小泉和裕が練り上げた都響の演奏はやはり、見事なものです。この曲は標題音楽で2人の男女が月の夜に深刻な話で葛藤するものですが、saraiはむしろ、絶対音楽として、後期ロマン派の一つの到達点の音楽を味わった気分です。ワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」やマーラーの交響曲群のような究極の情念の音楽の極みに比類するものです。デーメルの詩にインスパイアされた音楽は美しさと情念が織り上げられたもので、その凄まじさはまともに聴いていると、感覚がおかしくなりそうです。都響のメンバーもいつも以上に真摯な姿勢で入れ込んだ演奏です。指揮者の小泉和裕だけが冷静に音楽をコントロールしているように感じられます。何度も熱い情念が激しく燃えさかり、最後はやさしくカタルシスに至ります。お正月明けに聴くような音楽じゃありませんね。でも、やっぱり、音楽は素晴らしい!と実感しました。都響の圧倒的な弦楽アンサンブルの美しさにも感嘆しました。
休憩後はブラームスのピアノ四重奏曲第1番をシェーンベルクがオーケストラ用に編曲したものです。実演で聴くのは多分、2回目でしょうか。原曲の室内楽版はフォーレ四重奏団の素晴らしい演奏を3回聴きました。3回とも凄い演奏でした。それを超える演奏は無理でしょう。シェーンベルクがこの曲を気に入って、 オーケストラ用に編曲した気持ちは理解できます。都響の大編成のオーケストラが素晴らしい響きで演奏します。特に弦楽合奏のパートはブラームスの素晴らしさを満喫します。曲が盛り上がったのはやはり、第3楽章からです。盛大な音楽が響き渡り、中間部の行進曲は何とも威風堂々たるものです。そして、第4楽章の速い動きの音楽はロマ風に盛り上がります。まるでハンガリー舞曲みたいに響きます。勢いよくフィナーレ。フォーレ四重奏団を聴いていなければ、特上の音楽だったかもしれません。どうしても、フォーレ四重奏団の演奏が脳裏をよぎりながら聴いてしまいました。
今日はお正月明けでシェーンベルク三昧とは面白い始まりになりました。きっと、今年は新ヴィーン楽派の音楽をたくさん聴けるのかもしれません。100年経っても彼らの音楽は新鮮で刺激的です。
今日のプログラムは以下のとおりです。
指揮:小泉和裕
管弦楽:東京都交響楽団 コンサートマスター:四方恭子(隣の席は矢部達哉)
シェーンベルク:浄められた夜 Op.4
《休憩》
ブラームス(シェーンベルク編曲):ピアノ四重奏曲第1番 ト短調 op.25(管弦楽版)
最後に予習について、まとめておきます。
1曲目のシェーンベルクの浄められた夜を予習したCDは以下です。
ジュゼッペ・シノーポリ指揮フィルハーモニア管弦楽団 1992年 セッション録音
いつもカラヤンとかブーレーズでは面白くないので、シノーポリを聴きました。シノーポリは新ヴィーン楽派の作品をこの後、まとめて、シュターツカペレ・ドレスデンと録音していますが、フィルハーモニア管と録音したこの作品は録音しませんでした。シノーポリらしい濃厚な演奏です。ある意味、マーラー的かもしれません。
2曲目のブラームスのピアノ四重奏曲第1番 (管弦楽版)を予習したCDは以下です。
ロバート・クラフト指揮シカゴ交響楽団 1967年 セッション録音
現代音楽のスペシャリストであるクラフトの精密な演奏。シカゴ響も素晴らしい演奏。
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