なかでも、saraiが注目したのは、R・シュトラウスの楽劇「サロメ」です。
今、録画を見終わって、感動という言葉では正しくないと思い、言葉を探しました。
実に圧倒されたというのが一番、近い表現かなと思います。
これまでも「サロメ」は生でこそ見ていませんが、ビデオでは見てきました。そして、今回の「サロメ」は久しぶりに見た「サロメ」でした。
期待はしていましたが、正直、この作品がこれほどとは考えていませんでした。
R・シュトラウスの楽劇といえば、「ばらの騎士」、「ナクソス島のアリアドネ」が大好きで繰り返し、生でもビデオでも見てきました。
が、「サロメ」の真髄を今日、初めて知りました。R・シュトラウスの楽劇でも先ほどの2作と並んで素晴らしい傑作です。
今回の公演は以下の顔ぶれです。
サロメ (ヘロディアスの娘):カリタ・マッティラ
ヨカナーン (預言者):ユーハ・ウーシタロ
ヘロデ (ユダヤの領主):キム・ベグリー
ヘロディアス (領主の妻):イルディコ・コムロージ
ナラボート (若いシリア人、護衛隊長):ジョゼフ・カイザー
管弦楽:メトロポリタン歌劇場管弦楽団
指揮:パトリック・サマーズ
演出:ユルゲン・フリム
以上の顔ぶれで2008年10月11日にメトロポリタン歌劇場での公演でした。
1年少し前ですね。
前半はサロメとヨカナーンの一方的な(サロメの)愛の歌です。
マッティラとウーシタロの歌唱が素晴らしい。息つぐ暇がないほど、切迫感に満ちています。メロドラマといえば、メロドラマ。
求愛するサロメ。頑なに拒絶するヨカナーン。
R・シュトラウスの気品に満ちた美しい音楽に乗って、切実なドラマが進行し、見る者をぐいぐい惹きつけます。
マッティラの歌唱は声の美しさというよりも、人間の肉声に気迫がこもり、直接、こちらの感情を揺さぶるかごとくです。
中間部は有名なサロメの7つのヴェールの踊りがあり、マッティラも思い切った演技。ここでも彼女の気迫を感じます。後半につながる重要な場面ですが、どんどん盛り上がります。
そして、いよいよ、後半。ヨカナーンの首を銀皿にのせて、錯乱するサロメ。
これはまるで、R・シュトラウスが描いた狂乱の場です。
マッティラが狂ったように歌い、叫びます。
最初に書いたように、こちらはひたすら圧倒され続けます。
マッティラがサロメか、サロメがマッティラか、人間が生の感情を肉声にのせて、聴く者に迫ってきます。聴く者も正面から向き合わないととても聴いていられません。
そして、いきなり、じゃじゃじゃーん、じゃじゃじゃーん、じゃじゃじゃーん・・・でジ・エンド。
はっと我に返り、思わず、saraiも椅子を立ち、液晶スクリーンに向かい、スタンディングオベーション。
だって、これだけ、全身全霊を傾けた歌唱に対しては、たとえ、画面越しとはいえ、十分な敬意を払わなければ、オペラファンとは言えませんものね。
カリタ・マッティラ、恐るべきソプラノです。
そして、作曲したR・シュトラウス、これも恐るべき作曲家。
もちろん、原作を書いたオスカー・ワイルドも恐るべし。
でも、正直、こちらも疲れました!!
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