今年、来年はマーラーイヤーで世界中でマーラーのコンサートが盛んですが、マーラーといえば、この東京都交響楽団が今は亡きガリー・ベルティーニの指揮の下、5年間にわたって、横浜・埼玉で10回のマーラー・チクルスを続けたことを思い出します。saraiもみなとみらいホールで全10回を聴きとおし、素晴らしい思い出になっています。実はマーラー・チクルスに先立って、前年にみなとみらいホールでマーラーの5番のコンサートも聴いているので、11回のシリーズだったともいえます。そして、この11回で最高の演奏は最初の番外の5番と最後の9番だったというのは、何とも不思議なような、そして必然だったような気もします。最後の9番は結果的にベルティーニの日本でのラストコンサートになりました。もともと、ベルティーニの音楽監督最後のコンサートではありましたので、東京都交響楽団も聴衆も感無量で聴いていたわけですが、それがマーラーの9番とくれば、すべて舞台は整っていたわけで、伝説の感動のコンサートになったわけです。今でも、時折、このときのライブCDを聴いて、しみじみとしています。ベルティーニは本当に素晴らしいマーラー指揮者でした。そして、その指揮に十分、応えていた東京都交響楽団も素晴らしいオーケストラでした。saraiも日本のオーケストラをこのマーラー・チクルスで再認識しました。
前置きが長くなりましたが、それから、大分、時間が経ちましたが、今年、マーラーイヤーということで、東京都交響楽団にやはりマーラーを得意にするインバルが音楽監督になったことを契機に、再び、このオーケストラでマーラーを聴いてみようということで、今年から、定期演奏会の会員になりました。
で、今日がその1回目のコンサート。
まだ、お目当てのインバルのマーラーは6月の第2番「復活」までお預け。
今日は何故か、イギリス音楽のスペシャリスト?のジェームズ・ジャッドの指揮でイギリス音楽の特集です。
プログラムは以下のとおりです。
ヴォーン・ウィリアムス:アリストファネス風組曲「すずめばち」から序曲
ウォルトン:ヴィオラ協奏曲
ヴィオラ:今井信子
アンコール ヘンデル:歌劇「リナルド」よりアルミレーナのアリア
「私を泣かせてください」(ヴィオラ独奏版:細川俊夫編曲)
エルガー:交響曲第1番
最初の「すずめばち」序曲ですが、たまたま、ヴォーン・ウィリアムスのオーケストラ曲全集のCDで聴いてはいましたが、ほとんど、記憶に残っていません。演奏される機会は珍しいですね。
この曲は最初、すすめばちの羽音を模した弦楽だけでの合奏で始りますが、久しぶりに聴く東京都響の弦楽セクションの響きは流石に素晴らしい。多分、日本のオーケストラでは最高のレベルではないでしょうか。続く主部は、ギリシャの作家アリストファネスの喜劇「すずめばち」の劇音楽の序曲ということで、ウィットに富んだ感じの曲が展開します。それでも、イギリスの作曲家の面目躍如、イギリスの田園風景を思わせる曲想で心がなごまされます。このあたりは、指揮者ジャッドの的確な曲作りを感じます。それにしても、マーラーで感銘を受けた東京都響の響きはイギリス音楽でも、十分、その美質を発揮しています。
続いて、ウォルトンのヴィオラ協奏曲ですが、この曲自体以前に、まだ、ウォルトンの曲は何も聴いたことがありません。もちろん、作曲家の名前自体は知っているし、ヴァイオリン協奏曲などのCDがあるのは知っていますが、その程度。あわてて、CDを入手して、俄か勉強。CDはプレヴィン指揮のロンドン交響楽団でヴィオラがバシュメットというなかなかの組み合わせ。このCDはよい演奏でした。繊細な肌触りを思わせるデリカシーに富んだ演奏です。
で、この日は日本を代表するヴィオラ奏者の今井信子さん。生で聴くのは、初めてです。
意外にあっさりした表現での演奏で始ります。ある意味、無機的とも感じます。
流石に繊細で美しい響きではあります。意識的に、情に流されないように演奏しているのかなと感じます。
情感を内に秘めて、淡々としずやかにこの曲をまとめあげたという印象。1920年代に作曲されたこの曲をロマン性を極力排除した演奏でしょうか。
終楽章でヴィオラのソロの重音が静かに消え去るようにして曲を閉じて、何か心に深いものが残ります。
もう一度、聴いてみたい曲です。
こういう演奏に過大な拍手・喝采は似合いませんね。静かに、静かに、拍手したいものです。
ともあれ、何度も、ステージに呼び戻されて、今井信子さんがアンコール。
テレビでもおなじみのヘンデルの名曲です。
何と、しみじみとした曲・演奏でしょう!!
何も言うことはありません。じっと目を閉じて、心に音楽を沁み渡らせます。
最後は休憩を挟んで、エルガーです。
エルガーといえば、「威風堂々」とか「愛の挨拶」があまりにも有名ですが、それを別にすると、今日の交響曲第1番や第2番、それにチェロ協奏曲あたりはよくコンサートでも演奏される曲になっています。
この交響曲第1番の第1楽章の始めの部分と第4楽章の最後の部分は、「威風堂々」を思わせる大英帝国の栄光を表現したようなゆっくりした行進曲風のメロディーラインで実に分かりやすく、人々を鼓舞すること間違いなしといったところです。これを実に指揮者がうまく展開します。まるで、毎年夏にイギリスで開催されるプロムス音楽祭、その最後を飾るロイヤル・アルバート・ホールでのラスト・プロムスみたいだなって、思っちゃいました。この会場にイギリス人がいれば、きっと興奮するんじゃないでしょうか。
でも、saraiが一番、感銘を受けたのは、第3楽章の美しい響きです。弦楽器を主体にしたとても美しい曲に包まれて、幸福感に浸ることができました。
ちょうど、座席がステージに向かって左側で、真正面が第1ヴァイオリンのセクションです。それも前から4列目で、もろに第1ヴァイオリンの美しい響きが耳にはいってきます。
第3楽章はその第1ヴァイオリンに魅了されたといってもいいと思います。このオーケストラの第1ヴァイオリンは後列の奏者まで、素晴らしく、きっちりと弾いていることが分かりました。そして、みんなうまい!
これから、1年間、この席で聴けるのは何よりです。きっと、マーラーも素晴らしいでしょう。
イギリス音楽は、そんなにドイツ音楽ほど、演奏される機会はないので、たまには、こういうプログラムはsaraiにとってもありがたいですね。
またしても、上機嫌でサントリーホールを後にしました。
今日はとても満足できるコンサートでした。
↓ saraiのブログを応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね
いいね!
