次はナポリに移動します。ナポリはカラヴァッジョがローマで殺人を犯し、とりあえず、身を潜めた地です。
ナポリでは
カポディモンテ美術館(キリストの笞打ち)
ピオ・モンテ・デラ・ミゼリコルディア聖堂(慈悲の七つの行い)
パラッツォ・ゼヴァロス・スティリアーノ美術館(聖ウルスラの殉教)
の3作品を鑑賞します。
カポディモンテ美術館の《キリストの笞打ち》は光と影の対比で劇的な効果を見せる力作で、見る者も思わず力がはいってしまうような素晴らしさです。これは必見です。

ピオ・モンテ・デラ・ミゼリコルディア聖堂の《慈悲の七つの行い》は描かれた当初からずっとここに飾られている大作です。これまた、必見です。

パラッツォ・ゼヴァロス・スティリアーノ美術館の《聖ウルスラの殉教》はナポリから、マルタへさらに逃亡し、シチリアを経て、再び、ナポリに戻ってきた晩年の作品です。絵画全体を闇が覆う晩年にふさわしい傑作です。これを見ないわけにはいかないでしょう。
ナポリは3作品と数は少ないですが、いずれもカラヴァッジョが逃亡中にナポリで描いた作品で傑作揃いです。見応えがありそうです。
ナポリで描いた作品と言えば、ミラノでも《エマオの晩餐》も見ますが、今回の旅では、ウィーンでも見てこようと思っています。
ウィーン美術史美術館にある《ロザリオの聖母》はナポリで描かれた大作です。

ナポリの次はシチリアですが、途中、カプリ島とアマルフィでティレニア海をクルーズして、地中海を満喫します。これはカラヴァッジョとは無関係。
で、シチリアでは、まず、イタリア半島に近いメッシーナです。カラヴァッジョはナポリからマルタに逃れ、マルタで聖ヨハネ騎士団の騎士になり、生活が安定するかというところで、またトラブルを起こし、マルタ島から脱出します。シチリア島のシラクーサを経て、ここメッシーナに移りました。
メッシーナでは
メッシーナ州立美術館(ラザロの復活、羊飼いの礼拝)
の2作品を鑑賞します。
メッシーナ州立美術館の2作品はいずれもここメッシーナで描かれた傑作です。しかも、メッシーナの街は1783年、1908年の大地震で壊滅し、さらに仕上げに第2次世界大戦の空襲でまた壊滅し、カラヴァッジョの作品が飾ってあった教会も壊滅しましたが、この2作品はその試練を生き延びたといういわくつきのものです。
《ラザロの復活》の充実ぶりは驚くべきものです。とても逃亡中の画家の作品とは思えません。必見です。

《羊飼いの礼拝》も暗い画面にうづくまる聖母子を見守る羊飼い達の暖かく優しい眼差しが感動的です。これも必見です。

メッシーナからはカラヴァッジョの足跡を逆行することになります。次はシラクーサです。
当初はシラクーサの美術館の開館スケジュールの関係でメッシーナを通り越して、いきなりシラクーサに直行し、カラヴァッジョを見た後にメッシーナに戻るという変則日程にしていました。が、よくよく調べると、シラクーサのパラッツォ・ベッローモ州立美術館は閉館中でカラヴァッジョは教会に移されて展示されていることが分かり、展示スケジュールも変わっており、メッシーナ、シラクーサの順に廻ることに変更しました。
シラクーサでは
サンタ・ルチア・アッラ・バディア教会(聖ルチアの埋葬)
の1作品を鑑賞します。
サンタ・ルチア・アッラ・バディア教会の《聖ルチアの埋葬》はこの教会の聖堂の主祭壇画です。聖ルチアはシラクーサの街の守護聖人でこの教会に埋葬されています。まさにあるべきところにあるべきものが描かれたと言えるでしょう。この地で見るべき作品ですね。短いシラクーサ滞在中に急いで描いたせいか、カラヴァッジョにしては少し精緻さを欠くような気もしますが、それを補って余りある構図の素晴らしさです。殉教した聖ルチアの小さな体が何ともいえず、侘しいですね。

ところでシラクーサは古代ギリシャの植民都市でした。アルキメデスがお風呂にはいっていて、アルキメデスの原理を発見したのもこのシラクーサです。太宰治の名作「走れメロス」の主人公メロスが走ったのもこのシラクーサです。ということで、シラクーサにはギリシャ遺跡がわんさとあります。折角ですから、カラヴァッジョからは時代がずい分遡りますが少し見て歩きましょう。
次はいよいよ最終目的地マルタ島に渡ります。カラヴァッジョはナポリから船で直接マルタ島に渡りましたが、saraiはシチリア島からたった45分の空の旅です。本当はフェリーで渡りたかったのですが、もうオフシーズンでフェリーの運行日程が合いませんでした。
マルタ島の首都ヴァレッタでは
サン・ジョヴァンニ大聖堂(洗礼者ヨハネの斬首、執筆する聖ヒエロニムス)
の2作品を鑑賞します。
サン・ジョヴァンニ大聖堂の《洗礼者ヨハネの斬首》はカラヴァッジョ最大の作品です。最高傑作の呼び声も高い傑作中の傑作。まさにこの絵を見るためにわざわざマルタ島にまで渡ることになりました。じっくりと堪能させてもらいましょう。

これでカラヴァッジョ巡礼の旅を締めくくりますが、実にそれに相応しい大作です。この絵には、カラヴァッジョのすべてが込められています。光と闇の対比、劇的な動き、優しい眼差し、そして、何よりも精緻を極めた天才的な写実表現です。
この旅でうまくいけば、カラヴァッジョの傑作32作品+1作品(番外のウィーン美術史美術館)が見られます。しかも、その描かれた地で見られる作品がほとんどです。こういう旅が実現しそうで、実に幸せな気持ちです。カラヴァッジョは精緻な写実と光と影の表現で、次に続くレンブラントやフェルメール、ラ・トゥールという天才画家達に道を示したエポックメーキングな大芸術家です。その足跡を彼の作品を鑑賞しながら、尋ね歩く旅、これに優る喜びはありません。こういう旅を一緒に歩いてくれる配偶者に一番感謝しています。
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