ということで今日はご贔屓?にしているピアニストの上原彩子がソロを弾く東京交響楽団のコンサートに出かけました。

会場は池袋の東京芸術劇場です。横浜からは遠いのですがJRの湘南新宿ラインがこんなときには便利です。開演1時間前には池袋に到着し、駅ビルのルミネのレストランの石焼鍋定食で早めの夕食です。面白いものを食べて満足。食欲を満たしたところで今度はコンサート会場に急ぎます。10分少し前には到着。もう結構席が埋まっています。
さて、今日のプログラムは以下ですが、ラヴェル以外はとても珍しい曲が並びます。マニアックな選曲ですが、それでも客席がほぼ満席になっているのは凄い!
パヌフニク:交響曲第3番《祭典交響曲(シンフォニア・サクラ)》
ラヴェル:ピアノ協奏曲ト長調
《休憩》
スタンフォード:交響曲第3番ヘ短調 Op.28《アイリッシュ》
ラヴェル以外は作曲家の名前も聞いたことがありませんでした。とりあえず、CDを探して、スタンフォードの交響曲は聴いてみました。因みにスタンフォードのCDはNAXOSから出ています。
スタンフォードはイギリスの作曲家ですが、いかにもという感じの曲でした。エルガーと同世代の作曲家ということでエルガーといい、ディーリアスといい、ヴォーン・ウィリアムスといい、このスタンフォードも含め、まあイギリス音楽はいい意味でも悪い意味でも古色蒼然たるものがありますね。嫌いってわけではなく、毎年プロムスのラストコンサートはTVで楽しんでいます。古き良きイギリスの自然を懐かしむって感じですね。絵画で言えば、コンスタブルの《干草車》もその代表選手ですね。なかなかこの文化を理解するのは難しいとは思っています。
また、パヌフニクはポーランド出身の作曲家で共産圏からイギリスに亡命して活躍した人らしいです。そういう意味では彼はやはりイギリス系の音楽とは一線を画しています。
今日のコンサートのお目当ては上原彩子なので、それを契機に珍しい音楽に接することができるのはいいことです。これらの曲は多分、今後永久に聴く機会がなさそうですからね。
今日の演奏者は以下です。
指揮:大友直人
ピアノ:上原彩子
管弦楽:東京交響楽団
まず、開演前に指揮の大友直人さんからご挨拶(あるいはプレトーク?)がありました。このコンサートは東京交響楽団の東京芸術劇場シリーズという19年も続いているシリーズだそうですが、今回の107回をもってフィナーレなんだそうです。東京芸術劇場の建物自体が同様に大分古くなったので、今年の3月末でいったん閉館し、1年半ほどかけて大改装するそうです。
で、フィナーレを飾るのがこのプログラムで道理でマニアックというか、意欲的なんですね。
このシリーズをプロデュースしているのが指揮の大友直人さんで選曲も彼の感性に従ってやっておられるとのことです。流石にプロの音楽家はマニアック(意欲的?)だと感心しました。素人のsaraiがまったく知らない作曲家を発掘してきて演奏するんですものね。
最初のパヌフニクの交響曲ですが、これは冒頭から度肝を抜かれました。
オーケストラの4隅にトランペット奏者を配し、延々とこの4人で演奏が続きます。オーケストラの森に響くラッパの音はあたかも森のこだまのようです。ホルンでなくトランペットというのがよかったかも知れません。ファンファーレのような晴れやかさでなく、朗々とただ森閑と響きわたる神々しさです。
次のパートにはいると、今度は抑えた弦楽だけの響きが弱音で続き、森の朝靄が漂っている感じです。そして、それが次第に澄んでくるという雰囲気です。
次は一転して打楽器だけで強い響きを奏で、やっとその後、管楽器群も絡み、弦楽器もはいり、オーケストラ全体でシャープな響きを発します。でもその響きは何か恐ろしいものに追い立てられているような感じで現代の強迫観念を象徴しているかの如くです。このあたりは亡命作曲家としての立場と無縁ではないでしょう。
最後の部分は何と弦楽器のハーモニクスの合奏が続きます。やがて管楽器も絡みながら進行し、フィナーレ。グレゴリオ聖歌のメロディーがベースになっていたようです。
まったくの予備知識なしで聴きましたがそれなりにこの曲の響きが胸に残りました。
昨夜はリタイア後、初めての確定申告の書類作りで明け方まで起きていたので、眠くなるかと思っていましたが、とても眠れるような退屈な曲ではなく、新鮮な響きに満ちた音楽でした。
なお、この曲は各パートがアッタカでつながっており、全体が休みなく演奏されました。古典的な意味での交響曲ではありません。
というところで、いよいよお目当てのラヴェルです。
ピアノが搬入されてきました。どうやら今日はスタインウェイのようです。やったね!
ラヴェルはどちらかというと苦手な作曲家ですが、このピアノ協奏曲は好きな曲です。プロコフィエフと同じカテゴリーに感じてしまいます。実際はプロコフィエフのほうが先鋭的ですが、このラヴェルも新古典的でシンプルとはいえ、新鮮な響きに満ちた曲です。
プロコフィエフといえば、上原彩子のお得意ですが、ラヴェルはどうでしょう。期待してのこの日の公演でした。
固唾を飲んで待っていると、意外におとなしいソフトな演奏でスタート。抑えた感じと言ってもいいかも知れません。それでもピアノのタッチはいつものように粒立ちのよいクリアーなタッチでsaraiの耳の感覚を刺激します。
第1楽章の途中あたりからエンジンがかかり始め、後半は猛烈な打鍵。フィナーレに近くなると低音部の激しいリズムから一気に加速。オーケストラの音がちょっと邪魔ですが彼女のピアノの激しくも美しい響きはちゃんと聴こえました。上り詰めたところで第1楽章は終了。ふーっ・・・
第2楽章、ピアノのソロです。何も言うことはありません。パーフェクトです。こういう叙情的なパートも素晴らしく演奏するようになりました。安定したテンポで叙情的なメロディーを紡いでいきます。強弱の少しの揺れがたまらなく素敵です。こちらは頭を無にして、ただただ、ピアノの響きに身を委ねるのみです。こういう音楽が聴きたくてコンサートに通っているんです。
ピアノのソロにオーケストラが絡んできます。悪いんですが上原彩子のピアノのピュアーな響きに比べてオーケストラの響きはもう少しピュアーにならないものかと思います。ベルリン・フィルならいいだろうなあと思ってしまいます。
saraiの耳はひたすらピアノの響きを追い続けます。
そして、終盤のピアノが分散和音的に細かい動きで鍵盤を駆けめぐる響きの美しいこと、うっとりしてしまいます。何というシャープな動きでしょう。音楽的な感性も素晴らしい。このまま気持ちよく、第2楽章は終了。魅惑されました。
第3楽章、最初から激しく飛ばします。リズムの饗宴です。これぞ上原彩子の真骨頂。これは快感に身を委ねているうちにあっと言う間に終了。ブラボー!
大変満足した演奏でした。が、ラヴェルの協奏曲はちと軽すぎて、あっと言う間に終わり、食い足りない感じが残ったのも事実。腹八分っていうところでしょうか。上原彩子の演奏にはほぼ満足だったんですが・・・
軽くデザートにアンコールでもやって欲しかったんですが、このところ彼女はアンコールなし。残念です。
休憩後、スタンフォードの交響曲。よくもあしくもイギリスの伝統の流れに乗った曲。意外に熱い演奏でおっと思いましたが、それも第3楽章にはいると、まさにイギリスの田園風景でのんびりです。こうなると昨夜の寝不足で頭は空白状態。そういう演奏がいい演奏なんでしょう。
第4楽章はエルガーばりにジャジャーンと盛り上がりますが、saraiの頭は既にお休み状態。
珍しい音楽が聴けてよかったですが、まあこれならエルガーの交響曲を聴いていればいいかなと罰当たりな感想を持ってしまいました。
来週は一転して、ライプツィッヒ・ゲヴァントハウスの来日公演でブルックナーの交響曲第8番という重量級のコンサートを聴きます。
そして、3月の半ば過ぎからはコンサート・リサイタルが目白押しで、その勢いのまま、3月末からはヨーロッパに旅立ちます。ヨーロッパでもオペラ、コンサートをたくさん聴けそうです。音楽好きとしては黄金のシーズンが開幕という気分です。ルンルン・・・
↓ saraiのブログを応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね
いいね!
