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ジョナサン・ノット&東京交響楽団、衝撃の《グレの歌》 新境地のドロテア・レシュマン、驚異の山鳩=オッカ・フォン・デア・ダムラウ@ミューザ川崎シンフォニーホール 2019.10.5

やはり、ジョナサン・ノットが振る《グレの歌》は凄かった。ノットが振ると、こうなるのか! ノットのシェーンベルクは凄い。第1部はドロテア・レシュマンが最高のトーヴェを歌ってくれたし、藤村実穂子の代役のオッカ・フォン・デア・ダムラウが藤村実穂子に勝るとも劣らない山鳩を歌ってくれたので、歌手陣の活躍が目立ちましたが、もちろん、ジョナサン・ノット&東京交響楽団の演奏が素晴らしかったのは当たり前。しかし、ジョナサン・ノットが本当に凄かったのは第3部の終盤の夏風の荒々しい狩(Des Sommerwindes wilde Jagd)においての音楽表現です。初めて、この《グレの歌》の本質の一端が分かったような気がしました。凄惨とも思える物語の最後にカタルシスという位置づけなのでしょうが、音楽表現としても実に清々しく、saraiの心に響いてきました。何だか、バッハのマタイ受難曲の終盤の清々しさに通じるものを感じました。感動というのとも違いますが、深く心の奥底に刻み付けられるような美しい音楽に魂が揺り動かされました。サー・トーマス・アレンのシュプレヒ・シュティンメの語りはそのシンプルで力強い表現が一際光ります。その語りとオーケストラのサポートがぴったり合わさって見事な音楽に昇華していました。さらに東響コーラスの力強くて、清冽な合唱が続き、最後は精度の高いオーケストラ演奏で締め。ジョナサン・ノットの素晴らしい構成力・解釈で最高のシェーンベルクが聴けました。

歌手では前述した通り、ドロテア・レシュマンの音楽性高い歌唱に感動しました。このトーヴェ役は音楽表現・テクニック・発声が難しくて、これまで満足した歌唱はありませんでしたが、初めて、レシュマンの歌唱で素晴らしいトーヴェを聴きました。そして、オッカ・フォン・デア・ダムラウの山鳩はその深々とした美声で予想だにしない素晴らしい歌唱を聴かせてもらいました。ここまで歌えるのは藤村実穂子くらいしかいないでしょう。これも深い感銘を受けました。ヴァルデマール役のトルステン・ケールも余裕の歌唱でした。しかし、まだ、伸びしろがありそうです。アルベルト・ドーメンとノルベルト・エルンストも深い響きの歌唱を聴かせてくれました。

素晴らしい《グレの歌》でしたが、今日の演奏をばねにして、明日はこれ以上の演奏が期待できそうです。もちろん、明日も聴きますよ。最終結論は明日、書きましょう。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:ジョナサン・ノット
  ヴァルデマール:トルステン・ケール
  トーヴェ:ドロテア・レシュマン
  山鳩:オッカ・フォン・デア・ダムラウ *
  農夫:アルベルト・ドーメン
  道化師クラウス:ノルベルト・エルンスト
  語り:サー・トーマス・アレン
  合唱:東響コーラス
  合唱指揮:冨平恭平
  管弦楽:東京交響楽団

  シェーンベルク「グレの歌」 第1部の後で休憩


なお、予習はしていません。今年、3回目の《グレの歌》ですからね。



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       ジョナサン・ノット,  

圧倒的なフィナーレ バッハ:イギリス組曲第4番~第6番ほか The Bach Odyssey Ⅹ アンジェラ・ヒューイット@紀尾井ホール 2019.10.4

アンジェラ・ヒューイットの“バッハ オデッセイ”の10回目。前回(10月1日)と今回(10月4日)でイギリス組曲全曲演奏という嬉しい機会が続いています。

今日の演奏は、アンジェラ・ヒューイットが最後の第6番で実に素晴らしい演奏を聴かせてくれました。今回のイギリス組曲で最高の演奏でした。前奏曲の冒頭では分散和音の美しい響きで魅惑的な演奏。続くフーガも勢いに満ちた深い響き。この前奏曲だけで十分に感銘を受けました。
次のアルマンドがとびっきりの素晴らしさ。その真珠のような煌めきにただただ魅了されるだけです。何でしょう、この美しさ! 次のクーラントはテンポよい切れのある演奏。
そして、サラバンド。アンジェラ・ヒューイットの思いのたけを込めた、渾身の演奏。スローで思いっ切りルバートをかけた演奏が永遠の時を刻んでいくようです。何という演奏でしょう。いつしか気が付くと、ドゥーブルのインテンポの美しい演奏に変わっています。何と素晴らしいのでしょう。うっとりと聴き惚れるだけです。
次はガヴォット。耳慣れたメロディーが心地よく響きます。少しずつ旋律線を変えながら、綺麗な演奏が続いていきます。
そして、最後のジーグ。対位法を織り交ぜながら、圧倒的な演奏が高潮していきます。何という見事な演奏でしょう。高度なテクニックに基づいて、スケールの大きな音楽を展開していきます。ファツィオリのピアノも美しい響きをホールに充満させていきます。音楽が最高潮に達し、フィナーレ。
最高の演奏に強い感銘を受けました。

長く続いたアンジェラ・ヒューイットのThe Bach Odysseyも来年5月の2回を残すのみになりました。フランス風序曲、フーガの技法が楽しみです。


今日のプログラムは以下です。

ピアノ:アンジェラ・ヒューイット
 
J.S.バッハ・プログラム Odyssey Ⅹ

 イギリス組曲第4番ヘ長調BWV809
 イギリス組曲第5番ホ短調BWV810


 《休憩》


 ソナタ ニ長調BWV963
 イギリス組曲第6番ニ短調BWV811

《アンコール》

 クープラン:クラヴサン曲集 第3巻 第14組曲 1. 恋するナイチンゲール


最後に予習したCDですが、もちろん、アンジェラ・ヒューイットのCDを軸に聴きました。

 バッハ:イギリス組曲等
  アンジェラ・ヒューイット 2003年頃 ヘンリー・ウッド・ホール、ロンドン ピアノ:スタインウェイ

バッハのイギリス組曲は少し前のスタインウェイでの演奏です。第2番と第3番と第6番は見事な演奏。曲によっては物足りない演奏もあります。実演ではきっと、最高の演奏を聴かせてくれるでしょう。ファツィオリでどんな響きになるかも楽しみです。



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       アンジェラ・ヒューイット,  

こんなバルトークを聴くのは痛々しくて辛い:ハーゲン・クァルテット@トッパンホール 2019.10.3

今年のハーゲン・クァルテットの〈ハーゲン プロジェクト 2019〉、3夜連続のハイドンとバルトークのコンサート・シリーズの第3夜、最終回です。

今日のバルトークは第6番。ナチスの圧力でヨーロッパを去ることになるバルトークがヨーロッパで最後に完成させた作品です。バルトークにしては少しメローな作品。ハーゲン・クァルテットならば、第4番か第5番を選ぶと思っていました。しかし、ハーゲン・クァルテットの演奏は決して、そういう女々しい表現に陥ることはありません。あくまでも綺羅星のように並ぶ、バルトークの6曲の弦楽四重奏曲の1曲として、真摯に向かい合った演奏です。第1楽章冒頭のヴェロニカ・ハーゲンのヴィオラソロのメストはまなじりをきっとあげた演奏。かっこいいね。第1楽章はもっと強く突っ込んだ演奏がほしかったところですが、バルトークらしい複雑な線で織りなす音楽の妙を味わえます。第2楽章はクレメンス・ハーゲンの素晴らしいチェロソロでメストが演奏された後、付点音符の行進曲風のメロディが諧謔的に演奏されますが、これは素晴らしい。さらにトリオでの奇妙なパートも、ヴェロニカのギター風のピチカートを織り交ぜた演奏が見事。こういう演奏は耳だけでなく、目でも楽しめます。第3楽章の精度の高い演奏を経て、第4楽章はリトリネロ主題のメストが全面に浮き立つ哀歌です。ベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲はベートーヴェン個人の諦念に満ちたものですが、バルトークの場合、個人的な思いは時代を象徴するような音楽表現に昇華します。《絃と打とチェレスタの音楽》では限界状況を浮き彫りにするような恐ろしい音楽になりましたが、この弦楽四重奏曲では、時代を弔うようなペーソスと、さらに言うならヨーロッパ文明への絶望感に満ちた音楽になります。そんなネガティブ感に満ちた音楽をハーゲン・クァルテットは精妙なアンサンブルでパーフェクトに歌い上げます。saraiはこんなバルトークは嫌いです。バルトークはアグレッシブで先鋭的であってほしい。こんなバルトークにした時代を憎みます。同様にシュテファン・ツヴァイクを自殺に追いやったのもこの同じ時代。そんな時代が再来する予感がする今の時代にも大いなる危惧を抱いています。
最後は音楽以外の何かわけのわからないことを思いながら、ハーゲン・クァルテットの演奏に耳を傾けていました。やはり、今回のツィクルスのシメは第5番あたりがよかったとも思いました。何故なら、色んな意味で未来への展望がなくなるからです。

一方、最初と最後に演奏されたハイドンの《エルデーディ四重奏曲》は今日も典雅で美しい演奏です。ハイドンの時代には悩みはなかったのか、それとも古典主義の音楽は、そういうネガティブな概念を音楽に持ち込まなかったのか、変なことに頭を捻ってしまいます。これも今日のバルトークの第6番という選曲が悪かったからではないでしょうか。
それにしても最初に演奏された弦楽四重奏曲第79番《ラルゴ》の完成度の高い演奏には圧倒されました。美し過ぎて、天国に連れていかれた思いです。それに名曲ですね。ピログラムノートにもありましたが、過小評価されて、それほど演奏機会がないのが残念です。いずれ再評価されて、ハイドンのブームがやってくるのかな・・・。

ハーゲン・クァルテットは見栄えも成熟して、音楽もいい意味で成熟して、これからがますます楽しみです。来日するのはまた、2年後でしょうか。バルトークの残りの3曲を演奏することをで忘れないでくださいね。 → 関係者各位

今日のプログラムは以下のとおりでした。

 〈ハーゲン プロジェクト 2019〉ハイドン&バルトーク ツィクルス Ⅲ

ハーゲン・クァルテット Hagen Quartett
    ルーカス・ハーゲン Lukas Hagen (ヴァイオリン)
    ライナー・シュミット Rainer Schmidt (ヴァイオリン)
    ヴェロニカ・ハーゲンVeronika Hagen (ヴィオラ)
    クレメンス・ハーゲン Clemens Hagen (チェロ)

  ハイドン:弦楽四重奏曲第79番 ニ長調 Op.76-5 Hob.III-79《ラルゴ》
  バルトーク:弦楽四重奏曲第6番 Sz114

   《休憩》

  ハイドン:弦楽四重奏曲第80番 変ホ長調 Op.76-6 Hob.III-80

   《アンコール》

  シューベルト:弦楽四重奏曲第13番 イ短調 D804《ロザムンデ》より 第3楽章 メヌエット


最後に予習したCDです。

=======ここは昨日と同じ===============
 バルトーク:弦楽四重奏曲(第3番、第6番)
  ハーゲン・カルテット 1995~1998年録音

 ハイドン:弦楽四重奏曲 エルデーディ四重奏曲 Op.76
  ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団 1950年-1954年 ウィーン、コンツェルハウス、モーツァルトザール セッション録音

ハーゲンのバルトークは文句なしですが、もっと弾けるような気もします。昔実演で聴いたバルトークはもっと個性豊かで迫力がありました。第6番は素晴らしい演奏でした。この録音から20年を経た今、彼らはどんなバルトークを聴かせてくれるのでしょう。

ハイドンは意外によい録音がありません。結局、古いウィーン・コンツェルトハウス四重奏団の落ち着きます。彼らの力強い演奏に驚かされます。昔日のウィーンの郷愁を呼ぶという演奏ではありませんが、ハイドンの高い音楽性を表現してくれます。モーツァルトでも素晴らしい演奏を聴かせてくれたハーゲン・カルテットはハイドンでも精度の高い演奏を聴かせてくれると信じています。

=======ここまでは昨日と同じ===============

バルトークの弦楽四重奏曲第6番は追加予習をしました。

 手持ちのLPで予習しました。予習したのは以下のLP2枚です。

 LP:ハンガリー四重奏団(1961年)、ジュリアード四重奏団(2回目録音、1963年)

LPコレクションはsaraiの宝物。すべて名演で素晴らしい演奏です。ちなみにsaraiがこの曲を最初に聴いたのはハンガリー四重奏団でした。人間の記憶はあてにならないもので、ハンガリー四重奏団の演奏はもっとしっとりとしたものだと思っていました。しかし、その力強い表現に驚かされました。この曲は今回のハーゲン・クァルテットの演奏もそうですが、多様な音楽を内包していて、色んな表現が可能だということを痛感しました。一方、ジュリアード四重奏団は、これは超名演です。この時代のジュリアード四重奏団のバルトーク演奏は全6曲、バイブルみたいなものであることを今更ながら、強く感じました。このジュリアード四重奏団の2回目の録音が旧約聖書、エマーソン・カルテットの録音が新約聖書でしょうか。そして、成熟したハーゲン・クァルテットが再度、録音すれば、その2強に割ってはいれるのではないかとひそかに思っています。



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       ハーゲン・カルテット,  

幽玄なバルトークの世界:ハーゲン・クァルテット@トッパンホール 2019.10.2

今年のハーゲン・クァルテットの〈ハーゲン プロジェクト 2019〉と銘打った3夜連続のコンサート・シリーズはハイドンとバルトークの作品を並べたものです。何と言っても、彼らのバルトークが注目されます。第1夜のコンサートはアンジェラ・ヒューイットのコンサートと重なり、聴けずに残念でした。個人的な体験ですが、初めて、ハーゲン・クァルテットの実演に接したときに聴いたのがバルトーク。そのときの個性的なアタックの強い演奏に衝撃を受けたことを今でも覚えています。それ以来、彼らのバルトークを再度聴きたくて、この日まで待っていました。

そして、今日のバルトーク。第3番といえば、最も先鋭的な作品。冒頭の響きは宇宙の深淵を感じさせるミステリアスな響き。素晴らしいアンサンブルです。ルーカスの美しい響き、それに呼応するライナー・シュミット、ヴェロニカ。そして、クレメンスが深々とした響きでスケールの大きな音楽に盛り上げていきます。得も言われぬアンサンブルの妙です。第2部に入ると、音楽が高潮し、熱く燃えがります。以前聴いたハーゲン・クァルテットのバルトークの響きと違い、ある意味、オーソドックスな演奏ですが、実にバルトークの本質に切り込んだ最高の音楽です。この頃のバルトークは恐れるものもなく、己の音楽に一番、没頭している感もあります。彼の6曲の弦楽四重奏曲の中でも1,2を争う傑作に思えます。こういうアグレッシブな作品がバルトークに似合っています。すっかり、ハーゲン・クァルテットのバルトークを堪能しました。

一方、最初と最後に演奏されたハイドンの《エルデーディ四重奏曲》はこれぞ古典という美しい演奏です。アンサンブルの極みとも思える演奏に何のコメントも必要ありません。ただ、ゆったりとその美しさに体を委ねるのみです。4本の弦が順に重なり合う様はポリフォニー音楽の原点を見る思いです。古典主義音楽はそのシンプルさにこそ、すべてがあるという感を抱きます。こういう音楽は一分の隙もない音楽表現を要求されますが、今のハーゲン・クァルテットのアンサンブルは盤石と言えるでしょう。両作品とも楽章構成はほぼ同じですが、終楽章の盛り上がりは聴きものでした。また、《皇帝》の有名な第2楽章の変奏曲は各楽器が主題を引き継ぎながらの変奏ですが、ハーゲン・クァルテットの優しくて、ピュアーな響きの演奏は弦楽四重奏の理想形とも思える最高の演奏でした。

今日のプログラムは以下のとおりでした。

 〈ハーゲン プロジェクト 2019〉ハイドン&バルトーク ツィクルス Ⅱ

ハーゲン・クァルテット Hagen Quartett
    ルーカス・ハーゲン Lukas Hagen (ヴァイオリン)
    ライナー・シュミット Rainer Schmidt (ヴァイオリン)
    ヴェロニカ・ハーゲンVeronika Hagen (ヴィオラ)
    クレメンス・ハーゲン Clemens Hagen (チェロ)

  ハイドン:弦楽四重奏曲第77番 ハ長調 Op.76-3 Hob.III-77《皇帝》
  バルトーク:弦楽四重奏曲第3番 Sz85

   《休憩》

  ハイドン:弦楽四重奏曲第78番 変ロ長調 Op.76-4 Hob.III-78《日の出》

   《アンコール》

  ハイドン:弦楽四重奏曲第80番 変ホ長調 Op.76-6 Hob.III-80より 第4楽章


最後に予習したCDですが、もちろん、ハーゲン・クァルテットのCDを軸に聴きました。


 バルトーク:弦楽四重奏曲(第3番、第6番)
  ハーゲン・カルテット 1995~1998年録音

 ハイドン:弦楽四重奏曲 エルデーディ四重奏曲 Op.76
  ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団 1950年-1954年 ウィーン、コンツェルハウス、モーツァルトザール セッション録音

ハーゲンのバルトークは文句なしですが、もっと弾けるような気もします。昔実演で聴いたバルトークはもっと個性豊かで迫力がありました。第6番は素晴らしい演奏でした。この録音から20年を経た今、彼らはどんなバルトークを聴かせてくれるのでしょう。

ハイドンは意外によい録音がありません。結局、古いウィーン・コンツェルトハウス四重奏団の落ち着きます。彼らの力強い演奏に驚かされます。昔日のウィーンの郷愁を呼ぶという演奏ではありませんが、ハイドンの高い音楽性を表現してくれます。モーツァルトでも素晴らしい演奏を聴かせてくれたハーゲン・カルテットはハイドンでも精度の高い演奏を聴かせてくれると信じています。

さらに以前、バルトークの弦楽四重奏曲第3番の予習をしたときの記事を参考に引用しておきます。

 手持ちのLP、CDを総ざらいして、予習しました。予習したのは以下のLP3枚、CD6枚です。

 LP:ハンガリー四重奏団(1961年)、ジュリアード四重奏団(2回目録音、1963年)、バルトーク四重奏団(1966年)
 CD:ジュリアード四重奏団(1回目録音、1950年)(3回目録音、1981年)、ヴェーグ四重奏団(1972年)、アルバン・ベルク四重奏団(1983年)、エマーソン・カルテット(1988年)、ハーゲン・カルテット(1995年)

LPの3枚、ハンガリー四重奏団、ジュリアード四重奏団(2回目録音)、バルトーク四重奏団はわざわざLPをコレクションするほど気に入ったものですから、もちろん、すべて名演で素晴らしい演奏です。ちなみにsaraiがこの曲を最初に聴いたのはジュリアード四重奏団(2回目録音)でした。今回、ジュリアード四重奏団の3回の録音を聴くと、1回目のモノラル録音は表現主義的とも思える切り込んだ演奏ですが、音楽的には2回目の録音が鋭角的で美しい演奏でこれがベスト。3回目は少なくとも、この第3番はアプローチが弱い感じ。全体で最高に素晴らしいのは、エマーソン・カルテットの演奏です。最高のテクニックでやりたい放題とも思える自由な演奏ですっかり魅惑されました。


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       ハーゲン・カルテット,  

ゆるぎない安定感と流麗なバッハ:イギリス組曲第1番~第3番ほか The Bach Odyssey Ⅸ アンジェラ・ヒューイット@紀尾井ホール 2019.10.1

アンジェラ・ヒューイットの“バッハ オデッセイ”の9回目。今回と次回(10月4日)でイギリス組曲全曲演奏という嬉しい機会です。前回のトッカータ全曲演奏を聴いて、今日はほぼ半年ぶりのアンジェラ・ヒューイットのバッハ演奏です。イギリス組曲全曲を聴くのは初めてです。楽しみにしていました。

で、今回の演奏ですが、アンジェラ・ヒューイットが今、旬の時を迎えていることを確信させる見事な演奏。イギリス組曲はその名前が示すように、フランス組曲、パルティータと並ぶ、アルマンド、クーラント、サラバンド、ブーレ、ジーグなどの舞曲を連ねた組曲の形をとったもので、saraiがバッハの音楽の形式の中でも特に好む形式です。割に若いときの作品ですが、若さゆえの勢いや様式感を探るような多様性があり、不発の曲や楽しく、面白い曲、哀感の漂う曲などが混在している印象です。

冒頭の第1番は曲としてはバッハらしからぬ、まとまりを欠く感じですが、アンジェラ・ヒューイットの演奏はゆるぎない確信に満ちた堂々たるもので、その流麗な流れには、音響的に聴き映えがします。まあ、退屈と言えば、退屈ですが、ここはヒューイットの妙技と素晴らしい響きに体を委ねます。

第2番は一転して、格調の高い名演奏に強い感銘を覚えます。前奏曲のテンポの早い演奏に驚かされますが、そのテンポで一気に弾き切るテクニックは素晴らしいです。それに新鮮でダイナミックでもあります。アルマンド以降はテンポも落ち着き、深く心に浸透するような音楽が流れます。ピアノがファツィオリのせいか、以前のヒューイットの演奏とは一線を画し、オリジナリティと格調の高さが印象的です。よほど譜面を読み直したのではないでしょうか。表層的な演奏とは次元が異なる演奏です。イギリス組曲ではない別の音楽を聴いているような錯覚に陥るほどです。サラバンドの深い抒情性、颯爽としたジーグ、素晴らしい演奏に絶句します。ただし、saraiの受容力を超えた演奏でもあり、CDに再録音してもらって、じっくりと聴き直したい感じです。

後半の最初はまったく聴いたことのない組曲ヘ短調BWV823。楽譜の残存する3曲のみでバッハの真作であるかどうかも議論があるそうです。このうち、最初の2曲、前奏曲とサラバンドは単純な作品ながら、なかなか、面白い作品で、ヒューイットの演奏も素晴らしいです。初めて聴いたとは思えないのが、かえって、真作らしくないのかもしれませんが、ともかく、聴いていて楽しい演奏でした。3曲目のジーグはとてもバッハの作品には思えないものですね。

次はイギリス組曲第3番。これは前奏曲のダイナミックな演奏から惹き付けられます。アルマンドもクーラントも流麗でゆるぎない安定感に満ちた素晴らしい演奏。サラバントはかみしめるような思いに満ちた、ゆったりした圧巻の演奏。続くガヴォットは実に軽やかな魅惑的な演奏で耳に楽しいばかり。最後のジーグはフーガの精神にあふれた壮麗さにあふれた演奏で全曲を締めくくります。素晴らしい演奏に感銘を受けました。

最後は前奏曲とフーガ イ短調BWV894。どこか懐かしさを秘めていながら、テンポの早い勢いのある演奏で、とても聴き映えがします。フーガもそれほど対位法を感じさせない小気味のよい演奏で、フィナーレは華やかに高潮して終わります。

ともかく、イギリス組曲の第2番と第3番が圧巻の素晴らしさでした。3日後の残り3曲も楽しみです。


今日のプログラムは以下です。

ピアノ:アンジェラ・ヒューイット
 
J.S.バッハ・プログラム Odyssey Ⅸ

 イギリス組曲第1番イ長調BWV806
 イギリス組曲第2番イ短調BWV807


 《休憩》


 組曲ヘ短調BWV823
 イギリス組曲第3番ト短調BWV808
 前奏曲とフーガ イ短調BWV894

《アンコール》

 ラモー:新クラブサン組曲またはクラブサン曲集第2集(第4組曲)より第5曲ファンファリネット


最後に予習したCDですが、もちろん、アンジェラ・ヒューイットのCDを軸に聴きました。

 バッハ:イギリス組曲等
  アンジェラ・ヒューイット 2003年頃 ヘンリー・ウッド・ホール、ロンドン ピアノ:スタインウェイ

バッハのイギリス組曲は少し前のスタインウェイでの演奏です。第2番と第3番と第6番は見事な演奏。曲によっては物足りない演奏もあります。実演ではきっと、最高の演奏を聴かせてくれるでしょう。ファツィオリでどんな響きになるかも楽しみです。


来年の2回のコンサート、バッハ・オデュッセイ11と12は次のようなプログラムになります。これで4年間にわたるバッハ・オデュッセイも大団円です。もちろん、saraiもチケットの優先予約を申し込みましたよ。

バッハ・オデュッセイ11 2020年5月25日

 4つのデュエット BWV.802-805
 18の小前奏曲 BWV.924-928,930,933-943,999
 幻想曲とフーガ イ短調 BWV.944
 フランス風序曲ロ短調 BWV.831
 イタリア協奏曲ヘ長調 BWV.971

バッハ・オデュッセイ12 2020年5月27日

 フーガの技法 BWV 1080




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       アンジェラ・ヒューイット,  

ベルクとマノンの精神に報いる素晴らしい演奏・・・ヴェロニカ・エーベルレ&大野和士&東京都交響楽団@東京文化会館大ホール 2019.9.3

明日は長期のヨーロッパ遠征に出発ですが、ほぼ、荷物も作り終えて、壮行演奏会のつもりで余裕でコンサートに出かけます。配偶者も気持ちよく送り出してくれました。

ヴァイオリンの若手奏者、ヴェロニカ・エーベルレには何かと縁があって、このところ聴く機会が多々あります。これまではもう一つの音楽表現だという印象が強く、今日もあまり期待していませんでした。しかし、才媛は突然、豹変します! 何とも瑞々しいロマンにあふれるベルクのヴァイオリン協奏曲を聴かせてくれました。大野和士の指揮も大変、精度が高く、見事なアンサンブルを展開してくれます。これが最高のベルクのヴァイオリン協奏曲とまでは言いませんが、こんなに魅力にあふれた演奏に接したのは初めてです。これがCD化されたなら、間違いなく、愛聴CDになるでしょう。第1楽章の無調の音列の旋律の繊細で気品にあふれた表現には絶句します。その後は無調とは思えない瑞々しいロマンティックな演奏が続きます。第2楽章にはいると、18歳で突然逝った美しきマノンへのベルクの哀歌がエーベルレの密やかな表現で粛々と表現されていきます。saraiの脳裏には2度もお墓参りしたウィーンのマノン・グロピウスの可愛いお墓のイメージが蘇ります。今週末には久しぶりのウィーンですが、あのマノンやアルマ、そして、マーラーが眠るグリンツィング墓地の静かな佇まいが懐かしく感じてしまいます。そう言えば、日曜日にはグリンツィングのホイリゲにでも行こうと思っています。マノンのお墓参りもいいかな。話が逸れてしまいましたが、そういう妄想を呼び起こすようなエーベルレの素晴らしい演奏でした。エーベルレの演奏はそれほど、自己主張が強くなくて、心の内をシャイな感じで表現するというのが特徴だと感じました。ですから、曲目によって、合うものとそうでないものが出てきます。誤解されるかもしれませんが、ムッターとは正反対のところにあるような人ですね。今日のベルクの遺作のヴァイオリン協奏曲はぴったり、彼女に合っていました。

後半はブルックナーの遺作、交響曲第9番。今日のプログラムはウィーンを中心に活躍した作曲家の遺作つながりだったんですね。演奏は素晴らしかったです。とりわけ、都響の弦は素晴らしく、弦のアンサンブルのパートには聴き惚れてしまいました。大野和士の丁寧な指揮も好感を持てました。大野和士はすっかり、都響を掌握したようです。やはり、聴きどころは第3楽章。ブルックナーが完成させた最後の楽章です。そして、ブルックナーの最高の音楽です。それなりのオーケストラが演奏すれば、うっとりと聴き惚れるような名曲です。大野和士&東京都交響楽団の純日本人コンビがここまでのレベルのブルックナーを演奏できたのは素晴らしいことです。感銘を受けるような第3楽章の演奏でした。

週末からのウィーンでは、この最後の作品を書いたベルヴェデーレ宮殿内のブルックナーの家にも詣でましょう。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:大野和士
  ヴァイオリン:ヴェロニカ・エーベルレ
  管弦楽:東京都交響楽団  コンサートマスター:四方恭子

  ベルク:ヴァイオリン協奏曲《ある天使の思い出に》
《アンコール》 プロコフィエフ : 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ ニ長調 Op. 115より 第2楽章

   《休憩》

  ブルックナー:交響曲第9番 ニ短調 WAB109(ノヴァーク版)


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のベルクのヴァイオリン協奏曲を予習したのは以下です。

 イザベル・ファウスト、アンドリス・ネルソンス指揮ルツェルン祝祭管弦楽団 2014年4月6日 ルツェルン・クンストハウス・コンサートホール ~クラウディオ・アバド・メモリアル・コンサート~ 映像
 
アバドがいかにリスペクトされていたかが感動的に映し出された映像作品。演奏はとてもヒートアップしたものです。


2曲目のブルックナーの交響曲第9番も映像作品で予習しました。

 ギュンター・ヴァント指揮北ドイツ放送交響楽団 2001年7月8日 ムジーク&コングレス・ハレ、リューベック シュレースヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭 ライヴ収録

崇高な演奏です。それが神に捧げようが、大自然への敬意に満ちていようが、高齢のヴァントの最後に行き着いた境地がいかばかりのものか、感動なくして、聴けません。ヴァントの強い目の光が印象的でした。このとき、ヴァントは89歳。この半年後にこの世を去りました。



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モーツァルト・マチネ 第37回@ミューザ川崎シンフォニーホール 2019.8.24

毎回1時間ほどのプログラムで休憩もない軽いマチネです。次回はジョナサン・ノットも登場するので、このモーツァルト・マチネを聴くことにしました。9月のヨーロッパ遠征を控えて、このコンサートを聴くと、残りは1回だけ。遠征の前日です。最後まで粘るsaraiです。ということで、今日はヨーロッパ遠征の準備作業は一時休止。かなり、目途がたってきましたからね。

オペラ『ドン・ジョヴァンニ』とオペラ『コジ・ファン・トゥッテ』はヨーロッパ遠征で聴くクルレンツィス&ムジカエテルナの演目なので、よい予習になります。東響の演奏は特にオペラ『コジ・ファン・トゥッテ』の序曲のアンサンブルが素晴らしく、聴き応えがありました。森 麻季はもちろん、その実力を発揮して、堂々の歌唱。しかし、彼女の声質はスープレット的なので、ドン・ジョヴァンニのドンナ・アンナのアリアではパワー不足を感じます。むしろ、ツェルリーナのアリアでも歌ってくれたほうがよかったでしょう。その点、コジ・ファン・トゥッテのフィオルディリージのアリアのほうが合っていましたが、これはもっと透明な声を聴かせてもらいたかったところです。

交響曲 第40番には期待しましたが、本当にエンジンがかかったのは第4楽章。これは東響らしい素晴らしいアンサンブルを聴かせてくれました。沼尻竜典の指揮はもっと、古典派のポリフォニーをきっちりと聴かせてほしかったところです。全体には素晴らしい演奏でした。予習で聴いた1970年のセルの演奏が素晴らし過ぎたので、ちょっと辛口の聴き方になってしまいました。

それにしても、1時間強の短いコンサート。交響曲第40番の前に短くても休憩がほしいですね。次回はジョナサン・ノットが交響曲第41番《ジュピター》を聴かせてくれます。楽しみです。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:沼尻竜典
  ソプラノ:森 麻季
  管弦楽:東京交響楽団  コンサートマスター:青木尚佳

  <オール・モーツァルト・プログラム>
  オペラ『ドン・ジョヴァンニ』 K. 527
   序曲、アリア「むごい女ですって」(第2幕、ドンナ・アンナのレシタティーヴォとアリア)

  オペラ『コジ・ファン・トゥッテ』 K. 588
   序曲、アリア「恋人よ、許してください」(第2幕、フィオルディリージのアリア)

  交響曲 第40番 ト短調 K. 550


最後に予習について、まとめておきます。

オペラ『ドン・ジョヴァンニ』とオペラ『コジ・ファン・トゥッテ』はヨーロッパ遠征に向けて、クルレンツィス&ムジカエテルナの演奏を聴いたばかりなので、省略。


最後の交響曲 第40番を予習したCDは以下です。

 ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団 1970年5月22日、東京文化会館ライヴ、NHK録音

これは素晴らしい演奏です。いわゆる「悲しみの疾走」というイメージでは捉えられない音楽自身の持つ魅力に満ちています。モーツァルトと言えば、オペラとピアノ協奏曲に尽きると思っていましたが、この演奏を聴いて、モーツァルトは交響曲の分野でポリフォニーを完成したことが実感できました。常に複数の声部の旋律やリズムが明確に聴こえて、どの声部もいきいきと輝いています。この演奏はセルの最晩年の来日コンサートのライヴ録音です。彼はこの2カ月後に亡くなります。saraiは当時、京都で学生時代を過ごしていました。とても東京までの旅費やコンサート費用を捻出できる状態ではありませんでしたが、こういう素晴らしい演奏を聴き逃がしたことが残念です。しかし、録音の状態も素晴らしく、最晩年のセルの深い味わいと当時のクリーヴランド管弦楽団の演奏レベルの高さを実感できます。



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音楽はヒトを再生する! ジャン・チャクムル、尾高忠明&東京交響楽団@ミューザ川崎シンフォニーホール 2019.8.12

今日はフェスタサマーミューザKAWASAKI2019のファイナルコンサートです。昨日は退院後、早速のコンサートで疲れ切りました。今日は自重して、ゆっくりと歩いて、コンサートホールに向かいました。それでも席に着くと、疲れでぐったりとします。

さて、前半は昨年の浜松国際ピアノコンクールで優勝した若手のトルコ人ピアニストのジャン・チャクムルがシューマンのピアノ協奏曲を演奏します。期待しながら、その演奏を聴きます。その演奏は実に個性的です。ミスタッチもありますが、あまり、そんなことが気にならないくらい夢見るシューマンの雰囲気を醸し出す魅力的な演奏です。こういう個性的な音楽を奏でるピアニストをコンクールで評価した審査員の慧眼にびっくりします。何というか、この20歳を少し超えたくらいの青年でないと弾けないようなみずみずしさを湛えた演奏に聴き惚れました。第1楽章のロマンあふれる詩情、第2楽章の中間部でも詩情豊か、そして、第3楽章は特にフィナーレの熱い気持ちの高まりに感銘を受けます。最初はこの人はもっとテクニックを磨けば、さらに素晴らしい音楽を奏でるようになると思いましたが、聴き終わった後では、この人はこのまま、自分の個性的なスタイルを貫いていけばいいと思い返しました。このピアニストの将来は正直、予測できませんが、今日、このような演奏ができたことだけが評価できれば、いいのではないでしょうか。ピアノのことばかり書きましたが、東響のサポートも見事でした。美しいアンサンブルでシューマンの素晴らしさを満喫させてくれました。さらに言うと、木管、特にオーボエとピアノのコラボレーションが素晴らしかったです。いいシューマンが聴けて、心なしか、体の調子も上向きになります。
アンコールはピアニストのファジル・サイが作曲した曲で、トルコの吟遊詩人アシュク・ヴェイゼルの民謡をもとにした、トルコ風で、かつ、ロマンティックな美しい作品です。チャクムルはその長い手を伸ばして、ピアノの中の弦を押さえながら、もう一方の手で鍵盤を弾くという離れ業を見せてくれます。バブラマという撥弦の民族楽器の音を模しているそうです。なお、この作品はチャクムルのファースト・アルバムにも収められています。そう言えば、ファースト・アルバムは浜松のコンクール会場だったアクトシティ浜松のコンサートホールで録音されたそうですが、ピアノはKawai SK-EXです。今日演奏したピアノです。

後半はショスタコーヴィチの交響曲 第5番。前半がシューマンで後半がショスタコーヴィチの交響曲とは、何か変な取り合わせのプログラムですが、ショスタコーヴィチの交響曲 第5番は夏聴くと涼しいので、saraiは個人的に夏になると、よく聴いていました。で、謹聴しましょう。
いやはや、素晴らしいサウンド、音響の演奏でした。日本のオーケストラで、こんなに素晴らしいオーケストラサウンドが聴けるようになる日が来るとは想像だにしていませんでした。これまで、絶好調の東響と言ってきましたが、もはや、絶好調ではなくて、これが実力なのですね。ショスタコーヴィチの交響曲 第5番はイデオロギーとか、その真実とか、いろいろ取沙汰されてきましたが、今日の演奏を聴いてみると、そんなことは超越したところで、音楽そのものの形で存在感を放つ作品です。指揮者の尾高忠明はこの音楽の美しさを究極まで表現しようと試みたようですが、その試みは最高の実力を誇る東響の力を得て、見事に結実しました。イデオロギーの勝利とか、人間賛歌とか、そんなメッセージは一切不要の純粋な絶対音楽として、燦然と輝くような演奏でした。弦の美しさは筆舌尽くしがたいレベルだし、木管のオーボエ、フルート、クラリネットは名人級の演奏です。さらにオーケストラ全体が有機的に結合して、究極のアンサンブルに昇華していました。昨年のジョナサン・ノットがラフマニノフの交響曲第2番を振ったときのことを思い出します。もう、曲はどうでもよくて、オーケストラサウンドを聴いているだけで、音楽に酔い痴れてしまう感覚です。と、記憶の糸に何かがひっかかります。そうです。昨年はジョナサン・ノットもこのショスタコーヴィチの交響曲第5番を振ったんでした。あれも素晴らしい演奏でした。今日の尾高忠明は勝るとも劣らない演奏を聴かせてくれました。やったね! 演奏終了後、万雷の拍手が続く中、尾高忠明から異例のメッセージがありました。内容はともかく、彼としても、生涯において、会心の演奏だったのでしょう。それが滲み出るような言葉でした。

こういうコンサートを聴いて、saraiが元気にならないはずがありません。音楽のチカラをまざまざと感じました。音楽から照射されるエネルギーでsaraiの体の細胞が再生された思いです。コンサートホールに来るときは重かった足取りが驚くほど軽くなります。saraiは明らかに再生の道に転化することができました。saraiにとって、生きることは音楽を聴くこと。音楽こそが人生のすべてです。ありがとう、東響!


今日のプログラムは以下です。

  指揮:尾高忠明
  ピアノ:ジャン・チャクムル(第10回浜松国際ピアノコンクール優勝者)
  管弦楽:東京交響楽団  コンサートマスター:グレブ・ニキティン

  シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調 Op.54

   《アンコール》 ファジル・サイ:ブラック・アース Op.8

   《休憩》

  ショスタコーヴィチ:交響曲 第5番 ニ短調 Op.47 「革命」


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のシューマンのピアノ協奏曲を予習したCDは以下です。

 エレーヌ・グリモー、エサ・ペッカ=サロネン指揮シュターツカペレ・ドレスデン 2005年

ドイツ・ロマン派の音楽に本領を発揮するエレーヌ・グリモーはこのシューマンでも見事な演奏を聴かせてくれます。ほんのりとしたロマンの味わいも力強いタッチも素晴らしいです。実演でも聴いてみたいものです。


2曲目のショスタコーヴィチの交響曲 第5番を予習したCDは以下です。

 エフゲニ・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィル 1984年4月4日、レニングラード・フィルハーモニー大ホール ライヴ録音

この4年後に亡くなるムラヴィンスキーはこの年を最後に一切の録音を拒否します。ですから、この録音は多分、最後から2番目の録音のようです。あの強靭な鋼のような演奏は影を潜めていますが、素晴らしい演奏です。響きの美しさを前面に出したような演奏です。巨匠の思いはどのあたりにあったのでしょうか。



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復活のコンサートで生きる喜びを感じるも・・・グッタリ!! 高木綾子、ダン・エッティンガー&東京フィルハーモニー交響楽団@ミューザ川崎シンフォニーホール 2019.8.11

今日もフェスタサマーミューザKAWASAKI2019のコンサートです。先週は緊急入院のため、購入済のチケットを無駄にしましたが、今日は退院の翌々日。ネットでもいろいろとお気遣いもいただきましたが、体調は頗る良くて、それでも慎重にコンサートホールに向かいます。とっても近いミューザ川崎ですが、さすがに着いたときには、既にぐったり。あえて、公開リハーサルに行くのは回避したんですけどね。

それでも、こうして、コンサートホールで音楽を聴くと、これでこそ、生きている証だと胸が熱くなります。

さて、今日の指揮者はダン・エッティンガー。以前は東京フィルの音楽監督でしたから、古巣へ帰ってきたんですね。若いと思っていたエッティンガーももう48歳。ベテランの域に入ってきました。その指揮は昨年、東響の定期演奏会で聴きました。最高の幻想交響曲でした。とても期待できます。最初のワーグナーの楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」の第1幕 前奏曲から、思い切った指揮です。素晴らしい切れ込みの指揮です。しかし、オケがもう一つ響きませんね。この曲は重厚な響きが魅力ですが、ちょっと不発で終わった感じです。満席の聴衆が音響を邪魔したのかな。

続くモーツァルトのフルート協奏曲 第1番は高木綾子の独壇場。その美しいフルートの響きが圧巻です。清楚な表現もモーツァルトにぴったり。素晴らしい演奏に聴き惚れました。ちょっと気になったのはオーケストラの演奏。この曲ではもっと透明な響きがほしいものです。

後半はチャイコフスキーの名曲、交響曲 第6番「悲愴」です。これはエッティンガーの指揮が光りました。実に劇的な表現です。やり過ぎという意見もあるかもしれませんが、こういう有名曲はこれくらいの個性的な表現こそ、実演で聴きたいものです。前半では不満だった東京フィルのアンサンブルも確実によくなっていました。エッティンガーの自在な棒にもよく付いていっていました。しかしながら、その上で、弦と木管の響きにもう少しの物足りなさを感じます。比較して、申し訳けないのですが、昨年聴いた東響の幻想交響曲ではエッティンガーの指揮と一体化した素晴らしい演奏でした。今日もこの素晴らしいエッティンガーの指揮に対して、東響であれば、最高の演奏だっただろうと思ってしまいました。こんなことを書いて、東京フィルのファンの方にはごめんなさい。全体的には素晴らしい演奏ではあったんです。場合によれば、指揮者コールをしてもいいと思ったほどです。

コンサートが終わって、精魂尽き果てたという感じでしばらく客席に座っていました。コンサートを聴くということはこんなに体力を使うものなのですね。

明日は東響のコンサート。ダン・エッティンガーが振ってくれればと思ってしまいます。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:ダン・エッティンガー
  フルート:高木綾子
  管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団  コンサートマスター:三浦章宏

  ワーグナー:楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」から 第1幕 前奏曲
  モーツァルト:フルート協奏曲 第1番ト長調 K.313(285c)

   《アンコール》 ドビュッシー:シランクス

   《休憩》

  チャイコフスキー:交響曲 第6番 ロ短調 Op.74 「悲愴」


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のワーグナーの楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」の第1幕 前奏曲を予習したCDは以下です。

 ベルナルト・ハイティンク指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 1974年

敬愛する巨匠ハイティンクもこの時期は発展途上にありました。マーラーもブルックナーも80年代以降に素晴らしい演奏を繰り広げます。ただ、この時期は若さの勢いに満ちた演奏をしていたのも魅力ではあります。ワーグナーについては、この時期の後、実際の舞台でハイティンクが重点的に振るようになり、ワーグナー指揮者としての名声を高めていきます。残念ながら、この録音はそれ以前のもので、それなりの演奏レベルにはありますし、意外に深みもありますが、ワーグナーらしい重厚さと栄光感が不足しています。15年後か、20年後に再録音していれば、全然、違った演奏になったでしょう。


2曲目のモーツァルトのフルート協奏曲 第1番を予習したCDは以下です。

 リザ・ベズノシウク、クリストファー・ホグウッド指揮AAM(エンシェント室内管弦楽団) 1986~87年録音

この演奏はリザ・ベズノシウクのフルートの響きが聴きものです。彼女の使用しているフルートは、1790年頃のハインリヒ・グレンザー製のコピーで象牙製です。中音域ではリコーダーのような響きがして、あれっと驚きます。同じCDにカップリングされているフルートとハープのための協奏曲では、真珠の珠を転がすような素晴らしいフルートの響きに驚かされましたが、このフルート協奏曲では、なぜか、そこまでの響きが聴けないのが残念です。ですから、期待したほどの演奏ではありませんが、まあ、一聴すべきCDではあります。ちなみにsaraiの永遠の愛聴盤はランパル盤(グシュルバウアー指揮)です。


3曲目のチャイコフスキーの交響曲 第6番「悲愴」を予習したCDは以下です。

 レナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィル 1986年

実はこのバーンスタイン&ニューヨーク・フィルのコンビの旧盤(1964年録音)はsaraiが少年時代以降、愛聴してきたレコードです。ストレートな表現でぐいぐいと心に迫る名演でした。新盤は晩年のバーンスタインが心のたけを吐き出したような鬼気迫る演奏です。ともかく、その丁寧過ぎるほどの演奏に驚かされます。旧盤ではある意味、粗っぽいほど、若さの勢いに任せた演奏でした。まあ、それがよかったわけですが、この新盤では、大事な宝物を愛でるように音符一つもおろそかにしない演奏で、バーンスタインがいかにチャイコフスキーに心を注いでいたかが分かります。この演奏について、特に第4楽章の遅さに対して、マーラーのようだという評をよくみかけますが、ちゃんとチャイコフスキーの音楽の枠内に留まっています。レニーの音楽を愛するものにとって、かけがえのない、新旧2つのチャイコフスキーです。若さの熱狂にあふれる旧盤と円熟の高みに達した新盤、どちらも最高の音楽です。



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直球勝負の名曲アワー 原田慶太楼&NHK交響楽団@ミューザ川崎シンフォニーホール 2019.8.3

今日もフェスタサマーミューザKAWASAKI2019のコンサートです。NHK交響楽団と初顔合わせの原田慶太楼と人気ピアニストの反田恭平の登場です。この二人はsaraiも初聴きです。ただ、今日のプログラムは有名曲を並べた名曲アワーなのが少々、残念ではあります。

今日は本番に先立って、30分間の室内楽コンサートがあります。木管3重奏(オーボエ、クラリネット、ファゴット)と弦楽四重奏です。フェスタサマーミューザらしいお楽しみです。

さて、本番が始まります。最初はヴェルディの歌劇「運命の力」序曲です。おっ、いきなり、強い響きの金管です。原田慶太楼の思い切った表現です。結局、そのまま、なかなかよい演奏になりました。原田慶太楼の指揮は若さにあふれたものでそのストレートな表現には好感が持てます。むしろ、初顔合わせのN響がその原田慶太楼の指揮に敏感に反応できていない印象で、その面が残念です。
2曲目は反田恭平のピアノでガーシュウィンのラプソディ・イン・ブルー。反田恭平のピアノはよく響き、鋭い演奏で見事です。ただ、ガーシュウィンらしい切れが少し物足りない感じが残ります。アメリカのジャズ的な要素を除けば、万全の演奏ではありました。予習で聴いたマイケル・ティルソン・トーマスのピアノがあまりに素晴らし過ぎたので、つい、それと比較してしまいます。これはちょっと酷だったかもしれません。オーケストラは弦が少し物足りません。金管は万全でした。

後半はまさに名曲アワー。次から次へと有名曲が流れます。最後のエルガーの行進曲「威風堂々」 第1番の冒頭の雄々しい演奏が素晴らしいです。中間部のあの美しい旋律に精彩を欠いたのが残念ですが、とてもダイナミックな演奏で最後をしめました。

原田慶太楼の直球勝負の若々しい指揮に好印象を覚えました。諸所に見られたティーレマンのような指揮も微笑ましいですね。これからの活躍が楽しみな人です。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:原田慶太楼
  ピアノ:反田恭平
  管弦楽:NHK交響楽団  コンサートマスター:伊藤亮太郎

  ヴェルディ:歌劇「運命の力」序曲
  ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー

   《アンコール》 ショパン:ワルツ第6番 変ニ長調 Op. 64-1 「子犬のワルツ」

   《休憩》

  ボロディン:歌劇「イーゴリ公」から だったん人の踊り
  ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
  ブラームス:ハンガリー舞曲集から 第1番、第5番、第6番
  エルガー:行進曲「威風堂々」 第1番 Op.39-1

   《アンコール》
     ヒナステラ:バレエ音楽「エスタンシア」組曲Op. 8a から「マランボ」


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のヴェルディの歌劇「運命の力」序曲を予習したCDは以下です。

 ジュゼッペ・シノーポリ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1983年11月 ウィーン

いやあ、ほれぼれとする演奏ですね。シノーポリの颯爽とした指揮が目に浮かびます。それに何と言っても、ウィーン・フィルの響きが素晴らしいです。一度、ウィーンのシュターツオーパーで「運命の力」を聴いたことがありますが、そのときのオーケストラの素晴らしい演奏を思い出しました。と言っても27年前のことです。この録音はさらにその9年前ですね。


2曲目のガーシュウィンのラプソディ・イン・ブルーを予習したCDは以下です。

 マイケル・ティルソン・トーマス(ピアノ&指揮)ニュー・ワールド交響楽団 1997年1月26ー27日、フロリダ、フォートローダーデール、ザ・プロワード・センター・フォー・ザ・パフォーミング・アーツ

マイケル・ティルソン・トーマスはピアノも指揮も最高です。これでこそ、ガーシュウィン。バーンスタイン盤を上回る(かもしれない)会心の演奏です。それにしても、MTTのピアノは上手過ぎる。


3曲目のボロディンの《だったん人の踊り》を予習したCDは以下です。

 ユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団/フィラデルフィア・メンデルスゾーン・クラブ合唱団 1971年1月13日 フィラデルフィア、スコティッシュ・ライト・カテドラル

それほどの思い入れはなくて、聴きましたが、驚くほど素晴らしい演奏。音質もいいです。オーマンディ&フィラデルフィア管弦楽団のイメージが変わりました。これから、注目して聴くべきコンビです。


4曲目のラヴェルの《亡き王女のためのパヴァーヌ》を予習したCDは以下です。

 シャルル・ミュンシュ指揮ボストン交響楽団  1962年

いい演奏ではありますが、期待したほどの出来ではありません。


5曲目のブラームスのハンガリー舞曲集を予習したCDは以下です。

 イヴァン・フィッシャー指揮ブダペスト祝祭管弦楽団 1998年11月 ブダペスト、イタリアン・インスティテュート

イヴァン・フィッシャーの超個性的な表現を期待して聴きましたが、意外に正統的で重厚な演奏。それはそれで見事な演奏です。


6曲目のエルガーの行進曲「威風堂々」 第1番を予習したCDは以下です。

 ジュゼッペ・シノーポリ指揮フィルハーモニア管弦楽団 1991年2月 ワトフォード・タウンホール

イギリス人ではないシノーポリですが、その外連味のない表現は見事で、この有名な作品を熱い演奏で聴かせてくれます。聴いている自分がイギリス人になったような錯覚させ覚えさせる素晴らしい演奏。大満足です。やはり、シノーポリの音楽性は直線的です。



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小川典子、圧巻のラフマニノフ 上岡敏之&新日本フィルハーモニー交響楽団@ミューザ川崎シンフォニーホール 2019.7.28

今日はフェスタサマーミューザKAWASAKI2019のコンサートということで、本番に先立って、リハーサルが公開されます。先にプロコフィエフのバレエ音楽「ロメオとジュリエット」のリハーサル。当日直前のリハーサルですから、既に演奏は仕上がっています。さっと流して、指揮者の上岡敏之から知的なコメントが与えらえます。再練習なんてものはありませんね。続いて、今日のお目当ての小川典子がいつの間にか登場。リハーサルとは言え、素晴らしい演奏を聴かせてくれます。配偶者に「これなら本番を聴いたも同然だね!」って言うと、配偶者は呆れて絶句。

で、本番の小川典子のラフマニノフはさらなる素晴らしさ。以前、京響とのラフマニノフの《パガニーニの主題による狂詩曲》も見事な演奏を聴かせてくれましたが、今日のピアノ協奏曲 第2番は完璧に難曲を弾きこなし、どのパッセージでも聴き手を魅了してくれます。響き、タッチ、切れ味、どれをとっても満足な演奏です。上岡敏之&新日本フィルハーモニー交響楽団も美しいアンサンブルで好サポート。特に抒情的な聴かせ所でピアノとオーケストラの協奏は圧倒的でした。演奏は第1楽章がとりわけ素晴らしく、そこで突っ込んで聴き入ってしまい、後は聴く側のsaraiがエネルギー切れ。復活したのは第3楽章の終盤。小川典子のピアノが熱く盛り上がります。ピアノ協奏曲を聴いたという実感で心が満たされました。小川典子のラフマニノフ、プロコフィエフは最高です。まさに期待通りの演奏に大満足。アンコールもラフマニノフ。練習曲《音の絵》は凄い演奏でした。

後半のプログラムはプロコフィエフのバレエ音楽「ロメオとジュリエット」組曲。新日本フィルハーモニー交響楽団の演奏を聴くのはずい分久しぶり。覚えている限りでは小澤征爾が指揮したときでした。少なくとも10年以上は前のことでしょう。指揮者の上岡敏之に至っては、多分、初聴きです。さすがに在京のメジャーオーケストラは素晴らしい演奏をしますね。ほかの日本のオーケストラと同様に弦楽アンアンブルが魅力的です。特に抒情的なシーンでの弦と木管の響きに魅了されました。ジュリエットのテーマのメロディーにほろっとなります。バレエなしで音楽だけですが、1時間近い演奏をだれずに聴けたのは演奏がよかったせいでしょう。でも、正直、バレエが見たくなりました。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:上岡敏之
  ピアノ:小川典子
  管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団  コンサートマスター:崔文洙

  ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番

   《アンコール》 ラフマニノフ:絵画的練習曲《音の絵》Op.39-1 ハ短調 アレグロ・アジタート

   《休憩》

  プロコフィエフ:バレエ音楽「ロメオとジュリエット」組曲から
   モンタギュー家とキャピュレット家 (第2組曲)
   少女ジュリエット (第2組曲)
   ジュリエット (第3組曲)
   ロメオとジュリエット (第1組曲)
   僧ローレンス (第2組曲)
   タイボルトの死 (第1組曲)
   別れの前のロメオとジュリエット (第2組曲)
   ジュリエットの墓の前のロメオ (第2組曲)
   ジュリエットの死 (第3組曲)


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のラフマニノフのピアノ協奏曲 第2番を予習したCDは以下です。

 小川典子、オウェイン・アーウェル・ヒューズ指揮マルメ交響楽団 1997年5月 マルメ・コンサート・ホール

小川典子の会心の演奏です。素晴らしいピアノ、ほれぼれと聴き入りました。オーケストラのマルメ交響楽団も好演ですが、フォルテのところで音が濁ったのが残念です。録音はまあ、よい部類です。


2曲目のプロコフィエフのバレエ音楽「ロメオとジュリエット」組曲を予習したCDは以下です。

 リッカルド・ムーティ指揮シカゴ交響楽団  2013年10月 シカゴ、オーケストラ・ホール ライヴ録音

やはり、シカゴ響はよい響きを聴かせてくれます。ムーティも万全の指揮。見事な演奏です。《ジュリエットの死》だけはゲルギエフ&マリインスキー劇場管弦楽団の全曲盤から抜き出して聴きました。何故か、ミックスしたのに違和感がありませんでした。



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Thunderbirds Are Go! ジョナサン・ノット&東京交響楽団@ミューザ川崎シンフォニーホール 2019.7.27

ジョナサン・ノットはプログラムだけでも楽しませてくれます。今日も何とも驚くべきプログラムです。クラシックのコンサートなのに冒頭は、子供の頃に楽しんだイギリスのSF冒険ドラマ《サンダーバード》の音楽です。いやはや、懐かしかった・・・内容はまあ、コメントしません。東響の演奏は見事でしたけどね。
ところで今日のコンサートはフェスタサマーミューザKAWASAKI2019のオープニングコンサートです。これから丸2週間、ミューザ川崎でオーケストラの祭典が続きます。saraiはその中の主要なものを聴きます。

前半の2番目はリゲティのピアノ協奏曲。リゲティのスペシャリストといえるノットが東響の音楽監督になってくれたお蔭で次々とリゲティの作品が聴けます。先週はレクイエムでしたが、今日の演奏のほうがのびのびと自由闊達に演奏しているような感じです。ピアノ協奏曲といっても、オーケストラの編成が小さく、その分、ノットのドライブもスムーズです。響きもリズムも完璧な演奏です。ピアノの独奏のタマラ・ステファノヴィッチもこの難しい曲を完璧に弾きこなします。曲の構成は5楽章でいわゆるアーチ形の構造をとっています。曲想はまったく違いますが、リゲティの同郷の先輩であるバルトークがしばしば用いた形式です。ポリリズムの形式による複雑なリズムの曲が第1楽章、第3楽章、第5楽章で展開されますが、実に小気味よい演奏です。まだ、リゲティの本質がどのあたりにあるのか、把握しきれていませんが、ノットは今後もリゲティの作品を演奏してくれるでしょう。勉強させてもらいましょう。

後半のプログラムはベートーヴェンの交響曲 第1番。驚異的に素晴らしい演奏でした。ノットは現代音楽から、ベートーヴェン、モーツアルトという古典主義の作品まで、幅広くカバーしますが、とりわけ、古典主義作品の現代的な演奏にかけては、最高の音楽を聴かせてくれます。東響の精度の高いアンサンブルもノットの棒に敏感に反応しながら、素晴らしい演奏を聴かせてくれます。ノットと東響の絶好調コンビの演奏はあり得ない高みに到達しています。ノットは凄い指揮者ですね。こういう音楽が日本で聴けるのは幸運としか言いようがありません。演奏の中身について、深くは触れませんが、ともかく、アーティキュレーションが最高で、まるで、1800年頃のウィーンの街にタイムスリップしたかのような錯覚を覚えるくらい、このベートーヴェンの音楽の本質を突いたと感じてしまうような凄過ぎる演奏でした。今年はベートーヴェンの交響曲第7番も素晴らしい演奏でしたし、年末には交響曲第9番も聴けます。奇数番号の残りの交響曲、第3番と第5番も是非、聴きたいところです。多分、既に演奏済みかもしれませんが、再び、演奏してもらいたいな! そう念願してしまうほど、素晴らしい交響曲第1番でした。(この交響曲を聴いていると、何故か、モーツァルトのオペラの最上の響きを連想してしまいました。)


今日のプログラムは以下です。

  指揮:ジョナサン・ノット
  ピアノ:タマラ・ステファノヴィッチ
  管弦楽:東京交響楽団  コンサートマスター:水谷晃

  バリー・グレイ:「ザ・ベスト・オブ・サンダーバード」〜ジョナサン・ノット スペシャル・セレクション(オリジナル・サウンドトラックより)
  リゲティ:ピアノ協奏曲

   《休憩》

  ベートーヴェン:交響曲 第1番 ハ長調 Op.21


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のサンダーバードはもちろん予習していません。


2曲目のリゲティのピアノ協奏曲を予習したCDは以下です。

 ピエール=ロラン・エマール、ラインベルト・デ・レーウ指揮ASKOアンサンブル 2000年

リゲティ・プロジェクトと題した5枚組のリゲティ作品集の中の一枚。これがピアノ協奏曲かと驚かされますが、そのジャズっぽい作風は聴きやすさがあります。でも、このシンコペーションのかたまりのような曲はジャズではなくて、ポリリズムなんですね。複数のリズムと旋律線が同時進行しているようです。でも、ピアニストもオーケストラもこんな難しい曲をよく演奏しますね。


3曲目のベートーヴェンの交響曲 第1番を予習したCDは以下です。

 サイモン・ラトル指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団  2002年4月29日~5月17日 ウィーン、ムジークフェラインザール ライヴ録音

ラトルがベルリン・フィルの音楽監督に就任する直前にウィーン・フィルとベートーヴェン交響曲全集をライヴ録音したCDの1枚を聴きました。ノットにとってはイギリス人指揮者の先輩になるラトルの演奏を聴いてみたわけです。まずはウィーン・フィルの響きが素晴らしいですが、その中でラトルも引き締まったモダーンなスタイルの演奏表現を志向して、ラトルらしい個性を発揮している見事な演奏です。この全集の中ではこのスタイルの演奏が成功しているものだと思います。



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       ジョナサン・ノット,  

飛翔する詩情、シューマンの幻想曲 田部京子@浜離宮朝日ホール 2019.7.26

この田部京子のシューベルト・プラスというコンサートシリーズも今回で第5回となり、既にシューベルトの遺作ソナタ3曲も弾き終わり、田部京子の演奏もシューベルトからシューマンへシフトしている感があります。シューマンの謝肉祭は素晴らしい演奏でしたし、前回の交響的練習曲はもう一つの出来ではありましたが、遺作変奏曲は素晴らしく美しい演奏でした。そして、今日はいよいよ期待の幻想曲です。いつか、幻想曲とクライスレリアーナを聴きたいと念願していたら、早くも今日、幻想曲が聴けます。田部京子がCDもまだ出していない作品です。

うーん、田部京子のシューマン、最高! 第1楽章、第2楽章と素晴らしく輝きに満ちたロマンティックなシューマンの演奏が続きます。しかし、本当に素晴らしかったのは、第3楽章です。深い、深い詩情に満ちた、その演奏を聴いていると、心が自由になり、高く飛翔してしまいそうです。終盤はさらに精度も純度も高まって、シューマンの若き心の感動が伝わってきます。最高の幻想曲を聴きました。次回のシューベルト・プラスのコンサートでは、シューマンの《子供の情景》が聴けます。これは田部京子が既に録音していますね。既に録音したものでは、アラベスクとパピヨンが残っている筈ですが、是非、このシリーズで愛するクライスレリアーナも弾いてほしいものです。
ところで田部京子の幻想曲が最高と書きましたが、ザルツブルク音楽祭で聴いたアンドラーシュ・シフの幻想曲も素晴らしかったんです。シフの幻想曲の第3楽章では、《愛》を感じました。それぞれの個性です。

前半のベートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番《悲愴》はしっかりした演奏でしたが、田部京子だったら、もっと弾けるでしょうという感じ。saraiの集中力も欠けていましたけどね。シューベルトのピアノ・ソナタ第13番はさすがの演奏。田部京子のシューベルトは素晴らしいの一語。シューベルトの人懐こい優しさにあふれた演奏です。こういうシューベルトも好きです。シューベルトもこの何年か後には遺作ソナタの深い世界に入るということが信じられない感じではあります。

今日も田部京子は音楽の神に選ばれた天才ピアニストぶりを遺憾なく発揮し、シューベルトと同じ最高のレベルでシューマンを聴かせてくれました。日本には最高のシューマン弾きが二人もいて、日本人のsaraiは幸運を感じています。その二人とは、田部京子と伊藤恵です。これからも彼女たちのシューマンをたくさん聴かせてもらいましょう。


今日のプログラムは以下です。

  田部京子シューベルト・プラス 第5回

  ピアノ:田部京子
 
  べートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番ハ長調 Op.13
  シューベルト:ピアノ・ソナタ第13番イ長調 Op.120 D664

  《休憩》

  シューマン:幻想曲ハ長調 Op.17

  《アンコール》
   グリーグ:抒情小曲集より、ノクターン Op.54-4
   シューマン:『子供の情景』Op.15より、第7曲『トロイメライ』


次回はシューベルトの晩年の傑作、アレグレットが登場します。聴き逃がせませんね。残す晩年の作品はいよいよ、3つの即興曲だけですね。シューマンの《子供の情景》も演奏されます。これも待ちに待ったものです。saraiが大好きな作品です。若きブラームスの書いたピアノ・ソナタ第3番は田部京子がまだ録音していない筈です。この熱くロマンティックな作品を田部京子がどう弾くのかも楽しみです。
   

最後に予習について、まとめておきます。

べートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番を予習したCDは以下です。

 エミール・ギレリス 1980年9月 ベルリン、イエス・キリスト教会 セッション録音

ギレリスのセッション録音のベートーヴェンはすべて、素晴らしい演奏です。この《悲愴》ソナタも同曲演奏の録音の中ではピカ一です。


シューベルトのピアノ・ソナタ第13番を予習したCDは以下です。

 田部京子 1999年3月30日~4月2日 豊田市コンサートホール

もう20年ほど前の録音ですが、今日の演奏と同様に郷愁に満ちた満足できる演奏です。


シューマンの幻想曲ハ長調を予習したCDは以下です。

 スヴャトスラフ・リヒテル 1980年 ブダペスト ライブ録音

音質は今一つですが、リヒテルらしくスケールの大きな演奏です。それにじっくりと落ち着いた演奏です。



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       田部京子,  

究極のバレエ作品!!エイフマン・バレエ《アンナ・カレーニナ》@東京文化会館 2019.7.21

ほぼ、4年ぶりのバレエです。最後にバレエを見たのはロパートキナが極上のオデットを踊ったマリインスキー・バレエの《白鳥の湖》でした。もう、これ以上のバレエを見ることはないと思い、しばらく、バレエは封印していました。

しかし、今日は現代の伝説ともいえるエイフマン・バレエの何と21年ぶりの来日公演です。しかも演目は日本初登場のアンナ・カレーニナです(日本でも新国立劇場バレエ団の上演はあったようですが。)。saraiは日本でも上演された2012年にウィーン国立歌劇場のバレエで見ました。日本もウィーンもエイフマンの指導と振付だったので、内容はほぼ同じです。それは美しいバレエでため息の出るようなものだったので、本家本元の上演で見られるのならと今回、会場にはせ参じました。

やはり、最初から最後まで息の抜けないシーンの連続で、とりわけ、saraiの大好きなリフトの連続が素晴らしく美しく、もうバレエの醍醐味に魅了され続けました。
若きプリマドンナ、ダリア・レズニクの完璧で超美しいソロとデュエット、とりわけ、リフトされたときの姿の美しさは魅惑的でした。それでいて、まだまだ、伸びしろに感じられる余裕は何なんでしょう。スーパースターに上り詰める逸材です。
セルゲイ・ヴォロブーエフも最高でした。見事なカレーニンを踊ってくれました。イーゴリ・スボーチンも見事な踊り。
ともかく、主役の3人がまったく隙のない最高の演技と踊りで魅了してくれました。
群舞も凄い踊り。恐ろしいほどです。その迫力たるや、圧倒的です。
と、これ以上は書くことがありません。まあ、内容的には、以前、ウィーンで見たものとほぼ同じなので、自分の記事をパクって、おおよそのところを書いておきましょう。

第1幕はチャイコフスキーの弦楽セレナードのとても美しい演奏のもと、舞踏会のシーンでアンナ役のダリアの美しい体の線、そして、夫カレーニン役のセルゲイとのデュエットで早速、魅了されます。その後、アンナが密会するヴロンスキーとの絡みの美しいこと、ダリアもイーゴリも最高で、うっとりし続けです。
そして、最高潮に達するのがチャイコフスキーの交響曲第6番《悲愴》の第1楽章の演奏でダリアとイーゴリのデュエットの美しさ。バレエの美しさを最高に極めたものです。特に見たことのないような高度で美しいリフトの数々、それがパーフェクトに決まり、その姿の美しいこと、まるで夢の世界のようです。これが如何に素晴らしいか、確信を込めて、賛美できます。
古典的なバレエと違って、全編、息抜く暇のない、凝縮した踊りの連続、3人のダンサーだけでなく、群舞のダンサー達も体力・技術の限りを尽くし、観るものを圧倒し続けます。

休憩になり、いったん、疲れた目を休めます。そして、第2幕です。
第2幕もダリアの美しさが光ります。アンナとヴロンスキーがイタリアに駆け落ちし、ヴェネチアでの仮面舞踏会。このシーンでの仮面を付けた群舞の凄まじさには圧倒されるのみです。とても美しく、爽快感のあるダンスシーンです。
イタリアでヴロンスキーがアンナをモデルに絵を描くシーンも、とても愛に満ちたというよりも、愛に燃え上がる感じが素晴らしく、またしても、ダリアの美しさに魅せられます。やがて、イタリアでの生活にピリオドを打ち、ロシアに戻った二人は舞踏会に登場。そして、最高潮に達するのがチャイコフスキーの交響曲第6番《悲愴》の第3楽章に乗って、狂おしいダンスが踊られるシーンです。
この後はアンナの転落の詩集です。どこまでも落ちていくアンナ。ダリアが渾身のダンスで表現していきます。
それでも、チャイコフスキーの幻想的序曲《ロミオとジュリエット》の美しい音楽で踊られるダリアの秀逸で美しいダンスで救いも感じます。何故、こうも美しいのか・・・。
最後はホール全体が振動するほどの機関車のダッダッという響きと群舞の中、アンナが身を投げて、轢死し、フィナーレ。実際に高いところからダリアが身を投げたようなのですが、この最高のシーンは照明がブラックアウトして、saraiの目には見えませんでした(予習したヴィデオではちゃんと見えました)。このまま、終わりでもいいかなと思いましたが、短いエピローグでしめくくります。

ともかく、全編、美しいソロ・デュエット・群舞の連続で、バレエ好きにはたまらない究極の作品です。しかし、真の主役はボリス・エイフマンでした。

ところで、今日のエイフマン・バレエで残念な点が一つだけありました。ウィーンで見たときはウィーン国立歌劇場管弦楽団(つまり、ウィーン・フィルそのもの)の生演奏が素晴らしかったんです。特にコンミスのダナイロヴァのヴァイオリン独奏の美しかったこと。今日はテープ。味気ないです。やはり、バレエはオーケストラの生演奏がsaraiの趣味に合います。音楽芸術と身体表現の芸術の融合こそがバレエの真髄だと信じています。


今日のプログラム・キャストは以下です。

  バレエ:アンナ・カレーニナ

 音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
   原作:トルストイ
   振付・演出:ボリス・エイフマン
   管弦楽:マリインスキー歌劇場管弦楽団

   アンナ:ダリア・レズニク
   カレーニン:セルゲイ・ヴォロブーエフ
   ヴロンスキー:イーゴリ・スボーチン


  使用楽曲 オール・チャイコフスキー

  <第1幕>
   弦楽セレナーデ ハ長調 Op.48より第1楽章
   組曲第1番 ニ短調 Op.43 序曲とフーガ
   交響的バラード「ヴォエヴォーダ」Op.78
   組曲第1番 ニ短調 Op.43 間奏曲
   なつかしい土地の思い出 Op.42 スケルツォ ハ短調
   交響曲第6番 ロ短調 Op.74「悲愴」より第1楽章
   交響曲「マンフレッド」Op.58 レント・ルグーブレ
   幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」Op.32
   弦楽六重奏曲「フィレンツェの想い出」ニ短調 Op.70(弦楽合奏版)
  <第2幕>
   交響曲第2番 ハ短調 Op.17より第4楽章
   幻想序曲「ハムレット」Op.67a
   組曲第3番 ト長調 Op.55 主題と変奏
   組曲第3番 ト長調 Op.55 悲歌
   交響曲第6番 ロ短調 Op.74「悲愴」より第3楽章
   なつかしい土地の思い出 Op.42 瞑想曲 ニ短調
   幻想曲「テンペスト」Op.18
   幻想序曲「ロメオとジュリエット」

予習はもちろん、エイフマン・バレエ。ヴィデオで見てもため息の出るような美しさですが、やはり、実演は最高です。



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今日も絶好調、リゲティとシュトラウス・・・ジョナサン・ノット&東京交響楽団@サントリーホール 2019.7.20

何とも驚くべきプログラム。この内容だけでも聴くべき価値があるコンサートです。一言で言えば、チャレンジャブル。さすがに今日の客席には空席も目立ちましたが、そこは気にしないでノット&東響はこの路線で頑張ってほしいですね。多分、リゲティのレクイエムが今日のプログラムの肝ですが、ノットはリゲティのスペシャリストなので、それは当たり前として、他の曲を何にするか・・・ある意味、正反対とも思えるヨハン・シュトラウス2世はないでしょう。これは笑ってしまい、その上で凄いと感心します。リゲティとヨハン・シュトラウス2世ですよ、あなた! そして、最後の締めはR.シュトラウスです。これって、シュトラウスつながり? さらに生誕514年のタリス。これはノットと同じイギリス人だからかしら。東響の定期演奏会なのにオーケストラなしのア・カペラの合唱曲です。まさにジョナサン・ノットが凝りに凝ったプログラムです。これはウィーンでもなかなか聴けないプログラムです。こういうコンサートをやってくれるノットは得難い宝物だと信じています。

で、まずは人を食ったようなプログラムのJ.シュトラウスⅡの芸術家の生涯です。これは冒頭のオーボエ独奏の美しい演奏からして、通常のウィンナーワルツとは異なります。何という演奏でしょう。J.シュトラウスⅡが後期ロマン派の音楽に変身したような演奏が続きます。最後はめでたく普通の気持ちのよいウィンナーワルツに復帰します。今日のプログラムに合わせたスペシャルなJ.シュトラウスⅡの演奏でした。ノットの知的なアプローチに魅了されました。

次は最も期待したリゲティのレクイエムです。いやはや、これが本物のリゲティなんですね。東響コーラスと独唱者二人の素晴らしい歌唱です。ですが、さすがにCDで聴いたノット&ベルリン・フィルには及びません。一言で言えば、少し突っ込みが足りませんでした。その結果、戦慄を覚えるような演奏までには至りませんでした。もしかしたら、明日の川崎定期では物凄い演奏になるかもしれません。残念ながら、明日はバレエ公演を見るので、川崎定期には行きません。

後半のプログラムはタリスの40声の合唱曲で始まります。これは東響コーラスが期待以上の素晴らしい歌唱を聴かせてくれました。特にソプラノパートの美しい声の響きは圧巻でした。本場イギリスの合唱団にも優るとも劣らない素晴らしい歌唱です。こういう音楽が聴けるのもノットを音楽監督に招いた成果ですね。saraiはタリスは初聴きです。こんな素晴らしい音楽があったんですね。

最後はR.シュトラウスが若い頃に書いた《死と変容》です。これはまさに豊穣の響き。圧倒的なフィナーレは極美の世界。予習で聴いたチェリビダッケ&ミュンヘン・フィルと並び立つような美しさ。ジョナサン・ノット&東京交響楽団は着実に前進しています。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:ジョナサン・ノット
  ソプラノ:サラ・ウェゲナー
  メゾソプラノ:ターニャ・アリアーネ・バウムガルトナー
  合唱:東響コーラス
  管弦楽:東京交響楽団  コンサートマスター:グレブ・ニキティン

  J.シュトラウスⅡ:芸術家の生涯 op.316
  リゲティ:レクイエム

   《休憩》

  タリス:スペム・イン・アリウム(40声のモテット)
  R.シュトラウス:死と変容 op.24


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のJ.シュトラウスⅡの芸術家の生涯を予習したCDは以下です。

 ヴィリー・ボスコフスキー指揮ウィーン・フィル 1958年、ウィーン、ゾフィエンザール セッション録音
 
ボスコフスキー、ウィーン・フィルとくれば、もう何も言うことのない美しい演奏。ただただ、その響きに心も体も委ねるだけ。


2曲目のリゲティのレクイエムを予習したCDは以下です。

 ジョナサン・ノット指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2001年
   カロリーネ・シュタイン(ソプラノ)、マルグリート・ファン・レイセン(メゾ・ソプラノ)、ロンドン・ヴォイセズ(合唱)

リゲティ・プロジェクトと題した5枚組のリゲティ作品集の中の一枚。リゲティが関わっただけに、ノットはベルリン・フィルと素晴らしい仕事を成し遂げています。


3曲目のタリスのスペム・イン・アリウムを予習したCDは以下です。

 タリス・スコラーズ(TALLIS SCHOLARS) 1985年 マートン・カレッジ・チャペル オックスフォード

いやはや、究極のア・カペラです。この上もなく美しい。ただ、それだけです。


4曲目のR.シュトラウスの死と変容を予習したCDは以下です。

 ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ウィーン・フィル 1950年録音
 セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィル 1979年2月17日 ヘラクレス・ザール、ミュンヘン ライヴ録音

フルトヴェングラーならでは演奏。誰にも真似できない魂の燃焼があります。
チェリビダッケはミュンヘン・フィルの首席指揮者に就任する直前の演奏。この4カ月後、チェリビダッケは正式にミュンヘン・フィルの首席指揮者に就任します。後のこのコンビの大躍進が確信できるような凄まじい演奏です。



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       ジョナサン・ノット,  

知的で静謐、かつ日本人的な味わい・・・宮田大&小泉和裕&東京都交響楽団@東京文化会館大ホール 2019.7.16

音楽には色々な形があります。豪快で熱い演奏、緻密さを極めるような演奏、音楽性に満ちた演奏、等々、いずれもその道を極めれば、聴衆をうならせることができるでしょう。そして、今日の演奏はタイトルに書いたように知的で静謐な演奏、誤解を恐れずに言えば、伝統的な日本人の精神性に基づく、深い味わいの音楽でした。そこには興奮も熱狂もありませんが、まるで能楽でも聴いているような奥深い精神の緊張感に満ちていました。かくのごとく感じたのは、後半のブラームスではなくて、前半のドヴォルザークでした。こういう味わいのドヴォルザークは初めて聴きました。きっと、日本人でなければ表現できず、日本人でなければ味わうことができないでしょう。民俗音楽の代表的な作曲家とも言えるドヴォルザークですが、ボヘミアや訪問地のアメリカの音楽がベースであっても、こうして異国の日本のテースト、文化というフィルターを通した演奏が可能であること、それもとびっきり、高いレベルでなしうることは驚くべきことではないでしょうか。再現芸術という形をとる音楽の無限の可能性を再認識させられました。

少し、中身に立ち入ってみましょう。まずは独奏チェロの宮田大の熟成した音楽を賞賛すべきでしょう。ともすれば、若いチェリストならば、熱い共感に満ちたドヴォルザークの音楽を表現することが多いわけですが、宮田大はその若さにもかかわらず、実に知的で精緻、そして熟成した音楽を聴かせてくれます。知的でありながら、決して、冷たくはならず、熱い心は内に秘めたような、見事な演奏です。精神の深いところでは日本人の心がいい意味で息づいています。その宮田大のチェロをサポートする小泉和裕の見事な指揮には脱帽の感に至ります。協奏曲の指揮でここまでのレベルの音楽を聴いたことはありません。そもそも、何と彼は暗譜で指揮しています。どれほどスコアを読み込んだんでしょう。そして、彼がオーケストラで表現する音楽は独奏チェロの宮田大の音楽を独奏者以上に理解していると言っても過言でないほど、単なるサポートではなく、独奏チェロの表現をさらに敷衍・拡大し、深い味わいをもたらします。その指揮者の指示を見事に表現する都響のアンサンブルも見事です。聴きどころ満載でしたが、第2楽章の独奏チェロと木管の絡みが素晴らしくて、深い味わいに満ちていたことだけを書くにとどめます。
協奏曲での独奏者と指揮者の在り方は様々ですが、今日のように指揮者が独奏者の意図・表現を高みから見据えて、音楽的にアウフヘーベンしたかのような統合的な境地に至るということは信じられないような体験でした。しかもそれが日本文化に根差したような音楽表現とはね・・・。

となると、後半のブラームスへの期待も高まります。日本人的な表現のブラームスというのも想像はできます。しかし、演奏水準は高かったものの期待したような意味での演奏ではありませんでした。まあ、都響の素晴らしいアンサンブルで、ブラームスの中でも好きな作品である交響曲第2番が聴けただけで満足ではありました。

今日はドヴォルザークのチェロ協奏曲での宮田大の素晴らしく個性的な演奏、そして、それ以上に個性的で深い味わいの表現を聴かせてくれた小泉和裕の指揮に強い感銘を受けました。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:小泉和裕
  チェロ:宮田大
  管弦楽:東京都交響楽団  コンサートマスター:矢部達哉

  ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 op.104 B.191

   《休憩》

  ブラームス:交響曲第2番 ニ長調 op.73


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のドヴォルザークのチェロ協奏曲を予習したCDは以下です。

 ピエール・フルニエ、ジョージ・セル指揮ベルリン・フィル 1962年6月 ベルリン、イエス・キリスト教会 ハイレゾ
 
昔から聴いている演奏。今回、ハイレゾで聴き直しましたが、昔、アナログのLPレコードで聴いていた音を思い出しました。心にしっくりとくる演奏です。ちらっとロストロポーヴィチ&カラヤン盤を聴こうという気持ちもありましたが、この曲はこれでよし。


2曲目のブラームスの交響曲第2番を予習したCDは以下です。

 ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団 1967年1月6日 クリーヴランド、セヴェランス・ホール

素晴らしい演奏ではありますが、なんだか、心の収まるべきところにきっちりとは入りません。やはり、ハイティンク&ロンドン交響楽団の冒頭を聴いてみましたが、ブラームスはこうでなくてはとの感があります。フルトヴェングラー&ベルリン・フィルは別格の演奏です。通常はハイティンクで決まりでしょう。



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オーケストラの響きに魅了される・・・ロレンツォ・ヴィオッティ&東京交響楽団@東京オペラシティコンサートホール 2019.7.13

絶好調の東響の素晴らしい響きに終始、魅了されました。

前半のブラームスのピアノ四重奏曲は冒頭が少しアンサンブルが乱れましたが、すぐに素晴らしい響きを取り戻し、予習で感じていた管弦楽版の違和感を忘れさせる高いレベルの演奏になります。圧巻だったのは第3楽章。祝祭的で魅惑的な音楽が高らかに響き渡ります。東響の弦と木管を中心にした美しいアンサンブルをロレンツォ・ヴィオッティの熱い指揮が盛り立てます。この壮大なスケール感はオリジナルの室内楽版では出せないでしょう。初めて、シェーンベルクの編曲の意図が分かったような気がします。第4楽章は速いパッセージが勢いよく奏でられて、ヴィオッティの指揮はさらに熱く燃え上がります。第3楽章、第4楽章の演奏は素晴らしいもので、高揚した気持ちで全曲を聴き終えます。

後半のドヴォルザークの交響曲 第7番は前半の演奏以上に東響のアンサンブルがより美しく、響き渡ります。この素晴らしい音響を聴いているだけでも満足です。第8番、第9番ほど耳慣れしていないせいか、実に耳に新鮮に響きます。あまりの心地よさに時折、ふーっと意識が遠のくほどです。強烈な響きにホールの空気がびりびりと振動することもしばしばですが、それがうるさくないのは東響のアンサンブルがきっちりしているからです。ヴィオッティの若々しい感性の直線的な指揮も好感が持てます。いずれ、熟成の時を迎えるでしょうが、それまでは元気のよい音楽を聴かせてくれればいいでしょう。

最後はブラームスの名作をアンコール曲にして、素晴らしいコンサートをしめくくってくれました。なお、若き指揮者ヴィオッティの東響の舞台への登場はこれが4回目だそうです。前回のヴェルディのレクイエムも素晴らしい演奏でした。今後も楽しみですね。


  指揮:ロレンツォ・ヴィオッティ
  管弦楽:東京交響楽団 コンサート・マスター:水谷晃

  ブラームス:ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調 op.25
         (シェーンベルクによる管弦楽版)

   《休憩》

  ドヴォルザーク:交響曲 第7番 ニ短調 op.70

   《アンコール》
     ブラームス:ハンガリー舞曲第1番 ト短調


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のブラームスのピアノ四重奏曲 第1番(シェーンベルクによる管弦楽版)を予習したCDは以下です。

 クリストフ・エッシェンバッハ指揮ヒューストン交響楽団 1995年
 
堅実な演奏ですが、正直言って、オリジナルの室内楽版が聴きたくなりました。


2曲目のドヴォルザークの交響曲 第7番を予習したCDは以下です。

 ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団 1960年 ハイレゾ

これは予想を上回る素晴らしい演奏。聴けば聴くほど、このコンビの演奏はどれも素晴らしいです。その中でも、この演奏は最高に素晴らしいもののひとつです。



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中村 恵理のリューに酔う、テオリンも絶唱:オペラ《トゥーランドット》@東京文化会館 2019.7.12

中村 恵理のリューが聴きたくて、国内で久しぶりに舞台演出のオペラを聴くことにしました。これが大当たり。今日は一連のオペラ《トゥーランドット》公演の初演日ですが、その完成度の高さに感銘を受けました。国内のプロダクションでも、これだけのキャスト、スタッフを用意すると、海外でのオペラ公演にも匹敵するレベルのオペラが上演できるんですね。今後もこういう取り組みを続けてほしいものです。高額のチケットにも関わらず、座席はほぼ埋まっていました。みなさん、何に魅かれての来場だったんでしょう。saraiは最初に書いた通り、中村恵理のリューと、そして、タイトルロールのテオリンです。

書きどころ満載の感じでしたが、要点だけに絞ります。まずは中村恵理のリュー、最後に死ぬシーンでのアリア《氷のような姫君》でのピュアーな歌唱、最高でした。このシーンがプッチーニの絶筆だったわけですが、saraiの心の中でも、今日のオペラはここで終わったも同然。あたかもイゾルデの愛の死を連想させるがごとくです。プッチーニ的にはそうじゃなくて、ミミの死だと思い返します。いずれにせよ、このオペラはプッチーニの死でここで未完となったわけですが、saraiの妄想では、プッチーニはここでちゃんとけじめをつけて、彼のオペラ作曲はここで完結したような思いにもかられます。スカラ座での初演でもトスカニーニがこのリューの死のシーンで演奏を止めて、ここで先生はお亡くなりになりましたとスピーチしたそうですが、なんだか、それがこのオペラの正しい終わり方にも思えます。プッチーニには、トゥーランドットではなく、やはり、リリックなリューが似合います。そして、現代の最高のリューの歌い手が中村恵理です。

急にこれ以上、書きたくなくなりましたが、それもわがまま。テオリンの歌うトゥーランドットは素晴らしかったです。もしかしたら、テオリンを生で聴くのは初めてだったでしょうか。ちょっと調べてみると、5年前、バルセロナのリセウ劇場でのワルキューレで彼女のブリュンヒルデを聴いていました。道理で今日の第2幕の最後のシーンで彼女が「見も知らぬ異邦人に私を与えないでください」と歌ったとき、デジャヴのようにワルキューレでブリュンヒルデが「私を通りすがりの男に与えるのは止めてください。火の壁を通り抜けることのできる英雄だけに私を得られるようにしてください」と父ヴォータンに哀願するシーンを連想してしまったわけです。ちなみに彼女のブリュンヒルデは素晴らしかったことを思い出しました。そのとき、saraiが書いたブログ記事を読み返すと、現在最強のブリュンヒルデと絶賛していました。同じ言い方で言えば、今日のテオリンは現在最強のトゥーランドットだと思いました。歴史を通じても、最高のトゥーランドット歌いと賞賛されているビルギット・ニルソンにも肉薄する出来栄えに思えました。

カラフを歌ったテオドール・イリンカイも見事な歌唱で合格点。《誰も寝てはならぬ》は素晴らしい歌唱で聴き入りました。それに今日は合唱の合同チームが凄い歌唱を聴かせてくれました。これ以上の合唱はないでしょう。舞台に階段を多用し、その上に並んで大合唱団が歌ったのも成功の一因です。

最後に演出についてですが、舞台装置の素晴らしさも含めて、現代的な演出の中に音楽面の配慮もみられる、納得できるものでした。問題はフィナーレの演出。まだ、これからご覧になる方もいるでしょうから、詳細は述べませんが、びっくりするような終わり方でした。賛否両論あるでしょうが・・・。


プログラムとキャストは以下です。

  指揮:大野 和士
  演出:アレックス・オリエ
  管弦楽:バルセロナ交響楽団
  合唱:新国立劇場合唱団、藤原歌劇団合唱部、びわ湖ホール声楽アンサンブル
  児童合唱:TOKYO FM少年合唱団

 トゥーランドット姫              イレーネ・テオリン
 中国の皇帝アルトゥーム         持木 弘
 ティムール                  リッカルド・ザネッラート
 名前の知れない王子(実はカラフ)   テオドール・イリンカイ
 リュー、若い娘               中村 恵理
 ピン、皇帝に仕える大蔵大臣      桝 貴志
 パン、内大臣                与儀 巧
 ポン、総料理長               村上 敏明
 役人                     豊嶋 祐壹


最後に予習について、まとめておきます。

予習したCDは以下です。

 フランチェスコ・モリナーリ・プラデッリ指揮ローマ歌劇場  1965年録音
   ビルギット・ニルソン、フランコ・コレッリ、レナータ・スコット

何と言う名盤でしょう。まず、トゥーランドット役と言えば、昔から、この人。ビルギット・ニルソン。マリア・カラスという対抗馬はいますが、美しい声、そして、強くて伸びる声量は不世出でしょう。しかし、やはり、カラフ役のフランコ・コレッリが素晴らしい! この人の歌唱には賛否両論あるようですが、saraiは若い頃から彼のカッコ良さに同性ながら、参っています。史上最高のイタリアン・テノールだと信じています。やはり、素晴らしい歌唱を聴かせてくれます。ニルソンとコレッリの2重唱の凄さには絶句します。さらにリューはレナータ・スコット。この人もリリックなソプラノ役では図抜けた存在です。ですから、これは最高のキャストですね。カラスの録音がステレオならば、これに匹敵したかもしれません。映像版はレヴァイン指揮のMETでエヴァ・マルトン、プラシド・ドミンゴ、レオーナ・ミッチェルの3人が揃った素晴らしい公演をいつも聴いています。マルトンが最高です。ミッチェルのリューも素晴らしい。今回は聴きませんでした。



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       中村恵理,  

読響の実力が発揮されて、バルトークの難曲も余裕の演奏 ヘンリク・ナナシ&読売日本交響楽団@サントリーホール 2019.7.11

うーん、日本のオーケストラの実力もなかなかですね。バルトークの管弦楽のための協奏曲と言えば、オーケストラ能力の試金石みたいなものの一つですが、読響は余力を残した演奏。指揮者がもっと厳しい要求をしても応えられたでしょう。まあ、金管で問題もありましたが、弦楽アンサンブルの演奏能力は驚異的です。指揮者のヘンリク・ナナシはハンガリー出身ですから、お国ものとも言えるバルトークは音響的な面よりも音楽的な面を重視した指揮に思えました。ある意味、おとなしい演奏です。もしかしたら、指揮者のヘンリク・ナナシは読響に初めての客演で、少し、遠慮気味だったんでしょうか。いずれにせよ、なかなか素晴らしいバルトークに感銘を覚えました。とりわけ、この曲の肝とも思える第3楽章(管弦楽のための協奏曲は5楽章でいわゆるアーチ形の構造になっていて、その中心楽章が第3楽章)はバルトークらしい薄明を思わせる音楽ですが、その無気味な雰囲気がひたひたと伝わってきます。バルトークのオペラ《青ひげ公の城》を連想する味わいが素晴らしいです。さらに第5楽章のダイナミックで壮大な音楽作りも成功していたと思います。

前半のコダーイのガランタ舞曲もハンガリーのお国もの。チャルダッシュを思わせるロマ風の音楽がきびきびと切れがよく奏されました。好演です。
前半のもう一つのサン=サーンスのピアノ協奏曲第5番ですが、フランスの新進気鋭のピアニスト、リュカ・ドゥバルグが華麗な演奏を聴かせてくれました。アンコールのサティも見事な演奏でしたから、フランスものの演奏には大いに期待が持てそうです。ラヴェルあたりを聴いてみたい逸材です。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:ヘンリク・ナナシ
  ピアノ:リュカ・ドゥバルグ
  管弦楽:読売日本交響楽団 長原 幸太(コンサートマスター)

  コダーイ:ガランタ舞曲
  サン=サーンス:ピアノ協奏曲第5番 ヘ長調 作品103「エジプト風」

   《アンコール》 サティ:グノシエンヌ第1番

   《休憩》

  バルトーク:管弦楽のための協奏曲

最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のコダーイのガランタ舞曲を予習したCDは以下です。

 イヴァン・フィッシャー指揮ブダペスト祝祭管弦楽団 1998年1月、ブダペスト、イタリアン・インスティテュート

イヴァン・フィッシャーの自在な指揮が光ります。決定的な演奏でしょう。


2曲目のサン=サーンスのピアノ協奏曲第5番を予習したCDは以下です。

 パスカル・ロジェ、シャルル・デュトワ指揮ロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団 1978年
 
パスカル・ロジェとシャルル・デュトワの息の合った演奏で素晴らしい音楽を奏でてくれます。サン=サーンスのピアノ協奏曲全集という価値もあります。


3曲目のバルトークの管弦楽のための協奏曲を予習したCDは以下です。

 イヴァン・フィッシャー指揮ブダペスト祝祭管弦楽団 1997年

イヴァン・フィッシャーのバルトークは格別です。自由奔放の中にバルトークへのシンパシーが感じられます。



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天才モーツァルトと天才マーラーの最高の音楽・・・アリス=紗良・オット&インバル&ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団@東京芸術劇場 コンサートホール 2019.7.10

いやはや、音楽って素晴らしい! 天才モーツァルトはこんなにシンプルな音楽の中に芸術の神髄を詰め込んでいるし、一方、我らが天才マーラーは管弦楽法の複雑さと精緻さを極めたような恐ろしいほどの音楽を聴かせてくれます。両極端のような二人ですが、きっと、ミューズの女神に愛された二人なんでしょう。マーラーやブルックナーの大交響曲の前にモーツァルトのピアノ協奏曲が配されるプログラムは多いですが、その意味をはっきりと分からせてくれるようなコンサートでした。

まず、前半のモーツァルトのピアノ協奏曲第21番。会場の聴衆みんな、いや世界中の音楽ファンが体調を心配していただろうアリス=紗良・オットのピアノでしたが、その純度の高いピアノの響きでモーツァルトの名曲を最高に歌い上げます。これからはモーツァルト弾きに専心してもらいたいと思うほどの出来栄えでした。第2楽章の美しい抒情は彼女の少女の無垢な心を感じさせてくれます。一方、第3楽章はどこまでも澄み切った青空を飛翔するようなわくわくするピアニズム。終始、粒立ちのよい素晴らしいタッチでモーツァルトにふさわしい音色を聴かせてくれました。やはり、モーツァルトはオペラとピアノ協奏曲が一番、素晴らしいですね。最高のモーツァルトでした。

後半のマーラーの交響曲第5番は何と言っても、金管が素晴らしい。冒頭のトランペットのソロは素晴らしい演奏。安定感抜群で微塵も不安感などありません。他の奏者たちもインバルのマジックにかかったようにいきいきとした音楽を奏でます。しかし、主役は作曲した天才マーラーです。聴くだけでなく、見ていても、何と言う複雑な管弦楽の使い方でしょう。分かっていたつもりのこの曲の難しさが実感させられます。特に第3楽章はよくぞ、こんなに精緻な音楽を組み立てあげたものだと驚嘆させられます。その演奏も見事。インバルの指揮もオーケストラの演奏もよくぞと言うレベルです。そして、アダージェットに入ります。深い息を思わせる音楽、そして、実に密やかな演奏に感慨深く聴き入ります。単に美しいという言葉では片付けられない音楽と演奏。心の奥襞に沁み入ってくる魂の音楽です。久しぶりにインバルの素晴らしいマーラーを聴かせてもらい満足です。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:エリアフ・インバル
  ピアノ:アリス=紗良・オット
  管弦楽:ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団 コンサートマスター:日下紗矢子

  モーツァルト:ピアノ協奏曲 第21番 ハ長調 K.467
    《アンコール》 リスト:パガニーニ大練習曲集 第5曲「狩り」 S.141 R.3b ホ長調

   《休憩》

  マーラー:交響曲第5番 嬰ハ短調


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のモーツァルトのピアノ協奏曲 第21番は本当はクララ・ハスキルのピアノで聴きたいところですが、録音がないものは仕方ありません。以下のCDで予習しました。

 クリフォード・カーゾン、ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団 1976年12月16日 ライヴ録音

クーベリック指揮のバイエルン放送響の得も言われぬオーケストラの響きに心を奪われます。カーゾンのピアノの響きは期待したほどの純度の高い響きは聴けませんが、saraiの頭の中では、ハスキルのピアノの響きを想像しながら、聴いています。まあ、変な聴き方です。クーベリックとハスキルの組み合わせは最高でしたからね。それでも、第2楽章の有名な旋律が流れ出すと、カーゾンのピアノの響きも俄然よくなって、うっとりと聴き惚れます。まだ、この曲の最高の演奏には出会っていません。

2曲目のマーラーの交響曲第5番を予習したCDは以下です。

 レナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィル 1963年1月、ニューヨーク ハイレゾ

バーンスタインのマーラーの5番と言えば、後のウィーン・フィルとの名演が有名ですが、バーンスタインがマーラーを世界に紹介したのはニューヨーク・フィルとの一連のマーラーの録音(第2番だけはロンドン響との演奏)でした。一昨年、マーラーがこの第5交響曲を作曲したヴェルター湖畔のマイヤーニックの作曲小屋を訪れた際に、そこで聴かせてもらったアダージェットがこのバーンスタインの旧盤でした。バーンスタインのマーラー交響曲全集(ニューヨーク・フィルとの旧盤)が置いてあった中の一枚でした。今回、その演奏をハイレゾで懐かしく聴かせてもらいました。啓蒙的ですが、よくスコアを読み込んだと思われる演奏で、とても新鮮に感じました。もちろん、バーンスタインらしく熱さもあり、ユダヤ的な粘りもあります。なぜか、昔、ベルティーニ指揮の都響ですみずみまで磨き上げられた演奏を聴いたときと同様の感動が蘇りました。これでまた、バーンスタインがウィーン・フィルを振ったときの演奏を聴き直すと、別の感慨がありそうです。ところで、アダージェットはとても素晴らしかったです。



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現代のヴィルトゥオーゾ、シューマンの狂気に肉薄 アンドレイ・ガヴリーロフ ピアノ・リサイタル@横浜上大岡ひまわりの郷ホール 2019.6.30

いやはや、まさか、saraiの地元で幻とも思えるアンドレイ・ガヴリーロフの演奏が聴けるとは思っていませんでした。それもかぶりつきで伝説的なピアニストの演奏が聴けました。11年ぶりの来日公演なんだそうです。今回、首都圏では、今日のコンサートだけなんだそうです。やはり、このピアニストはたまが違います。破格の演奏を聴かせてくれました。シューマンもムソルグスキーもアンコールも圧倒的な演奏でした。爆演とも言えますが、その一言で片付けられないような凄い演奏。やりたい放題の演奏ですが、それが実に音楽性に満ちているのは、ガヴリーロフの魂の燃焼が聴く側の我々に伝わってくるからでしょう。彼の演奏は常に全力投球。手抜きは一切なし。演奏の途中で肩で息をしているほど、思い切り、音楽にのめりこむような感じです。

前半のシューマンは最初の《蝶々》から、ガヴリーロフの個性が浮き彫りになったような演奏。節回しが独特です。魅惑的で面白い演奏にぐっと惹き付けられます。
圧巻だったのは、交響的練習曲。まさに題名通り、交響的な演奏です。終始、鍵盤を叩きまくり、しかも、ペダルを踏み続けるので、凄まじい音響の嵐です。その大音響の先にシューマンの秘めたような狂気まで露わになります。時折、音響の嵐が静まり、シューマンの抒情的なロマンも際立ちます。第9変奏(フィナーレの前の曲)でもそういうロマンが感じられますが、その底には潜在的な狂気も感じます。なるほど、シューマンは若い時から、後の狂気を内在していたのですね。そういうことを感じさせるほど、ガヴリーロフの一見、自由奔放なピアノは深い音楽性に裏打ちされています。フィナーレでは一変して、そういう狂気は吹き飛ばすような祝祭に満ちた音楽に昇華します。なんとも素晴らしいシューマンでした。こういうシューマンの演奏もあるんですね。最高の交響的練習曲を聴かせてもらいました。あの美しい遺作変奏曲が聴けないのは残念でしたが、確かに今日の演奏には遺作変奏曲はふさわしくないような気がします。シューマン自身が編纂した今日の1852年改訂版が真の交響的練習曲であることを納得させてくれるような演奏でした。

後半は展覧会の絵。ヴィルトゥオーゾの演奏はこういうものだという見本のような演奏です。1960年以前のリヒテルやホロヴィッツの演奏が現代によみがえったような凄まじい演奏です。いや、むしろ、それ以上かもしれません。リヒテルの1958年のソフィアでのライヴ録音を思い出します。まあ、あれほど、自分を失った演奏ではなく、テンポも突っ込んでいませんから、燃焼した演奏とは言え、どこか冷めた自分を持ち続けた演奏ではありました。実際、コケティッシュな部分では笑みを浮かべながら、聴衆の様子を窺う余裕さえありました。バーバ・ヤガーからキエフの大門に至る終盤の高揚にはとても興奮させられました。やはり、展覧会の絵はこうでなくっちゃね。

演奏を終えて、聴衆の万雷の拍手に応えるガヴリーロフの嬉しそうな笑顔、そして、スポーツ選手のようなガッツポーズが印象的。ヴィルトゥオーゾにして、自由人。ある意味、ホロヴィッツみたいですね。そして、アンコール。saraiが期待していたショパンのノクターンです。CDで聴いたとおりの異端の演奏。彼にしか表現できないような自在な音楽。中間部の豪快な演奏にはまたしても驚かされます。これでアンコールはお終いかと思っていたら、何と、プロコフィエフを演奏してくれます。これは何とも凄いプロコフィエフでした。プロコフィエフが若いときにこんな曲を書いたのも凄いですが、演奏するガヴリーロフの超絶技巧と音響の凄まじさ、それに高い音楽性にただただひれ伏すのみです。このプロコフィエフが今日の最高の演奏でした。戦争ソナタを是非とも聴かせてもらいたいものです。気絶するような演奏になるんでしょう。

現代にこのようなピアニストがいるのは驚異です。ポゴレリッチとかファジル・サイとか、異才もいますが、ガヴリーロフの破格さは比類のないものだと思いました。こんな凄いピアニストが聴けて、幸運でした。ザルツブルクでグリゴリー・ソコロフを聴いたとき以上の感銘を受けました。


この日のプログラムは以下の内容です。

 ピアノ:アンドレイ・ガヴリーロフ

  シューマン:蝶々 Op.2
  シューマン:交響的練習曲 Op.12 <1852年版>

  《休憩》

  ムソルグスキー:展覧会の絵

  《アンコール》

    ショパン:夜想曲第4番 ヘ長調 Op.15-1
    プロコフィエフ:4つの小品 悪魔的暗示 Op.4-4


最後に予習について触れておきます。

1曲目のシューマンの蝶々は以下のCDで予習をしました。

  田部京子 2007年12月5日 浜離宮朝日ホール ライヴ録音
  伊藤恵 1990年1月23-25日 田園ホール・エローラ(松伏町中央公民館) セッション録音

日本を代表するピアニスト二人がシューマンを得意にしているのは嬉しいです。いずれも素晴らしい演奏。海外のピアニストを含めても、出色のシューマンです。田部京子の詩的な表現、伊藤恵のドイツ的な重厚な演奏、最高のシューマンです。


2曲目のシューマンの交響的練習曲は以下のCDで予習をしました。

  田部京子 1999年8月10-13日 群馬 笠懸野文化ホール セッション録音
  伊藤恵 2000年1月12-14日 ベルフォーレ(坂東市民音楽ホール) セッション録音

二人のシューマンはここでも素晴らしい演奏。伊藤恵はシューマニア・シリーズ13枚のCDで素晴らしいシューマンのピアノ独奏曲の全曲を聴かせてくれます。田部京子はシューマン・アルバムは2枚だけですが、珠玉の演奏です。


3曲目のムソルグスキーの展覧会の絵は以下のCDで予習をしました。

  アナトール・ウゴルスキ 1991年 ハンブルク セッション録音

展覧会の絵と言えば、リヒテルとホロヴィッツの歴史的な演奏に尽きてしまいますが、彼らの豪快な演奏の対極にあるようなウゴルスキのクリアーな演奏も見事です。



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       ガヴリーロフ,  

庄司紗矢香の妙なる響きに感動・・・ペンデレツキ&東京都交響楽団@サントリーホール 2019.6.25

庄司紗矢香が表現するペンデレツキの音楽の世界。とても素晴らしいです。作曲者自身が指揮している目の前で堂々と心のありったけをぶつけるような演奏を繰り広げる姿は感動的です。日本人には難しかった自己表現が見事に実現しています。譜面を置いての演奏でしたが、この作品を完璧に自己の音楽として表現しきっていることは見て取れました。作品との程よい距離を持ったバランスのよい演奏でした。よい意味で無機的な雰囲気もあり、抒情的な一面も捉えて、あるときは熱い推進力もあるという、実に多彩な表現です。考え抜いた結果なのでしょう。美しいヴァイオリンの響きをベースにしていましたが、あまりメローになり過ぎないような配慮も働いていたように思えます。もっと美しく響かせることもできたでしょうが、あえて、厳しい表現も見せていました。初演者のアンネ=ゾフィー・ムターは明快で美しい演奏でしたが、庄司紗矢香は彼女なりに一線を置いた表現でこの作品の新たな解釈を聴かせてくれました。ペンデレツキのこの作品は近年に作曲されたヴァイオリン協奏曲の中では大変、魅力的なものですが、庄司紗矢香の演奏で一層、その魅力の幅を広げたような気がします。今後、このヴァイオリン協奏曲は演奏機会が増えていきそうな予感がします。

前半の庄司紗矢香の演奏ですっかり、満足しましたが、後半のベートーヴェンの交響曲第7番は予想以上の会心の演奏。先日、ジョナサン・ノット指揮の東京交響楽団の素晴らしい演奏を聴いたばかりですが、今日の演奏はそれに勝るとも劣らない演奏。ペンデレツキの指揮も見事でしたが、都響のモダンで切れの良い、完璧なアンサンブルが凄かったと思います。やはり、これが今日的なベートーヴェン演奏の規範なのでしょう。室内オーケストラを思わせる一糸の乱れもない完璧なアンサンブルでの古典的な演奏。ロマンやスケール感という要素は排除して、極力、譜面に忠実に演奏する・・・その中でベートーヴェンが描き出そうとしたオリジナルな音楽表現を目指すというものです。自身が作曲家であるペンデレツキだからこそ、こういうベートーヴェンの実像に回帰するような演奏が可能なんでしょう。時を置かずして、日本のオーケストラでこのベートーヴェンの傑作の素晴らしい演奏が続けて聴けて、大変、幸せです。

今日は前半は現代音楽、後半は古典派の音楽でしたが、ペンデレツキはどちらもその音楽が底面ではつながっていることを分からせてくれるような演奏を聴かせてくれました。久しぶりに都響のサントリー定期に足を運びましたが、素晴らしいコンサートに出会えました。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:クシシュトフ・ペンデレツキ、マチェイ・トヴォレク(平和のための前奏曲のみ)
  ヴァイオリン:庄司紗矢香
  管弦楽:東京都交響楽団  コンサートマスター:矢部達哉

  ペンデレツキ:平和のための前奏曲(2009)[指揮/マチェイ・トヴォレク]
  ペンデレツキ:ヴァイオリン協奏曲第2番《メタモルフォーゼン》(1992-95)
《アンコール》 J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第3番 ハ長調 BWV1005より第3楽章 ラルゴ

   《休憩》

  ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 op.92


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のペンデレツキの平和のための前奏曲は予習すべきCDが入手できず、予習していません。


2曲目のペンデレツキのヴァイオリン協奏曲第2番《メタモルフォーゼン》を予習したCDは以下です。

 アンネ=ゾフィー・ムター、クシシトフ・ペンデレツキ指揮ロンドン交響楽団 1997年

これはムターのこれまで聴いたCDでも最高の演奏です。その深い音楽表現に感動しました。ヴァイオリンの響きのあまりの美しさにも魅了されました。究極の名演です。ムターがこの曲の初演者であるからとかは関係ないレベルの音楽の完成度です。ムターの音楽家としての知性の高さにも驚愕しました。


3曲目のベートーヴェンの交響曲第7番を予習したCDは以下です。

 カルロ・マリア・ジュリーニ指揮シカゴ交響楽団 1971年

この曲はいまさら予習の必要もありません。あくまでも楽しみとして聴きました。フルトヴェングラーを除くと、このジュリーニ指揮シカゴ響の演奏がsaraiの一番のお気に入り。最高の演奏です。録音も素晴らしいです。この頃のジュリーニはマーラーの第9番やシューベルトの第9番など素晴らしい録音揃いです。



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       庄司紗矢香,  

凄まじい音響美・・・菊池洋子、スダーン&東京交響楽団@サントリーホール 2019.5.25

今日の東京交響楽団の音響も絶好調。とは言え、最初のシューマンの「マンフレッド」序曲は指揮者のユベール・スダーンの気合いのはいった棒が東響を鼓舞して、素晴らしいシューマンのロマンの世界で魅了してくれます。音響だけでなく、音楽的内容に満ちた好演でした。

続くシューマンのピアノ協奏曲はモーツァルトでいつも素晴らしい演奏を聴かせくれる菊池洋子のピアノに期待します。期待に違わぬシューマンではありました。とりわけ、抒情的なパートの気持ちの込められたロマンティックな演奏はそのピアノの響きの美しさもあいまって、魅惑的でした。ただ、全般的には少しバランスが悪いところもあって、今後に課題を残す演奏でもありました。さらなる飛躍に期待しましょう。東響の演奏も少しピアノを立て過ぎたきらいもあって、シューマンのオーケストラ曲としては物足りない部分もありました。よい部分とそうでない部分が半ばしたシューマンのピアノ協奏曲でした。この曲はなかなか演奏が難しいのかもしれません。

最後のチャイコフスキーのマンフレッド交響曲は熱演でした。東響のアンサンブル能力がフルに機能して、凄まじい音響美の世界を聴かせてくれました。スターンの熱い指揮も的確なもの。今日の演奏は原典版によるもので、第4楽章のフィナーレは第1楽章の主題が回帰して、高潮した圧巻の演奏。壮大な音響の洪水ですが、音楽の美が損なわれることはありませんでした。saraiとしては通常版のオルガン入りのフィナーレも捨てがたいところではありますが、盛り上がりという面では満足の演奏でした。

このところ、期待を裏切ることのない東響の演奏は目を離せません。それに客演のコンマスが次々と登場するのにも驚かされます。今日は何とソロ・ヴァイオリニストとして活躍する郷古廉の登場。びっくりです。何となく第1ヴァイオリンの響きがよかったような気もします。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:ユベール・スダーン
  ピアノ:菊池洋子
  管弦楽:東京交響楽団  コンサートマスター:郷古廉(客演)

  シューマン:「マンフレッド」序曲 op.115
  シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調 op.54

   《休憩》

  チャイコフスキー:マンフレッド交響曲 op.58


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のシューマンの「マンフレッド」序曲を予習したCDは以下です。

 ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル 1949年12月18日、ベルリン、ティタニア・パラスト ライヴ録音
 ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団 1978~79年 シューマン交響曲全集 セッション録音
 
シューマンの作品の中でもロマンの色濃い、この曲はフルトヴェングラーにうってつけです。むせかえるような熱いロマンのみなぎる演奏です。一方、シューマンの作品で瑞々しい演奏を聴かせてくれるクーベリックもさすがにこの曲ではロマンあふれる、ファンタジックな演奏。これも素晴らしい演奏です。


2曲目のシューマンのピアノ協奏曲を予習したCDは以下です。

 マリア・ジョアン・ピリス、クラウディオ・アバド指揮ヨーロッパ室内管弦楽団 1997年9月、ベルリン、イエス・キリスト教会 セッション録音
 クララ・ハスキル、ヴィレム・ファン・オッテルロー指揮ハーグ・レジデンティ管弦楽団 1951年9月12日、アムステルダム セッション録音
 クララ・ハスキル、ラファエル・クーベリック指揮デンマーク放送交響楽団 1955年2月17日、コペンハーゲン ライブ録音
 クララ・ハスキル、カール・シューリヒト指揮ストラスブール市立管弦楽団 1955年6月15日、ストラスブール音楽祭 パレ・デ・フェテ ライブ録音
 クララ・ハスキル、エルネスト・アンセルメ指揮スイス・ロマンド管弦楽団 1956年10月10日、ジュネーヴ ヴィクトリアホール ライブ録音


ピリスはさすがに素晴らしい演奏。予習はこれで完了。あとは楽しみでハスキルの名演の数々を聴きます。これまで何度も聴いてきたのはPhilipsの1951年のセッション録音。オッテルローのサポートも素晴らしく、ハスキルが見事なシューマンを気品高いピアノを聴かせてくれます。ほかに4種のライブ録音があり、今回はそのうちの3つを聴きます。1955年のコペンハーゲンのライブでは、クーベリックの丁寧でニュアンスあふれるサポートのもと、ハスキルがロマンに満ちたシューマンを聴かせてくれます。まさに夢見るシューマンという感じの素晴らしい演奏です。1955年のストラスブール音楽祭もよいのですが、少し、シューリヒトもハスキルも固い感じ。最高だったのは1956年のジュネーヴのライブです。まず、録音がよく、ピアノもオーケストラも素晴らしい響き。アンセルメ指揮のスイス・ロマンド管弦楽団はとても美しい演奏でハスキルと共演。ハスキルのピアノも最高の美しさ。気品が高く、詩情に満ちたシューマンを聴かせてくれます。このCDは今後、saraiの最高のシューマンのピアノ協奏曲の定番になりそうです。


3曲目のチャイコフスキーのマンフレッド交響曲を予習したCDは以下です。

 エフゲニー・スヴェトラーノフ指揮ソヴィエト国立交響楽団 1967年

若きスヴェトラーノフ(39歳)の熱い演奏です。スヴェトラーノフは原典版も改訂版も演奏していますが、これは改訂版の演奏です。第4楽章の終盤のオルガンのはいってくる部分が聴きものです。



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ゴジラ対コロラトゥーラ、そして、カリンニコフ 何とマニアック! 山田和樹&読売日本交響楽団@サントリーホール 2019.6.13

今日の曲目はすべてsaraiは初聴きばかりです。しかし、山田和樹は若いのにやってくれましたね。すべて、きっちりと掌中に収めて、練り上げた表現です。

伊福部昭の作品は原曲が映画音楽(ゴジラなどの怪獣映画)なので、ともすれば、響きが浅くなりますが、そのあたりを感じさせないように工夫した表現で、力強い律動で圧倒的な音楽に仕上げていました。

グリエールのコロラトゥーラ・ソプラノのための協奏曲は山田和樹よりもソプラノのアルビナ・シャギムラトヴァのパワフルな歌唱がホールの空間に響き渡り、圧巻でした。第2楽章のコロラトゥーラの技を見せるところでも見事な歌唱。この曲はそもそもソプラノ好きのsaraiが今まで聴いたことがなかったのが恥ずかしいと思うほど、ソプラノの魅力を味わわせてくれる曲です。この曲を紹介してくれた山田和樹に感謝です。アンコール曲のアリャビエフのナイチンゲールは本編以上にシャギムラトヴァの歌唱が光りました。まだまだ粗削りな歌唱ではありますが、地声のパワーには恐れ入ります。

カリンニコフの交響曲第1番は山田和樹が十分に曲の美しさを引き出した会心の演奏。読響のアンサンブルの美しさも際立ちました。第4楽章のフィナーレで2つの主題が交錯して高潮する部分の盛り上がりようって言ったら、凄まじいものでした。やはり、山田和樹の才能は認めざるを得ないのかな。さらなる飛躍を期待しましょう。

今日は予想以上の素晴らしい演奏が聴けました。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:山田和樹
  ソプラノ:アルビナ・シャギムラトヴァ
  管弦楽:読売日本交響楽団 小森谷 巧(コンサートマスター)

  伊福部昭:SF交響ファンタジー第1番
  グリエール:コロラトゥーラ・ソプラノのための協奏曲 Op.82

   《アンコール》アリャビエフ:ナイチンゲール(夜鳴きうぐいす)

   《休憩》

  カリンニコフ:交響曲第1番 ト短調

最後に予習について、まとめておきます。

1曲目の伊福部昭のSF交響ファンタジー第1番を予習したCDは以下です。

 広上淳一指揮日本フィルハーモニー管弦楽団 1995年8&9月

きっちりした演奏ではありますが、曲自体の問題か、音の薄さを感じるのが残念なところ。


2曲目のグリエールのコロラトゥーラ・ソプラノのための協奏曲を予習したCDは以下です。

 ナタリー・デセイ、ミヒャエル・シェーンヴァント指揮ベルリン交響楽団 1996、1997年
 
ナタリー・デセイって、こんなに美声だったっけと驚嘆するほどの出来。思えば、この頃が彼女の絶頂期だったのかな。saraiが初めて、デセイの実演に初めて接したの1992年のパリ・オペラ座(バスティーユ)のオリンピア・・・記憶にありません。その次は2003年のパリ・オペラ座(ガルニエ)のツェルビネッタ。これはよかったけど、既にこれほどの美声ではなかったような気がします。このCDのデセイは素晴らしい美声です。


3曲目のカリンニコフの交響曲第1番を予習したCDは以下です。

 ネーメ・ヤルヴィ指揮スコティッシュ・ナショナル管弦楽団 1987年4月14-17日 グラスゴー、ヘンリー・ウッド・ホール セッション録音

この曲を初めて聴くので、比較ができませんが、とても美しい演奏に魅了されます。ただし、美し過ぎて、深みを感じられません。と言って、他の演奏を聴くほど、この曲に魅惑されたわけではありません。



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シューマンのピアノ曲はいいね! 仲道郁代ピアノ・リサイタル@鶴見サルビアホール  2019.6.8

仲道郁代さんのコンサートを久しぶりに聴きました。saraiのホームの一つ、鶴見サルビアホールに来てくれたからです。調べてみると、最後に聴いたのは2年半前のショパンとチャイコフスキーの協奏曲のコンサート。あれはとてもよい演奏でした。とりわけ、ショパンの協奏曲第1番が明快な演奏で、仲道郁代さんが30年間取り組んできたショパンへの愛情にあふれる演奏でもありました。

今日はそのショパンは封印して、ベートーヴェンとシューマン。仲道郁代さんのピアノはオーソドックスな安定感のある演奏で、作曲家への真摯なアプローチが魅力です。その特徴は前半のベートーヴェンでも十分に発揮されます。妙な気負いもなく、無理のない演奏は充足感を与えられます。現在、ベートーヴェンに集中的に取り組んでいるそうですが、その成果は十分にうかがえるものでした。今日のプログラムはベートーヴェンのピアノ・ソナタの中の名曲を3つセレクトしたものですが、あえて、アパッショナータ(熱情)もワルトシュタインもテンペストも入れなかったというのは面白いですね。その代わりに告別ソナタを入れたということは、この曲に思い入れがあるんでしょう。仲道郁代さんが今日のスピーチ(レクチャー?)でもおっしゃっていましたが、告別ソナタの冒頭の下降旋律タータータンはドイツ語でLebe Wohl!(さようなら)という言葉が添えられています。ナポレオンがウィーンに侵攻してくるのを避けて、ベートーヴェンのパトロンのルドルフ大公がウィーンを去ることに対して、別れを表現したものだと言われています。郵便馬車の合図のホルンの音を模したものだそうです。仲道郁代さんはショパンの《別れの曲》への連想もあるのでしょうか。

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saraiはこの告別ソナタの冒頭のLebe Wohl!を聴くと、つい、マーラーの交響曲第9番を連想してしまいます。マーラーはこの告別ソナタのLebe Wohl!を《大地の歌》の第6曲《告別》の最後の部分でEwig!(永遠に)という言葉に変えて用いました。

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そして、続く交響曲第9番では、純器楽的な主題として用いることになります。この西洋音楽史に燦然と輝く交響曲の全体を貫く基盤となる主題です。この主題でマーラーは死を予感しつつ、人生に別れを告げました。

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少し、本題から離れて、飛躍してしまいました。仲道郁代さんの思い入れももしかして、saraiの思いと重なるところもあるのでしょうか。
告別ソナタの第1楽章も別れを描写するような明快な演奏でした。第2楽章はとてもメランコリックな秀演。しみじみとした思いで聴き入りました。今年の4月に聴いた河村尚子さんの演奏もロマンを感じさせる繊細な演奏でしたが、今日の仲道郁代さんの円熟味のある演奏も納得できるレベルのものでした。

悲愴も月光も高いレベルの安定した演奏で告別と同様に気持ちよく聴けました。


その前半のベートーヴェン以上に聴きものだったのは後半のシューマンです。saraiはシューマンのピアノ曲が聴けるだけで嬉しくなってしまいますが、今日の仲道郁代さんのように素晴らしい演奏なら、猶更です。
アラベスクは終盤のテンポを落とした抒情的な演奏にうっとり。
アベック変奏曲は終始、ロマンの香気の立つような素晴らしい演奏。今日の最高の演奏でした。これを聴いただけで、今日のリサイタルに足を運んだ甲斐がありました。
最後の大曲、謝肉祭もなかなかの好演。中間のキアリーナ、ショパンが素晴らしい演奏で、終曲も大変な盛り上がりで名曲を締めくくってくれました。ただ、ちょっと残念だったのはこの曲だけに関しては、今日弾いたピアノのYAMAHAのCFXよりも重厚な響きのスタインウェイのほうがよかったということです。この曲ではYAMAHAはちょっと乾いた響きで合いませんね。ほかの曲はすべて素晴らしい響きで満足できたんですけどね。ピアノの選択は難しいものです。現在、進行中のアンジェラ・ヒューイットのバッハ・オデュッセイ・プロジェクトではイタリアのファツィオリのピアノを弾いていますが、明るく、よく響くピアノでとてもよいのですが、時として、スタインウェイの重厚な響きを望みたくなる場合もあります。

ところで、シューマンと言えば、このところ、日本人ピアニストが素晴らしい演奏を聴かせてくれます。田部京子さんと伊藤恵さんです。さらに今日の仲道郁代さんが加わると、シューマンを聴きたければ、日本が一番ということになります。この世代の日本人ピアニストは何故か、シューマンを得意にしているんですね。先ほど、仲道郁代がショパンのスペシャリストのように書いてしまいましたが、実は彼女は30年以上前のデビュー当時はシューマンを中心に演奏活動を行っていたそうです。ファーストアルバムはシューマン(ピアノ・ソナタ第3番)とブラームス。2枚目はシューマンの謝肉祭(今日の曲目ですね!)。3枚目はシューマンの子供の情景&クライスレリアーナという具合です。今日のシューマンが素晴らしかったのも道理です。これからもまた、シューマンに力を入れてほしいものです。

アンコール曲はやはり、シューマン。トロイメライです。30年以上前にも録音した曲ですね。彼女のスピーチによれば、ホロヴィッツの演奏でこの曲を聴いて、ピアノの真の魅力にとりつかれたそうです。仲道郁代さんはお父上の仕事の関係で中学生時代にアメリカに渡り、多感な少女時代にホロヴィッツの生演奏に接して、ピアノの道に進むきっかけになったようです。仲道郁代さんのピアニストとしての原点はシューマンだったのですね。シューマニアーナのsaraiとしてもこれは感慨深いです。


今日のプログラムは以下です。

 ベートーヴェン:

  ピアノ・ソナタ 第8番 ハ短調 Op.13「悲愴」
  ピアノ・ソナタ 第26番 変ホ長調 Op.81a「告別」
  ピアノ・ソナタ 第14番 嬰ハ短調 Op.27-2「月光」

   《休憩》

 シューマン:

  アラベスク Op.18
  アベック変奏曲 Op.1
  謝肉祭 Op.9

   《アンコール》

    シューマン:トロイメライ
    エルガー:愛の挨拶 Op.12


最後に予習について触れておきます。

最後に予習について、まとめておきます。

ベートーヴェンのピアノ・ソナタを予習したCDは以下です。

 エミール・ギレリス
  ピアノ・ソナタ 第8番「悲愴」 1980年9月 ベルリン、イエス・キリスト教会 セッション録音
  ピアノ・ソナタ 第26番「告別」 1974年12月 ベルリン、イエス・キリスト教会 セッション録音
  ピアノ・ソナタ 第14番「月光」 1980年9月 ベルリン、イエス・キリスト教会 セッション録音
  
いやはや、ギレリスの残したベートーヴェンのピアノ・ソナタの録音はどの曲も最高峰のレベルです。全曲録音を完成する前に亡くなったことは残念でたまりません。


シューマンを予習したCDは以下です。

 田部京子
  アラベスク 2007年12月5日 浜離宮朝日ホール ライヴ録音
  謝肉祭 2007年12月5日 浜離宮朝日ホール ライヴ録音

 クララ・ハスキル
  アベック変奏曲 1951年6月4日 アムステルダム スタジオ録音

田部京子のシューマンは素晴らしい! 特に謝肉祭は史上最高の名演です。これ以上の演奏は聴いたことがありません。
そして、シューマンを弾かせたら、クララ・ハスキルに優るものはありません。このアベック変奏曲は彼女が得意にしていたもので、何種類も録音が残っていますが、このスタジオ録音は音質もよく、最高の演奏です。シューマンの他の曲は子供の情景、森の情景、色とりどりの小品、そして、ピアノ協奏曲だけの録音が残るのみですが、いずれも素晴らしい演奏です。



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シューマンの超名演を堪能:アポロン・ミューザゲート・クァルテット@鶴見サルビアホール 2019.6.6

前半のシューベルト2曲も見事な演奏でしたが、後半のプログラムのシューマンはとても素晴らしい演奏。
シューマンは弦楽四重奏曲を3曲書いていますが、すべて、1842年、いわゆる、シューマンの室内楽の年に書きました。ピアノの絡む室内楽と同じ年です。シューマンの弦楽四重奏曲はあまりちゃんと聴いていませんでしたが、これほど素晴らしいとはこれまで気が付かなくて迂闊でした。
第1楽章の冒頭のロマンあふれる美しいメロディーからすっかりと魅了されます。アポロン・ミューザゲート・クァルテットの響きの美しさは格別です。第1楽章の後半の展開部と思われる部分の熱い響きも圧巻です。第2楽章はメンデルスゾーンを思わせる瑞々しい音楽が清涼感を沸き立たせます。これぞロマン派という感じです。しかし、本当に素晴らしかったのは、第3楽章からです。第3楽章は内省的な音楽が心に沁み込んできます。シューマンの高貴な精神性に深い感銘を覚えます。アポロン・ミューザゲート・クァルテットの美しい響きと高い音楽性によって、シューマンの名曲が強く心に刻み込まれます。この素晴らしい内省的な音楽にいつまでも浸っていたい思いにかられますが、意外に早く終わってしまって、少し残念。続く第4楽章は細かい音符の音楽が4つの楽器で繰り返し奏でられます。そのロマンに満ちた軽やかさは心を浮き立たせます。アポロン・ミューザゲート・クァルテットの各奏者の演奏能力の高さに舌を巻く思いです。そして、高らかに高揚したフィナーレ。物凄いシューマンでした。

アンコール曲はアルゼンチンの伝説的なタンゴ奏者のオスバルド・フレセドが作ったタンゴをこれ以上はないという美しさで演奏してくれました。sarai的には、シューマンかシューベルトのほうがよかったのですが、それでも美しいアンサンブルを楽しめました。


今日のプログラムは以下です。

  弦楽四重奏:アポロン・ミューザゲート・クァルテット
    パヴェル・ザレイスキvn バルトシュ・ザフウォトvn ピョトル・シュミエウva ピョトル・スクイヴェレスvc

  シューベルト:弦楽四重奏曲 第4番 ハ長調 D.46
  シューベルト:弦楽四重奏曲 第9番 ト短調 D.173

   《休憩》

  シューマン:弦楽四重奏曲 第1番 イ短調 Op.41-1

   《アンコール》
    オスバルド・フレセドOSVALDO FRESEDO:ビダ・ミーアVIDA MIA

最後に予習について触れておきます。

最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のシューベルトの弦楽四重奏曲 第4番を予習したCDは以下です。

 ウィーン・コンツェルトハウス弦楽四重奏団 1952年 ウィーン、コンツェルトハウス、モーツアルトザール モノラル
 メロス弦楽四重奏団 1972年5月 シュトゥットガルト、モーツァルトザール
 コダーイ・カルテット 2000年12月 ブダペスト、ウニタリアン教会
 
メロス弦楽四重奏団が素晴らしい演奏です。決定盤だったウィーン・コンツェルトハウス弦楽四重奏団を上回る演奏に驚かされました。


2曲目のシューベルトの弦楽四重奏曲 第9番を予習したCDは以下です。

 ウィーン・コンツェルトハウス弦楽四重奏団 1953年 ウィーン、コンツェルトハウス、モーツアルトザール モノラル
 メロス弦楽四重奏団 1975年3月 シュトゥットガルト、モーツァルトザール
 キアロスクーロ四重奏団 2017年3月 ケルン、ドイッチュラントフンク・カンマームジークザール

これも同様にメロス弦楽四重奏団が素晴らしい演奏です。シューベルトの全集はこれを聴いていれば十分でしょう。


3曲目のシューマンの弦楽四重奏曲 第1番を予習したCDは以下です。

 メロス弦楽四重奏団 1987年6月 バンベルク、ツェントラルザール


メロス弦楽四重奏団の演奏はシューベルトの全集をさらに超える名演です。うっとりと聴き惚れました。



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素晴らしきマニフィカト バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル 2019.6.2

いつ聴いても名人たちのパーフェクトな演奏のバッハ・コレギウム・ジャパン(以下、BCJと略します)。今日の演奏もどこをとっても最高でした。こういうオリジナル奏法による古楽の最高の演奏がここ日本で聴けるのは何と幸せなことでしょう。冒頭のBCJの若き継承者の鈴木優人氏のスピーチでBCJの本分はバッハのカンタータ演奏であることが告げられました。そうだったんですね。今日でBCJの教会カンタータを聴くのは2回目ですが、今後、せっせと聴かせてもらいましょう。

そうそう、今日はBCJの主宰者の鈴木雅明氏はオルガン演奏にまわり、指揮は息子さんの優人氏。BCJも新時代を迎えつつあり、ますますの発展です。それでも鈴木雅明はオルガンを弾きながら、弾き振りの雰囲気。まだまだ、健在ぶりを見せていました。

プログラム前半の鈴木雅明によるオルガン独奏はブクステフーデの《第一旋法によるマニフィカト》では、その多彩な響きに魅了され、バッハのプレリュードとフーガ BWV 545では、中間に挟まれたBWV 529のトリオの清澄な演奏のあまりの抒情性に金縛りになります。オルガニスト、鈴木雅明の素晴らしさを実感できました。

プログラム前半のシメはカンタータ第147番《心と口と行いと生活が》。有名な「主よ、人の望みの喜びよ」のコラールで有名な作品です。「マリアのエリザベト訪問の祝日」の礼拝のために書かれた作品です。バッハの時代には「マリアのエリザベト訪問の祝日」は7月2日でしたが、現在は5月31日です。つまり、一昨日です。因みにエリザベトを訪問したマリアはマニフィカトを歌って主を賛美します。今日のコンサートの初めと終わりに演奏されるのはマニフィカト。つまり、マリアが歌った讃美歌マニフィカトがもとになった曲ですね。今日のコンサートのテーマは《マリアの頌歌》です。
今日の演奏は第1曲の合唱「心と口と行いと生活で」がジャン=フランソワ・マドゥフのナチュラルトランペットの晴れやかな響きを加えたBCJの見事な演奏で素晴らしいスタート。第5曲のソプラノのアリア「イエスよ、道をつくり給え」では、若松夏美の美し過ぎるヴァイオリンのオブリガートに聴き入ってしまいます。彼女はまさに名人・達人の境地です。そして、第6曲と第10曲はコラール「主よ、人の望みの喜びよ」です(歌詞は異なります。題名の「主よ、人の望みの喜びよ」は英語の歌詞に基づくものです。)。有名過ぎる旋律にうっとりと聴き入りました。全体として、期待以上の演奏でした。

後半のプログラムはカンタータ第37番《信じて洗礼を受ける者》で始まります。このカンタータは復活祭後40日目、六週目の木曜日の『昇天節』のために書かれたものです。つまり、先週の木曜日が今年の『昇天節』でした。3日前ですね。
第2曲のテノールアリアは、ソロヴァイオリンのパート譜が失われているため、演奏する際は復元されたパート譜を用いますが、BCJはまだ10代だった鈴木優人が書いたものを使っているそうです。このヴァイオリンソロも若松夏美の名人技が光ります。終曲のコラールはまさにBCJの素晴らしさを再認識させてくれるようなものです。まるでマタイ受難曲のコラールを聴くような気持ちになりました。

最後は期待していたバッハのマニフィカト BWV 243。これは圧巻の演奏でした。合唱5部(ソプラノが2つに分かれる)、トランペット3、ティンパニ1、フラウト・トラヴェルソ2、オーボエ/オーボエダモーレ/オーボエ ダ カッチャ2、弦楽、通奏低音、独唱5というBCJの総力を挙げた演奏でしたが、若きマエストロ鈴木 優人のポイントを押さえた指揮、オルガンのポジションで睨みを利かせた鈴木雅明、貫禄のコンサートマスター若松夏美が素晴らしい演奏に導きました。
冒頭合唱《マニフィカト》はトランペットが高らかに鳴り響き、華やかな開幕です。
第2曲のソプラノアリア《わたしの霊は喜び讃えました》は美しい弦のアンサンブルとソプラノのクリステン・ウィットマーの抑えた歌唱で落ち着いた演奏。
第3曲のソプラノアリア《彼はその下女の卑しさにも》は三宮正満のオーボエ・ダモーレの素晴らしいオブリガートが鳴り響き、ソプラノの松井 亜希の心の込められた歌唱がしみじみと心に沁みます。松井 亜希の最高の名唱にしびれました。
次の第4曲は5声の合唱《全ての世代の人々は》が圧倒的な響きです。
第5曲のバスのアリオーソ《力ある方が私に大きなことをなさいました》は通奏低音は素晴らしい響きで支えた演奏。
第6曲のアルト(カウンターテナー)とテノールの二重唱《その憐れみは子孫から子孫たちへ》は、弦とフラウト・トラヴェルソの美しい響きに支えられて、しみじみとした歌唱が続きます。
第7曲の合唱《主はその腕で力を振るい》は圧倒的な響きです。
第8曲のテノールアリア《傲慢な者たちを打ち散らしました》は下降音型と上昇音型が印象的に響くテノールの櫻田 亮の強い歌唱が見事です。
第9曲のアルト(カウンターテナー)のアリア《飢えた者たちを良い物で満たし》はカウンターテナーのテリー・ウェイの美声が響き、菅きよみのフラウト・トラヴェルソがいつもの美しい音色を聴かせてくれます。
第10曲のアルト(カウンターテナー)とソプラノ二人の3重唱《イスラエルを受け入れて》はオーボエのユニゾンの持続音が加わって、まるで女声の4重唱を聴いているような雰囲気の極上の美しさ。
第11曲の合唱《我々の父祖たちに語ったように》は通奏低音に支えられた5部合唱が見事なフーガを聴かせてくれます。
さあ、終曲の合唱《グローリア》です。力強さよりも響きの美しさが印象的です。最後は全部のパートが加わり、圧巻のフィナーレ。マリアの祝祭にふさわしく華やかに締めくくりました。

実はバッハのマニフィカトを聴くのは初めてですが、素晴らしい演奏に出会えて、幸せです。大きな感銘を受けました。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:鈴木 優人
  ソプラノ: 松井 亜希、クリステン・ウィットマー
  アルト: テリー・ウェイ
  テノール: 櫻田 亮
  バス: 加耒 徹
  オルガン独奏:鈴木 雅明*
  トランペット:ジャン=フランソワ・マドゥフ

  合唱・管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン
   コンサート・マスター:若松夏美
   フラウト・トラヴェルソ:菅きよみ
   オーボエ/オーボエダモーレ/オーボエ ダ カッチャ:三宮正満
   チェロ:山本徹
   オルガン:鈴木 雅明

  ブクステフーデ:第一旋法によるマニフィカト BuxWV 203*
  J. S. バッハ:プレリュード、トリオとフーガ ハ長調 BWV 545(およびBWV 529/2)*
  J. S. バッハ:カンタータ第147番《心と口と行いと生活が》BWV 147

   《休憩》

  J. S. バッハ:カンタータ第37番《信じて洗礼を受ける者》 BWV 37
  J. S. バッハ:マニフィカト ニ長調 BWV 243

最後に予習ですが、ブクステフーデの《第一旋法によるマニフィカト》は鈴木雅明のオルガン、バッハのプレリュードとフーガ BWV 545(およびBWV 529/2)はトン・コープマンのオルガンで聴きました。いずれも満足すべき素晴らしい演奏。
バッハのカンタータ2曲(BWV 147、BWV 37)は鈴木雅明指揮のBCJの演奏を聴きました。これも素晴らしい演奏です。
バッハのマニフィカトはカール・リヒター指揮ミュンヘン・バッハ管弦楽団&合唱団を聴きました。これは決定盤でしょう。とりわけ、アルトのヘルタ・テッパーの美声にほれぼれとしました。マタイ受難曲と並ぶ名演です。



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       バッハ・コレギウム・ジャパン,  

素晴らしいバルトーク:アルカディア・クァルテット@鶴見サルビアホール 2019.5.29

前半のベートーヴェン2曲もなかなか聴きごたえがありました。特に第10番《ハープ》の第3楽章、第4楽章は力強い演奏で見事でした。第4楽章の分裂症気味とも思える難しい音楽をさばききったのには感心しました。
しかし、圧巻だったのは後半のプログラムのバルトークです。第4番は第3番と並んで、最もバルトークの真骨頂とも思える傑作ですが、なかなか実演で聴く機会に恵まれません。今日は素晴らしい演奏でした。第3楽章までは今一つの感でしたが、第4楽章の多彩なピチカート奏法の見事なこと! この楽章は聴くだけでなく、見ていても楽しくなります。第5楽章はこのカルテットの持つパワフルさが遺憾なく発揮されて、白熱した演奏になります。これぞ、バルトークっていう感じで気持ちよく終わりました。ところで今回の来日では第1ヴァイオリンが産後の体調不良ということで代役でしたが、本来のメンバーだったら、どんなバルトークになったでしょう。CHANDOSからバルトーク全集を出しているくらいですから、さらに素晴らしい演奏が期待できそうですね。今後の再来日を期待しましょう。


今日のプログラムは以下です。

  弦楽四重奏:アルカディア・クァルテット
    セバスティアン・テグゼジューvn レスヴァン・ドゥミトルvn トライアン・ボアラva ツォルト・トロークvc

  ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第2番 ト長調 Op.18-2
  ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第10番 変ホ長調 Op.74《ハープ》

   《休憩》

  バルトーク:弦楽四重奏曲 第4番 Sz.91

   《アンコール》
    ラズヴァン・メテア:バガテル

最後に予習について触れておきます。

最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のベートーヴェンの弦楽四重奏曲 第2番を予習したCDは以下です。

 アマデウス弦楽四重奏団 1961年9月 ハノーファー、ベートーヴェンザール
 
期待通りの美しい演奏で満足して聴きました。


2曲目のベートーヴェンの弦楽四重奏曲 第10番は思い違いで予習し損ねました。もっとも熟知している曲ですから問題ありません。


3曲目のバルトークの弦楽四重奏曲 第4番を予習したのは以下の3枚のLPと1枚のCDです。

 ハンガリー四重奏団(1961年) LP
 ジュリアード四重奏団(2回目録音、1963年) LP
 バルトーク四重奏団(1966年) LP
 エマーソン・カルテット(1988年) CD

LPの3枚は思い入れがあって、最近収集したLPですから、どれも素晴らしい演奏です。とりわけ、ジュリアード四重奏団はこの曲を初めて聴き、馴染んだ演奏なので、懐かしく聴きました。バルトーク四重奏団はジュリアード四重奏団以上に迫力のある演奏に驚かされます。CDのエマーソン・カルテットは完璧な演奏で、その美しい演奏に魅了されました。今のところ、これが最高の演奏です。



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美しきヴィニツカヤの飛翔・・・リットン&東京都交響楽団@東京文化会館大ホール 2019.5.28

難曲のプロコフィエフのピアノ協奏曲第2番を完璧に弾きこなすヴィニツカヤにとって、ピアノ協奏曲第3番を弾くのはたやすそうにさえ見えてしまいます。切れのよさ、響きの美しさ、ダイナミクス、どれをとっても、そのピアニズムは見事としか言えません。そして、何と彼女は笑みを浮かべて、実に楽しそうに弾いています。超絶的なフレーズを弾いている間中、ずっとそうです。第1楽章の冒頭の早く細かいフレーズの見事な指さばき、そして、中盤以降で低音部をがんがん叩くときの爆発的な推進力、このあたりは他のピアニストでも魅せられるところではありますが、ヴィニツカヤの場合は他のピアニストとは次元が違うとしか言いようがありません。アルゲリッチやユジャ・ワンと比べてもそのレベルの高さは歴然としています。恐るべきピアニズムです。それにピアノを弾いている彼女の横顔の美しいこと! 音楽とは直接は関係ありませんが、美しくて悪いわけありませんね。第2楽章にはいると、抒情的というか、幻想的というか、何とも心に沁みてくるメロディーが流れ始めますが、ここでも彼女は音楽性の高さを示します。彼女は単なる超絶技巧の持ち主に留まらず、深い音楽性も持っています。ピアノのタッチが深く、スケール感のあるピアノも聴かせてくれます。第3楽章は圧巻の盛り上がり。それにオーケストラのトゥッティの上にピアノで旋律を重ねる部分では驚異的に美しい音楽も奏でてくれました。うーん、大満足!

後半のプログラムのチャイコフスキーはなかなか微妙なところ。問題は第1楽章。久しぶりに聴く都響のアンサンブルは以前にも増して、素晴らしい響きです。今日の都響は2枚看板のコンサートマスターの四方恭子と矢部達哉のダブルコンマスですからね。弦が素晴らしいのは当然として、今日は金管が絶好調で鳴り響いています。日本のオーケストラでこれほどの金管の響きを聴いた覚えがないほどです。じゃあ、素晴らしい音楽だったかと言うと、そこが問題。チャイコフスキーの音楽のロシアの憂愁、すなわち、やるせなさが感じられません。それにこの曲ではマーラー的な複数声部が有機的に絡み合った重層的な構造の音楽が聴きたいところですが、各声部は美しくても有機的な結合はあまり感じられません。これって、予習で聴いた天下の大名演とも言えるバーンスタイン指揮の演奏が凄過ぎて、それが耳に残っているせいかもしれませんけどね。それにしても、今日の演奏を聴いて、それは違うだろうと頭のどこかがささやき続けています。繰り返して言いますが、今日の演奏はとても美しかったんです。その上で何かが違うんです。ところが、第2楽章にはいり、楽章の後半になると、音楽が頭にすっとはいってくるようになります。うーん、心に感じるものがあります。なかなか素晴らしいのではないかと感じ方が変わってきます。第3楽章は文句なしに弦のピチカートが素晴らしくて、ますます、音楽的な調和に満ちてきます。第4楽章、これは素晴らしい。冒頭の爆発的な祝祭音楽が響き渡り、なかなかの高揚感です。素晴らしい演奏に聴き入っているうちに、やがて、コーダに突入します。凄い突進力です。アンサンブルも見事で最高の響きです。コーダの最後でぐっと一段テンポを上げて、白熱のフィナーレ。凄い高揚感ですが、やはり、第1楽章のことが頭から離れず、微妙な満足感。終わりよければ、すべて良しの気分には正直なれませんでした。それでも久しぶりに聴いた都響の素晴らしい合奏力には脱帽です。指揮者次第ではやはり、日本最強のオーケストラかもしれませんね。アンドリュー・リットンの指揮もよかったのですが、あのバーンスタインのスコアの深い読み方と比べてしまうと、厳しいところがあります。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:アンドリュー・リットン
  ピアノ:アンナ・ヴィニツカヤ
  管弦楽:東京都交響楽団  コンサートマスター:四方恭子

  バーバー:管弦楽のためのエッセイ第2番 Op.17
  プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番 ハ長調 Op.26
《アンコール》 チャイコフスキー: 「四季」より、3月 ひばりの歌 アンダンティーノ・エスプレッシーヴォ ト短調

   《休憩》

  チャイコフスキー:交響曲第4番 ヘ短調 Op.36


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のバーバーの管弦楽のためのエッセイ第2番を予習したCDは以下です。

 マリン・オールソップ指揮ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団 2004年
 
女性指揮者のマリン・オールソップの演奏は初めて聴きましたが、バーバーのあまり演奏されない曲を集めたCDアルバムは貴重であるばかりでなく、美しい演奏を聴かせてくれます。


2曲目のプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番を予習したCDは以下です。

 ミハイル・プレトニョフ、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ指揮ロシア・ナショナル管弦楽団 2002年9月 モスクワ、国立音楽院大ホール

プレトニョフにとって、ドイツ・グラモフォンへの初めての協奏曲録音となったアルバムですが、プレトニョフは落ち着いた演奏で実に知的なアプローチをしています。このスリリングな曲にしては、ちょっと物足りないところもあります。


3曲目のチャイコフスキーの交響曲第4番を予習したDVDは以下です。

 レナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィル 1975年4月22~24日、エイヴリー・フィッシャー・ホール(リンカーン・センター) ライヴ収録 DVD

バーンスタインはチャイコフスキーを若い頃から得意としていて、晩年の録音もあります。このDVDを見ると、まだ若々しいバーンスタインの姿で、実に熱い指揮です。まるでマーラーを振っているような感じです。演奏はこれがチャイコフスキーの交響曲第4番の真の姿と思わせるような深い解釈のもと、ニューヨーク・フィルを鼓舞しながら、最高の演奏を聴かせてくれます。これこそ、天下の大名演と言えるでしょう。saraiは子供の頃からバーンスタインのファンでしたが、またまた、バーンスタインに魅了されました。これから、バーンスタインの演奏をまた聴いてみたくなりました。



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       ヴィニツカヤ,  

これがショスタコーヴィチの5番か!驚きの演奏・・・ノット&東京交響楽団@サントリーホール 2019.5.25

こんなに立て続けに凄い演奏を聴かせられると、もはや、何の感想も書き得ません。ジョナサン・ノット、それに東京交響楽団の演奏は今、まさに旬の時を迎えているようです。どんなショスタコーヴィチの演奏を聴かせてくれるか、期待していましたが、まさか、これほどとはね・・・(絶句)。ショスタコーヴィチの交響曲第5番と言えば、有名なヴォルコフの「ショスタコーヴィチの証言」以来、その音楽的解釈が問題になってきました。今回もsaraiはその線でどんな解釈での演奏になるのか、いろいろと想像していました。で、実際の演奏と言えば、そんなsaraiの浅知恵を嘲笑うようなもので、そもそも音楽と言うものは、決して文学的解釈の上にたつものではなく、音楽自体が自律性を持って、その芸術的な美を追求するものだということをまざまざと知らしめてくれるようなものでした。ですから、言葉で何を書き連ねても野暮にしかならないということです。音楽それ自体の“美”がすべてだということを思い知らせてくれるような演奏でした。とりわけ、第3楽章の静謐の美、そして、第3楽章の終盤の高潮には耐え切れないほどの緊張と感動を与えられました。息つく間もなく始まった第4楽章の白熱した演奏の連続には身を固くして聴き入るのみ。コーダの高揚感は何にも例えられない素晴らしさ。最後は音楽と一体化した自分がいました。圧巻のショスタコーヴィチでした。

それにしても、ノットが振ると、どうしてこんなに東響が素晴らしい響きで鳴るんでしょう。まるで音楽の神ミューズが舞い降りてきたかのようです。特に弦楽パートの凄絶さは驚異的としか言いようがありません。マーラーのように弦楽パートを細かく分割した、このショスタコーヴィチの交響曲を聴いていると、弦楽奏者、一人一人の力量がどれほど凄いかがよく分かります。東響の弦楽奏者たちは名人揃いだと断じましょう。その名人たちがノットの指揮棒によって、魔法にかかったように驚異の演奏を繰り広げます。金管のささいなミスがありましたが、それが大局に与える影響は皆無。弦楽パートの凄まじさ、そして、フルートを始めとした木管の美しい音色によって、究極のショスタコーヴィチの演奏になりました。

先週のベートーヴェンの交響曲第7番に続くノット&東響の会心の演奏でした。今後、このコンビはさらに精緻を極めた演奏に突き進むでしょうが、現在の勢いは素晴らしく、あえて、旬の時を迎えたと表現しておきましょう。こんな聴き逃せないような演奏が続くのに、満席にならないのは不思議としか言えません。音楽ファンはすべからく、ノット&東響の演奏会場に駆けつけるべし!!

おっと、前半のブリテンのヴァイオリン協奏曲に触れるのを忘れていました。ダニエル・ホープのヴァイオリンはこれまで聴く機会がなくて、初聴きです。素晴らしい音色で安定した演奏でした。ブリテンのスペイン内戦への思いに満ちた美しい音楽を見事に奏でてくれました。彼も要チェックのヴァイオリニストですね。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:ジョナサン・ノット
  ヴァイオリン:ダニエル・ホープ
  管弦楽:東京交響楽団  コンサートマスター:水谷晃

  ブリテン:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 op.15
《アンコール》 シュルホフ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタから、第2楽章 

   《休憩》

  ショスタコーヴィチ:交響曲 第5番 ニ短調 op.47


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のブリテンのヴァイオリン協奏曲を予習したCDは以下です。

 フランク・ペーター・ツィンマーマン、マンフレート・ホーネック指揮スウェーデン放送交響楽団 2007年
 
ツィンマーマンの美しいヴァイオリンの響きがすべてです。CDに一緒にはいっているシマノフスキの2曲のヴァイオリン協奏曲も見事な演奏です。そう言えば、最近、ツィンマーマンの実演を聴いていません。そろそろ聴きたいですね。


2曲目のショスタコーヴィチの交響曲第5番を予習したCDは以下です。

 ベルナルト・ハイティンク指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 1981年5月

バーンスタインやムラヴィンスキーの直線的で劇的な演奏の対極にあるような演奏。スローなテンポには驚かされますが、このテンポが重要です。外面的な派手さを避けて、音楽に秘められた作曲家の内面に迫るような知的なアプローチ。とても音楽的に美しい演奏です。コンセルトヘボウ管弦楽団の響きの厚さと美しさも最高です。この曲を聴き込んだ人にお勧めしたい隠れた名盤です。



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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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DCHは私も毎週末、楽しみに聞いています。
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03/01 19:22 aokazuya

金婚式、おめでとうございます!!!
大学入学直後からの長いお付き合い、素晴らしい伴侶に巡り逢われて、幸せな人生ですね!
京都には年に2回もお越しでも、青春を過ごし

10/07 08:57 堀内えり

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08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子
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