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吉右衛門の迫真の演技 玉三郎の美しさ 二月大歌舞伎@歌舞伎座 2019.2.14

久しぶりの歌舞伎鑑賞です。もっと見たいのですが、あまりにコンサートに行き過ぎるので、なかなか行く機会に恵まれません。それでも毎年1回くらいは歌舞伎に足を運んでいましたが、とうとう昨年は1回も見ず仕舞い。今日は2年ぶりの歌舞伎です。配偶者からの玉三郎が出るという情報で、それならと見に行くことにしました。吉右衛門も別の演目で出るので、それも見たかったしね。

二月の歌舞伎座はまだ新春の名残があります。館内を見渡すと、玉三郎目当てなのか、女性客が目立ちます。配偶者のお友達も玉三郎が出るということで、ご一緒します。
二月大歌舞伎は2月2日(土)~26日(火)という日程ですから、今日はほぼ中日です。客席はほとんど埋まっています。配偶者は張り切って、着物を着ています。saraiはリラックスしたセーター姿。昨日までのクルレンツィスのコンサートはちゃんとブレザーを着ていましたが、歌舞伎はリラックスして見ましょう。

夜の部は4時半開始ですが、その前にレストランの予約を済ませ、プログラムであらすじを確認しながら、開演を待ちます。今日の演目はすべて、初めて見るものです。

1番目の演目は一谷嫩軍記熊谷陣屋(くまがいじんや)です。主役の熊谷直実は吉右衛門が演じますから、大いに期待できます。
あらすじはホームページに以下の内容が記載されています。

源氏方の武将熊谷直実が自らの陣屋に戻ってくると、妻の相模が息子小次郎の初陣を案じ待っています。小次郎の様子と、平家の公達敦盛を討ったことを明かす直実。そこへ敦盛の母藤の方が現れ、直実に斬りかかりますが、これをなだめた直実は敦盛の立派な最期を語って聞かせます。やがて源義経が現れ、敦盛の首実検が行われますが…。

上記のあらすじには肝心の内容が書かれていません。直実は後白河院のご落胤だった敦盛を討たずに、代わりに自分の息子の小次郎の首を切ったという衝撃の内容がこの歌舞伎の底辺にずっと流れています。最初に直実を演じる吉右衛門が花道から入場しますが、この出から、吉右衛門は無言で物凄い形相です。ですが、このあたりではsaraiもまだ平静に芝居を見ることができます。クライマックスは敦盛の首実検を源義経が行う場面です。義経役は菊之助ですが、声色も明快でいい役者さんになりましたね。これからの歌舞伎を引っ張っていく存在になりそうです。この首実検で敦盛の首ではなく、小次郎の首であることが分かりますが、一同はあえて、敦盛の首だということで通します。小次郎の母、相模の嘆きようはいくばくかという場面です。で、最後は我が子を手にかけた直実は義経に暇乞いを願い、僧侶姿に身を変えて、小次郎の菩提を弔う旅に出発します。吉右衛門が花道に出るところで、菊之助(義経)が呼び止めて、最後に小次郎の首をかざします。吉右衛門はたまらず、その場に崩れ落ち、深い嘆きの迫真の演技。たまりませんね。そのまま、幕が引かれますが、花道手前の吉右衛門だけが幕の前に立っています。すると三味線弾きが登場し、片足を椅子の上に上げて、まるでギターをかき鳴らすように三味線を弾きます。その伴奏にのって、吉右衛門は深い嘆きとともに花道を駆け抜けていきます。何とも素晴らしい幕切れです。そのカッコよさに感嘆しながら、感動を覚えます。こういう歌舞伎を見て、理解でき、感動できる・・・日本人に生まれてよかった! ちなみにこのお芝居のテーマは今日的なテーマ、平和への希求です。

ここで休憩。予約していた、美味しい夕食をいただきます。食事が終わると、すぐに次の演目です。

2番目の演目は新春の華やかを踊る、當年祝春駒(あたるとしいわうはるこま)です。
あらすじはホームページに以下の内容が記載されています。

初春を迎えた工藤祐経の館に、親の仇である祐経を討とうと曽我十郎と五郎の兄弟が春駒売りに姿を変えて入り込みます。賑やかに春駒の踊りを披露する兄弟は祐経との対面を果たしますが、祐経は兄弟の正体に気づいており…。

これは曽我兄弟と工藤祐経の対面する有名な場面です。寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)という歌舞伎にもなっています。今回の舞踊では、最後に工藤祐経が富士山麓での巻狩りの通行手形を曽我兄弟に投げ渡し、そこで討たれる覚悟であることを語ります。ちなみに曽我兄弟の演目は江戸時代から新春には欠かせないものだったそうです。

再び、休憩です。休憩後、いよいよ、玉三郎の登場と相成ります。

3番目の演目は初世尾上辰之助三十三回忌追善狂言と銘打った、名月八幡祭(めいげつはちまんまつり)です。
あらすじはホームページに以下の内容が記載されています。

越後の実直な行商人縮屋新助は、深川芸者の美代吉に惚れ込んでいます。しかし美代吉は旦那もちで、さらには船頭三次という情夫までいる奔放な女。美代吉は、深川大祭に必要な100両が用意できずに困ると、金の工面を新助にすがります。新助は故郷の家や田畑を売り払って金を工面しますが、旦那からの手切れ金が届いて金の心配がなくなった美代吉は態度を一変、新助の相手をしなくなります。裏切られ狂乱した新助は…。

この深川芸者の美代吉に扮するのが玉三郎。その情人の船頭三次が仁左衛門。この二人の自堕落さが名優の二人で見事に演じ切られます。玉三郎の艶やかさがまだまだ健在でした。玉三郎がこの美代吉を演じるのは何と32年ぶりだそうです。その時よりさらに4年前、すなわち今から36年前は相手役の縮屋新助は初世尾上辰之助。彼は40歳で亡くなり、今年が三十三回忌だそうです。今回の相手役の縮屋新助は初世尾上辰之助の息子の尾上松緑。その機縁で玉三郎と仁左衛門(彼も36年前に船頭三次役を演じ、当時はまだ片岡孝夫と名乗っていました。その時以来の36年ぶりの船頭三次役。本人はもうこの役をやることはないだろうと思っていた由。)という名優が顔を出してくれたようです。お二人はお歳を感じさせない若々しい演技で楽しませてくれました。初世尾上辰之助三十三回忌追善狂言で実現した夢の豪華配役でした。

結局、4時半に始まった夜の部も終わってみれば、9時頃の長丁場になりました。たっぷりと久しぶりの歌舞伎を楽しみました。次に歌舞伎を見るのはいつのことだろう・・・。


今日の公演内容は以下です。

《夜の部》

1.一谷嫩軍記熊谷陣屋(くまがいじんや)

    熊谷直実   吉右衛門
    藤の方    雀右衛門
    源義経    菊之助
    亀井六郎   歌昇
    片岡八郎   種之助
    伊勢三郎   菊市郎
    駿河次郎   菊史郎
    梶原平次景高 吉之丞
    堤軍次    又五郎
    白毫弥陀六  歌六
    相模     魁春


2.當年祝春駒(あたるとしいわうはるこま)

    工藤祐経  梅玉
    曽我五郎  左近
    大磯の虎  米吉
    化粧坂少将 梅丸
    曽我十郎  錦之助
    小林朝比奈 又五郎

3.初世尾上辰之助三十三回忌追善狂言
  名月八幡祭(めいげつはちまんまつり)

    縮屋新助    松緑
    芸者美代吉   玉三郎
    魚惣      歌六
    船頭長吉    松江
    魚惣女房お竹  梅花
    美代吉母およし 歌女之丞
    藤岡慶十郎   梅玉
    船頭三次    仁左衛門



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壽新春大歌舞伎@新橋演舞場 2017.1.21

新春はやっぱり歌舞伎を見たいですね。今回は初めて新橋演舞場に出かけます。
夕方4時半からの開演ですから、ゆっくりと出かけます。新橋演舞場は歌舞伎座のすぐ近くですから地下鉄の都営浅草線の東銀座駅が最寄り駅。まずは歌舞伎座の地下でお弁当を調達。下鴨茶寮 舞妓と天むすの地雷也の清澄の2つの豪華弁当をゲット。おやつとお茶も調達して、新橋演舞場に向かいます。今日は3階の最前列中央でなかなか見やすい席です。難を言えば、花道が見づらいです。

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配偶者がネットからプリントした演目の解説を予習しているとすぐに開演。

まずは義太夫狂言の名作、源平布引滝(げんぺいぬのびきのたき)の2段目、義賢最期(よしかた さいご)です。平家物語の世界です。主役の木曽義賢は木曽義仲の父親です。要は源氏方に組していることが見破られた木曽義賢が平家方に討ち取られて、最期を迎える場面を描いたものです。見どころは市川海老蔵が扮する木曽義賢が大立ち回りを演じる最後のシーンです。いやはや、海老蔵が大奮闘して、やってくれました。大迫力の演技にやんやの喝采が飛びます。最期を迎えるときにどーっと階段の上から真っ逆さまに下に倒れ込みます。「仏倒れ」という有名なシーンなんだそうです。凄い迫力の終わり方でした。

ここで1回目の休憩。お弁当をぱくつきます。まずは1個目の京料理の下鴨茶寮のお弁当です。

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中身はこんな感じ。高価なお弁当は美味しいです。

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続いて、三代目市川右團次の襲名披露の口上です。ずらっと幹部俳優が並んで口上を述べます。司会は中村梅玉。さすがに彼は何をやらせても上手いです。市川右近はその名前で41年演じてきて、今回、80年以上名跡を継ぐものがなかった市川右團次を襲名するそうで、よかったですね。6歳の可愛い息子さんも今まで父親が名乗っていた市川右近を襲名するとのことでダブルにお目出度いことです。

ここでまた休憩。残りの地雷也の天むすのお弁当とおやつをいただきます。なんだか、食べてばっかりです。お弁当の写真は撮り忘れました。
幕は市川右團次の襲名披露の記念の幕がかかっています。

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続いて、錣引(しころびき)の摂州摩耶山の場です。これも源平合戦の時代を描いた作品です。細かい内容よりも立ち回りが見どころです。襲名披露の市川右團次と名優、中村梅玉が演じる平家と源氏の英雄同士の一騎打ちが見事な様式美に満ちていました。

ここでまた休憩。最後のおやつをいただきます。本当に食べてばっかりです。これが歌舞伎の楽しみではあります。

最後は、猿翁十種のひとつである人気舞踊劇、黒塚(くろづか)の摂州摩耶山の場です。これは音楽をたっぷりと堪能します。長唄三味線と箏、尺八の見事な演奏に聴き入ります。普通、歌舞伎では箏、尺八がはいることは滅多にありませんが、やはり、風流でよいものです。市川猿之助の踊った安達ケ原の鬼女も最初の静かでスムーズな舞から、激しく躍動する鬼の舞まで、素晴らしいです。これではバレエにも負けませんね。まるで体操選手並みの筋力とリズム感です。市川猿之助は初めて見ましたが、立派に先代を継ぐ名優になりそうです。

盛りだくさんの内容で見ているだけで疲れました。5時間近い長時間の公演です。まるでワーグナーの楽劇をひとつ見たようなものです。新春から、よいものを見せてもらいました。

今日の公演内容は以下です。

《夜の部》

1.源平布引滝(げんぺいぬのびきのたき) 義賢最期

2.三代目市川右團次襲名披露 口上

3.錣引(しころびき) 摂州摩耶山の場

4.猿翁十種の内 黒塚(くろづか) 摂州摩耶山の場
    
主な出演者

 市川右團次
 市川猿之助
 市川中車
 市川海老蔵
 中村梅玉



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三月大歌舞伎《夜の部》@歌舞伎座 2016.3.12

昼の部が終わりましたが、夜の部が始まるまでに1時間ほどあります。ぶらぶらと銀座まで買い物に出かけてきましょう。配偶者の行きつけの花屋さんに寄って、松屋のデパ地下で夕ご飯のお弁当をゲットします。そろそろ時間なので、歌舞伎座に戻ります。

夜の部の公演を見るために、歌舞伎座3階の客席に上がります。席に着いて、これからの演目の内容についてのあらすじをチェックします。そして、開演。

まずは最初の演目、双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)、角力場です。角力場は双蝶々曲輪日記の2段目で、後半の段の引窓が有名でよく上演されます。saraiも引窓は前にも見たことがありますが、角力場は初めて見ます。この段はそれほどのストーリーがあるわけではありません。実績のある関取の濡髪長五郎に新進の放駒長吉が挑戦する取り組みが背景になります。実際の取り組みが演じられるわけではなく、行司の声だけが聞こえてきますが、なかなか臨場感を味わえます。この勝負は結局、新進の放駒長吉が濡髪長五郎を寄り切って勝ちます。それぞれの相撲取りには贔屓がついていて、濡髪長五郎には大店のぼんぼんの山崎屋与五郎、放駒長吉には侍の平岡郷左衛門です。実は廓で人気の藤屋吾妻をこの贔屓の二人は身請けしようと張り合っています。恋仲になっているのは大店のぼんぼんの山崎屋与五郎のほうですが、侍の平岡郷左衛門は藩の御用金に手を付けて、お金の力で身請けしようとたくらんでいます。そして、彼らは贔屓にしている相撲取りにそれぞれ、藤屋吾妻を身請けできるように話を付けてくれるように依頼します。で、相撲取り同士が土俵ではなく、相撲小屋の前で話で勝負するわけです。その話で明らかになるのはやはり実績のある関取の濡髪長五郎は大変な実力があり、土俵ではあえて放駒長吉に勝ちを譲ったという事実です。この八百長もどきに免じて、濡髪長五郎は放駒長吉に平岡郷左衛門が藤屋吾妻の身請けを見送るように迫りますが、放駒長吉は自分に勝ちを譲られた事実に怒ります。こうして、お互いににらみあいながら幕になるということで、ほとんどストーリーに進展があるわけではありません。みどころは本来、スマートな歌舞伎俳優が大柄な相撲取りをどう演じ切るかということ。それも大店のぼんぼんの山崎屋与五郎と新進の相撲取りの放駒長吉は一人二役でどう演じ分けるかというのも楽しみなところです。
で、今日のお芝居ですが、濡髪長五郎を演じた橋之助は堂々とした相撲取りぶりでおみごと。お昼の公演での工藤祐経役での不満を一掃してくれました。一方、山崎屋与五郎と放駒長吉を一人二役で演じた尾上菊之助は鮮やかな演じ分けに大満足です。どちらかと言えば、山崎屋与五郎のぼんぼんぶりがよかったです。少々、上っ調子の声色も見事です。体調の悪い父の菊五郎ももう少し頑張ってくれれば、立派な跡継ぎになれるでしょう。まだまだ長い精進は必要なんでしょうけどね。
軽めのお芝居ではありますが、なかなか楽しめて、満足でした。

ここで休憩。銀座のデパ地下でゲットしたお弁当をおいしくいただきます。

続いて、五代目中村雀右衛門襲名披露の口上です。雀右衛門の京屋の紋がはいり、紅白の牡丹の花が散らされた幕が開くと、歌舞伎の名優たちがずらって並んで頭を下げています。中央に座していた坂田藤十郎が頭を上げて、口上の口火を切ります。次々と錚々たる面々がお祝いや叱咤激励の口上を述べていき、最後に五代目を襲名した中村雀右衛門が口上を述べて幕。なかなか華やかでいいものですね。雀右衛門にはますます芸を磨いていってほしいものです。

ここでまた休憩。今度は余計にゲットした3つめのお弁当を配偶者とシェアしていただきます。食べてばかりですが、歌舞伎の楽しみは幕間で食べるお弁当にもありますからね。

次は、祇園祭礼信仰記(ぎおんさいれいしんこうき)、金閣寺です。これも初めて実演に接しますが、ちょっと荒唐無稽かつ間延びしたお芝居で、少し不満が残ります。saraiは世話物で泣かされるお芝居が好きですから、相性が悪かったんでしょう。まあ、5代目を襲名した雀右衛門の雪姫はキュートでなかなかよかったので、それでよしとしましょう。このお芝居の舞台は京都の金閣寺です。戦国時代、将軍足利義輝を暗殺した《国崩し》の大悪人の松永大膳は将軍の母親の慶寿院尼を人質にして金閣寺に立てこもっています。雪舟の孫娘の美女絵師の雪姫も無理やり連れ込んでいます。雪姫の夫の絵師の狩野之介直信も捕らえて、夫を殺すと脅迫して雪姫を言いなりにしようとしています。細かいストーリーは馬鹿馬鹿しいばかりですが、結局、此下東吉(木下藤吉郎すなわち秀吉)の活躍で人質を解放し、松永大膳を追い詰めるところで幕になります。このお芝居の見どころは何といっても雪姫の艶やかさに尽きるでしょう。雪舟の涙で描いた鼠の故事を下敷きにした雪姫が降り散った桜の花びらで鼠を描き、木に縛り付けられていた縄をその鼠が食いちぎる場面をどう魅力的に演じるかは見ものです。また、冒頭で松永大膳が此下東吉と碁を打ちながら、雪姫とちぐはくな会話を交わすコミカルさも面白いところです。
で、今日のお芝居ですが、雀右衛門演じる雪姫が縄で縛られながら、桜吹雪の中で独演するシーンはなかなか美しいものでした。ただ、これは演出の問題でしょうが少々、このシーンが長過ぎて間延びがしたのが残念なところです。松永大膳を演じた幸四郎ですが、あえてステレオタイプの悪役ぶりを強調するあたりは名優ならではの演技でした。碁を打つシーンは幸四郎と仁左衛門が実際にちゃんと碁石を置いていったのにはびっくり。セリフを言いながら、それなりの盤面を作っていったお二人の余裕の演技はさすがとしか言えません。最後に松永大膳が悪あがきをするシーンも大袈裟な演技が胴に行っていました。
此下東吉を演じた仁左衛門もなかなかかっこよかったです。
それぞれの俳優は見事に演じていたにもかかわらず、お芝居全体にしまりがなかったように感じたのは、もともとこの歌舞伎が駄作なのか、演出がよくなかったのか、どうなんでしょうね。

最後は、舞踊の関三奴(せきさんやっこ)。日本舞踊は苦手ですが、それにしてもあんまり秀逸な踊りにはありませんでしたね。槍の投げ合いのようなアクロバティックなところでもあれば、楽しかったかもしれませんけどね

今日は昼の部のほうがよかったと思いますが、夜は口上が聞けたのが収穫でした。

今日の公演内容は以下です。

夜の部 午後4時30分~

1.双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)
  角力場
濡髪長五郎       橋之助
    藤屋吾妻        高麗蔵
    平岡郷左衛門      松江
    三原有右衛門      亀寿
    茶亭金平        橘三郎
    山崎屋与五郎/放駒長吉 菊之助

2.五代目中村雀右衛門襲名披露 口上(こうじょう)

芝雀改め雀右衛門
    幹部俳優出演

3.祇園祭礼信仰記(ぎおんさいれいしんこうき)
  金閣寺
雪姫          芝雀改め雀右衛門
    松永大膳        幸四郎
    狩野之介直信      梅玉
    松永鬼藤太       錦之助
    春川左近        歌昇
    戸田隼人        萬太郎
    内海三郎        種之助
    山下主水        米吉
    十河軍平実は佐藤正清  歌六
    此下東吉        仁左衛門
    慶寿院尼        藤十郎

4.関三奴(せきさんやっこ)
奴駒平         鴈治郎
    奴勘平         勘九郎
    奴松平         松緑


昼の部、夜の部の延々、8時間超の長丁場は少々、疲れました。


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三月大歌舞伎《昼の部》@歌舞伎座 2016.3.12

今日は1月に続いての歌舞伎観劇。前回の浅草歌舞伎(浅草公会堂)から所を変えて、今日は歌舞伎のメッカ、歌舞伎座です。今日も料金の安い3階席です。1階席が1万9千円なのに対して、3階席(A席)は6千円ですから、財布に優しいですね。もっとも今日は《昼の部》も《夜の部》の両方を見ますから、料金は倍になります。観劇時間も合わせて8時間(休憩時間含む)を超えるという長丁場です。

朝11時からの開演に向けて、地下鉄の都営浅草線の東銀座駅に降り立つとすぐに歌舞伎座の地下に出ます。売店の並ぶ地下は多くの人でいっぱいです。まずはタリーズコーヒーで朝食。1階玄関前のチケット預かり窓口で予約済のチケットを受け取り、3階の客席に上がります。おやつの試食だけで満足して、席に着くとすぐに開演。

まずは最初の演目、寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)です。これは前にも見たことがあるので、内容がよく分かり、とても楽しめます。要するに曽我兄弟の仇討ちに先立つ前段のお話しです。仇討ちの相手である工藤祐経の人情あふれるくだりが心に沁みる話です。曽我兄弟の弟五郎の逸る態度を制する兄十郎、2人の性格の違いも見どころです。
で、今日の公演ですが、橋之助演じる工藤祐経は今一つ、ピンときません。あえて、自分への仇討ちの機会を与える場面では本来はジーンと胸にくるはずですが、若干、セリフが空回り。ここが一番の見どころなんですけどね。松緑演じる弟五郎はそれなりに元気があってよかったのですが、勘九郎演じる兄十郎はただ落ち着いているだけで仇討ちに向けての強い内面が感じられません。まあ、それでも全体としては脇役も立派だし、十分に楽しめました。

ここで休憩。本来はお弁当の時間ですが、朝食が遅かったので、とりあえず、鯛焼きを食べます。

続いて、舞踊の女戻駕(おんなもどりかご)と俄獅子(にわかじし)。こういうゆったりした日本舞踊は苦手のsaraiです。ぼーっと見ているうちに幕。まあ、梅玉の踊った俄獅子はそれなりに楽しめました。

ここでまた休憩。今度はお弁当を求めて、館内を回りますが、見つからず、サンドイッチをいただきます。

次は、鎌倉三代記(かまくらさんだいき)、絹川村閑居の場です。これは初めて実演に接しますが、素晴らしいお芝居で、とても楽しめます。鎌倉時代の源頼家方と北条時政方の争いにまつわる男女の愛、親子の情、武士の心情を描いたものです。北条時政の娘の時姫が相手方の武将である三浦之助義村に心を寄せて、病床にある三浦之助義村の母を看病するために三浦之助義村の実家に泊まり込んでいることが物語の発端です。戦場で傷ついた三浦之助義村が実家に戻り、母の様子を見ようとしますが、母は戦場から離脱し、実家に戻った三浦之助義村と会うことを拒否します。これも子を思う親の情なんです。一方、束の間の逢瀬を楽しみたい時姫は強く三浦之助義村との一夜を望みます。三浦之助義村は敵将の娘である時姫のことを心の底からは信じられません。そうこうするうちに時姫を連れ戻すために北条時政が送った武将や腰元がうろちょろし、中でも安達藤三郎が使者として、時姫に帰還を迫ります。安達藤三郎は北条時政から、時姫を連れ戻った暁には妻にしてよいというお墨付きをもらっています。うーん、それってなんだか聞いたことのあるような話だなっと思ったあなたは日本史に詳しい人です。そうです。これは鎌倉時代の話にしているだけで実は大阪夏の陣、千姫の話なんです。歌舞伎は江戸時代、実名を出すと幕府から大目玉をくらうような話はこういうふうにして、時代設定や名前を入れ替えて、お芝居にしていました。でも、みんな、そんなことは分かっていたので、幕府も鷹揚に黙認していたんですね。これも当時の民衆のガス抜きだったんでしょう。まあ、話を戻しますが、そういう扱いを受けた時姫はもちろん、安達藤三郎の要請を撥ね付けて、父の北条時政への不信感を募らせます。それを見ていた三浦之助義村はようやく、時姫の自分への無限の愛情を信じることができて、時姫にある提案を持ち掛けます。三浦之助義村はもうすぐ戦場での死を覚悟していますが、自分の死を見届けた後、時姫が北条時政のもとに戻り、すきを見て父を殺し、その後自害せよというものです。ある意味、愛情試験のようなものですね。もちろん、父親殺しは親不孝の極致ですが、自害することで親不孝のそしりは免れるという妙な理屈を三浦之助義村は語ります。このあたりはちょっと筋書きとしては無理がありそうです。驚くことにこの提案を時姫は受け入れます。これを陰で見ていた北条時政方の武将、富田六郎がこの事実を伝えるために北条時政のもとに駆け去ろうとしたとき、いきなり、井戸の中に潜んでいた安達藤三郎から槍の一撃をくらって、殺されてしまいます。北条時政方の武将であったはずの安達藤三郎は実は源頼家方が放ったスパイの佐々木高綱だったんです。でも、それなら、この佐々木高綱が北条時政を討てばよかったのにというのはなしですよ。それじゃ、このお芝居のストーリーが台無しになりますからね。最後は佐々木高綱が大見得を切って、佐々木高綱、三浦之助義村、時姫が並んでフィナーレ。こう書くと無茶苦茶なストーリーですが、実際に名優たちが演じると、胸に響く、素晴らしいお芝居になるところが歌舞伎の醍醐味です。
今日の公演は芝雀改め雀右衛門が5代目を襲名するもので雀右衛門が時姫を演じました。歌舞伎では3姫という歌舞伎があって、時代物の姫役のうち至難とされる三役を言います。「本朝廿四孝」の八重垣姫、「鎌倉三代記」の時姫、「祇園(ぎおん)祭礼信仰記」の雪姫です。この時姫と夜の公演の雪姫(後述)を5代目襲名で雀右衛門が演じます。なかなか見栄えも声もよく、上々のスタートです。これからが期待されます。
三浦之助義村を演じた尾上菊五郎が見事なお芝居を見せてくれました。彼は胃潰瘍のために初日(3月3日)から休演していましたが、体調は決してよくないように見えましたが、今日から復帰してくれました。実生活での体調不良と役柄で重傷を負った武将というのも重なり、鬼気迫る演技です。菊五郎の素晴らしい演技を見られたのは嬉しかったのですが、まだまだ先のある身ですから、お体を大切に頑張ってほしいですね。
佐々木高綱を演じた中村吉右衛門はさすがの演技。特に最初の安達藤三郎を演じた洒脱な演技は彼にしかできない見事なものです。逆に後半の佐々木高綱の大見得はもっとスケールの大きな演技を期待していましたので、ちょっぴり不満。もっとも吉右衛門だからこその期待であって、素晴らしい演技ではあったんです。
その他の俳優も満足の出来で、今日、一番の内容でした。

最後は、舞踊の団子売(だんごうり)。日本舞踊は苦手のsaraiでも、片岡仁左衛門と孝太郎の親子共演は楽しい内容でした。特に片岡仁左衛門の芸の力に感服しました。

満足したところで今日の昼の部はおしまい。

今日の公演内容は以下です。

昼の部 午前11時~

1.寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)
    工藤祐経   橋之助
    曽我五郎   松緑
    曽我十郎   勘九郎
    化粧坂少将  梅枝
    近江小藤太  廣太郎
    八幡三郎   廣松
    喜瀬川亀鶴  児太郎
    梶原平次景高 橘太郎
    梶原平三景時 錦吾
    大磯の虎   扇雀
    小林朝比奈  鴈治郎
    鬼王新左衛門 友右衛門

2.女戻駕(おんなもどりかご)
  俄獅子(にわかじし)
   〈女戻駕〉   
    吾妻屋おとき 時蔵
    浪花屋おきく 菊之助
    奴萬平    錦之助

   〈俄獅子〉
    鳶頭梅吉   梅玉
    芸者お孝   孝太郎
    芸者お春   魁春

3.鎌倉三代記(かまくらさんだいき)
  絹川村閑居の場
時姫     芝雀改め雀右衛門
    佐々木高綱  吉右衛門
    おくる    東蔵
    富田六郎   又五郎
    母長門    秀太郎
    三浦之助義村 菊五郎

4.団子売(だんごうり)
杵造     仁左衛門
    お福     孝太郎


この後、夜の部が続きます。5代目襲名で雀右衛門の口上もあります。


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新春浅草歌舞伎@浅草公会堂 2016.1.23

今日は久しぶりの歌舞伎観劇。新春浅草歌舞伎を初めて見ます。新春浅草歌舞伎は昭和55年に復活して、今年で34回目の公演になるそうです。saraiは会場の浅草公会堂に行くことさえ初めての経験です。
朝11時からの開演に向けて、地下鉄の都営浅草線の浅草駅に降り立つとさすがに人気の観光地は人でぎっしり。久しぶりの浅草の賑わいにびっくりです。雷門を抜けて、仲見世通りを歩き、伝法院通りを左に進むと浅草公会堂に到着。ロビーは多くの人でいっぱいです。今日のチケットはソールドアウトだそうです。予約済のチケットを受け取り、まずはお弁当を調達。浅草今半の美味しそうな牛肉弁当をゲット。おやつとお茶も持って、3階の客席に上がります。1500円の高価なプログラムで予習しているとすぐに開演。

まずは中村米吉の年始ご挨拶(お年玉と言うんだそうです)です。口上に続き、マイクを持って、面白い話です。

続いて、最初の演目、三人吉三巴白浪です。初めて実演に接しますが、あまりに有名なお芝居なので、とても楽しめます。中村隼人演ずるお嬢吉三がなかなか艶やかです。有名な名セリフ・・・《月も朧に白魚の 篝も霞む春の空・・・》にはうっとりします。河竹黙阿弥の書いた七五調のリズミカルなセリフは素晴らしいですね。三人吉三が義兄弟になるところで幕。歌舞伎の楽しさ爆発です。

ここで休憩。お弁当をぱくつきます。歌舞伎はこういう庶民的な感じがいいですね。

続いて、舞踊の《土佐絵》。こういうゆったりした日本舞踊は正直、どこがいいのか、よく分かりません。バレエのように優雅な舞踊じゃありませんからね。でも、清元の素晴らしい歌と三味線には聴き惚れます。ぼーっと見ているうちに幕。

ここでまた休憩。残りのお弁当とおやつをいただきます。

最後は、与話情浮名横櫛です。これも初めて実演に接しますが、またまた有名なお芝居なので、とても楽しめます。中村米吉演じるお富はなかなか、いい味を出しています。お芝居に引き込まれているうちに、遂に尾上松也演じる切られ与三郎の名セリフになります。《え、御新造(ごしんぞ)さんぇ、おかみさんぇ、お富さんぇ、いやさ、これ、お富、久しぶりだなぁ。 》。驚くお富に対して、名セリフは続きます。《しがねぇ恋の情けが仇(あだ) 命の綱の切れたのをどう取り留めてか 木更津からめぐる月日も三年(みとせ)越し・・・》。いやあ、いいですね。尾上松也のセリフ回しもなかなかのものです。そして、世話物の歌舞伎らしく、最後は中村錦之助演じる和泉屋多左衛門の粋な計らいでお富と与三郎が結ばれ、思わず、ほろっとしてしまいます。やっぱり、歌舞伎はいいなあ。こういうものを見ていると日本人に生まれてよかったと思ってしまいます。saraiは歌舞伎では世話物が好きなんです。本質的にウェットな体質なんです。オペラでも映画でもラブストーリーとか、世話物っぽいものに感銘を受けます。

満足したところで今日の新春浅草歌舞伎の第一部はおしまい。この後、第二部がありますが、それは見ません。

今日の公演内容は以下です。

《第一部》

1.三人吉三巴白浪(さんにんきちざともえのしらなみ) 大川端庚申塚の場

2.土佐絵(とさえ)

3.与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし) 源氏店の場
    
主な出演者

 尾上松也
 坂東新悟
 中村隼人
 中村国生
 中村米吉
 坂東巳之助
 中村錦之助

ところで、会場を見渡すと、若い女性が大半です。意外な印象ですが、それを配偶者に言うと、「馬鹿ねえ。歌舞伎は出演者がみんな男ばっかりでしょ。当然よ。」。なるほどね。納得です。それに今日の新春浅草歌舞伎は中村錦之助以外はみんな若い役者さんばかりですから、尚更なんでしょう。

浅草公会堂を出ると、ますます、浅草は賑わっています。折角ですから、浅草寺に初詣に行きましょう。人波をかき分けながら、浅草寺へ。ともかく、お賽銭を上げて、初参りを済ませます。また、混み合う仲見世を通って、帰路に着きます。ここからはスカイツリーも間近に見えるんですね。これで何となく、お正月も終わった気分になります。って・・・とっくにお正月は終わってますね。暇なsaraiはまだ、お正月気分が抜けてなかっただけです。


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義経千本桜:通し狂言@歌舞伎座 2013.10.8

今日は初の新歌舞伎座。まだ、こけら落とし公演が続いており、10月と11月は通し狂言の公演。3大名作歌舞伎の「義経千本桜」と「仮名手本忠臣蔵」です。今日は「義経千本桜」の通し狂言、全6幕を昼と夜の公演、ぶっ続けで見ます。オペラでも、こんな長大なものは見たことがありません。朝の11時から夜の9時前まで、延々と見続けました。面白かったの何のって、時間を忘れるほどでした。

朝10時半頃に地下鉄の東銀座駅に到着。駅からは歌舞伎座の地下に直結する通路ができていて、とても便利になりました。


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歌舞伎座の地下には地下街ができていて、大変混雑しています。ここからはエスカレーターで地上に出ます。


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地上に出ると、歌舞伎座の前に出ます。ここからの雰囲気は以前の歌舞伎座とそっくりな感じ。


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しかし、正面から上を見上げると、背後に巨大な歌舞伎座ビルが聳えています。やはり、新歌舞伎座になったんだなあという思いになります。


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歌舞伎座の中にはいると、中はピカピカ。ロビーも赤じゅうたんで立派。


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このロビーの壁にちょっとゆかりのある若手俳優の中村梅乃さんの名題昇進のあいさつが貼ってあり、嬉しく思います。今日も彼は2幕目に出演します。


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ホール内は広々としていて、真新しいです。1800も客席があるそうです。今日は1階席の3列目、4列目で鑑賞します。


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今日の公演内容は以下です。

通し狂言 義経千本桜

《昼の部》

序幕  鳥居前
2幕目 渡海屋
    大物浦
3幕目 道行初音旅

《夜の部》

4幕目 木の実
    小金吾討死
5幕目 すし屋
大詰  川連法眼館

この義経千本桜は、義経が頼朝に都を追われて、流浪する旅が底流にあり、源平合戦で討死した筈の平家方の知盛、維盛、そして、安徳天皇が生き延びているという設定で、さまざまな人間模様が描かれます。共通テーマは親子の色々な形の情愛です。まあ、よくぞ、こんなに複雑な筋を考え出したものだと感心するくらいのもので、当ブログで詳細なストーリーは語り尽くせません。詳細はここをご参照ください。

義経千本桜では、大きな役どころが3人。さすがにそれぞれを名優が見事に演じ切りました。

まず、銀平、実は平知盛役の中村吉右衛門。2幕目の渡海屋・大物浦で、存在感だけでも圧倒的。銀平役での吉右衛門らしい余裕のある演技で唸らせます。そして、知盛の姿の立派さ。最後に碇綱を巻き付けて、壮絶な最期を遂げるところは実に感動的です。吉右衛門は歌舞伎界の宝です。現代を代表する最高の名優だと感じます。

次は、いがみの権太役の片岡仁左衛門。5幕目のすし屋での、小悪党・善人を演じ分ける難しい役どころを見事にこなします。悪人が改心して善人になることを歌舞伎用語で「モドリ」というそうですが、そこが最高に素晴らしい場面です。この場面、バックに三味線と篠笛の素晴らしい音楽も聴こえてきて、仁左衛門の迫真の演技ともども、胸が熱くなります。いわゆる、世話物と呼ばれる、お涙頂戴の幕ですが、これに日本人的感性のsaraiは弱くて、涙もろくなってしまいます。そうそう、仁左衛門は関西の俳優。彼がこの役で登場したからには、セリフは当然、関西弁。これが違和感なく、すっとはいってくるところも凄い。

最後は、佐藤忠信、実は源九郎狐役の尾上菊五郎。大詰の川連法眼館での、ひょうきんで瑞々しい狐の演技が見事です。一体、おいくつなんでしょう。意外性のある立ち回り、そして、何とも立派なセリフ回しには感嘆。

このほか、義経役の中村梅玉は出番はそう多くはないものの風格のある存在感を示していました。また、銀平の女房お柳、実は典侍(すけ)の局(つぼね)役の中村芝雀の圧巻の演技にも泣かされました。

そして、浄瑠璃の語りと三味線の見事さには恐れ入りました。西洋音楽のトップクラスとも十分に渡り合える気魄に満ちた演奏は心に響きました。ついつい、視線が舞台から浄瑠璃の演奏者に移ってしまうこともしばしばでした。

ところで、《昼の部》が終わったところで、名題昇進した中村梅乃さんの楽屋を訪問。


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お祝いの言葉を述べさせてもらいました。女形の中村梅乃さんの素顔はさすがにハンサム!でした。
歌舞伎座の楽屋にはいるのはもちろん初めてです。廊下を通りながら、キョロキョロ。仁左衛門の楽屋は立派でした。


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舞台裏もちらっと見えました。


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食事ですが、昼食は館内でお弁当を買って、客席でいただきました。
夕食ははりこんで、豪華松花堂弁当を事前に予約。《夜の部》の5幕目の後の30分の休憩時間に館内のお食事処「鳳」でいただきました。とても美味しい夕食になりました。


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オペラ・オペレッタも素晴らしいですが、日本文化の歌舞伎も西洋文化に負けない芸術的感動があります。たまには歌舞伎に足を運んで、日本文化の精華を味わいものだと思った次第。


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歌舞伎:修善寺物語、双蝶々来曲輪日記@国立劇場 2013.8.20

今日は歌舞伎の話題です。
そもそも、saraiはクラシック音楽も素人ですが、それ以上に歌舞伎はまったくの初心者で素人以下です。
しかし、歌舞伎は見るたびに何故か、感銘を受けます。
今日も国立劇場小劇場で若手俳優たちの演じる歌舞伎の公演を見ましたが、大いに心を打たれました。
今日の公演は名前の知られた俳優はまったく出演しませんでしたが、個々の演技力や発声はともかくとして、総合的な出来はまったく素晴らしいものでした。こういう風に感じるのは、saraiが素人以下の初心者だからでもありますが、伝統的な基盤・・・すなわち、出し物、演出、長唄、鳴り物、裏方などがきっちりしているから、総合力でレベルの高い舞台が可能になるのでしょう。

今日は5演目ありましたが、踊り以外の2演目について、素人語りをしてみます。

まず、岡本綺堂作の「修善寺物語」。1幕3場です。

時代は北条氏が実権を握った鎌倉時代。場所は伊豆の修善寺です。ここには鎌倉幕府2代将軍源頼家が北条氏によって、幽閉されていました。その頼家が面作師の夜叉王に自分の顔をモデルに面に作るように命じます。夜叉王は天下一の名人を目指して、この修善寺に工房を構えていました。彼には2人の娘、かつらとかえでがいます。長女のかつらは亡き母の血を継いで、高貴な身分に奉公することが夢です。次女のかえでは父夜叉王の血を継いで、職人気質が身についており、夫の春彦も面作師です。性格の異なる姉と妹夫婦はことあるごとに衝突しています。
ある日の夕刻、突然、頼家がお忍びで夜叉王を訪ねてきます。厳しく、面作成が遅れていることを叱りつけます。夜叉王はどうしても自分の意に適った面が出来ないと突っぱねますが、頼家は我慢がならずに刀に手をかけます。それを見た長女かつらは昨夜、完成していた面を頼家に差し出します。頼家はその面に満足しますが、夜叉王は、その面は命が吹き込めていなくて、死んでいるいるから、不満足な作品で到底、お渡しできるものではないと訴えます。しかし、頼家はそれを気にせずに面を持ち帰ることにします。そして、合わせて、夜叉王の長女かつらの美貌も気に入り、彼女を所望し、連れ帰ることにします。
第一場のクライマックスはこの後です。不満足な作品を不本意にも将軍に差し出してしまったことで、夜叉王は未来永劫、自分の名がすたることになると激しく嘆きます。芸術家はその芸術に命をかけています。夜叉王はまさに芸術家の魂を持っています。その強い矜持に大いに胸を打たれます。夜叉王の大いなる嘆きは芸術を愛するものすべてに共通する普遍的な気持ちでもあり、演劇を超えて、強く共感し、感銘を受けました。

第二場では、かつらが頼家の寵愛を受けて、局の地位を与えられますが、北条氏からの討手が頼家の屋敷を襲います。風雲急を告げます。

第三場は再び、夜叉王の工房。頼家の面を付けたかつらが深手を受けて、倒れこむように戻ってきます。急襲の中で頼家の身代わりになったのでした。
ここから、この劇作の核心にはいっていきます。次女夫婦が息絶えそうになっているかつらの介抱をしている中、頼家の死を伝え聞いた夜叉王が芸術家としての恍惚状態に高揚していきます。彼が作った面は命が吹き込めていなかったのではなくて、頼家の運命を暗示していたのだと悟ったのです。芸術の神が舞い降りて、面に人間の運命さえ表現できた自分は天下一の芸術家の域に達したのだと確信します。これこそ入神の業です。芸術的恍惚に浸る夜叉王は見方によれば、狂人とも思えますが、狂人であろうとなかろうと、この夜叉王こそ、創造活動の頂点に達した瞬間の大芸術家を見る思いです。その偉大さにsaraiは大きな感銘を受けました。感動したといっても言い過ぎではありません。夜叉王は自分こそ、面作師冥利に尽きて、本望だと叫びます。一方、息も絶え絶えのかつらも将軍の寵愛を短時間にせよ受けて、死んでも本望だと語ります。生まれた時から死にゆく運命にある人間として、己のアイデンティティをどこに求めていくか、ぎりぎりの本音を語りながら、どう達成感を得ていくかという人間の究極の課題に向き合う姿をそこに見ました。
しかし、これで終わりではありません。夜叉王はさらなる芸術の高みを目指して、娘の死に際の姿を、若い女性の死にゆく姿として、狂ったように写生します。娘のかつらも気丈に夜叉王の芸術家魂に応えようと最後の気力を振り絞るところで幕になります。まさに鬼神の如く、命をかけた芸術創造がそこにありました。

素晴らしい出来栄えの歌舞伎に圧倒される思いで言葉もなくしてしまいました。配偶者もきっと同じ思いだったようです。しばらく、余韻にふける2人でした。

もうひとつの歌舞伎は「双蝶々来曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)」。浄瑠璃の名作だそうです。

日本人らしい義理と人情のこれでもか、これでもかという吐露に激しく心を揺さぶられた、これまた素晴らしい歌舞伎でした。

「修善寺物語」についての記述で精力を使い果たしたので、残念ながら、この歌舞伎についてはこれ以上触れるのはやめましょう。

日本の大衆芸術である歌舞伎にはとても魂を揺り動かされます。saraiはオペラ、クラシック音楽にはまっているので、十分に歌舞伎に通いつめることができないのが残念です。
また、折に触れて、歌舞伎も楽しみたいものだと思います。


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青年歌舞伎公演@国立劇場小劇場 2011.8.15

久しぶりに歌舞伎を観劇に出かけました。これが生で観る歌舞伎の2回目です。
そういうわけで、そうたいした感想が書けるはずもありませんが、たいそう面白かったのでご紹介しましょう。

今日の公演は「稚魚の会」と「歌舞伎会」の合同公演です。
「稚魚の会」というのは日本芸術文化振興会の歌舞伎俳優の新人研修の終了生の団体です。
「歌舞伎会」というのは、実はよくはわかりませんが、若手歌舞伎俳優の団体のようです。
要するに、まだ若くて名前の知られていない俳優の修練の場がこの公演で、毎年開催されています。
saraiは初めてでしたが、配偶者は2回目です。今回は「稚魚の会」の中村梅之さん(中村梅玉門下)からのお誘いで行ってみることにしました。
また、saraiは国立劇場も初体験です。国立劇場は最寄りの半蔵門駅から5分ほどのところでした。
少し早く着いたので、敷地内にある伝統芸能情報館で展示していた歌舞伎入門《義経千本桜の世界》を見学。これは無料です。9月19日まで展示しています。

時間になったので、小劇場に向かいます。暑い夏の日ですが、さすがに着物姿の綺麗な女性が目立ちます。なかなか風流な世界ですね。
この日の公演は16時から、次の3演目が上演されます。

 寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん) 工藤祐経館の場

 一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり) 大蔵館奥殿の場

 戻駕色相肩(もどりかごいろにあいかた)

いずれもビデオでも見たことのないまったく初めて観る演目です。
劇場内で購入したプログラムで俄か勉強して観賞します。

まずは最初の演目。これは簡単に言えば、曽我兄弟の十郎と五郎が親の仇である工藤祐経と対面を果たすというだけの話です。曽我兄弟が富士山麓で見事に親の仇を討つのはこの後の話です。
こんな単純な筋書きが一幕の芝居になっていることにはびっくりですが、見ているとそれなりの展開があり、十分楽しめます。
工藤祐経役の市川升六はなかなかの貫録。対面した曽我兄弟にも寛容で彼らに討たれる覚悟を示すところはほろっときます。
曽我兄弟の十郎役の中村梅秋、五郎役の中村富彦は、思慮深い兄とやんちゃで血気盛んな弟を演じ分け、息もぴったりというところ。
この対面を演出する舞鶴役の中村梅之は姿も声もとっても綺麗な女形。狂言回し的な役どころをうまく演じていました。
全体によい出来でしたが、この演目には新人修了生が参加しており、やはり演技が硬い印象なのは仕方のないところです。

休憩のあと、次の演目。これは平家全盛期の話です。夫源義朝の死後、一條大蔵卿に嫁いだ常盤御前が楊弓(遊び用の小型の弓)にうつつをぬかしており、源氏に仕える家臣が彼女の真意を確かめ、その真実を知るというのが大きなシナリオです。その真実を知る過程で平清盛に密通しているこの館の家臣がこの秘密を平家方に訴え出ようとします。それを阻止するのが館の主である一條大蔵卿です。彼は世間的には阿呆を装っていますが、実は平家から身を守るために「作り阿呆」となっていて、聡明な人物です。このような人間模様が一幕の芝居にぎゅっと凝縮されており、見事としか言えない歌舞伎演目になっています。
特に「作り阿呆」の一條大蔵卿役の中村吉二郎の聡明かつ阿呆な役どころの演じ分けは素晴らしく、こちらのほうが笑ってしまったり、感動したりという風にいわゆる泣き笑い状態。ほかの俳優もよく演じていましたが、saraiは中村吉二郎の素晴らしい演技力に圧倒された思いでした。プログラムを見ると、この演目の監修・指導は中村吉右衛門でした。いかにも中村吉右衛門を彷彿させる中村吉二郎の演技でした。吉右衛門でも見てみたいお芝居です。まったく、納得の歌舞伎でした。
この演目のもうひとつの陰の主役は浄瑠璃の語りです。元々、この演目は人形浄瑠璃だったそうで、浄瑠璃の語りにのって、物語が進行します。語りと三味線の迫力のある演奏で物語の劇的進行が彩られていました。

休憩のあと、最後の演目。駕籠かきの二人と駕籠に乗っていた廓の女の3人が廓の話をネタにして、踊りを披露するというもの。最後に駕籠かき二人は本名は真柴久吉(秀吉のことですよね?)と石川五右衛門だったというオチもあります。
真柴久吉役の市川左宇郎と石川五右衛門役の澤村國矢の踊りの見事なこと、素晴らしいです。また、浄瑠璃を語った4人の見事な歌唱にも脱帽です。オペラとはまったく異なりますが、気迫のこもった歌唱という意味では東西の違いを乗り越えて、芸術として同様な思いで受け止めました。あんなふうに歌ってみたいものです。

若手の育成の場ですが、プロダクション全体の出来は立派なものでした。歌舞伎初心者のsaraiにとっては満足のいく体験でした。また、来年も是非、見てみたいものです。



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歌舞伎って、面白い!

昨夜、歌舞伎座に行ってきました。
西欧文化かぶれ、特にオペラファンのsaraiですから、日本文化に親しむことは少なく、歌舞伎もなんと初体験!
でも、実に面白かった。変な例えですが、オペレッタを見る感覚と同じで、実に楽しく鑑賞しました。
花道寄りの桟敷席で鑑賞しましたが、この席は最高ランクですが、いつも高価なオペラを見ているので、安価に感じられる価格です。
昨日の演目は
 ①幡随院長兵衛もの2題(鞘当、鈴が森)
 ②勧進帳
 ③八百屋お七もの(松竹梅湯島掛額)
①は有名な「お若えの、お待ちなせえやし」の名セリフで知られているものです。梅玉の白井権八と吉衛門の幡随院長兵衛のかけあいが素晴らしかった。
②は山伏に扮した弁慶、義経の一行が安宅の関を通り抜ける一八番の歌舞伎で、関所の代官である富樫を演じた中村吉衛門の熱演に感動しました。弁慶を演じた松本幸四郎も流石の貫録。染五郎の義経も含めて、松本幸四郎ファミリーの伝統の芸の世界を垣間見ました。
③はお七を演じた中村福助のかわいさと見事な踊りに拍手。

ご存じのとおり、歌舞伎座は来年春で建て替えるので、現在、さよなら公演中ということで、現在の歌舞伎座も一目見ておこうという野次馬根性で出かけましたが、大変に面白くて、なんだか、はまりそうな予感です。

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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
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07/08 18:59 sarai

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ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
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07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
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06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

もろともにあはれとおもへ山ざくら 花よりほか

通りすがりさん

コメント、ありがとうございます。正直、もう2年ほど前のコンサートなので、詳細は覚えておらず、自分の文章を信じるしかないのですが、生演奏とテレビで

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