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庄司紗矢香、テミルカーノフ、サンクトペテルブルグ・フィル@サントリーホール 2011.11.1

昨日、ウィーンから急ぎ帰り、駆けつけたコンサートです。saraiは大の庄司紗矢香ファンでこのコンサートに非常に期待していたんです。曲目はメンデルスゾーンの協奏曲という実にありふれたものですで、また、一見、ロシアのオーケストラと演奏するのはミスマッチにも思えます。ただ、庄司紗矢香ファンとしては、かなり前の彼女のメンデルゾーンとチャイコフスキーの協奏曲のCDがとても残念な出来だったので、彼女と相性のよいと言っていいテミルカーノフ指揮サンクトペテルブルグ・フィルとの共演できっと彼女の成長を示してくれると信じていました。事実、前回、同じ組み合わせでのチャイコフスキーの協奏曲はとてもいい演奏でしたからね。
で、結果はというと、日程を切り詰めて帰国したのに十分以上値する満足できる演奏でした。庄司紗矢香は数年迷いの時期も感じられましたが、このところ、すっかり、自分の音楽を見定めて、一切の迷いもなくなった感じです。今日は自分の気持ち、精神的なものをヴァイオリンに託して語りかけるという演奏です。音響的には以前の方がヴァイオリンが鳴っていた印象もありますが、やはり、音楽は最後は如何に精神的なものを演奏者と聴衆が共有するかということに尽きます。そういう意味でとても心に響く演奏でした。テミルカーノフもいつものように庄司紗矢香を優しく包み込み、オーケストラも彼女を引き立てるための最上のサポート。saraiには独奏ヴァイオリンだけが響き、オーケストラの音は記憶にありません。配偶者はそれを聞き、やっぱりねと言ってました。一般的な意味での協奏曲としてはどうかということはありますが、ずっと庄司紗矢香の成長を楽しみにしてきたsaraiの嬉しかった気持ちはそういうことは蚊帳の外。saraiの気持ちをどうか汲んでください。

さて、今日のプログラムは以下です。

 指揮:ユーリー・テミルカーノフ
 ヴァイオリン:庄司紗矢香
 管弦楽:サンクトペテルブルグ・フィルハーモニー交響楽団

 ロッシーニ:歌劇「セヴィリアの理髪師」序曲
 メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 Op.64
  《アンコール》
   J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番 BWV1004から「サラバンド」

  《休憩》

 ストラヴィンスキー:バレエ音楽《春の祭典》
  《アンコール》
   エルガー:エニグマ変奏曲から「ニムロッド」


まずはロッシーニです。かなり小さい編成です。配置は対向配置。美しい演奏です。ロシアのオーケストラとは言え、やはり一流のオーケストラですね。終了と同時にそのまま、オペラが始まるのが聴きたくなったくらいですから、よい演奏でした。

続いて、いよいよ、庄司紗矢香の登場です。真っ赤なドレスでスリムな体を包んで、大人っぽいメイクアップ。あまり、saraiの好みではありませんが、音楽とは関係ありませんね。オーケストラも先程とほとんどそのまま。
第1楽章、独奏ヴァイオリンとオーケストラがあの有名な第1主題を奏でます。とても上品な出だし。抑えているとも言えるくらい。しかし、その小さめの響きがしみじみと心に沁みます。ああ、あのCDでの演奏とはまったく違います。音楽を自分の心にしっかりと刻み込んだ演奏です。時折はダイナミックな演奏にもなりますが、基本的には心の音楽。こういうメンデルスゾーンもあるんですね。
第2楽章、第1楽章からは切れ目なく音楽は続きます。テンポはスローになりましたが、基本的には心の音楽というスタイルはそのまま続きます。すっかり庄司紗矢香のヴァイオリンの響きとsaraiの心が一体化した感じ。とてもいい感じです。
第3楽章、一気にテンポアップして切れ味よい演奏です。心の音楽はここで脱却。気持ち良くフィナーレに突入。

ただただ、満足。庄司紗矢香はすっかり自分のスタイルを確立したようです。そして、その音楽はsaraiにもとっても納得でき、心を通い合わせられる音楽です。これで世界に通用するかどうかは分かりませんが、saraiとしてはこの道を突き進んでほしいと思います。彼女は単なるヴァイオリニストを超えて、とてもいい音楽家、そして、芸術家になりつつあります。その過程を見守っていければと思います。

ちなみに庄司紗矢香のアンコール、バッハの無伴奏も彼女の世界を作って、心に染みる音楽です。まるでリサイタルを聴いたような錯覚にとらわれました。

休憩後はストラヴィンスキーの残した20世紀を代表する曲のひとつです。世界の一流オーケストラが合奏力・技術力を競い合うとてもテクニカルな曲でもあります。木管のロシア的な響きで始まりますが、よく響き合い、好演です。いい意味でインターナショナルな響きではなく、ロシアの農村を感じさせられます。やがて、有名な弦楽器合奏のガッ、ガッ、ガッ、ガッ、・・・というリズム楽器と化した響きです。これは重戦車のように重々しく響きます。朴訥で重厚、一流オーケストラでありながら、ウィーンやドイツのオーケストラとは一線を画しています。この重厚な厚みのある演奏を感心して聴いているうちにいつの間にか意識が飛びます。このあたりになって、時差ぼけの睡魔が襲ってきたようです。あるいは庄司紗矢香に入れ込んで聴いていたツケが回ってきたのか分かりません。後半の大音響でもびくともせずに睡魔が断続的に襲います。なんだかとてもよい演奏に感じましたが、ちゃんと聴き取れたわけではありません。悪しからず。

アンコールのエルガーはちゃんと聴けました。分厚いサウンドですがとても美しい演奏でした。エニグマをもっと聴きたい感じでした。

ウィーンの音楽とは違いますが、楽しく、しみじみと聴けたコンサートでした。
それにしても、サントリーホールの響きはとてもいいですが、やはり、ウィーン楽友協会の信じられない響き、全身が音と共鳴するような響きはとても忘れられるものではありません。日本のホールももっともっと熟成を重ねてほしいですね。

最後に関係者の方々に強い要望です。是非、今回の組み合わせの演奏者でメンデルスゾーンとチャイコフスキーの協奏曲を再録音して、以前のチョン・ミョンフンとのCDを置き換えてほしいということです。日本の音楽界、庄司紗矢香にとって、とても重要なことです。


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テーマ : クラシック
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       庄司紗矢香,  

ノートラブルの帰国(帰国前日~帰国日)

もう、お気づきかもしれませんが、月曜日の夕方、無事帰国しました。

ウィーンからの出発前日はナッシュマルクトで贅沢な生牡蠣を食べたところまでご紹介しましたが、その後、フォルクスオーパー近くのカフェではっぱさんとお茶して音楽論はほどほどに形而下的な話に花が咲き、開演ぎりぎりまでおしゃべり。
ここでいったんはっぱさんとは分かれて、フォルクスオーパーで楽しくロマンチックなオペレッタ《メリー・ウィドウ》を鑑賞。詳しい内容の記事はアップ済です。記事にもある通り、ブログのお友達Steppkeさんと初対面。で、そのまま、アフターオペレッタで先程のカフェに再度直行して、夜食をいただきながら、音楽論はほどほどに世間話。しばらくすると、楽友協会とコンツェルトハウスをダブルで梯子してきたはっぱさんがいきなり乱入。一気に話のテンションはあがり、あらゆる分野の話に飛び火しながらの無茶苦茶なおしゃべり。ふと気づくと閉店時間になり、客は残り少なくなっていました。でも、今日の土曜日から明日の日曜日にかけては夏時間から冬時間の切り替えで夜が1時間長いんです。閉店時間も延ばせばいいのにね。結局、はっぱさんのご好意でホテルまで車で送っていただき、この日はオシマイ・・・

翌日はそれはもう大事なプレートル+ウィーン・フィルのコンサート。急いで9泊もしたホテルをチェックアウトし、ウィーン楽友協会に向かいます。コンサートの結果は既に詳しく記事にアップしています。ともかく、これ以上の演奏は考えられないほどの素晴しい演奏で言葉もなしです。
もうすぐ帰国ですが、少し余裕があるので、はっぱさん、Steppkeさん、sarai、配偶者の4人で豪華にグランド・カフェでランチ。ここでも盛り上がっていたら、出発時間ぎりぎりになりました。あわてて、地下鉄でホテルに戻り、預けていた荷物を受け取り、空港に向かいます。もちろん、タクシー代は節約し、トラムとSバーンを乗り継ぎます。ところがSバーンが足の踏み場もないほど混み合っていて、大荷物のsarai達は大変。こんなこともあるんですね。日曜日の午後だからでしょうか。

ウィーンからはルフトハンザでフランクフルトまでです。逆の経路で大トラブルだったので少しいやな気がしましたが、定刻通りの運行で問題なし。フランクフルトから成田まではANAですから、もう日本に帰ったも同然。内装の新しくなったB777で気持ちよくフライトを楽しみました。というよりも食事の後、白ワインを飲み、ぐっすり。到着2時間前の朝食で起こされるまで意識なしです。

ところでこんなに長旅なのに最後の日はコンサートを聴いて、そのまま帰国という強行日程になったのかというと、次の日に庄司紗矢香のコンサートがあるからです。まわりはちょっと呆れ顔。saraiにとって、音楽のない人生は考えられないですからね。お蔭で配偶者にはご迷惑をかけてばっかりでゴメンナサイ!

今回の長旅は早々に詳しいレポートを長期連載しますので、期待?していてください。


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この記事へのコメント

1, Steppkeさん 2011/11/02 16:56
saraiさん、Steppkeです。

無事帰国されたようで何よりです。
(帰国の記事がなかなかアップされないので、またFrankfurtで足止めかと思ってました)

ヴィーンでは、楽しい時間を有難うございました。
素晴らしい体験の後、それについて(他もいろいろと)語り合うのは本当に良いものです。
またご一緒したいですね。

私がこちらに来ると大雨とかになり天気に恵まれることはほとんどないのですが、saraiさんが帰国される日から好天で暖かく、悪天候を連れて行って頂けたかと思ってました。しかし、昨日の万聖節から寒くて暗い日に戻っていしまいました。まあ、死者を想うのには、ふさわしい感じですが..

では、詳細レポート、期待しています。

2, saraiさん 2011/11/02 18:05
Steppkeさん、こんばんは。

まずはコンサートの記事を優先したので、帰国の記事が遅れました。また、強靱な体力を誇るSteppkeさんと違って、帰国後すぐのコンサートに備えて自重もしていました。悪夢のフランクフルト空港はもうまっぴらです。

ウィーンでは、当方こそ、勝手にしゃべりまくり、申し訳ありませんでした。懲りずにお付き合いください。

やはり、ウィーンの10月は寒いですね。もうすぐ冬かな。暖かい日本への無事な帰国をお待ちします。

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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

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