とはいえ、今年も、これまで縁がなかったせいでチケットも購入してなかったので、やはり、危うくパスするところでした。しかし、今年は大震災の影響でほとんどの公演がキャンセルになり、新たにプログラムを組み直したそうで、チケットの販売もつい最近でした。
そして、新しいプログラムを見ると、この「熱狂の日」が開催される5月3日~5日の3日間、毎日、庄司紗矢香が登場するようです。毎日でも行きたいところですが、厳選して、今日の午前中のリサイタルに出かけることにしました。なお、3月にキャンセルになったコンサートにも彼女の登場するものがあったので、その代わりといっては何ですが、嬉しい突然のリサイタルです。
朝10時からのリサイタルというのはこれまでのコンサートでも多分、一番早い時間のコンサートです。少し早起きして出かけました。
今日のリサイタルは定員220名のホールなので、ヴァイオリンの音がよく聴こえるだろうという狙いでした。ただ、思ったよりも広いホールでしたが、定員220名のホールって、そんなものかも知れませんね。
さて、今日のプログラムは以下でほとんどブラームスです。公演時間は45分と大変短く設定されていますが、このプログラムがそんな短い時間の筈はありませんね。
ヴァイオリン:庄司紗矢香
ピアノ:シャニ・ディリュカ
ブラームス:私の眠りはますます浅くなり(低音のための5つのリートOp.105より第2番 ヴァイオリン・ピアノ版)
ブラームス:ご機嫌いかが、私の女王様(ブラーテンとダウマーによるリート歌Op.32より第9番 ヴァイオリン・ピアノ版)
ブラームス:おとめの歌(5つのリートOp.107より第5番 ヴァイオリン・ピアノ版)
ブラームス:野の寂しさ(低音のための6つのリートOp.86より第2番 ヴァイオリン・ピアノ版)
ブラームス:ジプシーの歌(Op.103より第1番 ヴァイオリン・ピアノ版)
《小休止》
レーガー:ロマンス ホ短調Op.87-2
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番ト長調Op.78「雨の歌」
なかなか意欲的なプログラムでとても興味が湧き、このリサイタルを選びました。
で、まず、前半の歌曲のヴァイオリンでの演奏ですが、色々な思いで聴きました。とりあえず、とても満足できる演奏でした。
全体にブラームスの歌曲をとてもインティメットな曲として捉え、抑えた演奏です。自分自身の内面と向かい合ったような密やかな表現です。弱い圧力のボーイングであまり響かせないような演奏です。ある意味、勇気ある演奏ともいえます。ヴァイオリニストならば、どうしても美しく響かせたくなるのではないでしょうか。こういう表現は昨年のベートーヴェンのソナタでも感じられました。それをさらに進化させた表現に思えます。ピアニストのディリュカもそれに合わせたよいアンサンブルでした。
歌曲版と比べると、それぞれ別の側面があるので、単純にはいえませんが、メロディーの同じまったく別の曲という感じです。それほど、ヴァイオリン・ピアノ版として熟成した演奏でした。
このまま、この方向での表現を追求すると、ヴァイオリニストから本当の成熟した芸術家への道も見えてきそうで楽しみです。ヨゼフ・シゲティの音楽性を持った芸術家のような未来を感じますが、さてどうでしょう。
後半はレーガーからです。この曲は初聴きですが、何と繊細でピュアーな高音域の響きでしょう。彼女のヴァイオリンからこのような響きを聴いたのは初めてです。昔の彼女は低音域をばりばり響かせなながら、凄いテクニックで爽快に弾ききっていくというスタイルでした。まあ、それでいて、高い音楽性を感じさせられるところがsaraiが好きになった庄司紗矢香でした。
思えば、彼女も若く恐いもの知らずのような演奏だったのかも知れません。もちろん、今でも十分に若いわけですが、音楽家として、自分自身の音楽を確立しつつある感じがあります。それもいい方向に向かっている感じです。メンチャイのCDを出したあたりが迷いの時期だったかも知れません。あのCDの課題をバネにして、大きく変わってきたように思います。
次がこの日のメインのブラームスの第1ソナタ。これもレーガー同様、素晴らしい高音域の響きが心地よく、さらにボリューム感のある低域の響きとよいバランスです。演奏は第1楽章は爽やかさに表現され、好感を持てます。ブラームスの叙情性をそういうふうに解釈した表現でしょうが、よい演奏です。第2楽章はインティメットに綿々とした表現ですが、前半の歌曲の演奏とは違い、抑えながらも、素晴らしく響かせた演奏は美しいの1語。第3楽章は雨の歌の主題が爽やかに鳴り響き、深みのある演奏でフィナーレに進みます。
とてもよいブラームス、それも庄司紗矢香の考え抜いた表現のブラームス。
庄司紗矢香はますます目を離せない音楽家になってきたようです。
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