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ジルヴェスターコンサート@横浜みなとみらいホール 2015.12.31

昨日、言い忘れました。あけまして、おめでとうございます。今年もsaraiのブログ、よろしくお願いします。

一昨日の大晦日は恒例のジルヴェスターコンサート@みなとみらいホールで年越しです。

コンサートに先立って、1年を締めくくる贅沢をします。MARK IS みなとみらい(マークイズみなとみらい)にあるオムレツ専門店「ラ・メール・プラール 横浜みなとみらい店」でのディナーです。モン・サン・ミッシェル発祥の『伝統のふわふわオムレツ』を看板にしている超人気店は予約なしには入店できません。娘が予約してくれました。そして、最後の会計では、何と婿殿が支払ってくれました。ご馳走様です! 料理もお酒(レストランのオリジナルのシードル)も美味しかったです。

豪華なディナーを楽しんで、みなとみらいホールに移動。

みなとみらいホールのジルヴェスターコンサートは今年で第17回目。そして、saraiがジルヴェスターコンサートに通うのもこれで17回。全部聴いてます。よく通ったものです。
今回のプログラムは以下です。

《第1部》
池辺晋一郎:ヨコハマ・ファンファーレ
クララ・シューマン:ピアノ協奏曲イ短調より第3楽章(Pf三浦友理枝)
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲ニ短調より第3楽章(コンサートマスターによる"ヴァイオリンピック")
ラヴェル:組曲「鏡」より“鐘の谷”(Pf金子三勇士)
リスト:ハンガリー狂詩曲第2番(Pf金子三勇士)
J.S.バッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲BWV1043より第1楽章、第3楽章(Vn漆原啓子、漆原朝子)
ファリャ:バレエ「三角帽子」第2組曲より終幕の踊り

《休憩》

《第2部》
ロッシーニ:オペラ「セビリアの理髪師」より“今の歌声は” “私は町の何でも屋” “陰口はそよ風のように”
ベッリーニ:オペラ「清教徒」より“ああ、永遠に君を失った”
モーツァルト:オペラ「魔笛」より“この聖なる殿堂では”
     (Sop高橋薫子、Bar大西宇宙、Bs鹿野由之)
池辺晋一郎:ザ・ビートルズ・オン・バロックより“Ticket to Ride”、“Let It Be”
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番より第1楽章(Vn徳永二男)
レスピーギ:交響詩「ローマの祭り」よりⅠ.チルチェンセス、Ⅳ.主顕祭【カウントダウン曲】
ショスタコーヴィチ:祝典序曲
J.シュトラウス2世:春の声(Sop高橋薫子)
J.シュトラウス1世:ラデツキー行進曲

【出 演】

音楽監督:池辺晋一郎、飯森範親(Cond)、徳永二男(エグゼクティブ・ディレクター/Vn)、朝岡聡(MC)
横浜みなとみらいホール ジルヴェスターオーケストラ(コンサートマスター:会田 莉凡、石田泰尚、扇谷泰朋、神谷未穂、高木和弘、藤原浜雄)

今回のジルヴェスターコンサートは前から2列目の中央の席で聴きました。うるさくくらい、よく聴こえる席でした。
お祭りのようなコンサートですから、そんなに素晴らしい音楽ばかりが聴けるわけではありません。
印象に残ったものだけ、ピックアップしてみます。

ピアノの金子三勇士の弾いたリストのハンガリー狂詩曲第2番は物凄い超絶技巧に驚嘆しました。

J.S.バッハの2つのヴァイオリンのための協奏曲は少人数の室内オーケストラをバックに漆原姉妹の活き活きとしたヴァイオリンの響きが冴えわたりました。気持よく聴けました。

前半のプログラムで目立ったものはこれくらいかな。

休憩後の後半のプログラムはなかなか、よい演奏が続きます。

ソプラノの高橋薫子の歌うアリア“今の歌声は”は声もよく出ていて、気持ちよく聴けました。不満と言えば、アジリタがちょっと物足りないところですが、予習したのがバルトリの超絶技巧だったので仕方がないかもしれません。

池辺晋一郎のザ・ビートルズ・オン・バロックは初めて聴きましたが、これは傑作ですね。《涙の乗車券(Ticket to Ride)》はヴィヴァルディの四季とのコラボ。《レット・イット・ビー》はパッヘルベルのカノンとのコラボ。面白すぎて、ニコニコしながら聴いていました。石田泰尚のヴァイオリン・ソロも見事でした。この曲のCDはもう廃盤になっているようですが、こういうものは現役盤で販売してもらいたいものです。

この日、最高に素晴らしかったのはレスピーギの交響詩「ローマの祭り」。寄せ集めとの言える、この日のオーケストラが素晴らしい響きを聴かせてくれました。4曲中、2曲を抜粋した演奏でしたが、全曲聴きたかったくらいです。この曲がこんなに華やかで素晴らしいとはこれまで思っていませんでした。実はこの曲はこのジルヴェスターコンサートのカウントダウン曲で第4曲の《主顕祭》の最後の和音がジャンと響くと同時に新年という趣向でした。スリリングなエンディングでしたが、見事に1秒の狂いもなく、カウントダウン成功! 会場が沸きに沸きました。

新年、最初に聴くことになった音楽がショスタコーヴィチの祝典序曲。これも素晴らしい響きの演奏。あの暗い音楽を書くショスタコーヴィチがこんなに晴れやかな曲を書いていたとはビックリ。

新年2曲目はソプラノの歌付きの《春の声》。こんな曲を聴くと、ウィーンへの郷愁が募ってしまいます。あー、ウィーンで音楽を聴く計画を進めないといけませんね。ソプラノの高橋薫子の歌声はオペレッタ《こうもり》のアデーレを思わせる歌声。見事な歌唱でした。

最後は例年通り、ラデツキー行進曲を手拍子してコンサート完了。

今年も音楽で新年が始まりました。また、音楽聴きまくりの1年になりそうです。


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saraiの音楽総決算2015:オーケストラ・声楽曲編

今年の音楽の総決算もいよいよ最後になりました。そして、ブログも今年の書き納めです。

今回はオーケストラ・声楽曲編です。
このジャンルは今年もたくさんのコンサートを聴きました。何と言っても敬愛する巨匠ハイティンクを聴けたのが嬉しかったです。それに期待を上回る名演でした。
ちなみに昨年の結果はここです。

で、今年はベスト10はどうしても絞れずに以下をベスト20に選びました。20位のものも例年であれば、10位であってもおかしくない素晴らしい演奏でした。また、10位以内のコンサートはすべて、1位と言ってもおかしくない名演揃いです。

1位 人生最高のマーラー、ハイティンク&ペライア&ロンドン交響楽団@サントリーホール 2015.9.28

2位 入魂のマーラー3番にただただ感涙:ヤンソンス+ウィーン・フィル@ウィーン楽友協会 2015.6.23

3位 完璧なR・シュトラウスの響き、ティーレマン&シュターツカペレ・ドレスデン@サントリーホール 2015.2.23

4位 巨匠の白鳥の歌はブルックナー、ハイティンク&ペライア&ロンドン交響楽団@ミューザ川崎シンフォニーホール 2015.9.30

5位 またまた最高のブラームス、ハイティンク&ペライア&ロンドン交響楽団@NHKホール 2015.10.1

6位 純化されたブルックナーの響き、ティーレマン&シュターツカペレ・ドレスデン@サントリーホール 2015.2.24

7位 美しく凄絶な第4番!!シベリウス・ツィクルス②:カム&ラハティ響@オペラシティコンサートホール 2015.11.27

8位 最高のサロネンのシベリウス@サントリーホール 2015.3.4

9位 サロネン&フィルハーモニア管の素晴らしいシベリウス@みなとみらいホール 2015.3.8

10位 昔も今も極上の響き・・・ウィーン・フィルのモーツァルト@サントリーホール 2015.10.8

11位 絶望的な暗さに慄然!ポリャンスキーのチャイコフスキー@横浜みなとみらいホール 2015.7.12

12位 ビエロフラーヴェク&チェコ・フィル@みなとみらいホール 2015.11.3

13位 マタイ受難曲、バッハ・コレギウム・ジャパン@所沢市民文化センター ミューズアークホール 2015.4.4

14位 命日に聴くバッハ:ミサ曲ロ短調、バッハ・コレギウム・ジャパン@サントリーホール 2015.7.28

15位 最高のニールセン:ブロムシュテット+ウィーン交響楽団@ウィーン楽友協会 2015.6.20

16位 ボヘミアの心フルシャ+プラハ・フィル@サントリーホール 2015.2.6

17位 ソヒエフ&トゥールーズ・キャピトル管@ミューザ川崎 2015.3.2

18位 音の魔術師!ミンコフスキ:東京都交響楽団@サントリーホール 2015.12.15

19位 モーツァルトのレクイエム、スウェーデン放送合唱団&東京都交響楽団@サントリーホール 2015.10.16

20位 アンネ・ソフィー・フォン・オッター・リサイタル@東京オペラシティホール 2015.9.25

今年の1位は、断然、ハイティンク得意のマーラーの交響曲第4番。saraiの人生で最高のマーラーでした。ハイティンクのマーラーの実演が聴けて満足です。今年はこれに尽きます。

2位はウィーンの楽友協会で聴いたヤンソンス&ウィーン・フィルのマーラーの交響曲第3番。3回も聴きましたが、最後の3回目の凄かったこと・・・忘れられません。ハイティンクの凄いマーラーを聴かなければ、これが文句なしの1位でした。頭が真っ白になるほどの名演でした。

3位も凄い演奏でした。ティーレマン&シュターツカペレ・ドレスデンの究極の《英雄の生涯》です。ハイティンク&シカゴ交響楽団の凄かった演奏を超えるとは、やはり、ティーレマンは凄い!

4位、5位もハイティンク。これは2位、3位としたかったんですが、ヤンソンスとティーレマンにも敬意を表したというところです。ブルックナーは今回交響曲第7番を聴き、これで巨匠ハイティンクで第7番以降すべて聴いたということで満足以外のなにものでもありません。すべて、最高のブルックナーでした。ブラームスの実演を聴くのは初めて。この交響曲第1番がこんなに素晴らしいとは・・・絶句です。ブラームスも残り3曲を聴きたいという望みにすがりたくなります。

6位はティーレマン&シュターツカペレ・ドレスデンのブルックナーの交響曲第9番です。もっと上位に置きたいのですが、どこにも置くところがなく、泣く泣く、ここに置きました。今回のブルックナーは精妙を極めた演奏。次に聴くことがあれば、今度はド迫力の演奏を聴かせてもらいましょう。ティーレマンは実演で様々な演奏スタイルがとれますからね。そのときは文句なしの1位になるでしょう。

7位~9位はシベリウスイヤーに聴いた名演奏をランクしました。まず、7位はシベリウス交響曲ツィクルスを聴かせてくれたカム&ラハティ響です。特にツィクルス2日目の交響曲第4番は超名演で、大感動しました。

8~9位はサロネン&フィルハーモニア管の素晴らしいシベリウス。交響曲第5番、第2番、いずれもカム&ラハティ響を上回る演奏でした。サロネンのシベリウスは聴き逃せません。

10位は10位にするのがもったいないほどの素晴らしいウィーン・フィルのモーツァルト。贅沢過ぎる交響曲第39番/第40番/第41番の響きでした

11位は聴いているのが辛いほどの暗過ぎるチャイコフスキーの《悲愴》。ポリャンスキー恐るべしの感のあった凄絶な演奏でした。それが何で11位かって? 10位までが凄過ぎたんです。

12位は実演でようやく初めて聴いたチェコ・フィル。ビエロフラーヴェクとのコンビでの《新世界から》は最高の演奏でした。ベスト10に入れないのが辛いほどの名演でした。

13位、14位はバッハ・コレギウム・ジャパンの演奏するバッハの最高傑作の《マタイ受難曲》と《ミサ曲ロ短調》。これも素晴らしい演奏でした。それもとびっきりの名演。Top5に入れなくちゃいけないような演奏なんですけどね。

15位はウィーン楽友協会で聴いたブロムシュテット&ウィーン交響楽団の最高のニールセン。交響曲第5番のベストとも思える名演。これがベスト10に入れられないなんてね・・・。

16位はチェコの若手にして、いつも素晴らしい演奏を聴かせてくれるフルシャ。手兵のプラハ・フィルを率いての《新世界から》はビエロフラーヴェク&チェコ・フィルにも引けをとらない演奏でした。少なくとも音楽的にはね。

17位はソヒエフ&トゥールーズ・キャピトル管のリムスキー=コルサコフ《シェヘラザード》。ソヒエフはオーケストラから多彩な響きを引き出すことにかけての天才的な能力に恵まれています。素晴らしい演奏でした。

18位でようやく国内のオーケストラの登場です。いやはや、今年はマルク・ミンコフスキの素晴らしさを知る年になりました。パリ・オペラ座でのグルノーブル・ルーヴル宮音楽隊とのオペラ《アルチェステ》でも素晴らしい演奏でした。都響との2回目の顔合わせになったこのコンサートでの都響とは思えぬパリの香りのする響きでルーセルのバレエ音楽《バッカスとアリアーヌ》を見事に演奏してくれました。今年の都響の最高のコンサートでした。

19位は都響の定期演奏会で共演したダイクストラ&スウェーデン放送合唱団のモーツァルト《レクィエム》。素晴らしい合唱でした。

20位は大好きなアンネ・ソフィー・フォン・オッターの来日リサイタル。素晴らしいR・シュトラウスの歌曲を聴かせてくれました。満足、満足・・・。

ジャジャーン!
ここで今年の大賞発表です。

今年は初の協奏曲からの選定としました。

 メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲、庄司紗矢香&ビエロフラーヴェク&チェコ・フィル@みなとみらいホール

記事はここです。
庄司紗矢香のコンサートはこの10年来、聴き続けてきましたが、最近の音楽的な成長は目覚ましいものがあります。そして、その頂点に立つ演奏がこれです。大変、心に沁みてくる素晴らしい名演でした。是非、庄司紗矢香のライブ録音のCDの発売を望みます。スタジオ録音で編集したものでは彼女の真の音楽性を感じることができません。

と言いながらも今年も卑怯なのですが、もうひとつ、これも同列の大賞にします。同時受賞です。庄司紗矢香のまさかの名演がなければ、断トツでの大賞だったはずの素晴らしいコンサートです。

 マーラー/交響曲第4番、ハイティンク&ロンドン交響楽団@サントリーホール

このコンサートは上に書いたとおりです。巨匠ハイティンクはこれで聴き納めにしても決して悔いの残らない素晴らしい名演でした。saraiの頭の中にいつまでも残る最高のマーラーです。

来年の感動に期待しながら、今年の総括は幕としましょう。

今年も当ブログを読んでいただいたみなさんには感謝です。また、来年も引き続き、ご愛読ください。

saraiはこれから、みなとみらいホールのジルヴェスターコンサートに出かけます。今年も音楽で年越しです。


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saraiの音楽総決算2015:協奏曲編

さて、前回に引き続き、今年の音楽の総決算です。

今回は協奏曲編です。
今年は数多く聴いたわけではありませんが、それでも高レベルの素晴らしい演奏を聴くことができました。。
ちなみに昨年の結果はここです。

今年は以下をベスト10に選びました。

1位 心のこもった響き、庄司紗矢香・・・ビエロフラーヴェク&チェコ・フィル@みなとみらいホール 2015.11.3

2位 詩情漂うショパンの響き、アヴデーエワ&ソヒエフ&トゥールーズ・キャピトル管@ミューザ川崎 2015.3.2

3位 ハイティンク&ペライア&ロンドン交響楽団@NHKホール 2015.10.1

4位 ハイティンク&ペライア&ロンドン交響楽団@ミューザ川崎シンフォニーホール 2015.9.30

5位 ハイティンク&ペライア&ロンドン交響楽団@サントリーホール 2015.9.28

6位 燃えたぎるルトスワフスキ、ウィスペルウェイ&リントゥ&東京都交響楽団@サントリーホール 2015.1.23

7位 ボヘミアの心フルシャ+プラハ・フィルと巨匠マイスキー@サントリーホール 2015.2.6

8位 見事なモーツァルト、アンデルシェフスキ&パーヴォ・ヤルヴィ&NHK響@みなとみらいホール 2015.2.21

9位 ミステリアスな一角獣ワールド、東京都交響楽団@サントリーホール 2015.5.29

10位 シベリウス・ツィクルス②:カム&ラハティ響@オペラシティコンサートホール 2015.11.27


庄司紗矢香はこれまで聴いてきたなかで最高の演奏。彼女の弾いたメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲は技術もさることながら、彼女の心のこもった演奏に大変な感動を味わいました。素晴らしい!の一言です。

アヴデーエワの素晴らしいピアノには魅了されるばかりです。彼女の弾いたショパンのピアノ協奏曲第1番にうっとりとしました。今や、彼女はsaraiにとって、世界で最高のピアニストです。

ペライアの弾くベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番、モーツァルトのピアノ協奏曲第24番は見事な演奏でした。ハイティンク&ロンドン交響楽団の演奏も素晴らしく、聴き応え十分でした。3~5位にランク付けしましたが、通常ならば、文句なしのトップです。

いやあ、ウィスペルウェイの弾いたルトスワフスキのチェロ協奏曲は物凄い演奏でした。何という迫力だったでしょう。

マイスキーのチェロを聴くのは実は初めてでしたが、さすがのドヴォルザークのチェロ協奏曲。聴き惚れました。

アンデルシェフスキの弾いたモーツァルトのピアノ協奏曲第25番はノリのよい現代的な演奏。その演奏の新しさに感銘しました。

クラリネット奏者のカリ・クリークがフィンランドの女性作曲家サーリアホのクラリネット協奏曲《D'OM LE VRAI SENS》の日本初演したコンサート。演奏と音楽の素晴らしさもさることながら、パリのクリュニー美術館に所蔵されている中世フランスのタペストリーの傑作《貴婦人と一角獣》の素晴らしさを教えてくれたことに感謝です。今年の旅でのパリ訪問の折、このタペストリーを堪能させてもらいました。

ペッテリ・イーヴォネンの弾いたシベリウスのヴァイオリン協奏曲がなかなかの出来でした。カヴァコスの演奏を思い起こさせられました。将来が楽しみなヴァイオリニストです。

ところで、今年一番残念だったのは楽しみに聴いたヒラリー・ハーンのブラームスのヴァイオリン協奏曲がもうひとつだったことです。本来ならば、今年のトップになる筈だったんですけどね。そのコンサートは以下でした。

残念なヒラリー@サントリーホール 2015.3.4


いよいよ、次回は最終回、大賞も発表します。そして、大晦日でもありますね。


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saraiの音楽総決算2015:オペラ・オペレッタ・バレエ編

さて、前回に引き続き、今年の音楽の総決算です。

その前にお詫びです。昨日はPCのトラブルでブログが書けませんでした。PCのビデオボードが不調だったんです。結局、ビデオボードを引き抜き、分解して、掃除して、埃をすべて取り除き、ファンとビデオチップの間のシリコンを塗り直し、何とか復旧できました。ただ、ビデオボードは経年劣化しているようなので、今日は新しいビデオボードを購入。年末の忙しい時期にとんだことでした。余計なお金も使ってしまったしね。というところで気を取り直して、ブログを再開しましょう。できれば、今日は2日分書くつもりです。

今回はオペラ・オペレッタ・バレエ編です。
今年はオペラはすべて海外での公演しか聴いていません。ですから今年も海外で聴いたオペラからの選定になります。バレエだけは日本でも見ました。
ちなみに昨年の結果はここです。

で、今年は以下をベスト10に選びました。

1位 究極のベルク、そして、美しきエルトマン:オペラ《ルル》@ネーデルランド・オペラ 2015.6.28
   身震いする凄絶さ・・・最高のアンサンブル:オペラ《ルル》@ネーデルランド・オペラ 2015.6.25

2位 ロパートキナの極上のオデット!マリインスキー・バレエ《白鳥の湖》@東京文化会館 2015.12.5

3位 ミンコフスキによる素晴らしきグルックのオペラ《アルチェステ》@パリ・オペラ座(ガルニエ) 2015.7.7

4位 現代のオペラの旗手アデス:オペラ《テンペスト》@ウィーン国立歌劇場 2015.6.21

5位 音楽も演出も極上:オペラ《フィガロの結婚》@フランダース・オペラ 2015.6.30

6位 シリンキナ最高!マリインスキー・バレエ《ロミオとジュリエット》@東京文化会館 2015.11.30

7位 ゴージャスで見応え十分:オペレッタ《伯爵夫人マリッツァ》@ウィーン・フォルクスオーパー 2015.6.24

8位 最高!エルトマンのバッハ、農民カンタータ by バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティホール 2015.9.26

9位 さすがにバレエの殿堂:バレエ《ラ・フィーユ・マル・ガルデ》@パリ・オペラ座(ガルニエ) 2015.7.8

10位 いろんな思いが交錯:オペラ《カルディヤック》@ウィーン国立歌劇場 2015.6.22


初めて聴いたネーデルランド・オペラ(DNO)はピットのロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団がはいったこともあり、素晴らしい《ルル》でした。歴史的な名演とも思える上演でした。もっとも、そこまで評価できるのは音楽的な面で演出は表現主義的過ぎて、あまり好きなものではありませんでした。音楽面では、ルルを歌ったモイツァ・エルトマン、ゲシュヴィッツ伯爵令嬢を歌ったジェニファー・ラルモアが素晴らしく、他の歌手も粒ぞろい。さらにロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の間奏の素晴らしさ。第3幕の終盤の凄まじさには、ただただ圧倒されるだけでした。2回聴きましたが、どちらも素晴らしい音楽でした。ちなみに最終日のサイン会での美貌のエルトマンとの2ショット写真も忘れられない思い出です。

ロパートキナのオデットの素晴らしかったマリインスキー・バレエの《白鳥の湖》はこれまで見たバレエで最高のものでした。ロパートキナの美しい肢体は目に焼き付いて、生涯忘れられないでしょう。

パリ・オペラ座(ガルニエ)のオペラ《アルチェステ》は何と言っても、ミンコフスキ指揮のグルノーブル・ルーヴル宮音楽隊の素晴らしさに魅了されました。タイトルロールのアルチェスト役のヴェロニク・ゲンスが抒情の限りを尽くして歌うシーンでの感動も忘れられません。

ウィーン国立歌劇場で聴いた、現代のオペラの旗手アデスによるオペラ《テンペスト》は演出も音楽も最高に美しく、なかなかの掘り出し物でした。アデスのこれからの作曲活動は目が離せません。

ゲントのフランダース・オペラでのオペラ《フィガロの結婚》も掘り出し物。こんなローカルな劇場で素晴らしいオペラを上演するヨーロッパの文化の奥深さに驚嘆しました。

もう一つ見たマリインスキー・バレエの《ロミオとジュリエット》は第3幕でのジュリエット役のシリンキナの可憐な踊りにすっかりと魅了されました。マリインスキー・バレエのレベルの高さには驚くばかりです。

やはり、ウィーン・フォルクスオーパーで見るオペレッタは最高に楽しい! それをまた実感させてくれたカールマンのオペレッタ《伯爵夫人マリッツァ》でした。

《ルル》で感動させてくれたエルトマンはバッハでも素晴らしい歌を聴かせてくれました。バッハ・コレギウム・ジャパンに初めて登場したエルトマンの快演でした。なお、《農民カンタータ》はオペラ仕立てで上演されたので、オペラとして、このカテゴリーに加えました。

パリ・オペラ座はさすがにバレエの殿堂です。それにとてもお洒落。バレエ《ラ・フィーユ・マル・ガルデ》は明るくて、カラフル。大変、楽しめました。

ヒンデミットのオペラ《カルディヤック》は名作です。音楽も美しいです。それだけにウィーン国立歌劇場ならば、もっと素直にやってほしかったというのが正直なところです。カルディヤックの娘役を歌ったデノケの歌唱だけはとても見事でした。だから、ベスト10からは外せません。

次回はオーケストラ・声楽曲編です。


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saraiの音楽総決算2015:ピアノ・室内楽編

今年もブログの締めくくりはsarai恒例の音楽総決算です。

今年は国内・海外合わせて、厳選したコンサート・オペラに計63回足を運びました。それらについてはすべて当ブログで報告済みですが、今回から4回のシリーズでそれらからベストの音楽会を選んで、今年の音楽の総決算としたいと思います。
今回はピアノ・リサイタルと室内楽編です。
ちなみに昨年の結果はここです。

今年はヴィトマン&ハーゲン・カルテットが圧倒的に素晴らしく、断トツのトップ。上原彩子も素晴らしいピアノを聴かせてくれました。以下、ベスト10は次のとおりです。

1位 ヴィトマン&ハーゲン・カルテット@トッパンホール 2015.10.4
2位 ハーゲン・カルテットのモーツァルト・ツィクルス②@トッパンホール 2015.10.2
3位 上原彩子@東京オペラシティ 2015.1.24
4位 タマーシュ・ヴァルガ・無伴奏チェロ・リサイタル@上大岡ひまわりの郷 2015.11.15
5位 河村尚子ピアノ・リサイタル@東京オペラシティ 2015.3.13
6位 バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティ・リサイタルホール 2015.3.20
7位 庄司紗矢香ヴァイオリン・リサイタル@サントリーホール 2015.6.9
8位 フランチェスコ・トリスターノ・ピアノ・リサイタル@上大岡ひまわりの郷 2015.4.5
9位 アンリ・バルダ・ピアノ・リサイタル@上大岡ひまわりの郷 2015.9.27
10位 アンデルシェフスキ@東京オペラシティ 2015.2.25

ヴィトマン&ハーゲン・カルテットは前半のモーツァルトのクラリネット五重奏曲が最高の演奏で大感激。後半のブラームスのクラリネット五重奏曲は室内楽の極致をいくような演奏でさらなる感動。昨年のフォーレ・カルテットに続いて、素晴らしい室内楽を聴くことができました。

ハーゲン・カルテットのモーツァルト・ツィクルスはすべてのコンサートが素晴らしく、特にツィクルス2回目で聴いた《不協和音》の衝撃的な演奏に大変な感銘を受けました。

上原彩子はますます高みをめざす演奏。モーツァルトのピアノ・ソナタの挑戦的な演奏、チャイコフスキーの《くるみ割り人形》組曲の素晴らしい響き。大変、満足したリサイタルでした。

ウィーン・フィルの首席チェロ奏者のタマーシュ・ヴァルガの無伴奏チェロ・リサイタルはコダーイの《無伴奏チェロ・ソナタ》が素晴らしい演奏で圧倒される思いでした。

河村尚子は日本デビュー10周年というアニバーサリーのリサイタルでしたが、後半に弾いたプロコフィエフのピアノ・ソナタ第6番の鮮鋭で美しい演奏に酔ってしまいました。彼女のプロコフィエフをもっと聴きたいと強く思わせられました。

バッハ・コレギウム・ジャパンは初めて聴きましたが、名人揃いの演奏にうっとり。《音楽の捧げ物》は圧巻の演奏でした。この演奏に触発されて、その後、《マタイ受難曲》、《ミサ曲ロ短調》、《農民カンタータ》と続けざまに聴くことになりました。いずれも素晴らしい演奏でした。

庄司紗矢香はいつも期待を裏切らない演奏。この日は特にアンコール曲が充実していました。

フランチェスコ・トリスターノはまったく期待せずに聴きましたが、これがなかなかの演奏。バッハもストラヴィンスキーもムソルグスキーもそれぞれの響きで楽しませてくれました。

アンリ・バルダは期待通り、さすがのラヴェル。

アンデルシェフスキは期待通りとはいきませんでしたが、シューマンの《幻想曲》は及第点の演奏。

次回はオペラ・オペレッタ編です。


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戦慄のフーガ!ベートーヴェン:交響曲第9番/インバル&東京都交響楽団@サントリーホール 2015.12.26

インバル&東京都交響楽団の演奏するベートーヴェンの交響曲第9番というので、大変期待してサントリーホールに出かけました。年末の第9を聴くのは生涯で初体験です。

期待して聴き始めますが、第3楽章まではそれほど感じ入ることもなく、つらつらと演奏が頭の中を過ぎ去っていくのみです。もっともsarai自身が集中力を欠いているのも事実で、演奏自体のレベルだけの問題ではないのかもしれません。それに予習でフルトヴェングラーのCDを聴いたのもいけなかったかもしれません。あんな演奏は未来永劫、ありえませんからね。
特に一番期待していた第3楽章のアダージョは都響の素晴らしい弦楽セクションの力が思ったほど発揮されません。天国的な美しさを期待していたんですけどね。

ところが、第4楽章にはいって、この状況は打開されます。それを引き起こしたのは二期会合唱団のみなぎる力に満ちた素晴らしい合唱です。これぞ、ベートーヴェンの最高傑作という音楽が始まります。後半の2重フーガが始まると、さらに音楽はヒートアップ。音楽は輝きに満ちてきます。ベートーヴェンの作り出した偉大な音楽が素晴らしい響きでフィナーレに突き進んでいきます。大合唱がいったん、スローダウンした後、頂点に上り詰めます。凄まじい合唱の響きです。都響も凄い響きで最後の突進。素晴らしいコーダでした。

第3楽章までは、まあまあの出来に思えましたが、最後は素晴らしい盛り上がり。saraiにとって、今年のファイナルコンサートは満足のフィナーレでした。

最後に、今日のプログラムは以下のとおりでした。

  指揮:マエリアフ・インバル
  ソプラノ:安藤赴美子
  アルト:中島郁子
  テノール:大槻孝志
  バリトン:甲斐栄次郎
  合唱:二期会合唱団
  管弦楽:東京都交響楽団

  ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 op.125《合唱付》

今回の予習についても触れておきましょう。

まずはフルトヴェングラーのCDでこれまで聴いていないものを聴きました。フルトヴェングラーの交響曲第9番の知られている録音は13種類があります。これまで9つ聴きました。今回は残り4つのうち、戦前のストックホルム・フィルとの録音を除く、以下の3つを聴きました。(ストックホルム・フィルのCDはいまだ入手できていません。)

 1937年、ベルリン・フィル、ロンドン、クイーンズホールでのイギリス国王ジョージ6世戴冠祝典演奏会ライブ
 1942年4月19日、ベルリン・フィル、フィルハーモニーでのライブ(ヒトラー生誕前夜祭)
 1953年5月31日、ウィーン・フィル、オーストリア放送協会(ORF)録音 (日本フルトヴェングラーセンター)

戦前の2つの録音はかなり劣悪な音質ですが、フルトヴェングラー好きには聴き逃せません。第3楽章の素晴らしさはしっかりと感じ取れます。
1953年5月31日のウィーン・フィルの演奏は第2楽章までは比較的、穏やかな印象でしたが、第3楽章、第4楽章の尋常ではない素晴らしさはフルトヴェングラーならではのもの。ともかく、感動で泣けるCDです。なお、フルトヴェングラーのCDについての感想はここここです。

次は以下の4枚のCD。これまで聴いていないCDです。これまで聴いたCDの感想はここ(ウィーン・フィル以外)とここ(ウィーン・フィル)です。

 フェレンツ・フリッチャイ指揮ベルリン・フィル(1958年)イルムガルト・ゼーフリート、モーリン・フォレスター、エルンスト・ヘフリガー、ディートリヒ・フィッシャー・ディースカウ
 ベルナルト・ハイティンク指揮ロンドン・フィル(1976年)ハンネローネ・ボーデ、ヘレン・ワッツ、ホスト・ラウベンタール、ベンジャミン・ラクスン
 セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィル(1989年)ヘレン・ドナート、ドリス・ゾッフェル、ジークフリート・イェルザレム、ペーター・リカ
 クラウス・テンシュテット指揮ロンドン・フィル(1992年)ルチア・ポップ、アン・マレー、アンソニー・ロルフ・ジョンソン、ルネ・パーペ

いずれも立派な演奏ですが、まず、フリッチャイ指揮ベルリン・フィルはとても素晴らしいです。フルトヴェングラーを知らなければ、最高の1枚です。フィッシャー・ディースカウの独唱も素晴らしいです。ハイティンク指揮ロンドン・フィルもそれに次いで素晴らしい演奏。録音も最高です。これまでCD化されてこなかったのが不思議です。(ハイティンクの1回目のベートーヴェン交響曲全集の中の1枚)



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音の魔術師!ミンコフスキ:東京都交響楽団@サントリーホール 2015.12.15

今日の都響の音(響き)を聴いて、唖然としました。これが本当に都響が奏でている音楽でしょうか。目をつぶって聴いていると、まるでパリ・オペラ座にいるような錯覚を覚えます。

マルク・ミンコフスキの指揮者としての卓越した能力に驚愕の念を禁じ得ません。東京都交響楽団の潜在的能力を極限まで引き出して、あたかもフランスのオーケストラであるかの如き、大変身の魔術を掛けたわけです。
それにしても、ルーセルのバレエ音楽の傑作《バッカスとアリアーヌ》の熱狂と官能の響きの素晴らしさには途轍もない感動に襲われました。とりわけ、第2幕(第2組曲)の後半の《アリアーヌの踊り》の官能的な響きの美しさには魅惑され、その後、一転して、《バッカスとアリアーヌ》のシャープで引き締まった響きから、最後の《バッカナーレ》の饗宴の凄まじい高まりには圧倒的な高揚感、感動を覚えました。ルーセルの音楽の素晴らしさ、ミンコフスキの超人的な音楽能力、都響のアンサンブルの素晴らしさが三位一体となって、大変な演奏になりました。

そもそも、今日の刺激的とも言えるプログラム構成には、舌を巻くしかありません。ルーセルのバレエ音楽とブルックナーの交響曲第0番とは・・・。これだけでも、ミンコフスキの音楽的な趣味の良さがうかがい知れます。誰がこんなプログラムを考え付くでしょう。どちらも実演に接するのは初めてです。白状すると、特にルーセルのこの曲は曲名さえ初めてききました。CDで今回、予習しましたが、ストラヴィンスキーの影響もうかがい知れる音楽の素晴らしさに驚嘆しました。予習したCDは以下です。

 ジョルジュ・プレートル指揮フランス国立管弦楽団
 ステファヌ・ドゥネーヴ(ステファン・ドヌーヴ)指揮スコティッシュ・ナショナル管弦楽団

いずれも素晴らしい演奏。プレートルの刺激的な演奏は当然としても、ドゥネーヴの紡ぎ出した見事な響きにも驚嘆しました。しかし、今日、生で聴いた演奏の興奮はすべてを凌駕するものでした。

後半のブルックナー、ミンコフスキがブルックナーとはね。それも交響曲第0番とは虚を突かれる思いです。この曲も以前、CDで数回聴いただけです。改めて、ちゃんと予習してみました。予習したCDは以下です。いずれもブルックナー交響曲全集の中に含まれるものです。

 ハイティンク指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
 インバル指揮フランクフルト放送交響楽団
 スクロヴァチェフスキー指揮ザールブリュッケン放送交響楽団
 マゼール指揮バイエルン放送交響楽団

いずれも、手抜きのない素晴らしい演奏。それも個性に満ちた演奏です。ハイティンクは若い頃の勢いに乗った演奏。インバルは細部まで目配りのきいた美しい演奏。スクロヴァチェフスキーは自然で素直な表現。マゼールは遅めのテンポで響きの美しさを際立たせる演奏。ちょっとチェリビダッケを連想してしまいます。
そのチェリビダッケも是非、聴きたいところですが、残念ながら、演奏を残していないようですね。ヨッフムもヴァントもこの曲の録音はないようです。残念です。ハイティンクにしても、若い頃に録音しただけで、その後は演奏を残していません。熟成したハイティンクの演奏も聴いてみたかったところです。
予習で聴き直してみると、意外にも、素晴らしい音楽でした。ブルックナーの音楽でありながら、シンプルなよさを持っています。ある意味、古典的でもあります。後期ロマン派と古典が混然一体になった妙な魅力に満ちた名曲です。本来、第2番となる筈だったようですが、色んな事情で番号なしになりましたが、ブルックナー本人はそれなりに自信作だったのでしょう。

この光の当たらない名曲に焦点を合わせてきたミンコフスキは彼なりのこだわりがあるんでしょう。実際、見事な演奏でした。予習した演奏ではマゼールの表現が似ていました。チェリビダッケ風に濁りのない響きの美しい表現です。ですから、少し、テンポも遅いことになります。チェリビダッケのように極端ではありませんから、拒否反応を引き起こすようなものではありません。第1楽章と第2楽章の演奏の素晴らしさには圧倒されました。パーフェクトとも思える演奏です。都響では珍しい対向配置も著しい効果を発揮していました。第2ヴァイオリンの健闘にはびっくりです。第1ヴァイオリンに引けをとらない素晴らしさ。いつもマーラーで素晴らしい響きの弦セクションがミンコフスキ色に染まりながら、ピュアーな響きでブルックナーの魅力を最大限に表現してくれました。この響きのままで、第9番を聴かせてもらいたいと思わされます。その弦の後ろからの管楽器も見事な響きを聴かせてくれました。第4楽章のフィナーレの高揚感も素晴らしいものでした。

ミンコフスキが都響から引き出した新しい響きはとても魅惑的でした。しかし、まだ、洗練の極みまでは達していないようです。今後、ミンコフスキとの関係を密にして、都響の更なる飛躍を願いたいと思います。こういったら、失礼かもしれませんが、今日はヨーロッパからの超一流オーケストラの演奏を聴いた思いで、すこぶる満足しました。インバルのマーラー以外で都響のここまでの演奏を聴いたことがありません。

最後に、今日のプログラムは以下のとおりでした。

  指揮:マルク・ミンコフスキ
  管弦楽:東京都交響楽団

  ルーセル:バレエ音楽《バッカスとアリアーヌ》 Op.43 - 第1組曲&第2組曲

   《休憩》

  ブルックナー:交響曲第0番 ニ短調 WAB100

そうそう、さすがにカーテンコールは凄かったです。都響のコンサートでインバル以外で指揮者コールされたのは記憶にありません。いいものが聴けて、幸せでした。


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ロパートキナの極上のオデット!マリインスキー・バレエ《白鳥の湖》@東京文化会館 2015.12.5

昨年11月、来日したボリショイ・バレエでザハーロワの《白鳥の湖》を見て、その美しさに魅了されました。今度はマリインスキー・バレエの至宝ロパートキナが踊る《白鳥の湖》を見ることができて、幸せです。ロシアの誇る最高のプリマドンナのお二人ですからね。

ロパートキナは1973年生まれの42歳というんですから、バレエの世界ではもうご高齢の域でしょうが、そのバレエはため息の出るような美しさ。彼女の踊るオデットは別次元の美しさでした。どの場面をストップモーションで切り取っても、ぴたっと決まった美しい姿。オデットは彼女のためにあるような役柄ですね。やはり、ロパートキナのオデットの素晴らしさは彼女の姿の美しさに尽きるのではないかと思います。バレリーナでは異例の高い身長(175cm)でほっそりした肢体に加えて、しなやかなで長い手足のあでやかさは美の極致です。スローな場面でこそ、その美しさが最高に輝いていました。また、リフトのときの彼女の軽やかさはまさに白鳥そのものを感じさせます。いやはや、パーフェクトな白鳥でした。オディール(黒鳥)の場面では勢いや迫力でさすがに物足りなさも感じましたが、優雅なオディールというのも彼女の持ち味なんでしょう。第1幕(今回は3幕構成)の第2場のオデット、第3幕のオデットの踊りはこれ以上のものはありえないという極上の美の世界を満喫しました。

白鳥の群舞(コール・ド・バレエ)の美しさもロパートキナのオデットの美しさをさらに演出してくれました。何と言う素晴らしい公演でしょうか。それにバレリーナたちがみな美しいことにも驚きます。これがマリインスキー劇場の実力なんですね。

ラストシーンは王子が悪魔を打倒して、オデットと結ばれるというハッピーエンドです。ソ連時代にプティパ・イワノフ版を改変して以来の正義が悪に打ち勝つというシナリオを継承していますが、美しいロパートキナにはふさわしいラストだと感じました。昨年のボリショイ・バレエはもっとも悲しい結末で、オデットが死に、王子に救済はおとずれないというものでした。まあ、どちらのシナリオもありでしょうが、バレエの本質は変わりません。それは美の追求・・・。

今日のプログラム・キャストは以下です。

  バレエ:白鳥の湖

 音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
   元振付:マリウス・プティパ,レフ・イワノフ(1895年1月15日、サンクトペテルブルク・マリインスキー劇場で蘇演されたプティパ・イワノフ版)
   改訂振付:コンスタンチン・セルゲーエフ
   台本:ウラジーミル・ベーギチェフ,ワシーリー・ゲーリツェル
   装置:イーゴリ・イワノフ
   衣裳:ガリーナ・ソロヴィヨワ
   舞踊監督:ユーリー・ファテーエフ
   指揮:アレクセイ・レプニコフ
   管弦楽:マリインスキー歌劇場管弦楽団

   オデット/オディール:ウリヤーナ・ロパートキナ
   ジークフリート王子:ダニーラ・コルスンツェフ
   王妃 (王子の母) :エカテリーナ・ミハイロフツェーワ
   王子の家庭教師:ソスラン・クラエフ
   道化:グリゴーリー・ポポフ
   悪魔ロットバルト:コンスタンチン・ズヴェレフ
   王子の友人たち:エカテリーナ・イワンニコワ、ナデージダ・バトーエワ、フィリップ・スチョーピン

予習は以前、NHKで放映されたマリインスキー・バレエを見ました。コンダウーロワとアスケロフのコンビでした。コンダウーロワは若さの勢いで迫力のある32回連続のフェッテ(黒鳥のパ・ド・ドゥ)が見事でしたが、オデットの優雅さや美しさはまだまだロパートキナには及びません。気のせいか、白鳥の群舞(コール・ド・バレエ)も今日の素晴らしさには及ばなかったようです。やはり、ロパートキナの白鳥は無敵のようですね。カーテンコールでの会場全体の盛り上がりは凄まじいものでした。ほとんどの観客がスタンディングオベーションで何度もロパートキナを呼び出して、その素晴らしさを称えていました。素晴らしいバレエを見ることができました。もうこれで《白鳥の湖》を卒業しても悔いがないという心境です。
  

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シリンキナ最高!マリインスキー・バレエ《ロミオとジュリエット》@東京文化会館 2015.11.30

昨年、ボリショイ・バレエでザハーロワの《白鳥の湖》を見て、今年はマリインスキー・バレエでロパートキナが踊る《白鳥の湖》を見ることにしていました。そして、ついでにこの《ロミオとジュリエット》も見ることにしました。だって、マリインスキー・バレエの《ロミオとジュリエット》は本場ものですものね。

今日のキャストは当初のメンバーがロミオ役もジュリエット役も交代になってしまい、どうなるのか心配でしたが、さすがはマリインスキー・バレエ。そんな心配は杞憂に過ぎませんでした。ジュリエット役のマリーヤ・シリンキナはこの役にぴったり。第3幕では少女の儚げさを見事に踊ってくれました。その踊りはうっとりするばかり。再三見せた見事なバックステップは少女ジュリエットの来るべき悲劇への恐れを予感させるかのような切実さに満ちていました。ステージ中がシリンキナが演じるジュリエットの儚さ、もろさにおおい尽されて、痛々しさを感じるばかりです。死すべき運命に定められたジュリエット像を見事に演じ切っていました。純粋でうぶで愛に目覚めた少女は乏しい生命力が消えていくしかないのでしょう。シリンキナの演じるジュリエットは最高のものでした。タイトルは《ロミオとジュリエット》ではなく、《ジュリエット》と改題したいくらいです。

一方、怪我で出られなかったウラジーミル・シクリャローフの代わりに前日、急に出演が決まったロミオ役のフィリップ・スチョーピンは第1幕ではデュエットのジャンプの不揃いも感じられましたが、なんと言っても第3幕のラストシーンでの墓場の階段を死んでいるジュリエットをリフトで持ち上げ・・・それも高々と究極のリフトで難しい階段の上り下りを見事に決めました。最後は毒を飲んで、階段上から転落する命がけの切迫した演技。このシーンだけでも称賛に値します。役に没入しているからこそできた入魂の演技でした。ですから、やはり、《ロミオとジュリエット》のタイトルでよかったのですね。

ともかく、第3幕の出来が素晴らしくて、胸にジーンときてしまいました。第3幕のプロコフィエフの音楽の美しさも胸に沁みました。マリインスキー歌劇場管弦楽団の見事な演奏でした。ゲルギエフが振ってくれれば、もっと凄かったでしょうけどね。


今日のプログラム・キャストは以下です。

  バレエ:ロミオとジュリエット

 振付:レオニード・ラヴロフスキー
   音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
  指揮:アレクセイ・レプニコフ
   管弦楽:マリインスキー歌劇場管弦楽団

   ジュリエット:マリーヤ・シリンキナ
   ロミオ:フィリップ・スチョーピン
   マキューシオ(ロミオの友人):アレクサンドル・セルゲーエフ
   ティボルト(キャピュレット卿夫人の甥):ユーリー・スメカロフ
   パリス(ジュリエットの婚約者):コンスタンチン・ズヴェレフ
   ベンヴォーリオ(ロミオの友人):アレクセイ・ネドヴィガ
   キャピュレット卿(ジュリエットの父):ソスラン・クラエフ
   キャプレット卿夫人:エカテリーナ・ミハイロフツェーエワ
   モンタギュー卿(ロミオの父):アンドレイ・ヤコヴレフ
   ジュリエットの乳母:リラ・フスラモワ
   ロレンス神父:アンドレイ・ヤコヴレフ
   ヴェローナの大公:ドミートリー・プィハチョーフ
   ジュリエットの友人:ナデージダ・バトーエワ
   吟遊詩人:エルネスト・ラティポフ
   道化:グリゴーリー・ポポフ

予習はロイヤル・バレエのケネス・マクミラン振付のものを見ましたが、第3幕の瑞々しさ、迫力で今日のマリインスキー・バレエのラヴロフスキー版に軍配を上げたい気持ちです。その立役者はやはり、マリーヤ・シリンキナです。彼女の演じたジュリエット像はsaraiの心を貫きました。今回でバレエを見るのは10回目ですが、最高のバレエでした。サンクトペテルブルクのマリインスキー劇場で見るともっと素晴らしいのでしょうね。サンクトペテルブルク詣でも検討しないといけないかな・・・。

週末の土曜日はマリインスキーの来日公演の目玉、ロパートキナが踊る《白鳥の湖》を見ます。楽しみです。
  

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圧巻のフィンランディア!!シベリウス・ツィクルス③:カム&ラハティ響@オペラシティコンサートホール 2015.11.29

シベリウス交響曲ツィクルスはやはり、シベリウス・フェスティバルと化してしまいました。締めの音楽はフィンランディア以外はありえません。カムはこれまで椅子に腰かけて指揮していましたが、椅子に腰かける前に手を振り上げて、フィンランディアの金管の咆哮が始まります。これまで聴いたフィンランディアとは次元の違う響きです。圧倒的な迫力。やがて、弦も加わり、艶やかさも増して、ぐんぐんと推進力のある音楽になっていきます。音楽の持つ凄まじい力を実感しながら、感動的なフィナーレを迎えます。胸にずしんと響いてくる素晴らしい演奏でした。
これで3回にわたるシベリウス・ツィクルスが完了。感動的な体験でした。

アンコールの感想はさておき、シベリウス交響曲ツィクルス自体ですが、後半の交響曲第6番の美しい響きに魅了されました。この古典回帰したとも言える交響曲第6番が爽やかな一陣の風のようにさーっと体を吹き抜けていったというように感じました。特に第1楽章と第4楽章の清涼感を感じさせる演奏は最上級のものでした。
最後の交響曲第7番も見事な演奏だったんですが、正直言って、この曲を咀嚼できるレベルまでsaraiはまだシベリウスを理解しているとは言い難いです。美しく、丁寧な演奏で終盤の高揚感は素晴らしかったんですが、その本質的な理解には至りませんでした。この曲はなかなか難物です。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:オッコー・カム
  管弦楽:ラハティ交響楽団


  シベリウス: 交響曲第5番 変ホ長調 op.82

   《休憩》

  シベリウス: 交響曲第6番 ニ短調 op.104
  シベリウス: 交響曲第7番 ハ長調 op.105

   《アンコール》

  シベリウス: アンダンテ・フェスティーヴォ JS.34a
         ある情景のための音楽 Musik zu einer Scene(1904)
         交響詩「フィンランディア」op.26

ツィクルス全体を俯瞰してみましょう。何と言っても、交響曲第4番の演奏が最高でした。今後こういう演奏は聴けないのではないかと思わせられるほどの超絶的な名演でした。交響曲第3番と交響曲第6番も大変素晴らしい演奏。交響曲第1番を除いて、全体的に期待通りの素晴らしいツィクルスでした。
さらに毎回、3曲ずつ、計9曲演奏されたアンコール曲が最高の演奏だったんです。シベリウスの小曲がこんなに魅力に満ちているとは・・・初めて実感できました。交響曲と合わせて、まさにシベリウスを堪能し尽すことができました。こんなに満足できて、とても幸せな気持ちです。

今日のコンサートの最後はいったん退場したオーケストラメンバーをカムが舞台に再度、呼び戻して、満場のスタンディングオベーションで喝采を送りました。これもとても気持ちのよいフィナーレになりました。カム&ラハティ響のシベリウス・フェスティバルinジャパンにふさわしい幕切れでした。


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本日はお休み・・・シベリウス・ツィクルス:カム&ラハティ響@オペラシティコンサートホール 2015.11

素晴らしい演奏に駆け上がっているオッコー・カム指揮のラハティ交響楽団のシベリウス・ツィクルスですが、今日はお休みです。明日が最終日になります。

ということで今日はシベリウス生誕150年の記念すべきシベリウス・ツィクルスに向けて、CDで予習してきた内容について書きます。

以下の全集盤を聴きました。

 パーヴォ・ベルグルンド、ボーンマス交響楽団
 パーヴォ・ベルグルンド、ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団
 パーヴォ・ベルグルンド、ヨーロッパ室内管弦楽団
 レイフ・セーゲルスタム、ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団
 オスモ・ヴァンスカ、ラハティ交響楽団
 ネーメ・ヤルヴィ、イェーテボリ交響楽団(DGの新盤)
 ユッカ=ペッカ・サラステ、フィンランド放送交響楽団
 バルビローリ、ハレ管弦楽団(LPレコード))
 オッコー・カム+渡辺暁雄、ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団
 オッコー・カム、ラハティ交響楽団

半年前に聴いたときには、ヴァンスカ&ラハティ交響楽団、ヤルヴィ&イェーテボリ交響楽団の演奏が最高に思えましたが、今回、聴き直してみて、ベルグルンドの3種の録音盤の素晴らしさに惹かれました。特に最後の録音となったヨーロッパ室内管弦楽団との演奏の引き締まったアンサンブルはパーフェクトに思えます。第3番以降は第4番を除いて、すべてが素晴らしい演奏。今後、saraiのリファレンス盤に決まりです。第4番はなんと一番古い録音のボーンマス交響楽団が素晴らしい演奏です。木管などの個々の演奏はそう上手いわけではありませんが、トータルに曲の厳しい内容を捉えた演奏です。ベルグランド以外の演奏もそれぞれ聴きどころに満ちた演奏ばかりです。特にまた聴きたいと思う演奏は1982年の来日演奏のライブ録音のオッコー・カムと渡辺暁雄がヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団を振り分けたCDです。サラステがフィンランド放送交響楽団とサンクトペテルブルクでライブ録音したCDも魅力あふれるものです。
もちろん、最新のCDであるオッコー・カム指揮ラハティ交響楽団の演奏も素晴らしいものですが、やはり、生の実演のほうが素晴らしいですね。
まあ、流石にこれだけ聴けば、頭の中がシベリウスだらけ。記念の年だから、いいでしょう。この後もシベリウスの管弦楽曲を網羅して聴いていく予定です。

今回のシベリウス・ツィクルスではヴァイオリン協奏曲も演奏されたので、これは今まで聴いていないCDを聴いてみました。

 クーシスト、セーゲルスタム指揮ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団
 カヴァコス、ヴァンスカ指揮ラハティ交響楽団
 フリード、カム指揮ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団
 バティアシュヴィリ,オラモ指揮フィンランド放送交響楽団

クーシストも素晴らしい演奏ですが、スローなテンポが今一つ不満で、一番素晴らしかったのはバティアシュヴィリ。彼女の熱情あふれるヴァイオリンの響きに魅了されました。と言ってもsaraiのベストの愛聴盤のヒラリー・ハーンの座は揺るぎませんけどね。

さあ、明日のツィクルスの締めくくりに大いに期待しましょう。


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美しく凄絶な第4番!!シベリウス・ツィクルス②:カム&ラハティ響@オペラシティコンサートホール 2015.11.27

音楽は不可思議なものです。人間の成せる業なので、それも当然なのかも知れず、それが音楽の持つ魅力なのでしょう。何故、こんな謎めいたことを書くかと言えば、昨日から今日への演奏の精度と質の変化=向上が甚だしいからです。昨日はちょっと抑えて書きましたが、最初に演奏された交響曲第1番はかなりひどいアンサンブルで言っては悪いですが、田舎の下手なオーケストラという感じだったんです。それが昨日の後半の第2番では、フィルハーモニア管弦楽団に近いレベルの演奏になり、今日の前半の第3番では、ヨーロッパの1流オーケストラと肩を並べ、後半の第4番では天下のウィーン・フィルやベルリン・フィルでもこんなシベリウスは演奏できまいというパーフェクトな演奏レベルまで駆け上がったんです。これって何?

今回のツィクルスでsaraiが一番期待していたのは実は今日のプログラムでした。なかでも交響曲第4番はsarai的にはシベリウスの芸術の頂点だと考えており、もしかしたら、凄い演奏を聴かせてくれるんじゃないかと密かに期待していました。そして、実際、凄い演奏でした。第1楽章、チェロで始まる暗い音楽がその皮切りです。チェロの独奏も美しく沈み込んだ響きです。暗い想念に満ちた音楽が連綿と続きます。暗いのですが、美しい音楽でもあります。そして、シベリウスの内面をさらけ出すような音楽は聴く者の心に迫ってきます。きれいごとの音楽ではなく、矛盾をはらんだ人間性に根差した音楽です。カムはそのあたりを見事に表出させていきます。カムの指揮に応えるラハティ交響楽団の美しさとインパクトを兼ね備えた響きの素晴らしさは超絶的とも言えます。低弦の迫力ある響き、高弦の澄み切った響き、そして、特筆したいのは木管の素晴らしさです。昨日と同じメンバーの演奏とは到底思えません。超1流オーケストラに拮抗する演奏です。
こういう素晴らしい演奏を聴いていると、難解である筈のこの音楽がするっと心にはいってきます。人間の苦悩や束の間の心の安寧が共感を持って、受け入れられます。第1楽章と第2楽章は切れ目なく演奏されましたが、カムのこの表現はとてもよいと思います。暗い想念に満ちた第1楽章と明るさを取り戻した第2楽章は違和感を感じるものですが、続けて演奏すると、第2楽章の前半の束の間の安寧は続く暗い想念へのほんの休息だったことがよく分かります。
この交響曲第4番の最高の聴きどころは長大な第3楽章です。カム&ラハティ交響楽団の演奏は最高でした。基本的に美しい響きなのですが、シベリウスの心の独白が綿々と綴られ、色んな感情に揺さぶられる心情の吐露が見事に表現されます。よく解説でこの楽章を牧歌的と表現する評論家の方がいますが、一体、どこが牧歌的でしょう。シベリウスがほとんど唯一と言っていい自己の内面を曝け出した深い精神性のドラマです。ある意味、このとき、シベリウスは音楽的に相容れなかったマーラーの音楽に最も近づいたときでもあります。誤解を恐れずに言えば、シベリウスはこの第4番の音楽の方向性を極め、精神性の高い音楽を創り上げていけば、真の大芸術家に成り得たと思います。シベリウスの音楽の価値を批判しているわけではありませんが、シベリウスは美しい音楽を書いた音楽家であって、ベートーヴェン的な意味で重い精神性を高め上げた芸術家ではなかったというのがsaraiの偽ざる意見です。そして、唯一の例外がこの第4番だと思います。そういう意味でこの作品はベートーヴェン的な意味で高い芸術性の作品だと思います。その深い精神性を湛えた第3楽章をカム&ラハティ交響楽団は見事に演奏しました。終盤盛り上がるところは慟哭にも思え、saraiは感動してしまいました。そして、切れ目なしに第4楽章に移ります。アイロニーにも満ちた第4楽章も第3楽章と合体することで、意味するところが違ってきます。第3楽章の内面性・精神性のエピローグのように感じます。ここでもラハティ交響楽団の精度の高い演奏は続きます。美しいフィナーレまで完璧な表現でシベリウスの最高傑作の最高の演奏が聴けました。CDで聴くベルグルンドの3種の演奏がこれまでの最高の演奏だと思っていましたが、はるかに凌駕する演奏に驚愕しました。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:オッコー・カム
  ヴァイオリン:ペッテリ・イーヴォネン
  管弦楽:ラハティ交響楽団


  シベリウス: 交響曲第3番 ハ長調 op.52
  シベリウス: ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 op.47
   《ソリストアンコール》
     イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ニ短調 op.27-3《バラード》


   《休憩》

  シベリウス: 交響曲第4番 イ短調 op.63

   《アンコール》

  シベリウス: 悲しきワルツ op.44-1
         ミュゼット(組曲「クリスティアン2世」op.27 より)
         鶴のいる風景 op44-2

第4番以外の演奏にも軽く触れておきましょう。

最初に演奏された交響曲第3番は素晴らしく美しい演奏。ベルグルンドのヨーロッパ室内管弦楽団に肉薄する高いレベルの演奏でした。

ヴァイオリン協奏曲は若手ヴァイオリニストのイーヴォネンの活き活きした演奏が素晴らしいものでした。ラハティ交響楽団の演奏も見事でした。CDに録音されたカヴァコス+ヴァンスカ&ラハティ交響楽団の演奏を彷彿させる演奏です。イーヴォネンの今後に期待しましょう。

最後のアンコールは今日も素晴らしいものばかり。《悲しきワルツ》は今年聴いたサロネン&フィルハーモニア管弦楽団の最高の演奏を上回ったかもしれません。

明後日のラストコンサートは最後の3つの交響曲を聴きますが、この勢いで突き進みそうです。シベリウス・ツィクルスと言うよりも、シベリウス・フェスティバルという態を奏してきました。楽しみは倍化します。アンコールも楽しみです。最後は《フィンランディア》でしょうね。


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曇り後晴れ・・・シベリウス・ツィクルス①:カム&ラハティ響@オペラシティコンサートホール 2015.11.26

今年はシベリウス生誕150年の節目の年です。その記念すべき年を締めくくるにふさわしいシベリウス交響曲ツィクルスを今日から3回聴きます。真打ち登場という感じでオッコー・カムが指揮する本場フィンランドのラハティ交響楽団の演奏です。ラハティ交響楽団と言えば、ヴァンスカが指揮したシベリウスの一連の素晴らしいCDで華々しく世界に登場したオーケストラです。ラハティは人口10万人ほどの小さな街ですが、このオーケストラと本拠地シベリウス・ホールは世界に誇れるものでしょう。

今回のチケット入手には涙ぐましい努力がありました。セット券の発売日には何とウィーン滞在中だったんです。しかも時差もあります。さらにネットでの販売がなく、電話のみの受付。仕方なく、ウィーンのホテルで深夜に起き出して、携帯で日本に海外発信。1時間ほどかけて、何とか電話がつながって、チケットをゲット。書留でのチケット送付とのことで、日本に戻る頃にチケット送付してもらうことにしてもらいました。電話料金がどれくらいかかったかは恐ろしくて見ていません(笑い)。こんなに苦労して手に入れたチケットなんです。

大変期待していた今日の演奏ですが、前半の交響曲第1番はあれっ・・・という感じです。まずもって、アンサンブルがよくありません。世界の超一流オーケストラと比較するつもりは最初からありませんが、CDで聴いていたラハティ交響楽団の響きとはあまりの違いに愕然。この交響曲第1番は美しく響かせてもらいたい曲ですが、ほど遠い出来です。本場のオーケストラが奏でるシベリウスの音楽を楽しむ以前に響きが悪過ぎ。結局、欲求不満がつのるままでフィナーレ。休憩時間は暗然たる気持ちです。こんな演奏でシベリウスを7曲聴く羽目になるなんて・・・ぶつぶつ。

ところが後半の交響曲第2番は素晴らしかったんです。特に第3楽章以降はCDで聴いていた本来のラハティ交響楽団の響きです。とても美しいシベリウスです。これが本当の実力なんでしょう。最初は固くなっていたか、時差ぼけか・・・調子が出なかったんですね。ともかく安心しました。明日以降はもっと素晴らしい演奏を聴かせてくれる筈です。
交響曲第2番は今年、サロネン指揮フィルハーモニア管弦楽団の素晴らしい演奏を聴きましたが、今日の演奏も並び立つ演奏です。サロネンはスマートかつダイナミックな演奏を聴かせてくれましたが、カムはもっと自然で無骨な演奏で、どちらも素晴らしい演奏。フィナーレの盛り上がりはどちらも凄まじいものでした。

ツィクルスは始まったばかりですから、詳しい感想はこれからにしましょう。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:オッコー・カム
  管弦楽:ラハティ交響楽団


  シベリウス: 交響曲第1番 ホ短調 op.39

   《休憩》

  シベリウス: 交響曲第2番 ニ長調 op.43

   《アンコール》

  シベリウス: ミランダ(組曲「テンペスト」op.109より 第2番 第6曲)
         行列 JS54
         間奏曲(「ペレアスとメリザンド」op.46より)

ところで、だんだん調子が出てきたラハティ交響楽団の響きはアンコール曲で最高潮に達しました。聴いたことにない曲ばかりですが、どれも素晴らしいシベリウス節です。まるで、ウィーン・フィルの演奏するウィンナーワルツみたいです。これだけ聴いていても満足できるほどの素晴らしい演奏です。BISのシベリウス全集のCDをきっちりと聴いてみないといけませんね。ヴァンスカ指揮のラハティ交響楽団の演奏もあったかもしれません。


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圧倒的なコダーイに感動! タマーシュ・ヴァルガ・無伴奏チェロ・リサイタル@上大岡ひまわりの郷 2015.11.15

タマーシュ・ヴァルガはウィーン・フィルの首席チェロ奏者。オーケストラではいつも演奏する姿を見ていますが、ソロを聴くのは初めてです。

前半はバッハの名曲、無伴奏チェロ組曲です。これはCDで聴いたどの演奏ともまったく異なる演奏。インティメットな表現の柔らかい響きの演奏です。これが俺の弾くバッハなんだ、どうだ、聴いてみろという演奏とはまったく正反対の音楽です。自宅の居間で優しく弾いてくれるようなバッハ・・・これこそが本当のバッハの無伴奏チェロ組曲ではないかと思ってしまうような実に自然な演奏です。もちろん、こういう演奏をCDで聴き比べすると、多分、もの足りない感じがあるのかもしれませんが、目の前でそれこそ上品とも思える雰囲気で演奏されるとしみじみと聴き入るばかりです。こういうバッハの無伴奏チェロ組曲もあるんですね。ウィーン・フィルの柔らかい弦の響きで演奏されるバッハを聴いて、すっかりと満足しました。しかし、こういう演奏で後半のコダーイはどうなるんだろうという疑問もふつふつと湧きあがります。

そういう気持ちで後半のコダーイの無伴奏チェロ・ソナタの演奏を待ちます。そして、いよいよ始まった演奏の第1音を聴いただけで、すべてが分かります。バッハの静謐な演奏とは異なり、強いアタックの響きです。コダーイの音楽にふさわしい雄大な演奏が繰り広げられます。それに超絶技巧の凄い演奏です。この曲を有名にしたシュタルケルの演奏とはちょっと異質で、どちらかと言えば、ヨー・ヨー・マのような路線の演奏です。あまり突っ込み過ぎず、朗々とした響きの音楽ですが、胸に迫ってくる感動的な演奏です。少なくとも実演の迫力の分だけでも、ヨー・ヨー・マの演奏を超えています。たっぷり30分ほどの演奏ですが、ぐいぐいとその演奏に引き込まれて、束の間のような時間が過ぎ去りました。圧巻の演奏でした。こんな音楽が聴けるとは予想していませんでした。素晴らしいとしか表現できません。

名人揃いのウィーン・フィルの中でも、首席奏者は流石にこれほどの実力があることを実感させられました。素晴らしい演奏にとても大きな感銘を受けました。

今日のプログラムは以下です。

  チェロ:タマーシュ・ヴァルガ

  バッハ:無伴奏チェロ組曲 第1番
      無伴奏チェロ組曲 第3番

   《休憩》

  コダーイ:無伴奏チェロ・ソナタ

   《アンコール》

  ドビュッシー:シランクス(チェロ編曲版)
  バッハ:無伴奏チェロ組曲 第5番より、サラバンド


ところで、この日に向けて、集中的にバッハの無伴奏チェロ組曲の予習をしました。これまで、あまり、ちゃんと聴いていませんでしたからね。
予習したCDは以下のものです。

 パブロ・カザルス(1936~39年録音) EMI(ART処理によるリマスター盤)、opus蔵の復刻盤、Documents盤
  バッハの無伴奏チェロ組曲と言えば、この演奏を聴かないわけにはいかないでしょう。確かに素晴らしい演奏。いろいろな復刻CDも出ていますが、EMIのARTリマスター盤を聴けば、十分なようです。現在はほかにも素晴らしい演奏があるので、この演奏が絶対という感じではありませんが、気魄に満ちた演奏は一度は耳にする価値があります。

 ピエール・フルニエ(1960年録音)、ポール・トルトゥリエ (1982年録音:新盤)、モーリス・ジャンドロン (1964年録音)、ヤーノシュ・シュタルケル (1992年録音:4回目)
  いずれも納得の素晴らしい演奏。どれを聴いても最高の音楽に聴こえます。バッハの音楽の奥深さがうかがい知れます。

 アンナー・ビルスマ(1979年録音:旧盤、1992年録音:新盤)、鈴木秀美 (1995年録音:旧盤)、ピーター・ウィスペルウェイ (1998年録音:旧盤)、ヴィーラント・クイケン(2001/2002年)
  オリジナル楽器の演奏家たちの演奏。ただし、クイケン、ビルスマ(新盤)はモダン楽器を使用。彼らの演奏も聴き応えがあります。ビルスマだけは別次元の演奏に思えます。いいとか、悪いとかではありません。要するに個性ということでしょう。クイケンも説得力のある演奏です。

 ヨー・ヨー・マ(1982年録音:旧盤、1996年録音:新盤)
  旧盤、新盤ともに素晴らしい演奏。特に新盤はベスト盤に推したい演奏です。こういう演奏には文句のつけようがありません。脱帽です。

 ミッシャ・マイスキー(1984年録音:旧盤、1999年録音:新盤)
  これも旧盤、新盤ともに素晴らしい演奏。これは両方ともヨー・ヨー・マの新盤と並んでベストに推したい演奏です。全体的は新盤がいいかもしれません。最高の演奏です。

合計16ものCDを聴き、頭の中はチェロの響きでいっぱいになりました。こんなに素晴らしいCDがあるとは驚きです。でも、まだ、聴くべきCDは残されているようです。

コダーイの無伴奏チェロ・ソナタは以下を予習。

 ヤーノシュ・シュタルケル(1948年録音、1950年録音、1970年録音)
  特に1950年録音のものが有名なものですが、現在では、1970年録音のステレオ録音を聴けば十分でしょう。さすがにこの曲を世界的に広めたシュタルケルの演奏は鬼気迫るものです。

 ヨー・ヨー・マ(1999年録音)
  シュタルケルとは別のアプローチですが、これも凄い演奏です。やはり、彼は天才チェリストですね。

この素晴らしいコンサートシリーズを主催しているのは横浜楽友会のプロデューサーの平井さんですが、今回もこんなよいものを聴かせてもらって感謝です。

その横浜楽友会のホームページのアドレスはここです。


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心のこもった響き、庄司紗矢香・・・ビエロフラーヴェク&チェコ・フィル@みなとみらいホール 2015.11.3

庄司紗矢香は凄い! 心底、そう思わさせられるような素晴らしい演奏でした。これは音楽の技術がどうの、こうの言うようようなレベルの演奏ではありません。ヴァイオリン協奏曲で多分、一番有名で耳慣れている筈のメンデルスゾーンで、ここまで聴衆の心に語りかけてくるような音楽を聴かせることのできるヴァイオリニストがほかにどれだけいるでしょう。ヴァイオリンに限らなくても、音楽でこのような心に沁みてくるようなものを与えてくれる音楽家は稀です。この10年ほどの庄司紗矢香の目覚ましい進化には驚かされてきましたが、今日の庄司紗矢香は音楽的な高みに上り詰めたという印象でした。ヴァイオリンという楽器を通じて、彼女の深い思いを共有できたという最高の音楽体験になりました。いやはや、日本人の多くの演奏家をこれまで聴いてきましたが、彼女こそ、最高の存在です。これだけ称賛してもまだまだ足りないくらいです。今年は素晴らしい音楽を数々聴いてきましたが、今日は本当に最高のコンサートでした。
また、庄司紗矢香をサポートするビエロフラーヴェク指揮チェコ・フィルの素晴らしいこと! 今日のような演奏をCD化してほしいものです。残念ながら、録音していなかったようですけどね。

さて、ビエロフラーヴェク指揮チェコ・フィルのスメタナ、ドヴォルザークですが、一言で言えば、文句なしの会心の演奏でした。
最初のスメタナのシャールカの第1音からして、素晴らしい演奏を確信させるものでした。実はsaraiはこれまでチェコ・フィルの実演を聴いたことがなかったんです。もっぱらCDでのみ、チェコ・フィルの演奏を聴いてきました。そして、今日聴いたチェコ・フィルの響きはカレル・アンチェル時代、つまり、50年以上も前のチェコ・フィルの響きを彷彿とするものでした。力強く、シャープな切れ味の演奏です。アンチェル時代に比べると、響きが少しまろやかになった印象はありますが、底堅い安定性は増しているような感じです。スメタナのシャールカは勇壮な音楽で、大音量の響きですが、決して、うるさい響きになっていないのは流石です。本場ものの《わが祖国》の1曲が聴けて、大変、満足しました。

後半のドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」は実に素晴らしい演奏でした。どっしりと力強く、かつ、めりはりのきいた演奏で、この名曲の真髄を聴いた思いです。特に後半の第3楽章、第4楽章のダイナミックな演奏に感銘を受けました。ビエロフラーヴェクとチェコ・フィルの一体感のある演奏はとても安定感があり、今後とも聴いていきたいコンビです。日本でドヴォルザークの全交響曲のツィクルスをやってくれると嬉しいのですが・・・。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:イルジー・ビエロフラーヴェク
  ヴァイオリン:庄司紗矢香
  管弦楽:チェコ・フィルハーモニー管弦楽団


  スメタナ:シャールカ ~連作交響詩「わが祖国」より
  メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 Op.64
       《アンコール》バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番ハ長調 BWV1005より、第3楽章《ラルゴ》

   《休憩》

  ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」Op.95

   《アンコール》

  スメタナ:オペラ《売られた花嫁》3つの舞曲より「スコーチュナ」
  メンデルスゾーン:交響曲第5番より第3楽章
  ドヴォルザーク:スラヴ舞曲第9番

そうそう、庄司紗矢香がアンコールで弾いたバッハの無伴奏ソナタですが、とても心のこもった素晴らしい演奏でした。来年の6月に無伴奏ヴァイオリン・リサイタルの告知があったので、とても楽しみです。バッハ以外にもバルトーク、そして、細川俊夫の新曲を弾いてくれるそうです。聴き逃せませんね。紀尾井ホールで6月7日の予定だそうです。早速、スケジュール帳に書き込んでおきましょう。


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       庄司紗矢香,  

細川俊夫の新作《嵐のあとに》:東京都交響楽団@サントリーホール 2015.11.02

今日のコンサートでは何と言っても、細川俊夫の新作の世界初演に注目です。

もちろん、初聴きです。プレトークでの作曲家・細川俊夫の解説によると、東北大震災によって、音楽に対する考え方が変わり、自然の猛威に人間が何ができるかを音楽で表現してみようとしており、この作品《嵐のあとに》も、猛烈な嵐が起こったあとに2人のソプラノがシャーマン、すなわち巫女として、現世とあの世をつなぐ役割を果たすという音楽を書いてみたということです。音楽をシャーマニズムの一形式として位置付けるという野心的な試みです。

曲の前半は嵐の場面です。打楽器を中心に描写音楽的に嵐を表現します。和のテーストが感じられるような音楽ですが、悪く言えば、陳腐な感じがしなくもありません。正直なところ、ちょっとがっかりです。嵐の頂点で2人のソプラノがユニゾンで叫び声を上げます。野性的とも思える歌声にびっくり。迫力はありますが、違和感も感じます。この展開でどう音楽的に終結点を迎えさせるのかなと要らぬ心配をしているsaraiです。しかし、心配無用でした。急に音楽の転換点に入ります。それは弦楽のトップ奏者による合奏からです。第1ヴァイオリン2人(四方恭子、矢部達哉)、第2ヴァイオリン2人(遠藤香奈子、双紙正哉)、ヴィオラ(店村眞積、鈴木学)、チェロ1人(古川展生)の7人の美しい演奏にうっとりします。この後は鎮魂の音楽が始まります。素晴らしい音楽です。金切声に思えたソプラノ2人も深い鎮魂と祈りの歌に切り換わります。鎮魂の音楽の効果を高めるために前半はあえて、陳腐な音楽に終始したのかもしれません。鎮魂の音楽がジーンと胸に染み入ると音楽もフィナーレ。終わり良ければ、すべてよしの典型のような音楽ですね。願わくば、美しい鎮魂の音楽がもっと長く続いてくれれば、もっと満足できたでしょう。もう一度、聴いてみたいと思わせるような内容のある音楽でした。

ラヴェルとドビュッシーはいつもの都響とはかけはなれたプログラムですが、大変、精度の高い演奏に感心しました。ただ、あまり、こういう音楽はsaraiの好みではないので、この方向に進んでほしくないというのが正直な感想です。やはり、都響はマーラーが一番、似合います。

プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲はさすがにレーピンは安定した演奏を聴かせてくれました。こういう難曲も余裕の演奏でシャープな響きを楽しませてくれました。しかし、庄司紗矢香のしみじみとした抒情の第2楽章と迫力の第3楽章の演奏が思い出されてしまいました。レーピンにはこの曲は合わないかもしれません。
予習したのは以下の3枚のCDでしたが、いずれも素晴らしい演奏です。

 チョン・キョンファ、プレヴィン指揮ロンドン交響楽団
 ヴィクトリア・ムローヴァ、プレヴィン指揮ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
 ジャニーヌ・ヤンセン、ユロフスキ指揮ロンドン・フィル


最後に、今日のプログラムは以下のとおりでした。

  指揮:大野和士
  ヴァイオリン:ワディム・レーピン
  ソプラノ:イルゼ・エーレンス
  ソプラノ:スザンヌ・エルマーク
  管弦楽:東京都交響楽団

  ラヴェル:スペイン狂詩曲
  プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番 ト短調 Op.63

   《休憩》

  細川俊夫:嵐のあとに - 2人のソプラノとオーケストラのための(2015)
       [都響創立50周年記念委嘱作品・世界初演]
  ドビュッシー:交響詩《海》-3つの交響的スケッチ

今日のプログラムは11月13日からの都響のヨーロッパ遠征の主要な曲目だそうです。何故、フランスものが中心なんでしょうね。都響の得意な曲目には思えませんけどね・・・。


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心温まるドヴォルザーク、クーベリック・トリオ・リサイタル@上大岡ひまわりの郷 2015.10.25

ほのぼのとしたコンサートでした。インティメットな室内楽の響きでどこまでも力みのない平常心の演奏。こういう演奏もたまにはいいものです。それもドヴォルザークの音楽ですから尚更です。
今回のコンサートに向けての予習でドヴォルザークのピアノ三重奏曲第1番を初めて聴きましたが、リラックスして聴ける美しい曲です。その前に聴いたベートーヴェンのピアノ三重奏曲とはあまりに音色が異なることに驚かされます。ベートーヴェンはひたすら精神性を追求する古典楽曲ですが、ドヴォルザークはボヘミアの民俗的な心を素直に表現した親しみやすさに満ちた音楽です。同じジャンルの音楽とは信じられないくらいです。聴く者としても音楽への向き合い方が違ってきます。ドヴォルザークの場合は心をおおらかにして、その音楽の美しさをただただ受容すれば、それでよさそうです。

予習したドヴォルザークのピアノ三重奏曲第1番は次の2つ。

 グァルネリ・トリオ
 スメタナ・トリオ

いずれもチェコのピアノ・トリオですが、特にグァルネリ・トリオの歌いくちの美しさには魅了されました。スメタナ・トリオの清新な演奏もなかなかのものです。

今日の演奏は同じくチェコのピアノ・トリオですから、同傾向の響きを感じます。特に第2楽章の懐かしい響きで心が休まります。まさにボヘミアの響きですね。ヴァイオリンの石川静の美しい響きも見事です。このドヴォルザークのピアノ三重奏曲第1番は後半のプログラムでしたが、これなら、前半のベートーヴェンもチェコもののドヴォルザークか、マルチヌーでも聴きたかったところです。

前半のベートーヴェンの有名な大公トリオも悪い演奏ではありませんでしたが、やはり、もっと沈潜した精神性の音楽が聴きたかったのが正直なところです。特に大好きな第3楽章でベートーヴェンの高邁な精神性が感じられなかったのが残念でした。予習で聴いた演奏が素晴らし過ぎたのかもしれませんが・・・。
予習したのは以下です。

 コルトー、ティボー、カザルス
 ケンプ、シェリング、フルニエ
 メルニコフ、ファウスト、ケラス

コルトー、ティボー、カザルスの気品のある演奏は別格として、ケンプ、シェリング、フルニエは素晴らしい演奏。ケンプの格調高いピアノを聴いているだけでも素晴らしいのに、さらにシェリング、フルニエの贅沢な響きがさらに重なってくるのですからたまりません。しかし、一番感銘を受けたのはメルニコフ、ファウスト、ケラスの演奏でした。個々の自己主張とか響きを強調するとか、演奏家なら必ず持つであろう欲望をすべて捨て去り、ひたすら、ベートーヴェンの音楽の真髄に迫ろうとする3人の奉仕は驚くべきものです。こんな大公トリオの演奏がありうるとは思いもしませんでした。常設のピアノ・トリオでもこんなに室内楽に徹した演奏って、なかなかできないでしょう。

まあ、今日のコンサートはドヴォルザークの素晴らしさがすべてでした。

今日のプログラムは以下です。

  ピアノ・トリオ:クーベリック・トリオ

  ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲 第7番 「大公」

   《休憩》

  ドヴォルザーク:ピアノ三重奏曲 第1番

   《アンコール》

  メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲第1番 ニ短調 Op.49 第2楽章 アンダンテ・コン・モート・トランクィロ


アンコールのメンデルスゾーンはとても美しい演奏でした。このクーベリック・トリオの最新のCDの中の1曲だそうです。

なお、このコンサートシリーズを主催している横浜楽友会のアドレスはここです。


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モーツァルトのレクイエム、スウェーデン放送合唱団&東京都交響楽団@サントリーホール 2015.10.16

モーツァルトのレクイエム・・・やはり、いいなあ。モーツァルトが死の床で書いた未完の大作ですけど、決して重くなくて、清らかさと透明さに満ちています。いまどきは都響のようなマーラーを得意にするモダンなオーケストラが演奏しても、ガンガン鳴らすのではなく、まるで古楽器オーケストラかと思うような小音量で澄み切った音響なんですね。スウェーデン放送合唱団も大合唱ではなく、迫力よりも美しい音楽を優先しています。これがモーツァルトが最後に到達した人生の思いだったのかと納得させられるような演奏です。ベートーヴェン的な諦念ではなく、マーラーの人生や愛への立ち去り難い思いでもなく、そこには、自分の人生への純粋な反省と許しを希求する一人の人間の清らかな思いが込められているように感じました。天才音楽家モーツァルトの最後の音楽、それがたとえ未完に終わったにせよ、人類に残された最高に素晴らしい音楽だったと体感できる演奏が聴けて、満足です。

このところ、モーツァルトの晩年の素晴らしい作品を続けざまに聴き、今更ながら、モーツァルトの音楽の素晴らしさを再認識しています。ハーゲン・カルテットとヴィトマンによるクラリネット五重奏曲、ウィーン・フィルによる最後の3つの交響曲、それに今日のレクイエムです。いずれも純粋さと熟成が混在している不思議と言えば不思議な作品ですね。早逝した天才作曲家の証しなのかもしれません。

久しぶりに予習のためにレクイエムをいくつか聴いてみました。

 カール・ベーム指揮ウィーン・フィル、ウィーン国立歌劇場合唱団
 エディット・マティス、ユリア・ハマリ、ヴィエスワフ・オフマン、カール・リッダーブッシュ

 セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィル、同合唱団
 カトリーヌ・ペトリグ、クリステル・ボルシェル、ペーター・ストラカ、マティアス・ヘレ

 カルロ・マリア・ジュリーニ指揮フィルハーモニア管弦楽団、同合唱団
 リン・ドーソン、ヤルト・ヴァン・ネス、キース・ルイス、サイモン・エステス

 ニコラウス・アーノンクール指揮コンツェントゥス・ムジクス・ヴィーン、アルノルト・シェーンベルク合唱団
 クリスティーネ・シェーファー、ベルナルダ・フィンク、クルト・シュトライト、ジェラルド・フィンレイ

 ジョン・エリオット・ガーディナー指揮イングリッシュ・バロック・ソロイスツ、モンテヴェルディ合唱団
 バーバラ・ボニー、アンネ・ゾフィー・フォン・オッター、ハンス・ペーター・ブロホヴィッツ、ウィラード・ホワイト

DVDもひとつ見ました。

 ジョン・エリオット・ガーディナー指揮イングリッシュ・バロック・ソロイスツ、モンテヴェルディ合唱団
 バーバラ・ボニー、アンネ・ゾフィー・フォン・オッター、アントニー・ロルフ・ジョンソン、アラステア・マイルズ

いずれも素晴らしい演奏です。どれを聴いても満足ですが、ひとつ選ぶのなら、バーバラ・ボニーの素晴らしいソプラノが聴けるガーディナー盤です。CDもよいのですが、バルセロナのカタルーニャ音楽堂でのライブの美しい映像が楽しめるDVDが一番です。ジュリーニの晩年の演奏もモーツァルトの音楽の本質に迫った素晴らしい演奏です。とりたてて何も装飾していないところが何とも言えず、素晴らしいです。

今日の前半のプログラムは滅多に聴けない20世紀の合唱曲でした。

リゲティのルクス・エテルナはア・カペラの合唱曲。人間の声って、ここまでの表現力があるのかと驚かされます。32名の合唱団で16声で歌う超絶技巧曲。つかみどころはありませんが幻想的な雰囲気に包みこまれます。感動するような音楽ではありませんが、異次元の音楽を体験できます。リゲティの作曲能力の凄さに驚嘆もしました。以前、映画の《2001年宇宙の旅》で聴いたときには、これがクラシック音楽だったとは分かりませんでした。この曲を映画に使ったスタンリー・キューブリックはやはり只者ではありませんね。

シェーンベルクの《地には平和を》は最近はオリジナルのア・カペラで演奏されることが多いようですが、今日は珍しく、管弦楽伴奏付きでした。もちろん、控えめな管弦楽でしたけどね。やはり、ア・カペラのほうがいいかな。リゲティのルクス・エテルナを聴いた後では、この曲はえらく分かりやすい曲に聴こえるから不思議です。これも無調のテイストに満ちた難解な曲なんですけどね。まあ、シェーンベルクの初期のころの作品ですから、とても美しい作品ではあります。フィナーレの「フリーデ、フリーデ アウフ デア エルデ(Friede, Friede auf der Erde!)」(平和を、地には平和を)のところの美しさには感動します。まさに今の日本にはぴったりな作品ではありませんか。武器なき平和を希求する音楽です!

最後に、今日のプログラムは以下のとおりでした。

  指揮:ペーター・ダイクストラ(スウェーデン放送合唱団首席指揮者)
  ソプラノ:クリスティーナ・ハンソン
  アルト:クリスティーナ・ハマーストレム
  テノール:コニー・ティマンダー
  バス:ヨアン・シンクラー
  合唱:スウェーデン放送合唱団
  管弦楽:東京都交響楽団

  リゲティ:ルクス・エテルナ (1966)(無伴奏混声合唱)
  シェーンベルク:地には平和を op.13 (混声合唱と管弦楽)


   《休憩》

  モーツァルト:レクイエム ニ短調 K.626 (ジュスマイヤー版)

   《アンコール》

  モーツァルト:「アヴェ・ヴェルム・コルプス」ニ長調 K.618

思いがけず、最後にサプライズのプレゼントがありました。やはり、モーツァルトの晩年の作品「アヴェ・ヴェルム・コルプス」です。ア・カペラで歌われました。シンプルな曲ですが、こういう能力の高い合唱団が歌うと、途轍もない美しさに輝きます。こういう音楽に感動しない人はいないでしょう。モーツァルトの素晴らしさを究極まで味わわせてもらいました。


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昔も今も極上の響き・・・ウィーン・フィルのモーツァルト@サントリーホール 2015.10.8

ウィーン・フィルの極上の響きを聴いて、幸せを感じたのはsaraiだけではなかったでしょう。サントリーホールがあたかもウィーン楽友協会とも思えてしまうほど、響きが体に沁み渡ってきました。これで床鳴りがすれば、ウィーン楽友協会のホールと同じ感覚です。ウィーン・フィルの響きはなよやかな高弦の響きが特徴的です。なんとも柔らかい第1ヴァイオリンの響きはウィーン・フィルならではのもの。それは録音で聴ける1930年代の昔から変わりない素晴らしさです。昔はもっと凄かったと言われるかたもいるかもしれませんが、今は何せライブで聴ける贅沢さがあります。それも日本にいながらにしてです。ウィーン・フィルの初来日は1956年だそうですから、もう半世紀以上も昔のことですが、それでもそのときには不世出の指揮者フルトヴェングラーが亡くなって2年後のことです。フルトヴェングラーの録音で聴くウィーン・フィルの凄さは誰しも認めるところでしょう。今回も予習でそのころのウィーン・フィルの素晴らしい響きを聴きましたが、今回の来日演奏のウィーン・フィルの響きを聴いて、本質的にはその響きが受け継がれていることが体感できました。この場にフルトヴェングラー、ワルター、クレメンス・クラウス、クレンペラーが指揮台の上に立てば、往年の名演奏がそのまままの音で再現されるだろうなあという妙な感慨に浸ってしまいました。ひとつのオーケストラの昔と変わらぬ響きを持続しているって凄いことですね。

今回のウィーン・フィルの来日コンサートは何を聴きにいこうか、正直、迷いました。マーラーとかブルックナーとかR・シュトラウスとか重い曲目があれば、それで決まりですが、今回はモーツァルトを中心とした比較的、軽い曲目ですし、指揮もそんなにカリスマ性のないエッシェンバッハ(ファンのかた、ゴメンナサイ)。いっそのこと、パスしようかとも思いました。今年の春にはウィーンでマーラーも聴いて、大満足したばっかりですしね。でも、来日しているのに何も聴かないのは何か寂しいものがあります。モーツァルトの最後の3つの交響曲をまとめて聴くのも初めてなので、それにしてみようと思った次第です。

予習のため、久々にモーツァルトをまとめ聴きしてみましたが、この3つの交響曲は名演奏を聴けば、実に深い内容を秘めていることが再確認できました。そして、このウィーン・フィルのコンサートが楽しみになってきました。

その予習ですが、モーツァルトはLPレコードで聴きたいです。何故か? 亡くなった叔父さんからの豊富な遺産があるからです。その上で、ウィーン・フィルの歴史的な演奏もCDで聴きました。予習したのは以下です。

1. ワルター コロンビア交響楽団 第40番/第41番 LP
2. クーベリック バイエルン放送交響楽団 第39番/第40番/第41番 LP
3. フリッチャイ ウィーン交響楽団 第40番/第41番 LP
4. ホグウッド エンシェント室内管弦楽団 第39番/第40番/第41番 LP
5. ベーム ベルリン・フィル 第40番/第41番 LP
6. ケルテス ウィーン・フィル 第39番/第40番 LP
7. セル クリーブランド管弦楽団 第39番/第40番 LP
8. ワルター ウィーン・フィル 第40番 CD 1952年録音
9. ワルター ウィーン・フィル 第41番 CD 1938年録音
  10. フルトヴェングラー ウィーン・フィル 第40番 CD 1948/49年録音
  11. クレンペラー ウィーン・フィル 第41番 CD 1968年録音

ワルター指揮コロンビア交響楽団、ベーム指揮ベルリン・フィルは実に安定感のある立派な演奏。今回素晴らしさに気付いたのはクーベリック指揮バイエルン放送交響楽団。とても見事な演奏です。しかし、それ以上にびっくりしたのはフリッチャイ指揮ウィーン交響楽団の演奏です。フリッチャイ独特のタメのきいた指揮は素晴らしいです。これでウィーン・フィルとDECCAで録音していれば、もっと凄かったのにと残念にも思いました。ケルテス指揮ウィーン・フィルの演奏は、ケルテスには悪いのですが、ウィーン・フィルの素晴らしい響きが聴けて、素晴らしい録音です。ウィーン・フィル主導の演奏に聴こえます。指揮者が誰であれ、ウィーン・フィルの響きはモーツァルトを聴くのに最適だと思わせるような演奏です。
というところで、LPレコードをすべて聴き終えて、CDは大指揮者がウィーン・フィルを振った演奏を聴きます。まず、モーツァルトと言えば、この人、ブルーノ・ワルター。1952年録音の第40番はもうこれ以上の演奏はないと思えるほど。これを聴くとほかの第40番の演奏は聴けなくなります。哀感のこもった第1楽章には聴き惚れるだけです。モノラルだということは決してハンディにはなりません。同じワルターの1938年録音の第41番はそんなに音が悪いわけではありませんが、これは資料的価値といったところでしょうか。ウィーン・フィルの第1ヴァイオリンの素晴らしい響き、木管の素晴らしい響きは十分に聴き取れます。フルトヴェングラーの第40番もウィーン・フィルの響きの素晴らしさを最大限に生かした驚異的な演奏です。快速で飛ばす第1楽章は決して奇をてらったものではなく、あるべき速さに思えます。そして、第4楽章の充実度。第41番の第4楽章も聴いてみたかったものです。多分、録音ありませんよね。最後に聴いたのはクレンペラー。1968年のウィーン芸術週間に登場したクレンペラーは既に83歳だったそうです。彼とウィーン・フィルが残した8枚のCDは何と素晴らしいのでしょう。その中の1枚、この第41番は厳格で重厚でありながらも、ウィーン・フィルの第1ヴァイオリンの美しい響きもあって、決して重たくはありません。インテンポの演奏が心に訴えかけてくるような名演奏です。

では、今回のコンサートを聴いてみましょう。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:クリストフ・エッシェンバッハ
  管弦楽:ウィーン・フィル


  モーツァルト: 交響曲第39番 変ホ長調 K.543

   《休憩》

  モーツァルト: 交響曲第40番 ト短調 K.550

   《休憩》

  モーツァルト: 交響曲第41番 ハ長調 K.551「ジュピター」


最初の交響曲第39番を聴いたところで、悟りました。本気モードのウィーン・フィルはこの第39番を序奏にして、素晴らしい演奏を繰り広げてくれるだろうとの思いです。まず、コンサートマスターのキュッヒルの厳しい顔つきでの演奏を先頭に第1ヴァイオリンの素晴らしく美しい響きが聴衆の体を貫きます。木管の響きも続きます。そして、一体感のあるアンサンブル。これが世界最高のオーケストラかどうかは些細な問題で、ともかく、この響きはウィーン・フィルだけのものです。

第40番の第1楽章は中庸か、ちょっと遅めのテンポで、ともかく美し過ぎる響きの第1ヴァイオリンに耳を奪われます。満足過ぎる第1楽章です。続く第2楽章の天国的な響き、第3楽章の厚みのある減の響き、何も言うことがありません。そして、圧巻の第4楽章。晩年のモーツァルトの達した高みを思う存分、味わわせてもらいました。ふーっ・・・。

交響曲第41番は3部作の交響曲をしめくくる作品。第39番と第40番をヘーゲル的な意味でアウフヘーベンしたものに思えます。事実、第1楽章は決然とした開始です。これが結論だと言わんばかりです。ウィーン・フィルの響きは激しくもありますが、根底は柔らかさを潜ませています。強さと甘さ・・・これも止揚しているかの如くです。めくるめくような演奏に圧倒されつつも、優しさに抱かれるような思いです。第2楽章は美しさも悲しさも、そして、ベートーヴェンを思わせるような厳しい精神性もないまぜにしたような果てしない音楽・・・長大な音楽が見事に演奏されます。第3楽章は一転して、舞曲のようなノリのよい演奏で心躍らされます。そして、すべての収束点になる第4楽章。3部作の交響曲の到達点であり、全交響曲の最終到達点。単純とも思える主題が繰り返し、重なり合って、高揚していきます。モーツァルトのオーケストラ曲の最高峰です。この果てしもない高揚の末にウィーン・フィルが奏でた弦楽のフーガの超絶的な高みは感動するしかないでしょう。そして、簡潔なコーダ。パーフェクトなモーツァルトでした。

昨夜はとても感想が書ける精神状態ではなく、1日置いた今日の記事になってしまいました。音楽の与えてくれるあまりの幸福感に耐え切れなかったんです。

ところで最後に苦言。サントリーホールの聴衆の素晴らしさにはいつも敬服していますが、昨日に限っては一部の聴衆のフライング気味の拍手・・・とても耐えられませんでした。音の余韻すら、楽しめませんでした。トッパンホールのヴィトマン&ハーゲン・カルテットのブラームスのクラリネット五重奏曲では演奏が終わり、奏者が手を下げても静寂が続き、奏者が立ち上がってから、ようやく拍手が起こりました。感動が倍化したのは言うまでもありません。心当たりのある方は猛省を!! あなた一人のコンサートではありませんよ。


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       ウィーン・フィル,  

モーツァルト・ツィクルスの行き着く果てはブラームス・・・ただただ感動!!ヴィトマン&ハーゲン・カルテット@トッパンホール 2015.10.4

怒涛の10日間連続の音楽三昧も遂に最終日になりました。

今日はハーゲン・カルテットのモーツァルト・ツィクルスの最終日で弦楽四重奏曲第20番と室内楽の最高峰のひとつ、クラリネット五重奏曲が演奏されます。クラリネット五重奏曲つながりでモーツァルトに加えて、ブラームスのクラリネット五重奏曲も演奏されます。

このモーツァルトのクラリネット五重奏曲は実に衝撃的な演奏でした。この曲はクラリネットが主役ですが、同じくらい第1ヴァイオリンが重要です。今日のルーカス・ハーゲンのヴァイオリンは素晴らしいとしか言いようのない音楽を奏でました。抑制のきいた大人の表現でありながら、素晴らしい響きが第1楽章から続きます。ヴィトマンのクラリネットもとても美しい響きでしたが、第1楽章はちょっと鳴らせ過ぎの感じで浮いた印象もありました。それも第2楽章からは抑制のきいた響きになり、弦楽四重奏の響きとパーフェクトに重なり合うようになりました。大傑作の作品が素晴らしい演奏で奏でられるのですからたまりません。うっとりどころではなく、感極まりつつ聴くしかありません。しかし、第3楽章まではそれも序章にしか過ぎませんでした。第4楽章も素晴らしい演奏が続き、やがて終盤にはいります。5人の息がぴったりと合い、自在なルパート、パウゼ、極限までのピアノッシモ。ありえないような境地の音楽に高まっていきます。音楽はスローダウンし、長いパウゼ。凄い緊張感です。テンポアップしたコーダで圧倒的な幕切れ。モーツァルトのクラリネット五重奏曲はこんなに凄い音楽だったとは・・・めくるめくような感動に襲われます。saraiの体内に感動を超えた衝撃が走ります。曲が終わっても高揚感は持続したままです。もう頭は真っ白。何と言う音楽をヴィトマンとハーゲン・カルテットは創り上げたんでしょう。一昨日、当ブログでsaraiはモーツァルトの音楽では感動しないと書きましたが、これは撤回するしかありません。この晩年の名作は天才モーツァルトがおのれの天分に加えて、人間モーツァルトの万感を込めた作品です。その人生をかけた思いがこんなに心を打つんですね。

無論、この作品はsaraiも昔から聴き続けてきて、細部まで熟知している筈の作品です。出会ったのは10代が終わりかける頃。京都で学生生活を送っていました。今回も予習したランスロのクラリネットとバルヒェット四重奏団のLPレコードを擦り切れるほど聴いていました。聴くだけでは満足できず、古物商で古いクラリネットを求めて、いつも鴨川の土手でポケットスコアを見ながら、吹けもしないクラリネットでこの曲とブラームスのクラリネット五重奏曲を吹いていました。まわりの人は迷惑だったことでしょう。そんなに入れ込んでいた作品ですが、今日の演奏を聴くまではこの作品の真価を知らなかったと言っても過言でありません。天下の名演と言われる録音はほとんど聴いてきたつもりですが、これほどのしびれるような感動を覚えたことはありません。生演奏でも退屈したことがしばしばあります。今日の演奏は超名演だったんです。ハーゲン・カルテットが好きなのでこのコンサートにも足を運びましたが、正直言って、これほどの演奏を聴かせてくれるとは想像だにしませんでした。ヴィトマンのクラリネットも見事でしたが、それ以上にハーゲン・カルテット、とりわけ、第1ヴァイオリンのルーカス・ハーゲンの高い芸術性は凄かったとしか言えません。

20分間の休憩時間中も感動の高揚感は収まりません。コンサート前はモーツァルトよりも期待感の高かったブラームスのクラリネット五重奏曲が始まってしまいます。結局、平常心に戻ることなく、ブラームスを聴くことになってしまいます。このブラームスがまた素晴らしかったんです。相変わらず、ルーカス・ハーゲンのヴァイオリンは絶好調。ヴィトマンのクラリネットも最高です。他のメンバーも見事なハーモニーを奏でます。強弱のコントロールの大胆さ、精妙さには舌を巻きます。テンポ・ルパートもモーツァルト以上に見事です。室内楽の極致をいくような演奏です。大人数のオーケストラでは決してなしえないような精緻を極める演奏なんです。これだから、室内楽を聴くのはやめられません。そして、音楽性の高さ・・・ブラームスの晩年の孤高のロマンを味わい尽くすような見事な表現です。秋の日の木漏れ日の温もりを実感させてくれる素晴らしい演奏です。第1楽章のロマンの香り高い演奏、第2楽章の一音一音に万感を込めたような味わい深い音楽、第3楽章の美しいハーモニーとテンポ感。そして、圧巻だったのは第4楽章。こんなに深い音楽があるでしょうか。終盤に至り、第1楽章の主題が回帰して、スローダウン。深いため息のように音楽が終止・・・長い沈黙。演奏者がやがて手を下ろしますが、聴衆の誰一人、拍手もなく、静寂を守ります。会場に感動が共有された瞬間です。演奏者が立ち上がり、初めて拍手が巻き起こります。それも盛大な拍手。saraiは拍手もできず、ただ、佇んでいました。

予習したクラリネット五重奏曲のCDは以下です。

  ランスロ、バルヒェット四重奏団(モーツァルト)、ミュンヘン弦楽四重奏団(ブラームス)
  ウラッハ、ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団
  シフリン、エマーソン四重奏団(ブラームス)
  オッペンハイム、ブダペスト弦楽四重奏団(ブラームス)
  コヴァーチェ、バルトーク四重奏団(ブラームス)

ランスロのCDは思い出深い1枚。最初に聴いた演奏です。古いLPは処分したので、CDは最近入手し、この演奏を何十年かぶりに聴きましたが、やはり素晴らしいです。ウラッハ&ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団は決定盤と言われています。第1ヴァイオリンのカンパーの演奏が見事です。古いモノラル音源ですが、音質もいいです。残りのブラームスの3枚は今日予習しました。オッペンハイム&ブダペスト弦楽四重奏団の演奏は素晴らしいです。モーツァルトも録音してくれればよかったのにね。ということで、今日、ブラームスのクラリネット五重奏曲は4回も聴いてしまいました。

今日のプログラムは以下です。

  弦楽四重奏:ハーゲン・カルテット
  クラリネット:イェルク・ヴィトマン


  モーツァルト: 弦楽四重奏曲第20番 ニ長調 K.499《ホフマイスター》
  モーツァルト:クラリネット五重奏曲 イ長調 K.581

   《休憩》

  ブラームス:クラリネット五重奏曲 ロ短調 Op.115


アンコールはもちろん、なしです。こんな凄い演奏の後にアンコールする音楽って、想像だにできません。

今回のハーゲン・カルテットのモーツァルト・ツィクルスは最後にブラームスで終わるという変則的なものです。すべて、聴き終わって、その意味が分かったような気がします。このツィクルスはモーツァルトの弦楽四重奏曲全23曲のうち、26歳以降に書かれたハイドン・セット、ホフマイスター、プロシャ王・セットの10曲が演奏され、モーツァルトの室内楽の最高傑作、晩年に作曲されたクラリネット五重奏曲で締めくくるというものです。後年、クラリネットの名手ミュールフェルトの演奏するモーツァルトのクラリネット五重奏曲を聴いて、ブラームスが作曲したのが同じ構成のクラリネット五重奏曲です。晩年のブラームスは創作力も衰えて、ピアノの小品のように構成の小さな曲を書いていました(バート・イシュルで書かれたOp.116~Op.119のピアノ小品集は傑作揃いです。saraiがはまっています。)。そんなブラームスが創作力を取り戻して作曲したのがクラリネット五重奏曲でした。いわば、晩年のモーツァルトの作品から霊感を得て、晩年のブラームスが傑作を創り出したということです。モーツァルトの室内楽の延長線上にブラームスの作品を置いた今回の企画は必然と言えば、必然でしょう。今日の演奏を聴いて、納得がいきました。モーツァルトの室内楽を起点として、西洋音楽の室内楽の系譜がつながっていることを大きく描き出したかったということでしょう。まあ、何と言っても、ブラームスのクラリネット五重奏曲は傑作だし、saraiも大好きな曲なので、そういう理屈抜きでもこのプログラムは大歓迎でしたけどね。

次はハーゲン・カルテットはどんな演奏でsaraiを驚かせてくれるでしょう。



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抑制と熟成、そして精妙さ・・・ハーゲン・カルテットのモーツァルト・ツィクルス③@トッパンホール 2015.10.3

怒涛の10日間連続の音楽三昧は後半3日間のハーゲン・カルテットのモーツァルト・ツィクルスを聴いているところです。

今日はモーツァルト・ツィクルスの2回目(本当は3回目、初回を聴いていません)でプロシア王・セットの3曲です。

プロシア王・セットの3曲はハイドン・セットに比べると、地味な印象の曲ですが、ハーゲン・カルテットは抑制した表現で滋味深い演奏を聴かせてくれました。ハーゲン・カルテットも今や熟成のときを迎えつつあると感じます。それにしても、昨日聴いたハイドン・セット、とりわけ、《不協和音》はモーツァルトが天からの啓示を受けて作曲した傑作ですが、それをハーゲン・カルテットは完成度の高い天国的な演奏で味わわせてくれました。対して、今日は風合いの異なるプロシア王・セットをその延長線上の演奏でありながらも品格の高い演奏で晩年のモーツァルトの人間的な温かみを感じさせてくれました。天才モーツァルトも創作力に陰りがあることを思わせるプロシア王・セットですが、そこには人間モーツァルトの熟成も感じられます。そのあたりをハーゲン・カルテットは抑制された表現で見事に演奏してくれたと思います。演奏の精妙さは熟成の極に達しつつあります。

特に素晴らしかったのは後半で弾かれた《プロシア王第3番》です。第2楽章の主題が変奏曲風に様々に表現されていく、密度の高い演奏には耳をそばだてるだけです。そこにはモーツァルトの音楽を愉悦する特別のものがありました。モーツァルトの最後の弦楽四重奏曲をしっかりと受け止めることができました。

予習したCDは以下です。

  ハーゲン・カルテット(モーツァルト弦楽四重奏曲全集)
  バリリ四重奏団(弦楽四重奏曲第21番 ニ長調 K.575《プロシア王第1番》及び弦楽四重奏曲第22番 変ロ長調 K.589《プロシア王第2番》)

なかなか聴くべきCDがありません。エマーソン四重奏団も録音してほしいですね。バリリ四重奏団も最高の演奏というわけではありません。そういうなかでハーゲン・カルテットのCDは貴重です。ですが、今日の演奏を聴くと、そろそろ、プロシア王・セットだけでも再録音してほしいとも思いました。

今日のプログラムは以下です。

  弦楽四重奏:ハーゲン・カルテット


  モーツァルト プロシア王 セット

  弦楽四重奏曲第21番 ニ長調 K.575《プロシア王第1番》
  弦楽四重奏曲第22番 変ロ長調 K.589《プロシア王第2番》

   《休憩》

  弦楽四重奏曲第23番 ヘ長調 K.590《プロシア王第3番》

   《アンコール》

   弦楽四重奏曲第20番 ニ長調 K499《ホフマイスター》第2楽章 メヌエット アレグレット


明日もハーゲン・カルテットのモーツァルト・ツィクルスは続きます。クラリネット五重奏曲つながりでブラームスも聴けます。楽しみは尽きません。



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       ハーゲン・カルテット,  

天からの啓示?・・・ハーゲン・カルテットのモーツァルト・ツィクルス②@トッパンホール 2015.10.2

怒涛の10日間連続の音楽三昧が続いています。前半3日間の歌姫とピアノ、中間4日間の巨匠ハイティンク指揮のロンドン交響楽団と都響も終わり、遂に後半3日間のハーゲン・カルテットのモーツァルト・ツィクルスに突入です。本当はこのモーツァルト・ツィクルスは4日間で既に昨日から始まっていましたが、巨匠ハイティンクの公演と重なったため、泣く泣く初日の公演はお知り合いに代わりに行ってもらいました。素晴らしい演奏で感動ものだったそうです。

で、saraiにとっては今日がモーツァルト・ツィクルスの初日です。今日はハイドン・セットの後半の3曲です。

で、期待の演奏に耳を傾けていましたが、それは不意にやってきました。大袈裟に言えば、天からの啓示というのでしょうか。頭の中の霧がパーッと晴れたようなものです。今日の最後の曲、《不協和音》の第2楽章が始まって間もないときです。モーツァルトがこのハイドン・セット、いや弦楽四重奏曲で一体、何を表現したかったのか。それは一言で言えば、西洋音楽の基本中の基本、ポリフォニーを弦楽器4つでシンプルに描き尽すということではないかということです。何を今更と思われるかもしれませんが、理屈ではなく、実感として体で“分かった”んです。まあ、素人のたわごととして聞いてください。それはハーゲン・カルテットの精妙とも思える真摯な演奏を通じて、saraiの頭の中にイメージとして浮かび上がりました。弦楽器4つの響きが重なり合っていく様はまさに天上から降り注ぐ美の極致の世界。モーツァルト自身もこのハイドン・セットを作曲しているときに天からの啓示を受けたのでしょう。ある意味、このときに西洋音楽はその究極の姿を達成したのかもしれません。音楽自身の充足性はもうこれ以上のものを必要としていませんからね。
これ以降、ベートーヴェンから始まる西洋音楽の系譜は音楽へ精神性、ドラマ、写実、ロマンなどを付加していくことに軸足を変えていくことになります。
saraiはモーツァルトの音楽で決して感動を味わうことはありません(オペラは別です)。それはモーツァルトの音楽が純粋無垢なもの、音楽のみの存在だからです。モーツァルトの音楽で感じるのは人間的な感動ではなく、天国的な幸福感です。それが何故なのか、今日初めて、“分かった”んです。繰り返しますが、理屈ではありません。ハーゲン・カルテットの精妙な音楽のアプローチが“分からせて”くれたんです。
実はsaraiには過去にも同じような体験があります。大学時代、難解な数学の代数の本を読んでいて、論理の展開は追えるものの、その実体、意味するものがなかなか理解できませんでした。悩んでいると、ある時、不意に頭の中にイメージが浮かび上がりました。ようやく、体感として、“分かった”んです。
数学と音楽・・・人間の脳の中では同じように感じ取るもののようです。少なくとも、saraiの頭はそのようです。

ハーゲン・カルテットの名演奏を聴いて素晴らしい体験をしました。

予習したCDは以下です。

  ハーゲン・カルテット(モーツァルト弦楽四重奏曲全集)
  エマーソン四重奏団(モーツァルト・ハイドン・セット全集)
  ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団(弦楽四重奏曲第19番 ハ長調 K.465 《不協和音》のみ)

意外にこれというCDが少ないのに驚きました。世評に高いアルバン・ベルク四重奏団は以前聴きましたが、どうも相性が悪くて・・・。しかし、ハーゲンとエマーソンの素晴らしい演奏が聴けるのでよしとしましょう。ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団やバリリ四重奏団が全曲録音していてくれればよかったのに残念です。

今日のプログラムは以下です。

  弦楽四重奏:ハーゲン・カルテット


  モーツァルト ハイドン セット II

  弦楽四重奏曲第17番 変ロ長調 K.458 《狩》
  弦楽四重奏曲第18番 イ長調 K.464

   《休憩》

  弦楽四重奏曲第19番 ハ長調 K.465 《不協和音》

   《アンコール》

  弦楽四重奏曲第22番 変ロ長調 K.589《プロシア王第2番》第1楽章 アレグロ

50年以上も音楽を聴いてきて、今更、モーツァルトの音楽が“分かった”なんて言っているのですから、saraiの音楽の道も厳しいようです。
もしかしたら、80歳を過ぎれば、仙人のように音楽を極めることができるのでしょうか。
まあ、所詮、素人ですから、力を抜いて、音楽を楽しむというのもありかな・・・。

明日もハーゲン・カルテットのモーツァルト・ツィクルスは続きます。



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       ハーゲン・カルテット,  

またまた最高のブラームス、ハイティンク&ペライア&ロンドン交響楽団@NHKホール 2015.10.1

ハイティンクペライア&ロンドン交響楽団の夢のようなコンサートも今日でおしまい。ここまでマーラーブルックナーと最高の音楽が聴けて幸せでした。ペライアのピアノも究極のモーツァルトのピアノ協奏曲を奏でてくれました。

今日はブラームスの交響曲第1番です。ハイティンクのブラームスを生で聴くのは初めてです。またまた、最高のブラームスが聴けました。ハイティンクと言えば、ブルックナーとマーラーを偏愛していて、ブラームスはあまりCDも聴いていなかったんです。ハイティンクのブラームスがこんなに素晴らしいとは、実に迂闊なことでした。今日のコンサートに向けて、CDで予習を始めたときから、その素晴らしさに捉われていましたが、今日、生で聴いて、フィナーレで大変な感動に襲われました。

予習したブラームスの交響曲第1番のCDは以下です。ハイティンクの正規録音のCDはこれがすべてです。

  1. 1972.12 コンセルトヘボウ管
  2. 1994.4 ボストン交響楽団
  3. 2003.5.22,23 ロンドン交響楽団

これらはすべてブラームス交響曲全集の1枚です。最初のロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団との全集はハイティンクがまだ40代前半の頃で勢いのある演奏。次のボストン交響楽団との全集はその20年以上後の録音。ハイティンクは既にロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の音楽監督の職を解かれ、様々なオーケストラを振りつつ、巨匠という名声を得ていました。この全集は名盤との評価が高く、実際、saraiもボストン交響楽団の実力を再評価してしまうほどの素晴らしい演奏です。ハイティンクのブラームスの交響曲第1番の特徴は自然な流れで美しく歌い上げて、最後の最後、第4楽章のフィナーレに至って、ぐんとテンポアップし、白熱して終わるというものです。この基本コンセプトは次のロンドン交響楽団との演奏でも同じです。ただ、このロンドン交響楽団との演奏は素晴らしいサウンドと録音で大変、聴き映えがします。ですから、1枚選ぶなら、このロンドン交響楽団ですが、ボストン交響楽団も捨てがたい魅力があります。

今日の演奏も基本的にはCDと同じコンセプトの演奏でした。ハイティンクの丁寧なタクトにロンドン交響楽団のメンバーがぴったりと従っているのが印象的。オーケストラの音色の美しさがブラームスの音楽を輝かせます。そして、フィナーレの迫力はCDで聴いた以上のもので、大変な感動を覚えました。

前半は管楽セクションのよるヘンリー・パーセル(スタッキー編)の《メアリー女王のための葬送音楽》 に続き、ペライアのピアノでベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番です。今回の来日公演で絶好調のピアノを聴かせてくれているペライアは今日も最高の演奏。ハイティンクとの息もぴったりで素晴らしいベートーヴェンを聴かせてくれました。このコンビはCDでも名演を聴かせてくれていますが、特に第2楽章のピアノの表現が見事です。堂々としたオーケストラの弦のユニゾンの響きに対比して、ピアノは弱弱しく弾かれ、まるで大きな宇宙に対する人間の小ささを愛おしむかのような音楽表現です。ペライアのピュアーなピアノの響きがこういう表現を可能にしています。 そして、第2楽章の終盤の右手のトリルの見事なこと。第3楽章では一転して、強烈なインパクトの打鍵が凄まじく、それでも響きの美しさが損なわれないのがペライアの凄いところです。ハイティンクの指揮も素晴らしく、ベートーヴェンの颯爽として、雄々しいところを見事に表現していました。こんなパーフェクトなピアノ協奏曲第4番は聴いたことがありません。CDで聴くクラウディオ・アラウの演奏にも匹敵するレベルでした。

予習したベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番のCDは以下です。ペライアとハイティンクを軸に聴きました。

  1. 1964 アラウ、ハイティンク、コンセルトヘボウ管
  2. 1984.10 ペライア、ハイティンク、コンセルトヘボウ管
  3. 2012.9.6 ペライア、ハイティンク、ウィーン・フィル (ロンドン、ライブ)

アラウ、ハイティンクの演奏はsaraiの愛聴盤です。これさえあれば、ほかは何もいりません。ペライア、ハイティンク、コンセルトヘボウ管も見事な演奏。ペライア、ハイティンク、ウィーン・フィルはそのほぼ30年後の演奏ですが、同じような演奏です。ハイティンクはほかのピアニストとも多くの録音を残しています。ブレンデル、アシュケナージ、シフなどです。よほど、ピアニストに好かれているんでしょうね。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:ベルナルト・ハイティンク
  ピアノ:マレイ・ペライア
  管弦楽:ロンドン交響楽団


  パーセル(スタッキー編): メアリー女王のための葬送音楽
  ベートーヴェン: ピアノ協奏曲第4番 ト長調 op.58 (ピアノ: マレイ・ペライア)

   《休憩》

  ブラームス: 交響曲第1番 ハ短調 op.68

ハイティンク&ペライア&ロンドン交響楽団で3回のコンサートを聴きましたが、すべてが最高でした。海外からの来日公演としては空前絶後の素晴らしいコンサートだったと思います。昨日はブルックナーの後、憔悴していたハイティンクも今日は顔色もよく、体調万全での指揮でした。安心しました。日本での残りの公演も元気で乗り切れそうですね。巨匠のさらなる活躍をお祈りしましょう。これがsaraiの聴く最後のハイティンクとならないことを祈念してやみません。


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       ハイティンク,        ,        ペライア,  

巨匠の白鳥の歌はブルックナー、ハイティンク&ペライア&ロンドン交響楽団@ミューザ川崎シンフォニーホール 2015.9.30

オーケストラ・シリーズが続いています。最高に素晴らしかったマーラーに続いて、今日はブルックナーの交響曲第7番。ペライアのピアノでモーツァルトのピアノ協奏曲も聴けるという贅沢さ。このシリーズはこの後、NHKホールでのブラームスの交響曲第1番に続きます。

ハイティンクが今日、演奏したブルックナーはあまりに美し過ぎました。美しさに酔っているうちにフィナーレ。天使が舞い降りたように強烈な感動が最後の最後に不意に訪れてきました。素晴らしいブルックナーでした。しかし、タクトを下ろして、こちらを振り向いたマエストロを見るとはっとします。マエストロは燃え尽きて・・・いや、憔悴の極にあるようです。遠路はるばる極東の島国までやってきて、マーラー、ブルックナーという大曲を振るのは86歳のご高齢で大変でしょう。演奏中はそういうことを微塵も感じさせない力演でしたから、タクトを下ろすとどっとお疲れが出るのでは。
これがもう、巨匠のブルックナーの聴き納めかもしれませんね。今日のブルックナーは巨匠の白鳥の歌だったのかもしれません。十分に素晴らしいブルックナーを聴かせてもらいました。

ハイティンクのブルックナーと言えば、わざわざ、アムステルダムまで聴きに行った2013年4月のコンサートが忘れられません。ブルックナー、いや、これまでに聴いてきたすべてのコンサートで最高のコンサートでした。ブルックナーの作品で頂点に立つ交響曲第8番です。そのときの記事はここここです。それに先立つこと、1か月。ハイティンクは来日公演でも究極のブルックナーの交響曲第9番を聴かせてくれました。サントリーホールとみなとみらいホールで聴きましたが、みなとみらいホールでの演奏が凄くて、歴史的とも思えるコンサートでした。そのときの記事はここです。そして、これらの第8番、第9番に続いて、第7番が聴けるのですから、どんな演奏になるのか、期待と不安がないまぜでしたが・・・とても美しい演奏を聴かせてもらいました。満足です。

ハイティンクのブルックナーの交響曲第7番を生で初めて聴くのですから、予習には万全を期しました。予習したCDは以下です。ハイティンクで聴けるCDはできるだけ聴いた感があります。各2行目は演奏時間(全体、各楽章)です。

  1. (ハース版) 1966.11.1-3 コンセルトヘボウ管 (ブルックナー全集から)
             60:15 18:10 21:00 9:19 11:46
  2. (ハース版) 1978.10.9-10. コンセルトヘボウ管
             65:19 20:48 22:20 9:51 12:05
  3. (ハース版) 1997.10.18 ウィーン・フィル
             64:00 20:12 22:07 9:30 12:27
  4. (ハース版) 2000.8.25. ベルリン・フィル (ザルツブルグ)
             64:15 20:09 21:44 9:45 12:33
  5. (ハース版) 2004.8.26. シュターツカペレ・ドレスデン
             69:30 21:33 23:35 10:35 13:44
  6. (ノヴァーク版)2007.5.15 シカゴ交響楽団
             67:31 21:33 22:26 10:30 13:01
  7. (ノヴァーク版)2010.9.17 コンセルトヘボウ管
             64:50 20:27 21:24 10:03 12:53
  8. (ノヴァーク版)2012.6.17 ロンドン交響楽団
             66:00 20:51 21:50 10:02 13:17

ハイティンクのブルックナー録音の中ではこの交響曲第7番が一番多く、このほかにもまだあります。ハイティンクのブルックナー録音では、このほか、交響曲第8番と第9番が多く、ハイティンクのブルックナー演奏の中核はこれらの3曲になります。オーケストラでは、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団が中心を占めているのは当然として、ウィーン・フィル、ベルリン・フィル、シカゴ交響楽団、シュターツカペレ・ドレスデン、ロンドン交響楽団と揃っています。バイエルン放送交響楽団、ミュンヘン・フィルが揃えば、完璧ですね。また、ブルックナー演奏の場合、どの版を使うかが問題ですが、ハイティンクはこの第7番に限らず、昔はハース版を使っていますが、2007年以降はノヴァーク版に変わっています。
演奏自体で言えば、ハイティンクは1970年代後半にブルックナー演奏スタイルを確立し、素晴らしい高みに達しました。その後、2000年代に入り、じっくりと構えた演奏になり、さらにノヴァーク版を採用することで、無駄をそぎ落として、演奏の質を高めてきています。この8枚の中でどれかを選ぶとしたら、6.の2007年のシカゴ交響楽団か、7.の2010年のロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団か、8.の2012年のロンドン交響楽団になるだろうと思います。いずれもノヴァーク版ですね。どれも素晴らしい演奏ですが、1枚選ぶなら、最新のロンドン交響楽団かな。

今日の演奏、第1楽章はさざなみのような弦の響きの中、低弦の深く美しい音楽が始まります。弦と管が代わる代わる美しい響きを聴かせてくれます。次第に音楽は熱を帯びていきます。不思議にどんなに高潮してもうるさい響きにはなりません。このオーケストラの音色はとてもバランスがよく、タイプとしてはロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団を感じさせます。ハイティンクがそのルーツのオーケストラの響きを求めているかのようです。
第2楽章は意外にスローに粘らずにすっきりとした演奏ですが、実に美しい音楽が奏でられます。終盤のクライマックスもあくまでも美しさを追求するような音楽作りです。めくるめくような煌めきの音楽が最後はワーグナーの死を悼む葬送の音楽として沈潜していきます。底流にワーグナーのパルジファルを思わせるような《心の痛み》の音楽をワーグナーも得意にするハイティンクが見事に表現しました。
第3楽章は力をふりしぼったような勇壮な音楽。巨匠の力演です。
第4楽章は美しさと《心の痛み》と豪壮さが混在する大変素晴らしい演奏です。そして、頂点はフィナーレにありました。巨匠が持てる力をすべて燃焼し尽した演奏でした。敬愛するハイティンクの音楽への真摯な奉仕にsaraiは頭を垂れるのみです。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:ベルナルト・ハイティンク
  ピアノ:マレイ・ペライア
  管弦楽:ロンドン交響楽団


  モーツァルト: ピアノ協奏曲第24番 ハ短調 K.491

   《休憩》

  ブルックナー: 交響曲第7番 ホ長調

前半のモーツァルトのピアノ協奏曲は一昨日にサントリーホールで聴いたばかりですが、今日は一段と精度を上げた演奏。もうこれ以上は弾けまいというような完璧なピアノ。オーケストラもモーツァルト演奏の規範となるような演奏。いっそのこと、交響曲を聴いてみたくなるようなオーケストラ演奏です。楽章を追うごとに素晴らしさは増すばかり。第2楽章の美しさといったら、言葉もありません。そして、最高に素晴らしかったのは第3楽章。2度と聴けないような奇跡のような演奏でした。ペライアの真の実力を見せつけられた思いです。究極の美しいピアノの響きが聴けて、満足この上もなしです。

今日も最高のモーツァルトにブルックナー。音楽の愉悦を感じ尽した一夜でした。


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       ハイティンク,        ペライア,  

シェーンベルクと武満、ナッセン&東京都交響楽団@サントリーホール 2015.9.29

オーケストラ・シリーズの2日目は都響の定期演奏会。昨日に続き、サントリーホールです。なんだか、昨日の素晴らしかったハイティンクのマーラーの余韻も残っているような気もします。それに偶然ですが、今日も昨日とまったく同じ席なんです。もっとも今日は昨日と違って隣には配偶者がいますけどね。

イギリスの作曲家オリヴァー・ナッセンの指揮でモダン、現代の作品が取り上げられます。

まずは指揮者自身の作品です。ストラヴィンスキーの《花火》に触発されて生まれた作品だそうですが、弾けるようなフレッシュさが印象的な作品で都響の機能性が最大限、活かされた演奏でした。

次はシェーンベルクの《映画の一場面への伴奏音楽》。架空の映画音楽です。厳密な12音技法が適用されたノントナールの作品。不気味な雰囲気が醸し出された作品を都響がシャープに演奏。

次は武満 徹の《精霊の庭》。武満らしい幻想的な音響空間が見事に創り上げられました。12音の音列が様々な楽器で引き継ぎながら、変容していきます。そこには夢幻的なイメージが投影されていきます。都響の高いアンサンブル力が最高に発揮されて、陶然とした雰囲気が展開されて、うっとりとしてしまいました。さすがにこの作品を初演した都響ならではの演奏です。

休憩後はピーター・ゼルキンのピアノでブラームスのピアノ協奏曲第2番。これはピアノの響きがもうひとつ。ブラームスらしいロマンや迫力が感じられませんでした。都響のサポートももうひとつ。残念な演奏に感じられました。もっとも、聴衆は沸いていたので、saraiの感性の問題かもしれません。

予習したCDは以下です。
シェーンベルクは以下。

 シノーポリ指揮シュターツカペレ・ドレスデン

武満 徹の精霊の庭は以下。

 若杉弘指揮東京都交響楽団

 初演コンビですね。

ブラームスのピアノ協奏曲第2番は以下。

 ルドルフ・ゼルキン、ジョージ・セル指揮クリーブランド管弦楽団

 ピーター・ゼルキンの父親のピアノを聴いてみました。セルの指揮も含め、立派な演奏です。

最後に、今日のプログラムは以下のとおりでした。

  指揮:オリヴァー・ナッセン
  ピアノ:ピーター・ゼルキン
  管弦楽:東京都交響楽団

  ナッセン:フローリッシュ・ウィズ・ファイヤーワークス
  シェーンベルク:映画の一場面への伴奏音楽 op.34
  武満 徹:精霊の庭

   《休憩》

  ブラームス:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 op.83

これで10日連続のコンサートも半分終了。明日からはまた2日間、ハイティンク指揮ロンドン交響楽団のコンサートです。期待しましょう。


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人生最高のマーラー、ハイティンク&ペライア&ロンドン交響楽団@サントリーホール 2015.9.28

今日からいよいよオーケストラ・シリーズ。待ちに待ったハイティンク指揮ロンドン交響楽団で、今日はまず、期待のマーラーが聴けます。ペライアのピアノでモーツァルトのピアノ協奏曲も聴けるという贅沢さ。このシリーズはこの後、ミューザ川崎でのブルックナーの交響曲第7番、NHKホールでのブラームスの交響曲第1番と続いていきます。

今日のマーラーは奇跡のような演奏・・・saraiの人生で最高のマーラーでした。このハイティンクのマーラーを聴いて、もう死んでも悔いがないとさえ思いました。そういえば、ハイティンクのブルックナーの交響曲第8番を聴いて同じ思いに駆られたことを思い出します。そのときの記事はここです。マーラーもブルックナーも最高の演奏を聴かせてくれたのはやはりハイティンクでした。凄い指揮者です。86歳にして、この音楽、というか、86歳だから、この音楽だと言うべきでしょうか。しかし、ハイティンクは老境に達して枯れてしまったのでは決してありません。通常の意味での80歳を超えた巨匠ではないと思います。ハイティンクは常に平常心で今も進化し続けているように感じます。彼は死ぬまで音楽に奉仕する一人の人間として精進していくのでしょう。

ハイティンクのマーラーを生で初めて聴くのですから、予習には万全を期しました。予習したCDは以下です。ハイティンクで聴けるCDはほぼ聴き尽した感があります。

1. 1967.12. コンセルトヘボウ管、エリー・アメリンク(S) (マーラー全集から)
2. 1982.12.(Live) コンセルトヘボウ管、マリア・ユーイング(S) (クリスマス・マチネーのCD/DVD)
3. 1983.10. コンセルトヘボウ管、ロバータ・アレクサンダー(S)
4. 1991.12.(Live) ベルリン・フィル、シルヴィア・マクネマー(S) (DVD)
5. 1992.6. ベルリン・フィル、シルヴィア・マクネマー(S)
6. 2002.10.11.(Live) コンセルトヘボウ管、バルバラ・フリットリ(S)
7. 2005.11.4.(Live) バイエルン放送交響楽団、ユリアーネ・バンゼ(S)
8. 2006.11.(Live) コンセルトヘボウ管、クリスティーネ・シェーファー(S)
9. 2013.8.17.(Live) ボストン交響楽団、カミラ・ティリング(S) (タングルウッド)

この録音の量は異常な多さです。ハイティンクがいかにこのマーラーの交響曲第4番に愛情を注ぎこんできたかが分かります。これ以外には、録音の量で第2番《復活》と第9番が続きます。オーケストラでは、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団が中心を占めているのは当然として、ウィーン・フィルとシカゴ交響楽団の録音がないのが残念です。2.の1982年の演奏でハイティンクは演奏スタイルを確立した感じですが、それ以降もじわじわと演奏の細部を磨き上げていっているのが分かります。特に2000年代にはいってからの演奏レベルの高さには驚かされます。独唱ソプラノでは、シルヴィア・マクネマーが際立って、素晴らしいです。この9枚の中でどれかを選ぶとしたら、3.の1883年のロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団か、9.の2013年のボストン交響楽団がわずかに頭を出していると思います。しかし、どれも水準以上の演奏です。

いかにCDで予習してみても生で聴くマーラーは想像だにできないものでした。
マーラーの交響曲第4番の第1楽章は静かに普通に始まります。もちろん、ハイティンク得意の第4番ですから、細部まで神経の行き届いたパーフェクトな演奏です。でも、saraiも平常心で聴けるような演奏です。しかし、1音1音を大事にするような音楽が続き、次第に心に沁み渡っていきます。音楽も熱を帯びてきて、第1楽章も半ば近くなると、マーラーの美しい自然を謳うフレーズに心が崩壊していきます。ロンドン交響楽団のアンサンブルも素晴らしく、世界のベスト5のオーケストラを凌駕する響きを聴かせてくれます。ハイティンクが振るとオーケストラもベストパフォーマンスで音楽を奏でてくれます。言葉では言い尽くせない素晴らしい音楽が続きます。
第2楽章も見事な演奏ですが、ここではsaraiも再び平常心を取り戻し、落ち着いて音楽を聴けます。素晴らしい響きは続きます。
そして、第3楽章が始まります。第1音を聴いただけでsaraiの心は崩れ去り、もう、夢の中で音楽を聴いているようです。なんと美しい天上の響きでしょう。普通のテンポでの演奏に思えますが、あまりに音楽的な内容がぎっしりとつまっているためにスローモーションで音楽を聴いている錯覚に陥ります。低弦から始まった音楽が高弦に引き継がれ、管楽器も加わり、高揚していきます。細部を磨き上げられた音楽はどこまでもどこまでも心の高揚感を高め続けます。そして、終盤のクライマックス・・・そこで高まった緊張感は最後のカタルシスに向かっていきます。人生の終わりを思わせるように静かに音楽は閉じます。
すぐに第4楽章が始まります。これは人生のエピローグでもあるかのような音楽。若くて美しいソプラノ歌手アンナ・ルチア・リヒターのちょっと鼻にかかったようなピュアーな歌声を楽しみます。次第に彼女の見事な歌唱に引き込まれていきます。表情豊かに歌う彼女の美声が心に迫ってきます。終盤の歌唱で見事に心を捉えられてしまいました。感動しました。そして、オーケストラの後奏が静かに閉じていきます。ハープの響きが消え去り、ハイティンクの手がそっと降ろされます。何と言う感動でしょう。涙が滲んでいます。

一瞬の静寂に包まれました。この静寂を作り出してくれた聴衆の皆さんに感謝です。素晴らしいマーラーでした。今後、こんな素晴らしいマーラーを聴くことがあるでしょうか。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:ベルナルト・ハイティンク
  ピアノ:マレイ・ペライア
  ソプラノ:アンナ・ルチア・リヒター
  管弦楽:ロンドン交響楽団


  モーツァルト: ピアノ協奏曲第24番 ハ短調 K.491

   《休憩》

  マーラー: 交響曲第4番 ト長調

あまりにマーラーが素晴らし過ぎて、前半のモーツァルトのピアノ協奏曲に触れませんでした。ペライアのピアノは最高でした。期待通りの美しい響きでモーツァルトの音楽を味わわせてくれました。普通のコンサートであれば、これがメインでもおかしくないような素晴らしい演奏でした。モーツァルトのピアノはこういう粒立ちのよいタッチで聴くと最高ですね。終始、うっとりとペライアのピアノの響きに心を奪われていました。特に音階を切れ味鋭く、かつ、美しい響きで弾くところの素晴らしさと言ったら、これ以上の演奏はないほどでした。モーツァルトのピアノ協奏曲は前回聴いたピリスも素晴らしかったし、ペライアも最高。ピリスとペライアのモーツァルトは何ものにも代えがたい素晴らしさであることを再認識しました。

まだ、ハイティンクのブルックナーとブラームスが聴けると思うと大変幸せです。



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       ハイティンク,        ペライア,  

パーフェクトなラヴェル、アンリ・バルダ・ピアノ・リサイタル@上大岡ひまわりの郷 2015.9.27

昨日までは歌姫の歌声に酔いしれました。一昨日はフォン・オッター、昨日はエルトマン。
今日からはピアノの響きを楽しみます。今日はアンリ・バルダ。明日からはマレイ・ペライア(ハイティンク指揮ロンドン交響楽団と3回)、ピーター・ゼルキン(都響と)といずれも名人揃いです。

アンリ・バルダは3年前に初めて、その演奏に接し、驚愕した思い出があります。それまでは名前すら知らないピアニストでした。そのときの記事はここです。

生まれて初めて、ラヴェルのピアノ曲が心から楽しめた演奏だったんです。で、今日のラヴェルですが、まさにそのときと同じく、パーフェクトな演奏で《夜のガスパール》が楽しめました。彼らしく、強靭なエネルギーに満ちた演奏で、猛烈に早いパッセージでもミスらしいミスはない驚異的な演奏です。もうこれは神業としか思えません。これだけの演奏ができるピアニストは世界にも何人もいません。ホロヴィッツ、リヒテルにも匹敵します。あっ、彼らはもうこの世にはいませんね。ともあれ、凄まじい演奏に3年の時の経過を忘れてしまいました。

ところで、このラヴェルは休憩後の演奏。休憩前はブラームスの名曲3曲だったんです。今、saraiが一番はまっているブラームスです。特に最初に演奏された《3つの間奏曲 Op.117》は当初、プログラムになく、当日サプライズで追加された演目。ひそかにsaraiが演奏を望んでいたものでした(他の会場ではプログラムにありました)。期待するなというほうが無理な話。バルダのブラームスは初聴きですが、きっとこの名人ならば、凄い演奏を聴かせてくれると思っていました。この予想は半ば当たり、半ば外れました。聴いたことのないようなブラームスでした。物凄いエネルギーに満ちたブラームスだったんです。まあ、初期、中期のブラームスならば、これもよかったかもしれません。しかし、Op.117は晩年のブラームス。壮年期の創作力はなくなったものの短いピアノの小品に人生の黄昏を迎えたブラームスの心情を込めた名作のうちのひとつ。saraiの愛して止まぬOp.116からOp.119までの4作品の中でも大好きな作品です。これは枯れたロマンティックな演奏で泣かせてほしかったんです。人生の頂点にあるかのようなパワフルな演奏は何としても避けてほしかったんです。次に演奏した《2つのラプソディ Op.79》はこれでもよかったんですが、これもやり過ぎの感。まあ、その次の《6つの小品 Op.118》の第2曲以降はかなり抑えた表現で気持ちよく聴けましたが、最初からブラームスは抑えて弾いてほしかったというのが本音です。バルダは本当に実力のあるピアニスト。どうとでも聴きこなせる人ですが、ここはブラームスに合わせた演奏が欲しかったところ。残念です。

ショパンはこれまたエネルギーに満ちた演奏ですが、繊細な味も感じられて、よかったのではないでしょうか。いわゆるショパンらしさとはかけ離れていますが、これがバルダのショパンでしょう。ワルツもマズルカも区別のないような演奏ではありますが、見事な演奏ではあります。それが一番に感じられたのが、アンコールの最後に弾いた《夜想曲 第15番》。ホロヴィッツの名演奏を彷彿とさせるような強靭でパーフェクトな素晴らしい演奏でした。

今日のプログラムは以下です。

  ピアノ:アンリ・バルダ

  ブラームス:3つの間奏曲(3 Intermezzi) Op.117
         2つのラプソディ(2 Rhapsodien) Op.79
         6つの小品(6 Stücke) Op.118

   《休憩》

  ラヴェル:夜のガスパール
  ショパン:即興曲 第1番 Op.29
        ワルツ 第12番 Op.70-2
        マズルカ 第34番 Op.56-2 / 第38番 Op.59-3
              第26番 Op.41-1 / 第40番 Op.63-2
              第41番 Op.63-3
        ワルツ 第8番 Op.64-3 / 第5番 Op.42

   《アンコール》

  ショパン:夜想曲 第16番 Op.55-2 / 第15番 Op.55-1


トータルには期待通りの演奏だったと言えます。満足のリサイタルでした。

なお、このコンサートシリーズを主催している横浜楽友会にホームページができたとのことです。アドレスはここです。


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最高!エルトマンのバッハ、農民カンタータ by バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティホール 2015.9.26

昨日に続き、今日も美しい歌声に酔いしれました。同じ東京オペラシティホールに響く歌声です。昨日はフォン・オッター、今日はエルトマン。何て贅沢なんでしょう。

今年6月にアムステルダムでモイツァ・エルトマンのルルを聴き、そのときのサイン会で彼女からお誘いを受けたので、かけつけた次第です。エルトマンのバッハは期待以上の素晴らしさでした。もっと若い頃のエルトマン(今でも十分に若いのですが)はボーイソプラノ的なスープレットだったと記憶していますが、今はそのときのピュアーな高域の声の響きに加えて、中低域のふくよかな響きを持つようになったという印象です。彼女が歌ったのは、《悲しみを知らぬ人》 BWV 209と農民カンタータ《おれらの今度の殿様は》BWV 212の2つですが、どちらも素晴らしい歌唱にうっとりしてしまいました。

予習したのは、アメリングとコレギウム・アウレウム合奏団が録音した最高の1枚。こんな素晴らしいCDを聴いてしまうと、どんなものを聴いても不満足に思えるのではと危惧しましたが、これは杞憂でした。saraiの大好きなアメリングを凌駕するようなエルトマンの見事な歌唱でした。

最初に歌ったBWV 209がともかく素晴らしく、その温かみのある歌声に魅了されました。フラウト・トラヴェルソの菅きよみの独奏も絶賛ものです。同じ旋律を歌とフラウト・トラヴェルソが繰り返し、それぞれの素晴らしさを味わい尽くしました。

休憩後はこの日のメインの農民カンタータBWV 212です。これはカンタータですが、今日はオペラ仕立ての演奏です。舞台装置こそありませんが、衣装も着けて、演技入り。さすがにオペラ歌手でもあるエルトマンはコケティッシュな演技で魅了してくれます。同性である配偶者が「可愛いね!」って感嘆するほどの見事さです。それ以上に透き通るような美しい高音の歌声の響きにひたすらうっとりします。とりわけ、第14曲のアリア《クラインツォヒアー村はやさしいよい村》は絶品中の絶品。舞台に衣装を着けて登場した菅きよみのフラウト・トラヴェルソとエルトマンの美しい歌声の掛け合いは素晴らし過ぎて、感極まります。バッハの世俗カンタータって、こんなに素晴らしいものとは・・・。高揚感でうるうる状態が続くsaraiでした。そのまま、お洒落なエンディングまですっかり楽しみました。

大満足したバッハの素晴らしい演奏でした。エルトマンが素晴らしかったのはもちろん、フラウト・トラヴェルソの菅きよみも名人芸。鈴木雅明率いるバッハ・コレギウム・ジャパンの演奏が素晴らしかったのはいつものこと。やっぱり、こういう演奏を聴くと、天才バッハの素晴らしさに感銘を受けますね。

今日のプログラムは以下です。

  ソプラノ:モイツァ・エルトマン
  バス:ドミニク・ヴェルナー
  オルガン:鈴木優人
  指揮:鈴木雅明
  管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン
  演出(農民カンタータ):佐藤美晴

  J. S. バッハ

  オルガン協奏曲 イ短調 BWV 593
  《裏切り者なる愛よ》 BWV 203
  《悲しみを知らぬ人》 BWV 209

   《休憩》

  農民カンタータ《おれらの今度の殿様は》BWV 212 ※演出付

コンサート終了後、急遽、サイン会が行われましたが、すっかり音楽に感銘を受けたので、今日はパスしましょう。それにアムステルダムでエルトマンのサインをもらい、2ショットの写真を撮らせてもらったばかりだしね。


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       バッハ・コレギウム・ジャパン,  

アンネ・ソフィー・フォン・オッター・リサイタル@東京オペラシティホール 2015.9.25

美しい歌声に酔いしれた一夜でした。

スウェーデンを代表するメゾソプラノ歌手フォン・オッターの久々の来日公演です。9年ぶりの来日だそうです。saraiの大好きなメゾソプラノ歌手は皆、ほとんど日本に来ませんね。ガランチャは一度も来ていない筈だし、バルトリも来たことがあるのかしら。ということで、今日は絶対に聴き逃せません。満を持して、出かけました。

考えてみれば、日本でフォン・オッターを聴いたのは、カルロス・クライバーの《薔薇の騎士》が最初で最後だったような気がします。あれは1994年でしたから、21年も前のことです。海外では、昨年もマドリッド・レアル劇場での《ホフマン物語》で彼女の歌うニクラウスを聴きました。そのときの記事はここです。

今日は前半では、シューベルトの「夕映えの中で」が出色の出来で、フォン・オッターらしい心情あふれる歌唱に心が熱くなりました。

後半は何と言っても、R・シュトラウスの素晴らしさがすべてでした。これは一緒に歌ったティリングも素晴らしい歌唱。やはり、R・シュトラウスはいいですね。特に最初に歌った「憩え、わが魂よ」には感動しました。やはり、フォン・オッターはマーラー、コルンゴルトなど後期ロマン派が素晴らしいことを再確認しました。

アンコールがさらに素晴らしかった! すべて、デュエットですが、昨年もマドリッドで聴いたホフマンの舟歌の素晴らしい歌声。ヘンゼルとグレーテルの二重唱で二人が声を抑えて歌ったときの見事な響き。ABBAのメンバーだったビヨルンとベニーによる2作目のミュージカル《クリスティーナ》の美しいメロディーも聴きものでした。フォン・オッターとティリングは同じスウェーデン出身の上、声質もよく合っており、二人のデュエット・アルバムも期待できそうですね。そういえば、ABBAもスウェーデンのグループでした。

今日のプログラムは以下です。

  メゾソプラノ:アンネ・ソフィー・フォン・オッター
  ソプラノ:カミラ・ティリング
  ピアノ:ジュリアス・ドレイク

  メンデルスゾーン:「挨拶」Op. 63-3 (デュエット)
  リンドブラード:「夏の日」(ティリング)
          「警告」(フォン・オッター)
          「少女の朝の瞑想」(デュエット)
  グリーク:「6つの歌」Op.48 (ティリング)
         1. 『挨拶』
         2. 『いつの日か、わが想いよ』
         3. 『世のならい』
         4. 『秘密を守るナイチンゲール』
         5. 『薔薇の季節に』
         6. 『夢』
  シューベルト:「ます」(フォン・オッター)
         「夕映えの中で」(フォン・オッター)
         「シルヴィアに」(フォン・オッター)
         「若い尼」(フォン・オッター)
  メンデルスゾーン:「渡り鳥の別れの歌」Op.63-2 (デュエット)
           「すずらんと花々」Op.63-6 (デュエット) 

   《休憩》

  マイアベーア:「シシリエンヌ」(ティリング)
         「来たれ、愛する人よ」(フォン・オッター)
         「美しい漁師の娘」(フォン・オッター)
  マスネ:「喜び!」(デュエット)
  フォーレ:「黄金の涙」(デュエット)
  R・シュトラウス:「憩え、わが魂よ」(フォン・ オッター)
           「黄昏の夢」 (ティリング)
           「どうやって私たちは秘密にしておけるでしょう」(フォン・オッター)
           「密やかな誘い」 (ティリング)
           「明日!」(フォン・オッター)
           「チェチーリエ」 (ティリング)

   《アンコール》

  オッフェンバッハ:《ホフマン物語》より《舟歌》 (デュエット)
  ブラームス:4つの二重唱曲 Op. 61より第1曲《姉妹Die Schwestern》(デュエット)
  フンパーディンク:《ヘンゼルとグレーテル》より第2幕 第2場 ヘンゼルとグレーテルの二重唱《夜になってわたしが眠りにつくとAbends, will ich schlafen gehn》(デュエット)
  ビヨルン・ウルヴァース&ベニー・アンダーソン(ABBAのメンバー):ミュージカル《クリスティーナKristina fran Duvemala》より、《The Wonders》(デュエット)

最後にこういうリサイタルを企画してくれたAspenに感謝を捧げます。(saraiはAspenの回し者ではありませんよ。念の為(笑い))



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旅はひとやすみ・・・音楽シーズンに突入

《欧州鉄道周遊の旅》の再アップ中ですが、今日から10日間、秋の音楽シーズンに突入。怒涛の10日間連続、音楽三昧になります。旅の記事を愛読されているかたもしばらくは音楽記事にお付き合いくださいね。

前半3日間は歌姫とピアノ。

 ・フォン・オッター with ティリング
   スウェーデンを代表するメゾソプラノ歌手フォン・オッターの久々の来日公演です。saraiの大好きなメゾソプラノ歌手3人のうちの一人なんです。(残りはガランチャとバルトリ)
 ・バッハの農民カンタータ(バッハ・コレギウム・ジャパンとエルトマン)
   6月にアムステルダムでモイツァ・エルトマンのルルを聴き、そのときのサイン会で彼女からお誘いを受けたので、かけつけなくてはね。
 ・アンリ・バルダ・ピアノ・リサイタル
   隠れたピアノの名人のバルダの久しぶりの来日です。前回は体調が悪く、キャンセルになりましたから、今回こそは楽しみです。

中間4日間は巨匠ハイティンク指揮のロンドン交響楽団と都響
 
 ・ハイティンク指揮のロンドン交響楽団の3公演
   86歳の老巨匠ハイティンクの来日公演です。もう、これが最後かもしれません。帯同するピアニストも最高のピアニスト、ペライア。超豪華なコンサートです。
   曲目もハイティンクの得意とする曲目とくれば、期待するなというほうが無理。
    マーラー:交響曲第4番、ブルックナー:交響曲第7番、ブラームス:交響曲第1番
   ピアノ協奏曲は名曲です。
    モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番、ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番

 ・都響の定期演奏会
   ピアノのピーター・ゼルキンが登場して、ブラームスのピアノ協奏曲第2番。これも楽しみ。

後半3日間はハーゲン・カルテットのモーツァルト・ツィクルス

 本当はこのツィクルスは4日間でチケットも買ったのですが、上記のハイティンクのコンサートと重なったため、泣く泣く、初日を聴くのは断念。
   ハイドン・セット3曲、プロシャ王セット3曲、ホフマイスター、クラリネット五重奏曲(モーツァルトとブラームス、クラリネットはヴィトマン)

この後、また、3日後には、ウィーン・フィルの来日公演を聴きます。

ところで、再アップ中の旅記事には、以前のコメントも復活しました。記事の最後尾に付けましたので、ご覧下さい。


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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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金婚式、おめでとうございます!!!
大学入学直後からの長いお付き合い、素晴らしい伴侶に巡り逢われて、幸せな人生ですね!
京都には年に2回もお越しでも、青春を過ごし

10/07 08:57 堀内えり

 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

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