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謹賀新年!ジルヴェスターコンサート@みなとみらいホール 2012.12.31

昨日の大晦日は家族連れ立っての恒例の年越しコンサート、みなとみらいホールのジルヴェスターコンサートでした。
今回で14回目ですが、最初の1999年以来、欠かさずに通っています。第1回はみなとみらいホールの開館した年でした。最初は黒柳徹子と草野仁の世界不思議発見コンビの司会でした。2回目からは黒柳徹子一人の司会になり、多分、4回目からは現在の朝岡聡の司会になりました。当初は色んなジャンルの演奏家(横浜に縁のある人)が大勢参加していましたが、現在は絞った人数になっています。今回はすべてオーケストラ中心の選曲となり、方向性が定まってきました。コンサートの開始時間が9時からなので、その前に横浜近辺で大晦日のディナーを食べる習慣になっています。今年は元町・中華街にあるローズホテルのレストラン、ミリー・ラフォレでいただき、タクシーでみなとみらいホールに駆けつけました。

さて、今回のプログラムは以下です。

  音楽監督:池辺晋一郎
  指揮:飯森範親
  ヴァイオリン/エグゼクティブ・ディレクター:徳永二男
  司会:朝岡聡
  ヴァイオリン:漆原啓子、漆原朝子、小林美樹
  ピアノ:萩原麻未
  ソプラノ:半田美和子
  テノール:西村悟
  管弦楽:横浜みなとみらいホールジルヴェスターオーケストラ


  池辺晋一郎:ヨコハマ・ファンファーレ
  ワーグナー:歌劇「ローエングリン」より第3幕への前奏曲
  ドビュッシー:交響詩「海」より I.海の夜明けから真昼まで
  プーランク:オルガン協奏曲より抜粋 オルガン:浅井美紀
  マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より間奏曲
  アリア特集 ソプラノ:半田美和子 テノール:西村悟
   ヴェルディ:《仮面舞踏会》より“永遠に君を失えば”
   ベッリーニ:《清教徒》より“あなたの優しい声が”
   ジョルダーノ:《アンドレア・シェニエ》より“ある日、青空を眺めて”
   プーランク:《テレジアスの乳房》より“いいえ、旦那様”
   ヴェルディ:《リゴレット》より“あなたは心の太陽だ”

   《休憩》

  グリーグ:ピアノ協奏曲イ短調作品16より第1楽章 ピアノ:萩原麻未
  ヴィエニャフスキ:ヴァイオリン協奏曲第2番より第3楽章 ヴァイオリン:小林美樹
  サラサーテ:ナヴァラ ヴァイオリン:漆原啓子、漆原朝子
  ベートーヴェン:ロマンス第2番 ヴァイオリン:徳永二男
  ブリテン:青少年のための管弦楽入門より抜粋
  ストラヴィンスキー:春の祭典より抜粋
  グノー/バッハ:アヴェ・マリア ソプラノ:半田美和子 ピアノ:飯森範親、萩原麻未 ヴァイオリン:藤原浜雄
  J.シュトラウスⅠ:ラデツキー行進曲

まず、池辺晋一郎のヨコハマ・ファンファーレで厳かに開幕。この曲はこのみなとみらいホールのジルヴェスターコンサートのために作曲された曲で、金管楽器とオルガンで演奏されます。池辺晋一郎は現在、みなとみらいホールの館長でもあります。

次は、歌劇「ローエングリン」の第3幕への前奏曲です。この曲はテレビ番組のテーマ曲として流されており、耳にたこができるほど馴染んでいます。まあ、ワーグナーらしい名曲ですね。なかなか迫力のある演奏でした。ワーグナー生誕200年を記念しての演奏でした。

次は、交響詩「海」です。綺麗な演奏ですが、ディナーのワインの酔いもあり、ふらっときます。

次は、プーランクのオルガン協奏曲です。これもフランス音楽で、プーランクはフランス6人組の一人で、新古典の作曲家ということで、少し、退屈な曲を予想していたところ(saraiはまったく未聴の曲です)、オルガンの重厚な響きや軽妙な響きの味わい、対比する弦楽器の響きとの交錯で聴き応えのある曲でした。こういう珍しい曲は抜粋ではなく、全曲聴かせてもらいたかったところです。

次は、歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲です。通俗名曲と言ってもいい程の耳馴染みのある曲です。ただ、この短調の悲しく美しい調べを聴くと、歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」の悲しい物語が想起されて、saraiの胸は一杯になってしまいます。オペラはいいなあ。

次は、そのオペラの名曲のアリア特集です。まずは生誕200年のヴェルディです。《仮面舞踏会》から、ボストン総督リッカルドのアリアです。テノールの西村悟の声は、明るく、軽めで、声量は十分ですが、どうもこの役には合わない感じです。
《清教徒》の狂乱の場はソプラノの半田美和子が歌います。このコロラトゥーラの難曲をよく歌っていましたが、どうしても、グルヴェローヴァやネトレプコの名唱と頭の中で比べてしまい、物足りなさを感じてしまったのも事実。贅沢過ぎることはよく分かっているんですけどね。
《アンドレア・シェニエ》のテノールのアリアは西村悟の明るい声質にマッチしており、とても気持ちよく聴けました。
《テレジアスの乳房》は初聴きですが、ソプラノの半田美和子がコミカルに楽しく歌ってくれました。まあまあってところでしょうか。
最後は《リゴレット》の2重唱を西村悟、半田美和子で歌いましたが、少しスケール感には欠けますが、ヴェルディの美しい旋律を堪能できました。
ここまでが前半です。

休憩後、グリーグのピアノ協奏曲です。前から気になっていた萩原麻未のピアノが初めて聴けるので、楽しみにしていました。パリのコンセルヴァトワールで学んだ人でフランスものを得意としている希有な日本人ピアニストだと認識していました。今日の曲はそういう意味では、少し期待とはずれていますが、まあ、実力のほどを聴きましょう。有名な出だしのピアノを聴いて、びっくり。こんなに力強いタッチとは予想していませんでした。終始、力強く、ピアノが響き、なかなかの演奏です。そして、第1楽章の終盤のカデンツァ・・・これは素晴らしい演奏でじっくりと聴きいってしまいました。なかなかのピアニストです。これだけの演奏ですべてを判断するのは難しいですが、今後、注目していきたい逸材のようです。

次は、ヴィエニャフスキのヴァイオリン協奏曲第2番です。小林美樹のヴァイオリンです。どうもこの手のロマン派の曲はsaraiには曲の技巧的な面ばかりが聴こえ、精神性はほとんど感じられません。偏見かもしれませんが、表面的な派手な響きばかりが耳につき、演奏がどうのこうのと言う以前の問題です。ということで評価はパスです。

次は、サラサーテのナヴァラです。初めて聴きます。2本のヴァイオリンとオーケストラの協奏曲です。サラサーテなので、ヴァイオリンの技巧が強調されている曲かと思いましたが、意外にシンプルな曲です。綺麗な響きを聴いて、おしまい。珍しい曲が聴けて、よかったなというところです。

次は、ベートーヴェンのロマンス第2番です。徳永二男のヴァイオリンは美しく響き、演奏は素直で丁寧な好感のもてる演奏で、ベートーヴェンの名曲を堪能できました。たまには、こういう名曲もいいものです。

今年最後の演奏曲はブリテンの《青少年のための管弦楽入門》です。ただし、曲の半分ほどをカットした抜粋版です。もちろん、解説抜きの演奏です。この曲は新年のカウントダウンにもなっていて、曲の終わりでぴったり新年を迎えるという趣向です。ヘンリー・パーセルの古典的な美しい主題の変奏とブリテンの主題が最後に交錯して、見事に1秒の狂いもなく、カウントダウン成功です。素晴らしい! 
そして、みなさん、新年、明けましておめでとうございます! 今年もよろしくお願いします。

新年の最初の音楽はお馴染みの《春の祭典》です。抜粋版ですが、新鮮な演奏で気持ちよく、新年をお祝いできました。また、今年の音楽ライフの始まりです。

新年2曲目はグノーのアヴェ・マリアです。最初はピアノとヴァイオリンで演奏されましたが、美しいヴァイオリンの響きにうっとりします。後半はオーケストラの伴奏でソプラノの半田美和子が歌います。演奏の質はともかく、心が洗われる思いで、新年を迎えることができました。

コンサートの〆は例年通りのラデツキー行進曲です。時差の関係から、世界で今年最初に演奏されるラデツキー行進曲ではないでしょうか。楽しく、気分が高揚したところで幕です。

さあ、今年はどんな音楽の感動が待っているでしょう。


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この記事へのコメント

1, ハルくんさん 2013/01/02 16:36
saraiさん、明けましておめでとうございます。
昨年中は大変お世話になりました。
本年もどうぞよろしくお願い致します。

横浜のジルベスターコンサートで素敵な年越しをされたようですね。
今年も楽しい旅行記とコンサート記事を楽しみにしています。

新しい年がsaraiさんにとりまして素晴らしい一年になるようにお祈り申し上げます。

2, saraiさん 2013/01/03 01:07
ハルくんさん、明けましておめでとうございます。
こちらこそ、大変お世話になりました。
ハルくんさんのブログはCDを聴く規範になっています。とても感性が合って、新しいCDへの出会いがあります。特にマーラー、ブルックナーはとても参考になります。
今年もお世話になりそうです。

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ジャンル : 音楽

 

saraiの音楽総決算2012:オーケストラ・声楽曲編

今年の音楽の総決算もいよいよ最後になりました。そして、ブログも今年の書き納めです。

今回はオーケストラ・声楽曲編です。
このジャンルは今年も素晴らしいコンサートが多く、感動、また感動でした。今年は国内の演奏家たちの活躍、特に東京都交響楽団の素晴らしい演奏が印象的でした。このなかで、ベストの選択は手に余るものがあります。saraiの感動の深さで選んでみました。
ちなみに昨年の結果はここです。

で、今年は以下をベスト10に選びました。

1位 《シューマン尽くし》2回目:ティーレマン+ウィーン・フィル@ウィーン楽友協会 2012.4.21
2位 シューマン/ピアノ協奏曲:ペライア+ラトル+ベルリン・フィル@フィルハーモニー 2012.4.13
3位 ベートーヴェン9番:ヤンソンス+バイエルン放送響@サントリーホール 2012.12.1
4位 マタイ受難曲:聖トーマス教会合唱団&ゲヴァントハウス管弦楽団@みなとみらいホール 2012.2.25
5位 メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲:ヒラリー・ハーン+ヤルヴィ+フランクフルト放送響@サントリーホール 2012.6.7
6位 マーラー4番:インバル+都響@横浜みなとみらいホール 2012.11.4
7位 マーラー「大地の歌」:インバル+フェルミリオン+ギャンビル+都響@サントリーホール 2012.3.29
8位 マーラー3番:インバル+都響@横浜みなとみらいホール 2012.10.27
9位 ブルックナー7番:ティーレマン+シュターツカペレ・ドレスデン@サントリーホール 2012.10.26
10位 シマノフスキ/ヴァイオリン協奏曲:庄司紗矢香+大野和士+都響@サントリーホール 2012.6.18
10位 ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第3番:上原彩子+ラザレフ+日本フィル@サントリーホール 2012.5.18
10位 ドヴォルザーク8番:フルシャ+プラハ・フィル@サントリーホール 2012.3.11

次点 ベートーヴェン/ピアノ協奏曲2番&マーラー1番:上原彩子+インバル+都響@東京芸術劇場 2012.9.15
次点 チャイコフスキー6番:フェドセーエフ+チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラ@サントリーホール 2012.10.15
次点 バルトーク:フルシャ+都響@サントリーホール 2012.12.15

1位から5位はすべて超弩級のコンサートです。無理して順位付けしたことをお断りしておきます。

ティーレマン+ウィーン・フィルは昨年までのプレートル+ウィーン・フィルの2連覇に続き、指揮者は別になったものの、今年もやはりウィーン・フィルの3連覇になりました。やはり、ウィーン・フィルは凄いですね。また、ティーレマンはオペラ部門と合わせて2冠に輝きました。saraiにとって、ティーレマンの時代が始まった記念すべき年になりました。フルトヴェングラーにも匹敵するシューマンの交響曲第4番を聴かせてくれました。ウィーン・フィルの高弦の輝きも忘れられません。それにウィーン楽友協会の響きの素晴らしいこと、最高です。

ペライア+ラトル+ベルリン・フィルのシューマンも快演でした。何といっても、ペライアの澄みきったピアノのタッチが最高でした。ベルリン・フィルは昨年に続き、第2位でウィーン・フィルの後塵を拝することになりました。この事態を打開するためには、ハイティンクかティーレマンが指揮することが必須でしょう。ペライアの世界最高のピアノでもウィーン・フィルの壁は厚いです。来年もティーレマン+ウィーン・フィルでベートーヴェンのチクルスを聴くことになるので、ラトル+ベルリン・フィルはやはり、苦しいと思います。もっとも来年はハイティンク指揮のロンドン交響楽団とコンセルトヘボウでブルックナーを聴くことになるので、高いレベルでの競争になりそうです。

ヤンソンス+バイエルン放送響は合唱団、ソリストも含め、圧倒的なベートーヴェン9番を聴かせてくれました。正直、これをトップに持ってくることも考えました。今でも迷っています。ただ、来年のティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェンのチクルスの存在が気になって、この結果になりました。

聖トーマス教会合唱団&ゲヴァントハウス管弦楽団のマタイ受難曲は異次元の素晴らしさ。同じ土俵で比べるものではないでしょう。とりあえず、このあたりに置かせてもらいます。人間の尊厳を歌い上げた第9、神の世界の清澄さを歌い上げたマタイ、いずれも人間の最高の文化遺産です。今年はマーラーの9番と比べなくてよかったという感じです。

ヒラリー・ハーンのメンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲は本心ではsaraiの一押しです。今年、最高に感じまくった演奏でした。少し、遠慮して5位に置きました。来年の5月のリサイタルでバッハの無伴奏を聴けるのが今から楽しみです。来年のピアノ・室内楽部門はペライア、ハーゲンと素晴らしいものが目白押しで、どんなことになるんでしょうね。

インバル+都響のマーラーはどれをとっても素晴らしく、完全にベルティーニのマーラーを過去のものとしています。感動の大きさ、総合力では本当はこれが1位なのかもしれません。すべてのマーラーで強い感動を与えてくれるインバル+都響は海外勢にも優っています。絶好調とも言えます。そのなかでも、第4番の素晴らしかったことは特筆できます。この曲でこんな強い感動は初めてです。フェルミリオンと共演した《大地の歌》も大変、感動しました。そして、長大な第3番は昨年のヤンソンス+コンセルトヘボウを上回る素晴らしい演奏でした。来年1月の第5番が大変、楽しみです。そして、最後の第9番は絶対に聴き逃せません。伝説的な名演になりそうな予感がします。

インバル+都響のマーラーが素晴らし過ぎて、ティーレマン+シュターツカペレ・ドレスデンの公演は9位にしか、位置付けられませんでした。とても素晴らしいブルックナーとワーグナーだったんですけどね。もうひとつ、感動に浸りきれなかったのがこの位置に甘んずることになった所以です。

さて、10位はどうしても外せない公演が残り、3つになってしまいました。演奏が素晴らしく、感動したのだから、仕方ありませんね、

庄司紗矢香のシマノフスキはとてもお気に入りになった演奏。上原彩子のラフマニノフは気迫あふれる切れ味鋭い演奏で、これもお気に入り。フルシャ+プラハ・フィルのドヴォルザークの第8番はこれまでのベストの演奏。いずれももっと上位にしたいものでした。

泣く泣く10位から外したけれど、あまりにもったいない演奏は次点の3つです。

上原彩子+インバル+都響のベートーヴェン/ピアノ協奏曲2番とマーラー1番は曲目的に損をしていますが、演奏レベルはとても高いものでした。
フェドセーエフ+チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラの《悲愴》はとても考えさせれる内容のある独特な演奏でした。
フルシャ+都響の演奏は常に素晴らしいですが、バルトークの《中国の不思議な役人》はsaraiをインスパイアしてくれる快演奏でしたし、次点には入れませんでしたが、マルティヌーとベルリオーズの幻想も納得の美しく、そして、考え抜かれた演奏でした。フルシャからは目を離せません。

最後に今年のコンサート・オペラ・リサイタルのなかで大賞を選定するとすれば、考えるまでもなく、

 ティーレマン、デノケ《パルジファル》@ウィーン国立歌劇場

になります。ワーグナーの最高にして、最後のオペラをイースターの時期にウィーン国立歌劇場で最高の演奏で聴けたのですから、当たり前と言えば、当たり前です。感動も尋常のものではありませんでした。生涯に何度聴けるかという素晴らしい音楽体験でした。昨年のネトレプコ、ガランチャの《アンナ・ボレーナ》に続き、ウィーン国立歌劇場が2連覇です。やはり、ウィーン国立歌劇場で聴くオペラは格別です。

また、来年の感動に期待しながら、今年の総括は幕としましょう。

今年も当ブログを読んでいただいたみなさんには感謝です。また、来年も引き続き、ご愛読ください。

saraiと配偶者は娘夫婦と一緒に今年最後のジルヴェスターコンサートにこれから出かけます。今年の聴き納めです。



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saraiの音楽総決算2012:オペラ・オペレッタ・バレエ編

さて、前回に引き続き、今年の音楽の総決算です。

今回はオペラ・オペレッタ・バレエ編です。
今年はオペラはまったく国内では聴きませんでした。1992年に国内でオペラを聴き始めてから、初めてのことです。今年はウィーン国立歌劇場やフォルクスオーパーの来日公演もありましたが、NBS決別宣言をしたこともあり、遂にこういうことになりました。今後も余程のことのない限り、国内でオペラを聴くことはないかもしれません。
そういうことでオペラ・オペレッタはすべて海外で聴きました。それらからの選定になります。
ちなみに昨年の結果はここです。

で、今年は以下をベスト4に選びました。バレエも初の選出です。

1位 ティーレマン、デノケ《パルジファル》@ウィーン国立歌劇場 2012.4.8
2位 ガランチャ、リドル、ペション《薔薇の騎士》@ウィーン国立歌劇場 2012.4.18
3位 ネメット70歳記念《チャルダッシュの女王》@ウィーン・フォルクスオーパー 2012.4.21
4位 エイフマン振付バレエ《アンナ・カレーニナ》@ウィーン国立歌劇場 2012.4.9

ティーレマン、デノケの《パルジファル》は今年の数少ないオペラ鑑賞は別にしても、最高のワーグナーでした。何といっても、現代最高のワーグナー指揮者であるティーレマンの指揮の素晴らしさに尽きます。こういうオペラ体験はなかなか出来るものではありません。今年はオペラはこれひとつしか聴かなかったとしても、十分、満足できたでしょう。どう称賛しても、称賛しきれないほどの感動の体験でした。

ガランチャがオクタヴィアンを歌った《薔薇の騎士》はガランチャのあまりのチャーミングさにすっかり参ってしまいました。話には聞いていましたが、最高のオクタヴィアンです。オックス男爵役のリドルの渋い魅力、ペション(パーション?)のピュアーな美声も合わせ、素晴らしいオペラでした。来年の6月もドレスデンのゼンパーオーパーにガランチャが出る《薔薇の騎士》を聴きに行く予定です。ティーレマンの指揮も楽しみです。

ウィーン・フォルクスオーパーの《チャルダッシュの女王》はネメットの70歳記念で多分、最後のフェリ役の公演でした。最後まで十分、楽しませてくれたネメットに感謝あるのみです。それにこの日の終演後はウィーンのオペレッタ好きが集合して楽しい一夜も持ちましたし、色々な意味で思い出に残ります。

バレエで初めて選出したのは《アンナ・カレーニナ》です。エイフマンの振付の激しいバレエですが、アンナ・カレーニナ役のダグマー・クローンベルガーの美しさは際立っていました。この日がウィーン国立歌劇場での《アンナ・カレーニナ》の最終公演になるようで、よいものを見ることができました。

数は少ないもののどれも素晴らしい公演で大変満足しました。

次回はオーケストラ・声楽曲編です。


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saraiの音楽総決算2012:ピアノ・室内楽編

今年もブログの締めくくりはsarai恒例の音楽総決算です。

今年は国内・海外合わせて、厳選したコンサート・オペラに計59回足を運びました。それらについてはすべて当ブログで報告済みですが、今回から3回のシリーズでそれらからベストの音楽会を選んで、今年の音楽の総決算としたいと思います。
今回はピアノ・リサイタルと室内楽編です。
ちなみに昨年の結果はここです。

今年は以下をベスト5に選びました。

1位 庄司紗矢香ヴァイオリン・リサイタル@サントリーホール 2012.10.30
2位 セルゲイ・アントノフ・チェロ・リサイタルwithイリヤ・カザンツェフ@上大岡ひまわりの郷 2012.11.11
3位 アンリ・バルダ ピアノ・リサイタル@上大岡ひまわりの郷 2012.7.8
4位 上原彩子ピアノ・リサイタル@横浜みなとみらいホール 2012.8.26
5位 パク・ヘユン・ヴァイオリン・リサイタル@紀尾井ホール 2012.4.27

庄司紗矢香ヴァイオリン・リサイタルはこれまでに聴いた庄司紗矢香の最高の演奏でした。特にシューベルトの幻想曲の素晴らしさと言ったら、ただただ感動するのみでした。長く彼女のコンサート・リサイタルに通いつめてきた甲斐がありました。来年はますます期待できそうです。5月のウィーン・デビュー(多分、初めてのウィーン登場?)に応援に行けないのがとても残念です。代わりにウィーン交響楽団との来日演奏を聴きます。ブラームスのヴァイオリン協奏曲です。

セルゲイ・アントノフ・チェロ・リサイタルはまったく期待を上回る素晴らしい演奏でとても感動しました。思わず、会場で彼のCDを買い求め、サインをいただいたほどでした。今までに聴いたチェロで最高の演奏で、こちらを今年のトップに選定したいくらいで、かなり迷ってしまいました。庄司紗矢香のリサイタルと甲乙付け難しっていうところです。

アンリ・バルダ ピアノ・リサイタルは今年聴いたピアニストでは断トツの素晴らしさ。特にこんなに素晴らしいラヴェルを聴いたのは初めてでした。ショパンもよかったしね。来年は都響の定期に登場するので、楽しみにしていましたが、残念ながら、ハーゲン弦楽四重奏団のベートーヴェン・チクルスと日程が重なるために聴けそうにありません。また、上大岡ひまわりの郷にも再登場するらしいので、それを待ちましょう。

上原彩子ピアノ・リサイタルは1月のサントリーホールでのリサイタルが少し期待外れだったので、それを払拭してくれたリサイタルでした。しかし、彼女には、こんなレベルでは満足できはしません。来年のサントリーホールでのリサイタルに捲土重来を期待しましょう。オール・ラフマニノフ・プログラムなので、期待したいところです。

パク・ヘユン・ヴァイオリン・リサイタルは昨年のリサイタルの不調をふきとばした会心のリサイタルでした。特に最後のプロコフィエフのヴァイオリン・ソナタ第2番の素晴らしい演奏には感動しました。それにしても、こんな素晴らしいヴァイオリニストのリサイタルの聴衆の少なさはどうしたことでしょう。とても残念です。音楽ファンの方達と感動を共有したかったものです。来年も紀尾井ホールでリサイタルがある筈です。

以上のほかに、番外として、もうひとつ。

菊池洋子ピアノ・リサイタル@紀尾井ホール 2012.2.16

とても気持ちのよいモーツァルトでした。

こうして書いてみると、弦楽四重奏曲を聴いていないことに気が付きました。来年は是非、聴きましょう。

次回はオペラ・オペレッタ編です。



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今日も力演!マルティヌーとベルリオーズの幻想:フルシャ+東京都響@東京文化会館 2012.12.20

今年最後の東京都交響楽団のコンサート、そして、saraiの今年最後のコンサートでもありますが、フルシャの指揮でマルティヌーの交響曲の初聴きというお楽しみのコンサートでした。マルティヌーは都響らしく、モダンで先鋭的な響きを期待していましたが、思いもしなかったボヘミアっぽい響きに唖然としてしまいました。マルティヌーはチェコの作曲家なので、驚くことはないかも知れませんが、予習したチェコ・フィルのCDでは、古いノイマン指揮のCDも最新のビエロフラーヴェク指揮のCDも民俗的な響きはなく、インターナショナルと言っていい現代的な響きに満ちていました。都響からボヘミアの響きを引き出したフルシャの指揮能力には驚くばかりです。都響がプラハのオーケストラに変身したようにさえ感じました。そして、ボヘミアの響きだけでなく、繊細さを極めた第1楽章、パワーフルな第2楽章、フィナーレのコラールに唸らされた第3楽章・・・とても魅了される演奏でした。期待を裏切らないフルシャと都響のコンビです。
続くメインのベルリオーズの幻想交響曲は都響の弦セクションの素晴らしさが際立つチャーミングで美しい演奏。終楽章の怒りの日の金管の咆哮と弦の響きには圧倒されました。大変な力演でした。聴き慣れた名曲も新鮮に聴くことができました。

さて、今日のプログラムは以下です。

  指揮:ヤクブ・フルシャ
  管弦楽:東京都交響楽団

  マルティヌー:交響曲第6番《交響的幻想曲》

  《休憩》

  ベルリオーズ:幻想交響曲 Op.14

まず、マルティヌーの交響曲です。最初はざわめきのような弦楽器の響きです。ここでまず、びっくり。CDでは弦楽器すべての演奏と思っていましたが、弦楽器の各セクションのトップ奏者だけの演奏でした。すべての弦が演奏しているかの如く、よく響いています。弦のざわめきの上にトランペットのメロディーが乗って、印象的なパートです。CDでは不安感を覚える部分ですが、何故か、今日の演奏では不安感は覚えません。繊細な表現だけを感じます。続いて、チェロの独奏でドヴォルザークの《レクィエム》の動機です。ドヴォルザークの《レクィエム》自体は聴いたことがないので、原曲との比較はできませんが、ボヘミア的なメロディーではありません。チェロに引き続いて、フルートがこの動機を続けます。楽器を引き継ぎながら繊細な演奏が続いていきます。しかし、交響曲とは言え、この動機が主題になって展開されるような構造ではありません。ロマン派を新古典的に焼き直したと言えば、いいんでしょうか。自由な音楽です。反面、メロディーは分かりやすいものの、曲を構造的に捉えることも、訴えかける音楽的な意味合いを捉えることも、正直言って、難しい音楽です。色んな要素が合わさって、複雑化しており、奥行きの深い音楽になっています。何度聴いても飽きることのないバッハのようです。マルティヌー本人はこの曲を交響曲とは呼ばずに、交響的幻想曲と命名したとのことです。ベルリオーズの幻想交響曲を意識していたようです。ただ、それは構造的なことだけのようで、ベルリオーズを連想させるような曲想は一切、感じられません。第1楽章は繊細な響き、新古典主義を思わせる響きを楽しみ、最後は冒頭の弦のざわめきに戻って、終わります。なかなかの聴きごたえです。
第2楽章も弦のざわめきで始まりますが、今度は弦セクション全体の演奏です。CDでは、このあたりの演奏楽器がソロか、合奏かはよく分かりませんでした。ヴィオラの美しい旋律が始まり、その旋律が次々と色んな楽器に引き継がれていきます。途中、オーボエの印象的な暗い旋律が始まると、各種の打楽器が加わって、賑やかな演奏に変容していきます。演奏は高揚していき、フルシャも大きな身振りで激しく体を動かします。最後はこの高揚がいったん収まって、この楽章は終了。
最後の第3楽章が始まります。悲劇的とも思える旋律が弦楽器で提示されます。序奏のような部分が終わると、第1楽章の冒頭に出た《レクィエム》の動機が、今度はチェロ合奏で提示されます。この動機が各楽器で繰り返されていきます。ここに至って、今まで感じていたCDの演奏との違和感が何だったのか、ようやく、気付きました。響きがとてもボヘミア的なんです。CDと同じ旋律の筈なのに、何故か、ボヘミアの響きを感じます。遡って、前の楽章もボヘミア的だったと、今更ながら、感じます。もちろん、第1楽章には、ドヴォルザークの《新世界から》のパロディーとも思しきボヘミア風の旋律は少しだけ、登場はしますが、CDでは、かえって、そのボヘミア風の旋律と対比して、大部分がインターナショナルな響き(新古典的な響き)に聴こえていたんです。フルシャの指揮では、新古典的な素材もボヘミア風の味付けで聴こえます。そう言えば、この交響曲第6番だけは、アメリカとヨーロッパの両方の地で作曲されたそうです。1番から5番までの交響曲はすべて、アメリカで作曲したものです。ヨーロッパといっても、マルティヌーは共産政権下のチェコには戻れなかったそうですが、意識下でボヘミアを感じていたのかも知れません。フルシャ以外でこのような演奏をした指揮者がいるのかは分かりませんが、かなり、独特な解釈なんでしょう。この曲はシャルル・ミュンシュとボストン交響楽団に捧げられたそうで、初演もそのコンビです。一度、そのコンビの演奏を聴いてみたいものですが、想像では、ボヘミア的ではなく、繊細で美しい叙情的なものではないでしょうか。ベルリオーズの幻想交響曲の響きを想像してしまいます。
第3楽章はフィナーレに向けて、テンポを上げて、高揚していきます。頂点でタムタムの一撃があり、また、祈るような《レクィエム》の動機に戻ります。そして、コラールの旋律がその上に乗ってきて、静かに祈りながら、しみじみとした最後になります。今日の演奏では、このコラールも、コラールというよりもボヘミアの民俗旋律に聴こえてしまいました。とてもユニークな演奏ですが、質も高く、興の尽きない演奏でした。
これがボヘミア風に解釈した新古典の幻想交響曲だとすれば、この後、演奏されるベルリオーズの幻想交響曲はどんな演奏になるんでしょう。20分の休憩の間中、それを考えていて、あっと言う間に休憩時間は終わってしまいました。もちろん、いかなる想像も結論には達しないままでした。

ベルリオーズの幻想交響曲です。いかなる想像も無駄に終わりました。実にオーソドックスで、繊細で丁寧な演奏でした。もちろん、ここぞというところは、トゥッティで凄まじい音響です。
予習は定番中の定番、ミュンシュ指揮のパリ管弦楽団のLPレコードを聴きました。何十年ぶりかです。今聴いてみると、本当に見事な演奏で、非の付けどころがないばかりか、いきいきとした演奏で、この曲の魅力を余す所なく、表現しています。あまりの素晴らしさに古いミュンシュ指揮のボストン交響楽団のCDまで聴いてしまいました。この演奏はsaraiが少年時代に夢中になって聴いていた、懐かしい演奏です。40年以上も前に聴いた演奏です。この演奏は音質もよく、パリ管弦楽団にも引けをとらない演奏でした。ただ、これから聴くかたはパリ管弦楽団のほうが、より彫りの深い演奏でお勧めできます。
で、この日の演奏と言えば、美し過ぎるというのが難点というくらいの素晴らしい演奏。どの楽章も第1ヴァイオリンの女性奏者たちの美しい響きを聴くだけでも十分です。フルシャも乗りに乗った指揮ぶり。今後、フルシャ指揮のベルリオーズも、インバルのマーラーやショスタコーヴィチと並んで、看板にしてもらいたいくらいです。上のほうに書いたとおり、終楽章のフィナーレの凄まじい演奏には、心躍るものがありました。今年絶好調だった都響を象徴するような演奏でした。

これで、今年は大晦日のジルヴェスターコンサート(みなとみらいホール)を残すのみです。今年は4月のヨーロッパ遠征、そして、秋以降の感動のコンサートの連続と充実した音楽ライフでした。その最後をしめくくる素晴らしいコンサートで満足です。
近く、恒例?の今年聴いたコンサートのベストの特集も予定しています。一緒に感動をふりかえってみてくださいね。



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鮮烈にして狂奔に突っ走る!バルトーク快演奏・・・フルシャ+東京都響@サントリーホール 2012.12.15

今年最後の東京都交響楽団のサントリーホールでの定期演奏会はフルシャの指揮でバルトークとコダーイのハンガリープログラムです。このところ、好調を持続し、名演を連発している都響を毎回素晴らしい指揮で唸らせてくれるフルシャがどうコントロールし、インスパイアするか、期待が高まります。
今日のプログラムは以下です。

  指揮:ヤクブ・フルシャ
  ピアノ:ゲルハルト・オピッツ
  管弦楽:東京都交響楽団

  バルトーク:ピアノ協奏曲第2番

  《休憩》

  コダーイ:ガランタ舞曲
  バルトーク:「中国の不思議な役人」組曲

最初はオピッツのピアノでバルトークの名作、ピアノ協奏曲第2番です。saraiは第3番が一番、好きですが、第2番はバルトークの精気あふれる作品で、絶頂期の傑作とも言えます。エネルギー充填度の高さから、気分が高揚する作品です。今日の都響は矢部達哉がコンサートマスターを努め、四方恭子も並ぶ万全の布陣。第1ヴァイオリンの女性奏者の顔触れも充実しており、ベストメンバーと思えます。ただ、ベートーヴェン、ブラームスを主なレパートリーとするオピッツがどんなバルトークの演奏をするか、正直、不安です。ミスマッチのような気もします。エレーヌ・グリモーか、コチシュ・ゾルターンで聴きたいところです。実際、予習したのは以下のCDです。

 ピアノ:コチシュ・ゾルターン、指揮:イヴァン・フィッシャー、管弦楽:ブダペスト祝祭管弦楽団

このCDは文句も付けどころのない演奏でした。

さて、いよいよピアノ独奏とともに第1楽章が開始。オピッツはてっきり、ピアノをがんがん叩いてくると思っていたら、実に軽妙に肩の力が抜けた演奏で、いつもよりも音量も抑え気味です。ベートーヴェンのソナタを弾くときよりも、かえって、手も回っています。オーケストラの管楽器のほうがうるさいくらいに感じます。最高の演奏とは言いませんが、なかなかの好演です。ところで、迂闊にもsaraiは第1楽章では、弦楽器の出番がまったくないことに今まで気が付いていませんでした。管楽器と打楽器だけで、フルシャが見事なサポートをして、満足の第1楽章です。
第2楽章は、休んでいた弦楽器が低い音量ながら、夜の闇、あるいは深い霧を思わせる幻想的な響きで音場を作り出します。そこにピアノが光点をあてるように、静かな響き、しかし、くっきりした響きで侵入してきます。バルトークの作り出した20世紀の抒情はこういう形です。古典派の音楽がここまで変容してきたことに思いを馳せます。見事な演奏です。この楽章は中間部でテンポを上げ、盛り上げて、また、幻想的な抒情に戻ります。
そして、ほとんど休みなしに第3楽章に突入します。この音楽はバルトークの書いた音楽のなかでも最高傑作のひとつと言えるでしょう。高い緊張感、複雑なリズムでの躍動感、熱い激情、まったく隙のない構成です。オピッツ、都響は見事にそれを演奏し、中心にはフルシャの巧みなコントロールがあります。聴集も沸きましたが、まさに見事なバルトークでとても満足しました。
オピッツのピアノも素晴らしく、ベートーヴェンでも、こういう風に力の抜けた演奏ができればいいのになあとも思いました。

休憩後、コダーイの作品です。コダーイはバルトークの盟友でもあり、一緒にハンガリーの民謡を収集したりしましたが、この作品はハンガリー民謡というよりも、ロマの音楽をベースにしたエンターテインメント性の高い作品です。こういう楽しい作品でも、フルシャは曲のつかみが見事で素晴らしい演奏に仕上げてきました。精神性をうんぬんする作品ではないので、素直にロマの音楽を楽しみました。それ以上でもそれ以下でもありません。

最後はまた、バルトークの作品に戻って、これが今日のメイン曲になります。これは超素晴らしい演奏で、久しぶりにバルトークの音楽の真髄に触れた思いです。「中国の不思議な役人」はもともと、パントマイムのための舞踊音楽ですが、その過激な内容のために演奏機会がなく、バルトーク自身が演奏会用の組曲に編曲し、今日はその組曲版の演奏です。実際には、全曲の最初の3分の2くらいをそのまま抜き出し、コーダを付け加えただけの組曲で音楽的には、全曲とそんなに違っているわけではありません。ただ、今日、実際に聴いた感覚では、組曲版を聴くということは、踏み込んだ言い方をすれば、音楽の背後にあるパントマイム舞踊音楽としての物語性を排除し、純粋音楽、もっと言えば、絶対音楽として、この音楽を成立させてしまうことになってしまうと感じました。バルトーク自身の意図とは異なるかもしれませんが、saraiは物語性を忘れて、音楽の自在な響き、ダイナミズム、シャープなリズムだけで高揚しました。フィナーレに向かっての複雑に絡み合ったリズムの饗宴、それは狂気そのものにも思える凄まじさで、圧倒されつくしました。フルシャの意図ももしかしたら、そのあたりにあり、あえて、全曲版を避けたのではないかとも深読みしてしまいました。それにしても、フルシャの高い要求に応えた都響の高いレベルの合奏力には舌を巻きました。フルシャ、そして、インバルの振るときの都響は常に素晴らしい高みに上り詰めます。

来週は東京文化会館で今年最後の都響の定期演奏会です。そして、フルシャがチェコの作曲家マルティヌーの交響曲第6番を振ります。saraiにとっても今年最後のコンサートです(ジルヴェスターコンサートは別として)。きっと、素晴らしい音楽体験が待っている予感がします。



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来年のティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルス@サントリーホール

迂闊でした。ティーレマンに入れ込んでいるsaraiですが、本当に来年、夢のようなコンサートがあるなんて、今まで気が付きませんでした。
先日、お友達からはそういう情報を聞いたのですが、まさか、本当のこととは思えなかったんです。音楽の友9月号には、この情報は掲載されていたんですね。
土曜日のサントリーホールでのヤンソンス+バイエルン放送響のベートーヴェン交響曲第9番を聴いた際に、サントリーホールの来年のコンサートカレンダーをいただいたら、この情報が目に飛び込んできて、頭をガーンとやられた感じです。
詳細な日程は決まっていないようで、以下のように書かれていました。

2013年11月8日~17日の10日間がウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン 2013

この間に以下のベートーヴェン交響曲チクルスとベートーヴェン ピアノ協奏曲チクルスがあります。

クリスティアン・ティーレマン指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
<ベートーヴェン 交響曲チクルス>(第1日~第4日)
 第1日 交響曲第1番、第2番、第3番
 第2日 交響曲第4番、第5番
 第3日 交響曲第6番、第7番
 第4日 交響曲第8番、第9番

ルドルフ・ブッフビンダー指揮&ピアノ ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
<ベートーヴェン ピアノ協奏曲チクルス>(第1日・第2日)
 第1日 ピアノ協奏曲第2番、第3番、第4番
 第2日 ピアノ協奏曲第1番、第5番

チケットの発売は2013年6月を予定しているそうです。
ウィーンでのチクルスは大変評判になり、ライブのCD、DVDが発売されています。今や、ウィーン・フィルにとって、このティーレマンとのベートーヴェン交響曲チクルスは看板メニューともなっています。
saraiとしても、是非とも行きたいところですが、財政的な問題があります。過去のウィーン・フィル来日公演の価格を考えると、ベートーヴェン交響曲チクルス4回全部行くと、S席では15万円近くすると予想できます。うーん、悩ましい。
また、11月8日の初日は予定していたインバル+都響のマーラーチクルスの横浜みなとみらいホールでの第7番とバッティングします。
大人の解決案としては、4回すべて行くのではなく、半分程度に絞り込むというのがよさそうです。絞るとしたら、後半の第6番~第9番でしょうか。でも、そう割り切れないのが、音楽ファンです。とても大人になりきれません。やっぱり、ティーレマンのベートーヴェン交響曲チクルスはいいだろうなあ。
来年はティーレマンを追っかけて、ドレスデンまでオペラを聴きに行くほどの入れ込みようなんですからね。

これまで聴いたティーレマンのコンサート/オペラについて、まとめてみます。

 2011.4.16 ミュンヘンフィル《オールR・シュトラウス》@ミュンヘン・ガスタイク 
 2012.4.8 ワーグナー《パルジファル》@ウィーン国立歌劇場
 2012.4.20 ウィーン・フィル《シューマン尽くし》1回目@ウィーン楽友協会
 2012.4.21 ウィーン・フィル《シューマン尽くし》2回目@ウィーン楽友協会
 2012.10.26 ブルックナー第7番、シュターツカペレ・ドレスデン@サントリーホール

いずれも素晴らしいものでした。日本にいながらにして聴ける公演は聴き逃したくない気持ちです。
とりあえず、ウィーンでのライブ公演のDVDでも見ながら、これからの方針を考えましょう。
そうそう、ブッフビンダーのベートーヴェン ピアノ協奏曲チクルスも大変、魅力的ですが、とてもそこまでは無理ですね。残念なことです。

来年のサントリーホールでの公演で聴き逃せないのはもうひとつ、10月24日のマレイ・ペライア・ピアノ・リサイタルです。曲目はまだ分かりませんが、何を聴いても素晴らしいこと、間違いなしでしょう。
11月はウィーン・フィルのほか、ヤンソンス指揮コンセルトヘボウ管弦楽団、ラトル指揮ベルリン・フィルも来日するようで、3強揃い踏みのようですね。



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この記事へのコメント

1, 白ネコさん 2012/12/25 00:29
ティーレマン、初めて観たのは93年のベルリン・ドイツ・オペラでの「ローエングリン」でしたが、近年ますます進化していますね。今年10月のシュターツカペレ・ドレスデン来日公演は仕事の都合で名古屋で聴きましたが、やはりワーグナーが素晴らしかった。特に「リエンチ」は、来年の記念年でこのオペラを振る予定だけに活力いっぱいで圧倒的でした!
今週はNHKFMのバイロイト音楽祭録音から「オランダ人」と「タンホイザー」をぜひ聴きます。

2, saraiさん 2012/12/25 01:22
白ネコさん、初コメントありがとうございます。

ずい分、若い頃のティーレマンを聴かれているんですね。確かに彼のワーグナーのオペラは素晴らしいです。今後の活躍が楽しみですね。

また、コメントお寄せください。

3, クロワッサンさん 2013/01/21 13:04
はじめてコメントさせていただきます。
ウィーンフィルの日本公演に行きたいと思っております。
インターネットで少し調べてみると
チケットは発売日即完売となり大変入手が困難
というような情報が目につきました(本当でしょうか?)。
そこで、確実にチケットを入手するために、
公演日程・内容や、チケット発売日は、何をウォッチしていればよいか、ご教示いただけないでしょうか。
素人質問で大変恐縮ですが、どうぞよろしくお願いいたします。

4, saraiさん 2013/01/21 15:59
クロワッサンさん、初めまして。saraiです。

サントリーホールでの公演については、サントリーホールのホームページを見るか、サントリーホールに電話をして尋ねてみてください。現在はまだ、当ページの情報を超える内容はないようです。
チケットの入手は人気公演となれば、ウィーン・フィルに限らず、国内外大変なことは当ブログでも、ご紹介しているとおりです。

一昨年、saraiはウィーン・フィルをよい席で聴くために、宮崎公演まで遠征しました。

では、お互い、頑張って、チケットをゲットしましょう。

5, クロワッサンさん 2013/01/22 14:32
saraiさま

早速にお返事いただきありがとうございました。
やはり、会場のホームページをまめにチェックするのが一番ですね。
頑張ってチケットをゲットしたいと思います。

これからもブログを楽しみにしております。
ありがとうございました。

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ただただ感動!ヤンソンス+バイエルン放送響のベートーヴェン交響曲第9番@サントリーホール 2012.12.1

昨日はダブルのコンサートでした。最後のベートーヴェンの交響曲第9番が凄過ぎて、すぐに感想を書く気には、とてもなれませんでした。1日遅れのレポートになります。
お昼は横浜・上大岡のひまわりの郷でのアンヌ・ケフェレックのピアノ・リサイタル。とても気持ちのよいピアノの響きに満足したリサイタルでしたが、このリサイタルのレポートは後回しにさせていただきます。
夜はサントリーホールに移動して、ヤンソンス指揮のバイエルン放送交響楽団でベートーヴェンの交響曲第8番と第9番を聴きました。
前半の交響曲第8番は大変に切れのいいアンサンブル、特に弦楽セクションが素晴らしく、ちょうど1年ほど前にウィーン楽友協会で聴いたウィーン・フィルの演奏ウィーン楽友協会で聴いたウィーン・フィルの演奏と拮抗する出来で大いに満足しました。ウィーン・フィルのコンサートでは、この交響曲第8番がメインの曲目でした。この日のコンサートはこの交響曲第8番だけ聴いて、サントリーホールを後にしても、大満足できる気分でした。それほどの素晴らしさでした。
休憩後は、まるでおまけのような形の交響曲第9番でしたが、さすがに緊張して、聴き始めました。生で聴くのは実に久しぶりで、前にいつ聴いたのか、思い出せないほどです。この日に向けて、ちゃんと予習しましたが、交響曲第9番と言えば、やはり、フルトヴェングラーを置いて、ほかはないでしょう。予習したのは3つの伝説的な名演です。

 1942年のベルリン「第9」 幻のメロディア 青トーチ(たいまつ)盤からの復刻 ベルリン・フィル オーパス蔵盤
 1951年の戦後バイロイト再開の年の記念演奏会の録音、最も有名な「第9」 バイロイト祝祭管弦楽団 ザ・グレートEMIレコーディングス
 1954年のフルトヴェングラーが亡くなる直前のルツェルン音楽祭の「第9」 フィルハーモニア管弦楽団 ターラ盤

フルトヴェングラーの「第9」については、ハルくんさんのブログに詳しく紹介されています。どの演奏も素晴らしいの1語ですが、共通して言えるのは、凄まじいばかりの推進力です。圧倒的で否応なしに感動してしまいます。

久しぶりの生演奏の交響曲第9番・・・この曲はやはり特別な輝きに満ちている超名曲でした。今更ながら、そんなことを書くのも何ですが、頂点を極めた音楽であることを改めて感じました。そして、昨日の演奏の素晴らしさと言ったら、とても表現のできないものです。指揮のヤンソンスは以前に比べて、明らかに芳醇の時期を迎えたようです。かなり、頬がこけて、若々しさは失われましたが、それ以上に音楽的に充実してきました。そして、彼と相性がよいバイエルン放送交響楽団のとびっきりの合奏力、こんなに精緻な演奏が可能なのかと唖然としてしまいました。それは時として、わずかな破綻も引き起しましたが、その破綻によって、かえって、どれほど高精度な演奏をしているのか、確認できたほどです。それにしても弦楽アンサンブルのシャープな響きの素晴らしさと言ったら、驚くほどです。管では、ホルンの見事な演奏に感服。ベートーヴェンの交響曲では、ホルンの役割が重要なことを再認識しました。
合唱はバイエルン放送合唱団です。日本人歌手の姿が多かったので、少し、日本人の助っ人で増量したのかもしれませんが、素晴らしい合唱でした。特に女声の澄み渡るような響きには、心が洗われました。
独唱陣も最高の出来でした。
 ソプラノ:クリスティアーネ・カルク
 アルト:藤村美穂子
 テノール:ミヒャエル・シャーデ
 バス:ミヒャエル・ヴォッレ
バスのヴォッレはたっぷりした声量で、堂々たる歌いぶり。往年のエーデルマンにも比肩できる歌唱でした。テノールのシャーデは持ち前の美声に加え、張りのある高音で魅了されます。ヘルデン・テノールとはまた違った形での歌唱に満足です。女声の二人も好調でした。4重唱では、大変、感動し、涙が滲みました。
第1楽章は宇宙を感じさせられるスケールの大きな演奏で、強奏はまるでビッグ・バンのようでした。
第2楽章は切れのあるダイナミックな演奏で、オーケストラの実力を思い知らされました。
第3楽章は独唱者たちの入場もあり、再スタートのような形でした。その音楽の神聖さは宗教的にも思えますが、自然に対する人間の思いを最高に表現した、崇高な音楽です。ベートーヴェンが到達した最高峰と感じさせられる、素晴らしい響きに満ちていました。ヤンソンスとバイエルン放送交響楽団の達成したものの大きさには感動するしかありません。この交響曲はここで終わっても、偉大な音楽です。
第4楽章はオーケストラ、合唱、独唱のすべてが完璧に融合し、巨大な構造物を形作っていました。そして、何といっても美しい! 人間愛の豊かさも限りありません。フィナーレにすべてが集約されていくのは、聴いている自分も飛翔していくような感覚を覚えます。

超弩級の音楽、演奏でした。こういう音楽に出会える人生に感謝あるのみです。



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アンヌ・ケフェレック・ピアノ・リサイタル@上大岡ひまわりの郷 2012.12.1

順序が逆になってしまいましたが、一昨日のダブルのコンサートのお昼の部のアンヌ・ケフェレックのピアノ・リサイタルについてレポートします。上大岡ひまわりの郷コンサート・シリーズの2012年秋編の3回目、つまり、最後のコンサートです。

このフランス人女性ピアニストは初聴きです。プロフィールによると、相当のキャリアを積んでいるようで、大変期待できそうです。

プログラムは以下です。

  ピアノ:アンヌ・ケフェレック

  ヘンデル:パッサカリア ト短調(鍵盤楽器のための組曲(クラブサン組曲) 第7番 ト短調(HWV.432)より)
  J.S.バッハ:コラール「来たれ、異教徒の救い主よ」BWV.659a(ブゾーニ編)
  は(オーボエ協奏曲ニ短調より(J.S.バッハ編))
  ヘンデル:メヌエット ト短調(鍵盤楽器のための組曲(クラブサン組曲) 第2巻第1番 変ロ長調(HWV.434)より)
  J.S.バッハ:コラール「主よ、人の望みの喜びよ」(ヘス編)
  ヘンデル:シャコンヌ ト長調(鍵盤楽器のための組曲(クラブサン組曲) 第2巻第2番 変ロ長調(HWV.435))
  ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番 嬰ハ短調 Op.27-2「月光」

《休憩》

  ラヴェル:古風なメヌエット
  ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
  ドビュッシー:映像 第1集
  ドビュッシー:映像 第2集

   《アンコール》
     ショパン:幻想即興曲 嬰ハ短調 Op.66
     サティ:グノシエンヌ 第1番

このプログラムをながめると、前半のベートーヴェン以外の6曲の選曲が素晴らしいです。特にヘンデルの鍵盤楽器のための組曲からの3曲が楽しみです。滅多に聴けませんものね。
最初はヘンデルのパッサカリアです。この曲は組曲第1巻1第1番~第8番に含まれています。パッサカリアはそのうち、第7番の組曲の終曲です。たいていはチェンバロで弾かれることが多く、CDではスコット・ロスの素晴らしいチェンバロ演奏(第1巻全曲)を聴くことができます。しかし、ピアノ演奏版は意外に少なくて、今回はグルダのピアノ名曲集のCDで聴きました。ヘンデルらしく、奔放でありながら、屈託のない表情の耳に心地のよい曲です。固唾を飲みながら、ケフェレックのピアノの響きを待ちます。彼女の落ち着いた大人の雰囲気からは、叙情的な響きが聴こえてくるだろうと思っていましたが、案に相違して、しっかりと芯のある強い打鍵のダイナミックと言っていいほども響きが聴こえてきました。もちろん、曲自体がスケールの大きな曲なので、こういう風に弾くのが正解でしょう。グルダの演奏にも引けをとらない演奏で、ヘンデルの鍵盤楽器音楽を満喫できました。
2曲目のバッハのコラールもあまり抒情に流されず、しっかりとした演奏です。響きも綺麗ですが、弱音のピュアーな響きがもうひとつには感じます。これは贅沢な要求でしょう。
3曲目はマルチェッロのアダージョです。バッハがチェンバロ用に編曲したものです。とても美しい曲です。あまり、情緒的にならない演奏で気持ちよく聴けます。ここはうっとりと彼女のピアノの響きに身を委ねるのみです。
4曲目はヘンデルのメヌエットです。この曲は組曲第2巻第1番のなかの4曲の最後の曲です。第3曲はブラームスのピアノ曲の代表作である《ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ》で知られている有名な曲です。この組曲第2巻第1番は若き日のアンドラーシュ・シフの素晴らしい演奏がCDで聴けます。4曲ともヘンデルの世界に浸り込んで、うっとりとして聴ける超お勧め盤です。メヌエットも美しいこと、この上なしという演奏です。ケフェレックの演奏もとてもよかったのですが、ちょっとシフの演奏には及びませんね。ピュアーな響きが必須ですし、シフが少し、崩し気味に弾いているのが何とも言えないので、誰が弾いても対抗するのは困難でしょう。ケフェレックの演奏もとてもよかったんです。
5曲目はバッハのコラールです。超有名曲です。予習はピアノ編曲したヘス自身の演奏を聴きました。ケフェレックの演奏はコラールがしっかりと響き、とても素晴らしいものでした。バッハの素晴らしさを満喫できました。
そして、6曲目はヘンデルのシャコンヌ、これでバロックの名曲集の〆です。力強く、華麗にシャコンヌが響きわたります。この曲には、ケフェレックの芯のある音色にぴったりと合います。やがて、中間部にはいり、曲想が短調に変わります。実に美しい部分ですが、ここは少し物足りない演奏です。予習で聴いたのは、マレイ・ペライアの演奏ですが、素晴らしく叙情的な演奏で、うっとりさせられました。それには及ばない感じで残念です。最後は華麗に締めくくられて、見事なフィナーレでした。
この6曲はほとんど休止なしで弾かれましたが、バロックの名曲揃いで大いに楽しめました。これを機にヘンデルの器楽曲にはまってしまいそうです。まるで、ヘンデルのオペラのアリアを聴いているような感覚で、組曲が楽しめることが分かりました。

前半の最後はベートーヴェンの「月光」ソナタです。第1楽章はその標題のもとにもなった美しく、叙情的な曲です。ここまで書いてきたことでお分かりだと思いますが、彼女の演奏は叙情的な曲よりもダイナミックで律動的な曲のほうに真価を発揮します。それでも、このソナタは芯のある、しっかりした響きで弾かれても、深遠を感じることができます。ソロモンの演奏はその代表格でしょう。ケフェレックの演奏は、そこまでには達しません。まあ、この曲は名曲ですから、聴いていて、うっとりはしました。彼女の演奏が真価を発揮したのは、強く、激しい第3楽章です。乗りの良い演奏で、魂の燃焼を感じます。素晴らしいです。saraiとしては、「月光」ではなく、「熱情」とか「ワルトシュタイン」のほうを聴きたかったなと、第3楽章の熱演を聴いて、強く感じました。

休憩後の後半はラヴェル、ドビュッシーのフランス音楽です。言わば、お国ものですね。
まずはsarai苦手のラヴェルです。ただし、先日ののラヴェルは素晴らしかったので、フランス人ピアニストのラヴェルは期待できるかもしれません。
ラヴェルの「古風なメヌエット」は標題で受ける印象とは異なり、明確でかっちりした曲で叙情性はあまり感じません。ケフェレックは全然、退屈させられず、とてもよい演奏をしました。さすがにフランス人なんですね。芯のしっかりした響きは、ある意味、アンリ・バルダにも共通するところがありますが、バルダの男性的な演奏に対して、繊細さも兼ね備えた演奏です。
次の「亡き王女のためのパヴァーヌ」は叙情的で優雅な曲ですから、彼女の演奏スタイルに合うのか、心配でしたが、杞憂でした。前半のドイツ音楽とは違い、この叙情的な曲でも見事な演奏で、大変、満足できました。
圧巻だったのは、最後のドビュッシーの映像の第1集、第2集です。まるでエンジンがかかってきたように、響きが澄み渡り、細かいニュアンスの表現が見事の一語です。ケフェレックは自分の弾いたピアノの響きにじっと耳をすませながら、心の音楽を展開していきます。絵画の世界で言えば、心象風景という言葉が一番、しっくりきます。もちろん、「動き」のような曲では、切れのよい演奏も展開し、静と動、いずれも素晴らしい演奏でした。これは超一級の演奏です。後半のラヴェル、ドビュッシーには大変、感銘を受けました。

アンコールは彼女の「ショパン」という言葉とともに、幻想即興曲・・・通俗名曲といっても言い曲ですが、やはり、聴けば、耳が楽しくなります。続いて、もう、この曲でお終いよという仕草の後、「エリック・サティ」の言葉で最後のアンコール曲です。あまり、耳馴染みのない曲ですが、いかにもサティらしい曲をお洒落に演奏して、楽しく、リサイタルの幕は閉じられました。

ケフェレックの人柄も感じられる、気持ちがなごむリサイタルでした。それにしても、フランス人の演奏するフランス音楽は素敵です。



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何も言えない・・・ヤンソンス+バイエルン放送響のベートーヴェン交響曲第9番@サントリーホール 2012.12.1

胸が一杯で、何も言えません・・・

あふれる感動を胸に秘めて、今晩は幸せな眠りにつく贅沢をお許しください。それほどの気持ちになるほどの超弩級のコンサートでした。
明日、なんとか詳細をレポートします。

ただ、今日はNHKが録画しており、BSプレミアムで放送するとのことですから、saraiの下手な感想は不要かもしれません。
放送で感動を味わった後で、saraiの感想を読むほうがいいかもしれません。読者のかたはご判断ください。



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超感動!セルゲイ・アントノフ・チェロ・リサイタルwithイリヤ・カザンツェフ@上大岡ひまわりの郷 2012.11.11

今日は上大岡ひまわりの郷コンサート・シリーズの2012年秋編の2回目のコンサートです。
このところ、毎回、感動!ってばかり書いて、実は今日も感動!というのは少し気が引けますが、本当に感動しました。
これで6回連続で感動のコンサートです。自分でも感性がおかしくなったのかしらんと思うのですが、希有な“当たり”のコンサートが続いているんです。
今日は比較的地味な室内楽のリサイタルですが、プログラムを見ても、マイナーな曲目が並び、通好みを通り越しているような気がします。
いわゆる名曲(有名曲)は皆無ですし、これまで1度も聴いたことのないバーバーとグリーグの曲もあります。
でも、本当に室内楽の醍醐味を味わうことのできる素晴らしいリサイタルでした。
チェロのアントノフは2007年のチャイコフスキーコンクールで優勝したロシアの俊英でテクニック、美音はもちろん、音楽性も素晴らしかったのですが、一番感銘を受けたのは精神性の高さ(感受性の高いハート)です。彼の演奏を聴いていると、すべての芸術の原点は、芸術作品の送り手(音楽の場合は演奏家)と受け手(音楽の場合は聴集)の間の魂の共鳴(あるいは魂の融合とまで言っていいかも知れません)だということに思い至ります。彼のチェロの響きを聴いているわけですが、もう、それは2次的なもの:単に演奏家と聴集の心をつなぐ手段でしかなく、リサイタルの場を支配しているのは彼の魂の叫びが自分の魂の奥深いところを直接揺り動かしている精神的な力です。音楽の外的な姿であるメロディーや響きはすべて、うすぼんやりとデフォルメされたようにしか感じられず、アントノフの心だけを受け止めている自分に気が付きます。
本物の芸術に出会ったときには、いつも感じる、あの感覚です。忘我の境地になって、芸術家の心と一体化した心だけの存在に昇華している自分があります。音楽はもちろんですが、素晴らしい絵画に出会ったときも希有に感じる感覚です。ココシュカの《風の花嫁》(バーゼル市立美術館)、ゴッホの《オーヴェールの教会》(オルセー美術館)など数回しか経験していませんが、美術でも同じ感覚に陥ることがあります。そう言えば、文学作品もそうですね。
こういう芸術的昇華を期待して、飽きずに芸術に接し続けているのかも知れません。
話がそれてしまいましたが、もうひとつ、このリサイタルで感銘を受けたのはチェロのアントノフの演奏だけではなく、ピアノのイリヤ・カザンツェフの演奏です。まさに彼ら二人は心をひとつにした室内楽の理想を具現化していました。それどころか、ピアノの独奏部分での美しい響きと音楽的表現は素晴らしく、ずっとチェロなしで聴いていたかったほどです。それもその筈、カザンツェフは2000年の若いピアニストのためのショパン国際コンクールで入賞した実力のある俊英です(演奏会のパンフレットにはショパン国際ショパンコンクールで入賞コンクールで入賞とありましたが、これは明らかに間違いのようです)。二人の音楽性が共鳴して、さらなる高みの音楽に達したのでしょう。楽器の違いを超えて、二人は同質性の響き、音楽表現を実現していました。一人の演奏家が同時にチェロとピアノを演奏していると言っても過言でありません。室内楽では2つの個性のぶつかり合いというのもスリリングで素晴らしいのですが、個性が融合した演奏はさらに素晴らしいことに初めて気が付きました。もちろん、片方が伴奏になっては駄目ですけどね。これだけ、実力のある音楽家が心をひとつにした演奏に至るには、お互いの信頼・尊敬のもとに、文字通り、血の滲むような練習をしたことは間違いないでしょう。本当に頭が下がります。

今回もこれ以上書くことは何もありませんが、それぞれの曲目の演奏にも触れないといけないでしょう。

今日のプログラムは以下です。

  チェロ:セルゲイ・アントノフ
  ピアノ:イリヤ・カザンツェフ

  ショパン:序奏と華麗なポロネーズ Op.3(M.ジャンドロン編曲)
  シューマン:民謡風の5つの小品 Op.102
  バーバー:チェロ・ソナタ Op.6

《休憩》

  グリーグ:チェロ・ソナタ イ短調 Op.36

   《アンコール》
     ショパン:マズルカ第45番イ短調(遺作) Op.67-4
     ショパン:ワルツ第3番(華麗なる円舞曲) Op.34-2

まず、ショパンです。最初は序奏から始まります。チェロの最初のフレーズを聴いただけでsaraiはいい気持ちになりました。溜のある見事な節回しです。序奏は余裕を持った朗々とした響きのある演奏ですが、何といってもハートのある演奏です。ポロネーズにはいると、ダイナミックで熱い演奏です。ピアノもショパンらしい美しい響き。チェロの響きでもショパンの美しさを感じられた素晴らしい演奏で、嬉しい驚きです。予習した巨匠ロストロポーヴィチを上回る演奏に思えました。

次はシューマンです。第1曲はシューマンらしい親しみに満ちたメロディーが明快に演奏されました。シューマン好きとしては満足の演奏です。第2曲は子守歌を思わせる優しい曲ですが、まさに曲想を忠実に演奏し、ほのぼのとした思いを持ちました。第3曲はsaraiが密かに「五木の子守歌」と勝手に呼んでいる親しみやすい主題が印象的な曲です。これは実に聴き応えがありました。この作品の中核をなす部分ですが、深い精神性に満ちた演奏に感銘を受けました。第4曲はこれまでの曲と一転して、祝祭的な雰囲気の勢いのある曲です。力強い演奏にこちらの気持ちも高揚してきます。最後の第5曲はフィナーレにふさわしく強く、そして、ときに優しく、終わりは気持ちよく盛り上がって、エンド。とてもよいシューマンです。これも予習したマイスキー、ロストロポーヴィチを上回る素晴らしい演奏です。

次はバーバーです。一応、予習しましたが、ほとんど初聴きに近い曲です。ところが、ぐいぐい引き込まれる演奏です。第1楽章から感動の思いで聴いていましたが、中間部の激しく熱い演奏には、もう、大感動です。アントノフの熱い心に魂を揺さぶられる思いです。第2楽章の深い響きにも気持ちがおさまることはありません。感動が深くなるばかり。第3楽章の燃え上がるような情熱には、もうこちらの心が耐えきれないほどです。バーバーの曲が何を表現しようとしているのかは理解できませんでしたが、心の奥深いところにどろどろとしたものが流れ込んできました。情念の音楽です。室内楽でこんなに感動したことはかってないことです。音楽は生で聴かないと分からないものです。それにしても、アントノフがこの曲を驚異的なレベルで手中に収めていることに感銘を受けました。ここまで演奏するには、一体、どれほど、譜面を読み込み、練習を重ねたんでしょう。もちろん、テクニックの問題ではありません。音楽的に理解し、噛み砕き、自分の表現に作り上げるということです。こういう演奏が本当に完璧な演奏というのでしょう。

休憩中にあわてて、ロビーに駆け込み、アントノフのCDを買い求めました。サイン会に参加して、感動した気持ちを伝えたかったんです。CDはR・シュトラウスとラフマニノフのチェロ・ソナタという、またまた、マイナーな曲目ですが、構いません。素晴らしい演奏であることは確信しています。

休憩後、最後のグリーグです。何というか、もう、曲がどうとか、そういうことは一切、心から排除されました。ただただ、チェロの響きを介して、アントノフの魂の声を聴きながら、自分の心に同調させていました。もちろん、美しい響き、暗鬱な気分、優しい声は聴こえてきます。
しかし、心が澄みきって、深い感動に浸っていることがすべてです。きっと、このグリーグのソナタは名曲だったんでしょう。そうでなければ、こうして、魂が揺さぶられることはありませんからね。でも、音楽は究極的には、手段として、心を表現するものなのでしょう。それが可能になるのが名曲なんだと思いました。一期一会の体験でした。

サイン会では、息子のような年齢のアントノフに感動した心を伝えましたが、若い彼は優しく微笑んで、サンキューとだけ・・・。それでいいんです。気持ちは伝わったでしょう。

上大岡ひまわりの郷コンサート・シリーズで最高だっただけでなく、これまで聴いた室内楽で最高のコンサートでした。
やっぱり、音楽なしには生きられません・・・。



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超名演!マーラー4番:インバル&東京都交響楽団&森麻季@横浜みなとみらいホール 2012.11.4

マーラーの交響曲のなかでは、比較的、地味な作品である交響曲第4番ですが、これまで生演奏でもCDでも聴いたことのない、超!をつけてもよいような名演に接し、感動に酔いしれました。今回のマーラー・ツィクルスはもちろん、東京都交響楽団の演奏したマーラーで最高の演奏でした。つい先週聴いた交響曲第3番を上回る素晴らしい名演にコンサートが終わった今でも胸に熱い思いが残っています。
白状すると、交響曲第4番を聴いて、気持ちがよくなることはあっても、感動したのは初めてです。もちろん、感動が頂点に達したのは第3楽章のアダージョです。それまでの第1楽章、第2楽章もまったく隙のない完璧な演奏で、第3楽章での感動に至る伏線はありました。今回はもう、これ以上、書くことはありませんが、それでも、もう少し、感想を綴ってみましょう。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:エリアフ・インバル
  バリトン:河野克典(少年の不思議な角笛)
  ソプラノ:森麻季(交響曲第4番)
  管弦楽:東京都交響楽団

  マーラー:「少年の不思議な角笛」より
         死んだ鼓手
         むだな骨折り
         番兵の夜の歌
         この歌を作ったのは誰?
         高き知性を讃えて
         塔の中の囚人の歌
  マーラー:交響曲第4番ト長調

最初は歌曲の「少年の不思議な角笛」からの6曲です。今日はバリトン独唱ですが、折角、ソプラノの森麻季も来ているので、掛け合いで歌ってほしい曲が数曲ありました。バリトンの河野克典はなかなかの歌唱でしたが、前にも書いたことがありますが、この歌曲はメゾ・ソプラノで歌われるのが好きなんです。まあ、気持ちよく、聴けました。オーケストラは抑え気味に伴奏していたので、ほとんど歌だけが耳に残りました。

休憩後、いよいよ、交響曲第4番です。最初の鈴が鳴るような部分から、のりの良い演奏です。しかも実にディテールまで表情の豊かな演奏です。インバルのマーラーはどちらかというと、ディテールを磨き上げるというよりも、大きな構造を組み立てていくような演奏ですが、今日の演奏は細かいところまで、実によく練り上げられた演奏で、そこを聴いているだけでも聴き惚れてしまいます。テンポの緩やかな変化、アクセント、思い切った強弱の変化などの彫りの深い表情付けがされていますが、それが一糸乱れず、パーフェクトに演奏されます。ずい分、リハーサルを重ねないとこういう演奏はできないでしょう。しかもインバルの指揮ですから、細部の磨き上げにとらわれず、全体の構造の見通しのよいパースペクティブな演奏に仕立て上がっています。こういうのを完璧な演奏というのでしょう。こんな素晴らしい第1楽章にはなかなか出会えません。しかも東京都交響楽団の強力な弦楽器セクションの響きの美しいこと、ほれぼれします。木管楽器も味わいの深い響きです。それもすべてインバルの意図した通りの演奏になっている感じです。インバルと東京都交響楽団のコンビはこれまでになく、高みに達した感があります。おそらく、インバルが頭の中に思い描いた通りの響きと表情が実現されているように感じます。インバルの意図した音楽、それは美しい表情をつけた楽想を自然な形で融合し、ザルツブルグの近くの湖沼と山に恵まれたザルツカンマーグートの美しい自然を彷彿とさせるものです。考え抜かれた音楽でありながら、少しも恣意的には感じられず、自然な流れの音楽となってます。第2楽章のレントラーも、その流れが続き、次第に来るべき第3楽章への期待感が高まってきます。第2楽章でのコンサートマスターの矢部達哉の素晴らしいヴァイオリン独奏も印象的でした。その響きの美しさもさることながら、インバルの指揮の意図を完全に理解し、具現化した演奏の素晴らしさに感服しました。そう言えば、今日はその矢部達哉の隣に座っている四方恭子がコンサートマスター席に座った前回の交響曲第3番の第4楽章でメゾ・ソプラノの独唱にオブリガート風に絡み合った素晴らしいヴァイオリン独奏の展開したことを思い出しました。書き漏らしていました。現在の東京都交響楽団はこの2人の最強のコンサートマスターがマーラー・ツィクルスに参加していることで、高いレベルの演奏を実現しているように感じます。第5番以降の5曲もこのまま、この2人の最強のコンサートマスターが継続して演奏してもらいたいものです。
さて、第3楽章のアダージョの美しくて敬虔にも感じられるメロディーがチェロで演奏され始めました。本当に強い感動を覚えます。自然な演奏なのですが、胸にぐっとくるものがあります。ヴィオラ、第2ヴァイオリンと受け継がれ、第1ヴァイオリンで演奏されるころには、もう、うるうるです。何たる感動でしょう。それも深くて静かな感動です。長大な第3楽章はもう胸が熱くなって、聴きいっていました。最高の演奏です。よもや、交響曲第4番を聴いて、感動するとは思ってもみませんでした。インバルの意図を先読みすると、第1楽章から第3楽章までを第1部として、ひとつの完結した交響曲のように演奏し、第3楽章で盛り上げていくというものです。まさに、交響曲第3番の第6楽章と交響曲第4番の第3楽章を双子の兄弟・姉妹のように位置づけて、同じような感動的な演奏を展開していくというように感じます。最終楽章の第4楽章は歌曲楽章なので、交響曲の締めとしては軽い感じがするので、エピソードのような扱いにするのもいいアイディアでしょう。事実、第3楽章の始めには、まだ、ソプラノ歌手が入場していないので、第4楽章は彼女の入場でちょっと時間を取って、第2部のように演奏するのではないかと思ったわけです。第3楽章も終盤にはいり、思いのこもった演奏でますます、感動が高まっていきます。静かで美しい響きが綿々と続きます。もう、頭の中は真っ白になりそうです。ほとんで、音楽に集中しきって、視界はぼやけています。その視界に何かが動いているのが見えます。黒いドレスの森麻季がそっと入場してきました。マーラーの叙情的な音楽が静かに響くなか、美しいソプラノ歌手が静かに歩いているのは実に様になっています。これも演出に思えるほどです。そして、森麻季がステージ中央に立ち、第3楽章の終わりを待っています。第3楽章は静かに静かに、そして、感動的に終わりました。間を置かずに、第4楽章の演奏が始まります。saraiの読みは見事に外れましたが、意味的には当たっているような気もします。第3楽章と第4楽章を一括りにして、愛4楽章は第3楽章のエピソードとして、取り扱うという意図でしょう。それによって、軽い歌曲楽章の第4楽章を終楽章にすることから、逃れることができます。終楽章はあくまでも第3楽章で、第4楽章はそれに付随したエピソードというわけです。確かに最後まで、感動を持続して、全曲を聴き終えることができました。ところで森麻季の歌唱ですが、彼女の実力からすると、もうひとつピュアーな高音が聴けなかったのが残念でした。なかなかの歌唱ではあったのですが、最高レベルとは言えません。

この日の演奏は録音されていました。そのうちにCD化されるようです。あまり、編集しないで素直なライブCDになれば、この交響曲のCDのなかでもベストワンも狙えそうです。もちろん、その際はこの超名演のCDを真っ先に購入することにしましょう。既に15枚以上の名盤と言われるCDを所有していますが、ベストCDの座が狙えそうです。それほど素晴らしい演奏でした。

次の来年1月の交響曲第5番が楽しみです。これはサントリーホールで聴きます。素晴らしいコンサートになることを確信しています。


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シューベルトに感動!庄司紗矢香ヴァイオリン・リサイタル@サントリーホール 2012.10.30

10月後半のこの1週間ほどに聴いた3回のコンサートはいずれも強い感銘を受けたものばかりで、いずれも“当たり”のコンサートでした。もちろん、そういうコンサートを選択したのですから、当たり前と言えば、当たり前ですが、当たりくじばかり連続で引くのは滅多にないことです。このところ、ご機嫌のsaraiです。
 10月22日(月) インバル指揮東京都交響楽団 ブラームス交響曲第2番、第4番
 10月26日(金) ティーレマン指揮シュターツカペレ・ドレスデン 《トリスタンとイゾルデ、ブルックナー交響曲第7番
 10月27日(土) インバル指揮東京都交響楽団 マーラー交響曲第3番

そして、今日の庄司紗矢香ヴァイオリン・リサイタルも大変感銘を受けたリサイタルでなんと4回連続当たりくじでした。 
今日のリサイタルはほぼ10日ほど前に横浜みなとみらいホールで聴いたリサイタルとほぼ同内容です。違いといえば、ホールがサントリーホールに変わったこととと、最後のメインの曲目がシューマンのソナタからシューベルトの幻想曲に変わったことです。しかし、受けた感銘の度合いはまったく違います。席の場所はほとんど同じですが、サントリーホールではヴァイオリンの響きがよく聴こえ、実に集中して聴くことができました。そして、シューベルトの幻想曲の演奏はとても素晴らしいもので、深い感動に浸りました。シューベルトの後期のピアノ曲の素晴らしい演奏に接して、感動するのと、同じ感覚といえば、お分かり頂けるでしょうか。幻想曲もシューベルト晩年の名曲で深い音楽性に満ちていますが、庄司紗矢香のヴァイオリンはそれを余すところなく、完璧に演奏しました。今まで、庄司紗矢香のヴァイオリンを長い間、聴いてきましたが、今日のシューベルトは間違いなく、最高に素晴らしい演奏でした。ずっと、庄司紗矢香の成長の過程を見守るという足長おじさんのような気持ちでいましたが、それも今日で最後にします。こんな素晴らしいヴァイオリニストになった庄司紗矢香の成長を見守るというのは不遜で失礼にあたるでしょう。これから始まる絶頂期の名演の数々を鑑賞させてもらうことにします。

今日のプログラムは以下です。

  ヴァイオリン:庄司紗矢香
  ピアノ:ジャンルカ・カシオーリ

  ヤナーチェク:ヴァイオリン・ソナタ
  ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第10番ト長調Op.96

《休憩》

  ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ ト短調
  シューベルト:幻想曲ハ長調D.934

   《アンコール》
バッハ:音楽の捧げ物より
    ストラヴィンスキー:ペトルーシュカより

最初はヤナーチェクのソナタです。今日のリサイタルで唯一、不満のあったのがこのソナタの第1楽章です。あまりに流麗で美し過ぎる演奏なんです。この楽章は少しぎこちなく、抑えた演奏をしてもらいたかったんです。孤独でコミュニティにとけ込めない哀しさを表現してもらいたいというのがsaraiの意見です。高いレベルの勝手な要求です。
第2楽章は途中から始まるノスタルジックな綺麗なメロディーの美しい響きに満足しました。孤独で愛に飢えた人が子供時代の何者にもとらわれなかった幸福な頃の回想にふけるという切なさがよく表出されていました。
第3楽章はまあまあというところでしょうか。どうしてよいか分からない自分を無理に奮い立たせて、明るく振る舞ってみせますが、それが奇妙な行動に見えてしまうというちぐはぐさがそこそこに表現できていました。もっと思い切った鋭い演奏もよかったかなという感じです。
第4楽章は特に後半からフィナーレまでは実に秀逸な演奏でした。孤独な魂が愛を求めますが、哀しみが増すばかり。どこにも救いのないやるせなさのまま、曲は閉じます。深い感銘を受けた演奏でした。それに感情のこもった熱い表現にほろっときました。
それにしても、低音から高音まで均一性のある美しい響きで、この音楽的に難しい曲を演奏したのは凄いことです。

次はベートーヴェンのソナタです。力みのない素直な表現での演奏でした。ヤナーチェクのソナタとは一転して、実に端正な表現です。ピアノのカシオーリも丁寧なタッチで、庄司紗矢香のヴァイオリンの響きとうまくマッチしています。テンポの微妙な変化で、2人の息がぴったりで、室内楽の喜びを感じ取ることができました。インテンポで演奏する部分でのきちっとしたベートーヴェンらしさが模範的なベートーヴェン演奏を感じさせられました。
第2楽章の抒情あふれる美しい演奏が爽やかです。第4楽章の素朴な主題の表現が印象的で演奏の終わった後でも、そのメロディーが頭のなかで響き続けていました。
抑え気味のしみじみとした演奏で、室内楽の楽しさを感じました。こういうベートーヴェンもいいですね。

休憩後、ドビュッシーのソナタです。10日前のリサイタルでも素晴らしい演奏でしたが、この日はそれ以上だったかも知れません。ドビュッシー晩年の室内楽はどれも名曲で大好きですが、エスプリに満ちた演奏でうっとりと聴き惚れるのみです。このドビュッシーの作品の色々な要素が聴き取れたのも新しい発見です。東洋風な表現はバルトークのマジャール風の音楽を想起させます。無限旋律を思わせるところはフランクです。それらをドビュッシーの印象派の音楽でまとめあげているというモザイク的な音楽に聴こえました。丁寧にクリアーな演奏だったからこそ、細部までじっくりと楽しめたのだと思います。本当に完成度の高い演奏です。
休憩後の演奏はますます精度の高い演奏になってきています。

最後はこの日のメインのプログラムに据えたシューベルトの幻想曲です。この曲は序奏と3つの楽章とコーダが休みなく演奏されます。ロマン派らしい自由な形式のヴァイオリン・ソナタと言っていいでしょう。シューベルトの晩年の作品は本当に名作揃いですが、これもそのひとつです。演奏機会も少なく、CDのリリースも少ないので、隠れた名曲といえるかもしれません。庄司紗矢香はいい曲をプログラムに組み込みました。
演奏の中身にはいる前にちょっと予習したCDについて、触れておきます。何枚か聴きましたが、何といっても、アドルフ・ブッシュの演奏の素晴らしさは特筆すべきものです。1931年録音のSPからの復刻CDですが、素晴らしい音質で聴くことができます。デジタル技術の進歩に感謝します。アドルフ・ブッシュのヴァイオリンは少し甘いポルタメントのかかった昔風の演奏ですが、それはマイナスにはなりません。懐かしさのこみあげてくるようなシューベルトの演奏につながっているからです。ピアノのルドルフ・ゼルキンの演奏も実に美しく、非の打ち所のない真正のシューベルト演奏に仕上がっています。この年代はアドルフ・ブッシュの絶頂期だったようです。アドルフ・ブッシュはその後、ナチス政権に追われ、米国に移り住みます。そこでも数々の名演奏を残しています。前回のリサイタルのプログラムのメインだったシューマンのヴァイオリン・ソナタ第2番はこの時期に名演を残しています。庄司紗矢香の2回のリサイタルのメイン曲の名盤がいずれもアドルフ・ブッシュの演奏であるのは面白い偶然です。ということで、リサイタルの予習にシューベルトとシューマンを繰り返し、アドルフ・ブッシュの名盤で聴きました。これは是非、みなさんも一聴されることをお勧めします。シューベルトの幻想曲のCDは既に廃盤ですが、AMAZONから、相応の価格で中古CDを入手することができます。米国、日本から買えます。このCDはリマスタリングも良好でよい音質で聴くことができます。因みにシューマンはここから買えます。4枚組のCDです。このなかにも、シューベルトの幻想曲がありますが、米国でのライブ演奏のようです。これは未聴です。
アドルフ・ブッシュのCDにこだわったのは、そこに真正のシューベルト演奏があると感じたからです。
そして、今日の庄司紗矢香の演奏は演奏スタイルこそアドルフ・ブッシュとは異なりますが、やはり真正のシューベルトの魂が感じられました。序奏のゆったりした美しい響きはまるでソプラノ歌手のアリアを聴いている感じでうっとりします。第1楽章はシューベルトらしい美しいメロディーに胸を揺さぶられます。第2楽章はシューベルトの歌曲「私の挨拶を」を主題とした4つの変奏が繰り広げられ、この曲の白眉ともいっていい部分ですが、ヴァイオリンとピアノの美しい響きは真正のシューベルトです。第3楽章を経て、圧巻のコーダです。シューベルトの名作を目の前でライブで素晴らしい演奏・・・感動で胸が一杯です。アドルフ・ブッシュは素晴らしいですが、何といってもsaraiが生まれた頃に亡くなった人で今更、生の演奏は聴けません。同じ精神性での演奏が今生きている現在に聴けて、幸福感でいっぱいです。
いつの間にか、庄司紗矢香はこんなシューベルトが弾けるような高みにまで上ってきました。凄いことです。

素晴らしいリサイタルでした。アンコールも含めて、バッハ、ベートーヴェン、シューベルト、ドビュッシー、ヤナーチェク、ストラヴィンスキーをすべて高水準で演奏しました。もう成長過程を終え、稔りの時期にはいってきたようです。これからの庄司紗矢香はますます、saraiを楽しませてくれるでしょう。



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       庄司紗矢香,  

感動のコラール!マーラー3番:インバル&東京都交響楽団@横浜みなとみらいホール 2012.10.27

昨日のティーレマンのブルックナーの交響曲第7番に引き続き、今日はインバルと東京都交響楽団のマーラーの交響曲第3番です。連日、大物の作品が続き、予習も大変です。特に今日のマーラーは長大な作品で、CDを3枚聴くのがやっとでした。
 ・アバード&ウィーン・フィル
 ・ノイマン&チェコ・フィル
 ・ハイティンク&シカゴ交響楽団
どれも素晴らしい演奏ですが、特にハイティンクの新盤が心に残りました。
今日のインバル&都響の演奏はそれらの名演と肩を並べる素晴らしいものでした。インバルのマーラーの素晴らしさを再認識するとともに、このところ、好調の東京都交響楽団が既に欧米のオーケストラと遜色がないという確信を持ちました。少なくとも、インバルが指揮する都響は今週のブラームスと言い、素晴らしい響きに満ちています。今日のマーラーの交響曲第3番の第6楽章のコラール風の旋律を聴き、弦楽器セクションの響きの素晴らしさに涙の滲むような感動を覚えました。ここ2年ほどのインバル&都響のマーラー演奏には、いつも感動させられてきましたが、今日はそのなかでも最高の演奏でした。
まだまだマーラー・ツィクルスは始まったばかりです。ますます期待が高まります。第9番ではどれほどの高みに達するのでしょうか。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:エリアフ・インバル
  メゾ・ソプラノ:池田香織
  女声合唱:二期会合唱団
  児童合唱:東京少年少女合唱隊
  管弦楽:東京都交響楽団

  マーラー:交響曲第3番ニ短調

このマーラーの交響曲第3番は聴く者にとって、なかなかの難物でもあります。特に30分ほどの長大な第1楽章に意識を集中させて、聴き通すことは容易ではありません。今日は最初のホルンの朗々とした響きで堂々の開始です。素晴らしい響き、そして、弱音での表現の繊細さに終始、耳をそばだたせ、緊張感を持続して、曲に集中できました。ただ、これは長大な交響曲の序章に過ぎません。
第2楽章は比較的コンパクトな楽章で、クリアーな響きに気持ちよく身を委ねるのみですっと過ぎ去ります。
第2楽章終了後、インバルがいったん退場し、合唱団とメゾ・ソプラノの池田香織が入場し、小休止。準備が整いましたが、インバルが一向に再登場しません。妙な雰囲気が漂いましたが、インバルがようやく登場。何だったんでしょう。
ところが第3楽章が始まると、すっかりオーケストラの響きが美しく向上しました。まるで魔法のようです。最高の響きです。中間部以降は舞台裏で演奏されるポストホルンの長閑な響きに魅了されます。ザルツカンマーグートの美しい自然のなかにいるかのごとく、感じます。この曲はマーラーが夏の休暇に過ごしたザルツカンマーグートのアッター湖畔で作曲しました。第2楽章、第3楽章は最も自然との一体化を感じる音楽になっています。その美しい自然を都響の美しい響きで感じ、心が安らいでいきます。少しずつ、心が溶け出して、音楽と融合していく感じです。まだ、感動というところにまでは至りません。
第4楽章はアルト独唱で池田香織の美声を楽しみます。よく通るピュアーな声です。だんだん、感動の予感がしてきました。
第5楽章は休止なしに少年合唱がビム、バム、・・・と朗らかに歌い始め、一転して、明るい雰囲気に盛り上がります。途中のアルト独唱もなかなかの歌声で聴かせます。
そして、一気に第6楽章に突入します。また、一転して、実に精神性の高いコラール風の旋律が弦楽器で静かに演奏され始めました。ここでもろくもsaraiの心は崩壊します。涙が滲んできます。ザルツカンマーグートの美しい自然に抱かれて、傍らには若くて美しい妻のアルマがいます。愛情に充足して、幸福の絶頂にいるマーラー。しかし、何故か、美しい旋律には、哀切の響きがあります。saraiの心とマーラーの心がシンパシーで結ばれます。永遠に続くと信じたい愛・・・しかし、心の底では、未来への不安が渦巻いています。永遠の愛なんて、あるんだろうか。そして、いつかやってくる死への恐れ。現実世界は美しいアッター湖と美しいアルマがいるだけ。それで充分じゃないか。もろくて壊れやすい繊細な音楽が静かに美しく響いています。いつまでもいつまでも・・・。音楽は時に爆発もします。不安感に押しつぶされるんです。そして、また、幸福で静謐な音楽に戻ります。ただ、深い哀切感から逃れる術はありません。滲んだ涙で視界も曇ってきます。最後に音楽は高揚していきます。一体、何の高揚なのか、理解できないまま、それでも感動の嵐に巻き込まれていきます。フィナーレで心もずたずたになります。まさに神なき時代の人間の哀歌です。感動した心の向ける方向が分からないままの終結です。それでも我々は知っています。この後、マーラーは交響曲第9番の第4楽章アダージョに向かって、救いを求めて、彷徨っていくことになります。まだまだ、苦悩の道のりは始まったばかりです。

実に音楽性の高い演奏内容でした。ライブでこれだけの演奏ができるのはインバルと都響のコンビ以外にどこがあるでしょう。最高とも言っていいマーラーでした。この演奏はCD化されるようですが、多分、saraiは聴かないでしょう。いや、聴けないというのが正確なところです。もう、このライブの美し過ぎる演奏で十分です。

とりあえず聴き始めたインバル&都響のマーラー・ツィクルスですが、もう、第9番まですべてを聴かずにはいられません。マーラー・ファンのかたは決して聴き逃してはいけませんよ!


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神のごときティーレマン、圧倒的なブルックナー!シュターツカペレ・ドレスデン@サントリーホール 2012.10.26

ティーレマンのシュターツカペレ・ドレスデンの首席指揮者就任のお披露目ツアーみたいなもので、今夜は来日公演の最終日です。このところ、ティーレマンミュンヘンのガスタイクでのミュンヘン・フィルウィーン国立歌劇場でのパルジファルウィーン楽友協会でのウィーン・フィルと聴いてきましたが、いずれも素晴らしい演奏でした。そして、初めて、国内で聴きましたが、まさにパーフェクトな演奏でした。ワーグナーの《トリスタンとイゾルデ》は厳かで美しい響きのなかに、「熱を帯びた愛」が感じられる、甘美な演奏。そして、ブルックナーの交響曲第7番は美しさと迫力のある咆哮が見事に交錯する最高の演奏。ちょうど1年前、ウィーン楽友協会でプレートルとウィーン・フィルによるブルックナーの交響曲第7番を聴き、これ以上の演奏は聴けないだろうと思いましたが、今夜の演奏は並び立つ演奏で、甲乙つけがたしです。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:クリツティアン・ティーレマン
  管弦楽:シュターツカペレ・ドレスデン

  ワーグナー:楽劇《トリスタンとイゾルデ》より、“前奏曲”と“愛の死”

《休憩》

  ブルックナー:交響曲第7番ホ長調

   《アンコール》なし

まず、ワーグナーの楽劇《トリスタンとイゾルデ》です。楽劇の冒頭に演奏される“前奏曲”と最後の第3幕の最後に演奏される“愛の死”です。つまり、楽劇のまんなかをすっぽり、外して最初の10分と最後の6分ほどに超圧縮した演奏です。これがワーグナー自身が最初に楽劇《トリスタンとイゾルデ》を公開演奏したスタイルでした。全体で4時間かかる大きな楽劇はなかなか演奏される機会がなかったんですね。そういうわけで、今でもコンサートで取り上げられることが多いです。
最初は“前奏曲”から始まります。静かに下降音型が鳴り始め、底でいわゆるトリスタン和音、そして、上昇音型。これが2回繰り返されます。もう、この時点で完璧な《トリスタンとイゾルデ》になっています。予習したクライバー+シュターツカペレ・ドレスデンの演奏と双子かと見紛うばかりの素晴らしい演奏。クライバー亡き後、この《トリスタンとイゾルデ》を振れるのはティーレマンを置いて、ほかはないと確信させる演奏が続きます。熱を帯びた瞑想のなかで繰り広げられる甘美な愛情と甘美な死。《パルジファル》と並ぶワーグナーの傑作を完璧に演奏します。聴集は夢のような世界に誘われます。いずれ、ティーレマンの指揮で楽劇《トリスタンとイゾルデ》を聴かないと、この世を去ることはできません。最後は静かにイゾルデの死で曲を閉じますが、音楽は永遠の闇のなかに続いていきます。名演でした。

休憩中、今年、ウィーン楽友協会でティーレマン指揮ウィーン・フィルでシューマンの第4番を一緒に2度も聴いた女性と半年ぶりの再会。ティーレマンのパーフェクトな演奏を讃え合います。
休憩後、いよいよ、ブルックナーの交響曲第7番です。ブルックナー開始といわれる弦のさざ波のなか、低弦の美しい旋律がたっぷりと歌われます。弦のユニゾンが多く、シュターツカペレ・ドレスデンの弦の響きに耳を奪われます。低弦は深い精神性を感じさせます。美しくきらめく高音弦は清らかでピュアーな精神を感じさせます。実に精神性に満ちた音楽が展開されます。これがブルックナーです。チェリビダッケではありませんが、ブルックナーは美しく、それもとびっきり美しく演奏されなければなりません。それがここに実現されており、saraiは充足感に浸っています。この美しい世界が延々と続きます。いつまでたっても第1楽章は続いていきます。これもブルックナーの世界です。ただ、退屈することはありません。真正のブルックナーの音楽の深い精神に包み込まれているんですからね。それでも頂点を極めて、第1楽章は終了しました。
次は一番の楽しみである第2楽章です。管楽器で主題が提示された後、弦楽器がこの上もない演奏を繰り広げます。美の極致がまさに永遠に続きます。やがて、後半にはいり、第1ヴァイオリンの上昇音型が始まります。例えようもなく、美しいです。この部分を美しく表現できるのはヨッフムとチェリビダッケしかいませんでした。そして、ティーレマンはそれを凌駕するかのような演奏です。上昇音型が頂点に達し、下降音型に変わります。そして、音楽はさらなる高みを目指し、高揚していきます。その頂点でシンバルの一撃! 最後は静かに消えるように第2楽章が終わりました。通常の交響曲ならば、もう、このあたりで終わってもいいくらい。第3楽章はまさにティーレマンが豪腕で剛速球を投げ込んできます。力んでいるわけではないのに、高揚した音楽でインスパイアーされます。一転、中間部はまた静かな瞑想的な音楽となります。豪腕ですが、しなやかな感性も併せ持ち、流麗な音楽を展開してくれます。また、最初の部分に戻って、豪壮にフィナーレです。第4楽章が始まります。中庸のテンポで荘重な音楽を進めていきます。プレートルはここは切れのよい演奏で早いテンポで進めていきましたが、ティーレマンは個性が違います。十分に美しい流麗な響きをかもしだしていきます。実に聴き応えがあります。何度も頂点を上り詰め、フィナーレは圧倒的に締めくくりました。完璧なブルックナーでした。何も言うことはありません。ただ、この場にいただけで幸せです。

ブルックナーの交響曲第7番は何枚ものCDで予習を重ねましたが、最後はヨッフムの名盤のシュターツカペレ・ドレスデンでした。ティーレマンはこのシュターツカペレ・ドレスデンを完全に手中に収め、完璧にドライブしていました。ヨッフムとも甲乙つけがたいと思います。
もう、いつでもティーレマンはシュターツカペレ・ドレスデンとブルックナーの交響曲の録音を始められる状態にあるように思います。ウィーン・フィルとのベートーヴェン交響曲全集と同様に、ライブ録音でブルックナー交響曲全集へ取り込むことが望まれます。ついでにミュンヘン・フィルでも録音してほしいなあ!
ところで、来年の6月は彼らの本拠地のドレスデンに乗り込んで、ティーレマンの楽劇《ばらの騎士》を聴く予定です。オクタヴィアンはガランチャです。今から楽しみでなりません。

さあ、今日は早く寝ましょう。明日はインバル+都響のマーラー・ツィクルスで最長の交響曲第3番を聴かないといけませんから・・・

あっ、書き忘れましたが、ブルックナーのフィナーレの後、会場は興奮の坩堝で、オーケストラ退場後も2回もティーレマンのカーテンコールが続きました。もっと続けてもおかしくない快演でした。ティーレマンへの怒濤のような歓声も凄かったですね。もちろん、こういうコンサートでアンコールは不要です。用意はしていたようですが、アンコールはなしです。納得のアンコールなしでした。


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この記事へのコメント

1, Masaさん 2012/10/27 15:51
こんにちわ。
私もその場におり、同じ空間の中で同じ感動を味わいました。
誠に「この場にいただけで幸せ」、この言葉に共感いたしました。

2, anさん 2012/10/27 21:51
はじめまして。 大好きな旅行や音楽のお話がいっぱいで
毎日楽しみに見させていただいています。
昨日は本当に幸せでした。 ただただうっとりと、ティーレマンの世界に
浸りました。
演奏が終わると同時の早すぎた拍手も、ティーレマンがまだ音楽の中にいることを察してすぐに止まりましたね。
そして静止していた彼の手が動くと 改めてわれるような拍手!
こんなことも含めて その場に居られたことに感謝でした。

とても詳しく書いてくださって ありがとうございました。

3, saraiさん 2012/10/28 00:52
Masaさん、こんばんは。
返事が遅れました。インバルのマーラー3番が大変な演奏で心が平静に戻らなかったんです。
ティーレマン、私は好きです。やり過ぎであるか、どうかよりも、自分の心に共鳴するかどうかを大事にしたいと思っています。よいブルックナーを聴いたと素直に感じています。心を同じくしていただき、嬉しいです。

4, saraiさん 2012/10/28 02:45
anさん、初めまして。saraiです。
ありがたいお言葉、感謝します。ブログを書いていると、本当に一人でも読んでくれてかたがいるのか、不安になるときがあります。
拍手したい気持ちも分かりますが、昨日はじっと我慢してほしいところでしたね。ただ、そんなフライング拍手もあまり気にならないくらい、とてもよいブルックナーでした。気持ちが共有できるコンサート、これこそ理想とするものです。
また、コメントください。励みになりますからね。

5, Preさん 2012/10/29 09:53
はじめまして
別の日でしたが、ティーレマンのブラームスを聴きました。異次元の世界でしたね。指揮をするとは何なのを考えさせられました。saraiさんもガランチャさんのファンのようでうれしく思います。私も大ファンで来年のばらの騎士、ウエルテル、カルメンを聴く予定です。

6, saraiさん 2012/10/29 11:19
Preさん、はじめまして。saraiです。

ティーレマンの指揮は賛否両論ありますが、誰しも認めるのは彼の推進力でしょう。彼が指揮すると何かが起こるという予感がします。
ガランチャは圧倒的な声量のメゾで、その上、オクタヴィアン・マリアンデルでのかっこよさと可愛さを併せ持っていますから、参りますね。
私は来年は4月にウェルテル、6月にカルメンとばらの騎士を2回の旅に分けて聴きますが、Preさんはどういう日程にされましたか? もしかして、2カ月間滞在されますか? どこかでご一緒するかも知れませんね。

7, michelangeloさん 2012/10/29 21:21
sarai様
初めまして。数ヶ月前より貴ブログを拝読致しておりました。海外での素晴らしいクラシック音楽ご鑑賞記事が眼に広がり、読み手であるこちらの心まで高揚して参ります。
ティーレマン氏の演奏会、私も2日間堪能致しました。火曜日以外は連日ステージに立つと言う過酷なスケジュールにも関わらず、千秋楽には性格が異なりながらも深く関連する作曲家を二本届けて下さり、本当に嬉しかったです。少々お疲れの様子が伺えましたが、ソロのカーテンコール2回で優しい笑顔がこぼれ安心しました。
事前に、sarai様の海外ティーレマン氏演奏会の記事で予習ができたお陰で、多角的に鑑賞が出来ました。心よりお礼を申し上げます。

8, saraiさん 2012/10/29 23:40
michelangeloさん、初めまして。saraiです。

ブログ愛読いただき、ありがとうございます。ティーレマンのコンサート、どうしても熱く語ってしまいます。歴史に残る大指揮者になってくれるでしょうね。
貴ブログの感性の豊かな表現にうっとりしましたよ。michelangeloさんこそ、ティーレマンに没頭して、体力を使い果たしたご様子。お疲れ様でした。
また、コメントをお寄せください。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

       ティーレマン,  

至高のブラームス!インバル:東京都交響楽団定期演奏会@サントリーホール 2012.10.22

嬉しい驚きでした。インバルと東京都交響楽団がやってくれました。最高のブラームスでした。マーラーでは何度も素晴らしい体験をさせてくれた東京都交響楽団ですが、ドイツのオーケストラすら超えるようなブラームスを遂に演奏してくれました。それも今日演奏した2曲ともどちらも素晴らしい演奏でした。単なる偶発的な演奏ではなく、確実にアンサンブルを高めてきた結果だと思います。それにしてもインバルは真に巨匠だと再認識させられました。インバルの指揮するブラームスということで、半信半疑、どういう演奏になるのか、そう高い期待も持たずにコンサートに足を運びました。素晴らしく美しいブラームスと表現すればいいのでしょうか。磨き抜かれた輝きがそこにはありました。重厚さや渋さというよりも澄み切った秋空のような透徹した美の世界です。今回は先週の東京文化会館での定期演奏会と合わせて、ブラームスの全交響曲ツィクルスでしたので、先週のコンサートを聴き逃したのが悔やまれます。今日の出来から考えると、先週のコンサートもきっと素晴らしい演奏だったに違いありません。それに今日の東京都交響楽団のメンバーは少なくとも弦楽器セクションの顔ぶれはベストメンバーではありませんでした。それでこの演奏ですから、東京都交響楽団は相当、地力がついてきたように思われます。今後のマーラー・ツィクルスも期待が高まりますね。

今日のプログラムは以下です。

  ブラームス:交響曲第2番ニ長調Op.73

《休憩》

  ブラームス:交響曲第4番ホ短調Op.98

最初の交響曲第2番、あまりsaraiの集中力のない状態で始まりましたが、すぐにえっという感じになりました。ふわーっとした素晴らしい響きが広がっています。真正のブラームスの響きです。久しぶりに聴く本物のブラームスの世界がそこにあります。インバルの指揮はとりたてて、どうということはありません。ただ、きっちりと棒を振っているだけです。余程、リハーサルで磨き上げたのでしょう。結局、どの楽章も終始一貫して、完璧ともいえる演奏が続きました。特に楽章ごとのはいりが自然で素晴らしかったのが印象的です。生で聴いた交響曲第2番では最高の演奏でした。これまで一番良かったのは、パーヴォ・ヤルヴィ指揮フランクフルト放送交響楽団でしたが、無駄な力が抜けていた分、今日の演奏が上回りました。第2楽章の深い味わいのある旋律が美しく歌われたのには、うっとりと聴き入るのみでした。第4楽章の輝かしいフィナーレには心躍る感動がありました。

この交響曲第2番も素晴らしかったのですが、交響曲第4番の仕上がりのよさはさらなるものでした。無理のない強弱の付け方、そして、強音でもしっかりしたアンサンブル、弱音での各楽器パートの安定した美しい響き、何をとっても文句の付けようのない演奏です。長い第1楽章もじっと聴きいっているうちに終わってしまい、名残り惜しく感じます。弦楽器セクションの素晴らしさは例えようもありませんが、特に第1ヴァイオリンの美しい高音の響きには自分の耳が純化する思いです。どこをどうとっても素晴らしいとしか言いようのない演奏が続き、心は高揚するばかりです。最高に素晴らしかったのは第4楽章のフルートソロからの部分です。まさにこれこそ、秋の日に聴くべき演奏です。秋の日の木漏れ日の美しさにも思えるしみじみとした深い抒情あるいは寂寞感が管楽器によって淡い表情で演奏されます。これこそブラームスを聴く最高の喜びです。何という美しい演奏でしょう。心はブラームスの秋色で満たされていきます。そして、あっという間に上り詰めるフィナーレ。もっともっと聴いていたかったブラームスでした。インバルに脱帽です。

ガリー・ベルティーニの指揮したマーラーの第5番に衝撃を受けて、東京都交響楽団を聴き始めましたが、10年以上も聴いてきて、最高の演奏でした。このブラームスを上回る演奏はこれまでウィーン・フィルの演奏した第4番のみです。東京都交響楽団は日本のオーケストラの枠を超えたレベルに達してきたのでしょうか。その答えはこれからのマーラー・ツィクルスのなかにあるでしょう。今週末はいよいよマーラーの大曲、第3番を聴きます。



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1, Masaさん 2012/10/23 17:32
こんにちわ。久しぶりにコメントさせて頂きます。
インバル+東京都交響楽団では、少し前にショスタコ10番を聴きましたが、相当に感動したのを覚えています。
マーラーチクルスも全部聴きたいところですが、そうもいきませんので、とりあえず大好きな5番を買いました。まだまだ先ですが、楽しみにしています。
3番の感想を楽しみに待っています。

2, saraiさん 2012/10/23 22:10
Masaさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

マーラーチクルスの第5番は定期演奏会に組み込まれているので、当然聴くことになります。第5番も楽しみですが、フェルミリオンの歌う「リュッケルトの詩による5つの歌」も素晴らしそうな予感がします。あと、もちろん、第9番は外せませんね。2014年3月17日ですよ。
第3番はやはり終楽章が楽しみです。

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庄司紗矢香ヴァイオリン・リサイタル@横浜みなとみらいホール 2012.10.20

今日の庄司紗矢香のヴァイオリン・リサイタルは元々、オール・ベートーヴェン・プログラムで、以前聴いた彩の国さいたま芸術劇場でのオール・ベートーヴェン・プログラムが素晴らしかったので、その続編として期待していました。ところが、チケット購入後にプログラム変更があり、ベートーヴェンのソナタは第10番だけになってしまいました。プログラム全体はほぼ10日後のサントリーホールでのリサイタルと同じものになりました。実はそのサントリーホールでのリサイタルも聴く予定なので、曲目が重なってしまい、残念ではあります。
今日のリサイタルを聴き終えての感想は庄司紗矢香も若い頃の熱い演奏を卒業し、実にオーソドックスで自然な演奏に変容したというものです。多彩なヴァイオリン・ソナタをどう弾き分けるのかと聴く前には頭をひねっていましたが、無理のない自然で安定した表現で、気持ちのよい音楽を聴かせてくれました。特にヴァイオリンの響きの美しさはこれまで聴いた中で最高でした。よく響く低音から透き通るような美しい高音まで、もう一歩で世界のトップレベルと渡り合えるところまできました。そして、持ち前の音楽性も熟成してきました。ますます、これからが楽しみです。来年5月のウィーン交響楽団とのブラームスの協奏曲の共演でのウィーンデビューが次のステップになることを願っています。

今日のプログラムは以下です。

  ヴァイオリン:庄司紗矢香
  ピアノ:ジャンルカ・カシオーリ

  ヤナーチェク:ヴァイオリン・ソナタ
  ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第10番ト長調Op.96

《休憩》

  ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ ト短調
  シューマン:ヴァイオリン・ソナタ第2番二短調Op.121

   《アンコール》
シベリウス:子守歌

最初はヤナーチェクのソナタです。この曲もヤナーチェク独特の語法に基づく音楽です。よく言われるのは、チェコ語の語法がベースになっているということですが、saraiはチェコ語が分からないので、確実なことは言えません。ただ、彼のチェコ語でのオペラは聴いているので、何となく、分かるような気もします。このソナタを聴いていると、どうしてもヤナーチェクの代表的なオペラ《カーチャ・カヴァノヴァ》を思い浮かべてしまいます。そして、今日の庄司紗矢香のヴァイオリンがカーチャ役のソプラノ歌手の歌に聴こえます。素晴らしいソプラノの響きを聴くかのごとくです。第2楽章のバラードは素晴らしい演奏で、最高のソプラノを聴いている感じでうっとりしていました。ただ、その響きは素晴らしいのですが、チェコ語がうまくない歌にも聴こえたのも事実です。このあたりが課題でしょうか。

次はベートーヴェンのソナタです。力みのない素直な表現での演奏でした。これは第2楽章での美しい演奏が胸に残りました。次にはもっと熟成した演奏を期待したいところです。

休憩後、ドビュッシーのソナタです。庄司紗矢香の演奏するフランス音楽は初めて聴くような気がします。ちょっと不安な気持ちで演奏を聴き始めましたが、実にたっぷりした演奏で美しく響きます。パリに住んでいるせいか、フランスの香りに満ちています。とても気持ちよく聴けました。これなら、フランクのヴァイオリン・ソナタあたりも聴いてみたくなります。

最後はシューマンのヴァイオリン・ソナタ第2番です。彼女のシューマンも初めて聴くような気がします。第1楽章はよい演奏でしたが、もっと爽やかに抒情を込めて弾いてほしかった感じです。そして、大好きな第3楽章ですが、これは素晴らしい演奏でした。ピツィカートで始まった主題のコラール「深き苦しみの淵から我汝を呼ぶ」が心を込めて演奏され、重音で演奏される部分の美しさは例えようもないものでした。ただただ、うっとりと聴きほれるだけです。最高の演奏でした。

とても充実したリサイタルでした。こういう幅広い曲目をなんなく弾きこなせるようになったんですね。協奏曲を弾く彼女はとても素晴らしい演奏をしてきましたが、こういうヴァイオリン・ソナタにもどんどん挑戦し、室内楽でも活躍を期待したいものです。アンコールのシベリウスの子守歌は初めて聴きましたが、シベリウスらしい繊細な美しさを表出した素晴らしい演奏でした。

10日後にまた、サントリーホールで同様のプログラムのリサイタルを聴きますが、シューマンのソナタがシューベルトの幻想曲に入れ替わります。シューベルトにも期待したいですね。



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       庄司紗矢香,  

フェドセーエフ/チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラ@サントリーホール 2012.10.15

今日は巨匠フェドセーエフ80歳記念ツアーと銘打ったコンサートです。やはり、チャイコフスキーは本場ロシアの指揮者とオーケストラで聴いてみたいものです。最近では、テミルカーノフ/サンクト・ペテルブルグ交響楽団やプレトニョフ/ロシア・ナショナル管弦楽団とかはなかなかの名演を聴かせてくれました。もちろん、ゲルギエフ/マリインスキー歌劇場管弦楽団は別格ですけどね。
フェドセーエフはロシアだけでなく、ウィーンでも活躍していますが、これまで聴く機会がなく、今回が初聴きになります。80歳を超えた指揮者は現在、そうはいませんが、ハイティンク、アーノンクール、プレートルなど敬愛する指揮者ばかりです。saraiの偏見ですが、指揮者とピアニストは80歳を超えて、本当の音楽家としての境地に達すると思っています。そういう意味で、80歳に達するのを楽しみに待っている音楽家も何人かいます。指揮者とピアニストは長生きも才能のひとつでしょう。そういうことで、今日も80歳になったフェドセーエフのコンサートに駆けつけることにしました。オール・チャイコフスキー・プログラムというのも期待の一つです。
予習もムラヴィンスキー、スヴェトラーノフというロシアの2大巨匠で「弦楽のためのセレナード 」、「悲愴」をきっちり聴きこみました。さすがにムラヴィンスキーは録音は古くても、心の奥底まで訴えてくる力があります。さて、今日のフェドセーエフはどうでしょう。フェドセーエフは「悲愴」を自筆譜に基づいて演奏していることで知られていますから、今日の演奏もきっとそうなるんでしょう。自筆譜に基づいた演奏の大きな特徴は第4楽章が通常のアダージョからアンダンテに変わることです。したがって、演奏時間も10分程度と通常に比べて、1~2分早まり、あっさりとした表現になる筈です。心して聴いてみましょう。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:ウラディーミル・フェドセーエフ
  管弦楽:チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラ(旧モスクワ放送交響楽団)

  ~オール・チャイコフスキー~
  「エフゲニ・オネーギン」より3つのシンフォニック・パラフレーズ(フェドセーエフ選曲)
    ・イントロダクション ・ワルツ ・ポロネーズ
  弦楽のためのセレナード ハ長調 op.48

《休憩》

  交響曲第6番 ロ短調 op.74「悲愴」

   《アンコール》
チャイコフスキー:バレエ音楽《眠りの森の美女》~パノラマ
    チャイコフスキー:バレエ音楽《白鳥の湖》~スペインの踊り

まず、歌劇《エウゲニ・オネーギン》からの3曲です。来年の4月にウィーン国立歌劇場でこのオペラを見る予定なので、耳なじみにいいでしょう。最初は第1幕冒頭の音楽です。暗く沈んで、このドラマの先行きを暗示しています。弦が中心ですが、アンサンブルが完璧ではないのが残念です。それに高音弦の透き通った響きがないのも不満ですが、逆に低音弦を中心に分厚いサウンドできっちりした演奏です。初めはロシア的な響きかとも思いましたが、そういうわけでもなさそうです。分厚い響きを除けば、結構モダンな演奏に思えます。もっとも弦の配置はロシア型の対向配置で、第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンと並び、コントラバスは管楽器群の後ろの台の上に陣取っています。
第1曲は繊細な響きでいい感じです。第2曲はワルツです。華やかですが、屈折のある明るさです。第3曲はよく独立して演奏される有名なポロネーズです。オペラでは、華やかな舞踏会のシーンで圧倒される音楽ですが、フェドセーエフも思い切ってドライブし、オペラの場面を想像しながら、気持ち良く聴けました。コンサートの幕開けには、打ってつけの選曲でした。まあ、軽く始まったというところです。

次は、管楽器奏者が退場し、《弦楽のためのセレナーデ》です。予習したムラヴィンスキーの演奏では、セレナーデなんていう軽いノリの音楽ではなくて、とても深い精神性に満ちた音楽で、形式はともかくとしても、交響曲といっても差し支えのない大変な傑作です。今日の演奏は、よくも悪くもやはり、セレナーデでした。ただ、美しさだけを求めた演奏ではありませんでした。特に第3楽章の切々とした響きは心に迫るものがありました。後半の低弦のピチカートに乗って、第1ヴァイオリンが深い歌を歌うところは何という美しさでしょう。
これで前半は終了。満足でしたが、少し物足りない感じもありました。

休憩後、《悲愴》です。第1楽章は実に暗い表情で抑えた表現です。無理のない自然な演奏とも言えます。もちろん、曲の抑揚はありますが、いかにも朴訥とした感じで派手さのかけらもありません。聴きながら、色々と考えてしまいました。スコア通りに抑えた自然な演奏をするので、聴衆のほうから音楽に近づいてきて、それぞれの心の中でこの音楽を咀嚼して欲しいというメッセージなんでしょうか。それはそれで理解できます。いわゆる押しつけがましい演奏、自己陶酔型の演奏の対極を行くわけです。演奏家は作曲家と聴き手の間をダイレクトにつなぐためのパスとしてだけ存在し、出来る限り、作曲家の書いたスコアを忠実に再現するという黒子的な存在に徹するという、ある意味、困難な作業を行うわけです。その理解が正しいかどうかは分かりませんが、精神的な意味で身を乗り出して、音楽に没頭することになりました。音楽の細かいニュアンスは自分で聴きとるのみです。第2楽章は美しい音楽ですが、それでもやはり抑えた表現が続き、自分から音楽を聴きとる作業を続けます。こういう演奏もあるのだと、この時点までは納得して聴いていました。何といっても、こういう演奏は退屈する暇がないという利点があります。自分なりに音楽を理解するので手一杯で退屈する暇なんてありません。特に《悲愴》のような聴きなれた超有名曲だと、単に美しい演奏は退屈することもありますからね。妙な聴き方かも知れませんが、実は音楽に接近するための本質的な聴き方のような気もします。
ところがです。第3楽章にはいると、状況が一変します。フェドセーエフが抑えていた手綱を開放し、オーケストラを響かせ始めたんです。繊細な響きですが、勢いのある演奏が始まりました。そして、徐々に頂点に上り詰めます。今までが抑えた表現だったので、余計に解放感があり、響きに酔いしれます。そして、第4楽章です。《悲愴》の看板とも言っていい部分です。そうそう、自筆譜に基づいたアンダンテのテンポなんですね。聴いていても少し速いかなと思うくらいで自然な演奏です。それよりも、演奏が切々とした調子ではなく、哀しい響きながら、ボリューム感のたっぷりとした分厚い響きなんです。ここに至って、今日の演奏の骨格がようやく理解できました。フェドセーエフは第1楽章から第4楽章までを全開でドライブしないで、第2楽章まではきっちりと抑えた演奏をして、第3楽章から盛り上げ始め、第4楽章に頂点を持ってこようという周到な設計をしていたようです。通常の《悲愴》の演奏とはずい分と違った演奏です。通常は第1楽章から第3楽章までを美しく、そして、激しく歌い上げ、一転して、第4楽章はテンポを落とし、抑えた響きで切々と迫るというのが定番でしょう。saraiもフェドセーエフの引いた設計図にまんまと乗り、第2楽章までは気をそそられ、第3楽章で解放され、そして、第4楽章で圧倒されるということになりました。第4楽章は終始、美しい響きで満たされ、高揚感を味わえました。フィナーレですが、低弦の強い響きが鼓動のように続きながらのエンディング。消え入るようにではありません。弔いの鐘のように銅鑼がなり、金管もそれに続いた後、通常は悲劇の幕引きのように弦が小さな響きで消え入るように人の最期を悲しんで終わるというところですが、今日の演奏は違うメッセージを感じます。人は悲劇的な運命にあったとしても、じっとそれに耐えて、生き抜くだけだという感じに聴こえます。それは《悲愴》の正しい解釈なのかもしれません。フェドセーエフが自筆譜を読みこなした結果がこれだったんでしょうか・・・。
以上はsaraiの勝手な深読み、あるいは誤解かも知れません。しかし、演奏を聴いた後の感動は確かにありました。いつもとは違う《悲愴》で感じるところも大いにありました。これをCDで聴いたら、きっと第2楽章までが物足りなくて、第3、第4楽章がよかったという感じになりそうな気がしますが、生演奏で聴けば、後半に盛り上がる演奏に満足して、感動ということになります。実際、第4楽章が終わった後、しばしの静寂があり、その後、聴衆は拍手と歓呼でフェドセーエフを称えました。アンコールのバレエ曲も思いっきり、美しく、激しく演奏され、本番以上の演奏でした。サントリーホール恒例?の指揮者のみのカーテンコールでしめくくり、聴衆と音楽家の心が触れ合う感動のコンサートとなりました。
最後に書き忘れていました。第4楽章のテンポですが、聴いていてもよく分かりませんでしたが、時間を計測すると約10分でした。規範?とされるムラヴィンスキーの1960年のDG録音も10分弱ですから、変わりませんね。これって、どういうことでしょうね?



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この記事へのコメント

1, AMATIさん 2012/10/18 10:40
感想読ませていただきました。主催者として、とても嬉しくまた今後の企画に参考になるありがたい内容でした。ありがとうございます。ひとつだけお伝えしたく、投稿させていただきます。

「人は悲劇的な運命にあったとしても、じっとそれに耐えて、生き抜くだけだ」

という想いを感じてくださったとのことですが、マエストロがまさにそのようなことをおっしゃっていたので、そのことをお伝えさせて下さい。マエストロにもそう感じてくださったお客様がいらして書き込みをしてたくさんの方に伝えてくれていました、と伝えます。
御来場ありがとうございました。



2, saraiさん 2012/10/18 13:59
AMATIのスタッフのかたからのメッセージ、ありがとうございます。
マエストロにもよろしくお伝えください。機会があれば、ウィーンでマエストロの指揮するウィーン交響楽団のコンサートにも足を運びます。今年の定期演奏会のオープニングコンサートは素晴らしかったようですね。

なお、聴衆の一人として、演奏家のかたと思いを同じくできることは、コンサート通いをする一番の喜びです。嬉しくコメントを読ませていただきました。

ところでAMATIの活動も注目しています。特に菊池洋子、パク・ヘユンは目が離せません。今後ともよい音楽を聴かせてくださいね。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

 

田部京子・矢部達哉・古川展生《室内楽コンサート》@上大岡ひまわりの郷 2012.10.12

すっかり秋めいてきました。秋といえば、やはり室内楽をじっくりと聴いてみたいですね。先週、上大岡ひまわりの郷コンサート・シリーズで吉野直子ハープ・リサイタルを聴きましたが、その際、今日の室内楽コンサートのことを知りました。日本を代表する演奏家たちが近場の小さなホールで室内楽を奏でてくれるのはとても嬉しいです。
実際、期待以上の素晴らしい演奏で感動しました。特に後半のピアノ3重奏曲の定番中の定番、ベートーヴェンの《大公》は大袈裟に聴こえるかもしれませんが、予習したオイストラッフ・トリオ、スターン・トリオ、スーク・トリオ、そして、ケンプ+シェリング+フルニエの演奏を吹き飛ばしてしまう快演で、終始、酔いしれました。ベートーヴェンの《大公》がとてつもない傑作であることが初めて実感できました。実は《大公》、そして、ピアノ3重奏曲は生で聴いたのは初めてだったんです。ピアノ3重奏曲は生が一番です。あのチェロの深い響きは拙宅のオーディオ装置では決して再現できません。

今日のプログラムは以下です。

  ヴァイオリン:矢部達哉
  チェロ:古川展生
  ピアノ:田部京子

  ベートーヴェン:ユダス・マカベウスの主題による12の変奏曲 WoO 45
  ブラームス:主題と変奏 Op.18(弦楽6重奏曲第1番第2楽章の作曲家自身のピアノ編曲)
  ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番《雨の歌》 Op.78

《休憩》

  ベートーヴェン:ピアノ3重奏曲第7番《大公》 Op.97

   《アンコール》 ドビュッシー:ピアノ3重奏曲より第3楽章

矢部、古川の両氏は東京都響の弦楽セクションを支える首席奏者で、毎月の定期演奏会でいつもご尊顔を拝見していますが、なかなか、ソロの音は聴いていません。ピアニストの田部氏は初聴きです。

前半のプログラムはベートーヴェンはともかく、ブラームスは不満だらけの演奏。あまり思い出したくないので、詳細には触れませんが、休憩時間に配偶者にsaraiは「日本人の音楽家はどうしてブラームスがちゃんと演奏できないんだ!」なんて暴言を吐いていました。《主題と変奏》は妙にピアノを響かせ過ぎて、ピアノのピュアーな音色が聴けませんでしたし、ヴァイオリン・ソナタはあの爽やかなロマンチシズムが表現できていませんでした。ベートーヴェンの《ユダス・マカベウスの主題による12の変奏曲》はチェロの古川展生の深い響き、力強い音楽表現で結構よかったんですが、ブラームスの2曲でその好演も消え去ってしまいました。

ということで、まったく期待していなかった《大公》です。この長大な曲、退屈するといやだなあと思いながら聴き始めました。
第1楽章はあの有名な主題から始まります。たーたーたーたーたー、たーたたーたーたーたーたー・・・。
いやもう、その素晴らしい響きに金縛りにあいました。あの聴きなれていた筈の旋律が実に新鮮に聴こえます。チェロの低音の深い響きはCDでは味わったことがありません。実はsaraiはかぶりつきのど真ん中で聴いていました。美しいヴァイオリンの高音の響き、ピアノの重厚な響き、それらが一体になって、saraiの耳を楽しませてくれます。長い筈のこの曲がアンサンブルの妙に聴き惚れているうちにあっという間に進行していきます。圧巻は第3楽章。ピアノの内省的な流れのとても美しい音楽が始まります。やがて、チェロ、そして、ヴァイオリンが絡んでいきます。思わず目頭が熱くなり、saraiの胸は感動で満たされます。これはベートーヴェンが書いたなかでももっとも美しい曲の一つです。後期の弦楽四重奏曲群、後期のピアノ・ソナタ群と肩を並べる傑作中の傑作です。美しく諦念に満ちた変奏が次々に続きます。最後に主題に戻った時の美しさといったら、何物にも例えられません。そして、そのまま、明るい第4楽章にはいり、うきうきした気分で曲が閉じられます。フィナーレでの余韻も感じました。素晴らしい快演です。こんな素晴らしい音楽がこんなにお手軽に聴けて、嘘のようです。演奏した3人の名手にブラヴォー!

アンコールはドビュッシー、もちろん、聴いたことのない曲です。チェロが甘いロマンを感じさせるメロディーを弾きます。これって、本当にドビュッシー? 印象派ならぬ、後期ロマン派の響きです。ロマンの香りに満ち、フランス的な気品も感じる美しい曲でした。

彼ら3人は素晴らしいピアノ・トリオです。できれば、前半もピアノ・トリオの曲を演奏してくれればなあと叶わぬ望みを配偶者に話しながら、ご機嫌でホールを後にしました。

今夜とまったく同じプログラムで11月7日に浜離宮朝日ホールでコンサートが予定されています。少なくとも《大公》だけは聴きものですよ。室内楽の好きなかたもそうでないかたも是非、足を運ぶことをお勧めします。

最後に駄話ですが、ピアニストの田部京子は初めて聴きましたが、とても綺麗なかたでした。saraiは音楽家を見栄えでは評価しませんが、美しさは罪ではありません。ねっ・・・



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       田部京子,  

吉野直子ハープ・リサイタル@上大岡ひまわりの郷 2012.10.7

今日は上大岡ひまわりの郷コンサート・シリーズの2012年秋編の開幕コンサートです。実に珍しいハープ独奏のリサイタルです。
クラシック音楽でハープが主役の曲というと、モーツァルトの《フルートとハープのための協奏曲》、ヘンデルの《ハープ協奏曲》、ドビュッシーの《フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ》あたりしか思いつきません。いずれも名曲ですけどね。しかし、ハープ独奏というと何も思い当りません。失礼ながら、クラシック音楽というよりもムード音楽のような気がしてしまいます。いずれにせよ、滅多に聴かない珍しい(saraiにとってですが)リサイタルなので、折角の機会を楽しみましょう。

今日のプログラムは以下です。

  ハープ:吉野直子

  J.S.バッハ=グランジャニー編曲:プレリュード(無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番)
  ロゼッティ:ハープ・ソナタ第2番変ホ長調 Op.2-2
  クロフト:サラバンドとグラウンド ハ短調
  J.S.バッハ=オーウェンズ/吉野直子編曲:シャコンヌ(無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番)

《休憩》

  グランジャニー:コロラド・トレイル Op.28
  プレル:雨にぬれた庭
  ルニエ:黙想
  ドビュッシー=ルニエ編曲:アラベスク第1番、亜麻色の髪の乙女(前奏曲集第1巻)
  アルベニス=マクドナルド/ウッド編曲:入江のざわめき(マラゲーニャ)
  グリーディ:古いソルツィーコ

   《アンコール》 サルツェード:夜の歌

プログラムを見ると、オリジナルは別の楽器で編曲されたものが多いことに気が付きます。そして、saraiの知っている曲はすべて編曲されたものです。ハープ独奏の有名曲って、なさそうですね。
まずはバッハのプレリュードです。この曲らしく、小気味いいテンポできっちりとした演奏です。愛聴しているオリジナル曲のヒラリー・ハーンの演奏は天馬空を行くか如きで、それには及びませんが、なかなか気持ちよく聴けます。もし、原曲のヴァイオリン曲を知らなければ、すっかり満足して聴いてしまいそうな快調な演奏でした。バッハはそもそも楽器を変えて演奏しても、どの曲も立派に演奏できてしまうのが凄いですね。
次のロゼッティのソナタはまったく聴いたことのない曲ですが、典型的な古典派のソナタで一発で楽しめてしまう曲です。第1楽章は模範的なソナタ形式できっちり提示部の繰り返しもあるので、曲の把握が簡単で、退屈することもありません。古典派のピアノ・ソナタを聴いている気分で聴いていました。まあ、短いのもいいですね。
次のクロフトのサラバンドとグラウンドですが、特に前半のサラバンドはいかにも古いイギリスを感じさせる名曲でした。初めて聴いたのになにやら懐かしい感覚を抱いてしまいます。ハープには、こういう曲が似合うんですね。何度聴いても聴き飽きない思いを持ちました。今日のリサイタルは多彩なプログラムでハープの魅力を聴かせてくれるという趣向のようですが、こういうイギリスの古いハープ曲だけのプログラムのリサイタルなら、また聴きたくなりそうです。今日の一番の収穫でした。
前半の最後はバッハのシャコンヌです。大曲です。原曲はもちろん、ヴァイオリン曲ですが、ピアノで演奏されることもあります。ハープでの演奏にピアノでの演奏は比較的近いかと思い、事前にミケランジェリの演奏を聴いておきました。ミケランジェリの演奏はかなりピアノを強く響かせた演奏で違和感のある演奏でしたが、吉野直子のハープ演奏はまろやかで耳にすっとはいってくる感じで、これは吉野直子のハープ演奏に軍配をあげましょう。もちろん、ヴァイオリンの名曲中の名曲なので、シャコンヌはヴァイオリンで聴くと異次元の素晴らしさがあることは間違いありません。ハープでは、耳に心地よい音楽に流れてしまい過ぎます。ヴァイオリン演奏での高い精神性はほかの楽器では表現が難しそうです。

休憩後、19世紀から20世紀に作られた曲が演奏されました。
グランジャニーの曲は良くも悪しくもアメリカの音楽です。グローフェの曲を聴いている感じ。それにハープ奏者が作曲したということもあり、音楽の深さは感じられません。耳に心地よい音楽ではありますが、そういうのはsaraiの好みではありません。
それに引き換え、次のプレルの曲はドビュッシーのような印象派を思わせる内容で素晴らしく音楽的です。フランス音楽の粋を聴かせてもらいました。
次のルニエの曲はまあまあですが、これもいかにもハープ奏者がハープをムード的に聴かせようとするところがもうひとつに感じます。もっと、音楽的に掘り下げてほしいと感じてしまいます。
次はドビュッシーの有名ピアノ曲が2曲です。吉野直子のお話で、これらの曲はピアノよりもむしろハープに向いているという紹介がありましたが、なるほど、《アラベスク》は本当にハープ演奏にぴったりです。今後、この曲はピアノでなく、ハープで聴いてもいいかなと思うほど、見事な演奏でした。《亜麻色の髪の乙女》はピアノがいいか、ハープがいいか、結構、拮抗しています。ピアノ演奏は少し聴き飽きているので、ハープもいいかも知れません。《月の光》なんかはどうなんでしょう?
次はアルベニスの有名曲《入江のざわめき》です。原曲はピアノ曲ですが、一般的にはギターで演奏されることが多いですね。その場合、《マラゲーニャ》という名前でも呼ばれています。一応、予習のためにナルシソ・イエペスのギター演奏を聴いておきましたが、やっぱり、この曲はギターの名曲です。ハープの演奏は綺麗ですが、素直過ぎて、ギターの持つ魔力のような力に欠けます。
最後のグリーディの曲もスペインの曲ですが、正直、よく分かりません。頭の上を音楽が素通りしてしまいます。なんでしょうね。saraiには印象がどうしてもつかめない曲でした。
アンコールの曲はハープの新しい技巧をふんだんに盛り込んだ曲でした。アンコール曲らしい華やかさに満ちていました。

全体に吉野直子のハープ演奏はとても素晴らしく、いいものを聴かせてもらったと思いました。しかし、反面、ハープは少なくとも独奏曲には恵まれていないという印象を持ちました。もっとも、この分野はほとんど聴いたことがないので、初心者の単なる思い違いかも知れません。ヨーロッパでは竪琴の長い歴史があるので、古い曲には素晴らしいものがたくさんあるのかも知れません。

ところで、前回のこのコンサートシリーズで聴いたアンリ・バルダは当ブログでも大絶賛しましたが、このコンサートシリーズをプロデュースしている平井さんのメッセージによると、また、再来年にこのステージに再登場してくれるとのことです。あの強靭で音楽的なタッチの響きがまた聴けるかと思うと嬉しい限りです。



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マーラー:嘆きの歌、インバル+都響+スーパー・コーラス・トーキョー@東京文化会館 2012.10.3

マーラーの《嘆きの歌》はマーラーの若い頃の作品で、演奏機会のそう多いものではありません。マーラーの作品でこれよりも若い頃の作品と言えば、ピアノ四重奏曲(第1楽章のみで未完成の作品)がありますが、これはなかなか美しい作品です。未完なのが残念です。マーラー10代の作品です。
ちょうど、インバル+都響のマーラー・ティクルスが始まったところで、絶好の機会なので、聴いてみようと思い立ちました。
saraiは実は《嘆きの歌》を聴いたことがなく、急遽、予習に励みました。聴いたのは以下です。
 シノーポリ指揮フィルハーモニア管弦楽団
 ブーレーズ指揮ロンドン交響楽団
 ラトル指揮バーミンガム市交響楽団
 ハイティンク指揮コンセルトヘボウ管弦楽団
 シャイー指揮ベルリン・ドイツ交響楽団
不思議なことにいずれのCDも素晴らしい演奏で甲乙つけがたしの感があります。そういえば、マーラーのCDって、難しいことを言わなければ、よい演奏が多いですね。特にこの《嘆きの歌》はマーラーの自己陶酔の熱い思いがないので、客観的な美しい演奏が可能なのかも知れません。いずれにせよ、どのCDも名指揮者と名オーケストラですから、高水準な演奏は当たり前かもしれません。もし、1枚選ぶとしたら、やはり、ハイティンク盤になるでしょう。ただ、後述しますが、このCDは最終稿の第2部+第3部で、第1部ははいっていません。第1部も含むCDなら、ブーレーズかシャイーでしょうか。saraiは必ずしも第1部も演奏すべきだとは思っていません。純音楽的に第2部+第3部でこの《嘆きの歌》は十分に充足していると感じるからです。このCDの顔ぶれを見ると、クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団がCD録音していないのが惜しまれます。べストな演奏が期待できたような気がします。

さて、この《嘆きの歌》の成り立ちですが、初稿版ではマーラーはコンクールに応募するために意欲的な取り組みをして、3部から成る大規模な作品に仕立て上げました。しかし、当時の音楽状況ではまったく不評でコンクールは落選し、誰も認めてくれませんでした。あきらめきれないマーラーは構成を見直し、より小規模な作品に改訂し、最終稿では独唱者の数を減らしたり、第1部もすべてカットしました。
マーラー自身が初演したのは、この最終稿で第2部+第3部だけの作品です。ですから、もう、それを今でも演奏すればいいと思うのですが、後日(マーラーの死後)、初稿版が発見され、しかも当初は第1部の初稿版のみが公開されたため、第1部は初稿版で、残りの第2部+第3部は最終稿で演奏されるということが主流になったようです。確かに長大な第1部も美しい音楽で、見つかった以上、演奏しないのはもったいないとは思いますが、マーラーの意図には反しているような気がします。最近、すべての初稿版が公開され、3部とも初稿版で演奏することが主流になっているようです。本日の演奏は第1部は初稿版で、残りの第2部+第3部は最終稿だそうで、指揮者のインバルの意図だということです。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:エリアフ・インバル
  合唱指揮:ロベルト・ガッビアーニ

  ソプラノ:浜田理恵
  メゾソプラノ:小山由美
  テノール:福井敬
  バリトン:堀内康雄

  合唱:スーパー・コーラス・トーキョー
  管弦楽:東京都交響楽団


  ワーグナー:ジークフリート牧歌

《休憩》

  マーラー:カンタータ《嘆きの歌》(全3部)

まずはワーグナーの後期ロマン派の香気がたちのぼる名作《ジークフリート牧歌》です。これはとてもよい演奏でうっとりしてしまいました。特に弱音で繊細な部分の演奏が心に沁み入ります。今日の東京都響はコンサートマスターが山本友重で、いつもの第1ヴァイオリンの強力な女性奏者群の一部が欠けた布陣で、前回のマーラー・ティクルス開幕の《巨人》のベストメンバーに比べると、もうひとつの感はありますが、さすがにそれでも都響の演奏は素晴らしい響きです。なお、マーラーの《嘆きの歌》には、ワーグナーを思わせるところが多々あります。それを意識しての選曲なんでしょう。インバル自身は愛とロマンティシズムが共通しているので選曲したとは説明していました。まあ、この選曲は妥当かも知れませんが、《嘆きの歌》のワーグナー的な部分には、《パルジファル》を連想してしまいます。ですから、《パルジファル》の前奏曲というのもよかったかなとも思いました。

休憩後、いよいよ、マーラー《嘆きの歌》です。最弱音で第1部が開始されます。メロディーが始まると同時に、テンポが少し早いことに気が付きました。もっと、じっくりと粘って、美しい響きを引き出してもらいたいものです。なんだか、オーケストラの演奏も平板で、ディテールのほりの深さにも欠けます。それでも声楽がはいってくるあたりからはテンポも落ち着きましたが、演奏はしっくりときません。この第1部は美しい響きに満ちた演奏の筈なんですけどね。後半は幾分、部分的に美しい響きが感じられますが、インバルらしい構成感には欠けています。このままの演奏で終わるんだったら、つまらないと思ってしまいました。
ところが第2部が始まると、まったく違う音楽が響き始めました。まさにインバルのマーラーです。構成感があり、ディテールの繊細さも兼ね備えています。合唱も独唱も好演しています。満足して、残りの曲を楽しめました。曲自体がまだマーラーになりきっていないマーラーですから、それはそれで仕方がないでしょう。《復活》のような高揚感には欠けますが、これがマーラーの交響曲第0番、もしくは第-1番とは思えます。

あくまでもsaraiの想像ですが、インバルは最終稿の第2部+第3部に馴染んでおり、曲を深く把握していたんでしょう。初稿版の第1部は十分に把握しきれていなかった印象です。本来は最終稿の第2部+第3部だけを演奏すればよかったのでしょうが、世の流れで第1部をカットできなかったと思われます。次回はきちんと全体を初稿版で完全把握した演奏を望みたいと思います。

とは言え、正直なところ、saraiはマーラーを聴くんだったら、《復活》や《大地の歌》を聴きたいですね。実際、インバル指揮の両曲は素晴らしい演奏でした。どんなに《嘆きの歌》を名演奏しても、感動の深さは比べられないと思ってしまいます。今日はマーラーの若き日の作品に接したということで満足しておきましょう。



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上原彩子の素晴らしいピアノ、インバル+都響のマーラー・ツィクルスも素晴らしいスタート@東京芸術劇場 2012.9.15

8月下旬以来、久々のコンサートに出かけました。8月下旬は上原彩子のピアノ・リサイタルと東京都響の定期演奏会を聴きましたが、今日はそれらを組み合わせたものです。上原彩子と東京都響の共演、しかもインバルのマーラー・ツィクルスのスタートでもあります。これは聴き逃せません。そのため、横浜からわざわざ遠い池袋まで出撃しました。
その努力は報われました。上原彩子のベートーヴェンはチャーミングで陶酔的ですらありました。こんなベートーヴェン演奏もあるんですね。これだけでもコンサートに満足するところですが、コンサート後半はインバル+都響の新マーラー・ツィクルスがいよいよ始動。《巨人》の凄まじいフィナーレは再来年の交響曲第9番までのツィクルスが素晴らしい演奏になることを予感させる祝典的なファンファーレに思われました。

今日のプログラムは以下です。

  ピアノ:上原彩子
  指揮:エリアフ・インバル
  管弦楽:東京都交響楽団

  ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 Op.19

《休憩》

  マーラー:交響曲第1番 ニ長調 《巨人》

まずは真っ赤なドレスに身を包んだ上原彩子が巨匠インバルを従えて登場です。
新マーラー・ツィクルスの始動にベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番を演奏するとは、何とも粋な選曲です。古典派の交響曲を完成したとも言えるベートーヴェンを冒頭に演奏して、マーラーのシンフォニーズの原点を示す意図でしょう。それもベートーヴェンがモーツァルトの古典派音楽を引き継ぎつつ、自己の音楽を確立しつつあったピアノ協奏曲第2番はマーラーの《巨人》にぴったりです。マーラーもこの第1交響曲で新しいシンフォニーの世界を確立していったわけですからね。
ベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番は意外に演奏機会の少ない作品で、saraiも過去に聴いた記憶がありません。それだけに上原彩子がどう弾くのか、興味津々です。事前に予習したのは、ペライアとアラウです。最近はベートーヴェンと言えば、彼らの美しいタッチの演奏がsaraiのお気に入りなんです。
上原彩子がうなずくと、インバルの棒が振り下ろされ、都響の演奏が始まります。今日の都響は四方恭子、矢部達哉のダブルコンマスを始め、第1ヴァイオリンの強力な女性陣、すべてのパートがベストメンバーです。弦楽の美しい響きは最良のベートーヴェンの音楽を奏でていきます。まさに納得のベートーヴェンです。堂々として、たおやかで、力みのない自然な演奏です。その間、上原彩子は強く息を弾ませながら、高ぶる気持ちを抑えきれない様子です。2列目の中央の席にいたsaraiからはすぐそこに上原彩子がいるので、表情がよく見てとれます。プロの演奏家もこんなに緊張するのかと驚きました。やがて、上原彩子がピアノの鍵盤を叩き始めました。よく響く切れのある演奏です。ピアノはスタインウェイで響きのよいこと、この上なしです。美しいピアノの響きはアラウの響きにも匹敵するほどです。違いと言えば、アラウのためのきいた演奏と上原彩子の切れのある新鮮な演奏というところでしょうか。ペライアと似たスタイルにも思えます。一言で言えば、重厚な演奏ではなくて、美しい響きの演奏です。saraiの聴きたいベートーヴェンとも言えるでしょう。フレージングと言い、明快で正確な打鍵と言い、パーフェクトな演奏です。強いて問題点を挙げれば、強い打鍵で少し音が割れ気味になることですが、大ホールの中ですぐ近くで聴いているsaraiだけの問題かも知れませんね。逆に弱音の美しい響きにはうっとりするだけです。ピアノの音の素晴らしい奔流に身を任せているだけで第1楽章がいつの間にか終わってしまいました。カデンツァは思い切ったダイナミズムと奔放とも言えるテンポの動かし方で、ピアノのソロ演奏を満喫できました。即興性を感じさせてくれる素晴らしいカデンツァでした。
第2楽章がこの日の演奏の白眉とも言えるものでした。古典的でロマン的、一見、相反するような概念を見事に融合した演奏です。抒情的でよく歌う演奏で、実際、上原彩子の歌声も聴こえました。装飾音(ターン)の弾きこなしの素晴らしさにも絶句しました。それに彼女の陶酔した表情もその音楽とぴったり寄り添うものです。実にチャーミングでセクシーな音楽、ベートーヴェンからこういう音楽を引き出すことのできるピアニストは凄いとしか言えません。音楽スタイルはまったく異なりますが、時代を超えて、マーラーのピアノ協奏曲を聴いている感じと言えば、言い過ぎでしょうか。マーラーがもしピアノ協奏曲を作曲したら、緩徐楽章でどのように音楽を展開したのかと思わず想像してしまうような演奏だったんです。モーツァルトのピアノ協奏曲の影響を色濃く残した作品であると思っていましたが、この曲はなかなか奥深い作品であることが今更ながら、理解できました。
第3楽章は切れのあるタッチでばりばりとピアノを弾いていきます。ピアニズムの見事さに脱帽です。ずい分、弾き込んだんでしょうね。かなり速いテンポの演奏ですが、オーケストラもしっかりと付いていきます。この楽章も圧巻の演奏でした。
爽快でかつ陶酔的なベートーヴェンでした。第2番でこれだけの演奏とは恐れ入りました。第1番ではなく、第2番を演奏してくれて、本当によかったという感想です。上原彩子の奔放な演奏をしっかりと支えたインバルの巨匠としての実力もやはり見逃せません。このコンビでショスタコーヴィチでも聴きたいですね。

休憩後、いよいよ、マーラーです。インバルと東京都交響楽団のマーラーは既に《復活》、《大地の歌》を聴いていますが、いずれも最高水準のマーラー演奏でした。ベルティーニ亡き後、再び、感動のマーラーが聴けそうです。
大編成でベストメンバーの東京都交響楽団がステージ上に並び、インバルが指揮を始めます。
第1楽章は静かな弦のフラジオレットから始まり、明るい響きの音楽が展開されます。後半、少し熱を帯びますが、全体に平静に美しい弦の響きが心に残ります。
第2楽章は低弦が印象的なスケルツォでここでも都響の弦の実力が遺憾なく発揮されました。
第3楽章は葬送の旋律に始まり、葬送の旋律に回帰します。
そして、嵐のような第4楽章が始まります。意外に最初からは全開モードではありません。これがインバルの構成感でしょう。インバルのマーラーはベルティーニと違って、細部を磨き上げるのではなく、全体の構成を考え抜いた表現になっています。以前聴いた《復活》も《大地の歌》もフィナーレに向かって、頂点を目指す構成でした。そして、この日の《巨人》も最後の3分間に向けて、圧倒的な感動を盛り上げていきます。すべてはフィナーレに向けての周到な準備作業だったとも言えます。金管の立奏のあたりのめくるめき感動はインバルのマーラー演奏の頂点です。そして、単に交響曲第1番《巨人》の演奏に留まらず、マーラーがその後、次々と完成させていった傑作シンフォニー群を予感させる序章としてのファンファーレを感じさせるものでもあります。感動的ではありますが、あくまでも祝典的で楽天的にも思えます。これが交響曲第5番をひとつの頂点として、《大地の歌》、交響曲第9番の深遠とも思える世界に変容していくことを考えると身震いする思いです。
インバルのマーラー・ツィクルスはマーラーの全交響曲の構成も念頭に置いた演奏であり、最後に完結する交響曲第9番に向けての長い道のりを見通した演奏であることを感じさせる今回の交響曲第1番《巨人》でした。日本のオーケストラでマーラーの高水準の演奏が聴ける稀有な機会であり、その演奏に立ち会うことができる幸せを感じています。



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       上原彩子,  

東京都交響楽団定期演奏会@サントリーホール 2012.8.28

今日はいつもは聴かない現代音楽のコンサート。1年に1回、定期演奏会に組み込まれています。
実はこの日の現代音楽のコンサートを別の日のコンサートに振り替えようと都響の事務局に電話したところ、振替先の9月のコンサートはインバルのマーラー・チクルスの1回目の「巨人」で既にソールドアウトで振替不可だったんです。
しぶしぶ、現代音楽のコンサートを聴いてみることにしました。

今日のプログラムは以下です。

  ケージ:エトセトラ2(4群のオーケストラとテープのための)

《休憩》

  一柳慧:ピアノ協奏曲第5番《フィンランド》-左手のための(世界初演)
    ピアノ:館野泉
  一柳慧:交響曲第8番《レヴェレーション2011》(フルオーケストラ版初演)

最初のジョン・ケージの作品ですが、サントリーホールが委嘱し、1986年にこのホールで世界初演したそうです。
本日の主役の日本人作曲家の一柳慧(いちやなぎ・とし)がニューヨークに留学中の師がジョン・ケージだったそうです。そういうわけで一柳慧の音楽のルーツ:源流であるジョン・ケージの作品を最初に取り上げることになったそうです。
ジョン・ケージは禅僧の鈴木大拙の教えを受けて、大変影響された作曲家で禅の思想による質素で枯れた音楽を志し、音楽での音の密度が希薄になるように構成しています。今日のエトセトラ2もその典型で、その構成で京都の龍安寺をイメージしているそうです。
ステージ上に楽団員が登場しますが、4つの塊になって、それぞれ別の4人の指揮者が立ちます。そして、楽団員のいでたちと言えば、正装どころか、ばらばらのカジュアルな服装です。
実に奇妙な形で音楽が始まります。いや、音楽と呼べるかどうか、saraiには判然としません。saraiの尺度ではアンチ音楽とも言えます。
緊張感がなく、求心力のない音が時折、ぱらぱらと鳴っているだけ。ベートーヴェンの音楽のようにきっちりと楽譜に書かれた音楽は押しつけがましく、暴力的であるとさえ、考えたようで、その対極を行けば、平和でユートピア的な理想の音楽が生まれるとケージは考えたようです。
4つに分かれたオーケストラは平等な立場で合計143発のトゥッティをバラバラに鳴らします。そのバックグラウンドではケージの仕事部屋で録音した日常音のテープが流されます。この音楽はそれだけのことです。興奮もなければ、感動もありません。ただ、たんたんと音が鳴っているだけ。
驚いたことにこの退屈とも思える時間、saraiは一向に眠気に襲われませんでした。平静で客観的な気持を保持できたからかも知れません。
音楽が終わり、一体、自分が何を聴いたのか、まったく分かりません。これはケージの思想かも知れませんが、saraiの考える音楽とは程遠いものです。ベルクやウェーベルンの無調音楽でも、何かしら、自分の心のなかに熱いものを感じますが、ここにはそれはないし、今後聴きこんでも、ある筈がありません。saraiにとって、音楽は美しく、熱いものですからね。

休憩後、ケージの弟子である一柳慧の作品です。きっと前衛的な作品であると身構えましたが、いずれもある意味、古典的で美しい作品です。
1曲目のピアノ協奏曲はピアニストの館野泉の委嘱作品で左手のためのピアノ協奏曲です。ピアノソロで始まりますが、メロディアスで雰囲気のある曲です。第2次世界大戦前夜から戦争中に作られた限界状況の緊張感に満ちた音楽と似た印象がありました。世界初演ということで、もちろん、saraiも初聴きです。この音楽の評価はできません。ただ、何故、前衛作曲家であった一柳慧が古典回帰とも思える作品を作ったのか、そのあたりは謎です。
2曲目の交響曲もピアノ協奏曲と似た雰囲気です。昨年の大震災を悼んで創った作品だそうですが、そんなに深い鎮魂は感じません。最終の第4楽章が上昇音の動機を繰り返しながら、フィナーレの高みで爆発していくところが印象的でした。この部分は再生を意味しているとのことです。
2曲も世界初演を聴いたのは初めてです。もっともsaraiは現代音楽のコンサートに積極的に足を運ばないから当然ですね。

今日はいつにない体験をしました。



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上原彩子ピアノ・リサイタル@横浜みなとみらいホール 2012.8.26

今年の1月にサントリーホールで上原彩子のピアノ・リサイタルを聴きましたが、また今日、その時と半分同じ曲目のプログラムのピアノ・リサイタルを聴きます。1月のサントリーホールでのピアノ・リサイタルについてはここに書きました。

サントリーホールとは前半がまったく同じプログラムです。
今日のプログラムは以下です。

 べートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番 ハ短調 op.13 「悲愴」
 リスト:『詩的で宗教的な調べ』から第3曲「孤独のなかの神の祝福」
 リスト:リゴレット・パラフレーズ

  《休憩》

 ムソルグスキー:展覧会の絵

  《アンコール》

 リスト:愛の夢 第3番
 チャイコフスキー:《18の小品》より 第16曲〈5拍子のワルツ〉

サントリーホールでのピアノ・リサイタルの記事にも書きましたが、べートーヴェンの「悲愴」のサントリーホールでの演奏がまったく不満で、もう一度、みなとみらいホールで聴き直さないと気が済まない感じだったんです。サントリーホールでのリストは素晴らしい演奏だったので、これは何度聴いてもいい感じです。要は良くても悪くても何度も聴きたいっていうことですね(笑い)。

まずは問題のべートーヴェンの「悲愴」です。上原彩子はどきっとするほどの真っ赤なドレスで登場です。
固唾を飲んで、演奏を待ちます。まず、第1楽章の序奏ですが、かなり遅いテンポでの入りです。演奏はオーソドックスなものです。サントリーホールではYAMAHAのピアノでしたが、今日はスタインウェイ。そのせいか、響きが華やかに感じます。演奏は切れのある感じではありませんが、無難にまとめたものでサントリーホールでの演奏の不満は払拭してくれました。テンポは終始、少し遅めでした。第3楽章の中間あたりから、タッチも良くなり、気持ちよく聴けました。お陰で今日は気持ちよく拍手できました。ただ、今日の演奏が上原彩子のベストかと言えば、決して、そうは感じられません。彼女なら、もっと弾ける筈です。しかし、「悲愴」はもうこのあたりでいいでしょう。彼女もあまり、「悲愴」には思い入れがないのかも知れません。べートーヴェンは後期のソナタに期待したいところです。

リストの「孤独のなかの神の祝福」は前回同様、うっとりする演奏でした。難を言えば、演奏が美し過ぎることでしょうか。じゃあ、何を望むのかと言えば、何もありません。リストは美しい演奏が一番重要ですからね。妙に神秘的な演奏というのもsaraiの趣味ではありません。予習で聴いたアラウとボレットという巨匠の演奏に引けを取らない美しい演奏で大満足です。第1部での盛り上がるところ、フィナーレでの自在な弾きこなし、すべてが美しいリストになっていました。右手の高音部の美しいタッチには改めて驚かされました。これからも彼女がこの曲を熟成させていくのを聴き続けていきたいと思わせられる演奏でした。
続く《リゴレット・パラフレーズ》も素晴らしいリスト演奏でしたが、曲そのものが「孤独のなかの神の祝福」に比べると深みに欠けます。選曲上、こういう楽しい曲もプログラムに入れたのかも知れませんが、やはり、以前聴いて素晴らしかった「ペトラルカのソネット」104番あたりを聴きたかったですね。
上原彩子のリストは実に素晴らしいです。ロ短調ソナタあたりも今後是非聴きたいですね。

休憩後、ムソルグスキーの《展覧会の絵》です。これはCDでも聴いている曲です。ある意味、安心して聴けます。彼女の《展覧会の絵》は少しアップテンポな感じですが、実に気魄に満ちた演奏です。スタインウェイの華やかな響きを最大限に活かした素晴らしい演奏です。彼女なりの独自性も秘めた演奏で最後まで面白く聴けました。フィナーレの激しい打鍵には、saraiも思わず熱くなり、感動してしまいました。上原彩子、入魂の演奏で彼女のすべての力を出し尽くした演奏でした。さすがに演奏後、上原彩子もへとへとっていう感じでした。

ということで、もしかしたら、アンコールはなしかなと思いましたし、それでもいいと思ったほどの燃焼度の高い演奏でした。
しかし、彼女はピアノの前に座り、アンコール曲を弾こうとしました。手を鍵盤に置く直前、saraiは不意にアンコール曲は《愛の夢》しかないと確信しました。事実、彼女は《愛の夢》を弾き始めました。《展覧会の絵》の激しい演奏の後に精神的な意味も含めてクールダウンするには《愛の夢》しかありませんね。「孤独のなかの神の祝福」以上に大変美しい演奏でした。食事の後の極上のデザートをいただいた思いです。ボレットの名演にも匹敵する演奏でした。
極上のデザートの後は軽いドリンクしかありません。チャイコフスキーの可愛い曲で〆でした。

今日も「悲愴」は大満足とはいきませんでしたが、前回に比べると格段の出来で、何よりもリストも良かったし、《展覧会の絵》は感動しました。ご機嫌でホールを後にしたsaraiでした。
次に上原彩子の演奏を聴くのは来月のインバル指揮東京都響との共演でベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番です。これも楽しみです。



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この記事へのコメント

1, かずさん 2012/08/27 02:31
はじめまして。
私も本日、リサイタル鑑賞しました。悲愴はゆっくりでしたね。最初は違和感を感じましたが、最後はまとまった感じで良かったです。でもちょっと気になったのが、盛り上がったときの高音の早弾きの解像感が足りなかったような気がしました。リストではパラパラとしてたんですが。。。
展覧会の絵は迫力でしたね。上原さんの右手が見えなくて、いきなりプロムナードの大きな音で驚きました。
今日は確かにスタインウェイでしたね。やっぱり違いますかね。。。
私も今日の演奏は満足でした。

2, saraiさん 2012/08/27 09:22
かずさん、はじめまして。コメントありがとうございます。saraiです。

悲愴は確かにぼわーんとした響きで早いパッセージでの微妙なタッチのコントロールが良くなくて、リストとは大違いではありましたね。一言で言えば、弾きこみ不足なんでしょう。もっと繊細で切れのいい演奏を期待していました。全体としては満足の出来ではありましたが、上原彩子らしさがもうひとつでしたね。
展覧会の絵はプロムナードを大音量でクリアーに演奏したのも独自のスタイルですね。抑えるべきところは抑え、ダイナミックな演奏に痺れました。
上原彩子はやはりスタインウェイがいいです。プロコフィエフあたりはYAHAMAでもいいですけどね。

また、コメントお寄せください。

3, masaさん 2012/08/28 11:21
こんにちわ。
私も12月に上原彩子さんのリサイタルを聴きに行く予定です。
プログラムは
ラフマニノフ: 幻想的小品集Op.3より 第2番 前奏曲「鐘」
ラフマニノフ: ライラックOp.21-5
クライスラー=ラフマニノフ: 愛の悲しみ
クライスラー=ラフマニノフ: 愛の喜び
ラフマニノフ: ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調 Op.36
ムソルグスキー: 展覧会の絵
です。
展覧会の絵が素晴らしかった、と聞いて、今からとても楽しみです!

4, saraiさん 2012/08/29 00:25
masaさん、お久しぶりですね。saraiです。

12月のリサイタル、プログラムがいいですね。ラフマニノフと展覧会の絵だったら、素晴らしい演奏になることが確実です。スタインウェイを弾けば、響きがいいんですけどね。名古屋のリサイタルですか?

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

       上原彩子,  

東京都交響楽団定期演奏会@サントリーホール 2012.7.19

サントリーホールにいつも通り入館すると、入口のところに張り紙がしてあって、人だかりになっています。別に特別にお目当てのソリストが出演するわけではないので、誰かがキャンセルするとかのドキドキ・ハラハラ感はありませんが、一応チェックしてみましょう。
すると、今日予定していた指揮者の大植英次が本番2日前に頸椎症になり、約1週間の安静が必要になり、急遽出演が不可能になったとのことで、本人からのお詫びの言葉が張り出されていました。代わりの指揮者はこの楽団のレジデント・コンダクターの小泉和裕だそうです。前回、この指揮者の演奏は今一つだったので、嫌な感じです。それに欧米で活躍している大植英次は多分今まで聴いていなかったので、少し期待感もありました。また、本日予定されていた曲目の一部が変更になっていました。メイン曲目のチャイコフスキーの交響曲第6番《悲愴》はそのままです。しかし、指揮者の交代が2日前で今日の演奏曲はちゃんと練習できたんでしょうか? 不安です。

今日のプログラムは以下です。

  ベートーヴェン:「エグモント」序曲
  ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」より、《前奏曲と愛の死》

《休憩》

  チャイコフスキー:交響曲第6番《悲愴》

なお、前半は予定では
  R・シュトラウス:《ばらの騎士》組曲
でした。

最初の「エグモント」序曲はきっちりした演奏で厚みのある弦がこの曲にふさわしく響きました。悲劇的な雰囲気の良く出た荘重な演奏で、なかなかよかったです。それにこの曲は実に久しぶりに聴いて、懐かしかったのもプラスの材料でした。出だしとしてはよい滑り出しです。最近、この曲はこの指揮者との組み合わせで演奏する機会でもあったんでしょうか。仕上がりも万全でした。

続いて、楽劇「トリスタンとイゾルデ」の《前奏曲と愛の死》です。これは夢のような雰囲気でいかにもトリスタンらしく、なかなかよい演奏でした。惜しむらくはワーグナーのうねるような響きがもっと表現できればというところでしょうか。この曲も仕上がりも万全でした。

休憩後はチャイコフスキーの《悲愴》です。第1楽章の序奏が始まり、えっと驚きます。実に新鮮な響きです。というのも楽器パート間のアンサンブルが崩れ、ずれずれに聴こえてきます。お陰で楽器パートの旋律線がはっきりと分解されて聴こえます。実に面白い体験ですが、演奏としては練習不足にしか聴こえません。時間的に十分な練習ができなかったんでしょう。それでもさすがに第2主題の美しい旋律が弦楽器で演奏されるあたりからはアンサンブルがまとまってきました。強力な第1ヴァイオリンの主導で立ち直ったようです。中間あたりからは弦を中心に普通の《悲愴》の音楽が流れてきました。
第2楽章は弦、特に第1ヴァイオリンの美しい響きにうっとりします。
第3楽章はフィナーレに向けての決然とした行進曲を第1ヴァイオリンが中心になって、クリアーな弦のアンサンブルの響きをホールに満たします。なかなか素晴らしい演奏です。
第3楽章が終わると慣例通り、そのまま第4楽章にはいっていきます。saraiの感覚では、一呼吸入れないで、もっとすぐに第4楽章を開始してもらったほうがより緊迫感が出たのになあという感じ。《悲愴》と言えば、この第4楽章が文字通り、泣かせどころです。都響の素晴らしい弦楽器パートはこの曲にうってつけです。実に美しく、そして哀しく、弦の響きが胸に迫ります。そして、静かにフィナーレを迎えます。本当はもっと響きを抑えた演奏、聴こえるか、聴こえないくらいというのがいいんですが、まあ、及第点ですね。

全体としては練習不足のせいか、速いパッセージでアンサンブルが乱れる部分もありましたが、オーケストラの気持ちの乗った演奏でカバーしてくれたと思います。音楽は人間が介在する芸術なので、今回のようなアクシデントはどうしても避けられません。まあ、コンサート終了後のsaraiの気持ちとしては、それなりに満足できてよかったなあというところです。




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驚愕!アンリ・バルダ ピアノ・リサイタル@横浜上大岡「ひまわりの郷」ホール 2012.7.8

音楽の世界も広いなあと感じるピアノ・リサイタルでした。saraiにとって無名のピアニストだったアンリ・バルダですが、どうしてどうして、素晴らしい超1級のピアニストでした。ラヴェルの第1音を聴いて、その明るい響きにぐっと引き込まれ、実に色彩感あふれるピアニズムにすっかり魅了されました。光の粒がきらきらと光り輝く音楽です。これがフランス系のピアニストのラヴェルなんでしょうか。常日頃、saraiに苦手なラヴェルのピアノ曲ですが、そのピアノの響きを聴いているだけで音楽の喜びに満たされます。ラヴェルのピアノ曲の真髄を初めて教えられた思いです。前半のプログラムだけで大満足でした。でも、この明るい響きで後半のショパンはどうなるんでしょう。期待半分、不安半分で後半のプログラムを待ちます。その結果は・・・

その前に今日のプログラムは以下です。

  ラヴェル:高雅で感傷的なワルツ
  ラヴェル:ソナチネ
  ラヴェル:クープランの墓

《休憩》

  ショパン:24の前奏曲 Op.28

   《アンコール》
      ショパン:ワルツ第15番?
      ショパン:ワルツ第19番?


昨日のファジル・サイのピアノ・リサイタルは最悪の状態で聴いてしまいましたが、今日は万全の体調と精神状態で100%の集中力でピアノ・リサイタル聴き通すことができました。それというのも、こんなに素晴らしいリサイタルをぼーっと聴くのは音楽ファンとしてはあり得ないことです。

ラヴェルの最初の曲の《高雅で感傷的なワルツ》は色彩豊かな響きに身を委ねるのみ。芯のあるタッチはエネルギーに満ちていますが、それでいて高域のお洒落な装飾音など、エスプリに満ちた演奏です。多彩な響きを堪能しているうちにこの長い曲集も気持ち良く終わります。特にテンポの速い曲の演奏が素晴らしく、この複雑極まりない曲でミスタッチひとつ聴き取れない完璧な演奏です。

《ソナチネ》は当日にプログラム追加された曲です。これは先ほどの曲よりもさらに色彩感あふれる演奏でとても素晴らしい響きです。力強く、そして、繊細さも兼ね合わせた圧倒的な演奏です。もちろん、ミスタッチらしきものもないパーフェクトな演奏です。ライブでこれほどの演奏ができるとは、一体、この人は何者なんでしょう。まさに驚愕の演奏です。

そして、前半の最後を締めくくった《クープランの墓》は彼がもっと弾けるよって誇示するかのような名演奏でした。第1曲《前奏曲》の豊かな響きには唖然とするばかりです。この曲が名曲だということを初めて理解させられる演奏です。そして、驚きの演奏は終曲《トッカータ》です。力強いリズムの連打に心躍ります。フィナーレの鍵盤中を駆け巡るスリリングでパワーフルな手の動きは尋常ではありません。まるで神が乗り移ったかのように恐ろしいまでの高揚感を聴衆にもたらします。鬼神のごとき演奏とはこのことです。ラヴェルのピアノ曲で大興奮してしまいました。

後半のショパン、ショパンらしい繊細さに満ちた演奏が始まります。ただ、重量感のあるタッチはそのままで、こういうスタイルのショパン演奏って、あまり聴いたことのないものではありますが、それでもしっかりとショパンの本質に沿った演奏で高い質の演奏です。ラヴェルのときのような明るく、色彩感のあるタッチではなく、強靭さを前面に出したショパンの美しい響きです。バレエ《レ・シルフィード》でも使われている有名な第7番を過ぎたあたりからの芯の強いタッチの演奏はもう素晴らしいとしか形容するしかないもので、第15番《雨だれ》はちょっとどうかなという感じで始まりましたが中盤以降の強靭なタッチは素晴らしく、第16番以降も高いレベルの演奏のままにフィナーレに突入していきます。最高に素晴らしかったのが最後の第24番です。これはCDも含めて、saraiの聴いた最高の演奏でした。思いがけず、こういう素晴らしい演奏に遭遇するのは音楽ファンとして、こんなに嬉しいことはありません。

アンコールのショパンは曲目不明です。ワルツということですが、耳慣れた曲ではありません。家に帰ってCDで聴き直してみましたが、上に書いたのはsaraiの推測で間違っているかもしてません。お分かりの方はご教示ください。いずれにせよ、本編の演奏同様に素晴らしいショパンでした。

今回の来日でも、まだ朝日浜離宮ホールのリサイタルが7月12日の夜7時からあるようですから、余裕のあるかたは是非とも聴かれることをお勧めします。演奏の質の高さはsaraiが保証しますよ!
saraiもまた機会があれば、絶対に聴きたいピアニストの一人です。
なんだか、明暗分かれた2日間のピアノ・リサイタルになりました。



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ファジル・サイ ピアノ・リサイタル@鎌倉芸術館 2012.7.7

今日は七夕。そのため、「星に願いを」と銘打ったリサイタルですが、リサイタルの内容には無関係のようです。
ピアニストのファジル・サイは《春の祭典》のCDをリリースしたときから気になっていた人で(と言ってもCDは未聴)、遂に今回聴くことができます。今回はプログラムの構成も気に入りました。実に多彩な曲を選択しましたね。

今日のプログラムは以下です。

  モーツァルト:ピアノ・ソナタ第11番 イ長調 K.331(トルコ行進曲付き)
  ストラヴィンスキー(ファジル・サイ編曲):バレエ音楽《ペトルーシュカ》より

《休憩》

  ムソルグスキー:組曲《展覧会の絵》

   《アンコール》
      ファジル・サイ:バラード“SES”(声)
      ファジル・サイ:ボドルム
      ファジル・サイ:ヴァイオリン協奏曲 ハーレムの千一夜 第1楽章
      ガーシュイン:サマータイムバリエーション(ファジル・サイ編)

実は最初にお断りしておかないといけませんが、最近何かと忙しく、少し睡眠不足気味でした。そのため、半分くらいは眠ってしまい、集中して聴けたのは1割程度です。ですから、これから書くことは的外れになっているかもしれません。特にファジル・サイのファンは聞き流してください。

ファジル・サイがステージに現れた印象ですが、あれっと思いました。CDのジャケットの写真ではカッコイイという感じでしたが、ステージに出てきた本人はでぶっとした感じの冴えない感じです。音楽とはもちろん関係ありません。

ピアノの前に座るか、座らないかというタイミングでモーツァルトのソナタを弾き始めました。あの有名な変奏曲の主題です。最初の1音を聴いただけで少し失望。sarai好みのクリアーなタッチではなく、繊細さを欠く弾き方です。リサイタルの最初では息を殺して聴き入りますが、その時点の演奏でsaraiのテンションが上がるか、下がるか決まってしまいます。今回はその後も、テンションは下がる一方。そんな悪い演奏ではありませんが、saraiの期待感とは大いに乖離しています。そういうわけで、一気に眠気が襲ってきて、あっと気が付くと第1楽章は終わりました。間をおかずというか、第1楽章の響きが残っているうちに第2楽章が始まりました。これは結構いい響きでしたが、靄のかかった意識で聴いていました。第3楽章はトルコ行進曲です。これは凄いスピードでの演奏です。この超特急の演奏でも構いませんが、それならそれでパーフェクトに弾きこなしてほしいところです。saraiはスローペースでの顕微鏡で微細に観察できるようは超絶的な演奏が好みですが、それはそれとして、ハイスピードの超絶演奏でも面白く聴けます。しかし、これはかなり荒っぽい演奏に聴こえます。これなら、普通の早さできちっと弾いてもらったほうがいいのになあと思ってしまいました。

次の《ペトルーシュカ》は普通の《ペトルーシュカからの3つの楽章》ではなく、ファジル・サイ自身の編曲とのことです。印象としては、そんなに違った曲には聴こえませんでした。何やら超絶技巧を盛り込んだ編曲になっているそうですが、音楽の質としては同程度に聴こえます。演奏はかなり力のはいった響きの大きなものです。オリジナルの曲を硬質な響きで演奏したほうがよさそうな気もしますが、よく考えてみれば、バレエの《ペトルーシュカ》の喧噪感を表現したかったのかもしれません。そういう意味ではバレエの雰囲気はよく出ているような気もしました。ただ、喧噪感だけでなく、どことないペーソスも表現してくれればもっとよかったとも思いました。いずれにせよ、この人の演奏は音楽というよりも音響を聴いている感じに思えてしまいます。それなら完璧な音響、ランランやヴォロドスのように弾いてほしいところです。もっともsaraiはそんな演奏は好みませんが・・・。

休憩後、《展覧会の絵》です。これはなかなかスケールの大きな素晴らしい演奏でした。キエフの大門あたりからの盛り上がりはさすがです。普通のテンポの演奏で響きに重点を置いたものでした。しかし、saraiの集中力が欠如していたためか、以前、キーシンで聴いたときのような興奮はありませんでした。キーシンの演奏も似た感じの演奏でしたが、もっと演奏に切れがあったような気がします。

最近、ポゴレリッチのコンサートを聴いて、その変わったスタイルの演奏に仰天して声も出ませんでしたが、違う意味で、このファジル・サイという人も相当の変わった人です。弾き方や仕草が尋常じゃありません。大きな声を出しながらピアノを弾くし、びっくりです。野人という感じですが、ピアノを離れれば、静かな印象です。ピアノ一台に向き合って自分を表現する作業って、きっと相当に厳しいことなんでしょう。普通の感性では難しいのかもしれません。

アンコールは最後のサマータイム以外はまったく知らない曲でしたが、本人の作曲した曲だったんですね。力の抜けた良い演奏で、タッチも美しい響きでした。本編の演奏でも、この調子で弾いてくれればよかったのにと余計な感想を持ちました。



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小川典子、流石のラフマニノフwith京響+広上淳一@京都コンサートホール 2012.6.24

京都の旅ということで、京都で40年ぶりにコンサートを聴きます。そう、40年前はsaraiは京都の学生でした。当時は京都会館での京都市交響楽団コンサートを乏しい小遣いをやりくりしながら聴いていました。まだ日本で名前が知られ始めたマルタ・アルゲリッチも京都市交響楽団と共演したことが懐かしく思い出されます。常任指揮者は渡辺暁雄さんでした、多分。
その岡崎の京都会館は現在休館中。コンサートは北山の京都コンサートホールで開かれています。saraiはもちろん、この京都コンサートホールは初体験。とても立派なホールでした。外観はこんな感じです。


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ホールの内部はこんな感じです。東京オペラシティホールに似た感じでしょうか。


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ホールまでの通路も螺旋状の斜路になっていて、ユニバーサルデザインに基づいています。バチカン美術館と同じような感じです。


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音の響きはまずまずといったところです。もちろん、昔の京都会館とは比べものにならないくらい良くなっています。
さて、今日のコンサートは子供連れでも楽しめるオーケストラ・ディスカバリー2012と銘打ったものです。だからと言って、曲目は必ずしも子供向けとは思えないものが多いのが不思議です。だからこそ、saraiも聴きに行く気になったんです。
今日のキャストとプログラムは以下です。

 ピアノ:小川典子
 指揮:広上淳一
 ナビゲーター:ガレッジセール
 管弦楽:京都市交響楽団コンサート
 、、
 ホルスト:組曲《惑星》から《木星》
 ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲

  《休憩》

 ロッシーニ:《ウィリアム・テル》序曲から《スイス軍の行進》
 モーツァルト:歌劇《魔笛》序曲
 マーラー:交響曲第1番《巨人》から第4楽章

まずはホルストの有名なジュピターです。40年ぶりに聴く京都市交響楽団のお手並み拝見です。おっ、なかなか切れのいい響きの演奏です。弦楽器、特に第1ヴァイオリンの響きが弱いですが、奏者の数も少ないので仕方ありません。演奏の質は弦、木管、金管のバランスのよいアンサンブルで満足です。ちょっと金管の響きがデラックスなのもご愛嬌です。京都に住んでいたら、間違いなく、京響の定期会員になって、応援していたところです。40年前の演奏よりも確実にアンサンブル力は向上して、響きの透明度はよくなっています。音楽そのものの質はよく聴きこまないと何とも言えません。曲は歯切れのよい演奏から、あの有名な旋律に移ります。弦が中心での美しい演奏です。もっと分厚い響きなら、言うことありませんが、これで十分とも言えます。また、歯切れのいい演奏に戻って、気持ち良くフィナーレ。なかなか、よい出だしです。
ここで指揮の広上淳一がマイクを取って、ガレッジセールの二人をステージに呼び出し、漫談のような解説が始まります。これでクラシックのファンが増えるきっかけになるといいですね。そうこうするうちに、ピアノがステージ中央に引き出されて、次の曲の準備完了。一番、楽しみにしていたラフマニノフの《パガニーニの主題による狂詩曲》です。

小川典子が赤いドレスに身を包み、颯爽と登場。期待通りの素晴らしい演奏です。ガンガン弾くべきところは彼女のお得意だし、内省的な響きの演奏にも納得。一番盛り上がる第18変奏の有名な旋律は綺麗なタッチで美しい演奏、その旋律を受け継いだオーケストラは抑えた演奏でピアノの和音の響きを際立たせ、なかなかのサポートで感心しました。ある意味、頂点を過ぎたとも思える曲はどうしてどうして、ピアノの鋭い技巧が際立って、さらにヒートアップします。最終の第24演奏まで息継ぐ暇もなしという感じで一気に突進していきます。こんなガラ・コンサートで聴くのがもったいないような素晴らしい小川典子のピアノ独奏でした。トッパンホールで聴いたプロコフィエフのソナタも凄い迫力の演奏でした。そのときの記事はここです。今回はラフマニノフということで違いはありますが、これも小川典子の真骨頂を見た思いです。ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番も聴いてみたくなりますね。もちろん、プロコフィエフのピアノ協奏曲も聴きたいです。上原彩子とまた違う個性で、日本人でこれほどプロコフィエフとラフマニノフが弾けるピアニストが2人もいるのは大変な驚きと喜びです。

休憩後、ウィリアム・テル序曲と魔笛序曲です。これも切れ味のよいピュアーな響きの演奏でしたが、まあ、軽く聴けばよい音楽でしょう。

最後はマーラー。巨人の第4楽章だけ。一番の聴きどころの楽章ですが、第3楽章からのつながりを欠くので、どうでしょうね。ただ、演奏は次第に熱を帯びて、このオーケストラの能力ぎりぎりまで出し切った演奏になり、国内のオーケストラとしては最高水準のマーラー演奏になりました。ここまで演奏できるのなら、大編成のオーケストラ(特に弦楽セクション)で全曲聴きたかったところです。
まあ、9月からはインバル+東京都交響楽団のマーラー・チクルスが始まるので、この交響曲第1番もじっくりと聴けます。お楽しみはそのときまで取っておきましょう。
なお、予習で聴いたテンシュテット畢生のシカゴ交響楽団とのライブCDには、本当に感動しました。この曲の真髄を聴いた思いです。マーラーファン必聴のCDですが、saraiはテンシシュテットは全集盤のロンドン・フィルのスタジオ録音しか聴いていませんでした。同じ指揮者とは言え、まったく別次元の演奏です。未聴の方は是非聴いてみられることをお勧めします。saraiはこのCDでこの交響曲の評価が一変してしまいました。

懐かしい京都でのコンサートを聴けて、とても幸福な気分になりました。青春時代の自分が戻ってきたような感じでした。



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1, Masaさん 2012/06/26 16:15
こんにちわ。京響は僕も大好きなオケです。名古屋公演もしてくれるので、うれしいです。
名古屋フィルにいたホルン主席の水無瀬さんが、京響に移られたんですよね。水無瀬さんの音が大好きだったので、少し悔しい気持ちなんです(笑)

・・・私は四日市(三重県)に住んでいるので、名古屋が拠点。よって名古屋フィルのサポーターなんです(笑)

2, saraiさん 2012/06/26 22:41
Masaさん、こんばんは。saraiです。

40年ぶりの京響でしたが、少なくとも技術的・機能的には格段に向上していました。特に印象深かったのは弦の奏者に女性が圧倒的に増えていたことです。これは東京のオーケストラも同じ傾向ですが、若い女性弦楽器奏者の優秀さは驚くほどです。
力量のある指揮者次第で素晴らしい演奏を聴くことができますね。

名古屋フィル、今度はそのオーケストラも聴いてみないといけませんね。全国的にオーケストラの実力が上がっているのかもしれません。Msaさんがサポーターの名古屋フィルのお手並みも拝見しましょう。

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快演!庄司紗矢香のシマノフスキ・・・大野和士+東京都響@サントリーホール 2012.6.18

何と幸福なことでしょう。10日前にヒラリー・ハーンの素晴らしいメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を聴いたばかりですが、今日は庄司紗矢香の実に見事なシマノフスキのヴァイオリン協奏曲が聴けました。saraiがこれまで聴いた庄司紗矢香の演奏でも最高のものでした。
実は今日のコンサートは期待はしていましたが、不安感も半分ありました。シマノフスキのヴァイオリン協奏曲って、独奏ヴァイオリンの高音域の美しい響きが不可欠ですが、庄司紗矢香は結構これまで、その音域での響きがもう一つに感じていました。それに最近の演奏では、響きを意識的に抑えた内向的な演奏が目立っていました。それはそれで高い精神性を感じさせる演奏で彼女の音楽的充実ぶりを示すものでしたが、その傾向の演奏ではシマノフスキの曲には合わないだろうとも恐れたのです。結果的には、saraiの不安感は杞憂に終わりました。庄司紗矢香の奏でるヴァイオリンの高音域の響きはとっても美しく、感動的でさえありました。このところの庄司紗矢香の充実ぶりは目を見張るものがあります。演奏曲によって、響きを変えて、抑えるべきところは思い切って抑え、歌わせるところは歌わせ、内省的な演奏から熱い演奏まで、実に自在です。彼女はどこかふっきれたようなところもあり、そして、人間的な成長も感じさせられます。これから海外でも評価されていくことでしょう。本当に楽しみで目の離せない音楽家になりました。

というところで、まず、今日のプログラムを紹介します。

  ヴァイオリン:庄司紗矢香
  指揮:大野和士
  管弦楽:東京都交響楽団

  シェーンベルク:浄められた夜 Op.4
  シマノフスキ:ヴァイオリン協奏曲第1番 Op.35

《休憩》

  バルトーク:管弦楽のための協奏曲

まず、シェーンベルクです。シェーンベルクといっても、まだ、無調の作品を書く20年も前の作品です。半音階は多いものの調性はしっかり感じられます。まあ、そんなに解説しなくても有名な曲ですから、演奏内容にはいりましょう。
今日の都響はコンサートマスターが矢部達哉で、第1ヴァイオリンは彼以外はほぼ女性奏者。名人たちですから、今日の演奏は期待できます。忍ぶような低弦の響きが続き、その後、だんだん、熱い響きに変わっていきます。美しい響きですが、心がかき乱されるような演奏です。指揮の大野和士はほとんど大きな動きは見せずに冷静な指揮です。大きな波が2度ほど押し寄せてきて、最後はだんだん沈静化していきます。最後はニ長調の響きです。不意に人間的な温もりのある優しい響きが感じられます。見事なエンディングです。この曲でこういう温もりを感じたことはありませんでした。あくまでも世紀末の爛熟した響きだけだと感じていました。二短調で開始し、ニ長調で終わることで、シェーンブルクはドラマを見事に作りあげていたんですね。こういう調性の申し子のような彼が20年後には、12音技法を発明するのですから、分からないものです。

次はいよいよ庄司紗矢香が登場してのシマノフスキです。協奏曲とはいえ、大規模なオーケストラが控えます。木管楽器の元気のよいフレーズが続き、いよいよ、独奏ヴァイオリンの息の長い高音域の響きが演奏されます。その美しい響きに魅了されます。見事としか言えない庄司紗矢香のヴァイオリンです。オーケストラとの音の融合もパーフェクト。なんと素晴らしい演奏でしょう。この曲は幽玄な響きの音楽だと感じていましたが、かなり弾きこんできたと思われる庄司紗矢香のヴァイオリンは古典的な曲を思わせる安定した響きを奏でます。このあたりが評価のポイントになるでしょうが、saraiは完璧に弾きこなす彼女のヴァイオリンにとても魅力を感じました。なによりも明快な演奏です。1点の曇りもない素晴らしい演奏です。アップテンポでリズミカルに演奏するフレーズも気魄十分で申し分なし。これが庄司紗矢香のシマノフスキの音楽なんですね。とても感動しました。こういう演奏を聴くと、何故か、ベルクのヴァイオリン協奏曲も聴きたくなってしまいます。30分ほどの曲があっという間に終わってしまったような感覚を覚えるくらい、集中して音楽に没入できました。
次は10月に彼女のリサイタルを2回聴く予定です。また、まったく違うスタイルの演奏を聴かせてくれるでしょう。楽しみです。

休憩後、バルトークです。この曲は学生時代、夢中になって、下宿の部屋でヘッドフォンをかぶって、フリッツ・ライナー指揮シカゴ響のLPレコードを繰り返し、繰り返し、盤がすりきれるほど聴いた曲です。もっとも、カップリングしていた《弦と打とチェレスタの音楽》のほうがもっとsaraiの心を捉えていました。そういう刷り込みのある音楽ですから、余程の演奏をしてくれない限り、saraiの心が打ち震えることはありません。今日の都響の演奏は技術的は素晴らしく、特に第5楽章の充実度には驚かされましたが、先鋭的で切迫感のあるバルトークからは遠いものでした。もっと心にズシンとくるような演奏を期待したいものです。誤解のないように言うと、バルトークには思い入れが強くて、とても高いハードルをたててしまいます。今日の演奏も一般的には良い演奏でしたが、saraiには物足りなかったということです。

今日は庄司紗矢香の素晴らしいヴァイオリンが聴けただけで十分満足したコンサートでした。



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       庄司紗矢香,  

超名演!ヒラリー・ハーン、そして、ブルックナーははたして?@サントリーホール 2012.6.7

今日はサントリーホールで先日の横浜みなとみらいホールとまったく同じプログラムのコンサートを聴きました。先日のコンサートの事はここです。

今日のプログラムはアンコール以外は同じ内容で以下のとおりです。

  ヴァイオリン:ヒラリー・ハーン
  指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
  管弦楽:フランクフルト放送交響楽団

  メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 Op.64
   《アンコール》バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第2番 BWV1003よりグラーヴェ、アレグロ

《休憩》

  ブルックナー:交響曲第8番 ハ短調
   《アンコール》なし!!

みなとみらいホールでのヒラリーのメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲はsaraiの生涯最高の素晴らしい演奏でした。はたして、今日はそれ以上の演奏ってできるものでしょうか。第1楽章の第1主題は前回同様、素晴らしい響きとめりはりのある表現で最高です。展開部の中間を過ぎて、かなりテンポを落として、十分な表情を付けながら、魅惑的な演奏をくりひろげます。これはたまりません。こんなメンデルスゾーンは聴いたことがない!物凄い演奏です。いったん、テンポアップし、また、テンポダウン。実に抒情的なロマンチシズムに魅了されます。何という演奏でしょう。すぐにカデンツァにはいり、ヒラリーのヴァイオリンの素晴らしい響きにうっとりするだけです。そして、第1楽章のフィナーレ、高揚感に満ちたヴァイオリンの演奏が冴え渡ります。もう夢中になって聴き入るのみです。ヴァイオリンパートが終わり、これがオペラだったら、大声援のところです。今日はパーヴォもうまく伴奏を付けて、ぴったり息が合っています。そのまま、第2楽章にはいります。少し早目のテンポで抒情的な主題が弾かれますが、今日は響きが素晴らしいです。中間部からはぐっと感情を込めて、美しいメロディーが歌われます。また、最初の主題に戻りますが、今度はずっとスローに静謐でデリケートな表現です。抑えた音量でもsaraiの胸に抒情が迫ってきます。この楽章の構成が素晴らしいです。考え抜かれたようにも思えますし、即興的に弾いていたようにも思えます。実に自在な演奏でした。
第3楽章はまさにヴィルトゥオーソ的な演奏です。緻密で大胆な演奏です。パーフェクトというだけでは表現が足りません。完璧な技術をベースに気魄あふれる演奏です。そうなんです。今日のヒラリーには気魄があります。これまでのようなクールさをかなぐり捨てたような気魄が感じられます。胸が熱くなり、大変な緊張感を味わいました。緊張感で胃がしめつけられるほどです。演奏する姿は若く美しい女性ですが、その表現する音楽たるや、過去の巨匠たちの名演を忘れさせるものです。物凄い高みまで上り詰めて、フィナーレ。
これほどのメンデルスゾーンが聴けるとは思ってもみませんでした。新鮮で抒情にあふれ、それでいて気概に満ちた超名演奏です。このまま、ライブ録音でCD化してもらいたいほどです。今回のヒラリーの来日演奏はこれでオシマイ・・・。満足したけれども、また、しばらく聴けないのが残念です。でも、次はいつ何を聴かせてくれるか、楽しみです。

おっと、まだ、アンコールがあります。ホールからの大拍手に応えて、今日は彼女の日本語が聴けました。「バッハのグラーヴェです。」 また、バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタの素晴らしい響き。前回のアンコールと合わせて、これで第2番のほとんどを聴いてしまいました。アンコールとは言え、これはもうミニリサイタルです。で、もう1曲。前回も聴いたアレグロです。ヒラリーの透き通った声で「バッハのアレグロです。」 前回以上の精度の高い演奏で、気魄に満ちています。これも超名演奏です。もう、これで十分満喫させてもらいました。

休憩後ははっきり言って、全然、期待していないブルックナーの第8番です。前回はがっかりでした。お蔭でチェリビダッケの素晴らしいライブCDを2枚も聴いて、気持ちはすっきりしています。
第1楽章です。うっ・・・、何か違うぞ。オーケストラの響きが美しい。ブルックナーの美しい響きです。どうしたんでしょう。同じオーケストラには思えません。美しい響きが続き、ホルンも無難な演奏。満足の第1楽章です。
第2楽章。やはり、パーヴォのテンポは前回同様速過ぎます。テンポが速いのは構いませんが、オーケストラが十分にこなせなくて、響きが崩れます。ブルックナーは響きが一番大切です。それはチェリビダッケが教えてくれました。中間部はテンポもゆったりとして、とても美しい演奏です。最初の入りのテンポ速過ぎがもったいなかったです。気になったのでおよその演奏時間を計ってみましたが、13分ほどです。とても速いテンポですが、シューリヒトの名演もそれくらいでしたから、ありえない速さではないようです。でも、シューリヒトが振ったのはウィーン・フィルです。ウィーン・フィルなら演奏可能な速さだったんでしょう。でも、入りの速さを別にすれば、この楽章も美しい響きが散りばめられていました。
さて、こうなると期待したくなる第3楽章。前回はだれたような演奏で眠気を催しました。今日は特に後半の美しい響きに圧倒されました。眠気などとんでもないような素晴らしい演奏です。これも時間を計ったら27分ほどで、ゆっくりめの演奏でした。
最後はブルックナー最後の終楽章。第9番は未完で第3楽章までしかありませんからね。これまた、美しい響きに満ちた素晴らしい演奏。この日、最高の演奏でした。まさに終わりよければすべてよしという感じです。これも前半の2楽章、そして、天国のような第3楽章が素晴らしかったからだからこそ言えることです。因みに第4楽章は少し速めの24分ほどでした。残念なのは第4楽章も入りが速過ぎて、響きが濁ったことです。これはパーヴォのブルックナー演奏の今後の課題です。チェリビダッケが手兵とういうべきミュンヘン・フィルを鍛え上げたように、速い演奏でも演奏可能なオーケストラを鍛え上げるか、響き優先で曲の構成を見直すか、長い時間をかけて、模索してもらいたいと思います。saraiはその成果を聴くことはないでしょうけどね。

いずれにせよ、素晴らしいブルックナーでした。昨年の大震災の直前に聴いたリッカルド・シャイー指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のブルックナーに優るとも劣らずという感じでした。そのときの記事はここです。

ところで謎は何故、同じオーケストラ、同じ指揮者、同じ曲がこんなに変身をとげたかです。ひとつはsaraiの耳がおかしいという仮説があります。しかし、ネット上のいくつかの感想を読むと基本的にsaraiと同じく横浜のブルックナーはよくなかったという声が大半です。で、オーケストラの来日スケジュールを調べてみました。来日直後は札幌で、翌日は松戸で非公開コンサート、そして、翌日が横浜みなとみらいホールのコンサート。ヨーロッパからの移動と日本国内の移動、そして、時差ぼけのさめやらぬ中での公演だったのかもしれません。saraiだって、ヨーロッパの旅から戻った直後のコンサートは頭ぼけぼけです。もちろん、オーケストラはプロ集団ですが、やはり人の子。ホルンが寝ぼけた音を出していたのもうなづけます。また、演奏曲目が最悪だったですね。長大なブルックナーの第8番。7番とか9番なら、まだよかったかもしれません。
事実、横浜の翌日の名古屋の愛知芸術劇場の公演ではマーラーの第5番を見事に演奏し、ホルンも好演だったようです。Masaさんのブログをご覧ください。ここです。
昨日のサントリーホールのマーラーの第5番も素晴らしい演奏だったようです。ハルくんさんのブログをご覧ください。ここです。
サントリーホールに腰を落ち着け、マーラーの勢いのまま、ブルックナーの素晴らしい演奏に突入したんですね。

ここで教訓:ヨーロッパのオーケストラの来日公演は来日直後のコンサートはなるべく避けよ!

指揮者や人気ソリストは世界を飛び回っていますから、まさか時差ぼけ演奏はないでしょう。

色々、考えさせられたブルックナーでした。ところでパーヴォは今日はアンコールはやりませんでした。それは正解でしょう。あれだけの演奏の後にブラームスのハンガリー舞曲やシベリウスの悲しきワルツは興ざめですからね。納得です。パーヴォのコンサートでアンコールがなかったのは初めてです。彼もさすがに疲れただろうし、それ以上に、よい演奏ができて満足だったんでしょう。

あくまでもヒラリーのヴァイオリンを聴きにいったコンサートでしたが、期待は2倍も3倍も応えてくれて、とても嬉しい感動のコンサートでした。


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この記事へのコメント

1, Masaさん 2012/06/08 09:07
おはようございます。
まず、ブログの紹介をしていただいて感謝を申しあげます(礼)。

そうですか!!良かったですか! なんか、私もあの横浜公演のブルックナーは本来のヤルヴィ、そしてフランクフルト放送響の力ではないのでは・・・と思っていたんですけど、やはりそうだったんですね。
確かに来日直後の公演は避けるべし・・・これ教訓ですかね(笑)
プロだって人間ですから・・
素晴らしいブルックナーの後にはアンコールは必要ないですよね。それにも共感です。あーすばらしいブルックナー、私も聴きたかったです。
長くなってすいませんが、シャイーのライプツィヒは私も行くはずでした。しかし、3月1日に急病で入院してしまい行けなかったんですよね。残念。
私の中で今一押しのブルックナー指揮者は、ブロムシュテットかも知れません。記憶に残っている名演は、チェコフィルの8番ですね。あと、N響との7番も名演でした。

2, ハルくんさん 2012/06/08 23:42
こんにちは。

記事中での拙ブログの紹介をどうもありがとうございます。
サントリーでは、ブルックナーも素晴らしかったようで良かったですね。
マーラーのほうも期待以上の素晴らしさでした。パーヴォの譜読みの深さと表現力は驚くほどです。Cクライバー以上じゃないかと思いました。
もちろん、だからといってレパートリーの全てを好きになるわけではありませんけれども。

ブルックナーはティーレマンが期待できますね。Rシュトラウスやワーグナーが良い指揮者は、まずブルックナーも良い演奏をしますから。

3, saraiさん 2012/06/08 23:49
Masaさん、こんばんは、saraiです。

フランクフルト放送響はなかなかよかったです。特に気合のはいった低弦セクションの響きが印象的でした。やはり、ドイツのオーケストラは実力がありますね。
シャイーのゲヴァントハウスは残念でしたね。期待以上のブルックナーだったんです。でも、健康第一です。
ブロムシュテットですか。彼はゲヴァントハウスとのベートーヴェンの第7番しか聴いていませんが、派手さはないものの粛々とした演奏に好感を持った記憶があります。今度はバンベルク響との来日ですが、パスしました。
今、saraiが一番期待しているのは何といってもティーレマンです。ブルックナーの第7番、楽しみですね。

4, saraiさん 2012/06/09 00:03
ハルくんさん、こんばんは、saraiです。

いやはや、パーヴォの評価、物凄く高いですね。クライバー以上とは凄いですね。ただ、指揮が絵になるのはクライバーですね。音楽と関係はないですねどね。パーヴォのマーラーはそんなに凄いんですね。パーヴォのブルックナーは残念ながら、チェリビダッケやヨッフムを超えるものではないと思います。やはり、ティーレマンが期待大です。ウィーンの音楽通のかたのご意見ではティーレマンはワーグナーとブルックナーはいいけど、ベートーヴェンやシューマンはやり過ぎでだめってことでした。私は彼のシューマンの第4番に感動しましたけどね。聴きどころでの彼の推進力は凄いとしか言いようがありません。

5, ハルくんさん 2012/06/09 15:59
saraiさん、こんにちは。

絵になるのはクライバーですが、楽譜の読みと表現力ではパーヴォは飛び抜けていますよ。アンコールのハンガリア舞曲などは他の誰にも絶対に出来ない演奏でした。
マーラーはバーンスタインやテンシュテットのスタイルのほうが好きなのですが、あれだけ面白く聴かされるともう降参です。

ティーレマンですが、ベートーヴェンの全集は非常に素晴らしいと思っていますよ。ブラームスはちょっとどうかなとは思いますが。

6, saraiさん 2012/06/09 23:46
ハルくんさん、こんばんは、saraiです。

パーヴォのマーラー、そんなにいいのなら一度は聴いてみましょう。

ティーレマンのベートーヴェンの全集、まだ未聴ですが、入手済です。ゆっくり、聴いてみます。

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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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