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「ロシアの皇太子」@メルビッシュ湖上音楽祭 2010.7.18

今日はいよいよこの旅の最後のオペレッタをメルビッシュ湖上音楽祭で見ます。
今回の旅では、1回だけは、雷雨で野外オペラの途中中止はありましたが、無事8回目の鑑賞にこぎつけました。

まだ、オペレッタに出かけるには少し時間がありましたので、また、ホテルのロビーでお茶しながら、はっぱさんと話の続き・・・・
音楽、芸術のディープな話になり、つい話し込んでしまい、あっと気が付くと、もう出かけないと間に合わない!
はっぱさんとそそくさと別れを告げ、部屋に戻り、ちゃちゃっと支度をし、タクシーを呼んでもらい、速攻で出発。

今日のオペレッタは一昨日の野外オペラと同じバス乗り場(国際バスターミナル)からのバスを利用します。
タクシーがバス乗り場に着くと、バスの出発15分前。
メルビッシュ行のバスは1番乗り場ですが、まだ、何人かバスの前に並んでいました。
が、どうも我々がほとんど最後の乗客だったみたい。

ともあれ、バスは予定を少し過ぎて出発。向かう方向は毎日同じなので、見慣れた風景。しばらくすると睡魔に襲われ、気が付くと、大きな湖(ノイジードラー湖)に着いていました。ここが今日の会場です。
ノイジードラー湖はこんなに大きな湖です。


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今日はメルビッシュ湖上音楽祭で、今年は3日前から始まり、8月いっぱいやっています。
毎年、NHKで放送していたので、欠かさず、見ていた音楽祭で、まさか、その音楽祭に行けるとは思ってなかったのでsaraiは大喜び。

今年のプログラムはレハールのオペレッタ「ロシアの皇太子」。美しいメロディーで知られるオペレッタ。
これはこれまで聴いていなかったオペレッタなので、予習は必須。
予習は以下のDVD。

 ・UNITEL映画オペレッタ
   指揮:ヴィリー・マッテス
   演奏:クルト・グラウンケ管弦楽団
   監督:アルトゥール・マリア・ラーベナルト
   ロシアの皇太子:ヴィースラウ・オックマン
   ソーニャ:テレサ・ストラータス
   マーシャ:ビルケ・ブルック
   イワン:ハラルド・ユーンケ
   大公:パウル・エッサー

 映画版なのが残念ですが、現在入手可能な唯一のDVD。テレサ・ストラータスの公演が光ります。内容的にも面白い。

で、今回のキャストは以下。

   指揮:ヴォルフディーター・マウラー
   演奏:メルビッシュ音楽祭管弦楽団
   演出:ペーター・ルンド
   ロシアの皇太子:ティベリウス・シム
   ソーニャ:アレキサンドラ・ラインプレヒト
   マーシャ:ジークリンデ・フェルドホ-ファー
   イワン:マルク・カントル
   大公:クリスティアン・フッタークネヒト

今回ゲットしたチケットはVIP席(LOGE)。観客席の最後列のスタンドにある、無料のドリンク・軽食付きのもの。
スタンドには2階にレストランもあり、食事もできます。


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さて、VIP席に向かいましょう。
VIP席は会場案内板の下方中央の緑色のLOGEと表示されているブロックです。


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VIP席は専用の入口からはいります。
まず、入場するとスワロフスキーの大型双眼鏡を無料で貸してくれます。
ちゃんと返却することを確認するためでしょうか、名前や連絡先、パスポート番号などを記入させられます。
まあ、立派で高価な双眼鏡ですからね。


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また、お土産の手提げも手渡されます。中身は「ロシアの皇太子」のCD(もちろん、このメルビッシュ音楽祭のものです)、フルカラーの立派なプログラム、ドリンク。
そして、毛布。そうです、今日は一転して寒いんです。湖上からの寒風が身に沁みます。
で、とりあえず、ウェルカムシャンパンでお腹を温めましょう。


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VIP席はこんな雰囲気で中にバーカウンターもあり、なかなかリッチな気分になりますね。


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また、ここにはVIP席専用のトイレもあり、配偶者は早速利用。

周りを見渡すと、一般席は野球場のスタンドのようになっており、座布団が欲しいかもしれませんね。もちろん、VIP席はクッション付のシートになっています。


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VIP席からは、はるか前方に湖上に設営したステージが見えます。
ステージ上には、大きな舞台セットが見えていますが、オペレッタが始まると、色んなセットが次々と引き出されてきます。
客席もかなり埋まってきて、開演の時間も近づいてきました。


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8時半になり夕闇が迫った時に公演が開始。
次々にレハールの美しいメロディーが流れ、うっとりします。
湖上に設営されたステージにも大がかりなセットが次々と入れ替わり、見飽きることがありません。
出演者も大きなステージを埋め尽くすほどの大規模なもの。
コサック風の踊りも派手でダイナミック。
ここで芸術性のうんぬんはなしにしましょう。
スピーカーを通した音声も風に流され、決して、聴きやすいものではありません。
じっくりと鑑賞するのは、NHKが放送するか、DVDが出てからにします。
でも、主役級の5人は歌もお芝居も立派でしたので、なかなかの公演です。

今日はこの音楽祭の主催者でもあり、顔でもあるセラフィンさんが出ないのがちょっと残念ですね。
休憩時間には軽食と飲み物を寒さに震えながら、たっぷりといただきました。
が、気が付くと、VIP席の下に専用の暖かい部屋もあり、なーんだ・・・


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後半も順調に公演は続き、あっという間にフィナーレ。
フィナーレ後の湖上に上がる花火はレハールの音楽と連動した見事なもの。オペレッタファンの心をしっかりとつかんでいますね。みな、レハールのメロディーを鼻歌まじりに上機嫌で帰っていきます。

まとめとしては、一度は行く価値のある楽しい音楽祭です。
また、VIP席が結局はお得なので、お勧めです。価格的にも、一般席とそう変わりませんし、お土産や双眼鏡、毛布、無料の飲食等で十分以上に元が取れます。難をいえば、ステージが遠いことですが、ここは雰囲気を楽しむのが第1で、内容をしっかりと楽しむのは後日ビデオ(TV放送かDVD)がいいでしょう。

なお、来年はヨハン・シュトラウスのオペレッタ「ジプシー男爵」とのこと。

大満足で、またバスでウィーンに帰着。バスはシューターツオパー前まで行ってくれたので、ホテルには楽々帰れましたが、着いたら、深夜1時過ぎ。そのまま、倒れこむようにベッドに・・・



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この記事へのコメント

1, Feriさん 2010/08/07 18:45
こんにちは、feriです。

ちょっと曇っていたようですね。ところで、今年は蚊が多いと聞いていたのですが、いかがだったですか?
余談ですが、ロジェは以前、日本人の方はほとんどいらっしゃらなかったのですが、最近はツアーのお客さまも増えてきました。

2, saraiさん 2010/08/08 09:43
Feriさん、saraiです。
こちらまでお越しいただき、恐縮です。

ザンクト・マルガレーテンでは、大量の蚊の集団が襲ってきました。
が、メルビッシュは風が強く、肌寒かったせいか、ロジェでは、蚊は1匹もいませんでした。

そうですか、ロジェはツアーの日本人のかたが多いのですか。
saraiの行った日はロジェどころか、どこにも日本人のかたはお見かけしませんでした。
ザンクト・マルガレーテンでもお2人ほどいらっしゃっただけ。バーデンでもお見かけしませんでした。
やはり、個人行動では行くのが難しいかも知れませんね。
saraiの場合はFeriさんのアドバイスで助かりました。
ありがとうございました。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

 

「こうもり」@アン・デア・ウィーン劇場 2010.7.17

今日はウィーンでオペレッタ。
いったん、ホテルで休憩して、今夜のオペレッタに備えます。
昨日に引き続き、ヨハン・シュトラウスですが、今日は「こうもり」。劇場はアン・デア・ウィーン劇場です。
このアン・デア・ウィーン劇場はこの「こうもり」を初演した歴史ある劇場。モーツァルトの「魔笛」やベートーヴェンの「運命」、「田園」も初演しています。そういうわけで、一度、ここで聴くのも悪くないと思った次第。

ホテルからはナッシュマルクトを横切ると5分ほどで劇場に着きます。
劇場前では、テーブルが歩道に置かれ、ドリンクを楽しんでいる男女がいます。


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劇場の壁面には今回の「こうもり」の公演ポスターが貼られています。


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この公演ポスターはウィーン市内の各所に張り巡らせてありました。

さて、事前に予習したのは以下。

 ・グラインドボーン音楽祭2003
   指揮:ユロフスキ  ロンドン・フィル
   アイゼンシュタイン:トーマス・アレン ロザリンデ:アームストロング
   フランク:コルン オルロフスキー公爵:エルンマン
   アルフレート:リンドスコーグ ファルケ博士:ハーゲゴード
   ブリント博士:ウルフング アデーレ:ペトロワ
   フロッシュ:ザメル イーダ:シュッテングルーバー

 本場ウィーンものではありませんが、なかなか素晴らしい公演です。

で、今回のキャストは以下。

   指揮:コルネリウス・マイスター
   演出:フィリップ・ヒンメルマン  
   アイゼンシュタイン:クルト・シュトライト
   ロザリンデ:ニコラ・ベラー・カルボーン
   フランク:マルクス・ブッター
   オルロフスキー公爵:ヤチェック・ラシュツコフスキー
   アルフレート:ライナー・トロスト
   ファルケ博士/フロッシュ:フローリアン・ボエシュ
   ブリント博士:エリック・エルマン
   アデーレ:ジュアニタ・ラスカッロ
   イーダ:スヴィンタ・ゲルシュトホーファー

初演の内容とは強烈に異なる演出(初演を見たわけじゃないが(笑い))に驚かされます。
ただ、音楽的には、さすがにウィーンの音楽水準の高さを示す素晴らしいもの。ウィーンで音楽を聴くと、よそがどうしても霞んでしまいます。

演出もさほど、異様ではないと思いました。もっとも、そう思ったのも事前に友人から演出の強烈さについて、お話を聴いていたせいかもしれませんね。
これはオペレッタとして見ると、確かに異様かもしれませんが、オペレッタではなく、オペラとしての「こうもり」がこの劇場で再初演されたと考えると、納得がいきます。軽いオペレッタではなく、本格的なオペラの内容ともとれます。
もっとも、出演者がみんな服を脱いで下着姿になるのをどう考えるかは聴衆個々の自由ですが、従来の殻をぶちこわすという意味はあるかもしれません。まあ、この程度は最近のオペラの演出では特別のことではありませんが、オペレッタ「こうもり」だと異様かも・・・

演出のせいとはいえ、全員が出ずっぱりというのは大変ですね。例えば、アルフレードは本来、第2幕は全然出番がないのに、左手の舞台横のボックス席で観客と混じって、ずっと待機。まるで、スポーツの全員参加みたいです。実は開幕前から、写真のように舞台に近いボックス席は男性1人が座っていました。


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この人の横の席はずっと空いていて、第1幕後半でアルフレードが舞台から仕切りを跨いで、この空いたボックス席に座り込みます。第2幕がはじまってもずっとそのまま。第3幕になって出番になったところで、再び、仕切りを跨いで、舞台に復帰するわけです。

オルロフスキーも幕開きから、舞台中央のソファに腰かけているし、これでは、第1幕もオルロフスキーを主賓とした劇中劇みたいにも見えます。いろんな解釈が成り立つ奥行きの深い演出とも言えますが、必ずしも評価はよくないようです。
ただ、この演出の延長線上に新たな「こうもり」の展開も十分期待できるとも思いました。
それにかなり意味不明な部分も多いのは確かだとしても、何となく、面白かったのも事実です。

歌手はアイゼンシュタイン役のクルト・シュトライトとロザリンデ役のカルボーンがよかったと思います。
カルボーンは高い声の部分が出ませんでしたが(歌わなかった)、音楽的には誤魔化して辻褄を合わせましたからね。
あと、関係ないけど、イーダ役のゲルシュトホーファーがなかなか可愛かった! 
そうそう、アルフレード役のトローストもさすがのテノール。

特筆すべきはオーケストラのウィーン放送交響楽団。とても素晴らしい出来でした。東京のときよりも音の純度が高かった感じ。どうしても演出が奇抜なので、耳がオーケストラから離れるのが残念でした。
最前列中央の席だったので、幕間の休憩で第2ヴァイオリンのトップの金髪のきれいな女性に「東京で聴いたよ。よい出来だったよ」と声をかけると、「どこで聴いたの?」って返事。「オペラシティだよ」って言うと、「ありがとう。今回はバカンスで来ているの?」と言われ、「長いバカンスでね」って言うと、横の第1ヴァイオリンの男性が「楽しんで行ってね」とのこと。
写真はオーケストラピットにいる第2ヴァイオリンのトップの女性とその横で話し込んでいる第1ヴァイオリン(多分)の男性。


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劇場内部の様子もご紹介しておきましょう。今回の演出では、観客席も演出の対象。ということで、観客席の天井から派手な色のライトが当たっています。観客の顔色がおかしいのは写真のせいではなく、客席に赤い色の照明があたっていたからです。


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終演後、劇場の外に出ると、コンサートの途中で激しい雷雨があったようで、道路はビショビショ。まだ少し雨粒が落ちていましたが、この程度ではウィーンでは傘はさしません。私達もそれにならいます。満足、満足でホテルに。ホテルは5分ほどで着ける場所で便利です。

明日も夜は野外のオペレッタに出かけます。



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ジャンル : 音楽

 

「ウィーン気質」@バーデン夏劇場 2010.7.16

バーデンはウィーン近郊の昔からの温泉保養地。
オペレッタを見るためにカールスプラッツからバーデン電車で1時間かけて出かけました。この日はバーデンのホテルに1泊します。

まずはバーデンでのテルメ、街散策を楽しみました。
特にヨーロッパ1の規模を誇るバラ園はなかなかのものでした。


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この後、ホテルの部屋で短時間ですが、ぐっすり眠り、英気回復して、正装でオペレッタへ。

今日はバーデン市の夏劇場でヨハン・シュトラウスの「ウィーン気質」です。(厳密に言えば、このオペレッタを完成させたのはヨハン・シュトラウスではないが、音楽はヨハン・シュトラウスのものを組み合わせている。)

劇場へはホテルからタクシー。何せ、正装しているので、暑くて、とても歩いて行く気にはなれません。
公園の中にあるこの夏劇場は小さいですが、立派な外観です。
夏しか使わないのはもったいないですね。


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saraiが行ったときには、既に大勢の人たちが劇場の前でドリンクを楽しんでいました。
入口の横には、今回の公演を紹介する写真があります。
この夏は「ウィーン気質」のほかにオッフェンバックの「パリの生活」も公演しており、写真のうち、左の6枚は「パリの生活」、右の3枚が「ウィーン気質」です。


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今回の公演のシートはチケット売り出し開始直後にゲットしましたから、2列目の中央というかぶりつきの席。なおかつ、この劇場はコンパクトなので、ステージも狭く、そしてなによりも客席からステージが近い。舞台にいる歌手の表情がくっきりと見えます。
思いっきり、近くで見ることができるのはなによりですね。

主要人物を演じる歌手たちはみんな芸達者で声もよく、素晴らしい仕上がりのオペレッタになっていました。ウィーンのフォルクスオーパーに勝るとも劣らないというのが印象で、楽しくて、楽しくて、最初から最後まで分からないドイツ語ではありますが、にこにこ顔で聴いていました。

また、この劇場は夏だけの劇場にふさわしい仕掛けがあります。
それは天井が開閉することです。


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開演時は満開状態。終演に近くなり、外がまっくらになるとがーっという音を立てて、あっと言う間に閉めてしまいました。
お蔭で終演時は暑いことこの上なし。閉めたのは何か事情があったのでしょうか。虫がはいってくるとか・・・。
あまりの暑さに、saraiは、上着を脱ぎ、Yシャツの袖をまくり、ネクタイをはずし、ボタンを開けて・・・と大変でした。ここは保養地ということもあるのか、皆さんラフな格好でした。

さて、今回に備えて予習したビデオは以下の2つ。

 ・メルビッシュ音楽祭2007
   指揮:ルドルフ・ビーブル
   ツェドラウ伯爵夫人:ナーデルマン  ツェドラウ伯爵:ライナー・トロスト
   フランツィスカ:クロブカー  イプスハイム・ギンデルバッハ侯爵:ハラルド・セラフィン
   ペピ:シュッテングルーバー

 これはライブ収録でオペレッタの面白さ満載で音楽的・お芝居的な水準も高いものです。

 ・UNITELオペレッタ映画
   指揮:パウリク  演出:ランスケ
   ツェドラウ伯爵夫人:ハルシュタイン  ツェドラウ伯爵:コロ
   フランツィスカ:コラー  イプスハイム・ギンデルバッハ侯爵:クッシェ
   ペピ:パポウシェク

 これは映画なので、ライブ感には欠けますが、全体の仕上がりはなかなかのものです。それにコロとコラーは素晴らしい。

今夜のキャストは以下。

   指揮:オリバー・オスターマン
   演出:ヘルムート・ヴァールナー
   ツェドラウ伯爵夫人:バーバラ・ペイハ
   ツェドラウ伯爵:アンドレアス・シャガール
   フランツィスカ:コルネリア・ツィンク
   イプスハイム・ギンデルバッハ侯爵:フリッツ・ヒーレ
   ペピ:エリザベート・シュヴァルツ
   カーグラー:ワルター・シュヴァブ
   ヨーゼフ:アンドレアス・ザウアーザップ
   御者:フランツ・フェーディンガー

まず、オーケストラですが、これは優秀。さすがにウィーンの音楽水準の高さを反映しています。
次から次にヨハン・シュトラウスのウィンナーワルツの名曲をリズム感よく演奏。
ここって、いつもこんなレベルなんでしょうか。素晴らしいですね。
指揮者のオスターマンもオペレッタの捌きが見事。若手ですが、なかなかのものです。

歌手はみんな歌もうまく、芝居上手。
執事のヨーゼフ役のザウアーザップと彼の恋人のペピ役のシュヴァルツは身も軽く、オペレッタ特有のダンスの楽しいこと、楽しいこと。
ツェドラウ伯爵、伯爵夫人ガブリエーレ、愛人フランツィスカのからみもみな歌とお芝居がうまいので、これも楽しい。
ボケ役のイプスハイム・ギンデルバッハ侯爵と愛人フランツィスカの父カーグラー、御者たちのお芝居も言葉(ドイツ語)が分からなくても雰囲気だけでもすごく面白いので、分かればどんなものでしょうね。

このオペレッタにはリフレインがあまりないのが寂しいところですが、伯爵のアリアでは拍手が多く、やりました。
伯爵役のシャガールは素晴らしく張りのある声で聴きごたえ十分。
難を言えば、伯爵夫人のソプラノのペイハの声は美声できれいなのですが、声量が少し小さく、最大の聞かせどころ「ヴィーナー・ブルート・・・・」と歌うところの盛り上がりがもう一つだったかもしれません。saraiも大好きなところなんですが・・・・
フランツィスカ役のツィンクは声もよく出ており、歌唱力も十分。

いずれにせよ、今夜のキャストは文句なしに素晴らしく、このキャストであれば、どのオペレッタをやっても面白いこと間違いなしって感じです。
例えば、「チャルダッシュの女王」とか聴けば楽しいでしょうね。
それほど、素晴らしいオペレッタらしいオペレッタでした。

なお、途中の休憩は夏の公演らしく、ホールの外に出るとまだ明るく、みな、公園のほうに出て、ドリンクを飲んだり、談笑したり、とてもよい雰囲気でした。


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オペレッタらしい楽しい終幕を迎え、saraiは大満足。久しぶりに楽しいオペレッタを見て、にこにこです。

終演後は暗い夜道を何とか迷わずに20分ほどかけてホテルに無事帰着。
シャワーを浴びてさっぱりし、よく効くエアコンで十分体を冷やし、さあ、寝ましょう。



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この記事へのコメント

1, Njegusさん 2010/07/28 22:45
saraiさま
私は前日の17日「パリの生活」を観ました。「地獄のギャロップ」カンカン、ダンサーは5人でしたが踊りは最高でした。終りに近く夕立になりホテルまで濡れて帰りました。15日のアン・デア・ウィーン劇場の「こうもり」も帰り地下鉄の駅で猛烈な雷雨、ウィーン近辺は夜の夕立に要注意ですね(2008年も何回も経験しました)
15日のザンクト・マルガレーテンのオペラ途中で終了とか、お気の毒さまでした。16日夜メルビッシュを観たのですが幸い晴天で、ウィーンへの帰りのバスの中からザンク・トマルガレーテンの終りの花火が良く見えました。行っている間中暑さには悩まされました。
来年も行きたいなとは思っておりますがどうなりますことやら。

2, saraiさん 2010/07/30 00:38
Njegusさん、ご返事遅れました。

現在来日中のトリノ歌劇場を見たりでばたばたしていました。

バーデンの夏劇場はどちらもよかったのですね。秋の来日公演がオペレッタならば、是非、出かけたいところでしたね。
アン・デア・ウィーン劇場は幸い観劇中に降ったようで、帰りはぽつぽつで傘不要でした。
ザンクト・マルガレーテンはある意味面白い経験でした。多分、その日だけが途中中止だったようですね。
今回のヨーロッパは特にオペラが暑くて参りました。例外はアン・デア・ウィーン劇場、エアコンが効いていました。

次は夏を避けたいと思っています。

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ジャンル : 音楽

 

「魔笛」@ザンクト・マルガレーテン音楽祭 2010.7.15

さて、今夜のオペラはウィーン郊外のザンクト・マルガレーテンで行われます。ウィーンの国際バスターミナルから、特別の送迎バスが出ます。やはり、地下鉄を乗り継いで、国際バスターミナルのあるエルドバーグに行きます。到着してみると、あちこちいろんな国に向かう大型バスがいっぱ並んでいるのに圧倒されます。これらのバスに乗っていくのでしょうか大きな荷物を持った人が多いです。また、別れを惜しんでいる人や見送りに来た人もいて、ごった返しています。空港の国際線と全く違う雰囲気です。


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18時出発の15分ほど前にバスがはいってきました。運転手さんは、汗だくでチケットの確認をしてました。全員が揃うと、運転手さんが挨拶をして注意事項を説明して(多分・・・)、それが終わると乗客から拍手がおきました。なんだか、日本のバス旅行のような感じで楽しいです。


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いよいよ出発。バスは、小麦やトウモロコシやヒマワリの畑の中の高速道路を飛ばして、1時間ほどで会場に到着。
私たちがバスを降りるときに、運転手さんが「この場所で待ってるよ。端から3台目だからね」と、それはそれは子供に言い聞かせるように言いました。もちろん日本人は我々だけだから、ちゃんと戻ってこれるかとっても心配だったのでしょうね。
駐車場は広大で迷うと大変なことになります。それでも、さすがにバスはオペラ会場の入り口の一番近くに駐車したので、便利でよかった。
で、駐車場で周りを見回すと、えらく見慣れた車。
そうです。わが愛車プリウス。それも新型。


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今回の旅行で随分、プリウスを見ましたが、まだ、新型(30型)は珍しいようです。

会場は昔はローマ時代の石切り場だったところ。ものすごく整備し、舞台装置も見たことがないくらい凝ったものです。こんなもの作って、ひと夏で元がとれるんでしょうか?
石切り場にある舞台まで、駐車場から、長い長い通路が整備されています。全体はすごく広大で驚きました。


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舞台の凄さにも驚きましたが、既に会場に集まっている人の数も相当なものでビックリです。そして皆さん、シャンペンやワインなどを手に、軽食を食べながら、大いに盛り上がっています。一大パーティー会場の雰囲気です。食事はどうするのかと心配していましたが、何も問題ないですね。私達も、皆さんに倣って、飲み物とサンドイッチを手にテーブルを相席させてもらいました。
ちなみに下の写真の右側の一段高いスペースはVIPラウンジ。もちろん、今夜はsaraiは左側の低い場所にある一般ラウンジで軽食をいただきました。
なお、奥に見えるのが観客席。その右手が舞台です。


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さて、お腹に食べ物を詰めたところで、いよいよ、舞台・観客席に向かいます。
まずは巨大で凝った舞台セットに圧倒されます。
舞台の上では、セットを見物するツアーをやっています。VIPラウンジのかたたちの特権でしょうか。


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ちなみに、中央のライオンの顔をした巨大な怪物はオペラの途中で真ん中から2つに割れて、左右に分離し、後ろに隠れているザラストロの宮殿が現れます。ダイナミックな舞台装置ですね。

舞台の前から観客席全体は、こんな感じ。


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そのうちに舞台のライトアップのテストが始まりました。
まだ、明るいですが、それでもこの美しさ。夜の闇がおりてくると、きっと美しいでしょうね。


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ともあれ、今夜の演目はモーツァルトの「魔笛」。オーケストラも歌手もすべてマイクを通しているので、よく音が通ります。野外オペラだから、どうしてもそのようになりますね。まあ、ミュージカルを見るようなものですが、仕掛けの数々があっと驚くようなもので、面白いスペクタクルです。

一応、今回に向けて予習したのは以下。

 ・ザルツブルグ音楽祭1982
指揮:レヴァイン 演出:ポネル
   ザラストロ:タルヴェラ   タミーノ:シュライヤー
   弁者:ベリー   夜の女王:グルベローヴァ
   パミーナ:コトルバシュ  パパゲーノ:ベッシュ
   パパゲーナ:ジーバー

 これは往年?の名歌手がずらっと揃ったDVDです。なかでも、まだ現役ですが、もう夜の女王は歌わないグルベローヴァの素晴らしいコロラトゥーラが聴きものです。

で、今回のキャストは以下。

指揮:シューツ
   演出:ワーバ
   ザラストロ:イェンティンス
   タミーノ:クドリャ
   弁者:クラーセンス
   夜の女王:ミヒャイロヴァ
   パミーナ:シュタインベルガー  
   パパゲーノ:ツェンクル
   パパゲーナ:プラットシャー

オーケストラはステージ横手の建物の中で演奏しており、姿がほとんど見えません。そのオーケストラの音がスピーカーで広大な会場に流されますが、意外にいい音です。普通の室内のオペラのような臨場感には欠けますが、思ったほど、悪くはありません。
歌手達も同様な印象。生声を聴いていないので、うかつな評価は慎みますが、パミーナ役のソプラノのシュタインベルガーの声は好きな部類の声で気持ち良く聴けます。

演出としては火薬が多用され、あちこちで炎や白煙があがります。始まってしばらくすると、左手の方からハトの群れが飛び立ち、舞台の上空で旋回しだしました。野外の会場だと、鳥やカラスが煩いことがよくあると聞いていたので、その類かと思っていたら、サァ~ッと舞台に舞い降りてきて、舞台の上にある籠に皆入ってしまいました。演出だったんです!
あまりの見事なハトの演技に大拍手がおきました。

また、夜の女王は、舞台中央の怖いライオンの顔の頭のてっぺんに立ってアリアを歌いました。イヤァ怖かったと思いますが、そんなことは微塵も感じさせない堂々とした歌いっぷりでした。

驚きの演出に大いに楽しめましたが、途中の虫の大群の襲来には閉口しました。しっかり防虫シートを持参し肌に塗りまくりましたが、完全に防御できるレベルの虫ではありませんでした。後ろのおばさんが防虫スプレーを貸そうかと言ってくれました。みなさんの親切に感謝。でも、それくらいではとても虫は撃退できません。

そんな感じで第1幕が終わり、休憩。
2幕目以降もどんな趣向があるのか大いに期待です。

ところが休憩中にアナウンスが入ると、観客がぞろぞろと会場から出たり、合羽を出し始めました。どうも雷雲が近づいているとのアナウンスだったようです。もちろん私達も準備はばっちりです。ウインドブレーカーをはおり、傘を出して雷雨に備えます。気温もどんどん下がります。着込んだ完全装備状態でも全く暑くありません。先ほどまでの暑さが信じられません。

いよいよ雨がぽつりぽつり降りはじめ、雷は近くで鳴るは、雨は激しく降り出すはで、もう大変です。


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で、第2幕がなかなか開きません。石切り場ならではの火薬を多用した演出が、雷で危険になっているようです。ステージに近い席の人(我々も)は強制的にセキュリティの人の誘導でステージから遠いところに避難。
結局、雨は強くなる一方で、ここで公演中止。残念ですが、仕方ありませんね。この時点でもうすぐ夜中の12時というところでした。
また、バスでウィーン市内に。
バスはシュターツオパー前まで送ってくれたので、あとは徒歩でホテルに。1時過ぎです。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

 

「フィガロの結婚」@バイエルン国立歌劇場 2010.7.14

ミュンヘンの美術館を堪能した後、ホテルでしばし休養をとって、オペラハウスに出かけます。
今夜のオペラはミュンヘンのオパーン・フェスト・シュピーレ。
会場はもちろんバイエルン国立歌劇場。

トラムに乗る予定で乗り場に向かいましたが、かなりトラムが遅れているような表示が出ていていました。仕方なく、地下鉄で迂回して行きましたが、十分に早めに出発したお蔭で、無事余裕で間に合いました。

今夜のオペラはモーツァルトの「フィガロの結婚」。素晴らしい出来にsaraiは大満足。大好きなソプラノのフリットリも出ていたし・・・。

さて、今回に備えて予習していたのは以下。

 ・ザルツブルグ音楽祭2006
   指揮:アーノンクール ウィーン・フィル
   フィガロ:ダルカンジェロ  スザンナ:ネトレプコ
   伯爵夫人:レシュマン    伯爵:ボー・スコウフス 
   ケルビーノ:シェーファー  マルチェリーナ:マクローリン
   バルバリーナ:エヴァ・リーバウ

 現在、望みうる最高のキャストで公演したもので、音楽的にはまったくもって素晴らしい。ただ、演出がザルツブルグらしく、ちょっとね・・・・  
 それとシェーファーのケルビーノの素晴らしかったこと。完全にネトレプコを食っていました。

で、今回のキャストは以下。

   指揮:ヴァルクハ
   演出:ディーター・ドーン
   フィガロ:ダルカンジェロ
   スザンナ:ティリング
   伯爵夫人:フリットリ   
   伯爵:クヴィエチェン 
   ケルビーノ:ボニタティブス
   バルバリーナ:ソトニコヴァ

何と言っても、フリットリの伯爵夫人が聴きたくて行ったオペラです。
席はいろいろとトラブルはあったものの最終的には、平土間の2列目のまさにど真ん中を確保。贅沢な鑑賞が期待できる席ですね。

まずはオペラ史上最高に素晴らしい序曲が始まります。期待しましたが、まあまあというところです。もう少し、演奏にわくわく感があればなあと感じました。大いに残念です。
ウィーンはあんなにうまいのにね。
でも、オーケストラは全体に言えば、モーツァルトの本質をついた見事なアンサンブルで序曲以外は満足でした。

さて、まずはスザンナとフィガロの出番。スザンナ役のティリングは以前バーバラ・ボニーの代役(小沢塾の公演)で聴いたことがありますが、そのときに比べるとなかなかの出来。この人はネトレプコのように声量のあるタイプではありませんが、実に透き通った声でスザンナのイメージにぴったり。演技力もなかなかです。それに比べて、スター歌手のダルカンジェロはもうひとつの出来。でも、さすがにベテラン。徐々にペースをあげ、4幕目では素晴らしい歌唱。

圧巻だったのが伯爵役のクヴィエチェン。声の張りといい、声量といい、素晴らしいバリトン。一番の収穫でした。
ケルビーノ役のボニタティブスは結構よいのですが、どうも安定感に欠け、歌の完成度が今一つ。今後に期待。どうしても、シェーファーと比べてしまいますが、それは酷ですね。でも、聴衆にはえらく受けていました。

さて、肝心のフリットリ。相変わらずの美声です。アリア2つとも感激です。あの透き通る美声の心に染み入ること、この上なし。
また、帰国後すぐに来日するトリノ歌劇場でミミが聴けるので、楽しみも倍増です。
まあ、ほかの歌手とは格が違うと言えば、叱られるかな・・・

全体にこのオペラの本質であるアンサンブルオペラがピタッと決まっていたのが印象で、これだけのモーツァルトが聴けるのはここのほかはウィーンくらいだなと思ったくらいの素晴らしいモーツァルトでした。

それにこのオペラはsaraiの好きな3大オペラの一つでもありますしね。ちなみにほかの2つはプッチーニの「ラ・ボエーム」とR・シュトラウスの「薔薇の騎士」。書いてしまえば、あまりに一般的ですが、いいものはいいので、仕方がないでしょう。

で、フィナーレの素晴らしかったことは特筆できます。
伯爵がこれまでの非を悔いて、実に深いメロディーを切々とした歌唱で伯爵夫人に許しを請います。
伯爵夫人=フリットリは透明な天からの声で、優しく伯爵を許します。
これって、男すべての罪、あるいは人すべての罪を聖母マリアがすべてを包み込んで、許してくれる究極の救済であり、フリットリはもう天上の人そのものとしか思えません。
これが「フィガロの結婚」の真のテーマであり、すべてはこの1点に向かって、一見、コメディータッチの劇が進行していくわけです。
このモーツァルトの畢生の名作を見事に表現しきった瞬間がフリットリのフィナーレの歌唱だったと感じました。
最後は一転して、人生の喜びを謳歌するように、アップテンポの最終歌唱で舞台も観客席も一体化して、昇華・・・・

このモーツァルトは今回のヨーロッパで一番、満足できたオペラでした。

ホテルに帰り着いたのは、トラムがなかなか来なかったせいもあり、かなり遅くはなりましたが、満足の睡眠になりました。



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「カルメン」@チューリッヒ歌劇場 2010.7.8

今夜もチューリッヒ歌劇場で3夜目のオペラなので、散策は早めに打ち切って、トラムでホテルに戻り、休養。
テイクアウェイのお寿司(チューリッヒは寿司ブームらしく街中のいろんな所で見かけました)をホテルの部屋で少しつまんで、いざ、チューリッヒ歌劇場。

チューリッヒ歌劇場は今日でオシマイ。ぜひ、よい公演を聴きたいものです。これまでの「魔弾の射手」、「薔薇の騎士」は完全燃焼とはいきませんでしたからね。

今夜のオペラはビゼーの「カルメン」。カルメンはカサロヴァ、ドン・ホセはマッシモ・ジョルダーノ。
最初に結果を言ってしまうと、今夜の出来は最高。どちらかと言えば、昨日までの2回のオペラはチューリッヒ歌劇場ってこんなものという感も否めなかったのですが、今夜ですっかり評価が変わりました。これまで見た「カルメン」のなかで最高でした。
とりわけ、カサロヴァのどすの利いた節回しの個性的なカルメンとジョルダーノの生きのいいテノールは素晴らしかったし、オーケストラも演出も合唱もすべてがうまく機能していました。

今回の公演に向けての予習したのは以下。

 ・チューリッヒ歌劇場
   指揮:フランツ・ウェルザー・メスト   演出:マティアス・ハルトマン
   カルメン:ヴェッセリーナ・カサロヴァ  ミカエラ:イサベル・レイ
   ドン・ホセ:ヨナス・カウフマン     エスカミーリョ :ミケーレ・ペルトゥージ

 これはカサロヴァの一皮むけたともいっていいカルメンが最高、今夜と同じ演出の筈です。

今回のキャストは以下。

   指揮:ツォルト・ハマー
   演出:マティアス・ハルトマン
   カルメン:ヴェッセリーナ・カサロヴァ
   ミカエラ:サンドラ・トラットニック
   ドン・ホセ:マッシモ・ジョルダーノ
   エスカミーリョ :マッシモ・カヴァレッティ

席は平土間の10列目の中央。「魔弾の射手」のときより、すこし後ろですが、場所はよいでしょう。音の左右のバランスや響きもこれまでより、よさそうです。

まずは前奏曲が始まります。えっ、昨日までと違い、音に輝かしさが加わり、ダイナミックで歯切れがいい。まさにカルメン。
で、1幕目の聴きどころ、ハヴァネラです。カサロヴァが深い低音と張りのある高音で歌いまわします。まるでシャンソンの名歌唱を聴いている感じでもあります。
大変、個性の強い歌唱で好き好きはあるでしょうが、saraiはまったく魅了されて、引き込まれてしまいます。
昔、ウィーンで聴いたバルツァと比較しても、よっぽど、大好きなハヴァネラです。
最近はカルメンといえば、今をときめくガランチャが話題ですが、こんなに個性の強いカサロヴァの歌唱ですから、簡単に比較するのは困難でしょうね。いずれ、ガランチャを聴いて判断したいところですが、ガランチャはあまりカルメンで聴きたい歌手ではありませんね。「チェネレントラ」とか「ウェルテル」は素晴らしいので、生の歌唱はそちらのほうがいいんですが・・・・

ともあれ、ドン・ホセ役のジョルダーノも好調でカサロヴァと絡みながら、素晴らしく盛り上がります。
このイタリア出身のテノールもなかなか聴かせます。
エスカミーリョ役のカヴァレッティですが、彼の実力からいえば、順当なところの出来。もうひとつ存在感を出してもらいかったというのが辛目の注文。
ミカエラ役のトラットニックは初めて聴きましたが、なかなかうっとりする歌唱で好感。ただ、この役は意外にもうけ役で、主役も食いかねないと思いますが、さすがにそのレベルまではいってなかったと思います。まあ、カサロヴァが良すぎましたからね。

舞台はチューリッヒ歌劇場らしくシンプルなものですが、なかなか良い演出だと思います。
DVDと違うのはカサロヴァの衣装。DVDでは花柄の衣装でしたが、今夜は黒い絵柄のない衣装。
舞台と合いまって、シンプルな衣装もいいのではないでしょうか。

1回休憩をはさみ、緊張感を保ったまま、フィナーレへ。
2人の愛憎劇はすさまじく、そのまま、カルメンの死で幕。
いやあ、素晴らしい!!
こんなに見飽きたようなオペラでもここまでやれるとは驚きでした。
最高の歌劇「カルメン」、最高のカルメンを演じたカサロヴァ。まったく脱帽です!
いままではあまり好みでなかったカサロヴァの魅力を初体験した日にもなりました。
また、ジョルダーノの若手テノールとしてますます今後が楽しみです。
それにチューリッヒのオーケストラも結構やれるじゃないかと思いました。
指揮のハマーもうまくオーケストラと歌手をコントロール。今後が期待できる指揮者です。

なお、この日の終幕でのカルメンの死はビデオで見た演出に比べると、かなり、あっさりとした死に手直しされており、よりよい改善がなされていた印象です。こういう細かい演出上の改良を少しずつ加え、次第に高い芸術性を実現しているようです。そういうオペラハウスの不断の努力は評価したいと思います。

3日目にして、よい公演に出会え、大満足。
でも、聴衆の反応は疑問あり。saraiの感覚とかなり違っていたことを指摘しておきます。
昨日同様、バカンスシーズンで観光客が多く、地元の目の肥えたファンが少なかったんだろうと信じておきます。

3日間のチューリッヒ歌劇場を聴いた総括は、キャストがともかく粒揃いでよく、演出は公演によってばらつきがあるももの、それなりのレベル。
今後の最大の課題はオーケストラの底上げでしょうか。オーストリア、ドイツのオペラハウスのオーケストラのレベルに追い付いてもらいたいものです。
いずれにせよ、また、しばらくして、どう変化したか聴きたいオペラハウスです。

あと、夏の暑いシーズンは環境が悪く、観光客も多そうなので、それ以外のシーズンに聴いたほうがいいかなという印象です。
それでも最初の2日間に比べると、最後の3日目は少しエアコンが効いていて、まだしも暑さがしのげました。暑さ対策にオペラハウス管理者のかたも少しは気を使ってくれているのかなとも思います。今後ともオペラハウスの運営も細心の注意のもとに努力願えればと思います。


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「薔薇の騎士」@チューリッヒ歌劇場 2010.7.7

昨日に引き続き、チューリッヒ歌劇場でオペラ。

今日は人気公演のR・シュトラウスの「薔薇の騎士」。昨日よりもお洒落した観客が多く、ちょっと、昨日の「魔弾の射手」とは雰囲気が違います。saraiも今回のチューリッヒで一番期待した公演です。
目玉は実質主役の元帥夫人を歌うルネ・フレミング。メトロポリタン歌劇場の来日公演のときは歌唱はともかく、舞台女優顔負けの演技力に驚きました。歌っていない時も目で演技しているという感じでした。

今回に備えて、予習したのは以下。
 ・ウィーン国立歌劇場 
   指揮:クライバー 演出:シェンク
   元帥夫人:ロット オックス男爵:モル
   オクタヴィアン:フォン・オッター  ソフィー:ボニー
   ファーニナル:ホーニク  ヴァルザッキ:ツェドニック
   イタリア人歌手:イカイア・パーディ

これはまあ決定版と言ってもいいDVD。どこをとっても素晴らしい。特に終幕の3重唱の素晴らしいこと。うっとりですね。

今回のキャストは以下。

   指揮:ペーター・シュナイダー
   演出:スヴェン・エリック・ベヒトルフ
   元帥夫人:ルネ・フレミング
   オックス男爵:アルフレード・ムフ
   オクタヴィアン:ミシェル・ブリート
   ソフィー:エヴァ・リーバウ
   ファーニナル:マルティン・ガントナー 
   イタリア人歌手:ボイコ・ツベタノフ

今回は人気公演ということでチケットの入手が困難で、ゲットした席は平土間ではなく、3階席の右後ろ。それでも最前列ですから、全体をよく見渡せます。
もちろん、この席もカテゴリー1の最上級の席です。ネットで予約した時点で残っていたカテゴリー1の最後の3席のうちの2席をなんとかゲットしたわけです。

さて、まずは序奏が始まります。あの輝かしい音楽です。ですが、昨日同様に輝かしい響きには少し遠いようです。こちらの気持ちの高まりが今一つというところ。いつもなら、このあたりでぐっとこちらの気持ちがのってくるところなんですが・・・

幕が上がると、シンプルな舞台装置。いつもの元帥夫人とオクタヴィアンが絡み合うベッドがなく、床にシーツ(布団?)が広げられています。なんだかね・・・・

まずはオクタヴィアンが歌い始めますが、スタイル(太っている)といい、声の伸びやかさといい、オクタヴィアンとしてはどうでしょうね。
もちろん、ルネ・フレミング演ずる元帥夫人はR・シュトラウスにふさわしい演技と歌唱。いまや、この人の元帥夫人が最高かもしれません。そう感じさせる内容です。第1幕後半の元帥夫人のモノローグは聴かせどころですが、実に深い歌唱を聴かせてくれました。この日はこのあたりが一番よかったかもしれません。
オックス男爵を演じるムフはまあまあってとこですね。

2幕目、これはまったく変な演出というか、変な舞台装置。お菓子工房のなかでしょうか、そこでソフィーが薔薇の騎士を迎えます。庶民階級ということを強調したのでしょうが、別に身分の差をとらえることが中心の課題ではなく、ある意味、夢のような古典回帰のオペラですから、これはまったくお門違いの演出としか言いようがありません。薔薇の騎士(オクタヴィアン)が銀の薔薇をソフィーに捧げるシーンは愛のシーンとしても、saraiの一番好きなシーンなのに雰囲気ぶち壊し。それに太ったオクタヴィアンではカッコいい騎士という感じには程遠い。救いはソフィーがまあまあの高音で歌っていたところでしょうか。

3幕目、一番の目玉ですが、これも3重唱ではオクタヴィアンが見栄えと歌唱力で足を引っ張った感じ。
フレミングだけに終始してしまいました。

それでも、公演後のブラボーコールも一際大きく、昨日に比べて大いに受けていました。ここの聴衆の質の問題か、それともバカンスシーズンで観光客が多くての結果か判然としませんが、なんだかねえ・・・・
だって、フレミング以外にもブラボーと大きな拍手があったのには、あまり釈然としませんでした。

まあ、このR・シュトラウスはウィーンとかには遠く及びませんが、実質主役のソプラノのルネ・フレミングの美貌と美声で魅了されたことは確かでした。それだけが救いでした。チューリッヒ歌劇場の実力はこんなものなのでしょうか? これで終わって欲しくありませんね。

今夜も昨夜同様、暑さと疲れとオクタヴィアンのせいで体調は最悪。長いオペラに耐えるのも大変です。
この日もホテルに帰って、すぐにダウンです。



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「魔弾の射手」@チューリッヒ歌劇場 2010.7.6

スイス・オースオリアの旅では、オペラ・オペレッタを8回見ました。
今回から、順次、各公演について、レポートします。

ホテルの部屋で少し午睡をとって、おめかしをして、チューリッヒ歌劇場に向かいます。チューリッヒ歌劇場はホテルのすぐそば。5分とかかりません。開演30分前には着きました。既に正装した男女が集まっています。
で、中にはいろうとするとまだ様子がおかしい。係員に制止されました。まだ、15分ほど後にオープンとのこと。何せ、このオペラハウスは今夜が初めてなので、まったく、様子が分かりませんね。
待つこと暫し。ようやくオープン。

今日のオペラはウェーバー作曲の「魔弾の射手」。結構、有名オペラですが、生で聴くのは初めて。
キャストも粒ぞろいの歌手で楽しみです。席も平土間の8列目の中央から少し左寄りとまあまあの席です。
なお、今回に備えて、予習したビデオは次の2つです。

 ・チューリッヒ歌劇場
   指揮:アーノンクール  演出:ベルクハウス
   オットカー:デヴィッドソン  クノ:グレシェル
   アガーテ:ニールセン   エンヘェン:ハルテリウス
   カスパー:サルミネン マックス:ザイフェルト
   隠者:ポルガール キリアン:フォーゲル
   ザミエル:クラーメル

 このDVDは今回の公演と同じ演出で、事前の予習としては最高に役立ちました。世評では、特に演出はあんまり評判はよくありませんが、まあ、音楽的にはよい出来でしょう。

 ・ドレスデン・ゼンパー・オーパー
   指揮:ハウシルト    演出:ヘルツ
   オットカー:ケーテルゼン  クノ:エマリエ 
   アガーテ:スミトコヴァー  エンヘェン:イーレ
   カスパー:ヴラシーハ マックス:ゴルトベルク
   隠者:テオ・アダム キリアン:オラフ・ベーア
   ザミエル:ケムター

 これはレーザーディスク。随分前のものです。ゼンパーオーパーが再建されて、最初の公演という記念碑的なもの。配役はそれほどスターが揃っているわけではありませんが、内容的には、素晴らしい出来です。ゼンパーオーパーの名前に恥じない名演といえるでしょう。

今夜の公演のキャストは以下です。

指揮:ペーター・シュナイダー
演出:ルート・ベルクハウス
オットカー:マルティン・ガントナー
クノ:ロルフ・ハウンシュタイン
アガーテ:ペトラ・マリア・シュニッツァー
エンヘェン:マリン・ハルテリウス
カスパー:クルト・リードル
マックス:ペーター・ザイフェルト
隠者:アンドレアス・ヘルル
キリアン:アンドレアス・ヴィンクラー
ザミエル:ジョエル・シング

有名な序曲(秋の夜半の・・・)が始まりましたが、オーケストラのスケール感はもう一つで、何となくホールに響きわたっていない感じ。もう少し、ダイナミックに演奏すればいいのにと感じます。それにここは彼らのホームグラウンドで自家薬篭中のもののはずですけどね。まあ、それでも、響きを別にして、さすがにアンサンブルは見事。それだけに少し残念。オーケストラは少し弱いのかなというのが最初の印象です。
演出自体はDVDで見たとおり。今一つかもしれません。

主役のマックスのザイフェルトはなかなか良い出来でした。
敵役のカスパーはバスのクルト・リードル。まだ、彼は歌っているんですね。なかなか声も出ていて、これは存在感が十分にあります。狂言回しとしての演技も堂に入ったもの。さすがですね。
主役の恋人役のアガーテのシュニッツァーはまあまあってとこですが、印象に薄いです。
むしろ、エンヘェンを歌ったハルテリウスはこのオペラハウス専属のように育った人で、演技といい、歌唱力といい、好印象でした。まあ、見栄えもいいし・・・
また、このオペラの場合、隠れた主役は合唱ですが、これもばんばん響き渡るという合唱ではないものの優れた合唱でこのオペラを支えてことは間違いありません。

全体的にまとめると、最近評判になっているオペラハウスだけのことはあり、非常に高いレベルでの公演であったことは間違いありませんでしたが、キャストの割にもう一つという印象もあったのはオーケストラの響きの薄さと演出のせいでしょうか。

ただ、この日は旅の実質初日でまだ時差ボケもあり、とりわけ、オペラハウス内部が後半に向け、無茶苦茶に暑かったのと乾燥のせいで喉がとても乾き、体調がおかしく、強烈な眠気にとらわれ、苦痛も伴いました。きっと、チューリッヒがこんなに暑いことは異常でホールの設備が対応できなかったのでしょう。
そういうわけで、もうひとつオペラに没入できなかったのもマイナス材料でした。
まあ、それでも、オペラを何とか楽しみましたし、このオペラを聴くのは初めてですが、好印象に感じるところも多々ありました。

また、ウェーバーのオペラはベートーヴェンとワーグナーのドイツオペラをつなぐ重要な流れに位置することを再認識もできました。

この時期は途中の休憩時間もまだ外は明るく、まるでマチネーみたいな感じなのも面白いところ。休憩中は外で涼む人達も大勢です。もっとも外も暑いですけどね・・・・

オペラが終わり、ホテルの部屋に戻るともう何もできずに2人ともベッドに倒れこみ、朝までぐっすり・・・




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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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