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マタイ受難曲:ドレスデン聖十字架合唱団+ドレスデン・フィル@みなとみらいホール 2010.12.5

今年はアーノンクールのロ短調ミサ曲に続いて、マタイ受難曲というバッハの双璧ともいうべき大作を聴くことになりました。

今日はみなとみらいホールで演奏は以下です。

 クロイツカントール(音楽監督・指揮):ローデリッヒ・クライレ
 合唱:ドレスデン聖十字架合唱団
 管弦楽:ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団
 福音史家(テノール):アンドレアス・ウェラー
 バス:クラウス・メルテンス
 バス:ヘンリク・ベーム
 ソプラノ:ユッタ・ベーネルト
 アルト:マルグリエット・フォン・ライゼン

マタイ受難曲をライブで聴くのは初体験です。
大変、長大な作品で20分の休憩を入れて、4時間弱もかかります。実際、こんなに長時間集中して聴くのは困難です。前半の第1部は少し集中できずに聴いていました。
それでも、福音史家のウェラーの美声で繊細な表現は素晴らしく、また何といってもドレスデン聖十字架合唱団の少年合唱団の歌声の素晴らしい響きは驚くべきもので、特にコラールの美しさは感動的でした。

マタイ受難曲はキリストが最後の晩餐から、捕らえられ、審問にかけられ、そして、十字架にかけられて、死を迎え、墓に埋葬されるまでの受難の物語を描いた純然たる宗教曲です。
saraiは無宗教でキリスト教信者ではありません。こういう宗教曲をどういうスタンスで聴くかは微妙に難しいところです。まあ、美術でも宗教絵画をどう鑑賞するかという問題と同様ですね。美術の場合は極端に言えば、美しければそれでいいという感じで鑑賞しています。宗教音楽も声楽なしならば、同様に美しければそれでいいというスタンスで聴けます。
が、声楽付きとなるとどうしても歌詞と音楽は不可分となります。人間キリストの苦しみや悩み、それに崇高さを宗教と切り離して、自己と同一化するというスタンスで聴くことにしましょう。

で、休憩後の第2部が物語、音楽のより重要な部分となり、ここは集中して音楽に耳を傾けます。後半自体も長いのですが、バッハの音楽の総決算がぎゅっと詰まっていて、息が抜けません。
後半も少年合唱団のコラールは心を洗われる思いです。バッハの書いた慰めの音楽の優しさが体にしみ通ってくるような純粋な響きです。何度も繰り返し現れる受難のコラールの素晴らしさはなんという深さでしょう。2回繰り返される部分の2回目の少し声を落とした響きの純粋さには心が打たれます。完璧な歌声です。
教会の聖歌隊が少年合唱団なのに納得がいきました。先日のアーノルト・シェーンベルク合唱団の大人の歌声にも優るとも劣らないと感じました。
第2部はソロのアリアも素晴らしいものばかりです。
ああ、その前に福音史家の美しいテノールの歌唱に触れないといけませんね。レシタティーヴォは語りですからメロディアスではないので面白い部分ではない筈ですが、この日の歌唱は美声で語り口がうまく聴き惚れてしまいました。重要なところでのドラマチックな語りも決まっていました。キリストの死のところは思わず、襟を正す気持ちになります。
ソロは特に男声陣がよく、イエスはイエスらしい崇高で気高い歌唱で美しい。柔らかい歌い方にも好感です。もう一人のバスはこれは柔らかい美声。最後のアリアの清々しさはなんとも言えず素晴らしい。
男声3人はこれ以上何も求められないくらいのベストの歌唱でした。
一方、女声陣ですが、ソプラノは純粋で清らかな歌唱でまあ及第点です。
問題はアルト。このマタイ受難曲はミサ曲ロ短調と同様に素晴らしいアルトのアリアがたくさんあります。これが楽しみで聴きに行ったという面も大きいのですが、残念ながら、この日のアルトのライゼンはどうも喉が不調のようで声の滑らかさに欠けます。表現はよかったので、好調な喉だったらと悔やまれます。
ドレスデン・フィルはまあまあですが、弦セクションがドイツのオーケストラとしてはもうひとつでした。これはホールの聴く位置によっても違っていたかもしれません。

総合的には、やはり、マタイ受難曲の肝である合唱の素晴らしさでとても聴き映えのする美しい演奏であったと思います。

今年はバッハの代表作のミサ曲ロ短調、マタイ受難曲の素晴らしい演奏に出会えて、エポックメーキングな年になりました。saraiにとってはバッハイヤーとも言えるほどです。これから、バッハの声楽曲にのめりこみそうな予感がします。



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この記事へのコメント

1, ハルくんさん 2010/12/09 21:56
拙ブログへのコメントをありがとうございました。
いやいや、saraiさんもいらしていたとは知りませんでした。
こちらの記事も読ませていただいて、おおよそ同じ感想だったことが分かりました。やはり少年合唱と福音史家の素晴らしさに尽きますよね。本当に至福のひと時でした。

2, saraiさん 2010/12/10 00:37
当ブログへもコメントありがとうございます。

お互いたまたまご一緒していたコンサートが出来の素晴らしいものでよかったですね。
感想がほぼ同じというのもなんだか嬉しいような、恥ずかしいような。

それにしてもドイツの音楽界のレベルの高さには驚かされます。
来春もミュンヘンで音楽を楽しむ予定を立てているところです。

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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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