2011年10月28日金曜日@ウィーン
旅は23日目です。
曇り空、5日目です。今日から晴れるという天気予報も外れました。配偶者の晴れ女としての力も、晴れはしないとしても雨だけは降らせないということで納得するしかありませんね。
ウィーンの10月はもう冬らしいです。夏から一気に冬(秋はない!)になるときいていましたが、これがそれなんですね。こんな曇り空が幾日も続いて、さらに氷点下まで気温が下がる本格的な真冬になっていくのでしょう。
幸いにも冷たい風は吹かず、気温はちょっと上がっています。
この秋のウィーンは、音楽だけでなく美術も充実しています。今日で3日目の美術館通い。きっちりと見るために1日1美術館の方針です。
今日はベルヴェデーレ宮殿Schloss Belvedereに出かけましょう。ベルヴェデーレ宮殿に出かけると言っても、この宮殿にあるオーストリア・ギャラリーÖsterreichische Galerie Belvedereが目的です。この美術館はクリムトの名品の所蔵では有名ですが、saraiにはシーレの名品がたまりません。昨日のレオポルド美術館Leopold Museumの膨大なシーレ・コレクションをもってしても、このオーストリア・ギャラリーのシーレの珠玉のコレクションは欠くことのできない存在です。特に「家族」、「妻の肖像」、「4本の木の風景」という彼の28歳の死までの2年間の作品はとても素晴らしくいつまでも見ていたい作品です。
ベルヴェデーレ宮殿は美術館だけでなく美しい庭園があるので、本当は晴れている日のほうが気持ちが良かったのですが、こんなに曇り空が続くのでは晴れる日を選ぶなどという贅沢は言っていられません。
ベルヴェデーレ宮殿はホテルからは歩いても行ける距離ですが、体力は使い果たさない方がよいので、トラムを2つ乗り継いで向かいます。途中、ウィーン南駅の工事現場を通ります。まだまだ工事は続きそうですね。

ベルヴェデーレ宮殿の門から中に入り、美しい宮殿の正面に出ます。

宮殿の右手の小屋はブルックナーが暮らしていたところです。今回はブルックナーも旅のテーマのひとつですから、見ていきましょう。

g
宮殿を回り込んで裏の方に出ると、美しい秋色のしっとりとした庭園が広がります。その向こうにはウィーンの街が見渡せます。

そういえば、ずっと庭園の工事をしていましたが、ようやく出来上がったようですね。saraiは、お約束の「タッチ」です。

儀式が終わったところで美術館に入館ですが、チケット売り場も変更になっていて、えらく遠くまで行かないと買えません。

今回は上宮Obere Belvedereでの常設展に加えて、下宮Untere Belvedereでの特別展を見ます。両方見られるフルチケットを購入します。
これが常設展のパンフレットです。

入館して早速、クリムト、シーレを見たいところですが、今回はすべて見て回るという方針なので、1階のフロアから順に周ります。1階は初めて周りますが、ここには中世からバロックの作品があります。次にようやく2階のフロアに上がり、これも定例になっているテラスからの眺めを楽しみます。実に美しい風景です。

まずはクリムトの展示に行き着きます。さすがに有名な「接吻」も何回も見ているので前のような感激はありませんが、実に輝かしく、そして女性の美しさが金箔の文様の下に感じられます。残念ながら、このベルヴェデーレ宮殿では内部での撮影は禁止なので、絵画作品の写真はまったくなし。美術史美術館やレオポルド美術館は太っ腹で撮り放題なのにね。でも、代表的な作品だけは、購入したガイドブックからご紹介しましょう。
「接吻」です。クリムトの傑作というよりも絵画史上の傑作ですね。

クリムトは風景画も含めてかなりの数の絵があり、たっぷりと堪能できます。
風景画の1枚、「ひまわりのある農夫の庭」です。

その先にはシーレの名画が並びます。saraiの大好きな「家族」はいつ見ても感動します。28歳の作品です。何と気持ちが温まる作品でしょう。この子供が生まれる前に母(シーレの妻)が死に、直ぐにシーレも後を追うように死にますが、そんな悲しいことを裏に閉じ込めて、家族のほのぼのとした幸せを感じられます。現実の悲劇を芸術が昇華してしまったと思いたいです。

今ではクリムトよりもシーレのほうが感動の量が多くなってきています。シーレは若干28歳でこの世を去りますが、特に26歳以降の2,3年に描いた絵はとても素晴らしいものばかりです。
「エディット・シーレ、椅子に座る画家の妻」です。これも28歳の作品です。

「4本の木」です。27歳の作品です。秋の寂寥たる景色がバラ色に染まっています。素晴らしい作品です。

この他にもクリムト、シーレの名品が揃っています。必見の美術館です。
ベルヴェデーレ宮殿の美術館は上宮が今見て回った常設展、そして庭園を下った下宮が特別展となっています。今回の特別展は「クリムトとホフマン」展です。2012年がクリムトの生誕150年のクリムト・イヤーということでの開催だそうです。ホフマンはクリムトと同時期に活躍したインテリアや建築を主に手掛けた芸術家です。
これが特別展のパンフレットです。

この特別展を見るために、上宮から美しい庭園を散歩しながら下宮に向かいます。

下宮の横の建物には壁面を紅葉した蔦がおおっていて、とても綺麗です。

下宮の入口は向かって左側の方のドアから入ります。

特別展では、クリムトの個人蔵や他の美術館の収蔵作品が多く集められ、見応えがあります。いつもは上宮で常設展示されている女性の肖像画もこちらに展示されています。「フリッツァ・リードラー」、「ソーニャ・クニップス」、「暖炉の貴婦人」です。
配偶者とsaraiの大好きな「水蛇Ⅰ」もここに展示されています。

分離派会館Secessionsgebäudeのベートーヴェン・フリーズ(壁3面に描かれた第9番交響曲をテーマにした作品)が再現されていたのは見ものです。
また、それよりも価値の高かったのはブリュッセルのストックレー邸Le palais Stocletが再現されていることです。ストックレー邸はホフマンが建物・意匠を担当し、クリムトがストックレー・フリーズ(「接吻」をモチーフの一部に用いた壁画)を描いた傑作で、2009年に世界遺産になりました。しかし、VIP以外には内部を一切公開していません。saraiのような一般人は決して実物を見ることはないでしょう。それが、この特別展で再現されているんです。
クリムトとベルギーとのつながりの強さから、ベルギーの美術館からクノップフの名品も出展されており、これも楽しみの一つです。クリムトとクノップフの女性ヌード画は並べて展示されていますが、確かに同質性が感じられます。意外です。このクノップフの絵は実に魅力的です。とても素晴らしい作品で、配偶者ともクノップフを見にベルギーに行きたいねって話になります。いつのことになるでしょうか。ベルギー、フランドルには魅力的な画家がずらっと揃っています。(ようやく、2015年にその夢が実現することになります。)
下宮の奥の方にある展示室(紅葉した蔦のある建物)でも展示会をやっているので見ておきます。クルト・シュテンヴァートという人の現代アートの作品で結構楽しめます。これが展示室へ行く連絡路です。

絵画を鑑賞した後は、食い気ですね。さて、今日はどうしましょうか。悩んだ挙句、コンディトライ・オーバーラーのランチもチェックしようということに決定。トラムで街の中心に繰り出します。
コンディトライ・オーバーラーはやはり賑わっていますね。寒くなったこの季節では片付けられていることが多い店の外の席が、ここではまだ用意されていて、寒さをものともしない強者が外でお茶しています。これは満席で無理かなと思いながらお店に入ると、さほどに広くない店内もかなりの混雑ぶりです。と、2階があることを発見。2階に上がってみても席を探す人がウロウロしています。それでも何とか席をゲットです。

さて、オーバーラーのランチは、スープとパスタとサラダがセットになったものです。パスタが2種類から選べるようになっているので、その2種類をお願いします。が、残念ながら1種類しか残っていないということです。実は、saraiはランチの後にケーキを食べることにしていたのですが、配偶者はとても無理と渋っていたのです。これで目出度く解決です。ランチ1人分とケーキを2人分と紅茶をお願いします。
スープは美味しいけれどちょっとぬるめで今一です。

が、パスタやサラダはとっても美味しいです。


この3品がセットメニューというのも伝統的なカフェとは異なり、若者には人気なのかもしれませんね。もちろんケーキは絶品です。

食べた後ゆっくりしていると、サービスよと言ってプチケーキを持ってきてくれます。これも美味しいです。ダンケ・シェーン!

店員さんも若い女性ばかりで、なんだか華やかです。
オーバーラーの向かいには、フロアーが3階もある大きなスーパーがあります。今まで気が付かなかったので、入ってみます。見るだけでも面白いですよ。この後、この辺りのお店をぶらついて、ケルントナー通りを歩いて、リンク通りに出て、トラムでホテルに戻ります。
ここまでのルートを地図で確認しておきましょう。

お決まりの仮眠の後、ウィーン楽友協会Gesellschaft der Musikfreunde in Wienでウィーン交響楽団のコンサート。この日はバルコン席で見下ろす席ですが、とても音響がよく、楽しめました。

このコンサートの内容は別記事で
ここにアップ済です。
今日も、大満足の1日でした。
さて、いよいよ明後日には日本に向けて飛び立ちます。
明日は、夕方ウィーンのお友達とお茶して、オペレッタを見た後は、日本からかけつけるブログのお友達Sさんと4人で盛り上がる予定です。
そして、明後日のお昼に、この旅で最もsaraiが楽しみにしているウィーン楽友協会でのプレートル指揮ウィーン・フィルのコンサートを聴いたら、夕方には空港に向かい帰路に着きます。
↓ saraiのブログを応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね
いいね!
テーマ : ヨーロッパ
ジャンル : 海外情報