実はご本人からリサイタルへのお誘いがあったので、おじさんとしてはふらふらっとその気になってしまったんです。そのときの経緯はここです。
今日のリサイタルのプログラムは以下です。オール・ベートーヴェン・プログラムで名曲尽くし。きっと楽しいリサイタルになるでしょう。
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第17番 ニ短調 Op.31-2 「テンペスト」
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第7番 ニ長調 Op.10-3
《休憩》
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番 嬰ハ短調 Op.27-2 「月光」
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番 ヘ短調 Op.57 「熱情」
《アンコール》
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番 ハ短調 Op.13 「悲愴」から第2楽章
ショパン:練習曲第13番 変イ長調 Op.25-1 「エオリアン・ハープ」
エルガー:愛の挨拶
まずはベートーヴェンの「テンペスト」です。綺麗なタッチ、明快なテンポで第1楽章が始まります。個性的な演奏ではありませんが、実に無理のない表現。名曲はこういう風に弾いてもらうと安心して聴けます。第2楽章もほどよく叙情的な演奏です。心地よい演奏です。第3楽章はsaraiのとても好きな曲です。冒頭のタタタター、タタタター、タタタター、タタタターという有名なメロディーが軽やかに演奏され、これまた心地よい演奏です。終始、模範的とも言える安定した演奏で満足です。熱くなる演奏ではありませんが、美しい演奏でした。
続いて、第7番のソナタです。特に注目していた第2楽章は実に叙情的で美しい演奏でした。ショパンを思わせるタッチで心地よく聴けました。ご本人は第3楽章がお好みとのことですが、素直な演奏に好感を持てました。
休憩後、軽いトークでもあるのかと思っていたら、いきなり、ピアノの前に座り、「月光」です。超有名曲ですが、実に素直で嫌味のない演奏で気持ちよく聴けます。こういう風にさらっと弾いてもらうのが、こういう曲にはぴったりです。気持ちよく聴いているうちにあっと言う間に第1楽章が終わりました。第2楽章はさっと終わり、第3楽章はこれまた模範的とも思える演奏です。テンポも中庸、ダイナミズムもちょうどよしって感じです。タッチもクリアーで切れのよい演奏でした。
最後は「熱情」です。「月光」のカーテンコールで出てきたと思うとさっとピアノの前に座り、弾き始めました。少し、テンションがあがってきたようです。第1楽章はそれでも実に丁寧に模範的な演奏でした。これまでCDで名人達の演奏をさんざん聴いてきましたが、こういう風に無理のない表現で演奏されると、特に違和感なく、気持ちよく聴けるものです。第2楽章は単純なテーマがどんどん細かい音符に細分化されていく過程が驚異的な名曲ですが、彼女は美しく表現してみせてくれました。最後に少し変形したテーマに戻り、そのまま、第3楽章に突入していきますが、これがなかなか間合いがよくて、無理がありません。第3楽章、これはピアニストが弾いていて興奮するんだろうなあと思わせられる勢いのある曲ですが、彼女はテンポよく、美しく表現していきます。このまま、フィナーレかと思ったら、最後のプレストでは驚くことに、これまでの演奏スタイルを変えて、熱くたぎるような情熱的な演奏です。まさに持てる力と技術を使い果たすという勢いでの演奏でした。こういうものが聴けるのが生演奏のよいところですね。実に人間的な感情の揺れや思いを感じました。
全体を通して、こういう名曲アワーそのもののようなプログラムは聴衆に納得させるような演奏はなかなか難しいと思いますが、あまり、意気込んで個性を出し過ぎるよりも今日のように素直に表現するほうが受け入れやすいんだなあと感心しました。もちろん、ここまで弾きこなすのは相当に準備・練習したことが想像できます。ミスも極めて少なく、タッチも明快、テンポも安定、指もよくまわっていました。名曲故に細かいミスも目立ちやすいし、無理な表現もすぐに分かってしまいますが、今日はまったくといって、気になる箇所はなく、気持ちよく聴けました。
アンコールはショパンの練習曲が気持ちよく聴けました。仲道郁代はやはりショパン弾きなのかもしれません。
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