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河村尚子、入魂のラフマニノフに感動! ルイージ&NHK交響楽団@サントリーホール 2022.12.14

河村尚子のピアノの凄いこと。協奏曲なのにオーケストラに合わせようなんて気持ちは微塵もなく、ただ、自分の魂を剥き出しにして、ラフマニノフの名曲に渾身の力で向かっていったという風情です。この演奏を聴いて、saraiは深い思いを抱きました。そもそも音楽を演奏する上で、美しく完璧に音楽を作り上げることは意味のあることなのか・・・若い頃のホロヴィッツもリヒテルもミスタッチだらけで爆演していましたが、その魂をぶつけてくるような音楽の凄かったこと。現代の音楽家に欠けているものは熱い魂の燃焼であることに思い至ります。今日の河村尚子もミスタッチもあり、ペダル踏みまくりの爆演。どうしちゃったんでしょう。尊敬する音楽評論家かこぞって激賞していた河村尚子をずっと聴いてきましたが、彼女はどちらかと言えば、優等生タイプ。魂を剥き出しにして熱い音楽を聴かせてくれる上原彩子とはタイプが違うと思っていました。今日の河村尚子は奔放に音楽を表現して、個性を剥き出しにして、魂をさらけ出すような圧巻の音楽を聴かせてくれました。第1楽章からテンション上がりまくりで、第2楽章は静謐さの中に思いのたけを込めて、楽章の最後は熱い血潮が迸るような演奏。そして、第3楽章は物凄い気魄でどこかにいっちゃったような演奏。思わず、saraiは深く感動してしまいました。そうです。こんな人間の魂の燃焼の音楽が聴きたかったんです。美しい響きと完璧なテクニックの音楽はもういらないとさえ、思いました。河村尚子の最高の演奏を聴いた思いです。河村尚子さん、このまま、我が道を進め!! saraiは全面的に応援します。

アンコールで弾いたラフマニノフは、もはや、アンコールで弾く音楽を超えていました。何と素晴らしいラフマニノフ。

前半で聴く力を使い切ったsaraiですが、ルイージは望外に素晴らしい「新世界から」を聴かせてくれました。多分、彼がN響で聴かせてくれた最高の音楽です。指揮する姿も美しく、不意に昔、ウィーンで聴いたルイージの姿が蘇りました。第4楽章は圧巻の出来。ずっと、ルイージの指揮だけを見ていました。これから、ルイージは本領を発揮してくれるんでしょうか。ルイージの指揮で、N響もよく鳴っていました。


今日のプログラムは以下のとおりでした。

  指揮 : ファビオ・ルイージ
  ピアノ : 河村尚子
  管弦楽:NHK交響楽団 コンサートマスター:伊藤亮太郎

  グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミーラ」序曲を
  ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 Op.18
   《アンコール》ラフマニノフ:幻想小曲集より 第1曲 エレジー 変ホ短調 Op.3-1

   《休憩》

  ドヴォルザーク:交響曲 第9番 ホ短調 Op.95「新世界から」


最後に予習について、まとめておきます。


1曲目のグリンカの歌劇「ルスランとリュドミーラ」序曲を予習したCDは以下です。

 エウゲニ・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィル 1965年2月23日 ライヴ録音

この曲だけは、ムラヴィンスキーとレニングラード・フィルのコンビで聴くしかないですね。完璧とはこのためにある言葉かと思ってしまいます。


2曲目のラフマニノフのピアノ協奏曲 第2番を予習したCDは以下です。

  アンドレイ・ガヴリーロフ、リッカルド・ムーティ指揮フィラデルフィア管弦楽団 1989年 セッション録音

ガヴリーロフのデリカシーさが横溢した演奏です。無論、第3楽章のヴィルトゥオーゾぶりは凄いものです。それにしてもピアノの響きの美しいこと。今のガヴリーロフはもっと自由奔放な演奏をするでしょう。


3曲目のドヴォルザークの交響曲 第9番 「新世界から」は聴いたばかりなので、予習はパス。最近聴いたCDは以下です。

 カレル・アンチェル指揮チェコ・フィル 1961年12月6日、プラハ、芸術家の家(ルドルフィヌム) セッション録音
 
これはアンチェルが亡命前にチェコ・フィルと演奏した素晴らしい演奏です。今でも、これを超える演奏はなさそうです。



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       河村尚子,  

河村尚子のシューベルティアーデ、聖なる一夜@紀尾井ホール 2022.9.13

8月後半から、続けざまに河村尚子のピアノを聴いてきましたが、今日がその総決算。シューベルトの最晩年の作品を中心にした素晴らしいプログラムです。

本来は今日は鶴見サルビアホールでクァルテット・エクセルシオのショスタコーヴィチ・シリーズ#3(弦楽四重奏曲 第7番~第10番)を聴くべきところでしたが、河村尚子のシューベルトとあっては聴き逃がせません。
実際、その甲斐はありました。河村尚子の重量級のシューベルトの完璧とも思える演奏が聴けました。

まずは、挨拶代わりの1曲。通俗的とも言える「楽興の時」の第3番です。ここまで弾けるのかと感嘆するような素晴らしい演奏です。別の曲を聴いているような感じのゾクゾクする演奏です。
続いて、間を置かずに「3つの小品」からの 第3番です。一転して、たたみかけるような圧倒的な演奏です。中間部はもっと抒情的に弾いてほしいところですが、一気呵成に突き抜けるような素晴らしいテクニックの演奏です。
ここでいったん 間をあけて、次はピアノ・ソナタ第20番です。第1楽章はドイツ的な重厚な演奏です。ピアニズムが素晴らしく、その完璧なメカニズムの演奏に聴き惚れます。ベートーヴェンの後期ソナタを引き継いだような強靭な表現の演奏です。シューベルトのソナタにベートーヴェン的な要素があったとは驚きです。右手の飛躍するような指の動きが見事な音型を構成していきます。河村尚子のこれまでの演奏はテンポのよいノリのある演奏でしたが、今日は強いダイナミックな演奏が印象的です。長大な楽章は見事なテクニックに裏打ちされた重厚な音楽表現に聴き入っているうちに終わります。圧巻だったのは第2楽章。憧れを秘めたシューベルトの魂の声が聴こえてきます。重層的にベートーヴェンの後期ソナタ、あたかも《嘆きの歌》も聴こえるかのごとくです。うーん、これは・・・ベートーヴェンの音楽をアウフヘーベンしたかのごとき、シューベルト像です。河村尚子が弾き継いだベートーヴェン・シリーズの延長線上にこのシューベルト・プロジェクトをイメージしたのでしょうか。こういう独自性のある音楽作りができるとは、やはり、河村尚子は只ものではありませんね。もっとも、それは諸刃の刃。賛否両論あるでしょう。ともあれ、第2楽章は感涙の素晴らしい演奏でした。第3楽章は実に見事に軽やかな演奏。河村尚子の個性が活きます。第4楽章はまた重厚な演奏で、ドイツ流に成長した証しを聴かせてくれます。実に充実したピアノ・ソナタ第20番の演奏でした。

休憩後、即興曲集 D 899 Op.90より、第3番です。さざ波のようなパッセージが抒情的なロマンを紡いでいきます。本当に美しい音楽が現出します。心の中に軌跡を残しながら、音楽が通り抜けていきます。
そして、間をあけずに、この即興曲を序奏のような形にして、シューベルトの最高傑作、ピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調 D 960が始まります。まさに完璧なテクニック、完璧なアーティキュレーションの演奏です。が、しかし・・・美しい音楽は確かに聴こえてきますが、何故か、心に響いてきません。おかしいなと思っているうちに、意識から音楽が離れていきます。断片的に音楽が聴こえてきて、それは確かに素晴らしい演奏に思えますが、すーっと心を通り過ぎていくのみ。そのうちに長大な楽章が終わります。第2楽章はロマンに満ちた音楽が始まります。素晴らしい出だしです。しかし、これもすーっと心をすり抜けていきます。明らかにsaraiの集中力は前半で使い果たしたのかもしれません。
第3楽章は軽やかな音楽が展開されていき、短めに終わります。第4楽章はシューベルト的な世界からベートーヴェン的な世界に展開し、そして、素晴らしいコーダで高潮します。最後にようやくsaraiの集中力も戻り、感銘の残る演奏を味わうことができました。

河村尚子の描くシューベルトの世界。田部京子のシューベルト像とは別のところを志向していますが、完成度の高い演奏でした。いろいろなシューベルトの解釈があって、しかるべしでしょう。色んなことも書きましたが、大変、満足したリサイタルの一夜になりました。
今年はこれから、このシューベルトのピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調 D 960をアファナシエフ、ピリス、田部京子で聴く予定です。名人たちが色んなシューベルト像を聴かせてくれることでしょう。今日はその第1弾でした。


今日のプログラムは以下です。

 河村尚子 ピアノ・リサイタル シューベルト プロジェクト第2夜

  ピアノ:河村尚子

  フランツ・シューベルトの
   「楽興の時」より 第3番 ヘ短調 D 780/3 Op.94-3
   「3つの小品」より 第3番 ハ長調 D 946/3
   ピアノ・ソナタ第20番 イ長調 D 959

   《休憩》

   即興曲集より第3番 変ト長調 D 899/3 Op.90-3
   ピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調 D 960

   《アンコール》
    シューベルト:楽興の時 Op.94 D780より第6番
    シューベルト:楽興の時 Op.94 D780より第2番


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目の「楽興の時」の第3番は以下のCDを聴きました。

 田部京子 2002年10月6日~8日 笠懸野文化ホール セッション録音

文句なく、美しい演奏です。


2曲目の「3つの小品」は以下のCDを聴きました。

 田部京子 1993年10月20~22日 秋川キララ・ホール セッション録音

しみじみとした美しい演奏です。


3曲目のピアノ・ソナタ第20番は以下のCDを聴きました。

 田部京子 1997年10月7,9,10日 サラマンカ・ホール(岐阜) セッション録音

さすがの素晴らしい演奏です。


4曲目の即興曲第3番は以下のCDを聴きました。

 田部京子 1997年10月7,9,10日 サラマンカ・ホール(岐阜) セッション録音

何とも聴き惚れます。


5曲目のピアノ・ソナタ第21番は以下のCDを聴きました。

 田部京子 1993年10月20~22日 秋川キララ・ホール セッション録音

最高の素晴らしい演奏です。



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       河村尚子,  

河村尚子、充実したシューマンのピアノ協奏曲 with 読売日本交響楽団メンバー@都筑公会堂 2022.8.29

横浜みなとみらいホールは現在、改修工事のため、長期休館期間中(~2022年10月)ですが、その間、横浜市内各区のホールや公会堂等の文化施設を巡り、豪華ソリストとホールにゆかりあるオーケストラメンバーと共に贈る「横浜18区コンサート」を開催しています。 なかなか、面白そうな企画が続いているため、saraiも横浜市民の一人として、聴いてみることにして、今日がその3回目です。

今日は第Ⅱ期で、センター南にある都筑公会堂に初見参。604名収容の中規模のホールです。横浜のほかの区と同様に立派な施設です。横浜市営地下鉄のセンター南駅から6分ほど歩いて、都築区総合庁舎の建物の1階にあります。

今日の演奏ですが、無論、ピアノの河村尚子がお目当てで、昨日の読響とのブラームスのピアノ協奏曲第2番に引き続いて、素晴らしいシューマンのピアノ協奏曲を聴かせてくれました。

そのシューマンのピアノ協奏曲は今日のコンサートの最後に演奏されました。
初演では妻のクララがピアノを弾いたそうです。そして、シューマンは作曲にあたり、クララの助言をかなり取り入れたそうです。シューマンの死後もクララはヨーロッパ中のコンサートでこの曲を弾き続けて、その普及に務めたと言われています。だからというわけではありませんが、この曲は女性ピアニストに似合うような気がします。古い録音ですが、saraiはクララ・ハスキルの演奏を好んでいます。今日の河村尚子はクララ・ハスキル・ピアノコンクールで優勝した経歴を持ちます。

冒頭、弦楽五重奏とピアノの劇的な演奏の後、通常はオーボエで第1主題が奏されますが、今日は代わりにヴィオラが演奏します。クララの名前に由来するC-H-A(ド-シ-ラ)の音型に基づく第1主題です。この主題は全楽章を貫き、循環形式のような構成になっています。河村尚子がその主題を美しい響きで歌い上げます。昨日のブラームスのような緊張感はなく、室内楽のサポートを受けて、余裕の演奏です。安定感のあるピアノは終始、美しい響きに包まれています。時折、シューマンのピアノ独奏曲を聴いているようなパートがあり、何故か、嬉しくなります。読響のメンバーは第1ヴァイオリンの長原幸太とヴィオラの鈴木康浩が中心になって、読響のオーケストラのようなアンサンブルを聴かせてくれます。管楽器がないことの違和感はまったく感じさせない充実の演奏です。最後、激しく燃え上がって、第1楽章が終わります。
第2楽章は単調なメロディーが続きますが、室内楽版はオーケストラ版に比べて、その単調さがかえってしみじみとした響きに思えます。まるで最初からピアノ六重奏曲だったように思える充実の演奏です。
そのまま、切れ目なく第3楽章に入っていきますが、そのつなぎの演奏の見事なこと。そして、勢いのある音楽が祝典的に奏でられます。ヘミオラの印象的な演奏やオブリガートの演奏など、聴きどころ満載で河村尚子のピアノを存分に味わわせてもらいました。
正直、ピアノが前面に置かれたオーケストラ版のほうが河村尚子の緊張感ある演奏を聴けたような気がしますが、こういう演奏でリラックスできるのもまあ一興です。

次に河村尚子の演奏を聴くのは来月の紀尾井ホールでのリサイタルです。シューベルトの最晩年のピアノ独奏曲の傑作を聴かせてもらいます。物凄く期待しているリサイタルなんです。

アンコールはバッハの狩りのカンタータを独奏ピアノに編曲したもの。NHK-FM放送の長寿番組『あさのバロック』のオープニング曲ですね。静謐でありながら、どこか楽し気な印象の美しい演奏でした。

前半の読売日本交響楽団メンバー(弦楽五重奏)のモーツァルトとドヴォルザークの美しい演奏。長原幸太の流石のヴァイオリンの美音が響きました。


今日のプログラムは以下です。

 横浜みなとみらいホール出張公演 横浜18区コンサート 第Ⅱ期

  ピアノ:河村尚子
  読売日本交響楽団メンバー(弦楽五重奏)
   ヴァイオリン:長原幸太[コンサートマスター]、川口尭史[首席代行]
   ヴィオラ:鈴木康浩[ソロ・ヴィオラ]
   チェロ:室野良史
   コントラバス:瀬 泰幸


   モーツァルト:アイネ・クライネ・ナハトムジーク K.525より 第1楽章(弦楽五重奏)
   ドヴォルザーク:弦楽五重奏曲 第2番 ト長調 Op.77より 第3楽章、第4楽章
   シューマン(編曲:木村裕):ピアノ協奏曲 イ短調 Op.54(ピアノと弦楽五重奏)

   《アンコール》
    バッハ(ペトリ編):カンタータBWV 208(狩りのカンタータ)第9曲 アリア「羊は安らかに草を食み」


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のモーツァルトのアイネ・クライネ・ナハトムジークは以下のCDを聴きました。

 ハーゲン四重奏団、アロイス・ポッシュ(cb) 1994年4月 セッション録音

小編成ながら、清明な演奏を聴かせてくれます。


2曲目のドヴォルザークの弦楽五重奏曲第2番は以下のCDを聴きました。

 パノハ四重奏団、パヴェル・ネイテク(cb) 1992年3月2-4日 プラハ、ドモヴィナ・スタジオ セッション録音

本場チェコの精鋭による充実の演奏です。


3曲目のシューマンのピアノ協奏曲は以下のCDを聴きました。

 マリア・ジョアオ・ピリス、クラウディオ・アバド指揮ヨーロッパ室内管弦楽団 1997年9月 ベルリン セッション録音

ピリスらしい美しい響きの演奏です。なお、室内楽版の録音は見当たりませんでした。



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       河村尚子,  

河村尚子、ブラームスの瑞々しいロマンを成熟した感性で弾き、その極美の音楽に感動! ヴァルチュハ&読売日本交響楽団@東京芸術劇場 2022.8.28

河村尚子が読響と共演するというので、これは聴き逃がせません。河村尚子は先月、ロト指揮ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団との共演でモーツァルトのピアノ協奏曲第20番を聴いたばかり。あれは優し気なタッチの演奏でもう一つ、しっくりきませんでした。河村尚子は一昨年、この芸術劇場で読響と共演したラフマニノフのパガニーニの主題による狂詩曲の硬質なタッチの素晴らしかった演奏が思い出されます。さて、今日はどうなるでしょう。

先週、初めて聴いたユライ・ヴァルチュハが読響をドライブして、シンフォニックなオーケストラの演奏を繰り広げます。まあ、普通の演奏でしょうか。そして、河村尚子のピアノが入ってきます。綺麗な重音を響かせながら、ブラームスの瑞々しいロマンを歌い上げるような見事な演奏にぐっと惹き付けられます。実はsaraiは昔から、ブラームスの音楽の中でピアノ協奏曲は苦手。それも第1番は第2番よりも苦手だったんです。今日は河村尚子の演奏がすっと心に入ってきます。この曲はこんなにロマンに満ちた曲だったんでしょうか。実にブラームスの本質を突いたような素晴らしい演奏が続きます。抒情に満ちたパートはもとより、豪快なダイナミズムも素晴らしい演奏です。長大な第1楽章は終始、河村尚子のピアノの魅力に魅了されながら、聴き入りました。そもそも、河村尚子のピアノの演奏が始まってからは、読響の演奏も河村尚子のピアノに支配されたかのごとく、見事にシンクロしていました。最高に素晴らしかったのは第2楽章の演奏です。冒頭のオーケストラパートは既に河村尚子モード。そして、河村尚子の宗教的でかつ夢見るような美しいピアノの演奏が繰り広げられて、まさに法悦の境地です。特に高域の印象的なパートの演奏には魅惑されます。最高の美音です。ある意味、不思議な魅力に満ちた音楽ですが、完璧を超えたような河村尚子の演奏でした。そして、第3楽章。河村尚子の決然としたピアノで瞑想的な気分を払いのけて、音楽は突進していきます。抒情的なロマンと若々しい勢いの高潮が交錯しながら、音楽は高みに上り詰めていきます。素晴らしいフィナーレ。あまりの感動にsaraiはもう泣き出したいような気分になりました。
河村尚子のこれまで聴いた演奏の中で最高の演奏でした。彼女も成熟の域に上り詰めてきたようです。今後も彼女のピアノは聴き逃がせませんね。そうそう、実は明日も聴くんです。明日は読響の精鋭メンバーによる弦楽五重奏とシューマンのピアノ協奏曲の室内楽版を聴きます。今日のブラームスの第2楽章は恩人であるシューマンへの追悼の曲だと言われています。シューマンとブラームス、切っても切り離されない2人。その代表作を連日、絶好調の河村尚子で聴けます。さらに来月はロマン派の音楽を切りひらいたシューベルトの最後の2つのピアノ・ソナタを河村尚子のリサイタルで聴きます。ロマン派の音楽に傾倒していく河村尚子・・・とってもいいです!
あー、今日のアンコール曲はブラームスの最後のピアノ曲、作品119の美し過ぎる間奏曲でした。なんと魅惑的な演奏だったんでしょう。

うー、後半のメンデルスゾーンについて書く気分ではありません。美しい読響のアンサンブルは明るい響きでメンデルスゾーンにぴったり。若き指揮者ユライ・ヴァルチュハの瑞々しい感性で実に郷愁あふれる「スコットランド」でしたが、それ以上は触れないでおきましょう。何と言っても前半のブラームスが素晴らし過ぎました。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:ユライ・ヴァルチュハ
  ピアノ:河村尚子
  管弦楽:読売日本交響楽団  コンサートマスター:林 悠介(ダブルコンマス、長原幸太)

  ブラームス:ピアノ協奏曲第1番 ニ短調 Op.15
   《アンコール》ブラームス:4つのピアノ小品 Op.119から、 第1曲 間奏曲 ロ短調

   《休憩》

  メンデルスゾーン:交響曲第3番 イ短調 Op.56「スコットランド」



最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のブラームスのピアノ協奏曲第1番は以下のCDを聴きました。

  アンドラーシュ・シフ(ピアノ:ブリュートナー c.1859、指揮)、エイジ・オブ・インライトゥメント管弦楽団 2019年12月19-21日、ロンドン、アビー・ロード・スタジオ セッション録音
  エレーヌ・グリモー、クルト・ザンデルリンク指揮ベルリン・シュターツカペレ 1997年 ベルリン、シャウシュピールハウス ライヴ録音

シフの最新録音、期待しましたが、音楽的には文句なしですが、何分にも、いつものベーゼンドルファーの美しい響きが聴けずに、1859年のブリュートナーの痩せた響きでは、シフの大ファンであるsaraiもお手上げ。耳直しにグリモーの旧盤を聴きました。これは素晴らしいピアノの響きのブラームスに満足。


2曲目のメンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」は以下のCDを聴きました。

 オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団 1960年1月22,25,27,28日、アビー・ロード・スタジオ セッション録音
 
クレンペラーの指揮なので、さぞや重厚感のある演奏と思いきや、女性的とも言っていい抒情に満ちた美しい演奏に魅了されました。さすがに巨匠は引き出しが多いですね。この曲の決定盤でしょう。



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       河村尚子,  

待ちわびた天才指揮者ロトの異形のブルックナー@東京オペラシティコンサートホール 2022.7.3

今、一番注目している指揮者はクルレンツィスと今日、聴くロトです。コロナ禍がなければ、一昨年のウィーン遠征でロトがウィーン交響楽団に客演して、ウェーベルン/ベルク/シェーンベルクを聴かせてくれる筈でした。それ以来、待ちに待ったロトが来日してくれました。今回はレ・シエクルではなく、ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団を帯同しての来日です。

まずは主役は我らが河村尚子。今日を皮切りに来月、再来月にかけて彼女のコンサートが連続して聴けます。今日は彼女にしては珍しい曲目、モーツァルトのピアノ協奏曲第20番です。冒頭のオーケストラは抑えた感じの入りです。そして、河村尚子がまろやかな響きでピアノを弾き始めます。もっと切れのよい演奏を想像していましたが、ぴーんと張り詰めたような響きではなく、美しい響きではありますが、優し気なタッチです。オーケストラもデモーニッシュな演奏ではなく、ごく普通のモーツァルトです。これはこれでいいでしょう。終始、ニ短調の思い詰めたような雰囲気はなく、優し気なモーツァルトの演奏でした。不満もありませんが、特別な感銘もないという中道を行くような演奏でした。

次はいよいよ、注目のブルックナーの交響曲第4番 《ロマンティック》の1874年第1稿による演奏です。あらかじめ、予習しておいたので、驚きはしませんが、やはり、いつも聴く第2稿の演奏とは大きく異なるので、何かしっくりしません。saraiとしては第2稿のほうがよいと思いますけどね。演奏はロトがきっちりとオーケストラの響きを鍛え上げた圧巻のブルックナーです。特にトゥッティの凄まじい響きはさすがにドイツの名門オケだけのことはあります。金管は凄いです。ブルックナーの交響曲第4番 《ロマンティック》の1874年第1稿は異形のブルックナーの感です。珍しいものを聴いたという感懐はありますが、もうひとつ、心に響いてこなかったのが残念です。これも聴き慣れれば、普通に聴けるのかもしれませんが・・・。

明日は会場をサントリーホールに移しての公演を聴きます。シューマンの交響曲第3番《ライン》が楽しみです。


今日のプログラムは以下のとおりです。


  指揮:フランソワ=グザヴィエ・ロト
  ピアノ:河村尚子
  管弦楽:ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団

  モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K466
  《アンコール》シューベルト:楽興の時 第3番 D780-3

  《休憩》

  ブルックナー:交響曲第4番 変ホ長調《ロマンティック》(1874年第1稿)


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のモーツァルトのピアノ協奏曲第20番を予習したCDは以下です。

  田部京子、下野竜也指揮紀尾井シンフォニエッタ東京 2012年3月14日-15日 上野学園 石橋メモリアルホール セッション録音

田部京子の安定したピアノの響きが心に沁みます。


2曲目のブルックナーの交響曲第4番 《ロマンティック》(1874年第1稿)を予習したCDは以下です。

  ゲルト・シャラー指揮フィルハーモニー・フェスティヴァ 2021年7月25日 ドイツ、バイエルン州、エーブラハ、旧エーブラハ大修道院付属教会 セッション録音

2024年のブルックナー生誕200年に向けて、ブルックナーの交響曲全バージョン録音を刊行中のゲルト・シャラーとフィルハーモニア・フェスティヴァによる演奏です。この第1稿は初めて聴くので、面くらいました。これって、本当に交響曲第4番なのって感じです。演奏自体は美しいものです。



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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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《あ》さん、saraiです。

結局、最後まで、ご一緒にブッフビンダーのベートーヴェンのソナタ全曲をお付き合い願ったようですね。
こうしてみると、やはり、ベートーヴェン

03/22 04:27 sarai

昨日は祝日でゆっくりオンライン視聴できました。

全盛期から技術的衰えはあると思いましたが、彼のベートーヴェンは何故こう素晴らしいのか…高齢のピアニストとは思えな

03/21 08:03 

《あ》さん、再度のコメント、ありがとうございます。

ブッフビンダーの音色、特に中音域から高音域にかけての音色は会場でもでも一際、印象的です。さすがに爪が当たる音

03/21 00:27 sarai

ブッフビンダーの音色は本当に美しいですね。このライブストリーミングは爪が鍵盤に当たる音まで捉えていて驚きました。会場ではどうでしょうか?

実は初めて聴いたのはブ

03/19 08:00 

《あ》さん、コメントありがとうございます。
ライヴストリーミングをやっていたんですね。気が付きませんでした。

明日から4回目が始まりますが、これから、ますます、

03/18 21:44 sarai

行けなかったのでオンライン視聴しました。

しっとりとした演奏。弱音はやはり美しいと思いました。
オンラインも良かったのですが、ビューワーが操作性悪くて困りました

03/18 12:37 

aokazuyaさん

コメントありがとうございます。デジタルコンサートホールは当面、これきりですが、毎週末、聴かれているんですね。ファゴットのシュテファン・シュヴァイゲ

03/03 23:32 sarai
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