いろんな経緯があり、3月6日(土)にドゥ・ビリー指揮のウィーン放送交響楽団のコンサートを東京オペラシティに聴きに行きました。
当初、ウィーン放送交響楽団の来日コンサートはパスするつもりでした。
というのも、みなとみらいホールでのコンサートは、ベートーヴェンの運命と田園というプログラム。いくらなんでも、こんな名曲コンサートはご勘弁をという感じでパス。
ところが、ウィーン在住のはっぱさんの強力なご推奨があり、かなり、心が揺れました。
そして、そこにタイミングよく、Eプラスから、50%割引の得チケのメール。
しかもプログラムを見ると、みなとみらいホールのプログラムとは異なり、はっぱさんがウィーンのチャリティコンサートで聴いたプログラムと同じ。
こりゃ、行くしかないでしょうって思い、チケットを購入した次第。
ちなみに東京オペラシティでは翌日もコンサートがあり、この日のプログラムはsaraiが敬遠した運命と田園です! なんだかね・・・
ともあれ、saraiが聴いたのは次のプログラム。
ファリャ:バレエ音楽「三角帽子」第2組曲
ロドリーゴ:アランフェス協奏曲(ハープ版)
ハープ:グザヴィエ・ドゥ・メストレ
ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
ドビュッシー:交響詩「海」
スペイン・フランス系の曲目で、名曲揃いではありますが、ドイツ系好みのsaraiには少し、苦手なものもあります。
とりあえずは、事前の予習ですが、なんと、「三角帽子」のCDがない。
あせって、ネットで購入。あまり、最近のCDにはよさそうなものがなく、相当に古い往年の名演奏、アンセルメ+スイス・ロマンド管弦楽団のCDを選択。
ところがこのCDは素晴らしかった。やはり、よく昔聴いていたこのコンビの演奏は歯切れがよく、バレエ音楽、スペイン系の曲にぴったり。しかも、1960年頃の録音にもかかわらず、見事な96ビットによるデジタル化が成功し、素晴らしい音質。
久々に聴いた「三角帽子」はすっかり楽しめました。
アランフェス協奏曲はもちろん、ギター演奏のCDしか持っていないので、定番のイエペス盤で予習。
さて、コンサートですが、まずはその「三角帽子」。
アンセルメの演奏と同様に歯切れのよい演奏。特に弦のシャープな響きがこの曲にぴったりです。管楽器も弦との調和がよく、バランスのよいアンサンブル。
ウィーン・フィルのように美の極致に酔わせるとか、名人芸を披露するというのではなく、素直にすっきりした美しい響きで調和のとれた演奏という感じで好感が持てます。
この日の曲目はスペイン・フランス系ということもありましたが、音色も明るく、目をつぶって聴いていると、ウィーンのオーケストラというより、まるでパリ管弦楽団の演奏を聴いている錯覚にとらわれる感じです。
往年の絶頂期のアンセルメ+スイス・ロマンド管弦楽団に優るとも劣らないという演奏でした。
次はハンサムなメストレがハープ独奏のアランフェス協奏曲。ハープ版のアランフェス協奏曲を聴くのはもちろん初体験。
第1楽章はハープ独奏から始まります。興味駸々で聴き始めましたが、さすがに違和感があります。意外に音量が小さく、ギターと同程度。音色もギターのような響きではありません。特にギターの左手がフレットを擦るシュッという雑音がないのが何故か寂しい。当たり前ですが、これはギター協奏曲ではなく、ハープ協奏曲ですね。
そう思いながら、第1楽章が終わり、いよいよあの超有名な第2楽章。別名、「恋のアランフェス」なんて言いますね。
これはなかなか聴かせました。楽章全体を哀調を込めた響きが包み込みます。ハープ演奏も第1楽章の感じとがらっと変わり、よく弾き込んでいます。特筆すべきは大活躍するコールアングレです。ぐっと抑えた渋いとも言える演奏で、逆に聴衆を引き込みます。
弦楽器を中心としたアンサンブルもすっきりした透明感で曲を盛り上げます。
第3楽章はまた、よくも悪くもハープ協奏曲。
第2楽章の感じで第1・第3楽章もいければ、ハープ版もなかなかよいのですが、これはハープ独奏者の問題。オーケストラは十分にアランフェスの世界を表現していたと思います。
ここで、ハープのアンコールが2曲。
ファリャ:歌劇《はかなき人生》より ...「スペイン舞曲」第1番
タレガ:アルハンブラ宮殿の思い出
ギターつながりでのアンコール曲ですね。基本的にギター曲って、ハープで弾けるんですね。妙な感心。
ここで休憩にはいり、休憩後はドビュッシー。
まず、牧神の午後への前奏曲。
始めのフルートの独奏、よく響いていました。このオーケストラ、なかなか木管がうまい。続いて、オーケストラですが、全体を通して、あまり、けだるい感じにはならず、すっきりした表現。これはこれで納得のいく演奏です。思いのほか、あっという間に曲が終わったと思いました。これはいい意味でこの有名な曲を新鮮に聴かせたということです。なかなかの好演です。
最後は交響詩「海」。よい曲だとは思いますが、聴くたびに結構、その単調さ故に退屈し、眠くなることも暫しというのも事実。
この日も演奏も少し、その気配もありましたが、響きの美しさと正確な演奏でかなり救われました。実演ではこれまでで一番、聴けました。
全体を通して、このコンビはバーンと何かインパクトのあるものを聴衆に押し出してくるのではなく、聴衆自身がその演奏のなかにあるものを主体的にくみ取るというスタイルなのかなと感じました。実際、演奏のレベルは高く、中身も十分にあるので、あとは聴衆自身の感性と素養の問題でしょう。
そんなことを考えながら、このコンビはベルリオーズはどう演奏するのか、さらにはR・シュトラウスはどうなんだと興味は尽きないところ。
とか何とか、拍手が続く中、アンコールが2曲。
ビゼー:カルメン前奏曲
ヨハン・シュトラウス:ポルカ「雷鳴と電光」
いやはや、カルメンは「海」のような微妙なニュアンスの揺れ動く曲とは異なって、明快なメロディーが思いっきり、前面に飛び出してきます。このような名曲アワーのような曲の演奏が実にうまい。心の底から、楽しめる演奏です。
で、最後はやっぱり、ウィーンかって感じですね。自由奔放に弾きまくりました。これを聴くと、やっぱり、ウィーンのオーケストラですね。
saraiは7月にウィーンに行き、アン・デア・ウィーン劇場でオペレッタ「こうもり」を聴きますが、はっぱさん情報では、オーケストラはこのウィーン放送交響楽団だそうです。「こうもり」では舞踏会の場面でよくこのポルカ「雷鳴と電光」を演奏しますが、また、これを聴くことになるのでしょうか?
ウィーン・フィルとはまた一味も二味も違った別物のウィーンのオーケストラを聴きました。うーん、ウィーンの音楽文化は深く、そして広い。
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この記事へのコメント 1, Njegusさん 2010/03/07 15:00
saraiさま
私も「はっぱ」さんのブログを見てあわてて2月22日東京文化会館でのRSOの公演(saraiさまが聴かれたのと同じプログラム)の切符を買って聴きに行った口です。スペインとフランスの作曲家の作品だけのプログラムも良かったですが、ハープでのアランフェス協奏曲、素敵でしたね。7月15日のTheater an der Wien「こうもり」でのビリー+RSOの演奏が楽しみになりました。
ところで、バイエルンのフェストシュピーレの7月10日の「トスカ」立見券と12日の「悪魔たちの悲劇」の切符を申込んでいるのですが、まだなんの返事も来ませんが、取れることを期待しています。
7月9日Essen Aalto Theaterでの「チャールダシュの女王」の切符は来週くらいには発売されるようで待っているところです。
2, saraiさん 2010/03/07 23:14
Njegusさん、たびたびのコメントありがとうございます。
どうも、Njegusさんとは聴くものがかぶりますね。好みが似ているんでしょうね。
アン・デア・ウィーン劇場の「こうもり」楽しく聴けそうですね。
バイエルンですが、「フィガロ」でさえ、予約がおかしく、メールを送っていますが、反応が悪くて困っています。とりあえず、「フィガロ」のそこそこの席を確保したという連絡だけでももらったので、よしとすべき状況かもしれません。
あんまり、毎日オペラを見るなという神のお告げかも???
Njegusさんも頑張って、チケットを予約できることをお祈りします。
3, はっぱさん 2010/03/08 10:14
Sarai さま、
Njegus さま、
バタバタしていて御礼を書くのが遅くなってごめんなさい。
強力に推した手前、「何だ、この!」とか怒っていらしたら、と
心配していましたが(ほら、音楽って、主観の問題ですし)
お気に召していただけたようでホッとしています。
アンコール、やっぱりやりましたか (^^)v
ウィーンでも、カルメンとポルカを演奏したので
あ、これ、日本公演のアンコール曲だな、と
一人、ニヤニヤしておりました。
すっきりした音で、ヘンな思いこみのない誠実なオーケストラですが
ポルカを弾かせると、やっぱりウィーンの音を出すんですよね(笑)
このオーケストラが本領を発揮するのは現代曲の初演だったりするのですが、これを聴けるのは、まぁ、ウィーンにいる特権という事で f(^^;)
4, saraiさん 2010/03/08 10:56
はっぱさん、saraiです。
当ブログ、初登場、ありがとうございます。
これから、ご報告を書こうと思っていた矢先でした。
こちらこそ、色々な情報へのお礼が遅れて、ごめんなさい。
こちらも昨日の東フィル定期演奏会とかばたばたしていました。
アンコールですが、配偶者の感想はカルメンはともかく、ポルカは何て荒っぽい演奏なのって驚いていました。
それまでの精妙な演奏が吹き飛び、まあ、乗りまくりの演奏でウィーン丸出し。
確かに唖然としましたが、楽しかったですよ。ウィーンでもあんな演奏をして、ウィーンっ子は驚かなかったんですか?
現代音楽の初演はさすがに東京でも客が集まらないでしょう。それはウィーンにお任せ。はっぱさんにお任せってことで・・・
5, Njegusさん 2010/03/09 16:10
saraiさま
昨夜から今日にかけ、Essenの「チャールダシュの女王」の切符が取れたのと、バイエルン・オペラフェストシュピール事務局から「トスカ」立見席券と「悪魔の悲劇」の券を郵送してきまして、これで、7月の旅行で予定しているオペレッタ5本、オペラ2本はとりあえず見れることになりました。(立見席があまりにもひどいようならRegensburgの「ジプシー男爵」も考えてみますがどんなものでしょうか?)途中13,14両日はザルツブルクからGrossglocknerとHalstattあたりに日帰りで足をのばしてみる予定です。なにしろ、年寄りの一人旅なのでこのあたりが精いっぱいというところです。
自分のことばかり書きまして大変失礼いたしました。
6, saraiさん 2010/03/09 21:33
Njegusさん、saraiです。
チケット揃って、よかったですね。バイエルンの立見席って、どんなのでしょう。ウィーンみたいでは? とりあえず、途中まで見て、疲れたら、帰るつもりでいいんじゃないでしょうか。帰れないほど、いい公演なら、それで結構だし。
こちらはまだバイエルンは2晩(フィガロ、トスカ)とも未決着です。
事務局の反応が鈍くて困ります。
ザルツブルグはニアミスですね。こちらはミュンヘンに向かう途中。Njegusさんはウィーンに向かう途中ですね。
お互い、楽しみですね。
7, ハルくんさん 2010/03/12 07:25
saraiさん、こんにちは。ご無沙汰して失礼しました。
自分もビリー/ウィーン放送交響楽団はパスしましたが、面白そうでしたね。聴けば良かったな。でも僕ならやはり「運命」「田園」ですね。(笑)
バイエルン歌劇場は3年前に行って「神々の黄昏」を聴きました。本場の劇場に毎年行けるsaraiさんが実に羨ましいですよ。今年の夏も現地レポートを楽しみにしていますね。
8, saraiさん 2010/03/12 09:32
ハルくんさん、saraiです。
こちらこそ、ご無沙汰しています。
マーラーの4/5/6番はどれも好きな曲で、あんまり思いがありすぎで、うかつなことを口走りそうで、コメントを自粛していました。
それにマーラーって、やっぱり、実演で聴くのが楽しいです。
また、お邪魔させていただくので、よろしくお願いします。
「運命」「田園」は、プログラムを見て、日本人の聴衆を舐めてるんか!って、怒り狂ったのですが、考え過ぎですかね。
それにそもそも、saraiは「運命」は子供の頃にクラシックの世界に誘った記念碑的曲はともかく、「田園」は生ぬるくて、とても相性が悪い。
7月の現地レポートはお楽しみに。オペラ・オペレッタのみですが。
テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽