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濃厚なロマンのシェーンベルクの浄められた夜 小泉和裕&東京都交響楽団@サントリーホール 2023.1.12

今日が音楽の聴き始め。やっぱり、サントリーホールです。久々のコンサートです。ほぼ、2週間ぶり。いきなり、シェーンベルクの浄められた夜とは刺激が強過ぎます。昨年はピアノ三重奏曲版で聴きましたが、大規模な弦楽合奏版で聴くと、また、味わいが違いますね。次は原曲の弦楽六重奏版で聴きたいものです。

小泉和裕が練り上げた都響の演奏はやはり、見事なものです。この曲は標題音楽で2人の男女が月の夜に深刻な話で葛藤するものですが、saraiはむしろ、絶対音楽として、後期ロマン派の一つの到達点の音楽を味わった気分です。ワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」やマーラーの交響曲群のような究極の情念の音楽の極みに比類するものです。デーメルの詩にインスパイアされた音楽は美しさと情念が織り上げられたもので、その凄まじさはまともに聴いていると、感覚がおかしくなりそうです。都響のメンバーもいつも以上に真摯な姿勢で入れ込んだ演奏です。指揮者の小泉和裕だけが冷静に音楽をコントロールしているように感じられます。何度も熱い情念が激しく燃えさかり、最後はやさしくカタルシスに至ります。お正月明けに聴くような音楽じゃありませんね。でも、やっぱり、音楽は素晴らしい!と実感しました。都響の圧倒的な弦楽アンサンブルの美しさにも感嘆しました。

休憩後はブラームスのピアノ四重奏曲第1番をシェーンベルクがオーケストラ用に編曲したものです。実演で聴くのは多分、2回目でしょうか。原曲の室内楽版はフォーレ四重奏団の素晴らしい演奏を3回聴きました。3回とも凄い演奏でした。それを超える演奏は無理でしょう。シェーンベルクがこの曲を気に入って、 オーケストラ用に編曲した気持ちは理解できます。都響の大編成のオーケストラが素晴らしい響きで演奏します。特に弦楽合奏のパートはブラームスの素晴らしさを満喫します。曲が盛り上がったのはやはり、第3楽章からです。盛大な音楽が響き渡り、中間部の行進曲は何とも威風堂々たるものです。そして、第4楽章の速い動きの音楽はロマ風に盛り上がります。まるでハンガリー舞曲みたいに響きます。勢いよくフィナーレ。フォーレ四重奏団を聴いていなければ、特上の音楽だったかもしれません。どうしても、フォーレ四重奏団の演奏が脳裏をよぎりながら聴いてしまいました。

今日はお正月明けでシェーンベルク三昧とは面白い始まりになりました。きっと、今年は新ヴィーン楽派の音楽をたくさん聴けるのかもしれません。100年経っても彼らの音楽は新鮮で刺激的です。


今日のプログラムは以下のとおりです。

  指揮:小泉和裕
  管弦楽:東京都交響楽団 コンサートマスター:四方恭子(隣の席は矢部達哉)

  シェーンベルク:浄められた夜 Op.4

    《休憩》

  ブラームス(シェーンベルク編曲):ピアノ四重奏曲第1番 ト短調 op.25(管弦楽版)

最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のシェーンベルクの浄められた夜を予習したCDは以下です。

  ジュゼッペ・シノーポリ指揮フィルハーモニア管弦楽団 1992年 セッション録音

いつもカラヤンとかブーレーズでは面白くないので、シノーポリを聴きました。シノーポリは新ヴィーン楽派の作品をこの後、まとめて、シュターツカペレ・ドレスデンと録音していますが、フィルハーモニア管と録音したこの作品は録音しませんでした。シノーポリらしい濃厚な演奏です。ある意味、マーラー的かもしれません。


2曲目のブラームスのピアノ四重奏曲第1番 (管弦楽版)を予習したCDは以下です。

  ロバート・クラフト指揮シカゴ交響楽団 1967年 セッション録音


現代音楽のスペシャリストであるクラフトの精密な演奏。シカゴ響も素晴らしい演奏。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

 

瑞々しく強靭でシンフォニックなブラームスの弦楽四重奏曲第2番、クァルテット・ディオティマ@鶴見サルビアホール3F音楽ホール 2023.1.16

今年の室内楽聴き始めです。前半のツェムリンスキー、リゲティもなかなかよい演奏でしたが、後半のブラームスのストレートな表現に魅了されました。

クァルテット・ディオティマはフランスの四重奏団で、初めて聴きますが、なかなかの実力です。特に第1ヴァイオリンのユン・ペン・ヂァオの直線的で美しい響きは見事の一語。強靭な音楽表現も好感を持てます。

前半のツェムリンスキーは初めて聴きますが、後期ロマン派の美しい音楽にうっとりします。見事な演奏です。続くリゲティの弦楽四重奏曲 第2番は最近のはやりなのか、聴く機会が多いですね。テクニック的には素晴らしいのですが、もう少し、幽玄な雰囲気も欲しいところです。聴く機会が多いので、少し、厳しい耳で聴いてしまいます。第5楽章は見事な演奏でした。

後半のブラームスの弦楽四重奏曲 第2番。まず、長大な第1楽章から、素晴らしい演奏に魅了されます。ブラームスが書いた室内楽作品の中でも傑作であることを実感させる熱いロマンが見事に表現されます。いかにもブラームスだと感じる魅力がストレートに演奏されます。第1ヴァイオリンのユン・ペン・ヂァオの演奏がとても魅力的に響いてきます。第2楽章、第3楽章も魅力的なメロディー、響きがストレートに表出されます。その演奏を引っ張るのは第1ヴァイオリンのユン・ペン・ヂァオです。彼を中心にだんだんとシンフォニックな響きになります。だからと言って、交響曲に近いかと言えば、あくまでも室内楽的なシンフォニックさです。スケール感のある響きがこの鶴見の小さなホールの空間を満たしていきます。そして、第4楽章は勢いよく飛び出して、圧巻の音楽が高潮していきます。何とも素晴らしいブラームスでした。実に満足。新年早々、いいものを聴きました。

アンコールはイギリスの現代作曲家のトマス・アデスの作品。現代音楽とは思えない密やかな音楽に聴き惚れます。これもとてもよい演奏。抒情的な音楽を抒情に流されないで演奏するのが彼らの持ち味のようです。


今日のプログラムは以下です。

  弦楽四重奏:クァルテット・ディオティマ
   ユン・ペン・ヂァオ vn   コンスタンス・ロンザッティ vn
   フランク・シュヴァリエ va   ピエール・モルレ vc


  ツェムリンスキー:弦楽四重奏曲 第1番 イ長調 Op.4
  リゲティ:弦楽四重奏曲 第2番

   《休憩》

  ブラームス:弦楽四重奏曲 第2番 イ短調 Op.51-2

   《アンコール》
   トーマス・アデス:オ アルビオン(アルカディアーナOp.12 第6楽章)


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のツェムリンスキーの弦楽四重奏曲 第1番は以下のCDを聴きました。

  ラサール四重奏団 1980年12月5-10日 ハンブルク、フリードリヒ・エーベルトハレ セッション録音
 
美しい演奏です。ツェムリンスキーの弦楽四重奏曲全4曲の全集盤からの1枚です。


2曲目のリゲティの弦楽四重奏曲 第2番は以下のCDを聴きました。

  ラサール四重奏団 1970年 セッション録音
 
この曲を献呈され、初演したラサール四重奏団の見事な演奏です。


3曲目のブラームスの弦楽四重奏曲 第2番は以下のCDを聴きました。

  アマデウス四重奏団 1959年9月 ハノーファー、ベートーヴェンザール セッション録音
  ベルチャ・カルテット 2015年3月6-7日 ブリテン・スタジオ、スネイプ・モルティングス、サフォーク州オールドバラ、英国 セッション録音
 
アマデウス四重奏団の定評ある演奏も見事ですが、気鋭のベルチャ・カルテットのテンポを遅めにとった主情的な演奏に魅了されました。



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山田和樹と読売日本交響楽団の明快な響きによる矢代秋雄とR.シュトラウスの会心の演奏@サントリーホール 2023.1.19

山田和樹のこだわりの日本人作曲家の作品を組み合わせたプログラムです。矢代秋雄とR.シュトラウスを組み合わせた妙がなかなか秀逸ですね。

まず、矢代秋雄の交響曲です。以前、河村尚子と組んだ矢代秋雄のピアノ協奏曲では、弦の響きの浅さがどうにも気になりましたが、今回は響きの明快さがうまく表現されて、見事な演奏になりました。この作品はミニマリズムを思わせる旋律の繰り返しが曲の軸になっていますが、弦と管、それぞれの単一の響きのシンプルさが表現されて、明るく明快な音楽に仕上がっています。曲自体は矢代独特の夜を思わせる音楽ですが、その明るい表現でほのぼのと白みがかった暁、あるいは黄昏の雰囲気を醸し出しています。これは山田和樹の独自の解釈なのでしょう。第4楽章の後半はそういう雰囲気を一変させて、激しく燃え上がる音楽に高潮していき、フィナーレ。なかなか面白い音楽を聴かせてくれました。音楽自体はやはりピアノ協奏曲の芸術性が上回るように思えます。

後半は管弦楽の構成が大きくなって、R.シュトラウスのアルプス交響曲が壮大に演奏されます。ここでも山田和樹のストレートな音楽表現が印象的です。作曲家のスコアをそのまま表現するという姿勢なのでしょう。標題音楽的な表現よりも絶対音楽的な表現に軸を置いた演奏がうまくはまったような気がします。R.シュトラウスの人生観を音楽に込めたという雰囲気は残るものの、それを強調し過ぎないような音楽表現は山田和樹の持ち味として、評価できると思います。R.シュトラウスの音楽ファンとしては、正直、若干の物足りなさも残りますが、こういう演奏もあっていいのだと思います。読響のアンサンブルはいつものように素晴らしいです。それをうまく引き出したのも山田和樹の功績。全体として、素晴らしいアルプス交響曲でした。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:山田和樹
  管弦楽:読売日本交響楽団  コンサートマスター:長原幸太(ダブルコンマス、小森谷巧)

  矢代秋雄:交響曲

   《休憩》

  R.シュトラウス:アルプス交響曲 Op.64


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目の矢代秋雄の交響曲は以下のCDを聴きました。

 湯浅卓雄指揮アルスター管弦楽団 2000年9月4-7日  アルスター・ホール、ベルファスト、北アイルランド セッション録音

湯浅卓雄の矢代秋雄の音楽の表現は素晴らしい!


2曲目のR.シュトラウスのアルプス交響曲は以下のCDを聴きました。

 フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮バーデン=バーデン&フライブルクSWR交響楽団(南西ドイツ放送交響楽団) 2014年11月5,6日 フライブルク、コンツェルトハウス セッション録音
 
ロトの精密で精妙な音楽作りが光ります。R.シュトラウス交響詩全集(全5枚)からの1枚です。



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天才指揮者カーチュン・ウォンのバルトークの管弦楽のための協奏曲は真髄を抉り出す超名演 日本フィルハーモニー交響楽団@サントリーホール 2023.1.20

カーチュン・ウォンの凄い評判は聞いていたので、一体、バルトークをどう演奏するのかと思って、初めて聴いてみました。まさに驚天動地の凄まじい演奏でした。昨年のマケラの春の祭典にも優るとも劣らないような圧倒的な名演でした。昔、ベルティーニが都響を指揮して、みなとみらいホールでマーラーの交響曲第5番を演奏したときに受けた衝撃を思い出しました。指揮者によって、日本フィルがシカゴ響レベルにグレードアップするのを目の当たりにして、驚かざるを得ませんでした。もう、これ以上は書くことがありませんが、それもなんですから、もう少し書いてみましょう。

前半は昨日に続いて日本人作曲家の作品が演奏されます。伊福部昭のシンフォニア・タプカーラです。まず、たっぷりした抒情が歌われますが、その響きの素晴らしさに圧倒されます。そして、さらにテンポアップしたパートのノリに乗った演奏と指揮にあっけに取られます。カーチュン・ウォンは完璧にこの曲を掌握し、最高の演奏を聴かせてくれました。素晴らしい作品に素晴らしい演奏です。もっとも初めて聴くので比較はできませんが、きっと最高レベルの演奏だったでしょう。日本的でもあり、インターナショナルでもある曲と演奏です。演奏後、カーチュン・ウォンはスコアを持ち上げて、作品を讃えていました。saraiとしては指揮したカーチュン・ウォンを讃えたい気持ちです。そうそう、第4楽章はまるでバルトークを思わせるパートもあり、この後に演奏されるバルトークに期待してしまいます。

で、そのバルトークの管弦楽のための協奏曲は無論、細部に至るまでsaraiも把握していますから、十分に演奏のレベルを評価することができます。しかし、そのsaraiを嘲笑うようにカーチュン・ウォンは聴いたこともないようなフレーズを深く掘り下げた演奏で驚嘆させます。ううっ、これは本当はこんな曲だったのかと次から次へと新しい驚きを繰り出してきます。しかも日本フィルの響きの素晴らしさにも驚嘆します。目をつぶって聴いていれば、世界のビッグ5のオーケストラのひとつが演奏していると思ってしまいまいそうです。特にヴィオラのパートの素晴らしさには目を瞠ります。管も絶好調です。
第1楽章は完璧でした。ここまでの完成度の演奏は聴いたことがありません。実演でもCDでもそうです。第2楽章は部分的に少しレベルが落ちたところもありましたが、それは第1楽章が凄過ぎたせいでしょう。第3楽章以降は持ち直し、またもや、完璧の上をいくレベルです。第3楽章の夜の歌のダークな演奏も秀逸です。第4楽章のノリは異常に凄いとしか言えません。こんな演奏が可能だとは想像だにできません。第5楽章の急速なパッセージははらはらするようなスピード感ですが、見事に弾きこなしていきます。凄いぞ!日本フィル。特にヴァイオリンとヴィオラは凄まじい! そして、対位法的な音楽が見事に構成されていきます。緊張感で息もできないほどですが、演奏者、特に指揮者は緊張感だけでなく、楽興的でもあります。これが真のバルトークですね。神業のような演奏が高潮して、圧倒的なフィナーレ。一瞬の沈黙がありました。振り向いたカーチュン・ウォンを見て初めて気が付きましたが、彼は暗譜での指揮でした。そうですね・・・これって、暗譜でなくてはあんな指揮はできませんね。

こんな凄い指揮者がこれから日本フィルの首席指揮者になるとは何と言う僥倖でしょう。カーチュン・ウォン&日本フィルはジョナサン・ノット&東響と並ぶ存在になりそうです。saraiの心の中で日本フィルの位置づけが大きくなりました。2023年シーズンから、定期会員になろうかな・・・そのためには、どこかのオーケストラと縁を切らないとね。


今日のプログラムは以下です。


  指揮:カーチュン・ウォン[首席客演指揮者]
  管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団 コンサートマスター:田野倉 雅秋

  伊福部昭:シンフォニア・タプカーラ

   《休憩》

  バルトーク:管弦楽のための協奏曲


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目の伊福部昭のシンフォニア・タプカーラを予習したCDは以下です。

 広上淳一指揮日本フィルハーモニー管弦楽団 1995年8&9月 セッション録音

伊福部昭の芸術シリーズのCDで、作曲家自身の立ち合いの下、録音された記念碑的なCDです。実に熱のある素晴らしい演奏です。


2曲目のバルトークの管弦楽のための協奏曲を予習したCDは以下です。

 フリッツ・ライナー指揮シカゴ交響楽団 1955年 セッション録音

実は新たにユニバーサルプレーヤーを購入し、このSACDを初めて聴いてみました。ハイブリッドCDなので、これまでは通常のCD面を聴いていましたが、70年ほど前の録音とは思えない瑞々しさに改めて、感銘を受けました。50年前にレコードでこの演奏を聴いて、バルトークに夢中になっていた日々が蘇りました。



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       カーチュン・ウォン,  

モーツァルトの魔笛ハイライト 川瀬賢太郎&東京交響楽団:モーツァルト・マチネ~川崎市・ザルツブルク市友好都市提携30周年記念@ミューザ川崎シンフォニーホール 2023.1.21

ハイライトとは言え、まるでオペラを聴いたくらい満足しました。

まずは川瀬賢太郎指揮の東京交響楽団の素晴らしい響きに魅了されました。特に序曲の素晴らしかったこと。弦の響きの透明さは秀逸でした。

演出/ナレーションの宮本益光のまとめかたも見事です。幾分、本来のストーリーから逸脱しているところもありましたが、ハイライトにまとめるには致し方ないところでしょう。
歌手もきちんと歌っていました。針生美智子の夜の女王は大健闘と言った感じです。見事なコロラトゥーラを聴かせてくれました。嘉目真木子のパミーナも魅力たっぷり。ヒロインの役目を果たしてくれました。
近藤 圭のパパゲーノは歌も演技も素晴らしいものでした。澤原行正のタミーノは声は出ていましたが、音程が若干、不正確だったのが残念です。

全体にユーモアも交えた楽しいオペラに仕上がっていました。そうそう、衣装がちゃんと用意されていたのは素晴らしいです。コンサート形式の枠を大きく超えるものでした。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:川瀬賢太郎
  共演 モーツァルト・シンガーズ・ジャパン (MSJ)
  演出/ナレーション:宮本益光
  タミーノ:澤原行正
  パミーナ:嘉目真木子
  夜の女王:針生美智子
  パパゲーノ:近藤 圭
  パパゲーナ:鵜木絵里
  管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:小林壱成

  モーツァルト:歌劇『魔笛』ハイライト ※日本語字幕付き

  序曲
  「オイラは鳥刺し」
  「何という美しい絵姿だろう」
  「恋を知るほどの男の方々は」
  「なんと不思議な笛の音だ」
  「立派な男が誰も皆」
  「復讐の炎は地獄のように我が心に燃え」
  「愛の喜びは露と消えて」
  「娘っ子か恋女房を」
  「私たちは炎を通り抜けた」
  「パパパの二重唱」

  《アンコール》なし

   休憩なし


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のモーツァルトの歌劇「魔笛」(ハイライト)を予習したCDは以下です。

 ベルナルト・ハイティンク指揮バイエルン放送交響楽団 1981年4月1~13日 ミュンヘン・ヘラクレスザール セッション録音
  パミーナ:ルチア・ポップ
  タミーノ:ジークフリート・イェルザレム
  パパゲーノ:ウォルフガング・ブレンデル
  パパゲーナ:ブリギッテ・リントナー
  夜の女王:エディタ・グルベローヴァ 
  ザラストロ:ローラント・ブラハト
  モノスタトス:ハインツ・ツェドニク
  合唱:バイエルン放送合唱団

ハイティンク指揮バイエルン放送交響楽団の演奏が素晴らしく、また、何と言ってもグルベローヴァの夜の女王が最高です。ルチア・ポップのパミーナももったいないくらい素晴らしいです。



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アミハイ・グロスがバルトークのヴィオラ協奏曲を瑞々しく演奏 トゥガン・ソヒエフ&NHK交響楽団@サントリーホール 2023.1.25

バルトークの絶筆で未完に終わったヴィオラ協奏曲は50年前にバルトークの熱烈なファンになって以来、ずっと聴きたかった曲でしたが、今日、初めて実演で聴くことができました。ベルリン・フィルの首席ヴィオラ奏者のアミハイ・グロスの実力をまざまざと実感させられる瑞々しい演奏で、このバルトークの作品の素晴らしさに今更ながら驚嘆しました。バルトークの絶筆とはいえ、決して晩年を思わせる作品などではなく、新たな挑戦に満ちた作品で、それまでのバルトークにはなかった響きや音楽性にあふれていました。バルトークはその人生の最後まで、独自の音楽領域を開拓し続けたんですね。ハンガリーの民俗音楽的な要素をいい意味で切り捨てて、次なる世界に乗り出そうとしていたんだと思います。バルトークの見果てぬ夢の一端を聴かせてもらいました。ほとんど手つかずに終わったオーケストラパートは同じハンガリー出身の作曲家ティボル・シェルイが補筆完成したとのことで、どこまでバルトークの音楽になっているかは想像するしかありませんが、少なくともトゥガン・ソヒエフの指揮したN響の響きは素晴らしいものでした。第3楽章のパシュート的な音楽は紛れもなく、バルトークそのものに思えました。全編、ヴィオラの独奏パートが多く、アミハイ・グロスの美しい響きの演奏と音楽表現に魅了されたヴィオラ協奏曲でした。今日はこれが聴けただけで、大満足です。
アンコールのバルトークのデュオも秀逸な演奏でした。

後半は、ラヴェルとドビュッシーの作品。これまでソヒエフはウィーン・フィルとトゥールーズ・キャピトル管弦楽団で聴きましたが、オーケストラから鮮やかな色彩の響きの音楽を引き出す能力には舌を巻きました。日本のオーケストラで聴くのは初めてですが、やはり、彼の色彩感あふれる演奏はそのまま、あてはまります。何とも素晴らしい響きでフランスの2人の作曲家の作品を演奏してくれました。N響がこんな響きを出せるのですね。特にラヴェルの「ダフニスとクロエ」組曲 第2番は圧巻の演奏でした。ドビュッシーの交響詩「海」も第3曲の盛り上がりは最高の響きが冴え渡りました。

ところで、音楽には直接関係ありませんが、ロシアのウクライナ侵攻でロシア人音楽家は苦悩し、様々な対応を迫られていますが、その中でトゥガン・ソヒエフの潔さは賞賛されて、然るべしでしょう。長年指揮してきたフランスのトゥールーズとロシアのボリショイの音楽監督の職をいずれも辞して、個人としての責任をとった形です。なかなかできないことです。リスペクトできる音楽家だと思いました。


今日のプログラムは以下のとおりでした。


  指揮:トゥガン・ソヒエフ
  ヴィオラ : アミハイ・グロス
  管弦楽:NHK交響楽団 コンサートマスター:白井圭

  バルトーク:ヴィオラ協奏曲(シェルイ版)
   《アンコール》バルトーク(ペーテル・バルトーク編):44のヴァイオリン二重奏曲(ヴィオラ版)第37曲「プレリュードとカノン」

   《休憩》

  ラヴェル:「ダフニスとクロエ」組曲 第1番、第2番
  ドビュッシー:交響詩「海」


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のバルトークのヴィオラ協奏曲を予習したCDは以下です。

  キム・カシュカシアン、ペーター・エトヴェシュ指揮オランダ放送室内管弦楽団 1999年 セッション録音

キム・カシュカシアンの現代的なヴィオラの切り込みの演奏が素晴らしい。文句ない演奏です。


2曲目のラヴェルの「ダフニスとクロエ」組曲 第1番、第2番を予習したCDは以下です。

  ロリン・マゼール指揮ウィーン・フィル 1996年1月、ムジークフェライン セッション録音

「ダフニスとクロエ」組曲 第1番の録音は決して多くはない中、ウィーン・フィルの素晴らしい響きに陶然となります。第2番も予想外に素晴らしい演奏です。


3曲目のドビュッシーの交響詩「海」を予習したCDは以下です。

  フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮レ・シエクル 2012年4月13日 ローマ、聖チェチーリア音楽院 セッション録音

ロトと手兵のピリオド楽器オーケストラ、レ・シエクルの演奏で、初演時の響きを再現してくれた貴重な録音。でも、それほどの違いは分かりません。むしろ、演奏そのものの質が高く、聴き映えします。



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クァルテット・インテグラの充実したアンサンブルのベートーヴェン、バルトーク、ブラームスの弦楽四重奏曲第1番セット@第一生命ホール 2023.1.28

この第一生命ホールは勝どき駅近くの晴海トリトンスクエアの中にあり、建物の4階から上のフロアに作られた新しいホールです。座席767席という中規模のホールですが、オーバル型という結構、横長の形をしていて、室内楽としては大きめのホールです。残響の少ないデッドな響きで、音響的にあまり響くとは言えませんが、その変わり、響きが明瞭に聴き取れます。そのせいかもしれませんが、若手クァルテットのクァルテット・インテグラのいつもの生硬とも言える瑞々しさがそれほど感じられずに、代わりにベテランのクァルテットのような熟成さが感じられます。ホールの特性なのか、それとも現在、活動拠点をアメリカに移しているためなのか、判然としません。5月にいつもの鶴見サルビアホールで聴くので、はっきりと分かるでしょう。

今回は3大Bのシリーズの1回目ということで、ベートーヴェン、バルトーク、ブラームスの弦楽四重奏曲の第1番をずらっと並べたプログラムです。来年の第2回は第2番、再来年の第3回は第3番ということだそうです。ブラームスはそれで結構ですが、バルトークが6曲のうち、半分だけというのは中途半端ですね。いっそのこと、バルトークの第4番~第6番を並べたコンサートを企画してほしいですね。

最初はベートーヴェンの第1番。これは安定した響きのたいそう素晴らしい演奏でした。ベートーヴェンの後期よりもよい演奏です。やはり、彼らはベートーヴェンの後期四重奏曲はしばらく後に演奏したほうがいいのではと余計な心配をしてしまいます。それにベートーヴェンの作品18の6曲は後期ほどでないとしても、音楽的に大変充実していて、saraiは大好きです。そういう意味でも、この3大Bのシリーズはクァルテット・インテグラのベートーヴェンの第1番~第3番が聴けるといういい機会になります。しかし、そうなると、残りの第4番~第6番も聴きたくなりますね。

次はバルトークの第1番。これは最高に素晴らしい演奏でした。落ち着きと緊張感が融合して、素晴らしいアンサンブルが展開されました。とりわけ、各楽章でチェロが主導するところで、築地杏里が深い響きで魅了してくれました。全体的に緊密なアンサンブルが見事に機能し、後期ロマン派の輝きをみせるバルトークの名曲に酔いしれました。終楽章である第3楽章の後半はさらにアンサンブルの精度が高まり、ありえないような演奏を聴かせてくれました。

休憩後、ブラームスの第1番。実はこれがとてもよかったんです。バルトークよりもよかったかもしれません。ブラームスとしては最初の弦楽四重奏曲として、交響曲第1番と同様に、練りに練った作品です。saraiはこういう力の入り過ぎた作品は苦手ですが、クァルテット・インテグラはほどよいバランスで素晴らしいブラームスを聴かせてくれました。第2楽章のそこはかとない抒情など、素晴らしい演奏です。ところが第4楽章に入ったところで、saraiの集中力はぷっつりと切れてしまいます。ここまで結構、重たい曲が続きましたからね。第4楽章をちゃんと聴けていれば、このブラームスが今日一番の演奏だったかもしれません。まあ、第3楽章までは素晴らしい演奏が聴けたので、いいでしょう。

アンコール曲は最近も聴かせてもらったハイドンの弦楽四重奏曲第74番「騎手」Op.74-3。第2楽章のラルゴは美しい抒情の漂う世界を丁寧かつ緊張感高く歌っていきました。ハイドンの真骨頂を若い彼らが見事に演奏してくれました。

クァルテット・インテグラの着実な前進が感じられたコンサートでした。次、どれほどの演奏を聴かせてくれるか、楽しみです。


今日のプログラムは以下です。

  弦楽四重奏:クァルテット・インテグラ
   三澤響果 vn  菊野凜太郎 vn 
   山本一輝 va  築地杏里 vc

  ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第1番 ヘ長調 Op.18-1
  バルトーク:弦楽四重奏曲 第1番 Sz.40 BB52

   《休憩》

  ブラームス:弦楽四重奏曲 第1番 ハ短調 Op.51-1
 
   《アンコール》
     ハイドン:弦楽四重奏曲第74番 ト短調 Op.74-3 Hob. III: 74「騎手」から 第2楽章

最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第1番は以下のCDを聴きました。

 ベルチャ四重奏団 2011年 オールドバラ、スネイプ・モルティングス、ブリテン・スタジオ セッション録音
 
これがベルチャ四重奏団のベートーヴェンu弦楽四重奏曲全集の聴き始めでしたが、過大な期待ほどの演奏ではなく、少々、残念です。もっと、抒情に満ちた演奏を期待していました。


2曲目のバルトークの弦楽四重奏曲 第1番は以下のCDを聴きました。

 ベルチャ四重奏団 2007年 セッション録音

ベルチャ四重奏団はこちらのバルトークは大変、素晴らしい演奏ですっかり魅了されました。響きの美しさと幽玄な音楽表現は新たなバルトーク像を表出したものです。


3曲目のブラームス:弦楽四重奏曲 第1番は以下のCDを聴きました。

 ベルチャ四重奏団 2003年 セッション録音
 
ベルチャ四重奏団はブラームスの弦楽四重奏曲第2番が大変素晴らしい演奏だったので、期待して聴きましたが、この曲は相性が悪かったようで、もう一つの演奏。聴く側のsaraiの趣味の問題もありますが、どうもベルチャ四重奏団は曲によって、出来、不出来が極端にぶれます。どうやら、抒情的な作品への大胆な踏み込みがよいようです。かっちりした作品は今一つに思えます。しばらく、ほかの曲も聴いてみましょう。



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       クァルテット・インテグラ,  

後半に尻上がりに調子を上げた上原彩子のパガニーニの主題による狂詩曲の耳でも目でも圧巻の演奏 大友直人&東京交響楽団@ミューザ川崎シンフォニーホール 2023.1.29

今日はミューザ川崎&東京交響楽団の名曲全集。今日の演目が名曲全集にふさわしいとは思えません。特にエルガーの交響曲第2番はクラシック音楽通を自任するsaraiでさえ、これまで聴いたことがなく、初聴きの曲です。ともあれ、大友直人指揮の東響は素晴らしい響きで名曲全集にふさわしい演奏でした。もっともsaraiのお目当ては上原彩子のピアノを聴くこと。とりわけ、彼女が得意にしているラフマニノフとあらば、駆けつけざるを得ません。そして、まったくsaraiの期待通りの上原彩子の会心の演奏でした。

前半が上原彩子が弾くラフマニノフのパガニーニの主題による狂詩曲。saraiと配偶者の席は左側の前方の席。上原彩子がピアノを弾く後ろ姿を眺める感じですが、指が鍵盤の上を動きまわる様はよく見えます。演奏は第1変奏から淡々と平穏に進んでいきます。なかなか切れのよいタッチですが、上原彩子ならば、当然のこと。東響の弦の響きも冴え渡ります。第10変奏のグレゴリオ聖歌の「怒りの日」の旋律が登場するあたりから、音楽は徐々にヒートアップしていきます。そして、いよいよ、有名な第18変奏にはいります。まず、ピアノ独奏であの甘美な旋律(パガニーニの主題の反行形(上下を反対にした形))が奏でられます。上原彩子の抒情味を帯びたクリアーな音色の演奏の美しいこと、この上なし。うっとりと魅了されながら聴き惚れます。そして、その甘美な旋律がオーケストラに受け継がれ、東響の弦が美しく演奏します。そして、ピアノが分散和音的に修飾していきます。saraiの耳には上原彩子のピアノの響きだけが聴こえてきて、そのピアノの響きをオーケストラが修飾しているように感じます。いやはや、素晴らしい! うっとりしているうちに第18変奏も終盤にはいり、ピアノの独奏が甘美な旋律を回想します。第19変奏以降はピアノの超絶技巧が炸裂しまくり、圧倒的です。鍵盤の上を動き回る上原彩子の手のかっこよさにもしびれます。第23変奏で主題が明快に回帰して圧倒的な音楽の高まりになり、最後の第24変奏ではオーケストラが強烈に「怒りの日」を演奏した後、独奏ピアノが主題をさりげなく弾いて、おしゃれに音楽を閉じます。うーん、今日も上原彩子のピアノは凄かった!! 魂の燃え上がる燃焼度の高い演奏に加えて、クリアーなピアノの響きと抒情味のある音楽表現・・・言うことがありません。東響の弦と木管の美しさも華を添えました。

後半のエルガーの交響曲第2番は大友直人の素晴らしい指揮のもと、東響の素晴らしいアンサンブルが美しい響きで魅了してくれました。第4楽章の後半、東響の素晴らしい響きが盛り上がり、その後、静謐に曲が終わります。早過ぎる拍手で一気に楽興をそがれましたが、それがなければ、とてもよいイギリス音楽が聴けました。音楽は演奏家と聴衆が作り出すものですが、今日はそれが裏目に出ましたね。エルガーはよくも悪くもイギリス音楽の真髄を抉り出した作品を作ったことが感じられました。まさにBBCプロムスの世界そのものです。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:大友直人(東京交響楽団 名誉客演指揮者)
  ピアノ:上原彩子
  管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:小林壱成

  ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 Op. 43
  《アンコール》 ラフマニノフ:前奏曲集 Op.23-2

  《休憩》

  エルガー:交響曲第2番 変ホ長調 Op. 63


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のラフマニノフのパガニーニの主題による狂詩曲を予習したCDは以下です。

 アンドレイ・ガヴリーロフ、リッカルド・ムーティ指揮フィラデルフィア管弦楽団 1989年4&5月 セッション録音
 ユジャ・ワン、クラウディオ・アバド指揮マーラー室内管弦楽団 2010年4月 フェラーラ,テアトロ・コムナーレ セッション録音

ガヴリーロフは昔はテクニックは凄かったですが、実に端正な演奏をしていました。今なら思いっ切り、したい放題の演奏をするでしょう。そこがもう一つ、物足りません。
ユジャ・ワンは凄い演奏です。テクニック抜群で音も美しいです。そして、煌めくような音楽表現に魅了されます。アバド指揮のマーラー室内管とのバランスも見事です。これ以上の演奏はないでしょう。


2曲目のエルガーの交響曲第2番を予習したCDは以下です。

 アンドレ・プレヴィン指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 1992年 アムステルダム、コンセルトヘボウ ライヴ録音

大変、美しい演奏です。



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       上原彩子,  

初期、中期、後期弦楽四重奏曲・・・いずれも見事なアンサンブルと気魄に納得の演奏 ベートーヴェン・チクルス第3回 カルテット・アマービレ@王子ホール 2023.1.31

王子ホールで進行中のカルテット・アマービレのベートーヴェン弦楽四重奏曲チクルスの第3回です。今回も素晴らしい充実度の演奏。初期、中期、後期、それぞれの弦楽四重奏曲はたっぷりとした中身のある音楽で、カルテット・アマービレはますます熟成し、けれども瑞々しさを湛えた渾身の演奏を聴かせてくれました。今回で中期の作品はすべて弾き終えて、残りは初期の3曲と後期の4曲を来年以降の3年3回のコンサートで弾くことになりました。来年は1月21日。ますます、名曲に挑戦することになります。楽しみですね。

さて、今日のコンサート。まずはみなさん、黒いお洒落なドレスで登場。ヴィジュアルさは音楽には関係ありませんが、音楽だけでなく、姿の美しさにも磨きがかかってきました。クラシック音楽界のアイドルみたいです。
冒頭はベートーヴェンの弦楽四重奏曲 第2番。作品18の2です。今回のチクルスでは、作品18の6曲を作曲順に弾いています。これまで第3番、第1番と弾いてきました。次回は多分、第5番、作品18の5を弾くのでしょう。
第1楽章を弾き始めると、挨拶の主題が爽やかに響きます。美しいアンサンブルにぐっと惹き込まれます。ベートーヴェン初期の作品とは言え、とてもそうは思えない完成度の高さでsaraiもとっても好きな曲です。素晴らしいアンサンブルの中、第1ヴァイオリンの篠原悠那の美しい響きが光ります。第2楽章は抒情的な音楽がカルテット・アマービレの美しい響きで精緻に演奏されます。第3楽章、第4楽章は軽快に気持ちよく音楽が流れます。最上級の演奏でした。

次はベートーヴェンの弦楽四重奏曲 第9番。「ラズモフスキー第3番」で知られているベートーヴェン中期の傑作です。明るく、勢いに満ちた作風の傑作です。カルテット・アマービレの演奏は最高に素晴らしいものでした。とりわけ、第4楽章のフーガは圧倒的な迫力でどこまでも突き進むという風情で魅力たっぷりの演奏でした。古典派の弦楽四重奏曲の総決算として、どこまでも音楽の高みに上り詰めるという音楽を若い4人は瑞々しい感性で歌い上げてくれました。

休憩後、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲 第13番 Op.130。終楽章はオリジナルの大フーガ Op.133を演奏します。実に長大な作品です。ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の中でもっとも演奏時間の長い作品です。カルテット・アマービレの4人の充実した演奏が最高の形で結実しています。ただただ、魅了されるのみです。第4楽章までの熟達した演奏はその後の第5楽章と終楽章の前座だったのかと思わせるほど、第5楽章のカヴァティーナが何とも思い入れたっぷりに奏でられます。作曲したベートーヴェンが凄いのですが、カルテット・アマービレのメンバーたちは思いつめたような深い感情を込めて、切々と音を紡いでいきます。彼らを突き動かしていたのは、愛の思い出か、単に音楽への深い傾倒なのか。老年のsaraiとて、平静な気持ちでは聴いていられません。曲が終わり、うーん、何も弾けませんね。彼らもちょっとチューニングで時間をとります。無論、普通の終楽章ならば、きっと、そのまま弾き進めたでしょうが、今日はここから長大かつ壮大な大フーガです。美しいカヴァティーナと対極をいくような音楽です。そして、彼らは意を決したように大フーガを弾き始めます。静かに始まった音楽も凄い迫力で盛り上がっていきます。カルテット・アマービレ、渾身の演奏です。そして、また、静謐な音楽が始まります。今日、最高の演奏です。精緻なフーガが見事に演奏されていきます。その果てで音楽は高潮し、再び、静まった後に圧倒的なフィナーレ。うーん、今日、最高の演奏でした。

カルテット・アマービレは聴くたびに彼らの音楽に魅了され、彼らの成長が楽しみで、そして、それ以上に若々しい音楽の精華に共感します。ソロ活動が増えた彼らですが、今後もこのカルテット・アマービレとしての室内楽の活動に軸を置いてもらいたいと老年ファンの一人として願うばかりです。


今日のプログラムは以下のとおりでした。

  弦楽四重奏:カルテット・アマービレ
         篠原悠那(第1ヴァイオリン)
         北田千尋(第2ヴァイオリン)
         中 恵菜(ヴィオラ)
         笹沼 樹(チェロ)


  ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第2番 ト長調 Op.18-2
  ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第9番 ハ長調 Op.59-3 「ラズモフスキー第3番」

   《休憩》

  ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第13番 変ロ長調 Op.130/大フーガ 変ロ長調 Op.133


   《アンコール》
     ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第13番 変ロ長調 Op.130 から 第6楽章 Allegro 変ロ長調 Op.130-6


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のベートーヴェンの弦楽四重奏曲 第2番を予習したCDは以下です。

  リンゼイ弦楽四重奏団 1979年 ウェントワース、ホーリー・トリニティ教会 セッション録音

リンゼイ弦楽四重奏団のベートーヴェン弦楽四重奏曲全集の旧盤です。新盤よりもしっくりくる演奏です。


2曲目のベートーヴェンの弦楽四重奏曲 第9番「ラズモフスキー第3番」を予習したCDは以下です。

  リンゼイ弦楽四重奏団 1984年 ウェントワース、ホーリー・トリニティ教会 セッション録音

リンゼイ弦楽四重奏団のベートーヴェン弦楽四重奏曲全集の旧盤です。これも新盤よりもしっくりくる演奏です。


3曲目のベートーヴェンの弦楽四重奏曲 第13番 Op.130/大フーガ Op.133を予習したCDは以下です。

  リンゼイ弦楽四重奏団 1983年 ウェントワース、ホーリー・トリニティ教会 セッション録音
  リンゼイ弦楽四重奏団 2000年7月25-27日 ウェントワース、ホーリー・トリニティ教会 セッション録音

リンゼイ弦楽四重奏団のベートーヴェン弦楽四重奏曲全集の旧盤と新盤です。これは新盤のほうがしっくりきました。


アンコールのベートーヴェンの弦楽四重奏曲 第13番 変ロ長調 Op.130 から 第6楽章 Allegro 変ロ長調 Op.130-6を予習したCDは以下です。そうです。当然、アンコールはこれしかないと予想して、予習しました(笑い)。

  リンゼイ弦楽四重奏団 1983年 ウェントワース、ホーリー・トリニティ教会 セッション録音

リンゼイ弦楽四重奏団のベートーヴェン弦楽四重奏曲全集の旧盤です。



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       カルテット・アマービレ,  

アンチヒーローが聖なる愛で救済される壮大なドラマ 《タンホイザー》@新国立劇場 2023.2.4

実に素晴らしいワーグナーの楽劇を堪能。《タンホイザー》って、こんなにも素晴らしいとは思っていませんでしたから、とても魅了されました。ハンス=ペーター・レーマンのシンプルで素直な演出だと、《タンホイザー》の本質が見えてきます。これまでタンホイザーは何を聴いてきたのか調べると、実演では、バイエルン国立歌劇場の豪華キャスト(ギャンビル、キーンリサイド、ピエチョンカ、マイヤー、メータ指揮)、ヴィデオではバイロイト音楽祭(ディヴィス指揮)で、どうやら、演出が分かりにくいものだったようです。そのため、saraiは《タンホイザー》の素晴らしさを見誤っていたようです。本来は今回の公演のように、聖と俗の狭間でアンチヒーローのタンホイザーが揺れ動き、聖なる女性エリーザベトの天使のような献身的な祈りが神に聞き届かれて、罪人タンホイザーが堕落の寸前で救われるというというシンプルなストーリーが、ワーグナーの奇跡のような音楽で描き出されるものです。予習したバーデン・バーデン祝祭劇場でレーンホフが演出したものは今回の公演と驚くほど似た印象で、いずれも天使のような乙女エリーザベトの死を覚悟した祈りでタンホイザーが救済されるところが感動的に描き出されています。それにしてもワーグナーの音楽の天才的な崇高さには圧倒されるのみです。最近のバイロイト音楽祭の演出はどうやらひどいもので、とても聴きに行く気が起きるようなものではありません。平凡な鑑賞者であるsaraiには、バイロイト音楽祭よりも新国立劇場の公演のほうがよほど好ましいと思えます。《タンホイザー》は《パルジファル》とかなりの点で似たところが多く、とても聴き映えがします。無論、この路線では《パルジファル》は最高傑作に間違いありませんが、親しみやすい旋律やストーリーのシンプルなところでは《タンホイザー》を好む人も多いのではないでしょうか。

総論は以上ですが、今日の公演の具体的な中身を見ていきましょう。アレホ・ペレスの指揮はワーグナーの音楽を実に明快に描き出しました。序曲の出だしこそ、金管の響きが弱く、あれれと思いましたが、全般には東響の美しい弦の響きをいかした壮麗で豊かな音楽を聴かせてくれました。特筆すべきはやはり、新国立劇場合唱団の素晴らしい合唱です。再三登場する《巡礼の合唱》の厳かさには感銘を受けました。そして、最後の幕切れの大合唱には感動しかありません。
タイトルロールのタンホイザーを歌ったステファン・グールドは文句なしに最高の歌唱でした。素晴らしい美声に圧倒されます。ただし、役どころがある意味、情けない男なので、何となく、むなしく響きます。
ヴェーヌスを歌ったエグレ・シドラウスカイテは思いのほか、よく歌っていたと思います。十分に男を魅了するという役どころを歌い切っていたと思います。
最高に素晴らしかったのはエリーザベトを歌ったサビーナ・ツヴィラク。第2幕のアリア《歌の殿堂》もさることながら、第3幕の巡礼者の中にタンホイザーの姿が見いだせなかった後に聖母マリアに願って歌うアリアの清らかさはうるうるものでした。透明でありながら、芯のある歌唱は見事の一語。
ヴォルフラム役のデイヴィッド・スタウトは高潔さを表出した歌唱。少し硬質な響きですが、有名なアリア《夕星の歌》は圧巻でした。
ヘルマンを歌った我らが妻屋秀和は堂々たる歌唱で海外の歌手たちにひけをとりません。
牧童を歌った前川依子は美しい声で素晴らしい歌唱を聴かせてくれました。彼女が巡礼たちの歌声と交錯して歌うシーンの見事さには聴き惚れました。

ドラマが盛り上がったのは第2幕の歌合戦。次第にタンホイザーの破局に向かう場面の迫真性。そして、罪を告白したタンホイザーの助命を懇願するエリーザベトの迫力と純真さを兼ね備えた歌唱に感銘を覚えます。そして、ローマに巡礼に行くことになったタンホイザーの哀れな姿にスポットがあてられながらの第2幕の終わりに音楽が高潮します。

最後は第3幕の幕切れのシーン。エリーザベトの死でタンホイザーに神の救済が与えられたところで一気に音楽は盛り上がり、圧倒的な合唱で感動のうちに幕。

ワーグナーの音楽の聴きどころは随所にありました。これほど、ワーグナーの音楽の崇高さを感じられるオペラはないかもしれません。罪の痛み、清らかな祈りなどが織り交ぜられて、静かで厳かな感動に満ちた音楽が素晴らしい独唱、アンサンブル、合唱で描き出されました。新国オペラのワーグナー作品の名演といっても過言ではないでしょう。


今日のキャストは以下です。

  リヒャルト・ワーグナー
   楽劇 タンホイザー 全3幕

【指 揮】アレホ・ペレス
  【演 出】ハンス=ペーター・レーマン
  【美術・衣裳】オラフ・ツォンベック
  【照 明】立田雄士
  【振 付】メメット・バルカン
  【再演演出】澤田康子
  【舞台監督】髙橋尚史
  【合唱指揮】三澤洋史
  【合 唱】新国立劇場合唱団
  【バレエ】東京シティ・バレエ団
  【管弦楽】東京交響楽団 コンサートマスター:水谷晃

【領主ヘルマン】妻屋秀和
  【タンホイザー】ステファン・グールド
  【ヴォルフラム】デイヴィッド・スタウト
  【ヴァルター】鈴木 准
  【ビーテロルフ】青山 貴
  【ハインリヒ】今尾 滋
  【ラインマル】後藤春馬
  【エリーザベト】サビーナ・ツヴィラク
  【ヴェーヌス】エグレ・シドラウスカイテ
  【牧童】前川依子
  【4人の小姓】和田しほり/込山由貴子/花房英里子/長澤美希


最後に予習について、まとめておきます。

以下のヴィデオを見ました。

・ワーグナー:歌劇『タンホイザー』全曲
 タンホイザー:ロバート・ギャンビル(T)
 エリーザベト:カミラ・ニュルンド(S)
 ヴェーヌス:ヴァルトラウト・マイヤー(S)
 ヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハ:ローマン・トレケル(Br)
 領主ヘルマン:スティーヴン・ミリング(B)
 ヴァルター:マルセル・レイヤン(T)、他
 ウィーン・フィルハーモニア合唱団
 ベルリン・ドイツ交響楽団
 フィリップ・ジョルダン(指揮)
 演出:ニコラウス レーンホフ
 装置:ライムンド・バウアー
 照明:ドゥアン・シューラー

 収録時期:2008年
 収録場所:バーデン=バーデン祝祭劇場(ライヴ)

シンプルな演出で素晴らしいタンホイザーが楽しめます。エリーザベトのカミラ・ニュルンドの歌唱が最高です。ジョルダンの指揮も見事。



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天才、藤田真央のゾーンにはいったような最高のモーツァルト ピアノ・ソナタ全曲演奏会の掉尾を飾る@王子ホール 2023.2.8

藤田真央のモーツァルト ピアノ・ソナタ全曲演奏会の第5回。今日がチクルス最後の演奏会になります。前回は抽選漏れで聴けませんでした。結局、全5回のうち、3回だけ聴いたことになります。
で、今日は最高の演奏でした。最初のピアノ・ソナタ 第3番の冒頭の1音から素晴らしいタッチの演奏で、まったくもって素晴らしい演奏が最後まで続きました。アンコールの2曲はさらに素晴らしく、モーツァルト ピアノ・ソナタ全曲演奏会の掉尾を飾る見事な演奏。さすがに、ソニークラシカルと専属レコーディングのワールドワイド契約を締結し、世界デビュー・アルバムでモーツァルトのピアノ・ソナタ全集を録音した藤田真央の特別な天才ぶりを感じることができました。

前半の第3番~第5番の演奏の素晴らしかったこと! 間違いなく、saraiがこれまで聴いた中でベストの演奏です。このまま、ライヴ録音のCDにしたいくらい。とりわけ、第5番の演奏にはしびれました。第3楽章のアレグロの奔放で闊達な演奏は心に瑞々しく響いてきました。それにしても、藤田真央のピアノの音は弱音から強音まで、歯切れよく、そして、本当によく響きます。まるでピアノに特別の仕掛けがあるみたいに思えます。ペダルは軽く踏む程度のようです。

後半は前半の初期作品から一転して、後期作品になります。藤田真央のピアノの素晴らしい響きは前半と同様ですが、作品の充実度が違います。
まず、ピアノ・ソナタ 第13番 変ロ長調 K333。耳慣れた有名な作品です。第1楽章から魅了されます。普通に演奏しているだけですが、何か、オーラのような輝きを放っています。安定した演奏でありながら、瑞々しく感じるのは何故でしょう。ともかく、ピアノの響きが美しいこと、この上ありません。第2楽章のアンダンテ・カンタービレは抒情に満ちた演奏。シューベルトのように長大に感じますが、実際はそれほどの長さではない筈です。第3楽章のアレグレット・グラツィオーソは圧巻の演奏です。実に華麗な響きがこだまします。即興的にも感じる演奏は音楽性にも満ちて、深く感銘します。
最後はモーツァルトの最後のピアノ・ソナタの第18番 ニ長調 K576。第1楽章はバッハとの関連を思わせる対位法的な書法で、まるでトッカータみたいです。藤田真央のピアノは闊達にこのバッハ風の調べを水際立った演奏で弾き進めます。素晴らしいテクニックと音の響きに驚嘆します。藤田真央のピアノでバッハのパルティータが聴きたくなります。妙な想像をしているうちに圧巻の第1楽章が終わります。緩徐楽章の第2楽章はまだ、第1楽章の印象を引きづりながらも抒情の極みが聴けます。こういうところでも藤田真央の高い音楽性が感じられます。そして、いよいよ、最後の第3楽章。ロンド・フィナーレの音楽はモーツァルトのチクルスの最後を締め括る技巧と即興性に満ちた藤田真央の渾身の演奏。とは言え、余裕もあり、音楽の楽しさをあふれんばかりの感性で極め尽くすという風情の見事な演奏。モーツァルトの音楽も成熟の極みに達したことを我々に告げるかの如き演奏でした。

アンコールのフランスの歌「ああ、お母さん聞いて」による12の変奏曲 ハ長調 K265 (きらきら星変奏曲)は凄い演奏。クララ・ハスキルの格調高い演奏にもひけをとらない凄い演奏です。実演でここまでの凄い演奏は聴いたことがありません。技巧も音楽性も両立した名演です。そして、最後のアンコール曲。最初は何?と思いますが、極めて美しいアヴェ・ヴェルム・コルプスです。チクルスの掉尾を飾る素晴らしいプレゼント。格調高く、美しさの限りを尽くした演奏に聴き惚れました。

日本人にも、ここまでのモーツァルトを弾ける天才が出現したことをただただ嬉しく思うばかりです。
藤田真央は次はベートーヴェン、シューベルトのソナタですね。 行け! 藤田真央!


今日のプログラムは以下のとおりでした。

  ピアノ:藤田真央

  モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第3番 変ロ長調 K281
  モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第4番 変ホ長調 K282
  モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第5番 ト長調 K283

   《休憩》

  モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第13番 変ロ長調 K333
  モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第18番 ニ長調 K576

   《アンコール》
     モーツァルト:フランスの歌「ああ、お母さん聞いて」による12の変奏曲 ハ長調 K265 (きらきら星変奏曲)
     モーツァルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス

最後に予習について、まとめておきます。

モーツァルトのピアノ・ソナタ5曲を予習したCDは以下です。

  マリア・ジョアン・ピリス 1974年1~2月 東京、イイノ・ホール セッション録音
  イリーナ・メジューエワ 2011~2014年(第3番~第5番)、2015年11月~12月(第13番、第18番)、新川文化ホール(富山県魚津市) セッション録音


若きピリスが純粋無垢なモーツァルトを聴かせてくれます。後にDGで再録音したものとは一味違っています。saraiが最も愛好してやまないモーツァルトのピアノ・ソナタ全集です。
そして、メジューエワの豊かな響きのモーツァルト。中でも第5番が素晴らしい演奏。全体にはモーツァルトにしては響かせ過ぎかもしれませんが、モーツァルト弾きではないメジューエワの渾身のモーツァルトのピアノ・ソナタ全集です。



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テーマ : クラシック
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       藤田真央,  

ニコラ・アライモの演技とヴォリューム感のある歌唱、そして、素晴らしいアンサンブル 《ファルスタッフ》@新国立劇場 2023.2.12

演出家ジョナサン・ミラーの作り出したステージはシンプルでオーソドックスなもの。特筆すべきは17世紀オランダをもとにした舞台の古色蒼然とした美しさ。舞台転換のスピーディーさもドラマ展開の連続性を損なわない見事なもの。2019年に亡くなったジョナサン・ミラーの残してくれた遺産です。

音楽自体はセリフ回しのようなコメディーで、これがヴェルディの総決算とはね。それでも、オーケストラの分厚い響きでの聴かせどころもあり、東響が存在感を出していました。
そして、歌手では、タイトルロールのファルスタッフを歌ったニコラ・アライモの演技力と朗々たる歌唱の見事さが一番でした。場をしめくくるシーンで再三、張り上げた歌唱の圧倒的な響きに感銘を覚えました。「行け、老練なジョン」"Va, vecchio John" は聴かせどころですが、見事に決まっていました。彼の歌唱を聴くのは、2014年のザルツブルグ精霊降臨音楽祭での《チェネレントラ》のダンディーニ役以来です。そのときは、その巨体から出るボリュームのある声の響きとテクニックに加え、演技力も抜群でパスタを食べるシーンでは死ぬほど笑わせてくれました。バルトリとカマレーナの圧倒的な歌唱にもかかわらず、アライモの素晴らしさが目立ちました。今日も流石の歌唱と演技に納得しました。
アリーチェを歌ったロベルタ・マンテーニャは初聴きですが、その美声に魅了されました。この役は聴かせどころはほとんどありませんが、アンサンブルのソプラノの要となります。彼女の張りのある美声、そして、潤いを感じさせる美しいヴィブラートは輝きを放っていました。透明感のある歌唱はナンネッタ役の三宅理恵の歌唱と共通していて、この2人の歌唱はこのオペラを盛り上げてくれました。
さて、そのナンネッタ役を歌った三宅理恵ですが、今日も美しい高音の歌唱で期待に応えてくれました。もっとも最初、saraiはナンネッタ役を三宅理恵が歌うことを知らなかったので、あれっ、この綺麗で透明な高音は誰だろうとびっくりしてたんです。第3幕のアリア「夏の風に乗って」はまさに妖精の女王にふさわしい素晴らしい歌唱でうっとりと聴き入りました。今日、最高の聴きどころでした。
クイックリー夫人のマリアンナ・ピッツォラートは安定した歌唱もさることながら、演技で魅せてくれました。
フォード役のホルヘ・エスピーノは渋い歌唱が見事。アンサンブルの軸の一人としての役目を果たしました。

ヴェルディが生涯の最後で作り上げた野心的なオペラを新国立劇場が素晴らしい音楽、そして、演出で公演してくれました。アリアが主体でない劇と音楽の総合作品の真髄をしっかりと受け止めることができました。やはり、ファルスタッフは奥深いオペラです。


今日のキャストは以下です。

  ジュゼッペ・ヴェルディ
   ファルスタッフ 全3幕

【指 揮】コッラード・ロヴァーリス
  【演 出】ジョナサン・ミラー
  【美術・衣裳】イザベラ・バイウォーター
  【照 明】ペーター・ペッチニック
  【再演演出】三浦安浩
  【舞台監督】髙橋尚史
  【合唱指揮】三澤洋史
  【合 唱】新国立劇場合唱団
  【管弦楽】東京交響楽団 コンサートマスター:小林壱成

【ファルスタッフ】ニコラ・アライモ
  【フォード】ホルヘ・エスピーノ
  【フェントン】村上公太
  【医師カイウス】青地英幸
  【バルドルフォ】糸賀修平
  【ピストーラ】久保田真澄
  【フォード夫人アリーチェ】ロベルタ・マンテーニャ
  【ナンネッタ】三宅理恵
  【クイックリー夫人】マリアンナ・ピッツォラート
  【ページ夫人メグ】脇園 彩


最後に予習について、まとめておきます。

以下のヴィデオを見ました。

ヴェルディ:歌劇『ファルスタッフ』全曲

 アンブロージョ・マエストリ(ファルスタッフ)
 ステファニー・ブライズ(クイックリー夫人)
 アンジェラ・ミード(アリーチェ)
 リゼット・オロペーサ(ナンネッタ)
 ジェニファー・ジョンソン・カーノ(メグ・ペイジ)
 パオロ・ファナーレ(フェントン)
 フランコ・ヴァッサッロ(フォード)
 メトロポリタン歌劇場管弦楽団&合唱団,
 ジェイムズ・レヴァイン(指揮)

 ロバート・カーセン(演出)
 ポール・スタインバーグ(美術)
 ブリギッテ・ライフェンシュトゥール(衣装)

 収録時期:2013年12月14日
 収録場所:メトロポリタン歌劇場(ライヴ)

うーん、やっぱり、オペラだから、もう少し、キャストの見栄えも大事かなと頭を捻りました。特にアリーチェの容姿がね。音楽的にはレヴァインがしっかりと仕切っていました。



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滅多に演奏されないフローラン・シュミットとショーソンの隠れた名曲を熱演 ヤン・パスカル・トルトゥリエ&東京都交響楽団@サントリーホール 2023.2.14

今日はまさにフランス系の隠れた名曲尽くしの感があります。演奏された3曲ともsaraiは初聴きです。実演だけでなく、CDでも聴いたことがありません。それどころか、こういう曲があることすら知らない有様。フローラン・シュミットの管弦楽とピアノのための協奏交響曲に至っては、この作曲家と初遭遇です。こういう隠れた名曲を紹介してくれる指揮者ヤン・パスカル・トルトゥリエはその名前でうーん。やっぱり、そうでした。往年の名チェリスト、ポール・トルトゥリエのご子息です。とは言え、saraiよりも年上の老境にはいる指揮者です。ちなみに父親のポール・トルトゥリエの実演に接したことはありませんが、バッハの名曲、無伴奏チェロ組曲の1982年録音の新盤を聴いて、その素晴らしい演奏に納得した覚えがあります。

冒頭のフォーレの歌劇『ペネロープ』前奏曲はフォーレらしい静謐な音楽にじっと聴き入りました。さほど面白味のある作品ではありませんが、しみじみとした抒情が伝わってきます。都響の弦楽アンサンブルが今日も美しい演奏を聴かせてくれました。高潮するパートでの管も素晴らしい演奏です。

次はフローラン・シュミットの管弦楽とピアノのための協奏交響曲。ピアノ独奏は若手の俊英、阪田知樹。この難曲を素晴らしく切れのある美音で弾きこなしました。この作品は3楽章とも、バルトーク的な音楽で始まりますが、すぐにフローラン・シュミットの独自の音楽書法に切り換わり、最後は熱く高潮します。フローラン・シュミットの独自の音楽書法と思えたのは、若干、無調のテーストで色彩感あふれる音響で切れのあるリズムの音楽ということです。少々、騒がしい音響という感じもあり、これが聴く人の好き嫌いに分かれるところかもしれません。saraiはニュートラルな立場です。現代音楽に通じるものと思えば肯定的にも聴けますし、 精神性を求めれば否定的にも思えます。バルトークのパロディー的な音楽はなかなか好ましいと思います。第2楽章の冒頭のバルトークの夜の音楽、第3楽章の冒頭のバルトークのピアノを打楽器的に扱うバーバリズム的な音楽あたりはなかなか好ましいです。バルトークのピアノ協奏曲第2番・第3番を想起します。そして、これらのパートを阪田知樹は見事に演奏します。彼の弾くバルトークが聴きたいですね。フローラン・シュミットの独自の音楽書法のピアノとオーケストラが渾然一体となった各楽章の終結部分は阪田知樹と都響が熱く燃え上がり、圧巻の演奏でした。トルトゥリエの指揮の捌き方も見事なものでした。

休憩後、ショーソンの交響曲 変ロ長調。これはフランクの交響曲にも匹敵する隠れた名曲です。軽く循環形式にもなっていることはさておいて、何と言っても格調高い美しいメロディーが横溢しており、聴くものを惹き付ける魅力にあふれています。トルトゥリエの的確な指揮のもと、都響の素晴らしいアンサンブルがこの名曲を奏でていきます。第2楽章の抒情にあふれた音楽は素晴らしい魅力を感じさせる演奏。,
そして、第3楽章で第1楽章の序奏のモティーフが金管でコラールとして回帰する輝かしい部分以降の高らかな高潮には思わず、身が引き締まる思いに駆られます。圧巻のコーダに感銘を覚えました。

いやはや、こんなに充実した隠れ名曲を聴く機会はそうはありません。こういう企画をたて、そして、それを素晴らしく演奏した都響に惜しみない喝采を送りたいと思います。


今日のプログラムは以下のとおりです。

  指揮:ヤン・パスカル・トルトゥリエ
  ピアノ:阪田知樹
  管弦楽:東京都交響楽団 コンサートマスター:四方恭子(隣の席は山本友重)

  フォーレ:歌劇『ペネロープ』前奏曲
  フローラン・シュミット:管弦楽とピアノのための協奏交響曲 Op.82

    《休憩》

  ショーソン:交響曲 変ロ長調 Op.20


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のフォーレの歌劇『ペネロープ』前奏曲を予習したCDは以下です。

  ロビン・ティチアーティ指揮ベルリン・ドイツ交響楽団 2017年1月5-7,9日 ベルリン、イエス・キリスト教会 セッション録音

若きイタリア系イギリス人の俊英指揮者ロビン・ティチアーティがベルリン・ドイツ交響楽団の音楽監督に就任して早々の録音アルバムに含まれている曲です。瑞々しい演奏に思えます。


2曲目のフローラン・シュミットの管弦楽とピアノのための協奏交響曲を予習したCDは以下です。

  フセイン・サーメット(p)、デヴィッド・ロバートソン指揮 モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団 1993年6月 セッション録音

録音が少ない曲だけに貴重なアルバムです。フセイン・サーメットのピアノの切れは素晴らしいです。


3曲目のショーソンの交響曲 変ロ長調を予習したCDは以下です。

  ジャン・フルネ指揮オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団 1988年 セッション録音

ジャン・フルネの明快な指揮で美しい演奏です。この曲もそんなに録音が多くないので、名匠フルネの録音で聴けるのは僥倖です。



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フルシャがブラームスを振るとN響の響きが変わって繊細さと精妙さの極致、アンデルジェフスキのピアノが冴え渡るシマノフスキ NHK交響楽団@サントリーホール 2023.2.15

ヤクブ・フルシャを久々に(5年ぶり)聴きましたが、その精緻さの極まる指揮はますます磨きがかかり、オーケストラへの要求水準の高さも並々ならぬものでした。驚いたことにN響はフルシャの高い要求をほぼ満たしていました。コンサートマスターの白井圭の力量もなかなかのものとみました。いい意味でN響が別のオーケストラに思えるほどの変身を遂げていました。

冒頭はドヴォルザークの序曲「フス教徒」。最初のコラールは管楽器だけで奏でられますが、フルシャの節回しとテンポ感がたまらなく素晴らしいです。多分、フルシャは心の中で歌っており、それをオーケストラで演奏させていたのでしょう。タクトの振り方も絶妙でした。そして、このコラールは弦楽器に移りますが、爽やかな味わいの響きが最高です。その後、いくつもコラールが演奏されて、音楽も高潮していきますが、フルシャの指揮の見事さに心を奪われます。N響がまるでチェコ・フィルになったかのごとくの演奏に舌を巻きます。チェコ国民の熱狂の嵐の中にいつしかsaraiも巻き込まれ、陶酔の中に曲は終わります。1曲目から大変な演奏です。これだけでもよほどリハーサルを重ねたんでしょう。

次はシマノフスキの交響曲 第4番 Op.60「協奏交響曲」。交響曲とは名ばかりで、まさにピアノ協奏曲で協奏交響曲のテーストもはいっています。まるで昨日、都響で聴いたフローラン・シュミットの管弦楽とピアノのための協奏交響曲みたいですね。ピアノの超絶技巧といった点も同じです。第3楽章ではバルトーク風の民俗舞曲も登場します。無論、シマノフスキの作風はバルトークとは異なりますが、時代背景などで底面でつながるものはあるようです。久々に聴くピョートル・アンデルシェフスキの軽やかでノリのよいピアノのタッチは健在で難曲のシマノフスキを見事に弾きこなします。彼が先導する形で先鋭的な曲を弾き進めていきます。シマノフスキらしい幻想的な雰囲気のパートもあり、複雑さはあるもののストレートな音楽表現で聴きやすく、耳ざわりもよい作品です。ピアノとオーケストラが交錯して高潮する圧倒的な響きでは、昨日のフローラン・シュミットの作品を思い出してしまいます。全体的にアンデルシェフスキ独特の切れのよいピアノの響きに終始、魅了されました。
アンデルジェフスキのアンコール曲は明らかにシマノフスキ。民俗的な要素もあったので、マズルカ風に感じました。実際、シマノフスキのマズルカでした。ショパンのマズルカと違って、とてもモダンな仕立ての音楽でした。


後半はブラームスの交響曲 第4番。フルシャのブラームスはドイツ流のがっちりした堅固な演奏とは異なり、高弦でメロディーラインを爽やかに奏でる演奏です。しかも精緻な指揮で絶妙な味わいの音楽を醸し出します。パステル画で精妙に描き出すような雰囲気で、油絵のようなこってりしたものではありません。よく見ると、先ほどまでと違って、スコアを置かずに暗譜で指揮しています。フルシャはブラームスに思い入れが深いようです。そう言えば、都響の首席客員指揮者の最終公演でもブラームスの交響曲第1番の素晴らしい演奏を聴かせてくれました。ともかく、フルシャ独自の解釈のブラームスは説得力もあり、素晴らしい演奏です。ぐっと引き入れられるようにsaraiも集中します。あの有名な第1主題がともかく美しいです。何度も出てくるたびに聴き惚れます。第2楽章にはいり、ますます、桃源郷のようなロマンの世界が広がります。底堅さはありませんが、高弦や木管が絶妙なメロディーを聴かせてくれて、枯れたというよりも爽やかなブラームスです。新たなブラームス像が出現したような感じです。ぽわーんとして聴き惚れていたら、第3楽章はいきなり、力強い音楽で切り込んできます。ぐんぐん推進力の強い音楽で雰囲気は一変。そして、第4楽章は力強い主題で開始。バッハのカンタータ150番の終結合唱の低音主題によるパッサカリアです。力強さと繊細さが織り交ぜられたような絶妙な演奏で最高の味わいです。フルシャの素晴らしいタクトに見事に反応したN響の渾身の演奏でまことに結構なブラームスを聴かせてくれました。N響がこんなに精妙なブラームスを演奏するとは驚きです。


今日のプログラムは以下のとおりでした。


  指揮 : ヤクブ・フルシャ
  ピアノ : ピョートル・アンデルシェフスキ
  管弦楽:NHK交響楽団 コンサートマスター:白井圭

  ドヴォルザーク:序曲「フス教徒」Op.67
  シマノフスキ:交響曲 第4番 Op.60「協奏交響曲」
   《アンコール》シマノフスキ:20のマズルカ Op.50 第3曲

   《休憩》

  ブラームス:交響曲 第4番 ホ短調 Op.98


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のドヴォルザークの序曲「フス教徒」を予習したCDは以下です。

  イシュトヴァン・ケルテス指揮ロンドン交響楽団 1966年10月11,12日 ロンドン、キングズウェイホール セッション録音

ドヴォルザークのスペシャリストだったケルテスのドヴォルザーク交響曲全集に含まれる録音ですが、もうひとつ精緻さに欠けます。


2曲目のシマノフスキの交響曲 第4番を予習したCDは以下です。

  レイフ・オヴェ・アンスネス、サイモン・ラトル指揮バーミンガム市交響楽団 1996年10月 セッション録音

シマノフスキの音楽の普及に努めたラトルのシマノフスキ全集の中の1曲です。アンスネスのピアノが素晴らしいです。


3曲目のブラームスの交響曲 第4番を予習したCDは以下です。

  ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィル 1949年6月10日 ドイツ、ヴィースバーデン ライヴ録音(グランド・スラム(平林直哉復刻))

この曲はフルトヴェングラーに限ります。1948年のベルリン・フィルとの演奏は最高の名演ですが、今回は別の演奏を聴きました。これも凄いロマンティックな演奏。



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金川真弓の曇り後晴れの会心のブラームス、そして、ヴァイグレの見事なシューマン  ヴァイグレ&読売日本交響楽団@サントリーホール 2023.2.17

金川真弓が遂にブラームスのヴァイオリン協奏曲に挑むというので、これは聴き逃がせません。saraiにとって、この曲はヴァイオリニストの力量を計る試金石だと思っています。失礼ながら、幾多のヴァイオリニストをこの曲で評価してきて、合格した人と不合格の人を選り分けています。最高点で合格したのは、庄司紗矢香やヒラリー・ハーンなどです。さて、今日の金川真弓は第1楽章が合格ラインすれすれ、第2楽章以降は最高レベルで合格です。第1楽章はどうやら極度の緊張感で力が入り過ぎて、高域の響きはよかったのですが、低域の響きが全然だめ。音楽表現も固いもので音楽への没入感に乏しく、saraiははらはらしながら聴いていました。事実、彼女自身も第1楽章の後、体をリラックスするしぐさをしていました。頑張れと声援を飛ばしたくなるような状況でした。第2楽章は冒頭、オーケストラの前奏でオーボエの美しい独奏が続きます。この読響の美しい演奏に触発されたのか、金川真弓は柔和な表情で美しいヴァイオリンを奏で始めます。第1楽章とはまったく次元の異なる素晴らしい演奏です。美しい高域の響きだけでなく、低域の響きも実にリッチです。そして、何よりもブラームスの描いたロマンの世界が素晴らしく表現されています。saraiはすっかり安心して、ブラームスの美しい音楽に没入し、うっとりと魅了されます。実に素晴らしい第2楽章でした。そして、一気に第3楽章に突入していきます。金川真弓の勢いあるヴァイオリンはもうゾーンにはいったかのごとく、会心の出来栄えです。彼女を先頭にして、ヴァイグレ指揮読響も続いていきます。圧巻のフィナーレでした。いやー、よかった、よかった。金川真弓の応援団のような気分のsaraiはすっかり上機嫌です。

順番は逆になりますが、冒頭で演奏されたベートーヴェンの「コリオラン」 序曲は最初のトゥッティの素晴らしい響きに始まり、ヴァイグレの素晴らしい指揮で古典派のきっちりした音楽を存分に味わわせてくれました。何とも 構築力に満ちて、アンサンブルも最高のベートーヴェンでした。

休憩後、シューマンの交響曲第2番。詳しくは述べませんが、精神的に苦しかったシューマンが渾身の力で創造した傑作をヴァイグレの見事な指揮、読響の素晴らしいアンサンブルで描き尽くしたという感でした。とりわけ、第3楽章の抒情に満ちた演奏は今日の白眉とも言えるものでした。演奏機会の少ないシューマンの名作を素晴らしい演奏で聴けて、シューマニアーナのsaraiは大満足でした。
それにしても、読響はいつ聴いても最高の演奏をしてくれます。凄いオーケストラだと感服するのみです。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:セバスティアン・ヴァイグレ
  ヴァイオリン:金川真弓
  管弦楽:読売日本交響楽団  コンサートマスター:長原幸太(ダブルコンマス、林悠介)

  ベートーヴェン:「コリオラン」 序曲 Op.62
  ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.77

   《休憩》

  シューマン:交響曲第2番 ハ長調 Op.61

最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のベートーヴェンの「コリオラン」 序曲は以下のCDを聴きました。

 ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団 1966年10月29日 クリーヴランド、セヴェランス・ホール セッション録音

実に見事な演奏です。


2曲目のブラームスのヴァイオリン協奏曲は以下のCDを聴きました。

 リサ・バティアシュヴィリ、クリスティアン・ティーレマン指揮シュターツカペレ・ドレスデン 2012年6月 ドレスデン セッション録音
 
バティアシュヴィリの最高のヴァイオリン、そして、ティーレマン指揮シュターツカペレ・ドレスデンの見事なサポート。しかし、2013年4月にゼンパーオーパーで映像収録された演奏はまったく同じメンバーながら、バティアシュヴィリがさらに素晴らしい入神の演奏を聴かせてくれました。それ以来、saraiはバティアシヴィリにはまっています。


3曲目のシューマンの交響曲第2番は以下のCDを聴きました。

 レナード・バーンスタイン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1985年11月 ウィーン、ムジークフェラインザール ライヴ録音

バーンスタインがウィーン・フィルの豊かな響きで描き出したシューマンの濃厚な世界です。



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       金川真弓,  

ガヴリリュクのパーフェクトな演奏でグリーグのピアノ協奏曲 原田慶太楼&東京交響楽団@サントリーホール 2023.2.19

今日は現代日本の作曲家の作品の間に有名曲のグリーグのピアノ協奏曲を挟み込むという創意工夫のある(苦心の)プログラム。聴衆を集めるのが難しいと思いましたが、意外に集客できていました。よかったですね。

最初の曲は東京交響楽団委嘱作品で世界初演の小田実結子のKaleidoscope of Tokyo。いきなり、感想を書くのも難しいのですが、印象はガーシュウィンの「パリのアメリカ人」の東京版を連想してしまいました。聴くのに困難さを伴う現代作品ではありませんが、何故、この時代にこういう作品が・・・という疑問は解けません。無調の作品が時流でないのは分かりますが、現代の音楽はどこを目指すのでしょうか。saraiにはアデスのように無調と調性音楽を融合させたものやジョン・アダムズのようなミニマル音楽まではそれなりに理解できますが、調性べったりというのも今更に思えます。やはり、リゲティあたりの時代がよかったような気がします。折角の新作にケチをつけるのも何ですが、現代の時流が理解できない年寄りの愚痴と思って、聞き逃してください。演奏は見事でした。

次のグリーグのピアノ協奏曲は超有名作品。こういうのはかえって、演奏が難しいものですが、アレクサンダー・ガヴリリュクは素晴らしいテクニックと美しい響きで見事に正面突破。細部まで磨き上げられた演奏で魅了してくれました。第1楽章はあの有名な主題を手垢を感じさせない瑞々しい演奏で納得させてくれます。聴き惚れているうちに長大な楽章も終了。第2楽章はオーケストラの長い序奏の後、ガヴリリュクの美しい弱音で抒情に満ちた音楽が歌われます。うーん、とてもいいね。気持ちよく聴き入ります。ガヴリリュクはいい意味でプロの職人芸を聴かせてくれます。それも超一流の技です。そして、勢いよく第3楽章に突入していきます。まるでショパンの音楽にチャイコフスキーの音楽をないまぜにしたような耳に心地よい音楽です。グリーグの第3楽章はこんな感じの音楽だったでしょうか。抒情と高揚を繰り返しながら、圧倒的なフィナーレ。うーん、納得の演奏です。原田慶太楼のサポートも素晴らしく、東響のアンサンブルが最高に機能しました。超有名曲を違和感なく聴けるのはこんなにも楽しいんですね。
アンコールはてっきり、グリーグのピアノ曲と思ったら、何とショパンの夜想曲。これが途轍もなく美しい演奏。後で調べたら、この曲を火曜日のオペラシティでのリサイタルで弾くんですね。予告編といったところでしょうか。saraiもそのリサイタルに駆けつけたいところですが、生憎、その日は久しぶりの来日で楽しみにしているアヴデーエワのリサイタルがあります。残念です。

休憩後はまた、日本人作曲家の現代作品です。内容的にはさきほどと同様の感覚が蘇りますが、ともかく、原田慶太楼の指揮と東響の演奏が素晴らしい。特に第3楽章の弦楽を中心にした美しい演奏は予習した曲と同じと思えないほどの素晴らしさ。第4楽章もまた、美しい演奏が弦楽を中心に繰り広げられます。素晴らしい演奏に聴き惚れるのみでした。


今日のプログラムは以下のとおりでした。

  指揮:原田慶太楼
  ピアノ:アレクサンダー・ガヴリリュク
  管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:水谷晃

  小田実結子:Kaleidoscope of Tokyo(東京交響楽団委嘱作品/世界初演)
  グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調 Op.16
  《アンコール》ショパン:夜想曲第8番 Op.27-2

  《休憩》

  菅野祐悟:交響曲 第2番“Alles ist Architektur"-すべては建築である


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目の小田実結子のKaleidoscope of Tokyoは今日が世界初演なのでもちろん予習は不可能。


2曲目のグリーグのピアノ協奏曲を予習したCDは以下です。

  田部京子、小林研一郎指揮東京交響楽団 2018年6月10日 ミューザ川崎シンフォニーホール ライヴ録音
 
田部京子の繊細かつダイナミックなピアノが素晴らしいです。ライヴとは思えない完成度です。第2楽章の抒情に満ちたピアノの響きはきらきらと光る水滴が零れ落ちる風情に思えます。


3曲目の菅野祐悟の交響曲 第2番を予習はYOUTUBEで聴きました。

  藤岡幸夫指揮関西フィル 2019年4月29日 大阪、ザ・シンフォニーホール ライヴ録音

きっちりした演奏ではありますが、ちょっと一本調子の演奏に思えました。今日の東響の演奏では格段上の音楽に聴こえました。



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凝縮したピアノの音のきらめき! ユリアンナ・アヴデーエワ ピアノ・リサイタル@王子ホール 2023.2.21

ユリアンナ・アヴデーエワのソロ・ピアノ・リサイタルはおよそ4年ぶりに聴きます。コロナ禍は長かった・・・。待望の演奏でした。今回を皮切りに横浜みなとみらいホール、トリフォニーホールでも聴きます。やはり、彼女のピアノは凄かった!! ピアノの演奏の素晴らしさを満喫しました。ピアノは一瞬、一瞬の音の響きがたまらなく、心に響きます。それを実感させてくれるアヴデーエワのピアノでした。一瞬に込められた凝縮した音の塊が何とも素晴らしい音楽に昇華します。アヴデーエワの演奏は次の一瞬にどういう音の塊が投げかけられるかわからないので、気が抜けない演奏です。新しい驚きに次々と感動させられます。音楽全体の構造はある意味、どうでもよくなってきます。瞬間の芸術に対峙するという感じで演奏を味わいました。

前半の武満 徹は楽譜を置いての何か、たどたどしい感じの演奏です。と思っていると、急に素晴らしいパッセージが響いてきます。油断ならない演奏です。全体には弾きこみ不足に思えますが、彼女の音楽的センスでまとめ上げた演奏です。

次はリストです。最初の2曲は晩年の作品で難解な曲想です。ここからアヴデーエワは暗譜の演奏に変わります。演奏は滑らかになりますが、つかみどころのない曲想は武満 徹と共通するものがあります。
最後の3曲目、「伝説」より 水の上を歩くパオラの聖フランチェスコ はリストの全盛期の作品。これは物凄い演奏です。ロ短調ソナタにも匹敵するような素晴らしさ。ピアニズムの極致をいくような圧巻の演奏に圧倒されました。

休憩後、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ 第29番「ハンマークラヴィーア」。これはもう何も語る必要のない素晴らしい演奏でした。何故にこんなに美しい音が出るのかな! 高音の強音の美しいきめきに魅了されます。それに鍵盤の端から端までの動きの鍛え上げられた様と出てくる音の響きの素晴らしさ。ピアノは手と指だけで弾くのではなく、体全体を使って、躍動感あふれる演奏をするのだと強烈に印象づけられました。ピアノを弾くために鍛え上げられたアヴデーエワの美しい体に驚嘆しました。

今週、あと2回、アヴデーエワのピアノを聴けると思うと、嬉しくなります。


今日のプログラムは以下です。

  武満 徹:雨の樹 素描
  武満 徹:リタニ ―マイケル・ヴァイナーの追憶に
  リスト:調性のないバガテル S216a
  リスト:凶星! S208
  リスト:「伝説」より 水の上を歩くパオラの聖フランチェスコ S175-2

   《休憩》

  ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第29番 変ロ長調 Op.106 「ハンマークラヴィーア」

   《アンコール》

    シュピルマン:マズルカ
    シュピルマン:組曲「ザ・ライフ・オブ・ザ・マシーンズ」より トッカティーナ


最後に今回の予習について、まとめておきます。

武満 徹の作品は、以下のCDで予習しました。

  小川典子 雨の樹~ピアノ作品集 1996年7月11,12日 スウェーデン、ダンデリド・ギムナジウム セッション録音
  
小川典子の「BIS」デビュー盤。武満 徹とも親交を結んだ小川典子の会心の演奏。


リストの調性のないバガテルは以下のCDで予習しました。

  スティーヴン・ハフ 2018年12月10-14日、ロンドン、ケンティッシュ・タウン、殉教者聖サイラス教会 セッション録音

何とも見事な演奏です。


リストの凶星! は以下のCDで予習しました。

  マウリツィオ・ポリーニ 1989年6月 ミュンヘン セッション録音

文句なしの素晴らしい演奏。


リストの「伝説」より 水の上を歩くパオラの聖フランチェスコは以下のCDで予習しました。

  ヴィルヘルム・ケンプ 1974年9月2-4日 ハノーファー、ベートーヴェンザール セッション録音

78歳のケンプがリストのベストアルバムを録音したものです。実はケンプはリストを得意にしており、中でもこの曲や「巡礼の年」のような宗教色の濃い曲をよくコンサートでも取り上げていました。ハイレゾで聴くこの演奏は奥深いものがあります。


ベートーヴェンのピアノ・ソナタ 第29番「ハンマークラヴィーア」は以下のCDで予習しました。

  イリーナ・メジューエワ  ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集 2020年6月~7月、新川文化ホール(富山県魚津市) セッション録音

新コロナウィリスで中止になったベートーヴェンの全曲演奏会の代わりに録音した2度目のベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集です(1度目の全集は2007年~2009年に録音。10年ほどの時間を置いての再録音です。)。saraiもチケットを購入し、全曲演奏会を聴く予定でしたが、1~4回が中止になり、5~8回の半分だけ聴きました。中でもこの「ハンマークラヴィーア」は圧巻の演奏でした。録音で聴く演奏は実演ほどの迫力には欠けますが、素晴らしい演奏です。



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       アヴデーエワ,  

アンナ・ラキティナの清新なデビュー、そして、ルノー・カプソンの美しい響きのベルクのヴァイオリン協奏曲 読売日本交響楽団@サントリーホール 2023.2.22

ウクライナかロシアかの出身の若手女性指揮者アンナ・ラキティナが読響の指揮台に立ち、可憐な姿で清新な指揮を見せてくれました。右手に持つタクトで拍をきっちりと刻み、大袈裟過ぎない素直な指揮でいかにも新人指揮者の風情です。これからどんな未来が待っているのでしょう。saraiがその成熟を見ることはきっとないでしょう。

冒頭の曲はエレナ・ランガーの歌劇「フィガロの離婚」組曲。モーツァルトのオペラ「フィガロの結婚」のその後を描いた歌劇「フィガロの離婚」から6曲を抜き出した組曲です。いかにもゲテモノのようなオペラですが、音楽は意外にもちゃんと聴けるものです。もっとも現代性のある作品とは思えませんが、まあ、こんなものでしょう。読響の美しいアンサンブルとコンミスの日下紗矢子のソロが聴けたので、よしとしましょう。

次はベルクのヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」。すっかり、コンサートでお馴染みの曲になりました。しかし、どう聴けばいいのか、意外に難しい曲でもあります。いかにポピュラーになったと言っても12音技法を駆使した作品ですからね。プログラムの解説には、アルマ・マーラーの娘マノンの若過ぎる死を追悼して、マノンを天使に見立てて、マノンの思い出とマノンの苦悩と死、そして、昇天を描いたとあります。それでもいいですが、saraiはもっと普遍的に現代の孤独な魂の彷徨と非業な運命にある孤独な魂の救済のレクイエムであると思いたいと感じます。マノンの魂、ベルクの魂、そして、そのときに書いていたオペラの非業のヒロイン、ルルの魂も含めて、孤独な魂が救われて、天国に昇天するドラマとしてのレクイエムです。そういう観点からは今日のルノー・カプソンの美しい響きのヴァイオリンは少々、生ぬるいとも思えます。もっと厳しく突っ込んだ表現が必要だったでしょう。アンナ・ラキティナの指揮も迫真性を欠いていたとも思えます。ベルクの音楽は美し過ぎず、表現主義的であったほうがよいのでは。
ルノー・カプソンのヴァイオリンはむしろ、アンコール曲の精霊の踊りの美しい表現で活かされていました。天使つながりの選曲だったのかな。お洒落なセンスですね。

休憩後、チャイコフスキーの交響曲第1番「冬の日の幻想」が演奏されます。指揮者のお国ものですね。民俗的なメロディーを表出した演奏で、第1楽章、第2楽章、第4楽章で美しさが光ります。saraiはこれでいいと思いますが、ロシアの土臭さはありません。インターナショナルな表現です。チャイコフスキーも今やこういう演奏が主流かもしれません。予習で聴いたプレトニョフもこんな感じ。かつてのスヴェトラーノフのような演奏はもうなかなか見つかりません。アンナ・ラキティナのいかにも優等生的な指揮はちょっと気になりました。読響のアンサンブルは今日も最高でした。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:アンナ・ラキティナ
  ヴァイオリン:ルノー・カプソン
  管弦楽:読売日本交響楽団  コンサートマスター:日下紗矢子(ダブルコンマス、林悠介)

  エレナ・ランガー:歌劇「フィガロの離婚」組曲(日本初演)
  ベルク:ヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」
   《アンコール》グルック:オペラ『オルフェオとエウリディーチェ』より「精霊の踊り」

   《休憩》

  チャイコフスキー:交響曲第1番 ト短調 Op.13 「冬の日の幻想」


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のエレナ・ランガーの歌劇「フィガロの離婚」組曲は音源が見つからず、予習しませんでした。


2曲目のベルクのヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」は以下のCDを聴きました。

 チョン・キョンファ、ゲオルグ・ショルティ指揮シカゴ交響楽団 1983年 セッション録音
 
チョン・キョンファの壮絶とも思えるヴァイオリンに心が動かされます。この頃のチョン・キョンファは本当に凄かったんですね。


3曲目のチャイコフスキーの交響曲第1番「冬の日の幻想」は以下のCDを聴きました。

 ミハイル・プレトニョフ指揮ロシア・ナショナル管弦楽団 2011年4月 モスクワ、DZZ第5スタジオ セッション録音

プレトニョフのチャイコフスキー、初聴きです。そんなにロシア臭さのない美しい演奏。賛否両論あるでしょう。この曲に関してはsaraiはそんなに違和感はありません。



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研ぎ澄まされた音の響きが語りかけるものは愛と平和の希求か ユリアンナ・アヴデーエワ ピアノ・リサイタル@横浜みなとみらいホール 2023.2.24

ユリアンナ・アヴデーエワのソロ・ピアノ・リサイタルは王子ホールに続いて2回目。そのピアノの響きの純粋無垢なきらめきは変わらず、素晴らしいですが、色々、考えさせられる2時間でもありました。
言うまでもなく、アヴデーエワはロシア人。音楽家といえども、ロシアのウクライナ侵略には心を痛めている筈です。人間としても、音楽家としてもその姿勢を問われる状況になっています。今日のプログラムも深読みをしてしまいます。ショパンは祖国ポーランドを出て、生きては2度と祖国の土を踏めなかった悲しい運命を辿った人。シュピルマンとヴァインベルクはユダヤ系のポーランド人で苦難の生涯を送った人。ラフマニノフは祖国ロシアを出て、生涯戻ることなく、どこかやるせなさを感じさせる人。アヴデーエワは何を思って、このプログラムを考えたのでしょうか。その答えは最後のアンコールにありました。長いメッセージ。よくは聞き取れませんでしたが、ウクライナを代表する作曲家シルヴェストロフは今は避難してドイツに住んでいます。アヴデーエワは彼と会ったそうで、アンコール曲もシルヴェストロフのバガテル。彼女の弾く音楽は実に静かな音で奏でられます。そこには彼女の心の中のため息とも哀しみともとれるものがあります。戦争を悲しみ、どこにも持っていけない心の痛みが切々と奏でられます。短いバガテルは尻切れトンボのような形で止まります。実はシルヴェストロフのバガテルはアタッカで終わり、次のバガテルにつながるように作られています。シルヴェストロフによると、小さなバガテルをすべてアタッカで繋いで演奏すると70分ほどの大曲になるのだそうです。アヴデーエワはアタッカで終えた後、長い沈黙の時間を続けます。その音楽は続いていくのか、終わるのか・・・あるいは戦争で亡くなった人々への哀悼を捧げる時間なのか、彼女自身の心の中の葛藤が続き、やがて、意を決して立ち上がります。沈黙を守っていた聴衆も果たして拍手をしていいものなのか・・・答えのない問題はまるでウクライナ侵略戦争と重なります。重いコンサートでした。
明後日はトリフォニーホールで前半は同じプログラム。後半は何とプロコフィエフの戦争ソナタです。また、重いコンサートになりそうです。しかし、アヴデーエワも我々も現状を直視して、ウクライナ戦争の悲劇に心を向け続けないといけませんね。

今日のコンサートの内容にも軽く触れておきましょう。すべてはアヴデーエワの凝縮した音の響きの一瞬、一瞬のきらめきにあることは前回のリサイタルから変わりません。

1曲目のショパンの幻想ポロネーズはそういうアヴデーエワの美質が結実した素晴らしい演奏で、何とも魅力的なパッセージの連なりになっています。はっとするような走句の美しさに魅了されているうちに長大なポロネーズが終わってしまい、あまりに急に終わったようなような印象に絶句してしまいます。アヴデーエワのショパンは彼女がショパンコンクールで優勝したとき以来、変わらずに輝くような魅力にあふれています。

2曲目のシュピルマンのピアノ組曲「ザ・ライフ・オブ・ザ・マシーンズ」は前回のリサイタルのアンコールで聴いたときが初聴きでしたが、そのときは超絶的な演奏に驚愕しました。ですから、今日はそういう驚きはないものの、やはり、凄い超絶演奏です。テクニックだけでなく、磨き上げられた音にも感銘を受けます。無論、アヴデーエワは超絶演奏をめざすような音楽家ではありませんが、音楽によってはそういう底知れぬ実力も垣間見せるということです。

3曲目はヴァインベルクのピアノ・ソナタ第4番。ショスタコーヴィチの盟友でもあったヴァインベルクはこの曲では新古典主義的な一面を見せています。ショスタコーヴィチと同様です。アヴデーエワは美しい演奏で歌い上げていき、最終局面で圧巻の高潮した演奏を聴かせてくれました。なお、アヴデーエワは、ヴァインベルクの熱心な啓蒙活動をしているクレーメルと室内楽で共演し、感化された模様ですね。

休憩後、ラフマニノフのプレリュードOp.23から、7‐10番を逆順に演奏。パーフェクトな演奏ですが、あまりに綺麗過ぎて、もっと違う形で感銘のある演奏を彼女ならば弾けるのではないかとも思います。いつの日か、もっとスケール感のある演奏を聴かせてくれるでしょう。

続くラフマニノフのピアノ・ソナタ第2番(アヴデーエワ版)は満を持したような素晴らしい演奏。圧倒的な演奏です。第3楽章は凄い迫力で締めくくります。もっとも予習したホロヴィッツが凄過ぎて、それとは比較にはなりません。


アンコールは王子ホールと同じシュピルマンのマズルカ。そして、最後のシルヴェストロフは前述したとおりです。


いよいよ、明後日のトリフォニーホールが締めくくりです。プロコフィエフの戦争ソナタが楽しみですね。


今日のプログラムは以下です。

  ショパン:ポロネーズ第7番 変イ長調 Op.61「幻想ポロネーズ」
  シュピルマン:ピアノ組曲「ザ・ライフ・オブ・ザ・マシーンズ」
  ヴァインベルク:ピアノ・ソナタ第4番 ロ短調 Op.56

   《休憩》

  ラフマニノフ:10のプレリュード Op.23より(10,9,8,7)
  ラフマニノフ:ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 op.36(アヴデーエワ版)

   《アンコール》

    シュピルマン:マズルカ
    シルヴェストロフ:バガテル Op.1-2


最後に今回の予習について、まとめておきます。

ショパンのポロネーズ第7番「幻想ポロネーズ」は、以下のCDで予習しました。

  イリーナ・メジューエワ ショパン・リサイタル 2010 2010年7月16日 新川文化ホール・小ホール(富山県魚津市) ライヴ録音
  
メジューエワの力感あふれる演奏。


シュピルマンのピアノ組曲「ザ・ライフ・オブ・ザ・マシーンズ」は音源が見つからず、予習していません。


ヴァインベルクのピアノ・ソナタ第4番で予習しました。

  アリソン・ブリュースター・フランゼッティ ヴァインベルグ:ピアノ作品全集 2009年11月23-25日 シェリー・エンロウ・リサイタルホール キーン大学 ニュージャージー、米国 セッション録音

何とも素晴らしい演奏。


ラフマニノフの10のプレリュード Op.23は以下のCDで予習しました。

  ニコライ・ルガンスキー 2017年9月 ル・フラジェ、ブリュッセル セッション録音

ルガンスキーらしい素晴らしい音で描き上げる見事な演奏。


ラフマニノフのピアノ・ソナタ第2番は以下のCDで予習しました。

  ウラディミール・ホロヴィッツ 1980年4月13&5月2,4,11日、ボストン、シンフォニー・ホールおよびニューヨーク・エイ
ヴェリー・フィッシャー・ホール ライヴ録音

ホロヴィッツ版の演奏です。聴くものを黙らせる演奏ですから、あえて、感想は戒めます。まあ、凄い!



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       アヴデーエワ,  

素晴らしいシューマン、そして、鳥肌の立つようなバルトーク 北村朋幹 ピアノ・リサイタル@東京文化会館小ホール 2023.2.25

今、注目の若手ピアニスト、北村朋幹(きたむら ともき)のピアノ・リサイタルです。5日連続コンサート中の2日目。毎日、心に残る演奏が続きます。北村朋幹のリリシズムあふれる個性的なピアノにはいつも敬服します。ある意味、日本人離れしたピアニストです。いつも尖がったプログラムで、ジョン・ケージだけのプログラムだと、saraiも尻込みしてしまいますが、今日はシューマン、バルトークにホリガー、ノーノを組み合わせた意欲的、かつ魅力的なプログラムです。特にシューマンの独奏曲を聴きたいとかねがね思っていましたが、普通の有名曲ではなく、森の情景と暁の歌です。いずれも実演で聴くのは初めてです。森の情景の予言の鳥だけはアンコール曲として、何度も聴きましたけどね。まあ、いずれの曲も北村朋幹らしい瑞々しい演奏で堪能しましたが、とりわけ、バルトークの「戸外にて」は鳥肌の立つような凄い演奏でした。

まずはシューマンの森の情景。シューマン好きにはたまらない演奏です。静かで懐かしい曲の演奏が心に沁みます。有名な第7曲の「予言の鳥」はまさにミステリアスな雰囲気で最高です。途中、普通の雰囲気の音楽に切り換わって、また、冒頭のミステリアスな音楽に変わる対比が素晴らしい。

次はホリガーのエリス-3つの夜曲-。先鋭的な響きですが、何故か心地よく感じられます。オーボエ奏者として知っているホリガーですが、実に趣味のよい曲を書いています。途中、ピアノの中に手を突っ込んで音色を変えていましたが、プリペアド・ピアノのようなことをしていたのかな。

前半の最後はバルトークの「戸外にて」。第1曲から、この曲の打楽器的な性格が表れていて、北村朋幹がその風貌から想像のできないようなエネルギッシュな演奏を繰り広げます。こちらも気持ちが高揚していきます。この作品の中心は最長の第4曲の「夜の音楽」ですが、北村朋幹は左手のアルペッジョで夜の雰囲気を醸し出しながら、右手で夜に出没する様々な自然の生き物を描き出していきます。その見事なピアノ表現に惹き付けられていきます。そして、第5曲は一転して、激しい狩りの音楽に変わります。バルトークの夜と並んで主要なモティーフである追跡Chaseの音楽です。ピアノが打楽器的に演奏されて、興奮の極致に至ります。北村朋幹が最高のバルトークを聴かせてくれました。次は是非、ピアノ・ソナタを聴かせてほしいものです。

休憩後、ノーノの . . .苦悩に満ちながらも晴朗な波. . .。あらかじめ、マウリツィオ・ポリーニのピアノの録音が電子的に編集されたテープが用意されて、その再生音と北村朋幹がコラボするように音楽を作り上げていきます。いやはや、ライヴでこんな演奏が聴けるとは凄い。素晴らしい現代音楽の演奏でした。北村朋幹ならではの会心の演奏です。

最後はまた、シューマンに戻ります。シューマンの晩年の作品、暁の歌です。もはや、ピアノの年のシューマンではありません。第1曲はまさしくコラールで静謐な宗教色に染まっています。まるでシューマン自身の心や体を癒すような音楽です。北村朋幹はリリシズムにあふれた優しく繊細な音楽を奏でていきます。色々な性格の曲を経て、最後の第5曲はまた、最初のコラールに戻って、シューマンの人生を閉じるような風情で静かに曲を閉じます。何と痛々しいシューマンなんでしょう。

アンコールは再び、シューマンの2曲がリリシズムに満ちて演奏されます。思っていた通り、北村朋幹にはシューマンがとっても似合います。
素晴らしいピアノ・リサイタルでした。


今日のプログラムは以下です。

  北村朋幹 ピアノ・リサイタル

  ピアノ:北村朋幹
 
  シューマン:森の情景 Op.82
  ホリガー:エリス-3つの夜曲-
  バルトーク:戸外にて Sz.81 BB89

  《休憩》

  ノーノ: . . .苦悩に満ちながらも晴朗な波. . .[エレクトロニクス:有馬純寿]
  シューマン:暁の歌 Op.133

  《アンコール》
   シューマン:「子供のためのアルバム Op.68」より 第15曲 春の歌
   シューマン:「森の情景 Op.82」より Ⅸ. 別れ


最後に予習について、まとめておきます。

シューマンの森の情景を予習したCDは以下です。

 ヴィルヘルム・ケンプ 1973年2月、ベートーヴェンザール、ハノーバー、ドイツ セッション録音

シューマンを愛奏したケンプ、とてもいいです。


ホリガーのエリス-3つの夜曲-を予習したCDは以下です。

 ヘルベルト・シュフ 2008年8月 セッション録音

ホリガーの作曲した曲を聴くのは初めてですが、なかなか素晴らしい曲で演奏も素晴らしい。


バルトークの戸外にてを予習したCDは以下です。

 ゾルタン・コチシュ 1996年6月、ハンブルク セッション録音

バルトークのピアノ独奏曲全集からの1曲です。見事な演奏です。


ノーノの . . .苦悩に満ちながらも晴朗な波. . .を予習したCDは以下です。

 マウリツィオ・ポリーニ 1977年9月 ミュンヘン セッション録音

ポリーニが初演した作品。確信に満ちた素晴らしい演奏です。


シューマンの暁の歌を予習したCDは以下です。

 アンドラーシュ・シフ 1997年1月、テルデック・スタジオ、ベルリン、ドイツ セッション録音

シフのシューマン、見事です。



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リヒテルのカーネギーホール(1960年)の超名演も超える圧巻のプロコフィエフ8番 ユリアンナ・アヴデーエワ ピアノ・リサイタル@すみだトリフォニーホール 2023.2.26

ユリアンナ・アヴデーエワのソロ・ピアノ・リサイタルはこれが最後の3回目。最高の演奏を聴かせてくれました。そのピアノの響きの純粋無垢なきらめきは甘く優しく、心に沁みてきます。前半は前回のみなとみらいホールのプログラムと同じですが、その曲想に耳慣れしたせいか、より精度の高い演奏に思えます。
そして、今回の3回にわたるリサイタルでさ最高の演奏だったのは後半のプロコフィエフのピアノ・ソナタ第8番《戦争ソナタ》です。これ以上の演奏はあり得ないと断言できるようなパーフェクトな演奏でした。硬質過ぎず、かと言って甘さを感じさせない最高の響きで、第1楽章のクールな音楽を深く抉るように弾き抜いて、第2楽章は特上の叙情を湛えた表現で、そして、第3楽章は猛烈なタッチで超絶的なパッセージを圧巻の演奏。細部まで磨き上げられた完璧な演奏は激しく燃え上がり、聴くものを圧倒します。1960年にアメリカ・デビューしたリヒテルがカーネギーホールの聴衆を熱狂の渦に巻き込んだ超名演にも優るとも劣らない凄まじい演奏でした。
前半のプログラムの演奏も素晴らしかったんです。ショパンの幻想ポロネーズは序奏の美しい演奏、主部の美しいメロディーなどの聴かせどころを見事に表現し、とても魅了してくれました。
シュピルマンのピアノ組曲「ザ・ライフ・オブ・ザ・マシーンズ」は第1楽章と第3楽章のメカニックな音楽を軽々と超絶技巧で弾き抜いた素晴らしい演奏で驚愕させられます。
ヴァインベルクのピアノ・ソナタ第4番は第1楽章の新古典的なソナタ形式の音楽が実に心地よく響きます。第3楽章の哀感あふれるアダージョには共感を覚えます。そして、第4楽章は再び新古典的なフレーズが展開され、終盤は高潮していき、最後は何とも静謐な雰囲気で哀しく終わります。底深い音楽を音楽性高く表現したアヴデーエワの素晴らしい演奏でした。

アンコールの1曲目は3回連続でシュピルマンのマズルカ。ショパンのマズルカと聴き間違えるような作品も3回も聴くとすっかり耳馴染みます。そして、最後のアンコール曲は前回の哀しいシルヴェストロフに変わって、ショパンのスケルツォです。最後にふさわしい物凄い演奏でした。

アヴデーエワがリヒテルにも並び立つような存在に上り詰めていくのが実感できた3回のリサイタルでした。次はどんなに大きなピアニストになっているんでしょう。恐ろしいくらいです。


今日のプログラムは以下です。

  ショパン:ポロネーズ第7番 変イ長調 Op.61「幻想ポロネーズ」
  シュピルマン:ピアノ組曲「ザ・ライフ・オブ・ザ・マシーンズ」
  ヴァインベルク:ピアノ・ソナタ第4番 ロ短調 Op.56

   《休憩》

  プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第8番 Op.84《戦争ソナタ》
  
   《アンコール》

    シュピルマン:マズルカ
    ショパン:スケルツォ 第3番 Op.39


最後に今回の予習について、まとめておきます。

ショパンのポロネーズ第7番「幻想ポロネーズ」は、以下のCDで予習しました。

  イリーナ・メジューエワ ショパン・リサイタル 2010 2010年7月16日 新川文化ホール・小ホール(富山県魚津市) ライヴ録音
  
メジューエワの力感あふれる演奏。


シュピルマンのピアノ組曲「ザ・ライフ・オブ・ザ・マシーンズ」は音源が見つからず、予習していません。


ヴァインベルクのピアノ・ソナタ第4番で予習しました。

  アリソン・ブリュースター・フランゼッティ ヴァインベルグ:ピアノ作品全集 2009年11月23-25日 シェリー・エンロウ・リサイタルホール キーン大学 ニュージャージー、米国 セッション録音

何とも素晴らしい演奏。


プロコフィエフのピアノ・ソナタ第8番《戦争ソナタ》は以下のCDで予習しました。

  スヴィヤトスラフ・リヒテル 1960年10月23日 ニューヨーク、カーネギー・ホール ライヴ録音 モノラル

物凄い演奏。冷静でいて、熱く燃え上がる名演中の名演。(1960年のリヒテル・アメリカ・デビュー・ツアー第2夜)



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       アヴデーエワ,  

ロータス・カルテットが与えてくれた芳醇な時 メンデルスゾーン弦楽四重奏曲全曲サイクル2023@鶴見サルビアホール 2023.2.27

今日と明日の2日間、ロータス・カルテットによるメンデルスゾーンの弦楽四重奏曲全6曲を聴きます。それも定員わずか100名の鶴見サルビアホールで聴くという贅沢な鑑賞です。ロータス・カルテットは日本人女性を中心とした団体ですが、全員、ヨーロッパ在住で海外演奏家みたいなものです。そのせいでコロナ禍のために長期間、彼女たちの演奏が聴けなくて、寂しい思いをしました。今日はその空白の時を埋め合わせるような会心の演奏を聴かせてくれました。

メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲は決してポピュラーな演目ではありませんが、ロータス・カルテットの手にかかると、有名な作品に劣らぬとても美しい音楽になります。今日演奏した3曲はいずれも芳醇な響きでうっとりするようなものでした。とりわけ、メンデルスゾーンの死の2か月前に作曲した第6番の燃え上がるような迫真力のある音楽にはただただ魅了されるのみでした。また、メンデルスゾーンが最初に作曲した(番号付きでは)第2番は彼の早熟な才能が発揮されたとても美しい作品で、ロータス・カルテットはその美を遺憾なく聴かせてくれました。それにしても第1ヴァイオリンの小林幸子の美しい響きは驚異的に思えます。一流のソロ演奏家も真っ青になるような演奏です。

明日の3曲もきっと美しさの限りを奏で上げてくれるでしょう。楽しみです。なお、今回から第2ヴァイオリンのメンバーが交代になっていましたが、十分にその役割を果たしていました。


今日のプログラムは以下のとおりでした。
  ロータス・カルテット メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲全曲サイクル2023

  ロータス・カルテット
    小林幸子vn  スヴァンチェ・タウシャーvn
    山碕智子va  斎藤千尋vc
    

  メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲 第1番 変ホ長調 Op.12

           弦楽四重奏曲 第6番 ヘ短調 Op.80

   《休憩》

  メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲 第2番 イ短調 Op.13
  
   《アンコール》
   メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲 第3番 ニ長調 Op.44-1 から 第2楽章 メヌエット
   
   
最後に予習について、まとめておきます。

メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲を予習したCDは以下です。

 エマーソン弦楽四重奏団 メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲全集 2004年4月 ニューヨーク セッション録音

流石にエマーソン弦楽四重奏団、美しくて、完璧な演奏です。



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       ロータス・カルテット,  

ロータス・カルテットとともに今日も幸せな時間 メンデルスゾーン弦楽四重奏曲全曲サイクル2023 2日目@鶴見サルビアホール 2023.2.28

昨日と今日の2日間、ロータス・カルテットによるメンデルスゾーンの弦楽四重奏曲全6曲を聴いています。ロータス・カルテットの4人揃ったコンサートを聴くのは実に5年ぶりです。コロナ禍の中、日本人女性3人だけで来日して、弦楽三重奏曲を聴かせてくれたことはありましたけどね。もう、彼女たちの芳醇な響きを聴くだけで満足という心境です。しかし、ロータス・カルテットは期待を超える素晴らしい演奏を聴かせてくれたんです。

メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲全曲演奏、今日は作品44の3曲です。その前に作曲した第1番からはおよそ8年後で、30歳に近くなったメンデルスゾーンは交響曲第3番~第5番も書き終えて、充実した高みにありました。3曲とも実に成熟した作品ですが、メンデルスゾーンらしいロマンあふれる瑞々しさが横溢した音楽です。

最初に演奏された弦楽四重奏曲第4番は、特に両端楽章(第1楽章、第4楽章)が素晴らしい響きでうっとりと魅了されました。
続く弦楽四重奏曲第5番は第1楽章が見事な演奏でした。いずれも第1ヴァイオリンの小林幸子が他の3人のメンバーのサポートを受けながら、天馬空を行くという風情の超美しい演奏を聴かせてくれました。

休憩後、弦楽四重奏曲第3番です。これは今回の全曲サイクルの最後に持ってきただけのことはあり、作品の質の高さはもちろんですが、ロータス・カルテットの演奏は第1楽章から全開モードで目くるめく演奏を聴かせてくれます。勢いのある第1主題を軸に実に活き活きした演奏が続きます。第1主題が回帰するたびに心が高揚します。少し翳りを帯びた第2主題は交響曲第3番「スコットランド」の雰囲気を想起させられて、素晴らしいアクセントとして、ロータス・カルテットがしみじみとした演奏を聴かせてくれます。
第2楽章はメヌエット。昨日、アンコール曲として演奏された曲です。優美な音楽が奏でられます。途中、8分音符による細かく刻むパッセージが第1ヴァイオリンで演奏されますが、その見事なこと。ぐっと惹き込まれます。
第3楽章はアンダンテ。低弦部のピッツィカートの伴奏で穏やかな旋律がカンタービレで描き出されます。終盤、第1ヴァイオリンのカデンツァ風の独奏の美しさにうっとりと魅了されます。
第4楽章は一転して活気あふれる音楽になります。ロータス・カルテットの素晴らしいアンサンブルはぐんぐん推進力のある演奏を繰り広げ、そのまま、高潮して、コーダに突き進みます。そして、圧倒的なフォルテッシモで曲を閉じます。
この弦楽四重奏曲第3番は圧巻の演奏でした。

アンコール曲は驚きのアンダンテ・カンタービレ。美しい音楽をたっぷりと味わわせてくれました。


久々に聴くロータス・カルテットは以前にもまして、演奏の精度を高め、世界を代表するカルテットのひとつとして、大きな存在感を持つことを印象付けてくれました。コロナ禍の影響もなくなり、また、頻繁な来日公演が望まれます。いやはや、大変、満足しました。


今日のプログラムは以下のとおりでした。
  ロータス・カルテット メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲全曲サイクル2023

  ロータス・カルテット
    小林幸子vn  スヴァンチェ・タウシャーvn
    山碕智子va  斎藤千尋vc
    

  メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲 第4番 ホ短調 Op.44-2

           弦楽四重奏曲 第5番 変ホ長調 Op.44-3

   《休憩》

  メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲 第3番 ニ長調 Op.44-1
  
   《アンコール》
   チャイコフスキー:弦楽四重奏曲第1番 ニ長調 Op.11 から 第2楽章 アンダンテ・カンタービレ
   
   
最後に予習について、まとめておきます。

メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲を予習したCDは以下です。

 エマーソン弦楽四重奏団 メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲全集 2004年4月 ニューヨーク セッション録音

流石にエマーソン弦楽四重奏団、美しくて、完璧な演奏です。



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       ロータス・カルテット,  

びっくり仰天の「セリオーソ」、そして、エルガーの弦楽四重奏曲の素晴らしい演奏 ドーリック・ストリング・クァルテット@鶴見サルビアホール 2023.3.3

いやはや、今日のドーリック・ストリング・クァルテットはいろんな意味で刮目すべきものでした。

最初のベートーヴェンの弦楽四重奏曲 第11番「セリオーソ」はその冒頭から、あまりにもオリジナリティあふれる演奏にびっくり仰天。居合抜きの勝負でもしているような凄い気合いで、目まぐるしいパッセージの演奏。そして、あまりにも強弱を強調したダイナミックな演奏。こんなベートーヴェンは初めて聴きました。彼らの考える古典的な演奏なのでしょうか。無論、評価は分かれるところでしょう。saraiは瞬間、瞬間の気合いを大事にした気魄ある演奏として、面白く聴きました。こういう演奏もあっていいでしょう。ただ、これが最高かと言われると、もっと芳醇な響きの演奏がいいかな。退屈しない演奏でした。

続くハイドンもこの調子かと思っていたら、結構、オーソドックスな演奏。美しい演奏でした。ある意味、拍子抜け(笑い)。

休憩後、エルガーの弦楽四重奏曲。これは暗い情念に満ちた素晴らしい演奏です。エルガーは自身の病、第一次世界大戦の恐怖でこんなにも暗い情念と哀感、そして、負のエネルギーに満ちた作品を書いたのでしょうか。ドーリック・ストリング・クァルテットは隠していた真の実力を発揮して、哀感と凄まじさに満ちた演奏を聴かせてくれました。

アンコールで弾いたハイドンは先ほどの演奏を上回る美しさに満ちた素晴らしい演奏。まったくもって、このドーリック・ストリング・クァルテットはとらえどころのないカルテットです。


今日のプログラムは以下のとおりでした。
  ドーリック・ストリング・クァルテット
    アレックス・レディントン vn  イン・シュー vn
    エレーヌ・クレメント va    ジョン・マイヤースコー vc
    

  ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第11番 ヘ短調 Op.95 「セリオーソ」

  ハイドン:弦楽四重奏曲 第41番 ニ長調 Op.50-6「蛙」

   《休憩》

  エルガー:弦楽四重奏曲 第2番 ホ短調 Op.83
  
   《アンコール》
   ハイドン:弦楽四重奏曲 第41番 ニ長調 Op.50-6「蛙」 から 第2楽章 ポコ・アダージョ
   
   
最後に予習について、まとめておきます。

ベートーヴェンの弦楽四重奏曲 第11番「セリオーソ」を予習したCDは以下です。

 リンゼイ四重奏団 2001年6月25-27日 ウェントワース、ホーリー・トリニティ教会 セッション録音
 
これは素晴らしい演奏です。この演奏では、もう後期と言ってもいいでしょう。


ハイドンの弦楽四重奏曲 第41番 Op.50-6「蛙」を予習したCDは以下です。

 リンゼイ四重奏団 2003年4月8-10日 ウェントワース、ホーリー・トリニティ教会 セッション録音
 
リンゼイ四重奏団のハイドンはどれも見事です。


エルガーの弦楽四重奏曲 第2番を予習したCDは以下です。

 ブロドスキー四重奏団 2018年11月25-27日 イギリス、サフォーク、ポットン・ホール セッション録音
 
作曲100周年を記念したアルバム。この作品はオリジナルのBrodsky Quartetに献呈された作品で、現代のブロドスキー四重奏団はその名にあやかって名付けられたという因縁を持ちます。暗く哀調を帯びた演奏に心惹かれます。



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モーツァルトのクラリネット五重奏曲、チャイコフスキーの弦楽セレナード・・・その2曲のつながりは? 小林壱成弾き振りの東京交響楽団:モーツァルト・マチネ 第52回@ミューザ川崎シンフォニーホール 2023.3.4

オーケストラの公演で室内楽とは驚きますが、天下の名曲、モーツァルトのクラリネット五重奏曲ですから、いいでしょう。
メンバーは東響の選りすぐりのメンバーで弦楽四重奏団を構成し、肝心のクラリネットは東響の誇る二人の首席クラリネット奏者をさしおいて、何故か、東響のメンバーの一人、近藤千花子が担当します。心配したクラリネットですが、あっさりした表現で見事な演奏を聴かせてくれました。些細なミスはなかったことにしましょう。弦楽四重奏はまったくもって素晴らしいもので、とりわけ、第1ヴァイオリンの小林壱成は美しい響きの演奏を聴かせてくれました。まあ、この名曲はいつ聴いても素晴らしい音楽。モーツァルトの音楽の中でも1,2を争う傑作です。等質性を担保する同じオーケストラのメンバーによる演奏もなかなかよいものでした。

次はチェロ、コントラバス以外は立奏によるチャイコフスキーの弦楽セレナードです。6-6-6-4?-3の構成。十分な音量です。指揮者なしでヴァイオリンの小林壱成が弾き振りということですが、特別に指揮めいたことをしたわけではありません。
東響の弦楽アンサンブルで小林壱成、水谷晃のダブルコンマスですから、素晴らしい響きで音楽に魅了されます。指揮者なしですから、妙な思い入れの演奏にもならず、チャイコフスキーの名曲が素の姿で提示されて、とても気持ちよく聴けます。CDで聴くオルフェウス室内管弦楽団を想起します。無論、小林壱成のリーダーシップはちゃんと感じられましたけどね。

ところでこの2曲の取り合わせはモーツァルトのクラリネット五重奏曲の終楽章のメロディーとチャイコフスキーの終楽章のメロディーが似ているということでのユニークな発想だったようです。確かに似ていると言えば似ていますが、それほどではないというのがsaraiの感想です。でも、チャイコフスキーの終楽章ではそれが気になって仕方がありませんでした。演奏者はどうだったんでしょう。

マチネで心地よく聴ける2曲ですっかり満足しました。


今日のプログラムは以下です。

  ヴァイオリン(弾き振り):小林壱成(東京交響楽団コンサートマスター)

  クラリネット五重奏 
   クラリネット:近藤千花子(東京交響楽団クラリネット奏者)
   第1ヴァイオリン:小林壱成
   第2ヴァイオリン:水谷晃(東京交響楽団コンサートマスター)
   ヴィオラ:西村眞紀(東京交響楽団首席ヴィオラ奏者)
   チェロ:伊藤文嗣(東京交響楽団ソロ首席チェロ奏者)

   管弦楽:東京交響楽団
   
  モーツァルト:クラリネット五重奏曲 イ長調 K.581
  チャイコフスキー:弦楽セレナード ハ長調 Op.48
  
  《アンコール》なし

   休憩なし


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のモーツァルトのクラリネット五重奏曲を予習したCDは以下です。

 ジャック・ランスロ、バルヒェット弦楽四重奏団 1959年 セッション録音

初めてこの曲を聴いたLPがこの録音でした。以来、ランスロのクラリネット、バルヒェットのヴァイオリンの響きのとりこになっています。


2曲目のチャイコフスキーの弦楽セレナードを予習したCDは以下です。

 レオポルド・ストコフスキー指揮ロンドン交響楽団 1973年 セッション録音

かつての名盤。今となっては少し大仰な感じも散見されますが、とても美しい演奏です。



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ヴィトマンとタメスティによるヴィオラ協奏曲の奇跡のように素晴らしい日本初演、そして、鈴木優人によるシューベルトの交響曲第5番の美し過ぎる演奏 読売日本交響楽団@サントリーホール 2023.3.9

いやはや、現代作品で、このヴィトマンのヴィオラ協奏曲のように深い感銘を覚えた作品はありません。まずは作曲したヴィトマンの類い稀な才能に脱帽です。傑作には昔から演奏者の関与がありましたが、タメスティのヴィオラ演奏もそのひとつでしょう。彼なしにこの作品は生まれなかったと言っても過言ではありません。
この曲は演劇的要素が音楽と相互作用し、高いレベルで深い音楽的内容に結晶したものです。音楽的には、冒頭から中盤あたりまでは、武満徹のノヴェンバー・ステップスを初めて聴いたときの感慨を想起するものです。ヴィオラがオーケストラと干渉しながら、成長していく過程はベルクのヴァイオリン協奏曲を想起させます。孤独な実在が社会の中で癒されて、最後は永遠の眠りに落ちていくというストーリーが頭の中でイメージされて、最後のアリアは哀愁のある癒しのコラール、あるいはレクイエムにも思えて、深い感動を共有します。素晴らしい傑作です。何度も反芻しながら聴いていきたい作品です。
タメスティの素晴らしいヴィオラソロを鈴木優人指揮の読響が支え切った演奏でした。作曲家のヴィトマンが来週のトッパンホールの公演で来日していて(saraiもその公演を聴きます)、演奏が終わった後にステージに上がり、タメスティ、鈴木優人と交歓する様は感動的でした。


休憩後は一転して、シューベルトの古典派の交響曲。鈴木優人の素晴らしい指揮、そして、何よりも読響の見事な弦楽アンサンブルの瑞々しい演奏に身も心も浄められる思いでした。シューベルト、19歳の作品ですが、シューベルトがいかに天才だったのかを実感させられる演奏でした。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:鈴木優人
  ヴィオラ:アントワーヌ・タメスティ
  管弦楽:読売日本交響楽団  コンサートマスター:小森谷巧(ダブルコンマス、長原幸太)

  鈴木優人:読響創立60周年記念委嘱作品《THE SIXTY》(世界初演)
  ヴィトマン:ヴィオラ協奏曲(日本初演)
   《アンコール》J. S. バッハ:ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ第1番 第3楽章アンダンテ(タメスティ、鈴木優人)

   《休憩》

  シューベルト:交響曲第5番 変ロ長調 D485


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目の鈴木優人の新作はもちろん、音源がなく、予習しませんでした。


2曲目のヴィトマンのヴィオラ協奏曲は以下のYOUTUBEを聴きました。いずれもヴィオラ独奏はアントワーヌ・タメスティです。

 ダニエル・ハーディング指揮バイエルン放送交響楽団 世界初録音 2016年3月3-4日、ミュンヘン、ヘルクレスザール セッション録音
 アンドレス・オロスコ・エストラーダ指揮フランクフルト放送交響楽団 2018年1月19日 フランクフルト、アルテ・オパー ライヴ映像
 テオドール・クルレンツィス指揮南西ドイツ放送交響楽団 2022年4月8日 シュトゥットガルト・リーダーハレ ライヴ映像

聴いた順は上記の逆の順。すなわち、新しい演奏から遡上する形で聴きました。この曲は演劇的要素が大きいので、映像付きのほうがよいです。何と言っても、タメスティのヴィオラが素晴らしいです。演奏はクルレンツィスの指揮が見事ですが、エストラーダ指揮のフランクフルト放送響もなかなか素晴らしい演奏です。


3曲目のシューベルトの交響曲第5番は以下のCDを聴きました。

 ロリン・マゼール指揮ベルリン・フィル 1961年1月 ベルリン、イエス・キリスト教会 セッション録音

爽やかな演奏ですが、若干、詰めが甘いような気もします。録音のせいかもしれません。



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ヴィトマン、カルテット・アマービレと過ごす贅沢な一夜@トッパンホール 2023.3.13

今日は期待をはるかに超えるコンサートで音楽の素晴らしさを堪能しました。

前半は作曲家イェルク・ヴィトマンの多彩な作品を楽しみます。

まず、ヴィトマン自身が自作のクラリネットのソロ曲、《3つの影の踊り》を演奏。第1曲はまるで尺八のような幽玄な雰囲気を醸し出します。クラリネットでこんな響きが出せるとは驚きです。第2曲はエレクトロニクスの音響でエコーをかけて、幻想的な音楽を味わわせてくれます。第3曲もエレクトロニクスの音響で響きを増幅し、クラリネットの弁を叩く音で打楽器的な効果を出して、ノリのよいアフリカの踊りを奏でます。最後は高潮して、ワーという叫び声を上げます。クラリネット独奏でこれほど多彩な音楽を奏でるとは驚きです。感銘を受けました。

次はカルテット・アマービレに鈴木慧悟(ヴィオラ)と上村文乃(チェロ)が加わって、弦楽六重奏曲《1分間に180拍》。激しい勢いで高揚したリズムの音楽が始まり、いつしか、まるでバルトークのような世界になります。ヴィトマンはバルトークの正統の継承者に思えるほどです。途中から、対位法的な音楽に変わります。カルテット・アマービレの素晴らしい演奏に感銘を受けました。

次は周防亮介のヴァイオリン独奏でエチュード第2番/第3番。凄まじい超絶技巧の嵐に悶絶してしまいます。

前半最後はカルテット・アマービレによる弦楽四重奏曲第3番《狩》。古典的なスタイルの狩りの音楽がどんどん変容していきます。ここでもカルテット・アマービレの素晴らしい演奏に圧倒されます。弓の糸がどんどん切れていくほどの激しい演奏です。現代音楽ではありますが、調性を感じてしまうような明快な音楽です。そして、演劇的要素も入っているヴィトマン流の音楽です。決して、古い音楽に回帰していないのですが、音楽性を感じるのは何故でしょう。現代音楽の方向性のひとつを示しているようです。最後のしめが決まっていました。音楽も演奏も最高でした。

休憩後、ウェーバーのクラリネット五重奏曲。ヴィトマンの自在な演奏はまるでオペラのアリアを聴いているように感じます。実に歌心のあるクラリネットです。作曲の才以上にヴィトマンのクラリネットの演奏は素晴らしいです。無論、カルテット・アマービレのサポートも見事でした。
彼らのアンコールがなかったのが唯一の不満です。モーツァルトかブラームスのクラリネット五重奏曲の一部を聴かせてくれると思っていたんですけどね。

ヴィトマンの才能、そして、カルテット・アマービレの素晴らしい演奏。最高の一夜でした。


今日のプログラムは以下です。

  イェルク・ヴィトマン(クラリネット)
  カルテット・アマービレ
   篠原悠那(ヴァイオリン) 北田千尋(ヴァイオリン)
   中 恵菜(ヴィオラ)  笹沼 樹(チェロ)
  周防亮介(ヴァイオリン)
  鈴木慧悟(ヴィオラ)
  上村文乃(チェロ)

  ヴィトマン:クラリネット独奏のための《3つの影の踊り》
  ヴィトマン:弦楽六重奏曲《1分間に180拍》
  ヴィトマン:ヴァイオリン独奏のためのエチュード第2番/第3番
  ヴィトマン:弦楽四重奏曲第3番《狩》

   《休憩》

  ウェーバー:クラリネット五重奏曲 変ロ長調 Op.34

   《アンコール》

  なし
  
  
最後に予習について、まとめておきます。

ヴィトマンのクラリネット独奏のための《3つの影の踊り》を予習したYOUTUBEは以下です。

  イェルク・ヴィトマン 2021年1月21日 WDR フンクハウス、ケルン

作曲家自らの演奏ですから、見事なものです。


ヴィトマンの弦楽六重奏曲《1分間に180拍》を予習したYOUTUBEは以下です。

  ケルン放送交響楽団のメンバー 2021年9月26日 WDR フンクハウス、ケルン 

素晴らしい演奏です。


ヴィトマンのヴァイオリン独奏のためのエチュード第2番/第3番を予習したYOUTUBEは以下です。

  カロリン・ヴィトマン 2021年5月21日 ケルン・フィルハーモニー

カロリン・ヴィトマンは作曲家の妹。見事な演奏を聴かせてくれます。何よりヴァイオリンの響きが美しいです。


ヴィトマンの弦楽四重奏曲第3番《狩》を予習したYOUTUBEは以下です。

  ヒース四重奏団 2017年12月17日 ウィグモアホール、ロンドン
  ヒエロニムス四重奏団 2017年2月 バレンボイム・サイード・アカデミー、ベルリン

いずれも素晴らしい演奏です。


ウェーバーのクラリネット五重奏曲を予習したCDは以下です。

  イェルク・ヴィトマン、アイルランド室内管弦楽団 2016年5月3日 リメリック大学ICOスタジオ、アイルランド セッション録音
  
ヴィトマンの吹き振りで弦楽四重奏のパートを弦楽オーケストラ(弦:6/6/4/4/2)に置き換えて演奏しています。ヴィトマンのクラリネットが素晴らしいです。



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       カルテット・アマービレ,  

シュポアやメンデルスゾーンの珍しい作品を特別な配置のオーケストラで聴く稀有な機会、しかも素晴らしい演奏 佐藤俊介&東京交響楽団@サントリーホール 2023.3.18

まずはオーケストラの配置が珍しいものに驚かされます。弦は左右にシンメトリーな配置。第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが対向配置で、中央にヴィオラが並びます。ヴィオラは前面に二人ずつ左右に並びます。チェロはその後ろに並び、コントラバスは後ろの左右に分かれて2群に配置されます。2管編成の木管、金管が後ろに並びます。

最初のシュポアのヴァイオリン協奏曲 第8番は佐藤俊介の指揮&ヴァイオリン。弾き振りというよりも、オーケストラ演奏のときも一緒にヴァイオリンを弾き、ほぼ、ずっと、ヴァイオリンを弾きっぱなし。指揮はほとんどなし。演奏は東響のアンサンブルが素晴らしく響きます。そして、佐藤俊介の独奏ヴァイオリンは超絶演奏であることを感じさせない自然な演奏で素晴らしい響きです。特に緩徐的なパートのオーケストラ、独奏ヴァイオリンが見事でした。珍しい作品を堪能しました。

続くベートーヴェンの交響曲 第1番も同じ配置で、佐藤俊介の指揮&ヴァイオリン。これがベートーヴェンの交響曲 第1番かと驚くような演奏です。オリジナル演奏とも違うし、無論、モダン演奏でもありません。ハイドン、モーツァルトの時代に遡ったような演奏にも思えますが、実にユニークな演奏。フルトヴェングラーの演奏を思い起こすと、まったく違った曲に思えます。これまた、珍しい作品の演奏を聴いた気分です。これはこれでよい演奏ではありましたが、正直、面喰いました。

休憩後もまったく同じ配置のまま、メンデルスゾーンの弦楽のための交響曲 第8番(管弦楽版)です。前半との違いは佐藤俊介がヴァイオリンを持たずに指揮に専念したことです。第2楽章はヴァイオリン抜きで、中央のヴィオラが中心となって、室内楽的な響きの演奏。この珍しい配置が見事に機能します。第4楽章の終盤の対位法的な演奏は素晴らしい響きで最高のアンサンブルです。東響の弦の素晴らしさが発揮されて、素晴らしい盛り上がりのうち、曲を閉じます。とても14歳の少年の作品には思えない素晴らしさ。メンデルスゾーンはモーツァルト以上に早熟の天才だったことが実感できました。

ところで、サントリーホールはマスクをしていたら、ブラボーのコールが解禁になりました。また、声を出さなければ、マスクもしなくてよいようです。大半の人は従来通り、マスクを着用していました。コロナも次第に収束しつつあるように思われますが、感染自体は収束していませんね。

そして、今日がコンサートマスターを10年間務めた水谷晃のラストコンサート。東響の顔とも言える存在だった水谷晃が去るのは寂しいですね。今日、姿を見せなかった首席オーボエの荒木奏美も退団。彼女も木管で東響の顔とも言える存在でした。東響がどうなるのか、心配です。首席ホルンも3人のうち、2人が退団。東響は大丈夫でしょうか・・・。


今日のプログラムは以下のとおりでした。

  指揮&ヴァイオリン:佐藤俊介
  管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:水谷晃

  シュポア:ヴァイオリン協奏曲 第8番 イ短調 Op.47 「劇唱の形式で」
  ベートーヴェン:交響曲 第1番 ハ長調 Op.21

  《休憩》

  メンデルスゾーン:弦楽のための交響曲 第8番 ニ長調(管弦楽版)


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のシュポアのヴァイオリン協奏曲 第8番を予習したCDは以下です。

  ヒラリー・ハーン、大植英次指揮スウェーデン放送交響楽団 2006年2月 セッション録音

シュポアの作品の録音は少ないので、このヒラリー・ハーンの録音は貴重なものです。無論、見事な演奏です。


2曲目のベートーヴェンの交響曲 第1番を予習したCDは以下です。

  レナード・バーンスタイン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1978年11月 ウィーン、ムジークフェラインザール ライヴ録音
 
かつて、全集盤のLPを購入したときの思い出がよぎります。今や、DSDとして聴けます。充足感に満ちた演奏です。


3曲目のメンデルスゾーンの弦楽のための交響曲 第8番(管弦楽版)を予習したCDは以下です。

  クルト・マズア指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 1971年9月16-21日 和解教会(Versohnungskirche)、ライプツィヒ セッション録音

メンデルスゾーン没後125年に録音された全集盤です。メンデルスゾーンゆかりのオーケストラによる演奏は素晴らしい響きです。特に第4楽章後半の演奏は見事としか言えません。



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隙の無いキャストで全編、美しい歌唱にうっとり 《ホフマン物語》@新国立劇場 2023.3.19

演出家フィリップ・アルローは明快な舞台演出で音楽を優先した素晴らしいもの。特に第4幕のヴェネチアのシーンのきらびやかな舞台は圧巻。ホフマンの舟歌と相俟って見事な出来でした。

音楽自体は全編、オッフェンバックの美しいメロディーに彩られて、とても聴き映えがしました。ホフマン物語って、こんなに美しい音楽に満ちていたのかと再認識させられました。
そして、歌手では、オランピア、アントニア、ジュリエッタのヒロインを歌った安井陽子、木下美穂子、大隅智佳子の3人とも実力を発揮した素晴らしい歌唱。この3役は一人で歌うことも多いですが、こうして3人で分担して歌うと、それぞれの個性が活かされて、いいものです。このヒロインたち以上に素晴らしかったのが、ニクラウス役の小林由佳。とても声量豊かなメゾ・ソプラノで全幕、素晴らしい歌唱を聴かせてくれました。第5幕、エピローグでの《心の中の灰から》は実に感動的。まさにこの日の主役だったと言っても過言ではないでしょう。
タイトルロールのホフマンを歌ったレオナルド・カパルボもよく声が出ていて、満足できる歌唱でした。リンドルフほかを歌ったエギルス・シリンスは流石の歌唱というほか、ありません。彼がこのオペラを支えていたと言えます。
他のキャストもまったく隙のない歌唱で実にレベルの高いオペラに貢献していました。
合唱はいつもの通り、見事な歌唱。これがあるから、新国のオペラは底堅いですね。
オーケストラは実に美しいアンサンブル。何と昨日聴いたばかりの東響でした。連夜の素晴らしい演奏、ご苦労様です。指揮のマルコ・レトーニャもてがたいものでした。

このホフマン物語はこれまで、パリ・オペラ座(バスティーユ)、マドリッド・レアル劇場で豪華キャストで聴きましたが、それらにもまったく引けを取らない公演で、音楽的には、一番、じっくりと聴くことができました。大満足です。


今日のキャストは以下です。

  ジャック・オッフェンバック
   ホフマン物語 全5幕

  【指 揮】マルコ・レトーニャ
  【演出・美術・照明】フィリップ・アルロー
  【衣 裳】アンドレア・ウーマン
  【振 付】上田 遙
  【再演演出】澤田康子
  【舞台監督】須藤清香
  【合唱指揮】三澤洋史
  【合 唱】新国立劇場合唱団
  【管弦楽】東京交響楽団 コンサートマスター:グレブ・ニキティン

  【ホフマン】レオナルド・カパルボ
  【ニクラウス/ミューズ】小林由佳
  【オランピア】安井陽子
  【アントニア】木下美穂子
  【ジュリエッタ】大隅智佳子
  【リンドルフ/コッペリウス/ミラクル博士/ダペルトゥット】エギルス・シリンス
  【アンドレ/コシュニーユ/フランツ/ピティキナッチョ】青地英幸
  【ルーテル/クレスペル】伊藤貴之
  【ヘルマン】安東玄人
  【ナタナエル】村上敏明
  【スパランツァーニ】晴 雅彦
  【シュレーミル】須藤慎吾
  【アントニアの母の声/ステッラ】谷口睦美


最後に予習について、まとめておきます。

以下のヴィデオを見ました。

モネ劇場 「ホフマン物語」NHK-BS

 ホフマン:エリック・カトラー
 オランピア/アントニア/ジュリエッタ/ステルラ:パトリシア・プティボン
 ニクラウス/ミューズ:ミシェル・ロジエ
 リンドルフ/コぺリウス/ミラクル/ダッペルトゥット:ガーボル・ブレッツ  ほか
 モネ劇場合唱団、管弦楽団
 指揮:アラン・アルティノグリュ
 演出:クシシュトフ・ヴァルリコフスキ

 収録時期:2019年12月17日&20日
 収録場所:モネ劇場(ライヴ)

何と言っても、4役を歌ったパトリシア・プティボンが素晴らしい。美人だしね。



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コパチンスカヤの唯一無二で何ともチャーミングな音楽の一夜@トッパンホール 2023.3.23

コパチンスカヤの天衣無縫な演奏が弾けるようなワクワク感にあふれた最高のコンサートでした。
いつものように裸足で現れたコパチンスカヤはチャーミングな笑顔で万雷の拍手に応えます。派手な動きの思い切りのよいアクションで彼女にしか表現できない独自性にあふれた音楽を披露してくれます。作曲家の同じ楽譜から、彼女が感じ取った音楽表現で唯一無二の演奏を聴かせてくれます。しかも実に即興的要素が多く、今日の演奏はもう2度と聴けない音楽です。完成度の高さでは彼女のCDの演奏が最高ですが、今日の実演では即興性と高いエネルギー感に満ちた気魄がCDでは味わえないものです。

シェーンベルクとウェーベルンはいずれも新ウィーン学派の無調の音楽で、現在でも難解な音楽ですが、コパチンスカヤは熱い共感と気魄に満ちた演奏で難解さの壁を打ち破り、彼女の演奏に聴衆を引き込んでくれます。頭ではなく、体で実感し、我々も分かったというよりも共感させてくれます。コパチンスカヤにとって、彼女が存分に音楽表現していく上で、新ウィーン学派の無調の音楽は格好の材料のようです。

続くベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第7番もまるで新ウィーン学派の演奏の延長のように奏でられます。事前に彼女の演奏を予習していなければ、びっくり仰天で度肝を抜かれるところです。まるで居合抜きの勝負のように一瞬、一瞬の音楽を気魄を込めて演奏していきます。うっ、最近、同じような体験をしたことを思い出します。まるでデジャヴのよう。そうそう、鶴見サルビアホールで聴いたドーリック・ストリング・クァルテットのベートーヴェンの弦楽四重奏曲 第11番「セリオーソ」で似た思いを感じました。こういうスタイルのベートーヴェンが流行っているのかしらね。
第1楽章の異次元の演奏の後、一転して、第2楽章はフツーの抒情的な音楽表現で虚を突かれます。何とも心に響く音楽です。第3楽章、第4楽章はまた、エキセントリックとも言える演奏です。それにしてもコパチンスカヤだけでなく、ピアノのアホネンもコパチンスカヤ風の演奏で驚かされます。コパチンスカヤはアホネンのことをドッペルゲンガーと呼んでいるそうですが、さもありなんです。そう言えば、コパチンスカヤがチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲をクルレンツィスと共演したときも、あのクルレンツィスがドッペルゲンガーになっていたような気がします。コパチンスカヤ、恐るべし。

休憩後、フェルドマンの小品。これは無機的で静謐な作品。とても短い作品で、まるで次のアンタイルのソナタの序章のようですが、音楽の質はまるで違っています。フェルドマンは難解と言えば、難解ですが、新ウィーン学派の難解さとは意味が違います。フェルドマンはその乾いたような響きをただ受容するだけでそれ以上の意味を探るような音楽ではありません。静寂と音の響きの間の音空間を味わうとでも言えばいいのでしょうか。

アンタイルのヴァイオリン・ソナタ第1番。これは難解でもなんでもありません。民俗的なメロディーをベースに多彩なリズムが乱れ狂うような面白い音楽です。バルトーク的にも思えますが、解説によるとアメリカ出身のアンタイルがパリでストラヴィンスキーの影響を受けたとのことです。saraiはどうしてもバルトークの影響を感じるのですが、思い過ごしなんでしょうか。
ともかく、コパチンスカヤの演奏はエネルギー感に満ち満ちて、聴くものをインスパイアするようです。しつこいですが、そういう面でもバルトーク的です。特に第1楽章と第4楽章が勢いにあふれています。そう言えば、第1楽章はゲームミュージック的な要素も含んでいます。ジョン・アダムズへの系譜もあるのでしょうか。第2楽章は美しく抒情的。第3楽章は哀感に満ちた音楽です。音楽だけを聴いていれば、東欧の作曲家を想像してしまうような作品です。コパチンスカヤはこの曲を自在に弾きこなし、まるで彼女に捧げられた音楽のようです。あまり演奏されない曲ですが、コパチンスカヤが世に広めていくことになるのでしょうか。

アンコールはクイズ形式。誰が作曲したのかを聴衆に問う形で演奏されます。最初は日本的なメロディーにも思えましたが、正解はリゲティ。1940年の作曲のようですから(間違っているかも)、17歳でまだ、作曲を学ぶ前の作品ですね。後年のリゲティからは想像できません。ちなみにリゲティは今年、生誕100年で、このトッパンホールで生誕100年バースデーコンサートが5月28日にあります。無論、saraiも聴きます。
2曲目のアンコール曲はギドン・クレーメルがいつもアンコール曲にしているカンチェリのラグ-ギドン-タイム。風変わりな曲で笑わせてくれます。
とってもチャーミングなアンコールでした。

コパチンスカヤ、凄し!! 聴いて超満足のコンサートでした。


今日のプログラムは以下です。

  パトリツィア・コパチンスカヤ(ヴァイオリン)
  ヨーナス・アホネン(ピアノ)

  シェーンベルク:幻想曲 Op.47
  ウェーベルン:ヴァイオリンとピアノのための4つの小品 Op.7
  ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第7番 ハ短調 Op.30-2

   《休憩》

  フェルドマン:ヴァイオリンとピアノのための作品(1950)
  アンタイル:ヴァイオリン・ソナタ第1番(1923)

   《アンコール》

  リゲティ:アダージョ・モルト・センプリチェAdagio molto semplice
  カンチェリ:ラグ-ギドン-タイムRag-Gidon-Time
  
  
最後に予習について、まとめておきます。

すべて、Youtubeでコパチンスカヤとアホネンのライヴ映像で聴きました。
さらに、以下のCDを聴きました。

 『ジョージ・アンタイルの見た世界~アンタイル、フェルドマン、ケージ、ベートーヴェン』
    パトリツィア・コパチンスカヤ、ヨーナス・アホネン
  1. フェルドマン:小品~ヴァイオリンとピアノのための (1950)
  2. ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第7番ハ短調 Op.30-2 (1802)
  3. ケージ:夜想曲 ~ヴァイオリンとピアノのための (1947)
  4. アンタイル:ヴァイオリン・ソナタ第1番 (1923)
  5. フェルドマン:エクステンション 1~ヴァイオリンとピアノのための (1951)
   2020年12月 スイス、ラジオ・スタジオ・チューリッヒ セッション録音
   
たっぷり予習したので、もうそれだけで今日のリサイタルを聴いた気分になりました。CDの演奏は流石に完成度の高い演奏で聴き惚れました。1,2,4が今日の演奏曲。3のケージの夜想曲はこれがケージかと驚くようなロマンティックな曲。5のフェルドマンは1のフェルドマンの小品をそのまま引き延ばしたような作品で瓜二つに思えます。   




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