2008年5月3日土曜日@ドレスデン/10回目
今年の旅はドレスデンDresdenとライプツィヒLeipzigとプラハPrahaが目的地。
今日はドレスデンの2日目です。
エルベ川の船旅を終えて、ドレスデンの市内観光に移ります。美しいチーズ屋さん、プフンズ・モルケライPfunds Molkerei Dresdenを出るところです。ところで、混雑する店内でsaraiは大失策をおかします。観光客の一人が寄って来て、これはあなたのものじゃないかと渡してくれたのは、何とsaraiのパスポート。知らないうちに落としてしまったようです。次回の旅からはパスポートのコピーを財布に入れ、うかつにパスポートを出さないようにしました。まだまだ、旅の初心者だったんです。いずれにせよ、親切なかたに感謝しましょう。旅では数知れない人たちのご親切に助けられてきました。
次は今回の旅の企画のきっかけになったフラウエン教会Frauenkircheに向かいます。
また、アルベルトプラッツAlbertplatzまで歩いて、そこからトラムで旧市街に移動。
フラウエン教会の美しい建物の前に立ちます。

ドレスデンの街は第2次世界大戦の連合国の爆撃で破壊しつくされたのですが、市民がその瓦礫をかき集め、それらを用いてできる限り元の形に復元するという信じられない努力の結果、2005年に元の美しい教会が甦ったというフラウエン教会です。saraiがここを訪れた3年前に蘇ったばかりのことでした。
実はこの旅の直後、このドレスデン空襲を題材にした映画、『ドレスデン、運命の日』を見ました。連休で訪れたドレスデンを主題とした映画がツタヤにあったので、レンタルして、配偶者と一緒に見ました。この映画のラストシーンが再建されたフラウエン教会でした。
この映画は第2次世界大戦末期のドレスデンの病院とイギリス空軍を舞台に始まります。ヒロインはドレスデンの大きな病院の看護婦(病院長の娘)、ヒロインと恋に落ちるのはイギリス空軍の爆撃機のパイロット。彼らが恋に落ちるのはちょっと無理のある筋書きですが、本来、この映画の主題はドレスデン大空襲であり、彼らはそれを盛り立てるのが役割なので、そのあたりにはこだわらないで、この映画を見ましょう。そして、運命の日、1945年2月13日から15日にかけて、イギリス空軍による2波の大空襲とさらにアメリカ軍による2波の空襲が行われ、ドイツ東部の美しい古都ドレスデンは灰燼と帰してしまいます。そして、2万5千人の市民が亡くなったと推計されています。そもそも、ドレスデンには軍事的な価値はあまりなかったのですが、ソ連軍がドイツに迫ってきており、イギリスとしても、何らかの存在感を示すために、ドレスデンをスケープゴートにしたようです。
しかし、この大空襲によっても、堅牢なフラウエン教会は持ちこたえたのです。でも、空襲による火災で高熱にさらされたドームの建材がスポンジ状に変質し、数日後に崩れ落ちます。
時は流れて、ドレスデンは東ドイツの一部となり、瓦礫となったフラウエン教会もそのまま放置されていました。そして、ライプツィヒに端を発したベルリンの壁崩壊が1989年に起きます。ドイツ統一後のドイツ人の精神的な象徴として、このフラウエン教会の再建が始まります。ついに2005年に見事にフラウエン教会が再建されました。その姿は白い石と黒い石がまだらに組み合わさったものです。白い石は新しい石、黒い石は瓦礫のなかから探し出された石です。史上最大のパズルと言われている由縁です。

saraiはこの再建されてまだ3年のフラウエン教会を見て、その不思議な模様になんともいえない感覚を抱くとともに、きっと、いつかはあの白い石も黒ずんで、黒い石と同化するんだろうなと思います。いつの日か、教会を見上げた人たちが、黒々とした壁面を見て、壮大な教会の姿に感動し、戦争の傷跡から開放されるでしょう。それまでは、戦争と和解の象徴として、長く、フラウエン教会は世界中から訪れる人々の視線を集め続けることになるのでしょう。
先日、映画『シンドラーのリスト』を見て、ドイツ人(ナチス)のユダヤ人に対する非人道的な歴史的事実に胸を痛めましたが、この映画も見て、結局、戦争という行為はすべての人々を加害者・被害者にしてしまうというシンプルな事実を痛感することになりました。
映画そのものは傑作ではありませんが、その主題とするものを感じられれば、決して見て損のない?映画です。
美しく再建されたフラウエン教会の内部をご紹介しつつ、今後、決してこの美しい教会が損なわれないことをみなさんとご一緒に祈りたいと思います。
折しもミサの最中で静かにそっと後ろに立ちます。内部の息を飲む美しさに驚嘆します。

何と言う美しい装飾でしょう。内部は完全に復元したものでしょう。その復原をやり遂げた市民の執念ともいえる努力には本当に驚きます。

見事に修復されたドレスデンのフラウエン教会(聖母教会)のドームの天井を見上げます。ドイツ人がここまで美しいものを再現した努力を思い、胸にジーンとくるものがあります。

主祭壇とその上にある大きなパイプオルガンです。見れば見るほど、修復作業の素晴らしさに感銘を受けます。

後方のバラ窓からは明るい陽光が差し込んで、人々に祝福を与えています。

ドレスデンの旧市街はかつては美しいバロック建築の街として知られていました。しかし、このフラウエン教会をはじめ王宮やツヴィンガー宮殿やゼンパーオパーなど多くの建物が大空襲で完全に破壊されました。しかし、今では多くの建物が再建されて、昔日の輝きを取り戻しつつあります。しかし、真っ黒に焼け焦げた石がそのままはめ込まれモザイク状になっているフラウエン教会を見ると、戦争の愚かさと恐ろしさを感じられずにはいられません。
そして、また、今でもウクライナで戦争と破壊という愚かな行為が繰り返されています。77年も経つと過去の戦争の反省などは忘れてしまう人類の愚かしさにこれからの未来はあるのかという暗澹たる思いに駆られるのみです。
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