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田部京子の心に沁みるシューマン!!ジルヴェスターコンサート@横浜みなとみらいホール 2019.12.31

大晦日は恒例のジルヴェスターコンサート@みなとみらいホールで年越しです。saraiと配偶者、娘夫婦の4人です。
イタリアン・レストランでグルメなディナーをいただいた後、みなとみらいホールに移動。
みなとみらいホールのジルヴェスターコンサートは今年で第21回目。そして、saraiがジルヴェスターコンサートに通うのもこれで21回。全部聴いてます。

今回のプログラムは以下です。

《第1部》

池辺晋一郎:ヨコハマ・ファンファーレ
J. S. バッハ/池辺晋一郎:幻想曲とフーガ ト短調 BWV542より「幻想曲」(映画『劔岳 点の記』)
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲ホ短調Op.64より第3楽章 ヴァイオリン:荒井里桜
シューマン:ピアノ協奏曲イ短調Op.54より第1楽章 ピアノ:田部京子
ヴェルディ:『仮面舞踏会』より「永久に君を失えば」 テノール:城 宏憲
マルチェッロ:オーボエ協奏曲ニ短調より第2楽章、第3楽章 オーボエ:浅間信慶
L.モーツァルト:カッサシオン『おもちゃの交響曲』ト長調より第1楽章
マーラー:交響曲第4番より第4楽章 ソプラノ:中嶋彰子

《休憩》

《第2部》

イベール:フルート協奏曲より第3楽章 フルート:上野由恵
ヴィエルヌ:ウェストミンスターの鐘 オルガン:浅井美紀
プッチーニ:歌劇『トスカ』より「星は光りぬ」 テノール:城 宏憲
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.61より第3楽章 ヴァイオリン:徳永二男
【カウントダウン曲】チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調Op.64より第4楽章
バーンスタイン:ミュージカル『ウェスト・サイド・ストーリー』より「トゥナイト」 ソプラノ:中嶋彰子 テノール:城 宏憲
スッペ:喜歌劇『ボッカチオ』より「恋はやさし野辺の花よ」 ソプラノ:中嶋彰子
スッペ:喜歌劇『詩人と農夫』序曲
ヨハン・シュトラウス1世:ラデツキー行進曲

【出 演】

音楽監督:池辺晋一郎、飯森範親(Cond)、徳永二男(エグゼクティブ・ディレクター/Vn)、朝岡聡(MC)
横浜みなとみらいホール ジルヴェスターオーケストラ(コンサートマスター:会田莉凡、犬伏亜里、扇谷泰朋、神谷未穂、藤原浜雄)
ピアノ:田部京子
ヴァイオリン:荒井里桜
フルート:上野由恵
ソプラノ:中嶋彰子
テノール:城 宏憲
オーボエ:浅間信慶
オルガン:浅井美紀

今回のジルヴェスターコンサートは昨年同様、最前列の中央の席で聴きました。とってもよく響く最高の席でした。オーケストラが後方の席でどれほど響いていたかはよく分かりません。
ジルヴェスターコンサートはお祭りのようなガラコンサートですが、簡単に印象をまとめておきましょう。

まずはお祭りの雰囲気からは一人隔絶した感のある演奏を聴かせてくれた田部京子への賛称です。今年、彼女の演奏を聴くのは4回目。すべてのコンサートで素晴らしいシューマンを聴かせてくれましたが、今回も例外ではありませんでした。シューマンのピアノ協奏曲の第1楽章、冒頭はちょっと固い印象もありましたが、次第にピアノの鍵盤から詩情が漂ってきます。とりわけ、経過部でのクラリネットと絡む部分でのしみじみとしたロマンの香りに深い感動を覚えました。第1楽章だけの演奏ではありましたが、初めて聴く田部京子のシューマンのピアノ協奏曲は深い味わいに満ちていて、素晴らしい演奏でした。これが聴けただけでも今日のジルヴェスターコンサートに足を運んだ甲斐がありました。

さて、コンサートの冒頭に戻りましょう。
みなとみらいホール館長の池辺晋一郎によって、このジルヴェスターコンサートのために書かれたヨコハマ・ファンファーレで華やかに開幕。耳慣れしてきたこのファンファーレも耳に心地よく響きます。金管奏者たちの演奏も見事に響き渡りました。

続いて、同じく池辺晋一郎がオーケストラ曲に編曲したバッハのオルガン曲です。バッハの幻想曲らしく、豪快な響きですが、やはり、オーケストラの演奏は少々違和感があります。

次はメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲。若手のヴァイオリニストが元気よく弾くのを聴くのは気分がよいものです。これからの活躍を期待しましょう。
 予習 アンネ・ゾフィー・ムター、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィル 1980年 セッション録音

次は前述の田部京子のシューマンのピアノ協奏曲。繰り返しますが、素晴らしい演奏でした。
 予習 マリア・ジョアン・ピリス、クラウディオ・アバド指揮ヨーロッパ室内管弦楽団 1997年9月、ベルリン、イエス・キリスト教会 セッション録音

次はテノールの城 宏憲によるヴェルディのアリア。誠実な歌唱に好感を持ちました。

次はマルチェッロのオーボエ協奏曲。小編成のオーケストラをバックに心地よいオーボエの響きが流れます。ロマンティックなバロックの精華です。
 予習 ハインツ・ホリガー、イ・ムジチ合奏団 1986年 セッション録音

次は『おもちゃの交響曲』。今日の独奏者たちがおもちゃの楽器を持って、楽しい演奏。一流の音楽家はおもちゃの楽器さえ自在に演奏します。

第1部の最後はマーラーの交響曲第4番。第4楽章のオーケストラ伴奏歌曲「天上の生活」です。ソプラノの中嶋彰子の独唱ですが、ちょっと彼女の声質とは合わない感じです。よい歌唱ではあったんですが・・・。

 予習 オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団、エリーザベト・シュヴァルツコップ 1961年 セッション録音


ここで休憩です。

休憩が終わり、第2部がスタートします。
イベールのフルート協奏曲です。フルート独奏の上野由恵はこの超難曲を見事に弾きこなし、大変な好演でした。

 予習 エマニュエル・パユ、デイヴィッド・ジンマン指揮チューリヒ・トーンハレ管弦楽団 2002年 セッション録音

次はヴィエルヌの「ウェストミンスターの鐘」。オルガン独奏です。ウェストミンスター寺院の時計台『ビッグ・ベン』の午後1時の時報の鐘の音がもとになった曲です。学校で始業のチャイムがこの「ウェストミンスターの鐘」をもとにしていたとは知りませんでした。

次はテノールの城 宏憲によるプッチーニの有名アリア。素晴らしい歌唱でした。

次はベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲です。第3楽章が徳永二男のヴァイオリンで演奏されます。さすがにこの曲はちょっと演奏が難しかった印象です。
 予習 アンネ・ゾフィー・ムター、クルト・マズア指揮ニューヨーク・フィル 2002年5月 セッション録音

いよいよ、カウントダウン曲のチャイコフスキーの交響曲第5番の第4楽章です。今年もカウントダウンはきっちり見事に成功!! 最後のバンという響きとともにぴったり新年を迎えました。いやはや、飯森範親の指揮は見事の一語。こんなに失敗なしにカウントダウンできることは驚異的です。やんやの喝采とともにハッピー・ニュー・イヤー!
 予習 レナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィル 1988年 ライブ録音

新年に聴く最初の音楽はバーンスタインのミュージカル『ウェスト・サイド・ストーリー』より「トゥナイト」です。熱いラブソングで気持ちが高揚しました。

次はスッペの喜歌劇『ボッカチオ』より「恋はやさし野辺の花よ」です。ソプラノの中嶋彰子の日本語歌詞での美しい歌唱にうっとりしました。ウィーンのフォルクスオーパーの専属歌手で活躍した実力を遺憾なく発揮してくれました。

最後はスッペの喜歌劇『詩人と農夫』序曲です。華やかな演奏で締めます。

最後のおまけは例年通り、ラデツキー行進曲を手拍子してコンサート完了。

今年も音楽で新年が始まりました。また、音楽聴きまくりの1年になりそうです。


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テーマ : クラシック
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       田部京子,  

saraiの音楽総決算2019:オーケストラ・声楽曲編、そして、今年の大賞は?

今年の音楽の総決算もいよいよ最後になりました。そして、ブログも今年の書き納めです。

今回はオーケストラ・声楽曲編です。
このジャンルは今年もたくさんのコンサートを聴きました。素晴らしい演奏が多過ぎて、選定が難航しました。オーケストラ曲と声楽曲を比較するのは難しいので、今年もオーケストラ曲と声楽曲に分けて、ベスト10を選定することにしました。

ちなみに昨年の結果はここです。


まず、声楽曲のベスト10は以下です。今年は《グレの歌》と中村恵理に酔った1年でした。

1位 ジョナサン・ノット&東京交響楽団、2度目の《グレの歌》はさらに素晴らしい出来!@サントリーホール 2019.10.6

2位 バルトリとクルレンツィス、世紀の共演@ルツェルン音楽祭 2019.9.13

3位 究極のメサイア・・・ウィリアム・クリスティ&レザール・フロリサン@東京オペラシティコンサートホール 2019.10.14

4位 中村恵理の絶唱に感動!@川口リリアホール 2019.11.30

5位 聖金曜日の感動のマタイ受難曲、再び バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル 2019.4.19

6位 グレの歌 藤村実穂子の絶唱に感動! 大野和士&東京都交響楽団@東京文化会館 2019.4.14

7位 グレの歌に酔う カンブルラン&読売日本交響楽団@サントリーホール 2019.3.14

8位 中村恵理、最高のR.シュトラウスを歌う @Bunkamuraオーチャードホール 2019.5.6

9位 妙なる響きの教会カンタータに感動 バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル 2019.3.3


10位 ヴェルディのレクイエム 魂の演奏 ヴィオッティ&東響@サントリーホール 2019.1.12

次点 知性的で演劇的な歌唱で魅了:ボストリッジ リートの森@トッパンホール 2019.1.22


ジョナサン・ノットの2回の演奏は究極の《グレの歌》を聴かせてくれました。これ以上の演奏はあり得ないでしょう。ジョナサン・ノットは流石の音楽作り。指揮もキャスティングも最高でした。こんな《グレの歌》はもう生涯聴くことができないほどの素晴らしさでした。

チェチーリア・バルトリとクルレンツィスの初共演でした。歴史に残る公演に立ち会えただけでも嬉しく思いましたが、その演奏たるや、驚異的なものでした。

ウィリアム・クリスティ&レザール・フロリサンは今年創立40周年とのことですが、まさに旬の時を迎えているようです。ハレルヤコーラスとアーメンコーラスの素晴らしさはもちろん、アリアや管弦楽合奏はそれ以上の音楽内容で、長大なオラトリオのすべてが最高の演奏ばかりでした。メサイアの本質的なところを表現し尽くした名演でした。

中村恵理のソプラノの美声にはまっています。オペラのアリアから歌曲まで何でも素晴らしい。彼女の公演はほぼカバーしました。来年も楽しみでたまりません。(4位と8位)

日本にいてこそ聴けるのがバッハ・コレギウム・ジャパン。聖金曜日に毎年、素晴らしいマタイ受難曲が聴けるのは無上の喜びです。そして、バッハのカンタータも素晴らしかったです。ランクに入れなかったマニフィカトも大変、感銘を受けました。来年はBCJ創立30周年でバッハの3大宗教曲が聴けるのが楽しみです。(5位と9位)

ジョナサン・ノット&東京交響楽団の2回の《グレの歌》以外にも、都響と読響でも素晴らしい《グレの歌》が聴けた嬉しい年でした。森鳩の歌を歌った藤村実穂子のパーフェクトで気魄あふれる歌唱には絶句してしまいました。カンブルランの《グレの歌》は読響の常任指揮者としての最後のサントリー定期でした。カンブルランも思い入れのある公演だったのでしょう。大編成のオーケストラ、合唱団を見事にドライブした名演でした。(6位と7位)

ヴィオッティ&東響のヴェルディのレクイエムは何とも凄まじく魂に訴えかける演奏でした。東響コーラスの圧倒的なパフォーマンス、そして、ソロ歌手陣の恐ろしいまでの気魄の歌唱がすべてでした。

現代を代表するテノールの一人、イアン・ボストリッジは素晴らしいシューマンで魅了してくれました。


で、いよいよ、オーケストラ部門です。今年はベスト10は以下です。ともかく、今年はクルレンツィスとノットに魅了された1年でした。

1位 圧巻の日本デビュー!クルレンツィス&ムジカエテルナ コパチンスカヤもハチャメチャの快演 @Bunkamuraオーチャードホール 2019.2.10
   伝説に残るクルレンツィスのチャイコフスキー コパチンスカヤも最高! @すみだトリフォニーホール 2019.2.11
   チャイコフスキーの音楽の本質を描き尽したクルレンツィス&ムジカエテルナ@サントリーホール 2019.2.13

2位 ジョナサン・ノット&東京交響楽団の一連のコンサート
   ジョナサン・ノットは現代も古典も超絶的!! 東京交響楽団@東京オペラシティコンサートホール 2019.5.18
   これがショスタコーヴィチの5番か!驚きの演奏・・・ノット&東京交響楽団@サントリーホール 2019.5.25
   今日も絶好調、リゲティとシュトラウス・・・ジョナサン・ノット&東京交響楽団@サントリーホール 2019.7.20
   Thunderbirds Are Go! ジョナサン・ノット&東京交響楽団@ミューザ川崎シンフォニーホール 2019.7.27
   なんというマーラー、ノットでしかなしえないマーラー!・・・ジョナサン・ノット&東京交響楽団@サントリーホール 2019.11.16
   リゲティ、R.シュトラウス、モーツァルトの極美の響き・・・ノット&東京交響楽団@東京オペラシティコンサートホール 2019.11.23
   さらに精度を上げたR.シュトラウス、モーツァルトの極美の響き・・・ノット&東京交響楽団:モーツァルト・マチネ 第38回@ミューザ川崎シンフォニーホール 2019.11.24
   ジョナサン・ノット&東京交響楽団の第九は始まったばかり@サントリーホール 2019.12.28

3位 最上のオーケストラ、超一流の指揮者で何ともチャーミングな魅惑のコンサート・・・アラン・ギルバート&東京都交響楽団@東京文化会館大ホール 2019.12.9
   自己と葛藤するマーラーを鮮やかに表現・・・アラン・ギルバート&東京都交響楽団@サントリーホール 2019.12.14

4位 ただただ、絶句・・・ミンコフスキ&東京都交響楽団@東京文化会館大ホール 2019.10.7

5位 ティーレマンが振るとウィーン・フィルが美しく鳴る:ブルックナーの交響曲第8番@サントリーホール 2019.11.11

6位 鈴木雅明の偉業に感銘!ベートーヴェン:交響曲第9番 バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル 2019.1.24

7位 新常任指揮者ヴァイグレ、見事なブルックナー 読売日本交響楽団@サントリーホール 2019.5.14

8位 天才モーツァルトと天才マーラーの最高の音楽・・・アリス=紗良・オット&インバル&ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団@東京芸術劇場 コンサートホール 2019.7.10

9位 ショスタコーヴィチの交響曲の重く、感銘深い演奏 ユーリ・テミルカーノフ&読売日本交響楽団@サントリーホール 2019.10.9

10位 読響の実力が発揮されて、バルトークの難曲も余裕の演奏 ヘンリク・ナナシ&読売日本交響楽団@サントリーホール 2019.7.11

今年の1位はクルレンツィス。凄い!!!! やはり、クルレンツィスは音楽の世界を変える。初の来日公演の3日間はまさに歴史に残るコンサートでした。

2位はジョナサン・ノット&東京交響楽団の一連のコンサート。少し卑怯なランキングになりましたが、ノットの今年のコンサートはすべてが素晴らし過ぎたので、それを一つ一つ選んだら、このベスト10が成り立ちません。今年は2回の《グレの歌》を含めて、全部で10回聴きましたが、すべて、指揮者コールになるほどの絶品の演奏ばかりでした。シェーンベルク、リゲティ、マーラー、ベートーヴェン、モーツァルト・・・すべて、記憶に残るコンサートばかりでした。

3位はアラン・ギルバート&東京都交響楽団の素晴らしいコンサート2連発。もう嬉しくなって踊りたくなるような素敵なコンサートでした。アラン・ギルバートはやはり、只者ではないことをはっきりと認識させてくれてくれました。マーラーはアラン・ギルバートのセンスを買って、急遽、1週間前にチケットを求めましたが、その期待は裏切られませんでした。素晴らしいマーラーでした。

4位はミンコフスキ。この日の演奏が終わり、saraiは青ざめていました。一体、これは何だったんでしょう。いつも音楽表現が深いとか、譜面の読みが鋭いとか、分かったようなことを書いている自分を恥じてしまいました。音楽はそれ自体で成り立つもので、素人が何だかんだと言葉で表現するものではないという厳然たる事実を突き付けられた思いでした。軽々しく拍手することさえも躊躇われました。恐れ入りましたと黙って席を立つのが正しい姿ではないかとすら思えました。本当のオーケストラ音楽とはこれほどのものなのでしょうか。本来はこれを1位にランクしてもよかったかな。

5位はティーレマン。この日のティーレマンがウィーン・フィルから引き出した響きはチェリビダッケとはまた質が違いますが、恐ろしいほどの美しさに満ちていました。巨匠ティーレマン、世界最高のオーケストラのウィーン・フィルの名に恥じない素晴らしい演奏でした。これまでウィーン・フィルのブルックナーは何度となく聴いてきましたが、これほどの美しい響きを聴いたのは初めてです。さすがにティーレマンです。

6位は鈴木雅明指揮のバッハ・コレギウム・ジャパンのベートーヴェンの第九。素晴らしい演奏にただただ感銘を受けました。よほど、満を持しての公演だったのでしょう。まずは鈴木雅明の完璧なベートーヴェン解釈に賛辞を送らないといけないでしょう。そして、バッハ・コレギウム・ジャパンの名人たちの演奏の素晴らしさに感銘を受けました。

7位は読響の新しい第10代常任指揮者のセバスティアン・ヴァイグレ。彼がいよいよサントリーホールのステージに登場。素晴らしいブルックナーでした! まずは新常任指揮者ヴァイグレはどの声部も驚くほどよく鳴らせます。今までこの曲で気が付かなかったようなフレーズが浮かび上がってきます。とても新鮮で鮮やかな響きに魅了されました。

8位はインバルのマーラー。久しぶりに素晴らしいマーラーを聴かせてもらい満足しました。

9位はテミルカーノフのショスタコーヴィチの交響曲。彼はにこりともせずに気難しい顔をして、演奏。テミルカーノフは存在感のある指揮者です。指揮がうまいとかではなく、彼が振ると、音楽に深みが出て、凄い音楽になります。やはり、80歳を過ぎた指揮者は貴重です。

10位は読響のバルトークの難曲。うーん、日本のオーケストラの実力もなかなかですね。バルトークの管弦楽のための協奏曲と言えば、オーケストラ能力の試金石みたいなものの一つですが、読響は余力を残した演奏。指揮者がもっと厳しい要求をしても応えられたでしょう。


ジャジャーン!
ここで今年の大賞発表です。

 クルレンツィス&ムジカエテルナのモーツァルトのオペラ、ダ・ポンテ三部作+バルトリ@ルツェルン音楽祭

全3オペラ、すべて新しい音楽の価値観を創造する究極の演奏でした。その集大成として、バルトリも加わった《コジ・ファン・トゥッテ》の素晴らしかったこと! 文句なしの大賞です。クルレンツィスの来日公演のときのウェルカム・パーティーで意気投合した音楽ファンの《今、旬なときのクルレンツィスのダ・ポンテ3部作を聴かない手はない》という後押しのお言葉に従って、本当に良かったと思います。お名前も知らない方ですが、ここで感謝の言葉を捧げます。

大賞にはなりませんでしたが、アンドラーシュ・シフのベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲、ジョナサン・ノット&東京交響楽団の一連のコンサートも同等の価値のあるコンサートでした。


来年の感動に期待しながら、今年の総括は幕としましょう。

今年も当ブログを読んでいただいたみなさんには感謝です。また、来年も引き続き、ご愛読ください。


saraiはこれから、みなとみらいホールのジルヴェスターコンサートに出かけます。今年も音楽で年越しです。

皆さま、よいお年を!!


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saraiの音楽総決算2019:協奏曲編

さて、前回に引き続き、今年の音楽の総決算です。

今回は協奏曲編です。
今年はこのジャンルは素晴らしいコンサートがとても多く、順位付けはあまり意味がないと思えるほどの激戦でしたが、その中でもアンドラーシュ・シフとカペラ・アンドレア・バルカによるベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲の音楽的な精度の高さは圧倒的でした。茫然自失して聴き入っただけでした。コパチンスカヤとクルレンツィスのハチャメチャの快演も口あんぐりで驚かされるばかりでした。この2つは別格のコンサートでした。
ちなみに昨年の結果はここです。

今年は以下をベスト10プラス2に選びました。

1位 西欧文化を体現する圧巻の演奏:ベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲・・・アンドラーシュ・シフ&カペラ・アンドレア・バルカ@東京オペラシティコンサートホール 2019.11.8

2位 圧巻の日本デビュー!クルレンツィス&ムジカエテルナ コパチンスカヤもハチャメチャの快演 @Bunkamuraオーチャードホール 2019.2.10
   伝説に残るクルレンツィスのチャイコフスキー コパチンスカヤも最高! @すみだトリフォニーホール 2019.2.11

3位 奇跡のコンサート!ブランデルブルク協奏曲全曲 バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル 2019.11.24

4位 鬼神のごときバティアシヴィリ、凄し! ネゼ゠セガン&フィラデルフィア管弦楽団@サントリーホール 2019.11.4

5位 美しきヴィニツカヤの飛翔・・・リットン&東京都交響楽団@東京文化会館大ホール 2019.5.28

6位 庄司紗矢香の妙なる響きに感動・・・ペンデレツキ&東京都交響楽団@サントリーホール 2019.6.25

7位 モーツァルトはオペラだけじゃない 内田光子&マーラー・チェンバー・オーケストラ@ウィーン・コンツェルトハウス 2019.9.26

8位 小川典子、圧巻のラフマニノフ 上岡敏之&新日本フィルハーモニー交響楽団@ミューザ川崎シンフォニーホール 2019.7.28

9位 天才モーツァルトと天才マーラーの最高の音楽・・・アリス=紗良・オット&インバル&ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団@東京芸術劇場 コンサートホール 2019.7.10

10位 知的で静謐、かつ日本人的な味わい・・・宮田大&小泉和裕&東京都交響楽団@東京文化会館大ホール 2019.7.16

次点 ベルクとマノンの精神に報いる素晴らしい演奏・・・ヴェロニカ・エーベルレ&大野和士&東京都交響楽団@東京文化会館大ホール 2019.9.3

次点 静謐極まりないリゲティ ジャン=ギアン・ケラス、トマーシュ・ネトピル&読売日本交響楽団@サントリーホール 2019.11.29


アンドラーシュ・シフとカペラ・アンドレア・バルカによるベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲は単に素晴らしい演奏だったとか、完璧なベートーヴェンだったと言ってしまっては語弊があると思うほどの高いレベルの音楽でした。聴衆がただ音楽に耳を傾けるだけでなく、音楽からの深い文化的な示唆を受けて、その理解度を試される場であったとも思えます。こういう音楽を日本で聴けたことに感謝するのみです。

日本デビューも鮮烈でしたが、翌日のクルレンツィス&ムジカエテルナは伝説に残るに違いない、最高のチャイコフスキーを聴かせてくれました。コパチンスカヤも2日とも素晴らしく個性的な名演です。この2日間のコンサートはあり得ないようなレベルの音楽で、saraiはただただ、満足にため息をもらすばかりでした。

バッハ・コレギウム・ジャパンのブランデンブルク協奏曲全曲。これが凄かった! まあ、いつものように名人揃いの演奏で素晴らしいだろうとは思っていましたが、それを遥かに凌駕する、あり得ないような奇跡とも思える演奏でした。

期待のバティアシヴィリの来日公演。期待以上の出来でした。まさに今が旬のバティアシヴィリ、渾身の演奏に鳥肌が立ちました。

難曲のプロコフィエフのピアノ協奏曲第2番を完璧に弾きこなすヴィニツカヤにとって、ピアノ協奏曲第3番を弾くのはたやすそうにさえ見えてしまいました。切れのよさ、響きの美しさ、ダイナミクス、どれをとっても、そのピアニズムは見事としか言えませんでした。

庄司紗矢香が表現するペンデレツキの音楽の世界。とても素晴らしいです。作曲者自身が指揮している目の前で堂々と心のありったけをぶつけるような演奏を繰り広げる姿は感動的でした。日本人には難しかった自己表現が見事に実現していました。

現代のモーツァルトのピアノのオーソリティの内田光子はK.466のニ短調の協奏曲でピアノの響きが美しく響き渡り、最高の演奏。それ以上に素晴らしかったのは内田光子の指揮。深くて鋭いオーケストラの響きと考え抜かれた音楽表現で聴くものを魅了しました。ピアニストの内田光子よりも音楽家の内田光子が光りました。

小川典子はラフマニノフのピアノ協奏曲 第2番という難曲を完璧に弾きこなし、どのパッセージでも聴き手を魅了してくれました。響き、タッチ、切れ味、どれをとっても満足な演奏でした。上岡敏之&新日本フィルハーモニー交響楽団も美しいアンサンブルで好サポート。特に抒情的な聴かせ所でのピアノとオーケストラの協奏は圧倒的でした。

会場の聴衆みんな、いや世界中の音楽ファンが体調を心配していただろうアリス=紗良・オットのピアノでしたが、その純度の高いピアノの響きでモーツァルトの名曲を最高に歌い上げました。これからはモーツァルト弾きに専心してもらいたいと思うほどの見事な出来栄えでした。

独奏チェロの宮田大の熟成した音楽を賞賛すべきでしたし、小泉和裕の見事な指揮には脱帽の感に至ります。協奏曲の指揮でここまでのレベルの音楽を聴いたことはありません。

ヴァイオリンの若手奏者、ヴェロニカ・エーベルレは何とも瑞々しいロマンにあふれるベルクのヴァイオリン協奏曲を聴かせてくれました。大野和士の指揮も大変、精度が高く、見事なアンサンブルを展開してくれました。これが最高のベルクのヴァイオリン協奏曲とまでは言いませんが、こんなに魅力にあふれた演奏に接したのは初めてです。

ケラスのチェロは決して激することなく、あくまでも優し気な静謐な響きを保ちました。リゲティ特有の宇宙空間を漂うかのような幽玄な音響空間が静かに静かに表現されて、感銘深い演奏でした。

いよいよ、次回は最終回、大賞も発表します。そして、大晦日でもありますね。


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saraiの音楽総決算2019:オペラ・オペレッタ・バレエ編

さて、前回に引き続き、今年の音楽の総決算です。

今回はオペラ・オペレッタ・バレエ編です。
今年のオペラは聴いたものすべてが大当たり。なかでもウィーンとルツェルン音楽祭でのクルレンツィスのダ・ポンテ三部作の素晴らしさといったら、saraiの音楽の価値観をひっくり返すようなものでした。

ちなみに昨年の結果はここです。

で、今年は以下をベスト10に選びました。

1位 クルレンツィスは最高の演奏で閉幕 バルトリはデスピーナでもアジリタ全開 モーツァルトのオペラ《コジ・ファン・トゥッテ》@ルツェルン音楽祭 2019.9.15

2位 クルレンツィスが目指す道 モーツァルトのオペラ《ドン・ジョヴァンニ》@ルツェルン音楽祭 2019.9.14

3位 素晴らしきクルレンツィスの世界、開幕 モーツァルトのオペラ《フィガロの結婚》@ルツェルン音楽祭 2019.9.12

4位 クルレンツィスは進化する!モーツァルトのオペラ《コジ・ファン・トゥッテ》@ウィーン・コンツェルトハウス 2019.9.9

5位 歴史に名を刻む天才クルレンツィス モーツァルトのオペラ《ドン・ジョヴァンニ》@ウィーン・コンツェルトハウス 2019.9.7

6位 戦慄のオペラ《サロメ》 何とカミラ・ニュルンドが代役に立つ嬉しい驚き@ウィーン国立歌劇場 2019.9.27

7位 中村恵理、清冽な絶唱!『ラ・ボエーム』@宮崎芸術劇場 2019.5.19

8位 中村 恵理のリューに酔う、テオリンも絶唱:オペラ《トゥーランドット》@東京文化会館 2019.7.12

9位 ヤンソンスに合掌・・・ゲルギエフ&マリインスキー劇場:オペラ《スペードの女王》@東京文化会館 2019.12.1

10位 究極のバレエ作品!!エイフマン・バレエ《アンナ・カレーニナ》@東京文化会館 2019.7.21


一昨年のザルツブルク音楽祭でクルレンツィス指揮ムジカエテルナの演奏したモーツァルトの歌劇「皇帝ティートの慈悲」はsaraiの価値観をひっくり返すようなものでした。今年聴いたダ・ポンテ3部作はそれ以上にsaraiの音楽の価値観の転換を迫るようなものでした。ウィーンとルツェルン音楽祭でのクルレンツィスのダ・ポンテ三部作で今年の1位から5位までを占めることになったのは当然のことでしょう。
今回のクルレンツィスのダ・ポンテ3部作を総括すると、モーツァルトのオペラはその真の姿を現すために、240年ほどの時を経て、天才クルレンツィスの登場を待っていたということになるでしょうか。saraiはその歴史的な場面に立ち会わせてもらいました。そして、モーツァルトの天才の真の意味を知ることになりました。2人の天才にダブルで感謝することになったルツェルン音楽祭でした。

ウィーン国立歌劇場で8年ぶりに聴く《サロメ》はやはり凄かった! ウィーン国立歌劇場はR.シュトラウスの楽劇を聴く場なのでしょうか。この日の驚きはカミラ・ニュルンドが代役でサロメを歌うことになったことです。本命登場とも思えた圧巻の歌唱・絶叫でした。

今年は中村恵理の素晴らしい歌唱に酔った一年でした。昨年の蝶々夫人に続いて、プッチーニのリリックな歌を満喫しました。これ以上のプッチーニはあり得ません。7位と8位にランクさせましたが、本心では1位にしたいくらいです。

《スペードの女王》はsaraiが最後に聴いたヤンソンスの公演曲目でもありました。昨年のザルツブルク音楽祭、ウィーン・フィルを振っての素晴らしい演奏でした。そのヤンソンスの訃報を聞いた日に奇しくもマリインスキーオペラで《スペードの女王》を聴くことになりました。昨年のザルツブルク音楽祭の公演といい勝負の素晴らしい公演でした。ゲルギエフの指揮ですからね。

エイフマン・バレエの《アンナ・カレーニナ》はほぼ、4年ぶりのバレエ。ロパートキナが極上のオデットを踊ったマリインスキー・バレエの《白鳥の湖》を見て、もう、これ以上のバレエを見ることはないと思い、しばらく、バレエは封印していました。期待通りの公演で、ともかく、全編、美しいソロ・デュエット・群舞の連続で、バレエ好きにはたまらない内容の公演でした。生のオーケストラの音響が加われば、さらにランクアップしたでしょう。


次回は協奏曲編です。


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ジョナサン・ノット&東京交響楽団の第九は始まったばかり@サントリーホール 2019.12.28

ジョナサン・ノットの快調なベートーヴェンの交響曲も今日は遂に第9番です。これは期待するしかありませんね。
しかし、さすがのノットも第3楽章までは乗り切れていませんでした。が、ようやく第4楽章の中盤で爆発します。テノールのサイモン・オニールの高潮した独唱の後、弦楽合奏の対位法的な展開の演奏が凄まじく気合いの入った音楽に昇華していきます。一気にsaraiのテンションも跳ね上がります。この第4楽章の後半は合唱の盛り上がりを軸に人間の生を謳歌する、祝典的な音楽が高らかに歌い上げられます。終盤の独唱陣の4重唱も高揚します。ソプラノのルイーズ・オルダーの若くて、少し粗削りながらも勢いのある歌唱にも魅せられます。そして、コーダはフルトヴェングラーの如く、激しく突進して、感動のフィナーレです。ノットとしては大いに課題を残した演奏ではありましたが、ちゃんと最後では辻褄を合わせた形です。きっと、明日の演奏ではさらに熟成した音楽を聴かせてくれるでしょう。残念ながら、saraiは明日の演奏を聴きません。来年も聴かせてくれるだろうジョナサン・ノット&東京交響楽団の第九を楽しみにしましょう。ジョナサン・ノット&東京交響楽団の第九は始まったばかりです。

今日のコンサートをもって、今年のsaraiの音楽は〆にします。サントリーホールはこれで今年、22回目のコンサートでした。まさにsaraiのホームグラウンドです。また、来年も素晴らしい音楽を聴かせてもらいましょう。

おっと、今年のシメはまだ、大晦日のジルヴェスターコンサートが残っていました・・・。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:ジョナサン・ノット
  ソプラノ:ルイーズ・オルダー
  メゾソプラノ:ステファニー・イラーニ
  テノール:サイモン・オニール
  バスバリトン:シェンヤン
  合唱:東響コーラス
  合唱指揮:冨平恭平
  管弦楽:東京交響楽団

  ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 Op.125

  《アンコール》 蛍の光 東京交響楽団と東響コーラス


演奏後の会場の盛り上がりは凄く、もう習慣となってしまった、オーケストラ退席後のお馴染みの指揮者コールです。ジョナサン・ノットをコールするのは、これで今年、10回目です。ノットとコアなファンの気持ちが通じ合う大切な時間でもあります。また、来年も素晴らしい音楽を聴かせてもらいましょう。



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       ジョナサン・ノット,  

saraiの音楽総決算2019:ピアノ・室内楽編

今年もブログの締めくくりはsarai恒例の音楽総決算です。まだ、明日はノット&東響のベートーヴェンの交響曲第9番、大晦日はみなとみらいホールでジルヴェスターコンサートを聴きますが、今日はピアノ・室内楽編ですから、今日から音楽総決算をスタートします。なお、現在進行している2018年の旅の詳細編はハンブルク市立美術館を見終わったところでいったん休止し、続きは年明け早々に再開します。

今年は国内・海外合わせて、厳選したコンサート・オペラに計97回足を運びました(昨年の計94回、一昨年の計70回に比べて、最高記録です。これでもちょっと抑えたんですけどね。)。それらについてはすべて当ブログで報告済みですが、今回から4回のシリーズでそれらからベストのコンサート・オペラを選んで、今年の音楽の総決算としたいと思います。
今回はピアノ・リサイタルと室内楽編です。今年はこのジャンルをそれほど聴けませんでした。計25回です(昨年は計43回、一昨年は計31回)。内、ピアノ・リサイタルが13回、弦楽四重奏曲コンサートが9回、その他の室内楽コンサートが3回です。で、今年も、ピアノ・リサイタルと室内楽コンサートに分けて、ランキングしてみます。
ちなみに昨年の結果はここです。

まず、ピアノ・リサイタル部門です。ベスト5は次の通りです。

1位 究極のピアニズム! ユリアンナ・アヴデーエワ ピアノ・リサイタル@東京オペラシティ コンサートホール 2019.2.19

2位 飛翔する詩情、シューマンの幻想曲 田部京子@浜離宮朝日ホール 2019.7.26

3位 圧倒的なフィナーレ バッハ:イギリス組曲第4番~第6番ほか The Bach Odyssey Ⅹ アンジェラ・ヒューイット@紀尾井ホール 2019.10.4

4位 現代のヴィルトゥオーゾ、シューマンの狂気に肉薄 アンドレイ・ガヴリーロフ ピアノ・リサイタル@横浜上大岡ひまわりの郷ホール 2019.6.30

5位 若きブラームスの狂奔するロマン クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル@横浜みなとみらいホール 2019.3.16

次点 河村尚子の成熟への道 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ・プロジェクト Vol.3@紀尾井ホール 2019.4.25

ユリアンナ・アヴデーエワはショパンも最高だし、シューマンも見事だし、シューベルトも聴き応え十分。さらにアンコールも素晴らしい。これ以上の満足はないピアノ・リサイタルでした。

うーん、田部京子のシューマン、最高! 最高の幻想曲を聴きました。来年はいよいよクライスレリアーナが聴けます。超楽しみです。

アンジェラ・ヒューイットがイギリス組曲の第6番で実に素晴らしい演奏を聴かせてくれました。今回のイギリス組曲で最高の演奏でした。アンジェラ・ヒューイットの“バッハ オデッセイ”も今年で完了です。

アンドレイ・ガヴリーロフの破格さは比類のないものだと思いました。こんな凄いピアニストが聴けて、幸運でした。シューマンの潜在的な狂気も感じました。

クリスチャン・ツィメルマンの弾くブラームスのピアノ・ソナタ第2番が素晴らしかったんです。ブラームスの若い頃の作品であまり演奏機会はありませんが、名曲であることを実感させてくれるような熱い演奏でした。

次点は河村尚子のベートーヴェンのソナタのシリーズです。ピアノ・ソナタ 第29番 変ロ長調 Op. 106「ハンマークラヴィーア」の第3楽章の中間以降の成熟した演奏の深みのある表現、さらに第4楽章の圧倒的な迫力に脱帽です。


次は室内楽部門です。ベスト5は次のとおりです。


1位 幽玄なバルトークの世界:ハーゲン・クァルテット@トッパンホール 2019.10.2

2位 インティメットな表現の極み:クァルテット・ベルリン=トウキョウ@鶴見サルビアホール 2019.2.7

3位 これぞ、ベートーヴェンの最高傑作Op.131:関西弦楽四重奏団@鶴見サルビアホール 2019.4.15

4位 バルトークは常に前衛であり続ける! パトリツィア・コパチンスカヤ ヴァイオリン・リサイタル@トッパンホール 2019.1.14

5位 渡辺玲子 ヴァイオリン・リサイタル@横浜上大岡ひまわりの郷ホール 2019.4.21

次点 シューマンの超名演を堪能:アポロン・ミューザゲート・クァルテット@鶴見サルビアホール 2019.6.6


ハーゲン・クァルテットのバルトーク最高でした。バルトークの第3番といえば、バルトークで最も先鋭的な作品。冒頭の響きは宇宙の深淵を感じさせるミステリアスな響き。素晴らしいアンサンブルでした。

クァルテット・ベルリン=トウキョウのシューベルトの弦楽四重奏曲 第15番は圧巻の演奏でした。大曲ですが、細部の隅々までじっくりと聴かせてもらいました。パーフェクト!という賛辞を送りましょう。

関西弦楽四重奏団は見事にベートーヴェンの最高峰の音楽、弦楽四重奏曲 第14番 嬰ハ短調 Op.131を演奏・表現してくれました。まさに会心の演奏でした。

パトリツィア・コパチンスカヤのヴァイオリン・リサイタルは凄いコンサートでした。アンコール曲も凄かったし、お洒落でした。

渡辺玲子は何も文句のない素晴らしい演奏でした。とりわけ、プロコフィエフのヴァイオリン・ソナタ 第1番は気合十分で圧倒的。時折現れるリリックなパートも緊張感のある美しさ。グァルネリ・デル・ジェスの名器を弾きこなす器の大きささえも感じさせる渡辺玲子の会心の演奏でした。

次点のアポロン・ミューザゲート・クァルテットの響きの美しさは格別です。そして、物凄いシューマンでした。

次回はオペラ編です。


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今日も中村恵理の絶唱に感銘!@ヤマハホール 2019.12.20

今年は中村恵理のソプラノの歌声に毎回、魅了されました。今年、今日で5回目のコンサートです。今年聴いた4回のコンサートは以下です。

 中村恵理、最高のR.シュトラウスを歌う @Bunkamuraオーチャードホール 2019.5.6 N響オーチャード定期
 中村恵理、清冽な絶唱!『ラ・ボエーム』@宮崎芸術劇場 2019.5.19 第24回宮崎国際音楽祭 プッチーニの世界「青春の光と影」
 中村 恵理のリューに酔う、テオリンも絶唱:オペラ《トゥーランドット》@東京文化会館 2019.7.12
 中村恵理の絶唱に感動!@川口リリアホール 2019.11.30

因みに今年最高だったのは、『ラ・ボエーム』のミミです。saraiの最愛のソプラノ、ミレッラ・フレーニを上回る熱演に心が高揚しました。

さて、今日の中村恵理ですが、その透き通った可憐な歌声は心に響いてきました。やはり、人の声は最高の楽器です。彼女の声が最高に機能するのは、やはり、プッチーニの抒情的な旋律です。中村恵理の歌う“ドレッタの美しい夢”は初めて聴きましたが、その素晴らしさにただただ感動。今日のプッチーニはこの1曲だけでしたが、これを聴くだけでも今日のコンサートに足を運んだ甲斐がありました。可憐で純情でありながら、声量が大きく、迫力のある歌唱でした。歌曲では、R.シュトラウスの“献呈”が素晴らしい出来。今年、中村恵理の歌う、この曲を聴くのは3度目ですが、ますます、レベルの高い歌唱になってきました。

藤木大地との2重唱では、レハールの“唇は語らずとも”に心がざわつきました。CTとソプラノの2重唱でこの曲を聴くのは初めてですが、何ら違和感なく、そのロマンティックなこと、この上なし。もっとも、この曲とラ・ボエームの愛の2重唱は、いつ聴いても、心のスイッチがはいり、心がざわつくんです。いやはや、魅力たっぷりの2重唱でした。

他には、「アヴェ・ヴェルム・コルプス」、「ヘンゼルとグレーテル」の2重唱、アンコールの「きよしこの夜」の二人の声の響きの美しさに心を奪われました。

今年は中村恵理という不世出の日本人ソプラノの歌唱をたっぷりと聴けて、幸せな年になりました。来年も機会を捉えて、彼女の美しい声を聴きたいものです。


今日のプログラムは以下です。

  ソプラノ:中村恵理
  カウンターテナー:藤木大地
  ピアノ:木下志寿子

  H.パーセル*B.ブリテン:トランペットを吹き鳴らせ(中村恵理、藤木大地)
  R.クィルター:5つのシェイクスピア歌曲 より “恋に落ちた若者とその彼女” Op.23-3(中村恵理、藤木大地)
  J.S.バッハ:「クリスマス・オラトリオ」 BWV 248 より “シオンよ、備えよ”(藤木大地)
  G.F.ヘンデル:歌劇「エジプトのジュリオ・チェーザレ」 HWV 17 より “つれない女め、お前の頑なさが”(藤木大地)
         オラトリオ「メサイア」 HWV 56 より “その時、見えない人の目は開かれ”~“主は羊飼いのごとくその群れを養い”(中村恵理、藤木大地)
  W.A.モーツァルト:モテット「アヴェ・ヴェルム・コルプス」 K.618(中村恵理、藤木大地)
  F.メンデルスゾーン:6つのリート より “歌の翼に” Op.34-2(中村恵理)
            3つの二重唱曲 より “実りの畑” Op.77-2(中村恵理、藤木大地)
  R.シューマン:「愛の春」よりの12の詩 より “まさに太陽が輝くように” Op.37-12(中村恵理、藤木大地)
  E.フンパーディンク:歌劇「ヘンゼルとグレーテル」 より “夜になって眠りにつくと” (夕べの祈り)(中村恵理、藤木大地)

   《休憩》

  G.プッチーニ:歌劇「つばめ」 より “ドレッタの美しい夢”(中村恵理)
  F.レハール:喜歌劇「ジュディッタ」 より “私の唇は熱いキスをする”(中村恵理)
        喜歌劇「メリー・ウィドウ」 より “唇は語らずとも”(中村恵理、藤木大地)
  R.シュトラウス:「最後の葉」よりの8つの歌 より “献呈” Op.10-1(中村恵理)
  G.フォーレ:「レクイエム」 より “ピエ・イエズ” Op.48-4(藤木大地)
  E.チャールズ:私の歌であなたの心をいっぱいに(中村恵理)
  H.マンシーニ:映画「ティファニーで朝食を」 より “ムーン・リバー”(藤木大地)
  G.カッチーニ*V.ヴァヴィロフ:アヴェ・マリア(藤木大地)
  A.ロイド=ウェバー:「レクイエム」 より “ピエ・イエズ”(中村恵理、藤木大地)

   《アンコール》

    グルーバー:きよしこの夜(中村恵理、藤木大地)


最後に予習について、まとめておきます。

パーセル、クィルター、メンデルスゾーン、シューマンの2重唱は以下のCDを聴きました。

 キャロリン・サンプソン(S)、イェスティン・デイヴィーズ(CT)、ジョセフ・ミドルトン(ピアノ) 2016年9月、イギリス、ウェウストルトン、ポットン・ホール

これは素晴らしいアルバム。イェスティン・デイヴィーズの素晴らしい歌唱に魅了されます。


バッハの“シオンよ、備えよ”は以下のCDを聴きました。

 米良美一、鈴木雅明指揮バッハ・コレギウム・ジャパン 1998年1月

この頃の米良美一の美声にはうっとりします。


ヘンデルのオラトリオ「メサイア」は以下のCDを聴きました。

 アーリン・オージェ、アンネ・ゾフィー・フォン・オッター、マイケル・チャンス(CT)、トレヴァー・ピノック指揮イングリッシュ・コンサート管弦楽団・合唱団 1988年1月、アビー・ロード・スタジオ

アーリン・オージェの美声は最高です。


プッチーニの“ドレッタの美しい夢”は以下のCDを聴きました。

  ミレッラ・フレーニ 録音データ不詳

プッチーニはフレーニを聴くしかないでしょう。中村恵理が録音してくれるまではね・・・。


レハールの“私の唇は熱いキスをする”は以下のCDを聴きました。

 アンナ・ネトレプコ、エマニュエル・ヴィヨーム指揮プラハ・フィルハーモニア 2008年3月 プラハ

これは凄いね。


R.シュトラウスの“献呈”は以下のCDを聴きました。

 エディタ・グルベローヴァ、フリードリヒ・ハイダー指揮 ニース・フィルハーモニー管弦楽団

グルベローヴァの絶唱。


フォーレとカッチーニは以下のCDを聴きました。

 スミ・ジョー、ジェイムズ・コンロン指揮ケルン・フィルハーモニー・ギュルツェニヒ管弦楽団 2000年6月 ケルン

スミ・ジョーの歌声は絶品。



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       中村恵理,  

自己と葛藤するマーラーを鮮やかに表現・・・アラン・ギルバート&東京都交響楽団@サントリーホール 2019.12.14

アラン・ギルバートのセンスを買って、つい1週間前に急遽、チケットを求めましたが、その期待は裏切られませんでした。第5番から第7番までの中期の交響曲はマーラーの交響曲の中では、どう演奏されて、どう聴き取ればいいのか、難しいと感じます。この第6番は都響でベルティーニ、インバルで聴いてきましたが、正直、演奏に完全に満足したわけでもなく、また、自分としても、どう向き合えばいいのか、迷うところも多い難しい音楽です。それはマーラーと妻アルマの微妙な関係に原因があるのではないかと思うところが多々あります。第5番でアルマとの愛にあふれていたマーラーもアルマへの愛が深まるにつれて、ある意味、焦燥感のようなものにかられたのではないでしょうか。永遠の愛を信じつつも、頭の片隅にある疑念をぬぐい切れない・・・後にそれは現実のものとなるわけですが、この時期はそんな兆候すらもなく、ヴェッター湖のほとりにあるヴィッラの周りの自然は美しく、山中のマイヤーニックの作曲小屋は静けさに包まれています。本当は幸福感の絶頂にある筈ですが、現代人の自我はそんなに単純にはなれません。逃げようもない死への思いもあったでしょう。現実世界ではウィーンの楽壇では困難さにつきまとわれていました。そういう感情が激情となって迸り出た作品がこの第6番ではないでしょうか。

長々と前口上を書きましたが、それはいかにこの作品の演奏は難しいかを表現したかったんです。今日のアラン・ギルバート&東京都交響楽団は見事に演奏しました。ベルティーニ、インバル以上の出来だったと思います。そうそう、忘れないうちに書いておきますが、今日の中間楽章の演奏順はアンダンテ→スケルツォの順でした。マーラーの初演のときの順序ですね。終楽章のハンマーは3度叩かれました。これもマーラーの初演と一緒ですね。
第1楽章は終始、力強いアンサンブルの響きでしたが、その暗い響きは地獄の奈落の底を眺めている風情です。一瞬、アルマのテーマで愛を歌いますが、それは長続きしません。第2楽章にはいると一転して、のんびりしているとも思える明るい表情になります。ヴェルター湖の自然の中にいるような心持ちです。しかし、後半では千々に心が乱れるとでも形容したくなる哀しい叫びが美しい自然を覆い隠します。このあたりのアラン・ギルバートの表現は素晴らしく、微妙なタッチです。
第3楽章はまた、第1楽章の動機が戻ってきて、再び、地獄の暗い表情が纏綿と綴られていきます。そして、決然として、第4楽章に入ります。ここは一番の難所です。愛や絶望など、もろもろの要素がないまぜになった精神分裂症的とも思える一貫性のない音楽ですが、ここに至って、さらにアラン・ギルバートのセンスのよさが光ります。都響のアンサンブルをまとめ上げて、きっちりと音楽を進行させていきます。難しい音楽内容を見通しよく描き出したと言えます。後半、音楽が高潮していくところで、その質の高い音楽にsaraiは深く感動しました。芸術家マーラー、人間マーラーの率直とも思える自己との葛藤の凄まじい表現に共感を覚えたからです。

期待していたとは言え、ここまでの演奏を聴かせてくれたアラン・ギルバート&東京都交響楽団に深く感謝します。素晴らしいマーラーでした。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:アラン・ギルバート
  管弦楽:東京都交響楽団  コンサートマスター:矢部達哉

  マーラー:交響曲第6番 イ短調《悲劇的》


マーラーの交響曲第6番を予習したCDは以下です。

 マイケル・ティルソン・トーマス指揮サンフランシスコ交響楽団 2001年9月12日~15日、サンフランシスコ、デイヴィス・シンフォニー・ホール ライヴ録音
 
演奏された日付に注目!! 何とあの痛ましい同時多発テロの翌日です。そのせいかどうか分かりませんが、マイケル・ティルソン・トーマスはいつもの内省的な表現よりも激しく強い演奏スタイルの部分が印象的です。表現方法はともかく、やはり、MTTのマーラーは素晴らしいです。



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鍵盤からそこはかとなく漂う詩情 田部京子@浜離宮朝日ホール 2019.12.12

この田部京子のシューベルト・プラスなるコンサートシリーズも今回で第6回となり、既にシューベルトの遺作ソナタ3曲も弾き終わり、晩年の作品は今日のD.915のアレグレットとこれから最後に弾かれるであろうD.946の3つの即興曲(3つの小品)を残すのみ。シリーズのメインもシューベルトからシューマンにシフトして、今回の《子供の情景》、次回のクライスレリアーナ(遂に聴ける!)など、シューマンの名品がピログラムに並びます。加えて、今日は若き日のブラームスの大曲、ピアノ・ソナタ第3番まで登場し、ブラームスへのシフトも視野にはいってきました。ブラームスの晩年の名作、Op.116からOp.119も是非すべて弾いてもらいたいものです(4つの小品 Op.119は既に弾きましたから、残りは3つ)。

で、今日のコンサートですが、何とも夢のような時間がゆっくりと過ぎ、田部京子の素晴らしいピアノの響きによるポエムに心を奪われました。CDでは決して体験できない贅沢な時間です。今日の田部京子は最高の状態での演奏で、弾いたすべての曲がアンコール曲も含めて最上の出来でした。田部京子も人間ですから、正直、いつも最上の演奏を聴かせてくれるわけではありませんが、今日は彼女のベストの演奏を聴かせてくれました。どんな曲にも味わい深い詩情が漂ってきます。これが田部京子だけの美質なんです。

まずはシューベルトの晩年の名作、アレグレットです。シューベルトのしみじみとした思いが込められた演奏です。こういう作品には田部京子の詩情に満ちた演奏が不可欠です。こんな素晴らしい演奏が聴ける幸せ感でいっぱいになりました。まだ、彼女はこの曲を録音していませんが、これだけはCDで聴こうとは思いません。多分、我が生涯でこれだけの演奏を聴くのはこれが最後になるでしょうが、もうこれで十分です。

次はシューマンの《子供の情景》。彼女のCDと同様に少しスローなテンポの演奏ですが、最初の《見知らぬ国》の優しい温もりの演奏で心をつかまれ、第7曲のトロイメライで魅了され、第12曲の《子供は眠る》の美しい演奏で夢の国に誘われて、終曲の《詩人は語る》のかみしめるような演奏で感動の極に達します。終曲の魂の演奏は途中、止まりそうなパウゼが何度も入り、その儚げな美しさの極みに強い共感を覚えずにはいられませんでした。最後の1音が消えて、静寂に包まれるときの感動は言葉では表せません。最高のシューマンでした。

前半の最後はグリーグのペール・ギュント 第1組曲の4曲です。これは田部京子の持ち曲みたいなもので、ほかの人の演奏は聴いたことがありません。これは楽しく聴けました。ただ、このシリーズで聴くのはなんだか物足りないような気もします。グリーグであれば、「抒情小曲集」の何曲かのほうが聴き甲斐があるかな。まあ、見事な演奏ではありましたし、こういう曲ですら、詩情を感じさせるのは凄いです。


休憩後の後半は今日のメイン、ブラームスのピアノ・ソナタ第3番です。ピアノ・ソナタ第1番/第2番と同じ頃、すなわち、20歳頃のブラームスがデュッセルドルフのシューマン夫妻宅を訪れて、長期滞在した直後に作曲され、シューマンに講評を求めて譜面を送った最後の作品です。若さゆえの情熱とロマンに満ちた大作です。田部京子の演奏は恐ろしいほど凄いもので、saraiがそのすべてを受けとめられたとは言えません。saraiの許容力を超えたすさまじい演奏でした。長大な第1楽章で聴く力を使い果たした感もあります。力強いけれども、そのロマンに満ちあふれた音楽の素晴らしさと言ったら・・・ブラームスの本質を見事に表現し尽くしていました。でも、最高に素晴らしかったのは第2楽章のアンダンテです。これまた長大な楽章ですが、静謐でありながらも芯のある音楽が熱を込めて弾かれ、saraiはすっかり心を奪われます。そして、終盤の熱い魂の盛り上がり。何という素晴らしさでしょう。最後の回想するようなパッセージを息を呑んで聴き入りました。終楽章までレベルの高い演奏が続き、saraiはついていくのがやっとという感じです。最後の壮大な頂点を聴き終え、ただただ、圧倒されました。若き日のブラームスの素晴らしさを初めて実感できましたが、決して十分に聴きとれ切れなかった自分が情けない感じです。

アンコールはそうしたsaraiの思いを優しく慰撫してくれるようなブラームスの晩年の名作です。これは文句なしに夢のような演奏で、saraiも耳馴染んだ名曲の世界で感銘の極みでした。2曲目は田部京子のファンならば、定番ともいえるシューベルトのアヴェマリア。右手の美しいタッチに感銘を覚えました。


今日のプログラムは以下です。

  田部京子シューベルト・プラス 第6回

  ピアノ:田部京子
 
  シューベルト:アレグレット ハ短調 D.915
  シューマン:子供の情景 Op.15
  グリーグ:ペール・ギュント 第1組曲 Op.46

  《休憩》

  ブラームス:ピアノ・ソナタ第3番 へ短調 Op.5

  《アンコール》
   ブラームス:『ピアノのための6つの小品』Op.118から、第2曲 間奏曲 イ長調 アンダンテ・テネラメンテ
   シューベルト:「アヴェ・マリア」(編曲:田部京子、吉松隆)


最後に予習について、まとめておきます。

シューベルトのアレグレットを予習したCDは以下です。

 マリア・ジョアン・ピリス 1996年6月、7月 ミュンヘン&ハンブルク セッション録音

ピリスの最高のシューベルト演奏です。


シューマンの子供の情景を予習したCDは以下です。

 田部京子 1999年8月10-13日 群馬 笠懸野文化ホール セッション録音


グリーグのペール・ギュント 第1組曲を予習したCDは以下です。

 田部京子 2018年4月12-13日 埼玉・富士見市民文化会館キラリふじみ セッション録音


ブラームスのピアノ・ソナタ第3番を予習したCDは以下です。

 ジュリアス・カッチェン 1962年6月 ウエスト・ハムステッド セッション録音

カッチェンの不朽の名演奏のブラームス全集の中から聴きました。これほど完成度の高いブラームスはないでしょう。



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       田部京子,  

最上のオーケストラ、超一流の指揮者で何ともチャーミングな魅惑のコンサート・・・アラン・ギルバート&東京都交響楽団@東京文化会館大ホール 2019.12.9

もう嬉しくなって踊りたくなるような素敵なコンサートでした。トップクラスの在京オケを超一流の指揮者が振ると、こうなるのねって感じの何とも形容のしがたい演奏。“美しい”とか“素晴らしい”という、いつもの形容詞では不足でしょう。楽興という言葉で逃げるしかありません。そもそも、プログラムが素晴らしい。アラン・ギルバートはやはり、只者ではないことをはっきりと認識させてくれるようなプログラムだったし、そのすべての楽曲を完璧に手の内に収めたような見事な指揮。その指揮にちゃんと応えられた都響のアンサンブルも最高でした。古典から現代までバランスの取れた選曲で、多分、全曲、saraiは実演では初聴きという、マニアックなプログラム。多彩な曲が並びますが、ばらばらの音楽を寄せ集めた印象もない、趣味がよいとしか言えない曲の選択に唸らせられます。もう、これ以上言うべき言葉もありませんが、一応、それぞれの曲の演奏の印象について、述べてみましょう。

まず、冒頭はリストのピアノ独奏曲《悲しみのゴンドラ》をジョン・アダムスがオーケストラ用に編曲したもの。原曲はヴェネチアでリストが亡くなる前後のリヒャルト・ワグナーを悼んだ作品。第1稿は亡くなる直前。第2稿/第3稿は亡くなった後に手を入れたものです。ワグナーの妻はリストの娘コジマですが、その結婚の経緯は不倫から始まっており、当初、リストとワグナーは絶縁状態でした。しかし、親子の縁か、いつしか、リストはワグナーと仲直りし、その死に向けても、こういう作品を残しています。リストはバイロイト通いもしていました。で、この作品ですが、リストの晩年の作品らしく、実に宗教的で幻想的なものです。それまでの派手なロマンに満ちた作品とはかけ離れています。さらにワグナーの死に心を向けたためか、暗くて瞑想的です。その曲を現代音楽の作曲家ジョン・アダムスが編曲すると、ミニマリズムの無調的な雰囲気を湛えつつも、後期ロマン派の雰囲気も残した、何とも音楽的なレベルの高い名作になりました。しかもアラン・ギルバートの手にかかると、この曲の質が格段に向上します。作曲家自身の指揮よりも目立って素晴らしく変身します。いやはや、アラン・ギルバートのセンスの良い選曲と天才的とも思える指揮、そして、一段とアンサンブルの質が向上した都響の演奏。何も言うことはありません。脱帽です。

次はバルトークのヴァイオリン協奏曲第1番。これは協奏曲というよりも、ヴァイオリンソロの矢部達哉を囲むアンサンブルという感じ。特に第1楽章で初めにヴァイオリンソロが静かに弾かれて、その響きが、次第にオーケストラに放射状に広がっていく様が、都響のコンサートマスターである矢部達哉の存在感がしっかり出ている感じで、ほのぼのとしています。独奏者でありながら、都響のアンサンブルの中心にもなっている感じです。若き日のバルトークの作品を矢部達哉が弾くというのもなんだか、ぴったりとはまったような気がします。晩年のバルトーク、傑作を生み出し続けていた時期のバルトークもいいですが、若き日のバルトークも好きです。R.シュトラウスの交響詩にはまっていた血気盛んな青年だったバルトークはまだ、後期ロマン派の影を宿しています。後のバルトークの面影も既に現れています。天才は初めから才能を発揮していたわけです。その素晴らしい作品を矢部達哉は一切の力みなく、淡々と弾きますが、バルトークの音楽の本質に迫る見事な演奏です。そして、彼とアンサンブルを形成する都響も最高のバルトークを奏でます。指揮のアラン・ギルバートのさりげないサポートもさすがの腕前。いつもはバルトークのヴァイオリン協奏曲と言えば、第2番を聴くことが多いですが、第1番の素晴らしさを初めて実感できました。ところで、この作品はバルトークが亡くなった後、13年も経って、ようやく初演されたそうです。彼が愛した女性ヴァイオリニストのもとで眠っていて、彼女の死後、遺品の中から発見されたからだそうです。この名作が今日、こうして聴けるのは何と幸せなことでしょう。

休憩後、また、現代の作曲家による編曲作品が演奏されます。現代の作曲家の中で最も著名で作品の演奏頻度も高いトーマス・アデスがフランスのバロックの作曲家クープランのクラヴサン曲集から3曲を選んで、室内オーケストラ用に編曲したものです。登場した室内オーケストラはバロック風に左右の2群の弦楽5部に分かれて、オリジナルのクラヴサンの響きを彷彿とさせるような鄙びた雰囲気の音楽を奏でます。これまた、アラン・ギルバートの音楽のさばき方の絶妙なことに驚愕します。3曲目の《魂の苦しみ》の美しく、お洒落な演奏に魅了されました。冒頭の《悲しみのゴンドラ》と同様に原曲の雰囲気を残しつつ、現代性も兼ね備えて、微妙なバランスを完璧に表現するというアラン・ギルバートの天才的な指揮に舌を巻きました。

最後は何故か、フツーの古典、ハイドンの交響曲です。しかし、これが凄かった。てっきり、小さな編成で演奏すると思ったら、大編成の弦楽での演奏です。しかもそれでいて、まるで室内オーケストラのように究極のアンサンブルで透明な響きの演奏です。パッセージの細かいニュアンスも表現する凄いアーティキュレーションには、ただただ、聴き入るしかない・・・どんどんと引き込まれるような最高のハイドンに魅せられました。こういうハイドンならば、第1番から第104番まで、すべて聴きたくなります。104分の1しか聴けないことが、酷に思えるような凄い演奏でした。予習で聴いたラトル指揮のベルリン・フィルをはるかに上回る最高級の演奏に感動しました。これって、セル指揮のクリーブランド管弦楽団と同等の演奏に思えます。まさに奇跡のハイドンでした。第4楽章の定番の笑いもよかったしね。それは終わったと見せかけて、実はまだ、続くというハイドンのジョークですが、騙されたふりをして、拍手した少数の聴衆の協力もあってのことでした。2度目はさすがに誰も協力しないと見てとったアラン・ギルバートはコンミスの四方恭子とコンビで即興演技でホールの笑いをとっていました。まあ、これで笑いがとれるのは、超絶的な演奏があったればのことです。

こういう演奏を聴かされると、今週末のアラン・ギルバート指揮の都響のマーラー(6番)を聴きたくなるのは当然のことでしょう。帰宅後、すぐにチケットを買いました。多分、とんでもないマーラーを聴かせてくれるでしょう。昨日の残念なマーラー(第1番)を払拭してもらいましょう。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:アラン・ギルバート
  ヴァイオリン:矢部達哉
  管弦楽:東京都交響楽団  コンサートマスター:四方恭子

  リスト(アダムズ編曲):悲しみのゴンドラ
  バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第1番 Sz.36

   《休憩》

  アデス:クープランからの3つの習作(2006)(日本初演)
  ハイドン:交響曲第90番 ハ長調 Hob.I:90


1曲目のリスト(アダムズ編曲)の《悲しみのゴンドラ》はYOUTUBEで予習しました。

  https://www.youtube.com/watch?v=hb41SGQova0
  ジョン・アダムズ指揮ロンドン交響楽団

 
2曲目のバルトークのヴァイオリン協奏曲第1番を予習したCDは以下です。

 イザベル・ファウスト、ダニエル・ハーディング指揮スウェーデン放送交響楽団 2012年4月、ストックホルム、ベルワルドホール セッション録音
 
ファウストは禁欲的な演奏をするのかと思ったら、思いのほか、纏綿とした美しい演奏。聴き惚れました。これ以上の演奏は考えられないほどの素晴らしい演奏です。


3曲目のアデスの《クープランからの3つの習作》はYOUTUBEで予習しました。

  https://www.youtube.com/watch?v=CjWbjuWsU74
  トーマス・アデス指揮ヨーロッパ室内管弦楽団


4曲目のハイドンの交響曲第90番を予習したCDは以下です。

 サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィル 2007年2月8-10,14-17日、ライヴ録音
 
ライヴ録音そのままで、終楽章は騙しのコーダで何度も聴衆の拍手と笑いがそのまま録音された楽しいCDです。もっとも、それでは申し訳けなく思ったのか、付録でスタジオ録音で拍手なしバージョンも収録されているというご丁寧なアルバムです。第88~92番、協奏交響曲が2枚のCDに収録されています。



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絶好調の金管・・・フィナーレで高潮するマーラー ウィグルスワース&東京交響楽団@サントリーホール 2019.12.8

マーラーの交響曲では特に重要な楽器パートである金管が素晴らしい出来。東響はもともと弦が素晴らしいですが、木管も見事な演奏の上に金管まで素晴らしいのですから、オーケストラの響きは最高。ですが・・・なにか、物足りないマーラーというのが正直なところ。ジョナサン・ノットが振ったマーラーの交響曲第7番はあんなに素晴らしかったのにね。それでも第4楽章の盛り上がりは金管の頑張りもあって、凄かったです。終結部でホルン7人が立ち上がって吹き出したときは心がざわつきました。

前半のモーツァルトのピアノ協奏曲第24番はピアノ独奏のマーティン・ジェームズ・バートレットの切れが良く、粒立ちの美しい響きの演奏が冴え渡りました。ほぼ、無名のピアニストですが、なかなかやるなって感じです。それに適度の装飾音を織り交ぜて、心地よい演奏です。第1楽章のカデンツァはモーツァルトの弟子だったヨハン・ネポムク・フンメル作のものだとのことですが、これがなかなかの超絶技巧曲に聴こえます。見事なカデンツァの演奏に聴き惚れました。これからが楽しみなピアニストです。アンコールはバッハのノリのよい演奏が始まり、おっと思います。久しぶりに聴くパルティータです。saraiの愛聴する曲です。ジャズっぽい演奏ですが、これまた、聴き惚れました。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:マーク・ウィグルスワース
  ピアノ:マーティン・ジェームズ・バートレット
  管弦楽:東京交響楽団  コンサートマスター:グレブ・ニキティン

  モーツァルト:ピアノ協奏曲 第24番 ハ短調 K.491
   《アンコール》
    J. S. バッハ:パルティータ第2番 ハ短調 BWV 826 より 第6曲「カプリッチョ」

   《休憩》

  マーラー:交響曲 第1番 ニ長調「巨人」


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のモーツァルトのピアノ協奏曲第24番を予習したCDは以下です。

 クララ・ハスキル、ヴィクトル・デザルツェンス指揮ローザンヌ室内管弦楽団 1956年6月25日、ローザンヌ ライヴ録音
 
全編、哀しみ色に塗り込まれた深い詩情にただただ聴き入るのみです。ハスキルのモーツァルトの中でも最高の演奏です。デザルツェンスの指揮もそういうハスキルの演奏にぴったりと寄り添って、雰囲気を盛り上げてくれます。ピアノ、オーケストラ、共に素晴らしい協奏曲を作り上げてくれます。どの楽章をとっても素晴らし過ぎる演奏ですが、第1楽章のカデンツァは最高の演奏です。忘れられない究極の演奏です。


2曲目のマーラーの交響曲 第1番を予習したCDは以下です。

 マイケル・ティルソン・トーマス指揮サンフランシスコ交響楽団 2001年9月19-23日、サンフランシスコ、デイヴィス・シンフォニー・ホール ライヴ録音

9.11同時多発テロの直後に演奏された記録。何と言っても、細部にわたって、神経が行き届いた丁寧な演奏が印象的ですが、凄いのは、その演奏に聴く者を引きこむ力です。こんなマーラーを聴いたら、ほかの演奏は霞んでしまいそうです。なお、実演で聴いたこのコンビのこの曲の演奏も凄いレベルの演奏で、最高のマーラーでした。決して、それほど上手いオーケストラとは思えませんが、演奏に打ち込む姿勢と集中力が並外れています。やはり、指揮者の力は大きいですね。マイケル・ティルソン・トーマスは真の意味でマーラー指揮者です。



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ヤンソンスに合掌・・・ゲルギエフ&マリインスキー劇場:オペラ《スペードの女王》@東京文化会館 2019.12.1

今日のオペラの感想に先立って、昨日亡くなったマリス・ヤンソンスに哀悼の意を表して、合掌! 奇遇と言っては何ですが、今日のオペラ、チャイコフスキーの《スペードの女王》がsaraiが最後に聴いたヤンソンスの公演曲目でもありました。昨年のザルツブルク音楽祭、ウィーン・フィルを振っての素晴らしい演奏でした。ヤンソンスはその前年、一昨年もザルツブルク音楽祭でショスタコーヴィチのオペラ《ムチェンスク郡のマクベス夫人》でも最高の演奏を聴かせてくれました。ロシアもののオペラでは、今日のゲルギエフと頂点を競う指揮者だったと思います。ザルツブルク音楽祭では、最前列中央の席で、ヤンソンスの指揮をすぐ近くで見たことが思い出になりました。ともかく、病気で倒れて復帰した後のヤンソンスは頬もこけていましたが、最高の演奏を聴かせてくれました。改めて、合掌!

さて、今日のゲルギエフ&マリインスキー劇場によるチャイコフスキーのオペラ《スペードの女王》についての感想です。国内で海外のオペラハウスの引っ越し公演を聴くのは実に久しぶりのことです。とっさには前に聴いたのがいつだったのか思い出せないほどです。調べてみると、6年前のトリノ歌劇場のプッチーニ《トスカ》でした。これはフリットリがトスカを歌うというので、国内でオペラを聴かないという禁を破ったのですが、肝心のフリットリがキャンセル。散々な結果でした。国内でオペラを聴かなくなったのは東日本大震災の直後のメトの公演以降です。一緒にオペラを聴く仲間だった母が高齢のため、オペラを聴かなくなったので、それ以降はオペラは海外でのみ聴くという方針にしたんです。
今回はロシアに行かないと聴けないゲルギエフ&マリインスキー劇場なので、重い腰を上げました。ロシアはsaraiが訪問する海外からははみでています。それに招聘元がNBSではなく、ジャパン・アーツだということもあります。saraiはNBSと決別していますから、NBSが招聘する公演には行きません。

その久しぶりに聴いた国内での引っ越し公演ですが、さすがにゲルギエフ&マリインスキー劇場は素晴らしい演奏を聴かせてくれました。
第1幕はもう一つに感じましたが、第2幕で全開。劇中劇ですら素晴らしい演奏で酔ってしまいそうです。オーケストラの響き、合唱が圧倒的な素晴らしさです。第3幕もさらにヒートアップ。素晴らしい公演でした。
ウラディーミル・ガルージンはゲルマン役は十八番ですが、以前ほどの声の輝きがありません。その分、迫真の演技ではありました。リーザを歌ったイリーナ・チュリロワは幕を追うごとに声が澄み切ってきて、素晴らしい歌唱。今回のキャストでは最高の歌唱を聴かせてくれました。エレツキー公爵 のロマン・ブルデンコの第2幕のアリア《私は貴方を愛しています》は素晴らしい歌唱。もっとも、このアリアはチャイコフスキーの書いたアリアの中でも特に優れたアリアです。ウラディスラフ・スリムスキーも実に安定した歌唱。アンナ・キクナーゼも見事な伯爵夫人を歌い切ってくれました。
演出はよかったと思います。内容に深く切り込んでいました。それよりも衣装が豪華だったことが印象的です。

昨年のザルツブルク音楽祭の公演といい勝負でしたが、saraiの聴いたヤンソンスの最後の演奏ということでザルツブルク音楽祭に軍配を上げておきます。(ザルツブルク音楽祭の公演は既にBDで公開されているようですね。)


プログラムとキャストは以下です。

  指揮:ワレリー・ゲルギエフ
  演出:アレクセイ・ステパニュク(新演出/2015年)
  管弦楽・合唱:マリインスキー歌劇場管弦楽団・合唱団

  ゲルマン (テノール):ウラディーミル・ガルージン
  トムスキー伯爵 (バリトン):ウラディスラフ・スリムスキー
  エレツキー公爵 (バリトン):ロマン・ブルデンコ
  伯爵夫人 (メゾソプラノ):アンナ・キクナーゼ
  リーザ (ソプラノ):イリーナ・チュリロワ
  ポリーナ (メゾソプラノ):ユリア・マトーチュキナ


最後に予習について、まとめておきます。

予習した動画(YOUTUBE)は以下です。

 スペードの女王第1幕
 スペードの女王第2幕
 スペードの女王第3幕

  指揮:ワレリー・ゲルギエフ
  演出:アレキサンダー・ガリビン
  管弦楽・合唱:マリインスキー歌劇場管弦楽団・合唱団

  キャスト

  Hermann - Vladimir Galouzineウラディーミル・ガルージン
  Lisa - Tatiana Borodinaタチヤーナ・ボロディナ
  Countess - Irina Bogachova
  Count Tomsky - Nikolai Putilinニコライ・プチーリン
  Prince Yeletsky - Vladimir Moroz
  Pauline - Ekaterina Gubanova
  Chekalinsky - Oleg Balashov
  Surin - Mikhail Petrenkoミハイル・ペトレンコ
  Chaplitsky - Nikolai Gassiev
  Major-domo - Nikolai Gassiev
  Narumov - Gennady Bezzubenkov
  Governess - Olga Makarova-Mikhailenko
  Masha - Svetlana Volkova
  Chloe - Olga Trifonova

  2006年6月2日 サンクトペテルブルグ、マリインスキー劇場

今回の公演の一つ前の演出のようです。ゲルマン役のガルージン、リーザ役のタチヤーナ・ボロディナの素晴らしい歌唱が聴けます。ゲルギエフ指揮のマリインスキー歌劇場管弦楽団・合唱団も素晴らしいです。



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中村恵理の絶唱に感動!@川口リリアホール 2019.11.30

中村恵理の歌声にはまっています。今日も最高でした。今年はN響オーチャード定期のR.シュトラウス歌曲、宮崎国際音楽祭《ラ・ボエーム》ミミ役、「オペラ夏の祭典2019~2020」の《トゥーランドット》リュー役という主な公演を追っかけ、今後、12月の銀座ヤマハホールが聴く予定です。どれも素晴らしい歌唱で満足させてくれます。
現在、saraiの一番のお気に入りのソプラノです。もっと評価されて然るべくと臍を噛んでいます。

今日は日本の歌曲3曲で滑り出し、初挑戦だというブラームスの歌曲で一気に盛り上がります。ブラームスの濃厚なロマンが香り立つような素晴らしい歌唱に胸が熱くなります。今年は彼女はブラームスのドイツ・レクイエムにも挑戦したんですね。それは聴き逃がしました。シューベルトやシューマンでなく、ブラームスを歌った中村恵理のこだわりは何だったんでしょう。saraiはブラームスの歌曲も好きですけどね。

次いで、R.シュトラウスを3曲。N響オーチャード定期でも聴きましたが、やはり、素晴らしい歌唱です。とりわけ、「解き放たれて」が素晴らしくて、感銘を受けました。こんなにR.シュトラウスの歌曲を絶唱してくれるとはね・・・。Morgen!が聴けなかったのだけが残念です。

前半は歌曲だけでまとめたプログラムですが、休憩後の後半は何とアメリカの昔のポップソングで始まります。E.チャールズという作曲家はまったく知りませんでしたが、ブロードウェイで活躍した後、ハリウッドで一生を終えた人で、コール・ポーターとクラシックの歌曲の間を埋めるような作品で人気を博したそうです。特に2曲目の《あなたのため以外には、もう歌わない》がリサイタルの締めでよく歌われてきたそうです。ハリウッド映画《マダム・フローレンス》でも主役のメリル・ストリープがラストで歌ったそうです。マダム・フローレンスは有名な音痴歌手のフローレンス・フォスター・ジェンキンスをもとにしているので、もちろん、このメリル・ストリープの歌は音痴っぱずれでしょうが、中村恵理は素晴らし過ぎる歌唱(笑い)。ところで1曲目の《私の歌であなたの心をいっぱいに》のメロディーはヨハン・シュトラウスをパクったような感じで美しく、抒情的な歌です。

そのつながりか、次はJ.シュトラウス2世の喜歌劇「こうもり」の“チャルダッシュ”です。この難曲を中村恵理はやすやすと歌いこなし、やんやの喝采を浴びました。いやはや、凄い歌唱に脱帽です。

この日、最後の3曲はヴェルディとプッチーニの名アリア。大曲続きで大変でしょう。そんな危惧は彼女には無用でした。ヴェルディの歌劇「トロヴァトーレ」の“静かな夜”は凄過ぎる歌唱に呆然となります。さらにそれを上回ったのは歌劇「運命の力」の“神よ、平和を与えたまえ!”。感動的な絶唱でした。中村恵理のヴェルディは凄いです。

ヴェルディの絶唱に驚愕していると、最後のプッチーニはその歌い出しで感動に襲われて、涙が出ます。昨年も宮崎国際音楽祭で聴いた歌劇「蝶々夫人」の“ある晴れた日に”はもう何も言えない最高の歌唱でした。世界でこれ以上歌える人はいないと断言できます。終始、感動しっぱなしでした。あー、素晴らしかった!

アンコールは《私の名はミミ》だろうと思っていましたが、何とレハールの美しいメロディーが流れてきてびっくり。まあ、この曲もソプラノのアンコールの定番曲ではありますね。最後はR.シュトラウスの「献呈」でシメ。もちろん、素晴らしかったです。

満足というよりも感動したリサイタルでした。来月の藤木大地とのジョイントリサイタルに早くも期待しながら、家路につきました。


今日のプログラムは以下です。

  ソプラノ:中村恵理
  ピアノ:木下志寿子

  平井康三郎:しぐれに寄する抒情
  中田喜直:わらい
  小林秀雄:落葉松
  ブラームス:5つの歌曲 Op.105 より
        「メロディーのように」「まどろみはいよいよ浅く」「墓場にて」
  R.シュトラウス:「憩え、わが魂」“Ruhe, mein Seele!”Op.27-1
          「解き放たれて」“Befreit”Op.39-4
          「悪いお天気」“Schlechtes Wetter”Op.69-5

   《休憩》

  E.チャールズ:私の歌であなたの心をいっぱいに
         あなたのため以外には、もう歌わない
  J.シュトラウス2世:喜歌劇「こうもり」 より “チャルダッシュ”
           こうもりアンソロジー(ピアノソロ)
  ヴェルディ:歌劇「トロヴァトーレ」 より “静かな夜”
        歌劇「運命の力」 より “神よ、平和を与えたまえ!”
  プッチーニ:歌劇「蝶々夫人」 より “ある晴れた日に”

   《アンコール》

    レハール:喜歌劇「ジュディッタ」 より “私の唇は熱いキスをする”
    R.シュトラウス:「献呈」“Zueignung” Op.10-1


最後に予習について、まとめておきます。

日本の歌曲は以下のYOUTUBEを聴きました。

 平井康三郎:しぐれに寄する抒情https://www.youtube.com/watch?v=H5qBmUNrGN8
 中田喜直:わらいhttps://www.youtube.com/watch?v=gGmE1SVCtRU
 小林秀雄:落葉松https://www.youtube.com/watch?v=T9sXjaO7h38


ブラームス:5つの歌曲 Op.105は以下のCDを聴きました。

 アン・マレイ、スティーヴン・コワセヴィチ 1994年1月、ロンドン、アビー・ロード・スタジオ

意外にアン・マレイが素晴らしいブラームスを歌ってくれます。びっくりしました。


R.シュトラウスの歌曲は以下のCDを聴きました。

 エリーザベト・シュヴァルツコップ、ジョージ・セル指揮ロンドン交響楽団 1968年9月10-14,18日 ロンドン、キングズウェイ・ホール (「憩え、わが魂」)
 アドリアンヌ・ピエチョンカ、フリードリッヒ・ハイダー指揮ニース・フィルハーモニー管弦楽団 1999年 (「解き放たれて」)
 キリ・テ・カナワ、ゲオルグ・ショルティ指揮BBCフィルハーモニック 90年6月17日,イギリス・マンチェスター・フリー・トレード・ホール (「悪いお天気」)

R.シュトラウスを得意とする3人3様の歌声。悪かろうはずがありません。


E.チャールズの歌曲は以下のYOUTUBEを聴きました。

  私の歌であなたの心をいっぱいにhttps://www.youtube.com/watch?v=7277XqL3Tc4
  あなたのため以外には、もう歌わないhttps://www.youtube.com/watch?v=ySalZA_GO3s


J.シュトラウス2世の喜歌劇「こうもり」は以下のCDを聴きました。

 エディタ・グルベローヴァ、ニコラウス・アーノンクール指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 1987年

全曲盤から、グルベローヴァが歌う“チャルダッシュ”を抜き出して聴きました。グルベローヴァの若々しい歌声が聴けます。


ヴェルディのアリアは以下のCDを聴きました。

 ソーニャ・ヨンチェヴァ、マッシモ・ザネッティ指揮ミュンヘン放送管弦楽団 2017年4月、ミュンヘン、バイエルン放送第1スタジオ

今をときめくヨンチェヴァの圧巻の声の響き。


プッチーニのアリアは以下のCDを聴きました。

 ミレッラ・フレーニ、レオーネ・マジエラ指揮イタリア・ラジオ・テレビ放送管弦楽団 1968月

プッチーニと言えば、フレーニ。彼女のデビューしたての頃の若々しい歌声を聴きました。後年の熟成した歌唱には及びませんが、声のピュアーさは最高です。



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       中村恵理,  

静謐極まりないリゲティ ジャン=ギアン・ケラス、トマーシュ・ネトピル&読売日本交響楽団@サントリーホール 2019.11.29

今日はチェコの精鋭指揮者のトマーシュ・ネトピルに期待大です。ネトピルは8年前にパリオペラ座(ガルニエ宮)でヤナーチェクの《カーチャ・カバノヴァ》を聴いて以来ですが、そのときの彼の指揮の素晴らしかったことが今でも耳に残っています。そのときのブログ記事を読み返すと、ネトピルの指揮でヤナーチェクのオーケストラ曲を聴いてみたいと書いていました。今回の来日で別の読響の公演でヤナーチェクの《シンフォニエッタ》を演奏したようです。ああ、聴きたかった!

ともあれ、まずはモーツァルトの歌劇「皇帝ティートの慈悲」序曲でコンサートが始まります。いやはや、これが素晴らしかった。ネトピルの的確な指揮のもと、読響のアンサンブルが透明な響きでパーフェクトな演奏。非常に感銘を受けました。この曲は今年の9月にルツェルン音楽祭でクルレンツィス指揮ムジカエテルナの途轍もない演奏を聴いたばかりですが、今日のネトピル&読響も優るとも劣らない素晴らしい演奏を聴かせてくれました。

次はオーケストラの定期演奏会では異例のチェロの独奏です。共演のチェロ奏者、ジャン=ギアン・ケラスの希望で、リゲティのチェロ協奏曲に先立っての無伴奏チェロ・ソナタ。リゲティはハンガリー出身のユダヤ人作曲家で、1956年のハンガリー動乱の後、ハンガリーの多くのユダヤ人と同様に亡命して、ウィーンに移住しました。ウィーンに移住後、リゲティはシュトックハウゼンを始めとした、西側の現代音楽に影響されることになります。無伴奏チェロ・ソナタは亡命前のハンガリー時代の作品で、まだまだ、穏やかな作品です。ケラスのチェロは彼の人柄と似合わしく、優し気な演奏で、実にインティメットで静謐な演奏です。短い作品ですが、リゲティの若き日の名作、しっかりと堪能させてもらいました。

そして、チェロ協奏曲です。これは西側に亡命した後の1967年の作品です。ピアノ記号が8つも並ぶ超弱音で独奏チェロが持続音を弾き始めます。そして、次第に響きが豊かになるとともにオーケストラもチェロの響きと融合しながら、静謐な音の空間を形成していきます。ケラスのチェロは決して激することなく、あくまでも優し気な静謐な響きを保ちます。リゲティ特有の宇宙空間を漂うかのような幽玄な音響空間が静かに静かに広がっていきます。そして、最後はまた無に帰することになります。リゲティの音楽は静寂に始まり、静寂に終わります。こういうリゲティの作品が演奏されるのにサントリーホールは最も適しているかもしれません。何故って、世界でも最高級の聴衆が作り出す静寂の空間はサントリーホールだけだからです。演奏者と聴衆が作り出すのが音楽であることがまた実感できました。

休憩後の後半はネトピルのお国もののスークのアスラエル交響曲です。指揮よし、オーケストラよしですが、作品自体の魅力がもう一つ。抒情性にあふれて、民族色もありますが、いずれもそこそこの感じ。師匠のドヴォルザーク、弟子のマルティヌーには音楽性で及ばないようです。それにしても、読響のオーケストラ能力の高さには今日も舌を巻きました。一流指揮者が振ると、鉄壁です。ネトピルももっと上のポジションを狙える逸材です。チェコ・フィルはフルシャとネトピルのどちらが掌握することになるんでしょうか。ネトピルはオペラのピットのほうが似合うかもしれません。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:トマーシュ・ネトピル
  チェロ:ジャン=ギアン・ケラス
  管弦楽:読売日本交響楽団 白井圭(コンサートマスター(ゲスト))

  モーツァルト:歌劇「皇帝ティートの慈悲」序曲
  リゲティ:無伴奏チェロ・ソナタ
  リゲティ:チェロ協奏曲
   《アンコール》バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番より、サラバンド

   《休憩》

   ハ短調 Op.27

最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のモーツァルトの歌劇「皇帝ティートの慈悲」序曲を予習したCDは以下です。

 オットー・クレンペラー指揮ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 1964年 セッション録音

クレンペラーがモーツァルトを振ると、なんだか重くなりそうな感じですが、そんなことはありません。実に軽快で颯爽とした見事な演奏でした。


2曲目のリゲティの無伴奏チェロ・ソナタを予習したCDは以下です。

 ピーター・ウィスペルウェイ 2008年8月、オランダ、オンデル・デ・リンデン ライヴ録音
 
ウィスペルウェイはバッハの無伴奏と同様にこのリゲティも見事に弾きこなしています。


3曲目のリゲティのチェロ協奏曲を予習したCDは以下です。

 ジャン=ギアン・ケラス、ピエール・ブーレーズ指揮アンサンブル・アンテルコンタンポラン 1992年10月、パリ、IRCAM-Studio スタジオ録音
 
若きケラスが巨匠ブーレーズとコンビを組んで録音したアルバムです。やはり、ブーレーズの演奏という色彩が濃いものです。ケラスはもっともっと熟成して今日に至ります。


4曲目のスークのアスラエル交響曲を予習したCDは以下です。

 イルジー・ビエロフラーヴェク指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 2014年10月2-3日、プラハ

ビエロフラーヴェクが亡くなる2年半ほど前に録音した貴重なアルバムです。さすがの演奏です。
 


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最高の音響空間で素晴らしい音響の現代音楽:アルディッティ・カルテット@鶴見サルビアホール 2019.11.28

いつも音の響きの素晴らしさで驚かされる鶴見サルビアホールですが、今日はいつも以上に現代音楽の旗手のアルディッティ・カルテットの音響の素晴らしさに感銘を受けました。現代音楽は初心者の域を出ないsaraiは今日の音楽内容について、うんぬんする資格は露ほどもありません。無調の中でも、少し旋律めいたものが聴きとれた最初のハーヴェイの作品と最後のデュサパンがより楽しめたというくらいです。

最初のハーヴェイの弦楽四重奏曲 第2番はチェロがハーモニクス(多分)奏法で高音部を担当し、しっかりした音程で美しい旋律を奏でていて、その超絶的な演奏に聴き惚れました。無調の響きの美しさが十全に発揮された見事な演奏でした。

クルタークの曲は正直、もうひとつ、ついていけませんでした。音響の多彩な美しさはありましたけどね。

野平一郎の弦楽四重奏曲 第5番は、いい意味で日本的な要素がまったく感じられない作品で、アルディッティ・カルテットがこの難しい曲をパーフェクトに演奏したのは恐れ入りました。作曲者自身が会場にお見えになっていました。残念ながら、saraiの耳では理解不能ではありました。

後半はゲオルグ・フリードリッヒ・ハースの弦楽四重奏曲 第2番から開始。旋律もリズムもまったくない曲で、重層的な音響だけの作品です。実はてっきり、パヴェル・ハースの作品だと思って、予習もして、聴いていたので、最後まで勘違いして聴いてしまいました。モラヴィア風の響きを探しているうちに演奏が終了。あれっと思っただけで、これ以上は感想が書けません。如何に現代音楽の教養が自分にないことだけが思い知らされる結果となりました。

最後はデュサパンの弦楽四重奏曲 第5番。予習したアルディッティ・カルテットの素晴らしい演奏と同様に、そのままの美しい演奏がこのホールで再現されました。全体を統合する調性も感じさせられる美しく抒情的な旋律が変容されていく様はその現代的な響きを通して、心に迫ってきました。素晴らしい音楽が最高の演奏でホールに響き渡りました。


今日のプログラムは以下です。

  弦楽四重奏:アルディッティ・カルテット
   第1ヴァイオリン:アーヴィン・アルディッティ
   第2ヴァイオリン:アショット・サルキシャン
   ヴィオラ:ラルフ・エーラース
   チェロ:ルーカス・フェルス

  ハーヴェイ:弦楽四重奏曲 第2番
  クルターク:小オフチウム Op.28
      ~エンドレ・セルヴァンスキの想い出に~
  野平一郎:弦楽四重奏曲 第5番

   《休憩》

  ゲオルグ・フリードリッヒ・ハース:弦楽四重奏曲 第2番
  デュサパン:弦楽四重奏曲 第5番


予習はアルディッティ・カルテットの演奏で、ハーヴェイ、クルターク、デュサパンを聴きました。高精度の演奏に驚嘆するのみ。野平一郎は音源が入手できずに予習なし。ゲオルグ・フリードリッヒ・ハースは誤って、パヴェル・ハースの作品をパヴェル・ハース・カルテットの演奏で聴きました。ヤナーチェクを連想する音楽に感銘を受けたんですけどね。



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奇跡のコンサート!ブランデルブルク協奏曲全曲 バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル 2019.11.24

今日、2回目のコンサートはバッハ・コレギウム・ジャパンのブランデンブルク協奏曲全曲。これが凄かった! まあ、いつものように名人揃いの演奏で素晴らしいだろうとは思っていましたが、それを遥かに凌駕するあり得ないような演奏が続きました。
古楽で演奏するブランデンブルク協奏曲はモダンオーケストラの演奏とは違って、少人数での室内楽みたいなものです。全曲通してずっと舞台にいたのは指揮・チェンバロの鈴木優人と通奏低音のコントラバス奏者くらいで、曲ごとに楽器もメンバーも入れ替わります。よくこんなに楽器とメンバーを揃えたものです。その彼らが名人揃いで口あんぐりの演奏をしてくれるのですから、たまりません。
どれも素晴らしかったのですが、とりわけ、第2番が素晴らしかったんです。若松夏美のヴァイオリン、アンドレアス・ベーレンのリコーダー、ギ・フェルベの渦巻き型トランペット(まるで小型ホルンみたい!)、三宮正満のオーボエ・ダ・モーレ(かな?)の超絶的アンサンブルは聴いている最中から、あまりの凄さに笑っちゃうくらいです。名人たちが集まると、音楽がこんなに楽しくなるのね。作曲したバッハ本人もこの場にいれば、笑っちゃうでしょう。それともバッハの時代にもこんな名人たちがいたんでしょうか。
今回、バッハ・コレギウム・ジャパンの若返りをはかるためか、一部、若手の登用もありました。名人たちに交じって、明日のバッハ・コレギウム・ジャパンを担うべく、頑張れ!若手。
全体を見事に統括したのは若きBCJ(バッハ・コレギウム・ジャパン)の司令塔、鈴木優人。もう立派に父親、鈴木雅明の任を引き継いでいます。第5番のチェンバロ独奏も見事でした。音楽の世界では楽才のDNAを引き継いだ例は少なくないですが、このように目の当たりにすると本当に驚いてしまいます。来シーズンはBCJ創設30周年だそうです。鈴木雅明のBCJ創設の功績は偉大ですが、それ以上に彼を超えるとも思える逸材、鈴木優人を育て上げたことが素晴らしいですね。

ちなみに鈴木優人は前後半、マイクを握って、軽く演奏の解説をしてくれました。実に適切で簡明なスピーチ。こういうところにも才能が滲みます。今日の演奏順は前半の3曲が調号にフラットがあるもので、順にフラット一つ、二つ、一つの曲。後半の3曲が調号にシャープがあるもので、順にシャープ一つ、二つ、一つの曲。そういう構成に関する説明もありました。

ともあれ、ブランデンブルク協奏曲全曲を実演で聴きとおしたのは初体験。それがこんなに素晴らしい演奏に出会えたとは、何と幸運だったのでしょう。それも日本にいながらにして、こんな最上級のものを聴けるのは幸せ以外の何ものでもありません。

今日は1回目のコンサートも素晴らしかったし、音楽ファンとして、素晴らしい一日でした。1回目のコンサート、ノット&東響のモーツアルト・マチネの記事はここに書きました。


今日のプログラムは以下です。

  指揮・チェンバロ:鈴木 優人
  トランペット:ギ・フェルベ
  フラウト・トラヴェルソ:鶴田洋子
  リコーダー:アンドレアス・ベーレン
  ホルン:福川伸陽
  オーボエ:三宮正満
  ヴァイオリン:若松夏美、高田あずみ、山口幸恵
  管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン

  J. S. バッハ 《ブランデンブルク協奏曲》全曲 BWV 1046〜1051

   第1番 ヘ長調 BWV 1046
   第6番 変ロ長調 BWV1051
   第2番 ヘ長調 BWV1047

   《休憩》

   第4番 ト長調 BWV1049
   第5番 ニ長調 BWV1050
   第3番 ト長調 BWV1048

最後に予習について、まとめておきます。

新旧の代表的な名盤を聴きました。

 ジギズヴァルト・クイケン指揮ラ・プティット・バンド 2009年録音
 カール・リヒター指揮ミュンヘン・バッハ管弦楽団 1963年録音 LPレコード

いずれも素晴らしい演奏です。何故か、両者とも第4番が特に優れた演奏です。リヒター盤は素晴らしく状態のよいLPレコードで聴きました。驚くほどの音質のよさに驚愕しました。



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       バッハ・コレギウム・ジャパン,  

さらに精度を上げたR.シュトラウス、モーツァルトの極美の響き・・・ノット&東京交響楽団:モーツァルト・マチネ 第38回@ミューザ川崎シンフォニーホール 2019.11.24

今日はコンサートを2回聴きます(ミューザ川崎、東京オペラシティ)。1回目は朝11時からのミューザ川崎でのモーツァルト・マチネ。ほぼ、昨日聴いた東響のオペラシティ定期と同じプログラムです。本来、オペラシティ定期とモーツァルト・マチネは関係ありませんが、ノット&東響とモーツァルトつながりで同じようなプログラムになったのでしょう。今日のプログラムでは、昨日の素晴らしかったリゲティを除いて、R.シュトラウスのオーボエ協奏曲とモーツァルトの交響曲第41番《ジュピター》が演奏されます。

まず、R.シュトラウスのオーボエ協奏曲です。おっ、第1楽章から、荒 絵理子のオーボエの響きは柔らかいです。昨日に比べて、リラックスして演奏できているようです。昨日はちょっと肩に力が入り過ぎていたのかもしれません。気のせいか、表情も柔和な感じです。第2楽章に入ると、彼女のオーボエの響きと表情はさらに冴え渡り、まるでゾーンに入ったような素晴らしさ。前日以上にシュトラウスのオペラのアリアを聴いている感じになります。陰影に富み、誠実で人生をしみじみと振り返るような音楽に感銘を受けます。そして、第3楽章への経過部にはいります。昨日はここから少し演奏に固さと乱れがありましたが、今日の彼女の演奏は万全です。第3楽章の前半を素晴らしい演奏で乗り切り、そのまま、終盤に向かっていきます。圧巻のフィナーレを吹き切ってくれました。やはり、ホームグラウンドのミューザ川崎で心が安定したんでしょうか。ノット指揮の東響とのアンサンブルも素晴らしいものでした。素晴らしいR.シュトラウスの晩年の作品を聴けて、saraiも万感の思いです。

さて、次はモーツァルトの交響曲 第41番「ジュピター」です。昨日と同様、終始、万全の演奏でした。ノットが指揮台上で大きく動き回りながら、オーケストラを鼓舞します。東響は素晴らしく響き渡るトゥッティと冴え冴えとした弦楽アンサンブルで耳を楽しませてくれます。終楽章に入ると、音楽はますます熱気をはらんでいきます。リズムに乗って、東響のアンサンブルが前へ前へと走り抜けていきます。その颯爽とした音楽に聴く者の心が高潮するのみです。そして、圧巻のフィナーレ。いやはや、ノットのモーツァルトには参りました。

これで今日の1回目のコンサートは大いなる満足感のうちに終了。では、2回目のコンサート会場に移動します。2回目のコンサートはバッハ・コレギウム・ジャパンのバッハ、ブランデルブルク協奏曲全曲です。このコンサートの記事はここです。

  指揮:ジョナサン・ノット
  オーボエ:荒 絵理子(東京交響楽団首席奏者)
  管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:グレブ・ニキティン

  R.シュトラウス:オーボエ協奏曲 ニ長調
  モーツァルト:交響曲 第41番 ハ長調 K.551 「ジュピター」

   休憩なし


最後に予習について、まとめておきます。(内容は昨日の記事と同じです。悪しからず。)

1曲目のR.シュトラウスのオーボエ協奏曲を予習したCDは以下です。

 ローター・コッホ、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1969年9月、ベルリン、イエス・キリスト教会 セッション録音

ローター・コッホの安定した演奏とその表現力が見事です。R.シュトラウスを得意とするカラヤンも晩年のシュトラウスの穏やかな諦念を美しく表現します。素晴らしい演奏です。この曲でここまでの演奏は初めて聴きました。名曲ですね。もっと、これからよい演奏が現れることを念願します。


2曲目のモーツァルトの交響曲 第41番「ジュピター」を予習したCDは以下です。

 ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団 1963年10月11日&25日、クリーヴランド、セヴェランス・ホール セッション録音
 ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団 1985年5月10日、ミュンヘン、ヘラクレスザール ライヴ録音
 ブルーノ・ワルター指揮ニューヨーク・フィル 1956年3月5日 ニューヨーク、30th Street Studio モノラル、セッション録音

セルの引き締まった素晴らしい響きの演奏はまさに決定盤。クーベリックは意外にゆったりした正攻法の演奏で味わい深いものがあえいます。しかし、モーツァルトと言えば、ワルター。saraiが子供の頃から聴いてきたのはコロンビア交響曲とのステレオ録音。これは耳に焼き付いていますから、予習の必要はありません。ニューヨーク・フィルとの演奏はもっときびきびしています。演奏時間も短い筈です。第2楽章だけはこのニューヨーク・フィルともテンポを落とし、音量も小さくして、極めて美しい演奏をしています。これは誰にも真似できないワルターの至芸です。



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       ジョナサン・ノット,  

リゲティ、R.シュトラウス、モーツァルトの極美の響き・・・ノット&東京交響楽団@東京オペラシティコンサートホール 2019.11.23

今日のノット&東響もウーンと唸らされる最高の演奏。そもそも、リゲティ、R.シュトラウス、モーツァルトと並べたプログラムが素晴らしいので、成功は最初から約束されていたようなものです。

どれも素晴らしかったのですが、特にリゲティはスペシャリストのノットならではの極上の演奏。《メロディーエン》はあたかも漆黒の闇を光の粒が飛び舞う様を思い浮かべるような未体験のオーケストラの響きに魅了されます。冒頭から、その光の粒はキラキラと飛び交い、いったん、上昇して、天頂に留まります。その後、地上に降り立って、魅惑の動きをした後、閃光がほとばしって、また、天頂に上り詰め、次第に消え去っていきます。リゲティ、畢生の名作をノットと東響は至高の演奏で魅惑してくれました。わずか13分ほどの曲ですが、美しい響きがぎゅっと凝縮されたような傑作の名演でした。

R.シュトラウスのオーボエ協奏曲は晩年の名作です。最後のオペラ《ダナエの愛》、《カプリッチョ》の残影のような誠実さと諦観に満ちた隠れた名曲です。今日の演奏は東響の誇るオーボエ奏者の荒 絵理子の見事な演奏、美しい響きがすべてです。とりわけ、第2楽章はまるで歌詞のないオペラのアリアを聴いているような気になりました。《ダナエの愛》の終盤のダナエのモノローグのようなアリア、《カプリッチョ》の終幕の伯爵令嬢のモノローグのアリアの世界です。きっと荒 絵理子も意識して演奏していたんでしょう。最高のR.シュトラウスを堪能しました。もちろん、ノット指揮の東響の伴奏も完璧でした。

後半のモーツァルトの交響曲 第41番「ジュピター」は前半と一転して、古典の音塊(字の誤りではありませんよ)がバンバン鳴り響きます。小気味よい演奏が心地よく感じられます。特に両端楽章が素晴らしい演奏で、これぞ現代のモーツァルト演奏の規範という感じでした。中間の2つの楽章は美しい響きにかえって集中力がそがれて、夢見心地・・・。終楽章の素晴らしいフーガに心奪われながら、ノットのモーツァルトを満喫しました。聴きようによっては、モーツァルトのオペラに通じるところもあるような演奏スタイルでしたし、ノットの指揮の姿の華麗さも見ものでした。特に指揮棒を持っていない左手の動きが素晴らしく、見事にオーケストラを操っていました。

ちなみに明日もR.シュトラウス、モーツァルトの2曲を聴きます。明日はさらにダブルヘッダーでバッハ・コレギウム・ジャパンの名人たちのブランデルブルク協奏曲全曲も聴きます。毎日、音楽三昧でこんなに人生が楽しくてよいものか・・・。

  指揮:ジョナサン・ノット
  オーボエ:荒 絵理子(東京交響楽団首席奏者)
  管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:グレブ・ニキティン

  リゲティ:管弦楽のためのメロディーエン
  R.シュトラウス:オーボエ協奏曲 ニ長調

   《休憩》

  モーツァルト:交響曲 第41番 ハ長調 K.551 「ジュピター」


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のリゲティの管弦楽のためのメロディーエンを予習したCDは以下です。

 ジョナサン・ノット指揮スイス・ロマンド管弦楽団 2018年6月 ジュネーヴ、ヴィクトリア・ホール セッション録音
 
これは同曲の決定盤でしょう。リゲティの譜面を精緻に読み込んだノットの指揮が光ります。これを上回る演奏があるとすれば、ノット&東響の演奏のみ。


2曲目のR.シュトラウスのオーボエ協奏曲を予習したCDは以下です。

 ローター・コッホ、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1969年9月、ベルリン、イエス・キリスト教会 セッション録音

ローター・コッホの安定した演奏とその表現力が見事です。R.シュトラウスを得意とするカラヤンも晩年のシュトラウスの穏やかな諦念を美しく表現します。素晴らしい演奏です。この曲でここまでの演奏は初めて聴きました。名曲ですね。もっと、これからよい演奏が現れることを念願します。


3曲目のモーツァルトの交響曲 第41番「ジュピター」を予習したCDは以下です。

 ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団 1963年10月11日&25日、クリーヴランド、セヴェランス・ホール
 ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団 1985年5月10日、ヘラクレスザール ライヴ
 ブルーノ・ワルター指揮ニューヨーク・フィル 1956年3月5日 ニューヨーク、30th Street Studio モノラルのセッション録音

セルの引き締まった素晴らしい響きの演奏はまさに決定盤。クーベリックは意外にゆったりした正攻法の演奏で味わい深いものがあえいます。しかし、モーツァルトと言えば、ワルター。saraiが子供の頃から聴いてきたのはコロンビア交響曲とのステレオ録音。これは耳に焼き付いていますから、予習の必要はありません。ニューヨーク・フィルとの演奏はもっときびきびしています。演奏時間も短い筈です。第2楽章だけはこのニューヨーク・フィルともテンポを落とし、音量も小さくして、極めて美しい演奏をしています。これは誰にも真似できないワルターの至芸です。



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       ジョナサン・ノット,  

なんというマーラー、ノットでしかなしえないマーラー!・・・ジョナサン・ノット&東京交響楽団@サントリーホール 2019.11.16

マーラーの交響曲では最も難解な作品(saraiにとってですが)がこのこの交響曲第7番。自分によく言い聞かせるようにしてコンサートに望みました。①ほかの交響曲のように愛と死の人間ドラマがあるわけではないので、主観的にのめりこむような聴き方をしないで、少し距離を置いて、客観的な聴き方をすること、②ヴェルター湖、マイヤーニックの作曲小屋の自然がたっぷりと描き出されているので、あの風景をイメージしながら聴くこと、③いつにもまして、集中力を切らさずに聴き続けること・・・の3点です。ところが、こういうsaraiの思いを嘲笑うかのようなノットの素晴らしい指揮でした。CDで予習したバンベルク交響楽団の演奏からは飛躍的な進化を遂げていました。第1楽章の冒頭の付点のリズムの弦楽パートに続いて、明快な金管のメロディー。そうです。実に明快な演奏でした。どこにも難解さの影すらありません。自然描写とか、そんなことは気にせずに、ただ、美しい音楽に耳を傾けるのみ。新ヴィーン学派やリゲティなどのポストモダンの音楽を得意にするノットにとって、このマーラーの第7番はうってつけなのかもしれません。決してマーラー指揮者とは思えないノットですが(saraiが勝手にそう思っているだけで、もちろん、悪い意味ではありません)、マーラーの第7番に関してはまさにスペシャリストとしてうってつけかもしれません。長大な第1楽章は終始素晴らしい演奏。傷がないわけではありませんが、細部まで磨き上げられた表現にすっかり魅惑されました。それにジョナサン・ノットの指揮姿の美しいこと。マーラーの音楽がノットのダンスのような美しい指揮のバックグラウンドミュージックのように響きます。初めて、この第7番の素晴らしさを知りました。第2楽章以降も最高の演奏が続きます。よく題名に使われる《夜の歌》がいかに相応しくないかを思い知らされるような演奏です。最後の第5楽章に至ると、もう思いっ切りの演奏。分裂症気味の表現が炸裂します。あれっ、こんな凄い曲だったっけ・・・。興奮しながら、フィナーレの大爆発を迎えます。鐘やカウベルが満を持して、打ち鳴らされながら、途轍もない大音響。それがピタッと止まって終了。早過ぎる拍手はサントリーホールのマナーに反するものです。少しでもいいから静寂がほしかったところですが、素晴らしかった演奏に免じて、許しましょう。ジョナサン・ノットは在任中にマーラーの全交響曲を演奏すると言っているそうです。楽しみですが、saraiがこれまでに聴いたのは第10番のアダージョのみ。交響曲第2,3,8,9番は既に演奏されたそうです。残念! 聴き逃がしました。交響曲第2,3,8,9番はすべて大物揃いですね。再演をお願いしたいです!!! 来シーズンは第5番が聴けそうです。あとは第1番と第6番ですね。うーん、第3番と第9番は是非、聴きたい!(しつこい)

前半のベルクの管弦楽のための3つの小品はノットの優雅な指揮が印象的。ベルクのあのねっとりした雰囲気は希薄で、ノットが音を整理するとこんなすっきりした音響になるのねって感じです。新ヴィーン学派の音楽を得意にするノットの手にかかると、ベルクも見通しのよい音楽に変身します。それでも後半のマーラーと比較すると、やはり、ベルクの音楽は前衛的に思えます。いいものを聴かせてもらいました。こうなると、《ルル》組曲も聴きたくなりますね。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:ジョナサン・ノット
  管弦楽:東京交響楽団  コンサートマスター:水谷晃

  ベルク:管弦楽のための3つの小品 op.6

   《休憩》

  マーラー:交響曲 第7番 ホ短調 「夜の歌」


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のベルクの管弦楽のための3つの小品を予習したCDは以下です。

 クラウディオ・アバド指揮ウィーン・フィル 1992年4月、ウィーン セッション録音
 
ベルクらしく、ウィーンのねっとりとした雰囲気がむんむんという感じの好演。


2曲目のマーラーの交響曲 第7番を予習したCDは以下です。

 ジョナサン・ノット指揮バンベルク交響楽団 2011年7月11-15日、バンベルク、ヨゼフ・カイルベルト・ザール セッション録音

ノットは当時、音楽監督をしていたバンベルク交響楽団とマーラーの交響曲全集を完成させています。第5番から始まった録音は最後にこの第7番が録音されました。この演奏では抑制された表現ながら、丁寧な仕上げが目立ちます。もう少し、自分の個性を出したらいいのにと現在のノットを知っている者としては思ってしまいますが、好演であることは間違いありません。



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       ジョナサン・ノット,  

バランスのとれた見事な演奏:ヘンシェル・クァルテット@鶴見サルビアホール 2019.11.14

久しぶりの鶴見サルビアホール。今や、このホールは弦楽四重奏の殿堂です。今日のヘンシェル・クァルテットもバランスの取れた素晴らしい演奏を繰り広げてくれました。とても響きのよいホールですが、あまり、響かせ過ぎずにしっとりした演奏。まさにこれぞ室内楽という感じ。曲目も有名曲は避けて(?)、新鮮な曲ばかりです。

前半のメンデルスゾーンのOp.81は単独に作られた4曲をまとめたもの。それでもすべて、メンデルスゾーンらしい明るく若々しい魅力に富んでまとまった感じの作品になっています。最初の2曲が晩年の1847年に作曲されたものですが、ちょっと聴くと、いかにも若い頃の作品に聴こえる清新さに満ちています。最期まで若々しい感性を保ったメンデルスゾーンらしい曲の内容です。特に第2曲は《真夏の世の夢》の「スケルツォ」の雰囲気そっくりのいきいきとした魅力に富んでいます。ヘンシェル・クァルテットは安定したアンサンブルで正確な演奏。それでいて、退屈な演奏になっていないのは彼らの実力なのでしょう。第3曲と第4曲は作品番号とは逆の順の演奏。最後を盛り上がって終わるためでしょうか。4曲は特別に順序はないので、入れ替えて演奏しても問題はありません。3番目に演奏した第4曲はゆったりしたフーガ。メンデルスゾーンも相当にバッハを研究したことがうかがわれます。とても美しい演奏にうっとりします。最後はカプリッチョ。中間の対位法的なパートが美しく奏でられて、終盤は高潮した演奏で素晴らしい盛り上がりです。滅多に演奏されない曲ですが、とても完成度の高い演奏でした。

前半の2番目はシュルホフの弦楽四重奏曲 第1番。ある意味、今日のコンサートの目玉です。シュルホフが聴ける機会はそう多くはありませんからね。パヴェル・ハースと同様にシュルホフもナチスの収容所で命を落としたユダヤ系のチェコ人です。最近、再評価が進んでいる作曲家のひとりで、注目して聴きました。正直、この曲をそう把握しているわけではありませんが、素晴らしく充実した演奏でした。音色の多彩さの表現を始めとして、こなれた演奏に思えました。終楽章のアンダンテは印象深く、感銘しつつ、曲が閉じられました。

後半のシューマンは個人的にとても心惹かれる演奏。密やかなロマンティシズムにうっとりしました。シューマンの作品の魅力によるものですが、それを十全に表現してくれたヘンシェル・クァルテットの見事な演奏に感謝です。特に第3楽章の魅惑的な演奏に魅了されました。

爆発的な魅力がある演奏ではありませんが、いかにもイギリスの演奏団体らしく、落ち着いて、しっとりとした演奏は室内楽の奥深さを感じさせてくれました。満足のいったコンサートになりました。やはり、鶴見で聴くカルテットは特別です。

今日のプログラムは以下です。

  弦楽四重奏:ヘンシェル・クァルテット
    クリストフ・ヘンシェルvn テレサ・ラ・クールvn モニカ・ヘンシェルva マティアス・バイヤー=カルツホイvc


  メンデルスゾーン: 弦楽四重奏のための4つの小品 Op.81
   第1曲 「主題と変奏」 ホ長調 (1847年) Andante - Un poco pou animato - Presto - Andante come prima
   第2曲 「スケルツォ」 イ短調 (1847年) Allegro leggiero
   第4曲 「フーガ」 変ホ長調 (1827年) A tempo ordinario
   第3曲 「カプリッチョ」 ホ短調 (1843年) Andante con moto - Allegro fugato. assai vivace
  シュルホフ: 弦楽四重奏曲 第1番

   《休憩》

  シューマン: 弦楽四重奏曲 第3番 イ長調 Op.41-3

   《アンコール》
    ラヴェル:弦楽四重奏曲 ヘ長調から、第2楽章Assez vif. Très rythmé イ短調


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のメンデルスゾーンの弦楽四重奏のための4つの小品を予習したCDは以下です。

 エマーソン四重奏団 2004年4月 ニューヨーク
 
これはエマーソン四重奏団によるメンデルスゾーンの弦楽四重奏のための全作品とさらに弦楽八重奏曲まで含む全集盤に含まれるものです。実際に収録されているのは、4つの小品がまとめられているのではなく、作曲年順にばらばらになっています。それを作品番号順に再構成して聴きました。名人集団のエマーソン四重奏団ですから、安心して聴ける、素晴らしい演奏です。


2曲目のシュルホフの弦楽四重奏曲 第1番を予習した録音は以下です。

 ブロドスキー四重奏団 2013年 ライヴ録音

ショスタコーヴィチの全集で素晴らしい演奏を聴かせてくれたブロドスキー四重奏団はシュルホフでも極めて高精度の演奏を聴かせてくれます。


3曲目のシューマンの弦楽四重奏曲 第3番を予習したCDは以下です。

 エマーソン四重奏団 2004年4月 ニューヨーク


メロス弦楽四重奏団を聴いてもよかったのですが、今回はエマーソン四重奏団を聴く気分。やはり、素晴らしい演奏でした。美しい響きでシューマンのロマンを香り高く演奏しています。



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河村尚子のラストスパートは見事なピアノ・ソナタ 第32番 ハ短調 Op.111 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ・プロジェクト Vol.4@紀尾井ホール 2019.11.13

河村尚子の2年間、4回にわたるベートーヴェンのピアノ・ソナタ・ツィクルスが今日のコンサートで完了。若手ピアニストが全力で取り組んだ成果は十分に受け止めました。全曲ツィクルスとはなりませんでしたが、とても聴きどころが満載でした。彼女のピアノは切れ味のよいタッチの美しい響きで音楽を奏でていき、技巧が安定していること。それはベートーヴェンのピアノ・ソナタでも遺憾なく発揮されました。それに十分な準備をしたと思われる仕上がりのよさも感じられました。今後、彼女がさらなる成熟の道を歩み、いつの日か、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲ツィクルスに挑戦することを楽しみにしていましょう。

今日は最後のコンサートであり、ベートーヴェンの後期ピアノ・ソナタ3曲というとても重い選曲です。正直言って、ちょっともどかしく感じるところもありましたが、彼女のピアノは次第に熱を帯びていきます。そして、第32番ハ短調のソナタでは素晴らしい演奏にじっと聴き入りました。とりわけ、第1楽章の圧倒的な迫力には特別なオーラを感じるほどの出来栄え。第2楽章アリエッタの最後に回帰したフーガの美しい演奏にも魅了されました。アンコールで弾いた第30番の終結部分はプログラム本番での演奏以上の素晴らしさ。それとも、プログラム本番ではきちんと聴き取れていなかっただけだったのでしょうか。

4回のツィクルスを通じて、最高の演奏だったのは難曲の《ワルトシュタイン》でした。あれはずっと記憶に残る凄絶な演奏でした。河村尚子の飛躍を今後も見届けたいと思っています。


今日のプログラムは以下です。

  <オール・ベートーヴェン・プログラム>

  ピアノ・ソナタ 第30番 ホ長調 Op.109
  ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調 Op.110

   《休憩》

  ピアノ・ソナタ 第32番 ハ短調 Op.111

   《アンコール》

    ピアノ・ソナタ 第30番 ホ長調 Op.109より、第3楽章の第6変奏と回想主題


最後に予習について、まとめておきます。以下のCDを聴きました。

 田部京子 2015年8月12日-14日 東京 稲城iプラザ セッション録音

田部京子の演奏はいつもながら詩情が漂っていて、強い感銘を覚えます。演奏技術が大変優れていて、ピアノの響きも美しい上に音楽性が豊かなのですから、言うことがありません。是非ともベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲の録音をお願いしたいところです。全曲ツィクルスの実演ならさらに結構ですけどね。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

       河村尚子,  

ティーレマンが振るとウィーン・フィルが美しく鳴る:ブルックナーの交響曲第8番@サントリーホール 2019.11.11

チェリビダッケはブルックナーは美しくなければならないと言い、実際、彼とミュンヘン・フィルによるライヴ録音で交響曲第8番を聴くと卒倒するほどの究極の美しさに感動します(リスボンライヴ、東京ライヴ、ミュンヘンライヴ)。今日のティーレマンウィーン・フィルから引き出した響きはチェリビダッケとはまた質が違いますが、恐ろしいほどの美しさに満ちていました。巨匠ティーレマン、世界最高のオーケストラのウィーン・フィルの名に恥じない素晴らしい演奏に脱帽です。これまでウィーン・フィルのブルックナーは何度となく聴いてきましたが、これほどの美しい響きを聴いたのは初めてです。さすがにティーレマンです。そう言えば、このコンビでブルックナーを聴くのは初めてかな。サントリーホールがまるでウィーンの楽友協会大ホールにように音が鳴りまくっていました。その美しい響きをベースにブルックナーの精神性の高い音楽が奏でれるのですから、たまりません。いつもはこの第8番は第3楽章で頂点に達し、第4楽章で上り詰めるというのが常ですが、今日は第1楽章から、その音響美にうっとりして聴き入っていました。もちろん、第3楽章の超絶的な美しさも天国的でしたし、第4楽章の終盤、上昇音型が繰り返し現れるあたりからの盛り上がりは大変なものでした。圧倒的なフィナーレではティーレマンはいつものごとく、神のような存在と化していました。曲が終わっても神のごときティーレマンが指揮棒を下すまではホール内には完全な静寂が続きます。この静寂を作り出すサントリーホールの聴衆は世界最高の聴衆でもありますね。

アンコール曲は不要なブルックナーの交響曲第8番ですが、それでもアンコール曲を演奏できるのはウィーン・フィルならではでしょう。ウィンナーワルツという鉄板プログラムがありますからね。俄かにニューイヤーコンサートと化したサントリーホールでした。やんやの喝采で指揮者コールは2回でした。

今日のプログラムは以下のとおりです。

  指揮:クリスティアン・ティーレマン
  管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

  ブルックナー:交響曲第8番 ハ短調 WAB 108(ハース版)

   《アンコール》
    ヨーゼフ・シュトラウス:ワルツ『天体の音楽』Op.235


最後に予習について、まとめておきます。

ブルックナーの交響曲第8番を予習したCDは以下です。

  ベルナルト・ハイティンク指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 2007年8月22日 コンセルトヘボウ、アムステルダム ライヴ録音 非正規盤

saraiの生涯で聴いた最高のブルックナーの交響曲第8番は2013年の4月にアムステルダムで聴いたベルナルト・ハイティンク指揮のロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏でした。このCDはそのおよそ5年前の同じホール、同じコンビの演奏で同じノヴァーク版の演奏です。saraiが実演で聴いた究極の演奏には及びませんが素晴らしい演奏ではあります。



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テーマ : クラシック
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       ティーレマン,        ウィーン・フィル,  

西欧文化を体現する圧巻の演奏:ベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲・・・アンドラーシュ・シフ&カペラ・アンドレア・バルカ@東京オペラシティコンサートホール 2019.11.8

まるでシフ教授を囲むシュンポシオン(シンポジュウム)を聞いているかのごとき、西欧文化の精華を満喫するコンサートでした。西欧文化の中心には音楽は欠かせない存在であることを再確認しました。シフ教授の弾くピアノは美しいだけでなく、知性の薫りに満ちており、オーケストラの面々はその講義を聴きながら、各々も自主的な発表を行い、その様子を我々、聴衆が垣間見るという雰囲気です。ヘルマン・ヘッセの《ガラス玉演戯》そのものの姿ではありませんか。そして、そのシュンポシオンの核にはベートーヴェンが西欧文化に打ち立てた古典音楽(ロマン派への道程も示されていますが)が中心テーマになっています。

妙な前置きになってしまいましたが、単に素晴らしい演奏だったとか、完璧なベートーヴェンのピアノ協奏曲だったと言ってしまっては語弊があると思うほどの高いレベルの音楽だったんです。聴衆がただ音楽に耳を傾けるだけでなく、音楽からの深い文化的な示唆を受けて、その理解度を試される場であったとも思えます。シフ教授はピアノを弾きながらも、そのメッセージが聴衆に正しく伝わっているかを察知していたようにも思えます。聴衆は静寂の中で集中力を発揮して、十分に理解したサインをシフ教授に送り返していたと思います。演奏後の盛り上がった拍手だけが重要ではなかったと思います。

今日の前半に演奏された第1番は凄い演奏でした。昨日からの全5曲はすべて最高レベルの演奏でしたが、ひとつだけ選ぶとしたら、この第1番が究極の演奏。第1楽章の冒頭のオーケストラ演奏の響きから、何かが起こると予感させるものでした。その素晴らしさは書き尽くせませんが、第1楽章の長大なカデンツァはありえないレベルの恐るべき演奏でした。美しさもエネルギー感もそのすべてが音楽の頂点に立つような小宇宙を形成しています。まったくもって、今のシフの凄さと言ったら、歴史上最高のピアニストと言っても過言でありません。ところで第1楽章の展開部の終盤で再現部に移行する部分でオクターブのグリッサンドがあると解説に書いてあったので、注目していましたが、シフは何の造作もなく、見事に弾き切りました。その右手の動きは目にも止まらぬ早業としか言えません。ちなみにその部分の楽譜は以下です。1段目の最後にあるグリッサンドです。

2019110801.jpg



右手だけでオクターブを弾かずに、両手で弾けばよさそうですが、左手はバス音を弾かないといけないので、やはり、右手だけでオクターブを弾く必要があります。ベートーヴェンの時代の楽器はフォルテピアノで現代のピアノと違って、鍵盤のタッチが軽かったので、現代のピアノで弾くほどの困難さはありませんでした。それでもベートーヴェンの弟子だったカール・チェルニーはその著書でオクターブが難しければ、単音で上部の音列だけを弾きなさいと記しているくらいですから、当時でも難しい奏法だったようです。いやはや、凄い演奏技術を見せてもらいました。

後半の皇帝ももちろん、最高でした。昨日聴いた3曲が霞んでしまうほどの演奏でした。シフのピアノのタッチの美しさはますますさえ渡りました。自然で肩に力が入っていないけれども不思議にピアノがよく鳴ります。無論、激しくピアノの鍵盤を叩くこともありますがそれもうるさくありません。すべてが収まるべきところに収まるという風情です。かくあらねばならないという演奏に終始しました。これ以上のベートーヴェンは望むべきもないでしょう。

結局、当初はそう期待していたコンサートでもなかったんですが、現代最高のベートーヴェン弾きのアンドラーシュ・シフの手にかかると、これほどまでに素晴らしいベートーヴェンのピアノ協奏曲チクルスになってしまうんですね。アンコールも含めると、第4番と第5番は第2・3楽章は2度も聴かせてもらったし、もう、ベートーヴェンのピアノ協奏曲はsaraiの人生では聴く必要はなさそうです。次はシフのベートーヴェンのピアノ・ソナタの全曲演奏会を聴きたい!!
 
アンコールでは、ピアノ協奏曲第4番のほか、ピアノ・ソナタ第24番 嬰ヘ長調 op.78《テレーゼ》のまるまる1曲を聴かせてもらいました。内心はアパッショナータ全曲を期待していましたが、さすがにそれはなしでした。同時期に作曲された告別ソナタは来年春の来日コンサートで聴かせてもらえます。

今日のプログラムは以下です。

  指揮/ピアノ:アンドラーシュ・シフ
  管弦楽:カペラ・アンドレア・バルカ

  ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番 ハ長調 op.15

   《休憩》

  ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 op.73《皇帝》

   《アンコール》
  ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 op.58 より 第2・3楽章
  ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第24番 嬰ヘ長調 op.78《テレーゼ》より 第1・2楽章(つまり、全曲)


なお、予習したCDは以下です。

 アンドラーシュ・シフ、ベルナルト・ハイティンク指揮シュターツカペレ・ドレスデン 1996年 ドレスデン、ルカ教会

最後に皇帝を聴きました。美しさと壮大さを兼ね備えた演奏に魅了されました。ハイティンクの指揮も見事です。このシュターツカペレ・ドレスデンとのコンビでベートーヴェンの交響曲も録音してくれればよかったのですが、それは見果てぬ夢です。



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       シフ,  

室内楽のような精密さと美しい響きのベートーヴェンのピアノ協奏曲・・・アンドラーシュ・シフ&カペラ・アンドレア・バルカ@東京オペラシティコンサートホール 2019.11.7

バティアシヴィリのチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲に感激したばかりですが、今日のシフのベートーヴェンのピアノ協奏曲は完璧という言葉では形容できない会心の演奏でした。しかもたまたま今日の演奏が素晴らしかったのではなくて、いつでもこういうレベルの演奏になるだろうという安定度の見事な演奏。シフはいつの間にか、ピアノのレジェンドとでも言える存在になってしまいました。それでいて、saraiよりも若いのだから参ります。同じ時代を生きて、彼のピアノを生で聴けるのは何という幸運なのでしょう。しかし、実は今回のコンサートは聴くかどうか、ちょっと迷ったんです。シフのベートーヴェンのピアノ協奏曲の真価を計りかねたからです。考えてみれば、シフのピアノは独奏でしか聴いていませんでした。あまりに彼のピアノ独奏によるバッハ、バルトーク、ベートーヴェン、シューベルトが素晴らしいので、独奏以外の演奏は考えられなかったからです。しかも来年春にはまた来日公演で待ちに待ったブラームスの後期作品を聴かせてくれるので、むしろ、そっちが楽しみだったんです。
しかし、実際に聴いてみれば、今日の演奏は空前絶後の演奏で一生に何回も聴けるようなものではありませんでした。ここはこう弾いてほしいと思う通りにすべて弾いてくれる完璧な演奏。むしろ、ここはこう弾くのかと納得させられるような完璧な演奏と言ったほうがいいかもしれません。今日はピアノ協奏曲3曲、計9楽章ですが、すべてが最高の演奏でした。まだ、モーツァルトのピアノ協奏曲の影響が色濃いと思っていた第2番すら、ベートーヴェンを代表する超傑作であることを思い知らされます。シフ夫人の塩川悠子さんの情報では一番弾く機会が少ないという第3番はそんなことは微塵に感じさせない素晴らしい演奏。そして、第4番の素晴らしさはどうでしょう。唖然として聴き入りました。
この演奏を聴いていて、不意にsaraiが若い頃に聴いたヴィルヘルム・ケンプの実演の皇帝の名演を思い出しました。晩年のケンプの枯れ切った演奏でベートーヴェンの音楽の本質を突いた演奏でsaraiの心に秘めた宝物になっていました。今日の演奏はその表現力と同等でさらに恐ろしいほどのテクニックが加わったものです。録音で聴いていたクラウディオ・アラウの美しい響きと溜めのきいた演奏表現をさらに上回る美しい響きと自然な表現に魅了されました。シフの弾くベーゼンドルファーの美しい響きはいつも通りですが、何度聴いても素晴らしいものです。とりわけ、レガートが美しいのですが、今日の演奏では第2番での歯切れのよいタッチも見事でした。
もう賛辞は尽くし切れません。まだ、明日の残りの演奏があるので、そのときにまた、付け加えましょう。

そうそう、管弦楽のカペラ・アンドレア・バルカですが、シフの個人的なオーケストラと思っていたら、何と素晴らしい響きなんでしょう。このコンビで録音してもらいたいですね。まあ、NHKが録画していたので、放映を楽しみにしていましょう。明日も是非、録画してもらいたいものです。

ところで、いつものように、今日もアンコールが盛り沢山。何と明日演奏する皇帝の第2楽章を弾き始めたのには驚きましたが、第3楽章へのアタッカで切るのかと思っていると、そのまま、第3楽章まで弾き切ります。もう、びっくりです。《葬送》も同様に第3楽章が終わったところで止めないで、第4楽章まで弾くとはね・・・。明日もアンコールが盛り沢山なのでしょうね。アパッショナータでも弾くのでしょうか。それとも路線を変えて、バッハとか・・・。
 

今日のプログラムは以下です。

  指揮/ピアノ:アンドラーシュ・シフ
  管弦楽:カペラ・アンドレア・バルカ

  ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 op.19
  ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番 ハ短調 op.37

   《休憩》

  ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 op.58

   《アンコール》
  ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 op.73《皇帝》より 第2・3楽章
  ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第12番 変イ長調 op.26《葬送》より 第3・4楽章


なお、予習したCDは以下です。

 アンドラーシュ・シフ、ベルナルト・ハイティンク指揮シュターツカペレ・ドレスデン 1996年 ドレスデン、ルカ教会

素晴らしい演奏です。シフのベーゼンドルファー(と思われる)の美しい響きと音楽表現力は輝きに満ちています。ハイティンクの安定した堂々たる指揮とシュターツカペレ・ドレスデンの美しい響きも最高です。これまでに聴いた録音ではクラウディオ・アラウ&ハイティンク指揮コンセルトヘボウが最高でしたが、それに匹敵するか、上回る出来です。



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       シフ,  

鬼神のごときバティアシヴィリ、凄し! ネゼ゠セガン&フィラデルフィア管弦楽団@サントリーホール 2019.11.4

期待のバティアシヴィリの来日公演。期待以上の出来でした。まさに今が旬のバティアシヴィリ、渾身の演奏に鳥肌が立ちました。当初のプログラムのプロコフィエフが聴きたかったので、チャイコフスキーにプログラムが変更になり、残念に思っていました。何故って、昨年、彼女のチャイコフスキーはザルツブルク音楽祭で聴いて、その官能的な演奏は既に体験済みだったからです。それにチャイコフスキーと言えば、コパチンスカヤとクルレンツィスの究極とも思える演奏を聴いたばかりですからね。

しかし、しかし、その思いは見事に裏切られました。バティアシヴィリのチャイコフスキーは進化に進化を重ねていました。官能的どころか、音楽の神が憑依したかの如く、鬼神のごとくの集中した演奏で一皮も二皮も突き破るような驚異的な演奏。彼女の内面を惜しげもなく、さらけ出すような凄絶な演奏を聴かせてくれました。ちょっと甘い雰囲気のあるチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲と思っていたら、こんなに壮絶な音楽がその中に秘められていたとは・・・凄いですね! 

第1楽章の最後の盛り上がりでは卒倒しそうになります。聴衆のみなさんはよく拍手もせずに耐えきったものです。第2楽章の密やかな美しさもいつしか高揚して、ありえないような高みに達します。そして、そのまま、勢いづきながら第3楽章に突入していきます。バティアシヴィリのヴァイオリンの美音は甘さではなく、強烈なインパクトを与えてくれます。セクシーな音楽を奏でてくれていたバティアシヴィリはその音楽性を突き破って、新たな境地に達したようです。今や彼女は最高のヴァイオリニストの座に君臨するようになりました。時折、笑みをこぼしながらもバティアシヴィリはありえないような究極の音楽を奏で続けます。どこまでもどこまでも高みに上り続けて、フィナーレに達します。恐ろしいほどのヴァイオリンを聴いてしまいました。ヤニック・ネゼ゠セガンも只者ではないことを示すような指揮を見せてくれます。まるでもう一人のバティアシヴィリがオーケストラを指揮しているように完全にバティアシヴィリのヴァイオリンの音楽に同期した演奏、それは伴奏ではありません。これはまるで室内楽のような音楽の在り方です。
凄過ぎるチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲でした。同じ年に究極のチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を2つも聴くとは・・・絶句です。

後半のマーラーについて書く時間がなくなりました。見事な演奏で各パートの楽器の響きの素晴らしさに圧倒されました。特に金管のトランペットとホルンは素晴らしかった!
しかし、これはsaraiの思うマーラーの音楽とは隔たりがあったというのが正直な感想です。もっと思い切って、テンポも変化させてほしかったし、マーラー節も聴かせて欲しかった。素直と言えば、素直な音楽作り。これが正解と思う人もいるでしょう。でもね・・・。
第4楽章のアダージェットの最初の主題が回帰するところではぐっとテンポを落としたところは素晴らしかった。そんな感じで全編を演奏してくれれば、saraiも納得でした。そのアダージェットの後半以降は結構、納得の演奏でした。第5楽章は気持ちよく聴き入りました。ですから、もっと、この演奏を褒めてもよかったのですが、前半のチャイコフスキーが素晴らし過ぎて、saraiのエネルギーもすべて持っていかれたようです。

フィラデルフィア管弦楽団は実は初聴きですが、昔からの美しい響き(録音で聴いていた演奏)は健在でした。ヤニック・ネゼ゠セガンとの未来は明るいようです。


今日のプログラムは以下のとおりです。

  指揮:ヤニック・ネゼ゠セガン
  ヴァイオリン:リサ・バティアシュヴィリ
  管弦楽:フィラデルフィア管弦楽団

  チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.35
   《アンコール》マチャヴァリアニ:ジョージアの民謡よりDoluri

   《休憩》

  マーラー:交響曲第5番 嬰ハ短調


最後に予習について、まとめておきます。

チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を予習したCDは以下です。

  リサ・バティアシュヴィリ、ダニエル・バレンボイム指揮ダニエル・バレンボイム 2015年5月 ベルリン セッション録音

昨年のザルツブルク音楽祭の会場の祝祭大劇場で買い求めたCDです。バティアシュヴィリにサインしてもらいました。そのとき、是非、日本に来てねとお願いしました。早くもそのときの願いが叶いました。このCDでの演奏は彼女らしく、官能的なものですが、第2楽章以降は少し物足りなさもありましたが、今日の演奏で払拭されました。今日のネガ=セガンとのコンビでの再録音が望まれます。


マーラーの交響曲第5番を予習したCDは以下です。

  マイケル・ティルソン・トーマス指揮サンフランシスコ交響楽団 2005年9月28日~10月2日 サンフランシスコ、デイヴィス・シンフォニー・ホール ライヴ録音
  レナード・バーンスタイン指揮ウィーン・フィル 1987年、フランクフルト、アルテ・オパー ライヴ録音

MTTと略されるマイケル・ティルソン・トーマスの指揮するサンフランシスコ交響楽団のマーラーチクルスの録音の後期の素晴らしい仕上がりのCDです。もっと評価されて然るべき演奏です。一聴して、おとなしい演奏と誤解されそうですが、実に奥深い内容の演奏です。これを聴くとどの演奏も表層的な演奏に感じてしまいそうな魅力にあふれた演奏ですが、マーラーを聴き込んだ人にしかその魅力は伝わらないかもしれません。これを聴くとMTTの虜になりそうです。
バーンスタインとウィーン・フィルの演奏はもう文句なし。熱く、しかも細部まで磨き上げられた最高の演奏です。しかし、それをもってしてもMTTの魅力は忘れがたいものです。



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       バティアシヴィリ,  

弦の美しく、分厚い響きで新境地・・・ビシュコフ&チェコ・フィルハーモニー管弦楽団@横浜みなとみらいホール 2019.10.20

ビエロフラーヴェク亡き後、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の新首席指揮者はセミヨン・ビシュコフになったんですね。驚きました。てっきり、若手のチェコ人指揮者が登用されると思っていました。フルシャとかネトピルとかです。でも、フルシャはバンベルク交響楽団の首席指揮者、ネトピルはエッセン・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督。まだ、チェコ・フィルの重責を担うのは早いんでしょうか。ビシュコフはビエロフラーヴェク在任中(つまり、生前)から、チェコ・フィルとチャイコフスキー・プロジェクトに取り組んでいたそうです。そのあたりの関係から、彼が首席指揮者になることになったのでしょうか。キャリアは十分以上ですからね。最近では、昨年のバイロイト音楽祭でビシュコフ指揮の《パルジファル》を聴きました。とても清澄な音楽作りで、うっとりと聴き惚れました。

後半のチャイコフスキーの交響曲第5番が聴きものでした。音楽としてはオーソドックスな演奏ですが(それが悪いと言っているわけではありません)、チェコ・フィルのオーケストラの鳴らし方が凄い。今までチェコ・フィルがこんな響きで鳴った覚えがありません。もともと素晴らしい響きのオーケストラで大好きなんですが、もっとシャープな響きだったような印象があります。今日のチェコ・フィルの響きは高弦の美しさはもちろんですが、低弦の分厚い響きが凄い。まるでドイツのオーケストラの重心の低い響きのようです。いや、ちょっと違うかな。むしろ、コンセルトヘボウ管弦楽団みたいかな。いえいえ、違いますね。ロシアのサンクトペテルブルク・フィルみたいかな。ともかく、もともと素晴らしかった弦のアンサンブルが別次元の響きになったみたいで、音楽そっちのけで弦の美音に聴き惚れていました。音楽的には、第2楽章の美しいメロディーに聴き惚れ、第4楽章のフィナーレの大迫力に圧倒されました。ちょっと鳴らせ過ぎのきらいもありますが、これだけ鳴らせられるのも見事です。指揮者でこうもオーケストラの響きが変わるのか、驚きでした。

一方、前半の「わが祖国」はチェコ・フィルの十八番。ビシュコフもこのオーケストラを振るからには避けられない演目です。楽譜を置いての指揮です。後半のチャイコフスキーは暗譜だったので、それだけでも意気込みの違いが分かります。基本的にチェコ・フィル任せの演奏に思えました。と言うことは間違いない演奏ではありました。オーケストラの響きも従来のチェコ・フィルの響きでした。“ヴィシェフラト(高い城)” “モルダウ”は素晴らしい演奏でしたが、かって、ビエロフラーヴェクが指揮した“ヴィシェフラト(高い城)”の素晴らしさには及びません。

アンコールはチェコのお国ものの定番。ドヴォルザークのスラヴ舞曲です。ここでもチェコ・フィルの弦の響きの素晴らしいこと! 今日の最高の演奏だったかもしれません。それにsaraiはこのスラヴ舞曲第2集の第2番が子供のときから大好きなんです。うっとり、満足して聴きました。


今日のプログラムは以下のとおりです。

  指揮:セミヨン・ビシュコフ
  管弦楽:チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

  スメタナ:連作交響詩「わが祖国」より “ヴィシェフラト(高い城)” “モルダウ” ”シャールカ”

   《休憩》

  チャイコフスキー:交響曲第5番 ホ短調 Op.64

   《アンコール》
     ドヴォルザーク:スラヴ舞曲第2集 Op.72, B.147 第2番 アレグレット・グラツィオーソ ホ短調
     ドヴォルザーク:スラヴ舞曲第1集 Op.46, B.83 第1番 プレスト ハ長調

最後に予習について、まとめておきます。

スメタナの連作交響詩「わが祖国」を予習したCDは以下です。

  ラファエル・クーベリック指揮指揮チェコ・フィル 1990年5月12日、スメタナ・ホール 「プラハの春」音楽祭オープニングコンサート ライヴ録音

やはり、チェコ・フィルの演奏を聴いておきましょう。とすると、クーベリックかアンチェルが指揮したものになります。ここはあの記念すべき年の「プラハの春」で特別にクーベリックが指揮した伝説の演奏を聴きます。一言で言って、とても熱い演奏です。音楽以外の何かがあります。いいえ、音楽としても素晴らしい演奏です。


チャイコフスキーの交響曲第5番を予習したCDは以下です。

  セミヨン・ビシュコフ指揮チェコ・フィル 2017年 プラハ

ビシュコフ&チェコ・フィルが最近取り組んだチャイコフスキー・プロジェクトをまとめた交響曲全集からのCDを聴きます。チャイコフスキーの憂愁がたっぷりと味わえるロマンティックな演奏です。それでいて、実にオーソドックスな演奏でもあり、力強い迫力もあります。ビシュコフがこんな演奏をするとは予想外でした。



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究極のメサイア・・・ウィリアム・クリスティ&レザール・フロリサン@東京オペラシティコンサートホール 2019.10.14

ヨーロッパ遠征から帰ってきて2週間です。一昨日のコンサートは台風で中止になってしまいましたが、今日で9回目のコンサート。いずれも素晴らしいコンサートばかり。ヨーロッパのコンサートのレベルに負けていない、あるいは上回っているという音楽都市、東京の凄さを実感しています。今日もヨーロッパの一流団体の来日公演で素晴らしい演奏に圧倒されました。いつもの指揮者コールも出ました。このところ、5回連続の指揮者コールです。異常なことです。

さて、ウィリアム・クリスティ&レザール・フロリサンと言えば、フランスの古楽ですが、何せ、本物の腕達者たち。ザルツブルク音楽祭で聴いた《ポッペアの戴冠》は感涙ものでした。あれが最初に彼らを実演で聴いたもので、今回、来日するというので駆け付けましたが、期待以上の素晴らしさ。モンテヴェルディとヘンデルでは、そもそも、使用楽器が大きく異なりますが、音楽の素晴らしさは変わりません。ヘンデルの次から次へと繰り出される美しいメロディーが声楽と器楽で表現される様にうっとりと聴き入ります。
ウィリアム・クリスティの素晴らしさは器楽も声楽も等しいレベルで鍛え上げられていることです。ヘンデルを始めとする古楽では、これが重要なポイントです。今日のメサイアもヘンデルのオペラと同様にアリアも器楽パートも美しいメロディーが満載。それが万華鏡のように美しく奏でられていきます。宗教音楽であることを忘れて、その美しさに魅了されました。
独唱者では、最初に登場したテノールのジェームズ・ウェイの美しい歌唱にいきなり、度肝を抜かれ、次いで登場したバスのパドライク・ローワンも迫力ある歌唱。カウンターテナーのティム・ミードもその美声で魅力的な歌唱。ソプラノⅡのエマニュエル・デ・ネグリも透明な高音で圧巻の歌唱。最後に登場したソプラノⅠのキャスリーン・ワトソンはその儚げな美貌に似合った美しい響きの歌唱でどっきりさせてくれます。
合唱はとりわけ、ソプラノパートの高音の美しさはまさに天使の歌声。中低域は迫力ある響き。対位法の歌唱が素晴らしいです。
管弦楽は弦楽パートが美しく、コンサートマスターのヒロ・クロサキのリードのもとに素晴らしいアンサンブルです。トランペットの響きも見事でした。
ウィリアム・クリスティは練達の指揮。無駄な動きはなく、ここぞという時にだけ、大きな身振りで演奏者たちを鼓舞します。既に十分なリハーサルですべては出来上がっているのでしょう。本番ではきっちりとアイコンタクトで指示するだけで、事足りているようです。

ウィリアム・クリスティ&レザール・フロリサンは今年創立40周年とのことですが、まさに旬の時を迎えているようです。ラモーのオペラを彼らの実演で聴かせてもらいたいものです。

演奏の個別の中身について触れませんでしたが、ハレルヤコーラスとアーメンコーラスの素晴らしさはもちろん、アリアや管弦楽合奏はそれ以上の音楽内容で、長大なオラトリオのすべてが最高の演奏ばかりでした。メサイアの本質的なところを表現し尽くした名演でした。完全に満足しました。
 

今日のプログラムは以下です。

  指揮:ウィリアム・クリスティ
  合唱・管弦楽:レザール・フロリサン
  ソプラノ:エマニュエル・デ・ネグリ/キャスリーン・ワトソン
  アルト(カウンターテナー):ティム・ミード
  テノール:ジェームズ・ウェイ
  バス:パドライク・ローワン

  ヘンデル:オラトリオ『メサイア』 HWV 56

   2部の途中で《休憩》


なお、予習したCDは以下です。

 ウィリアム・クリスティ指揮レザール・フロリサン
  バルバラ・シュリック(S)、サンドリーヌ・ピオー(S)、アンドレアス・ショル(CT)、マーク・パドモア(T)、ネイサン・バーグ(B) 1993年12月録音

実に清々しい演奏です。力強さもありますが、清冽さが印象的です。何度でも繰り返し聴きたくなるような魅力的な演奏と言えます。独唱者も見事な歌唱です。



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ショスタコーヴィチの交響曲の重く、感銘深い演奏 ユーリ・テミルカーノフ&読売日本交響楽団@サントリーホール 2019.10.9

テミルカーノフはにこりともせずに気難しい顔をして、ショスタコーヴィチの交響曲を演奏しました。お得意の第7番《レニングラード》とは隔絶したような厳しい演奏です。
正直、saraiはこのメッセージ性に満ちた音楽をどう聴けばいいのか、戸惑います。そもそも、こんなにメッセージを込めてしまっては芸術作品というよりも、政治主張です。それがいけないわけではなく、内容も人間性に満ちた正当なものですから、単純に聴けばいいのかもしれません。でも、へそまがりのsaraiは色んなことを考えてしまいます。

そんなことを別にすると、大変、感動的な演奏でした。さすがにテミルカーノフは読響をまるでロシアのオーケストラのようにドライブして、分厚い響きを引き出していました。それでいて、読響の弦楽アンサンブルの透明な響きも残していたのは流石です。第1楽章と第2楽章の演奏がとりわけ素晴らしかったです。終楽章は少し、気持ちが入り過ぎてしまったかもしれません。バス独唱のピョートル・ミグノフと男声合唱の新国立劇場合唱団は見事な歌唱を聴かせてくれました。迫力も歌いまわしも文句ありません。メッセージ性を音楽芸術として、容認すればですが・・・。まあ、それは演奏者の問題ではなく、この作品そのものが内包する問題なので、素晴らしい演奏だったと評価しましょう。
読響はコンミスの日下紗矢子の確信と自信に満ちたリードのもと、素晴らしいオーケストラ演奏でした。彼女もソロも見事でした。いつも思いますが、日下紗矢子が率いたときの読響は素晴らしい演奏をします。もっと彼女が公演に参加してくれることを願います。

テミルカーノフは存在感のある指揮者です。指揮がうまいとかではなく、彼が振ると、音楽の深みが凄いです。やはり、80歳を過ぎた指揮者は貴重です。来年のサンクトペテルブルク・フィルとの来日演奏は楽しみです。

この5日間で、東響、都響、読響をたてつづけに聴きましたが、オーケストラ能力の高さに舌を巻きました。一流指揮者が振ると、鉄壁です。在京オケの実力を再認識しました。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:ユーリ・テミルカーノフ
  バス:ピョートル・ミグノフ
  男声合唱:新国立劇場合唱団(合唱指揮=冨平恭平)
  管弦楽:読売日本交響楽団 日下紗矢子(コンサートミストレス)

  ハイドン:交響曲第94番 ト長調「驚愕」

   《休憩》

  ショスタコーヴィチ:交響曲第13番 変ロ短調「バビ・ヤール」

最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のハイドンの交響曲第94番 ト長調「驚愕」は時間がなくて、予習できませんでした。まあ、有名曲ですからいいでしょう。


2曲目のショスタコーヴィチの交響曲第13番 変ロ短調「バビ・ヤール」を予習したCDは以下です。

 キリル・コンドラシン指揮モスクワ・フィル、ロシア共和国合唱団、アルトゥール・エイゼン(バス) 1967年
 
大変な爆演です。初演者としての矜持があったのでしょうか、いずれにせよ、強烈なインパクトがあり、感動してしまいます。正確に言えば、圧倒されます。



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ただただ、絶句・・・ミンコフスキ&東京都交響楽団@東京文化会館大ホール 2019.10.7

演奏が終わり、青ざめていました。一体、これは何だったんでしょう。いつも音楽表現が深いとか、譜面の読みが鋭いとか、分かったようなことを書いている自分を恥じてしまいます。音楽はそれ自体で成り立つもので、素人が何だかんだと言葉で表現するものではないという厳然たる事実を突き付けられた思いです。軽々しく拍手することさえも躊躇われます。恐れ入りましたと黙って席を立つのが正しい姿ではないかとすら思えます。本当のオーケストラ音楽とはこれほどのものなのでしょうか。完璧という言葉を使っていいのかも分かりません。演奏された曲は誰でも知っている超有名曲のチャイコフスキーの《悲愴》ですが、ここまでの演奏のレベルに達すると、何の曲でもよかったのではないかという暴言を吐きたくもなります。ともかく、恐ろしいレベルのアンサンブルです。対向配置で舞台の反対方向にいる第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンがユニゾンで弾いてるところでは、完全に舞台の端から端までシンクロしています。一々、例を挙げていると切りがありませんが、弦楽セクション5部が全部演奏しているときの澄み切った響きに驚愕します。唖然としているsaraiを嘲笑うように、ミンコフスキはパウゼを多用して、サウンドのシンクロとアンサンブルの完璧な響きを強調するかのようです。《悲愴》は通常、その劇的な表現の内容をうんぬんしますが、今日の演奏に限ってはそんなことは関係ありません。音の響きの素晴らしさがすべてで、音楽内容に関する余人の解釈を許しません。というか、不要です。音楽というものは、音の響きを楽しむものだよとミンコフスキに諭されている思いです。これ以上、書くと野暮になるので、やめます。恐るべき演奏でした。(本来はシューマンの交響曲第4番の1841年版について、たくさん書きたかったのですが、すべて、吹っ飛びました。)


今日のプログラムは以下です。

  指揮:マルク・ミンコフスキ
  管弦楽:東京都交響楽団  コンサートマスター:矢部達哉

  シューマン:交響曲第4番 ニ短調 op.120(1841年初稿版)

   《休憩》

  チャイコフスキー:交響曲第6番 ロ短調 op.74《悲愴》


シューマンだけ、予習しました。1841年版ジョン・エリオット・ガーディナー指揮オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティーク(1997年録音)、1851年版はフルトヴェングラー指揮ルツェルン祝祭管弦楽団(1953年8月26日録音)です。それぞれ、鉄板の演奏です。



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ジョナサン・ノット&東京交響楽団、2度目の《グレの歌》はさらに素晴らしい出来!@サントリーホール 2019.10.6

昨日のジョナサン・ノットの《グレの歌》は凄かったわけですが、今日は2度目なので、ある程度、予測しながら、じっくりと聴くことができます。ジョナサン・ノットを始めとしたキャストも昨日の演奏を下敷きにして、さらなる上を目指した演奏で、saraiを魅了してくれるでしょう。そう期待しながら、今日の演奏に臨みました。
で、実際のところ、今日の演奏は究極の《グレの歌》でした。これ以上の演奏はあり得ないでしょう。大満足以上です。

第1部では、冒頭のオーケストラの澄み切った響きで《グレの歌》の世界に一瞬のうちに吸い寄せられます。コンサートホールが森の自然に瞬間移動したかのように感じます。何という美しい響きなのでしょう。まだ、東響の素晴らしい弦楽セクションが未稼働状態なのに木管セクションだけで見事な響きを聴かせてくれます。そして、満を持した弦楽セクションが演奏を開始。オーケストラサウンドの究極を思わせる素晴らしい音楽が綴られていきます。そして、今日もトーヴェ役のドロテア・レシュマンは好調。その美声は昨日以上の素晴らしさ。しかし、その美声以上に魂の込められた音楽表現が素晴らしくて、強い感動を受けます。トルステン・ケールも「不思議なトーヴェ」のリリックな歌唱で魅了してくれます。愛を語りあう二人の歌唱が終了し、山鳩を歌うオッカ・フォン・デア・ダムラウが登場。その堂々たる体躯を活かして、微動だにしない姿勢で深い響きの超絶的に美しい歌唱を展開。いやはや、素晴らしい! 久々にこんな凄いメゾ・ソプラノを聴きました。昨日以上の凄い山鳩の歌です。音楽表現も素晴らしいのですが、それ以前にこの美しい声の響きを聴いているだけで魅了されます。柔らかくて、深々とした響きです。こういう声質のメゾ・ソプラノは昔、聴いた覚えがあります。記憶の底を探ると、思い出しました。オリガ・ボロディナです。彼女もその美声を聴いているだけで心地よいメゾ・ソプラノでした。不意にオッカ・フォン・デア・ダムラウの歌うエボリ公女を聴きたくなります。いかん、いかん、今はこの山鳩の歌に集中しましょう。圧巻の歌唱でした。最後は感動というよりも背中に悪寒が走るほどの興奮が沸き起こりました。
3人の独唱者と東響の最高の演奏で第1部は昨日以上の素晴らしさ。すべてをまとめ上げたジョナサン・ノットが神のように思えます。ここで休憩。休憩中も高揚感は収まりません。それはほかの聴衆のかたたちも同じで第2部、第3部への期待感が高まる一方です。
  
第2部も東響の素晴らしい響きで幕を開けます。そして、すぐに第3部に入ります。トルステン・ケールの歌唱も次第に熱を帯びて、ヘルデンテノールの本領を発揮します。次いで、農夫役のアルベルト・ドーメンはその実力通りの歌唱。これだけを歌わせるのはもったいないくらい。ワーグナーの楽劇でのヴォータンやアルベリッヒの名唱を思い出します。もっとも以前、ウィーンで《グレの歌》を聴いたときもこのドーメンが素晴らしい農夫を歌いました。現在、彼以上にこの農夫役を歌える人は思いつきません。まったく贅沢なキャストではあります。そして、いよいよ、毎回、素晴らしい合唱を聴かせてくれる東響コーラスが立ち上がります。今日もその大人数での迫力ある合唱を聴かせてくれます。今日は特に高音域での男声合唱が見事な響きでした。道化師クラウス役のノルベルト・エルンストはその張りのある個性的な歌唱が見事です。これまでは、R.シュトラウスのオペラでしか聴いたことがありませんが、このシェーンベルクの《グレの歌》でも、はまり役ですね。第3部の終盤の夏風の荒々しい狩(Des Sommerwindes wilde Jagd)では、さらに語り役のサー・トーマス・アレンが登場。練達の声を聴かせてくれます。何という豪華なキャストでしょう。ウィーンでも、ここまでのキャストは揃わないでしょう。ジョナサン・ノット&東響も昨日以上の精度の演奏を聴かせてくれて、東響コーラスの大合唱と一緒にフィナーレの感動的な盛り上がり。

こんな《グレの歌》はもう生涯聴くことができないほどの素晴らしさでした。今年、4回目の《グレの歌》でしたが、ジョナサン・ノットは流石の音楽作り。指揮もキャスティングも最高でした。昨日と今日、録音していたようですが、CD化されたら、史上最高の《グレの歌》になること間違いなしです。こんな最高の《グレの歌》を2日間、かぶりつきで聴けた幸せはなにものにも代えがたいものです。9月のヨーロッパ遠征でのクルレンツィスのダ・ポンテ三部作にも匹敵する素晴らしさでした。

ますます、ジョナサン・ノットにのめり込みそうです。来シーズンの目玉は楽劇《トリスタンとイゾルデ》ですが、むしろ、一緒に演奏されるシェーンベルクの交響詩《ペレアスとメリザンド》に期待が高まります。きっと、精度の高い超美しい演奏を聴かせてくれそうな予感がします。


今日のプログラムは以下です(昨日と同じ)。

  指揮:ジョナサン・ノット
  ヴァルデマール:トルステン・ケール
  トーヴェ:ドロテア・レシュマン
  山鳩:オッカ・フォン・デア・ダムラウ
  農夫:アルベルト・ドーメン
  道化師クラウス:ノルベルト・エルンスト
  語り:サー・トーマス・アレン
  合唱:東響コーラス
  合唱指揮:冨平恭平
  管弦楽:東京交響楽団

  シェーンベルク「グレの歌」 (第1部の後で休憩)


演奏後の会場の盛り上がりは凄まじく、オーケストラ退席後もお馴染みの指揮者コール。ジョナサン・ノットを始め、歌手陣の一人一人ともsaraiは熱い握手を交わすことができました。かぶりつきの席の特権ですよ。



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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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金婚式、おめでとうございます!!!
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京都には年に2回もお越しでも、青春を過ごし

10/07 08:57 堀内えり

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じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

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クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

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