング。音楽には関係ありませんが、可愛いにこしたことはないでしょう。爽快なショスタコーヴィチでしたが、サポートしたサンフランシスコ交響楽団の弦が素晴らしく、どんな高速パートもぴったりと美しい響きで合わせます。本当に完璧なショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番でした。
アンコールが秀逸なのはユジャ・ワンならではです。トランペットとジャズっぽく弾きまくった《ふたりでお茶を》でも超絶技巧。そして、得意のチャイコフスキー《4羽の白鳥》のめくるめくような超絶技巧。ただ、単に超絶技巧だけではなくて、彼女がピアノを弾くとヴィジュアル同様、お洒落なところが最高です。saraiはユジャ・ワンに恋してしまいました。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:マイケル・ティルソン・トーマス
  ピアノ:ユジャ・ワン
  トランペット:マーク・イノウエ
  管弦楽:サンフランシスコ交響楽団

  ブライト・シェン:紅楼夢序曲<サンフランシスコ交響楽団委嘱作品/日本初演>
  ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1番ハ短調 Op.35
   《アンコール》 ユーマンス:ふたりでお茶を(ピアノ&トランペット・アンコール)
           チャイコフスキー:4羽の白鳥(ピアノ・アンコール)

   《休憩》

   マーラー:交響曲第1番ニ長調「巨人」


今日は何て素晴らしいコンサートだったんでしょう。ユジャ・ワンに恋し、MTTのマーラーに酔ってしまいました。
是非、日本でMTTのマーラーの全交響曲のチクルスを企画したもらいたいものです。⇒ AMATI殿



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       マイケル・ティルソン・トーマス,        ユジャ・ワン,  

心に沁みる晩年のシューベルト:ロベルト・ホル《白鳥の歌》@上大岡ひまわりの郷 2016.11.20

昨年はロベルト・ホルの《冬の旅》を聴いて、感銘を受けましたが、今日は《白鳥の歌》を聴いて、それ以上に心に沁みました。
今年は既にテノールのユリアン・プレガルディエンの素晴らしい《白鳥の歌》を聴きました。テノールのユリアン・プレガルディエンとバス・バリトンのロベルト・ホルという違いがあるにせよ、いずれも素晴らしい歌唱でした。それはシューベルトの《白鳥の歌》がいかに名曲であるかということを再認識することでもありました。ロベルト・ホルのシューベルトのリートはいかにもワーグナー歌手が歌っているという、ちょっと変わった感じではありますが、それがこの《白鳥の歌》にはぴったり合っていて、心にしみじみと響いてきます。巨大な体格のホルから肉感的とも思える実に人間的に語りかけてくるような真実の声が響いてきます。CDで聴いてきたフィッシャー=ディースカウの見事な歌唱がかえってわざとらしく感じられてしまうほど、ホルの歌声には人間の本質的な何かが感じられて、心からの共感を覚えてしまいます。

なお、今日のプログラムでは、一般的な曲順(ハスリンガー社が出版した曲順)を大幅に変えて、前半はレルシュタープの詩による7つの歌曲、後半はハイネの詩による6つの歌曲が歌われました。なかなか、その変更はよかったと思います。特に最後を《アトラス》でしめくくったのが効果的でした。レルシュタープの詩による7つの歌曲では、最後に歌った《遠い地で》が素晴らしい歌唱。しかし、後半のハイネの詩による6つの歌曲の素晴らしさはどうでしょう。最初の《漁師の娘》だけは軽めの歌唱でしたが、その後の5曲の深遠さには心を動かされずにはいられませんでした。

今日のプログラムを紹介しておきます。

  バス・バリトン:ロベルト・ホルRobert Holl
  ピアノ:みどり・オルトナーMidori Ortner

  シューベルト:歌曲集「白鳥の歌」D.957/1-7
          レルシュタープの詩による7つの歌曲
           愛の使い/戦士の予感/春の憧れ/セレナード/別れ/住み処/遠い地で

   《休憩》

  シューベルト:冬の夕べ D.938
         鳩の使い D.965a
         歌曲集「白鳥の歌」D.957/8-13
          ハイネの詩による6つの歌曲
           漁師の娘/海辺で/都会(街)/影法師/彼女の肖像/アトラス

   《アンコール》
      シューベルト:音楽に寄せて(An die Musik) D.547,Op.88-4
             夕映えの中で(Im Abendrot) D.799


アンコールの《夕映えの中で》もとても深々とした響きの歌唱で強い感銘を受けました。



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庄司紗矢香、意欲的なデュティユー・・・東京都交響楽団@サントリーホール 2016.11.19

今日の大野和士の音楽への取り組みは評価できるポイントとそうでないポイントのいずれもがあった印象です。まず、評価できたポイントは今日のこのプログラムの素晴らしさです。《ペレアスとメリザンド》にかかわる2つの作品でデュティユーのヴァイオリン協奏曲をはさみこむという離れ業のようなプログラムは大野和士の知的な音楽センスなしには考えられません。さらなるポイントは演奏面での知的なアプローチです。よく考え抜かれた作品解釈であるという印象でした。その解釈に基づいたオーケストラの統率力も見事なものでした。しかし、その結果とした生み出された音楽の内容にはsaraiはいささか納得できません。フォーレの組曲《ペレアスとメリザンド》の出だしは抑えた見事な表現でおっと驚かされましたが、その後のフォルテがいけません。鳴らせ過ぎで音が濁り、うるさい感じ。どうして、ここまで鳴らす必要があるのか、不思議です。ただ、それを除くととても上品な音楽表現で全体としては素晴らしい音楽でした。次のデュティユーのヴァイオリン協奏曲については後にして、最後のシェーンベルクの交響詩《ペレアスとメリザンド》について触れましょう。これは一言で言えば、ただただ力み過ぎとしか言えません。大野和士によれば、この曲は明らかにワーグナーの《トリスタンとイゾルテ》に影響を受けているとのこと。そのせいか、どうにもうるさく鳴らせ過ぎとしか思えません。もっと静かに後期ロマン派の美しい響きを聴かせてほしかったところです。実際、予習で聴いたブーレーズ&グスターフ・マーラー・ユーゲント管弦楽団は素晴らしい演奏でした。もっとも同じブーレーズが指揮したシカゴ交響楽団はもう一つの演奏でしたから、この曲はなかなかの難曲ではありますね。

で、いよいよ本題のデュティユーのヴァイオリン協奏曲です。演奏のよしあしは別にして、とても惹き付けられて聴き入った演奏ではありました。まず、この曲の素晴らしさ・・・無調をベースにして、熱情の込められた音楽です。というと、まるでベルクの音楽を連想してしまいます。新ウィーン楽派の流れを継ぐ音楽にフランス音楽のエッセンスを加えたという具合に感じられます。この曲を充実著しい庄司紗矢香がどう演奏するかが期待されました。で、結果ですが、彼女の真っ正面からの真摯な取り組みは新鮮な音楽となって、とても魅了されました。が、一方、彼女ならば、もっと踏み込んで、熱い演奏ができたのではないかという残念さも残りました。少し、この曲の取り組みが足りなかったようです。是非、もう一度チャレンジしてほしいと感じました。もうひとつ感じたのはもっと自由奔放に弾きまくってほしかったという思いです。指揮の大野和士のアンサンブルに取り込まれ過ぎていた印象があるんです。たしかにオーケストラとのアンサンブルはよかったのですが、そうではなくて、ヴァイオリニストの庄司紗矢香が感じるままに弾き、それを大野和士と都響がサポートするという音楽が聴きたかったんです。明らかにこの演奏を支配していたのは指揮者でした。そういう音楽もあるのでしょうが、やはり、ソリストと指揮者、オーケストラの真剣勝負が聴きたいんです。特に庄司紗矢香はそういうことを期待するレベルの音楽家ですからね。満足と不満足がミックスされた演奏でした。アドレナリンが出まくった演奏ではあったんです。ものすごく集中して聴いたという意味では素晴らしい音楽ではありました。

今日のプログラムは以下のとおりでした。

  指揮:大野和士
  ヴァイオリン:庄司紗矢香
  管弦楽:東京都交響楽団

  フォーレ:組曲《ペレアスとメリザンド》 Op.80
  デュティユー:ヴァイオリン協奏曲《夢の樹》

   《休憩》

  シェーンベルク:交響詩《ペレアスとメリザンド》Op.5

予習したデュティユーのヴァイオリン協奏曲《夢の樹》は以下のものです。

 ルノー・カプソン、チョン・ミュンフン、フランス国立放送局管弦楽団
 アモイヤル、デュトワ、フランス国立管弦楽団

特にアモイヤルとデュトワのCDが素晴らしい演奏を聴かせてくれました。庄司紗矢香もこのレベルで聴きたいものです。



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       庄司紗矢香,  

ティーレマンが振るとワーグナーの音楽が輝く!!《ラインの黄金》シュターツカペレ・ドレスデン@サントリーホール 2016.11.18

ティーレマンの指揮はやはり凄いです。やや地味な印象の《ラインの黄金》もティーレマンが振れば、こうも輝かしい響きになるのですね。ティーレマンが振るワーグナーのオペラを聴くのはウィーン国立歌劇場での《パルジファル》に続いて、2回目ですが、その素晴らしさに圧倒されてしまいます。ティーレマンにはワーグナーが一番、似合っています。今日は終始、椅子に座ったままでの指揮で、それほどの大きなアクションもありませんでしたが、それでこの迫力でした。終幕後、振り返ったティーレマンの顔は大変紅潮していましたから、なかなかの熱気に満ちた指揮だったようです。

今日のオペラはコンサート形式ではなく、ホールオペラです。舞台後方の巨大なパイプオルガンの下に中空のミニステージを設置して、一夜限り(実際は日曜も公演があるので2夜限り)のサントリー歌劇場の出現です。ミニステージの下のオーケストラが陣取る舞台がまるでオペラハウスのオーケストラピットのようにも見えます。ワーグナーの楽劇はシンプルな舞台セットでOKなので、こういう形式で十分にオペラの上演が可能です。この調子で来年もティーレマンが《ワルキューレ》をやってくれないかと淡い望みを抱いてしまいます。4年かけてのリング上演です。

歌手はちゃんと衣装を着けての登場です。最初から圧倒的な歌唱を聴かせてくれたのはアルベリッヒ役のアルベルト・ドーメンです。まるで主役のような堂々たる歌唱。ミヒャエル・フォッレのヴォータンもよかったのですが、食ってしまった印象があります。そういえば、2年前にバルセロナのリセウ劇場で《ワルキューレ》を聴いたときには、ドーメンが素晴らしいヴォータンを歌ってくれました。今日もドーメンのヴォータンでもよかったんでしょうが、やはり、アルベリッヒはキーになる登場人物なので、ドーメンが歌ったのが正解なんでしょう。とは言え、ドーメンとフォッレを入れ替えたら、どうだったんだろうという興味もあります。藤村実穂子のフリッカもやはり、期待通りの素晴らしさ。ますます、声に磨きがかかってきたようです。ただ、歌う場面が少ないのが残念なところです。やはり、2年前のバルセロナのリセウ劇場での《ワルキューレ》でも彼女がフリッカを歌いましたが、こちらは出番が多かった分、その素晴らしさが際立っていました。これ以外の歌手も粒よりで素晴らしい歌唱を聴かせてくれて、満足しました。

とは言え、この舞台での主役はティーレマンであり、彼が指揮したシュターツカペレ・ドレスデンです。このコンビの演奏を聴くのは昨年の2月のサントリーホールでのブルックナーとR・シュトラウス以来、約1年半ぶりですが、その美しい響き、それでいて、重厚な迫力もある響きは見事です。ウィーン・フィル、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団に並ぶ存在ですね。もうすぐバイエルン放送交響楽団も聴けますが、どうでしょうね。もちろん、ベルリン・フィルも忘れたわけじゃありません。来週はオペラではなく、コンサートでティーレマン&シュターツカペレ・ドレスデンのR・シュトラウスを聴きますので、そのときに詳細な感想を書きましょう。

キャストは以下です。

  指揮:クリスティアン・ティーレマン
  演出:デニー・クリエフ

  ヴォータン:ミヒャエル・フォッレ
  フリッカ:藤村実穂子
  フライア:レギーナ・ハングラー
  アルベリッヒ:アルベルト・ドーメン
  ミーメ:ゲアハルト・ジーゲル
  ローゲ:クルト・シュトライト
  ドンナー:アレハンドロ・マルコ=ブールメスター
  フロー:タンセル・アクゼイべク
  ファーゾルト:ステファン・ミリング
  ファフナー:アイン・アンガー
  ヴォークリンデ:クリスティアーネ・コール
  ヴェルグンデ:サブリナ・ケーゲル
  フロスヒルデ:シモーネ・シュレーダー
  エルダ:クリスタ・マイヤー
  管弦楽:シュターツカペレ・ドレスデン

ああ、やっぱり、バイロイトでティーレマンを聴きたくなりました。それもリングとパルジファル。2020年以降にそれは実現するんでしょうか。今回は予習はバイロイトのライブを中心に聴きました。

 1956年 クナッパーツブッシュ バイロイト音楽祭 ホッター、ナイトリンガー、グラインド
 1958年 クナッパーツブッシュ バイロイト音楽祭 ホッター、アダム、グラインドル
 1958年 ゲオルク・ショルティ ウィーン・フィル ロンドン、スヴァンホルム、フラグスタート、ナイトリンガー
 1980年 ピエール・ブーレーズ バイロイト音楽祭 マッキンタイア、サルミネン、シュヴァルツ、ベヒト

クナッパーツブッシュの迫力は言うまでもありませんが、今回、ティーレマンを聴いて、彼こそ、クナッパーツブッシュを継ぐものという思いを強くしました。



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       ティーレマン,  

プレイエルでもYAMAHAでも魅惑のショパン、仲道郁代ピアノ・リサイタル オール・ショパン・プログラム@東京文化会館 小ホール  2016.11.13

仲道郁代さんは最近聴いたユリアンナ・アヴデーエワのような天才的な煌きに満ちたショパンを聴かせてくれるわけではありませんが、何か惹き付けられる魅力があるんです。ピアノももちろん素晴らしいんですが、それ以外の何かがあります。その美貌も魅力ではありますが、お人柄が音楽全体にあらわれることも大きな魅力です。そのひとつでもあるのが、研究熱心でプレイエルのピアノをご自分で購入して弾きこなしていることです。プレイエルのピアノは古ぼけた音色ではありますが、ピアノの魅力の原点を感じさせてくれます。その濁りのないピュアーな響きを聴いていると、スタインウェイよりも惹き付けられる気持ちも沸き起こります。

今日のリサイタルは仲道郁代さんのデビュー30周年を記念するもので、お得意のオール・ショパン・プログラムです。その目玉はやはりプレイエルのピアノです。3部構成のプログラムでは、第1部はプレイエルとYAMAHAの弾き比べで響きの違いを検証?すること。その上で、第2部はショパンの名曲をプレイエルで鑑賞します。最後の第3部はYAMAHAの最新型のピアノCFXでショパンの名曲を鑑賞します。なお、練習曲の「革命」と「別れの曲」は第2部、第3部で共通して弾かれますので、プレイエルとYAMAHAの聴き比べにもなります。

今日弾かれたショパンの作品はすべて名曲(有名曲?)ばかりなので、個々にコメントするほどのことはありません。第1部では、いかにプレイエルのピアノの響きが魅力かを再認識させられました。第1部の最後には、《アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ》が前半の《アンダンテ・スピアナート》はプレイエルで弾かれ、後半の《華麗なる大ポロネーズ》がYAMAHAで弾かれました。プレイエルで弾かれた《アンダンテ・スピアナート》が優美な響きで素晴らしかったのはもちろんですが、YAMAHAで弾かれた《華麗なる大ポロネーズ》が迫力があり、かつ美しい響きだったのが意外?でした。今日はモダンピアノがスタインウェイでなく、どうしてYAMAHAなのって疑問がありましたが、少し分かったような気がします。YAMAHAは弾き方によってはとても繊細なピュアーな響きが出せるんですね。音が重なっても濁った音色にならかったのが不思議です。

第2部はプレイエルの素朴とも思える純な響きにうっとりと聴き入ります。さすがに「革命」は響きがちょっと物足りない感じでしたが、意外に聴き映えがしました。素晴らしかったのはやはり、バラード第1番です。プレイエルで聴くのはなかなか贅沢な感じ。これぞ、ショパンですね。

第3部はYAMAHAのCFXの素晴らしい響きを仲道郁代さんが見事に引き出してくれました。YAMAHAでこれほどの音色を聴かせてくれるのはこれまではピリスだけでしたが、仲道郁代さんの素晴らしい技術に脱帽です。第2部のプレイエルを上回る出来でした。スタインウェイではこうは弾けなかったでしょう。最初の幻想即興曲の第1音から素晴らしい響きが聴けました。「革命」は断然、素晴らしい響きです。プレイエルの時代に生きたショパンもこれなら納得してくれるでしょう。

全体を通して、仲道郁代さんの丁寧で安定した演奏が印象的でした。それを支えていたのが左手が刻む正確なリズムと響きです。特にインテンポのときにその素晴らしさを実感しました。たまにミスタッチはありましたが、それは些細なもので鑑賞には差支えがなく、仲道郁代さんは最近、ますますテクニックに磨きがかかったという印象です。音楽的にもスリリングさとかデモーニッシュさこそ感じられませんが、王道を行く納得の演奏です。心地よく聴くことができました。

今日のプログラムは以下です。

  フレデリック・ショパン

  ワルツ第1番変ホ長調Op.18「華麗なる大円舞曲」
  練習曲変イ長調Op.25-1「エオリアン・ハープ」
  前奏曲第7番イ長調Op.28-7
  ワルツ第7番嬰ハ短調Op.64-2
  夜想曲第20番(遺作)嬰ハ短調「レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ」
  アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 変ホ長調Op.22

   《休憩》

  マズルカ第13番イ短調Op.17-4
  前奏曲第15番変ニ長調Op.28-15「雨だれ」
  練習曲ハ短調Op.10-12「革命」
  練習曲ホ長調Op.10-3「別れの曲」
  バラード第1番ト短調Op.23

   《休憩》

  幻想即興曲嬰ハ短調 Op.66
  夜想曲第2番変ホ長調Op.9-2
  練習曲ハ短調Op.10-12「革命」
  練習曲ホ長調Op.10-3「別れの曲」
  ポロネーズ第6番変イ長調Op.53「英雄」

   《アンコール》

    エルガー:愛の挨拶 Op.12

つい、ふらふらと仲道郁代さんの最新のショパンアルバムのCDを買い求め、サインをいただきました。配偶者は少々、呆れ顔でしたけどね。YAMAHAの響きが素晴らしかったとお話しすると、にっこりと美しい微笑みを浮かべながら、「それはYAMAHAの人が喜びますよ」と答えてくれました。次は来年1月のサントリーホールでのコバケンさんとの協奏曲コンサートです。ショパンとチャイコフスキーの2曲を弾くという豪華版です。ピアノはきっとスタインウェイでしょうが、できれば、YAHAMAで弾いてほしいな ⇒ 仲道さん。


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究極の“美”!!ユリアンナ・アヴデーエワ ピアノ・リサイタル@横浜みなとみらいホール 2016.11.3

このユリアンナ・アヴデーエワの素晴らしさは分かっていましたが、今日の超絶的な美しさには参りました。大変なピアニストです。saraiがこれまでに実演で聴いたピアニストの中で、ピアノから、これほどの“美”を紡ぎ出してくれる人はほかに誰もいません。今回の来日公演も本来は追っかけをしないといけなかったようです。今日の公演を聴くだけではもったいなかったと痛感しました。

前半のベートーヴェンはまさにベートーヴェンらしく、きっちりした演奏。とりわけ、《創作主題による32の変奏曲》と《ピアノ・ソナタ第26番 「告別」》は素晴らしい演奏で、心底、圧倒されました。ベートーヴェンという枠から逸脱することなく、彼女の音楽性を十分に発揮した見事な演奏でした。彼女のベートーヴェンは初めて聴きましたが、現存するベートーヴェン弾きの大家とも肩を並べる、高いレベルの演奏です。どうして、彼女はこんな風に何でも弾きこなせるのでしょう。音楽の芯がきっちりとできあがっているので、どんな作曲家の作品にも対応できるのかなと想像してしまいます。

でも、圧巻だったのは後半のリストです。前半のベートーヴェンは単なる前菜のようなものだったと感じさせるほどの凄まじく素晴らしい演奏でした。リストの最初の3曲は晩年の神秘主義的な作品。ワーグナーの死に絡んだ作品ですが、以前も同時期の別の3曲を聴いたことがあります。よほど、これらの珍しい曲に思い入れがあるんでしょう。沈み込んで、無調性も感じられる暗い音楽です。若い彼女がそれらを見事に表現します。そして、その3曲に続けて、間を置かず、《ピアノ・ソナタ ロ短調》を弾き始めます。フォルテの部分の凄まじい演奏、メロディアスな部分の極上の美を感じさせる演奏、それらが交錯して、ピアノ芸術の極限を感じさせます。saraiの頭の中はピアノの美しい響きで満たされて、幸福感の絶頂に至ります。これ以上のピアノ演奏はあり得ないと断じたい思いです。予習で聴いたクラウディオ・アラウの新旧録音(1970年、1985年)も大変素晴らしい演奏でしたが、今日のアヴデーエワの演奏はそれをはるかに凌駕する演奏です。ピアノ演奏の“美”とは、こういうものかと実感させられました。まだ、30歳そこそこのピアニストがここまでの高みに上りつめたとは大変な驚きです。《ピアノ・ソナタ ロ短調》は30分ほどの大曲ですが、終始、彼女のピアノの響き、美しい体の動作に魅了され続け、幸せな時間を過ごしました。アヴデーエワは間違いなく、ピアノの演奏技術と類稀なる音楽性を併せ持ったスーパーピアニストです。

アンコールのショパンも同じく、“美”そのものを感じさせる見事な演奏。流石に最後の英雄ポロネーズは少し乱暴な演奏になりましたが、お疲れだったのでしょう。

音楽が“美”の追求であるとすれば、今日のリサイタルは今年聴いた数々のコンサートの頂点に立つものでした。とても素晴らしい音楽に接することができて、とても幸せです。

今日のプログラムは以下です。

  ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第27番 ホ短調 op.90
  ベートーヴェン:創作主題による32の変奏曲 ハ短調 WoO.80
  ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第26番 変ホ長調 op.81a「告別」

   《休憩》

  リスト:悲しみのゴンドラⅠ
  リスト:凶星!
  リスト:リヒャルト・ワーグナー - ヴェネツィア
  リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調

   《アンコール》

    ショパン:ノクターン第8番 変ニ長調 op.27-2
    ショパン:マズルカ 変ロ長調 op.17-1
    ショパン:ポロネーズ第6番 変イ長調 「英雄」 op.53

今度の来日では、どういう喜びを与えてくれるでしょうか。


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       アヴデーエワ,  

バロック漬け:フライブルク・バロック・オーケストラ Ⅱ@トッパンホール 2016.10.24

今日もフライブルク・バロック・オーケストラを聴きます。2回目です。前半のプログラムはもうひとつ乗り切れない感じ。悪くはないのですが、どうにも地味な印象で集中して聴けません。
しかし、後半は一転。直球一本勝負って感じのパーフェクトな演奏に魅了されます。曲よし、演奏よしでノリノリです。バロック音楽を満喫して、大満足でした。

前半の最初はヴィヴァルディの《2本のヴァイオリンとチェロのための協奏曲》。晴れやかな演奏を期待しましたが、残念ながら、なんだか地味な響きに終始。ドイツのグループだとこんな感じかなとあきらめます。予習で聴いたイ・ムジチ合奏団が演奏した曲とはまるで別物に思えます。悪い演奏ではないのですが、イタリアン・バロックという感じには思えません。

次はバッハの《ヴァイオリン協奏曲第1番》です。ドイツの団体ですが、ソロ・ヴァイオリンの響きがもうひとつですね。予習したのがヘンリック・シェリングなのがいけなかったのかも・・・。弦楽合奏はよかったんですが仕方ないですね。

前半最後はコレッリの《合奏協奏曲 Op.6-2》です。これもイタリアン・バロックとしてはもうひとつに感じます。もう少し、ピュアーな響きが欲しかったところです。前回のコレッリの《合奏協奏曲 Op.6-1》のほうがよかった印象です。

そして、休憩後の後半です。

まずはヘンデルの《合奏協奏曲 Op.6-10》です。これはのっけから、響きの素晴らしさに魅了されます。前回もヘンデルは素晴らしい演奏でしたから、この団体はヘンデルとよほど相性がいいのでしょう。それにこの曲はヘンデルらしく、メロディアスでいいですね。特に最後の第6楽章の素晴らしい演奏に感銘を受けました。この団体の演奏でヘンデルの《合奏協奏曲 Op.6》全曲を聴いてみたいものです。

次はバッハの《2つのヴァイオリンのための協奏曲》です。名曲中の名曲です。特に第2楽章の美しさは格別です。ソロ・ヴァイオリンの響きがもう少しよければ、最高だったんですが、よい演奏ではありました。

最後はヴィヴァルディの《4本のヴァイオリンのための協奏曲》です。これまでの演奏でヴィヴァルディはあまり期待できないと思いながら聴き始めましたが、これが素晴らしい演奏。ヴィヴァルディらしい晴れやかな演奏です。最初からヴィヴァルディはこんな風に演奏してくれればよかったんです。曲も最高。演奏も最高。終わりよければ、すべてよしって感じで大満足。4人のソロ・ヴァイオリンの響きも見事でした。

今日のプログラムを紹介しておきます。

  弦楽合奏:フライブルク・バロック・オーケストラ

  ヴィヴァルディ:2本のヴァイオリンとチェロのための協奏曲 ニ短調 RV565(合奏協奏曲集《調和の霊感》Op.3より 第11番)
  J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲第1番 イ短調 BWV1041
  コレッリ:合奏協奏曲 ヘ長調 Op.6-2

  《休憩》

  ヘンデル:合奏協奏曲 ニ短調 Op.6-10
  J.S.バッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV1043
  ヴィヴァルディ:4本のヴァイオリンのための協奏曲 ロ短調 RV580(合奏協奏曲集《調和の霊感》Op.3より 第10番)
   《アンコール》
     ヴィヴァルディ:弦楽のための協奏曲 イ長調 RV158より 第1楽章 アレグロ・モルト、第2楽章 アンダンテ・モルト

配偶者がぽつりと「しばらくはもうバロックは聴かなくてもいいわね」って言いました。いい意味でバロックを満喫しました。今日の後半の演奏が素晴らしくて、本当に満足しました。


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二人のシュトラウスからベートーヴェンまで魅惑の響き、ルートヴィヒ・チェンバー・プレイヤーズ@上大岡ひまわりの郷 2016.10.23

やっぱり、音楽って、実際に聴いてみないと分かりませんね。その存在すら知らなかったルートヴィヒ・チェンバー・プレイヤーズは達人揃いの素晴らしい室内楽グループでした。この7人の演奏家たちが滅法、上手い事に舌を巻きました。日本人主体の弦楽奏者、そして、管楽器奏者はシュトゥットガルト放送交響楽団の首席奏者という構成です。全員、ヨーロッパ在住ですから、来日コンサートということになります。

まずはJ.シュトラウスの「こうもり」序曲 。一人目のシュトラウスですね。管楽器奏者3人、クラリネット、ファゴット、ホルンのあまりのうまさに驚愕します。うまいけれども、決して、自己主張するのではなく、アンサンブルに徹して、見事な演奏。ホルンなどはあまり聴こえないほどの抑えた音量で、縁の下の力持ちのような感じ。クラリネットの渋い音色には参ります。上手過ぎるクラリネットです。そして、弦楽器奏者4人も上手いんです。特にヴァイオリンの白井圭も上手い。唖然として、7人の演奏に聴き入ります。音楽的にどうだという前に、音響的な響きの見事さに唸ってしまいました。恐るべきアンサンブルです。

次はA.ブランの七重奏曲です。このA.ブランというのはアドルフ・ブランAdolphe Blancというフランスの室内楽の作曲家で、19世紀のパリ楽壇で活躍したそうです。ただ、室内楽という地味な分野のせいか、いつしか、忘れ去られる存在になったようです。現在はこの七重奏曲が最も知られているだけのようです。その無名とも思える七重奏曲をルートヴィヒ・チェンバー・プレイヤーズは見事な演奏で聴かせてくれました。こういう演奏が知られれば、もっとメジャーな楽曲になるかもしれませんね。メロディアスな聴きやすい音楽でした。演奏は先ほどの「こうもり」序曲 と同様に美しい響きとアンサンブルで聴き惚れるだけです。

前半の最後はR.シュトラウスの《もう1人のティル・オイレンシュピーゲル》です。二人目のシュトラウスの登場です。ただし、これは管弦楽版の《ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら》を5人編成(ヴァイオリン、コントラバス、クラリネット、ファゴット、ホルン)の室内楽に編曲されたもので曲も半分ほどの長さに圧縮されたものです。もともと、スーパーオーケストラが演奏する楽曲ですが、達人揃いの5人が見事な演奏を聴かせてくれます。笑ってしまうほどの素晴らしい演奏でした。音楽的にどうかと言うことは言いっこなしです。そりゃ、原曲の管弦楽版の《ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら》をウィーン・フィルあたりで聴くほうがいいに決まっていますからね。

休憩後は今日のメインの曲目のベートーヴェンの七重奏曲です。初期のベートーヴェンが最後に作曲した娯楽音楽の傑作です。予習で聴いたウィーン・フィルの名人たちの演奏では実に典雅で柔らかい雰囲気でした。

 ウィーン八重奏団(ボスコフスキーほか)
 ウィーン室内合奏団(ヘッツェルほか)

今日のルートヴィヒ・チェンバー・プレイヤーズはそういうウィーン風の演奏とは趣きが異なり、もっと芯がしっかりしたシンフォニックとも言える演奏で、娯楽音楽というよりももっと真摯な演奏で聴かせてくれます。CDで聴くなら、やはり、ウィーン風の柔らかい響きが好ましいと思いますが、実演では今日のようなしっかりした演奏も迫力があります。終始、各楽器の美しい響きの演奏が続き、長い6楽章もあっという間に終わります。全6楽章のうち、第2楽章の天国的な音楽に感銘を受けました。モーツァルト以外の音楽でこのような天国的な雰囲気を感じたことはありません。初期の娯楽音楽でもベートーヴェンは天分を発揮していたことを再認識するとともにルートヴィヒ・チェンバー・プレイヤーズの演奏能力の高さにも魅了されました。

今日のプログラムを紹介しておきます。

  ルートヴィヒ・チェンバー・プレイヤーズ
   ヴァイオリン:白井 圭  ヴィオラ:ヤニス・リールバルディス  チェロ:横坂 源
   コントラバス:幣 隆太朗  クラリネット:ディルク・アルトマン
   ファゴット:ハンノ・ドネヴェーグ  ホルン:ヴォルフガング・ヴィプフラー

  J.シュトラウス:オペレッタ「こうもり」序曲
  A.ブラン:七重奏曲変ホ長調 Op.40
  R.シュトラウス(ハーゼネール編):もう1人のティル・オイレンシュピーゲル

  《休憩》

  ベートーヴェン:七重奏曲 Op.20

   《アンコール》
     J.シュトラウス:フランス風ポルカ「野火」Op.313

いやはや、音楽の世界は広く、まだまだ、saraiの知らない素晴らしい才能がいることに驚かされました。6年前にシュトゥットガルト放送交響楽団の演奏を聴きましたが、そのときはサー・ロジャー・ノリントンの指揮のノン・ヴィブラート奏法に驚かされたので、このオーケストラの真の実力が分かりませんでしたが、名人たちの集団だったんですね。正確に言えば、そのときもハイドンの交響曲第1番を弦楽器奏者9人、管楽器奏者5人で見事な演奏を聴かせてくれたので上手いとは思っていましたが、今日とは違って、ノン・ヴィブラート奏法だったので、その実力がどれほどのものかは分かっていませんでした。今日の管楽器奏者の演奏を聴いて、ドイツの放送局オーケストラの凄さの一端を垣間見たような気がします。


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バロックの響きを堪能:フライブルク・バロック・オーケストラ I@トッパンホール 2016.10.21

バロック・オーケストラと言えば、ほとんど、声楽と一緒にしか聴いたことがありません。カウンター・テノールのコンサートとか、オペラとか、マタイ受難曲のような宗教曲です。今日は趣を変えて、バロックのコンチェルトを聴いてみることにしました。独奏ヴァイオリンか複数のヴァイオリンによる合奏協奏曲のガラ・コンサートのようなものです。作曲家はバロックを代表するコレッリ、ヴィヴァルディ、バッハ、ヘンデルとてんこ盛りです。今日、6曲、次回、6曲聴きます。なかでもバッハのヴァイオリン協奏曲はすべて聴くことになります。

ヴィヴァルディが地味な曲であの晴れやかさがなかったのが残念ですが、ほかはバロックらしい落ち着いた中に哀愁や喜びを込めた音楽を楽しめました。なかでもヘンデルの合奏協奏曲はアンコールも含めて、艶のある演奏で心に染み入りました。バッハは堅実な演奏で心地よく聴かせてもらいました。コレッリは滅多に聴く機会がないので新鮮に感じる演奏です。

今日のプログラムを紹介しておきます。

  弦楽合奏:フライブルク・バロック・オーケストラ

  ヴィヴァルディ:歌劇《オリュンピアス》RV725より 序曲
  J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲第2番 ホ長調 BWV1042
  ヘンデル:合奏協奏曲 イ長調 Op.6-11

  《休憩》

  ヴィヴァルディ:シンフォニア ロ短調 RV169《聖なる墓にて》
  J.S.バッハ:3つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ長調 BWV1064R
  コレッリ:合奏協奏曲 ニ長調 Op.6-1
   《アンコール》
     ヘンデル:合奏協奏曲 ニ短調 Op.6-10より 第5楽章、第6楽章

次回は来週の月曜日になりますが、今度はヴィヴァルディも気持ちよく聴けるといいな。


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上原彩子の《展覧会の絵》は熱く燃焼!!@浜離宮朝日ホール 2016.10.20

まあ、上原彩子という人はなかなか理解しがたいところがあります。このところ、非常に素晴らしい演奏ばかり聴かせてもらいましたが、今日は起伏の多い内容で玉石混交の演奏でした。神をも恐れぬ業で今日の演奏を採点してみると、モーツァルトは可、シューマンは良、ムソルグスキーは特優、アンコールのラフマニノフは特優ということになります。つまり、ロシアもの、あるいは近代ものだけが素晴らしかったということになります。ドイツ・オーストリア系、あるいは古典およびロマン派はもう一つだったということです。よく考えると、これは今日だけのことではなくて、ずっとそうだったような気がします。ラフマニノフを中心にプロコフィエフ、チャイコフスキーなどのロシアもので、はずれはなかったような気がします。もっともロシアもの以外ではショパンのコンチェルトが素晴らしかったことを思い出します。ショパンも元をたどれば、東欧がルーツですから、ロシアに近いですね。あっ、ラヴェルも素晴らしかったこともありました。フランスものも意外に得意なのかな。何故、こんなことをつらつらと書き綴るかと言うと、上原彩子がバッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、シューマンというドイツ系の音楽で本領を発揮できないかが不思議だからです。もっとも、saraiとしては別にラフマニノフだけを聴いていても一向に構いませんけどね。とても余人が対抗できないほどの素晴らしさです。

ということで、もうすでに今日のコンサートの内容は俯瞰してしまいましたが、一応、もう一度、おさらいしてみましょう。

最初のモーツァルトのピアノ・ソナタ第10番ですが、そもそもピアノの響きがsaraiが思い描くモーツァルトの響きとはかけ離れています。シンプルに粒立ちのよいタッチで弾いてもらいたいのですが、響かせ過ぎに思え、響きがピュアーでありません。音階の運びもスムーズさを欠きます。ピリスやペライアのような響き、さらに言うと古くはハスキルのような美しい響きを目指してほしいというのがsaraiの願いです。音楽的には第2楽章などは気持ち良くは聴けたんです。上原彩子にはもっともっと高いレベルで演奏を望みます。

次はシューマンの謝肉祭です。これはモーツァルトほど違和感はありませんが、やはり響かせ過ぎのように感じます。第1曲の《前口上Préambule》は急ぎ過ぎで響きが少し濁り、うるさい感じが残ります。ただ、弾き進めるにつれて、こちらの耳が慣れてきたのか、あるいは上原彩子のピアノの響きが洗練されてきたのか、第13曲《エストレラEstrella》あたりからは心に沁みるような響きに思えます。熱情的な演奏が迫力を増します。何となく、謝肉祭にしては熱すぎるような感はありますが、こういう演奏もありでしょう。もう少しピュアーな響きだったらベストだったでしょう。

休憩後、ムソルグスキーの組曲《展覧会の絵》です。前にも一度、上原彩子のピアノで聴いたことがありますが、そのときと同様に安定していて、それでいて、迫力のある切れ味十分な演奏です。第9曲の《ババ・ヤーガ》に至って、急に演奏がヒートアップします。物凄い迫力です。まるでリヒテルの伝説の名演を再現するかのようです。もちろん、ミスタッチも増えますが、そういうことは気にならないほどの迫力です。終曲の《キエフの大門》も凄まじい演奏。いやあ、見事な演奏でした。すっかり、満足しました。

アンコール曲のクライスラー原曲の《愛の悲しみ》は編曲とは言え、ラフマニノフそのものという曲。ラフマニノフを弾くときの上原彩子は鬼気迫るものがあります。素晴らしい演奏でした。この日、最高の演奏だったと思います。

今日のプログラムは以下です。

  モーツァルト:ピアノ・ソナタ第10番ハ長調 K.330
  シューマン:謝肉祭 Op.9

   《休憩》

  ムソルグスキー:組曲《展覧会の絵》

   《アンコール》

    クライスラー(ラフマニノフ編曲):愛の悲しみ

また、ラフマニノフを中心に据えたロシアもののプログラムを聴きたいものです。


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       上原彩子,  

R・シュトラウス、シュトラウス、シュトラウス・・・最高!!林正子 ソプラノ・リサイタル@横浜みなとみらいホール 2016.10.19

いやあ、とてもよかった!! R・シュトラウスのファンなら垂涎もののリサイタルでした。日本人ソプラノがこんなに見事にR・シュトラウスを歌えるなんて、想像だにしませんでした。じゃあ、何故、このリサイタルに足を運んだかというと、あまりにもプログラムが魅力的だったからです。特に第2部はR・シュトラウスの晩年の傑作揃いだったからです。(当初は「ダナエの愛」もアンコール曲ではなくて、本編のプログラムにはいっていました) 《4つの最後の歌》、《カプリッチョ》、《ダナエの愛》はオーケストラ曲の《メタモルフォーゼン》と合わせて、R・シュトラウスの傑作中の傑作ですから、聴き逃がせません。それにこんな大曲に挑む日本人ソプラノってどんな歌手なのか、大いに興味もありました。

第1部の《8つの歌》から、なかなか魅力的な歌唱です。saraiの趣味から言えば、もっと澄み切った声のほうがいいのですが、林正子さんの声も素晴らしいです。日本人ソプラノに多い細い声ではなくて、ボリュームのある響きで美しい声です。変な言い方ですが、違和感のないR・シュトラウスです。献呈、万霊節あたりが心に染み入る歌唱でした。そして、圧巻だったのは《サロメ》です。圧倒的な歌唱でした。欲を言えば、もっとドロドロとした雰囲気がほしいところですが、オペラそのものではないので、それは無理ですね。

そして、期待していた第2部です。《4つの最後の歌》は最高に素晴らしい歌唱でした。第3曲の《眠りのときに》では感動のあまり、涙が出てきました。さらに第4曲の《夕映えに》でも感動しっぱなし。涙なしには聴けません。かぶりつきで聴きましたから、余計、感動が大きかったかもしれません。ピアノの石野真穂さんも見事な演奏。実に美しい響きでうっとりと聴かせてくれました。
最後の《カプリッチョ》のマドレーヌのモノローグもとても素晴らしく、嬉しくなって、聴き入っていました。それに林正子さんの歌唱は精魂込めた大変な熱唱でした。

プログラムにあった《ダナエの愛》が聴けなくて、残念と思っていたら、何とアンコールとして歌ってくれて、大満足。これまた素晴らしい歌唱でしたが、林正子さんはもう精力を使い果たし、喉をからしての歌唱。それほど、熱のこもった歌唱だったんです。最後の高音がうまく出ませんでしたが、もちろん、納得です。今日はとてもよいものが聴けて、大いに満足したリサイタルでした。

ところで苦言をひとつ。曲間で拍手をする人たちがいましたが、あれはやめてください。特に《4つの最後の歌》の第3曲で感動しているのに次の第4曲の前で無粋な拍手。あなただけのコンサートではないし、それにあなたは感動しなかったんでしょうか。感動していたら、とても拍手なんかできなかった筈ですよ。熱唱していた林正子さんに対しても失礼です。

今日のプログラムは以下です。


  ソプラノ:林正子
  ピアノ:石野真穂

  【第1部】

  R.シュトラウス:8つの歌 Op.10
           献呈/何もなく/夜/ダリア/待ちわびて/もの言わぬ花/サフラン/万霊節
  R.シュトラウス:オペラ「サロメ」より 最終場面
           「おまえは口づけさせようとしなかった ヨカナーンよ」

  【第2部】

  R.シュトラウス:4つの最後の歌
           春/九月/眠りのときに/夕映えに
  R.シュトラウス:オペラ「カプリッチョ」より ソネットと伯爵令嬢のモノローグ(最終場面)
           「心をこれほど燃え立たせるものは 他にない」

   《アンコール》

  R.シュトラウス:オペラ「ダナエの愛」より 第3幕の ダナエのモノローグ
           「あなたは 私をやすらぎで包んでくれる」


せっかくですから、横浜みなとみらいホールと林正子さんに再度のR・シュトラウス尽くしのリサイタルを企画してくれるようにお願いしたいと思います。アリアドネ、マルシャリン、エレクトラ等々、まだ聴きたい曲は山ほどあります。《明日の朝》も聴きたいですね。是非とも、よろしくね。



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伝説の名演:チェリビダッケの《展覧会の絵》 ベルリン・ライブ

このところ、コンサートで《展覧会の絵》を聴くことが多く、この曲に関心が向いています。《展覧会の絵》と言えば、ムソルグスキーの原曲はピアノ独奏版ですが、ラヴェルの編曲したオーケストラ版が有名です。saraiも昔はこのオーケストラ編曲版を好みましたが、最近はピアノ独奏の原曲を好んでいます。CDではリヒテルの1958年のソフィア・リサイタルでの物凄い演奏があります。リヒテルが西側に初めて紹介された記念すべき録音だそうです。ミスタッチの多さにも驚きますが、そんなものはものともしない豪快でド迫力のリヒテルの演奏に恐れ入って聴き入るのみというCDです。ホロヴィッツも凄い演奏です。1951年のカーネギー・ホールのライブです。ただ、これはホロヴィッツの編曲版の演奏です。これもやりたい放題の演奏です。この古い録音が横綱級の演奏で、その後、なかなか、この凄まじい演奏に迫るものがありませんね。

オーケストラ編曲版では、ジュリーニ指揮シカゴ交響楽団の素晴らしい演奏がありますが、最近聴いたマルケヴィッチ指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団も素晴らしい演奏でした。
しかし、噂では、あのチェリビダッケの凄い演奏があるということで、これまで気になって、仕方がありませんでした。問題は非正規盤で入手性が悪いということです。

 1986年9月23日ベルリン・ライヴ 米AUDIOR AUD-7009~10

オーケストラはチェリビダッケの鍛え上げたミュンヘン・フィルです。この20日後にチェリダッケがミュンヘン・フィルを率いて来日したときの記録も録音されています。1986年10月14日人見記念講堂ライヴです。ベルリン・ライブとはもちろん、別物です。こちらはFM東京の音源をALTUSが正規にリリースしています。
で、遂にそのベルリン・ライブの幻のCDを入手して、今日、聴いたんです。

絶句・・・何とも凄い演奏でした。噂通りです。まったく別次元とも思える演奏で、CDとは言え、自宅のオーディオルームで大変な緊張感を強いられて、実演を聴く感覚になりました。

冒頭のプロムナードでトランペットが厳かに吹奏するところから、この演奏の魔力に魅せられます。まるで秘密の儀式に参加しているかのような雰囲気です。それにその音の背後にチェリビダッケの物凄い《気》を感じます。だからこそ、まるでsarai自身がこのコンサートを生で聴いているような錯覚に襲われるのかも知れません。この後もsaraiはチェリビダッケの呪縛から逃れることはできません。演奏は後半になって、ますます物凄いことになっていきます。《カタコンベ》は通常の演奏では少し退屈することもありますが、この演奏では驚くほどの緊張感の高まりに襲われます。ともかく、ブルックナーで鍛え上げられた金管のセクションが凄い響きを聴かせてくれます。《ババ・ヤガー》の強奏と弱奏の対比的な演奏のあたりの高揚感で強い感動を味わいます。このエンターテインメントの代表格のような音楽で感動したのは初めてのことです。そして、終曲の《キエフの大門》に突入していきます。もちろん、突入といってもチェリビダッケの指揮ではいつものようにスローテンポですが、ゆったり感はなく、強烈な高揚感に満ちています。ここからは言葉では表現できない世界にはいり、saraiはしびれるような感覚で音楽と一体化するのみです。何度も感動の大波に襲われながら、フィナーレにはいっていきます。と、チェリビダッケの声と思われる一喝とともに頂点に上りつめます。歓声と拍手が巻き起こりますが、いささかタイミングが早過ぎます。まあ、ベルリンの聴衆の気持ちは分かりますが、もう少し、感動の空白が欲しいところでした。

凄い音楽を聴きました。これまでCDを聴いていて、実演と同様に感動したのは、チェリビダッケとミュンヘン・フィルが演奏した非正規盤のリスボン・ライブのブルックナーの交響曲第8番だけです。いやはや、チェリビダッケの凄さをまた体験してしまいました。彼の実演を聴き逃がしてしまったsaraiですが、CDで追体験できて幸せです。

なお、チェリビダッケのリスボン・ライブについて綴った記事はここです。

今更ながら、EMIの正規盤(1993年録音)と人見記念講堂ライヴも聴いてみましょうか・・・



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感銘!異形のブラームス:ユリア・フィッシャー ヴァイオリン・リサイタル@トッパンホール 2016.10.16

ああ、こんなブラームスもあるんだという、ブラームスの室内楽らしくない表現の演奏でしたが、このブラームスのヴァイオリン・ソナタ 第3番はとてもユリア・フィッシャーの演奏スタイルに合っていて、それはそれで大変な感銘を覚えました。室内楽というよりも協奏曲でも聴いたような感覚です。実際、実にスケールが大きくて、熱い演奏でした。ともかくユリア・フィッシャーのヴァイオリンはこの小さなトッパンホールに大きく響き渡ります。そのあたりが前半、そして、後半の初めに演奏されたドヴォルザークとシューベルトのソナチネには悪く作用して、弾き過ぎの感を否めませんでした。このブラームスを聴くまでは初めて聴くユリア・フィッシャーのヴァイオリンにがっかりしていたんです。響きも立派、テクニックも立派、しかし、音楽に心がこもっていないという感じだったんです。それがブラームスでは一変して、ステージ上で派手な動作で弾きまくるユリア・フィッシャーのヴァイオリンにすっかりと魅了されました。もちろん、こういう演奏がブラームスのヴァイオリン・ソナタのベストの演奏だとは思いませんが、この曲自体にスケールの大きな協奏曲的な性格があるのも事実でしょう。それをちゃんと認識させてくれたユリア・フィッシャーに感謝です。とは言え、こういう感想では誤解を生むかも知れません。このブラームスのヴァイオリン・ソナタ 第3番で一番感銘を受けたのは第2楽章でした。彼女はばりばり弾きまくるのではなくて、大きな構えのたっぷりした表現の音楽を奏でるんです。第2楽章では、ゆったりと美しい音楽を紡いでいきました。それがブラームスらしい抒情を歌い上げます。ただ、晩年の枯淡の境地ではありませんが、ブラームスだって、晩年は枯淡だけではありませんからね。
アンコール曲ももちろん、ブラームス。珍しいF.A.E.ソナタの第3楽章 スケルツォです。saraiは初めて聴きます。F.A.E.ソナタはシューマン等との合作ですが、この第3楽章だけがブラームスの作曲という珍品です。この曲も素晴らしい演奏でした。もちろん、強い響きの演奏でスケールの大きな演奏です。
最後のアンコール曲はユリア・フィッシャーがヴァイオリンを持たずに出てきて、マルティン・ヘルムヒェンと並んでピアノの前に座り、高音部を受け持って、連弾です。ユリア・フィッシャーはピアノもうまいということでしたが、そのレベルはまあ、言わないほうがよさそうですね。
ところでピアノのマルティン・ヘルムヒェンは先日のトッパンホールの室内楽フェスティバルでも聴きましたが、堅実な演奏が印象的です。ただ、ユリア・フィッシャーのブラームスのダイナミックな演奏に呼応した演奏ではパーフェクトとは言い難いタッチも多かったのが残念でした。

ユリア・フィッシャーの素晴らしいブラームスに魅せられたリサイタルでした。彼女の演奏するブラームスのヴァイオリン協奏曲が聴きたくなりました。

今日のプログラムは以下です。

  ヴァイオリン:ユリア・フィッシャー
  ピアノ:マルティン・ヘルムヒェン

  ドヴォルザーク:ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ ト長調 Op.100
  シューベルト:ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ 第3番 ト短調 D.408

   《休憩》

  シューベルト:ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ 第1番 ニ長調 D384
  ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ニ短調 Op.108

   《アンコール》

  ブラームス:F.A.E.ソナタから第3楽章 スケルツォ WoO post.2
  ブラームス:ハンガリー舞曲第5番 嬰ヘ短調(4手用版) ピアノ:ユリア・フィッシャー&マルティン・ヘルムヒェン



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会心のシベリウス:交響曲第1番_オッコー・カム&神奈川フィル@横浜みなとみらいホール 2016.10.15

このところ、不満の残る演奏だった神奈川フィルでしたが、オッコー・カムが見事によみがえらせてくれました。うなってしまうほど職人技的なオッコー・カムの丁寧な音楽作りに神奈川フィルも十分に応えた演奏です。
オッコー・カムが振るシベリウスですから、素晴らしいだろうと期待して出かけましたが、期待以上の出来でした。特に後半の交響曲第1番、とりわけ第4楽章の素晴らしさには参りました。アンコールのカレリア組曲も見事な演奏で、すっかり、上機嫌になっての帰還になりました。来シーズンは神奈川フィルを聴くのはやめようと思っていましたが、今日の演奏で心が動きました。やはり、オーケストラは指揮者次第でこんなにも変われるものだということを再認識した次第です。

オッコー・カムを聴くのは一昨年末のラハティ交響楽団とのシベリウス・ツィクルス以来になります。そのときは交響曲第4番の演奏が最高でしたが、アンコール曲でラストに演奏された交響詩「フィンランディア」は圧巻の演奏でした。まずはその交響詩「フィンランディア」で今日のコンサートは幕が開きます。このところ出来の悪かった神奈川フィルの管、特に金管に不安感を持っていましたが、カムの見事なタクトは無難に金管をまとめます。少し抑え気味、8割くらいの演奏ですが、楽しく聴くことができます。それに弦と管のバランスのとり方も絶妙です。ラハティ交響楽団との最高の「フィンランディア」には及びませんでしたが、プログラムの冒頭ですから、これくらいの演奏で十分でしょう。やり過ぎると、後の曲とのバランスが崩れます。流石のシベリウスを堪能しました。

次は交響曲第7番です。この曲も「フィンランディア」同様、少し抑え気味、8割くらいの演奏です。曲の性格から言っても、爆発的な演奏は好ましくないので、この程度は妥当なところだと納得できる演奏です。もう少し、透明感のある響きだと最高ですが、ラハティ交響楽団とのシベリウス・ツィクルスでの演奏とそんなに差はなかったと思います。それにこの曲は元々、難解とも思える曲ですから、これ以上の演奏は望みません。

休憩後、最後は交響曲第1番です。これはよほど力を入れて、リハーサルを重ねたようです。大変な力演にsaraiも高揚させられました。実はラハティ交響楽団とのシベリウス・ツィクルスで最初に演奏された、この曲はアンサンブルが悪過ぎて、大変がっかりさせられた演奏だったんです。ですから、オッコー・カムがそのときの不出来だった演奏を今日こそ挽回してほしいと思っていましたが、そのsaraiの願いを見事にかなえてくれました。前半の抑え気味だった演奏とは打って変わって、かなり踏み込んだ演奏です。特に第4楽章は全開モードの演奏です。それでいて、アンサンブルは綺麗に揃っていました。快速パートの歯切れのよい演奏、中間部の抒情的な歌い込み、シベリウスの魅力を満喫しました。神奈川フィルの力量が100パーセント発揮された素晴らしい演奏に心が躍りました。不満だったのは会場の聴衆の反応が今一つだったことです。これだけの演奏はなかなか聴けるものではありません。そう言えば今日は都響のコンサートマスターの山本友重が何故かゲスト出演していました。彼の力も今日の会心の演奏に一役かっていたのでしょうか。

今日は定期演奏会なのになぜかアンコール曲が演奏されて、嬉しいびっくり。これがまた素晴らしい演奏。冒頭の弦楽合奏の素晴らしさにうっとりしました。オッコー・カムはラハティ交響楽団とのシベリウス・ツィクルスでも素晴らしいアンコール曲を聴かせてくれましたが、どうやら、アンコール曲がお得意のようです。きっと、これも十分にリハーサルしたんでしょう。「カレリア」組曲を全曲、聴かせてもらいたいところでした。

来シーズンはオッコー・カムのプログラムが組まれていないのがとても残念です。是非、シベリウスの交響曲第4番をやってほしいのですが、神奈川フィルの関係者のかたのご検討をお願いしたいところです。来来シーズンは何とか考えて下さいね。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:オッコー・カム
  管弦楽:神奈川フィル

  シベリウス:交響詩「フィンランディア」Op.26
  シベリウス:交響曲第7番ハ長調Op.105

   《休憩》

  シベリウス:交響曲第1番ホ短調Op.39


   《アンコール》
     シベリウス:「カレリア」組曲op.11から第3曲《行進曲風に(アラ・マルチャ)》


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またまた圧巻のブラームス:フォーレ四重奏団@横浜みなとみらいホール 2016.10.5

4日前に聴いたトッパンホールでのブラームスのピアノ四重奏曲第2番は期待したほどの演奏には思えませんでしたが、今日のブラームスのピアノ四重奏曲第1番は文句なしに素晴らしい演奏でした。特に大好きな第3楽章、第4楽章は素晴らしい演奏。なかでも第4楽章の後半は圧巻の演奏。saraiの気持ちも高揚しました。1昨年、初めてフォーレ四重奏団を聴いたときの感動を思い出しました。そのとき演奏されたのもこのブラームスのピアノ四重奏曲第1番でした。ともかく、フォーレ四重奏団の演奏するブラームスのピアノ四重奏曲第1番は見事です。アンサンブルもアーティキュレーションも最高で音楽的にも熟成しています。久々にブラームスの音楽を堪能しました。

休憩後、当初のプログラムにははいっていなかった細川俊夫の新作《レテ(忘却)の水》が演奏されます。4日前のトッパンホールでのコンサートでも聴いたばかりです。前回は音楽をしっかりと聴き取ることができませんでしたが、今日は気持ちを集中して聴きました。音楽としては、前半部分の音の響きの薄さが不満でしたが、後半、ピアノの独奏が始まったあたりからは深みの感じられる音楽が展開されます。ピアノの響きを中心に構成するパートは聴き応えのある音楽である印象でした。正直、標題音楽的な聴き方は難しいと感じましたが、後半部分に限れば、純粋音楽として評価できると感じました。あくまでも1素人の印象に過ぎませんけどね。

最後はムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」のピアノ四重奏編曲版です。演奏は見事でした。まあ、それだけのことです。これならピアノ独奏を聴けば十分というのが正直な感想です。

アンコールの2曲目のベートーヴェンは聴きなれない曲だと思いましたが、いかにもベートーヴェンらしい美しい音楽です。ピアノと管楽のための五重奏曲のベートーヴェン自身によるピアノ四重奏曲への編曲版でした。こういうベートーヴェンもあるんだ・・・。

今日のプログラムを紹介しておきます。

  ピアノ四重奏:フォーレ四重奏団
   ヴァイオリン:エリカ・ゲルトゼッツァー
   ヴィオラ:サーシャ・フレンブリング
   チェロ:コンスタンティン・ハイドリッヒ
   ピアノ: ディルク・モメルツ

  ブラームス:ピアノ四重奏曲第1番ト短調 Op. 25
  細川俊夫: 《レテ(忘却)の水》ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、ピアノのための
    (2016年10月1日トッパンホールにて日本初演)─フォーレ四重奏団に捧げる─

  《休憩》

  ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」(編曲:フォーレ四重奏団&グリゴリー・グルツマン)

   《アンコール》
     メンデルスゾーン:ピアノ四重奏曲第2番 ヘ短調 Op. 2から第4楽章アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェAllegro molto vivace
     ベートーヴェン:ピアノ四重奏曲 変ホ長調 Op. 16 (ピアノと管楽のための五重奏曲 Op. 16の編曲版)から第2楽章アンダンテ・カンタービレAndante cantabile

ブラームスの名曲を聴くので、CD(またはアナログディスク)で聴ける名演をできるだけ予習しました。

 ゼルキン&ブッシュ四重奏団員
 デムス&バリリ四重奏団員
 シュナイダー,トランプラー,パーナス,ブラウン
 サボー&バルトーク弦楽四重奏団員(アナログディスク)
 フォーレ四重奏団

どれも聴き応えのある演奏です。なかでもゼルキン&ブッシュ四重奏団とデムス&バリリ四重奏団は別格の素晴らしさ。どちらも60年以上も昔のモノラル録音ですが、ドイツ風のなよやかなゼルキン&ブッシュ四重奏団とウィーン風のしなやかで柔らかいデムス&バリリ四重奏団には聴き惚れてしまいます。サボー&バルトーク弦楽四重奏団の第4楽章のハンガリー風のノリのよく、哀愁に満ちた演奏に滅法聴き惚れてしまいました。



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       フォーレ四重奏団,  

追悼:ネヴィル・マリナー・・・名盤ヴィヴァルディ《四季》を聴く

昨日、10月2日に指揮者ネヴィル・マリナーが亡くなったことをヒラリー・ハーンのツイッターHilaryHahnViolinCaseで知りました。御年92歳で指揮者では最長老だったそうです。今年の4月に最後の来日と銘打った公演が東京オペラシティであったことは知っていましたが、saraiは行きませんでした。結局、実演に接することもなく、CDでもあまり良い聴き手ではありませんでした。所有するCDを数えてみると、たったの6枚だけ。それもほとんどは協奏曲の伴奏者としてのCDです。唯一、今年聴いた以下のCDだけがネヴィル・マリナーが主役のCDです。

 ホルスト:惑星、エルガー:威風堂々行進曲第1番・第4番 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

これはなかなか素晴らしい演奏でした。しかし、ネヴィル・マリナーと言えば、彼が共同創設者だったアカデミー室内管弦楽団(正式には、Academy of St. Martin-in-the-Fields)がすぐに思い浮かびます。そして、その名を高めたのは、そのアカデミー室内管弦楽団と演奏したヴィヴァルディの《四季》でした。この名盤の誉れ高いヴィヴァルディ《四季》を実はまだ、ちゃんと聴いた覚えがありません。saraiが中学生だった当時はイ・ムジチ合奏団のLPレコードを聴いて満足していましたからね。ネヴィル・マリナーの訃報に接した今、追悼に聴くべきものはこのヴィヴァルディ《四季》以外にはありえないと思い、家探しをしてみました。すると、ありました! おじさんから継承した遺産LPライブラリーの中にちゃんと眠っていました。

 決定盤!アカデミーの「四季」
  アカデミー室内管弦楽団 
  指揮:ネヴィル・マリナー
  アラン・ラヴディ(ヴァイオリン)

このLPレコードは1枚ものですが、分厚いジャケットになっています。その頃流行ったスコア付きです。ライナーノートを見て、また、びっくり。故吉田秀和が書いています。彼らしい凝った文章が綴られています。《アカデミーの<四季>をめぐって》と題した文章の最後のほうの一節が目を惹きます。

『しかし私が特に指摘しておきたいのは、演奏全体にみなぎる躍動感であって、これこそ正にバロック音楽の特質であるという点である。・・・<いくら何でも、これでは行きすぎだ!>と言う人も少なくあるまいが、その<行きすぎ>こそ実はバロック音楽の核心をなす特質の一つと裏表の関係にある。バロックとは静止した均衡ではなくて、過多から来るダイナミックな活動、躍動をさすのである。』

この文章が書かれたのは1960年代のことだという点は考慮する必要があります。現在のようにピリオド奏法が古楽を席捲していたわけではありません。それにしても、そんなに行きすぎと言うほどの演奏なのかと頭をひねりながら、LPレコードに針を下しました。

おじさんはこのLPレコードがお気に入りだったようで、結構、スクラッチノイズが入ります。演奏は実にノーブル。なよやかな高弦の美しさが印象的です。一気に春から冬まで聴き通しました。これが一世を風靡したネヴィル・マリナー&アカデミーの四季なんですね。一番よかったのは冬の透徹したような演奏です。全体は聴きなれたイ・ムジチ(フェリックス・アーヨ)のほうがよいですが、冬だけはネヴィル・マリナー&アカデミーのほうが上品で奥行きがあって、聴き映えがします。ところで、吉田秀和が言うような<行きすぎ>の感じはありません。1960年代とは時代が変わったのかな。

ネヴィル・マリナーとsaraiのおじさんの魂に合掌・・・



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秋の夜はやっぱりブラームス:フォーレ四重奏団@トッパンホール 2016.10.1

秋の夜に聴くブラームスの室内楽は最高です。アンコールの最後に演奏してくれたブラームスのピアノ四重奏曲第3番の第3楽章アンダンテはとても心にしみいってきました。繊細でロマンチック・・・ブラームスにぴったりの演奏でした。

フォーレ四重奏団は一昨年に初めて聴いて、すっかりファンになってしまいました。大変、期待して聴きましたが、一昨年に聴いたほどの新鮮な感動は残念ながらありませんでした。過度の期待だったのかな。ダイナミックな演奏はよかったのですが、フォルテの部分が少し騒々しかった感じです。フォルテ以外は大変、よかったので全体としては満足な演奏でした。

まず、モーツァルトのピアノ四重奏曲第2番です。これは一昨年に東京文化会館小ホールで聴いたときの名演には及ばない感じです。フォーレ四重奏団のCDに録音されている内容と同レベルの演奏ですから、及第点ではありますが、一昨年の素晴らしい演奏を聴いてしまっているので、もう一つに感じてしまいました。ホールが少し大きくなった分、演奏に力みがあったのかもしれません。やはり、室内楽はなるべく小さなホールで聴いたほうが良さそうです。

次は、細川俊夫の新作です。このところ、彼の新作を聴く機会が多いですね。なかなか1回聴いただけでは印象をつかむのが困難ですが、作曲家が言うところの《音は水のメタファー》という感じは何となく分かりました。題名の水がすべてを忘却させてくれるというよりも、水にも色んな諸相・・・悲しみ、希望などが投影されているように感じました。ただ、あまり、散文的には音楽を聴かずに純粋に音楽自体の中身だけを聴きたいとも思いました。もう一度、聴き直したい音楽です。

休憩後は期待のブラームスのピアノ四重奏曲第2番です。第2楽章がとても美しかったので満足です。ただ、前述したようにフォルテの部分が少し騒々しかった感じでブラームスの最高の演奏とは言えない感じで残念です。むしろ、アンコールのブラームスのほうが素晴らしかったと思います。

来週、みなとみらいホールでもブラームスのピアノ四重奏曲第1番を聴くので、それに期待しましょう。

今日のプログラムを紹介しておきます。

  ピアノ四重奏:フォーレ四重奏団
   ヴァイオリン:エリカ・ゲルトゼッツァー
   ヴィオラ:サーシャ・フレンブリング
   チェロ:コンスタンティン・ハイドリッヒ
   ピアノ: ディルク・モメルツ

  モーツァルト:ピアノ四重奏曲第2番 変ホ長調 K493
  細川俊夫: 《レテ(忘却)の水》ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、ピアノのための
    (2016/日本初演)─フォーレ四重奏団に捧げる─

  《休憩》

  ブラームス:ピアノ四重奏曲第2番 イ長調 Op.26

   《アンコール》
     メンデルスゾーン:ピアノ四重奏曲第2番 ヘ短調 Op. 2から第4楽章アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェAllegro molto vivace
     ブラームス:ピアノ四重奏曲第3番ハ短調 Op.60から第3楽章アンダンテAndante

ブラームスの名曲を聴くので、CD(またはアナログディスク)で聴ける名演をできるだけ予習しました。

 ゼルキン&ブッシュ四重奏団員
 シュナイダー,トランプラー,パーナス,ブラウン
 ファウスト,ジェランナ,ミュニエール,ハン
 リヒテル&ボロディン弦楽四重奏団員
 ラントシュ&バルトーク弦楽四重奏団員(またはアナログディスク)

すべて名演です。ブッシュ四重奏団は別格の素晴らしさ。アドルフ・ブッシュのなよやかなヴァイオリンの響きはブラームスにぴったりです。ステレオ録音ではシュナイダー他の演奏がブラームスを美しく繊細に演奏しています。シュナイダーはブダペスト弦楽四重奏団の第2ヴァイオリンを弾いていた人ですね。ファウストがヴァイオリンを弾いている演奏も室内楽らしくまとまった演奏ですが、もう少しファウストが前面に出た演奏をしてほしかったところです。まだ彼女が若かった頃の演奏なんでしょう。リヒテルはさすがのピアノを聴かせてくれます。ピアノを聴くなら、これが最高でしょう。バルトーク弦楽四重奏団も見事なブラームスを聴かせてくれます。ラントシュのピアノも立派です。デムス&ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団もウィーン代表として聴くつもりでしたが、時間切れになりました。残念です。後で聴いときましょう。



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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
たまには、旅ブログも書きます。

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金婚式、おめでとうございます!!!
大学入学直後からの長いお付き合い、素晴らしい伴侶に巡り逢われて、幸せな人生ですね!
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10/07 08:57 堀内えり

 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

08/04 21:31 G線上のアリア

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07/08 15:53 じじい@

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久々のコメント、ありがとうございます。
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06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

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