聴いた順序でご紹介しましょう。
まずは以下のDVDです。
ペーター・シュライヤー(T:福音史家)
エルンスト・ゲロルト・シュラム(B:イエス)
ジークムント・ニムスゲルン(B:ペテロ、ピラト、ユダ)
ヘレン・ドナート(S)
ユリア・ハマリ(A)
ホルスト・ラウベンタール(T)
ヴァルター・ベリー(B)
ミュンヘン少年合唱団
ミュンヘン・バッハ管弦楽団&合唱団
カール・リヒター(指揮)
収録:1971年5月 ミュンヘン
言わずと知れたバッハの権威カール・リヒターの残した貴重な記録です。画面で見るリヒターはまだ若く、謹厳な指揮です。オーケストラや合唱団を十字架の形に配置し、上からは巨大な十字架も吊るされていて、度肝を抜かれます。演奏はいかにもリヒターらしい厳しくも平明なバッハに仕上がっています。CDの演奏と比べるのは難しいと思いますが聴き応えのある演奏であることは間違いありません。カメラワークがやたら、歌手の顔をアップで撮り過ぎるのが気になります。特にソプラノのヘレン・ドナートが表情を作り過ぎて歌うのはこの曲の雰囲気にそぐわない感じです。まあ、気に入らないシーンは目を閉じて聴けば問題ありません。アルトのユリア・ハマリのアリアには好感を持ちました。このDVDはリヒターの演奏が映像で見られるというのが一番のポイントです。
次は以下のCDを聴きました。
クリストフ・プレガルディエン(テノール/福音史家)
マティアス・ゲルネ(バス/イエス)
クリスティーネ・シェーファー(ソプラノ1)
ドロテア・レッシュマン(ソプラノ2)
ベルナルダ・フィンク(アルト1)
エリーザベト・フォン・マグヌス(アルト2)
ミヒャエル・シャーデ(テノール1)
マルクス・シェーファー(テノール2/証人2)
ディートリヒ・ヘンシェル(バス1/ユダ、ペテロ、他)
オリヴァー・ヴィトマー(バス2)
アーノルト・シェーンベルク合唱団
ウィーン少年合唱団
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
ニコラウス・アーノンクール(指揮)
録音:2000年5月、ウィーン
古楽器演奏の旗手、と言ってももう御歳80を超えた大御所のアーノンクールの3度目の録音、CDとしては2回目になります。1970年録音の最初のCDは古楽器で演奏した世界で初めての「マタイ受難曲」のCDでした。古楽器演奏の代表として、このCDを聴きました。今や、古楽器だから、どうだということはありません。歌手陣の充実が凄いです。特にレッシュマンのソプラノ2はもったいない。もっとも、ソプラノ1もシェーファーですからね。アルトのフィンク、バスのヴィトマーの歌唱が光ります。それに何といってもアーノルト・シェーンベルク合唱団、ウィーン少年合唱団の合唱が白眉です。コラールには本当に感動します。特に再三歌われる受難コラールの素晴らしいこと、美しい限りです。
こうなると、次は名盤の誉れ高い真打ちのCDを聴くしかありません。
アントニー・ファーベルク
イルムガルト・ゼーフリート
ヘルタ・テッパー
エルンスト・ヘフリガー
キート・エンゲン
マックス・プレープストル
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ
ミュンヘン少年合唱団
ミュンヘン・バッハ合唱団
ミュンヘン・バッハ管弦楽団
カール・リヒター(指揮)
録音時期:1958年6~8月
古楽器演奏ブームでもう時代遅れとも言われていますが、そんなことはありません。このCDは世界初めてのステレオ録音の「マタイ受難曲」のCDでした。しかし、そんなことを感じさせないほど素晴らしい録音です。さすがにアルヒーフ録音です。ヘフリガーのエヴァンゲリストの素晴らしさはもちろんですが、素晴らしいのはアルトのテッパーとバスのフィッシャー=ディースカウです。彼らのアリアはすべて最高です。テッパーは声の伸びが素晴らしく、47番、61番のアリアの素晴らしさはこれまで聴いたなかでは最高です。また、それにも増して、フィッシャー=ディースカウは素晴らしく、彼のまだ若い頃の録音ですが、その柔らかい美声と美しいドイツ語の発音はどのアリアでも聴く者をうならせます。シューベルトの「冬の旅」と並ぶ代表的な歌唱です。そして、もちろん、リヒターの率いるオーケストラと合唱団は文句のつけどころのない感動の演奏。やはり、今でも、この1枚と言えば、このCDになります。
最後は明日のビラー指揮の聖トーマス教会合唱団&ゲヴァントハウス管弦楽団のCDを聴きます。
ウタ・ゼルビッヒ(ソプラノ)
ブリッタ・シュワルツ(アルト)
マルティン・ペツォルト(テノール)
マティアス・ヴァイヒェルト(バス)
トーマス・ラスケ(バス)
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
聖トーマス教会合唱団
ゲオルク・クリストフ・ビラー(指揮)
録音:2006年、聖トーマス教会
これはバッハが1727年に初演した初期稿を用いて、初演の聖トーマス教会で録音したというCDです。明日の演奏も基本的にこの内容の筈です。歌手もアルトとバス(アリア)を除いて、同一メンバーになります。CDを聴いて、他のCDとの相違点が多くありました。
・女声合唱ではなく、少年合唱。これは必ずしも初期稿だけの関係ではありませんね。前回、聴いたドレスデン聖十字架合唱団でもそうでした。
・コラールの歌詞が一部、普通のものと異なっています。21番などです。
・66番のアリアがヴィオラ・ダ・ガンバではなく、リュートで演奏
・第2部冒頭の36番のアリアがアルトではなく、バスで歌われます。
・63番の受難のコラールが第1節のみで第2節は省略。
という感じです。ただ、全体の骨格は変わりません。改訂前から完成度が高かったことが分かります。演奏はエヴァンゲリスト役のテノールのペツォルトが大熱演。好き好きはあるかもしれませんが大変劇的な表現です。ソプラノのゼルビッヒは清らかな歌声で美しい響き。期待できそうです。しかし、一番素晴らしいのは聖トーマス教会合唱団の少年合唱です。すべてのコラールが素晴らしい出来です。本当に気持ちが癒されます。これも期待したいです。
もう時間的に余裕がなかったので、最後の最後に歴史的なCDから1曲だけを聴きました。1939年、第2次世界大戦を数カ月後に控えたアムステルダムでメンゲルベルクが指揮したライブCDです。自分の生まれる前にこういうバッハの演奏会があったことが実感できます。聴衆の感動ぶりも捉えられています。47番の「憐れみたまえ、我が神よ」を聴きました。当時のコンセルトヘボウのコンサートマスターの弾くオブリガート・ヴァイオリンでしょうが、これが素晴らしく、気持ちのこもったアルト独唱にもほろりときます。明日のコンサートの後でゆっくり鑑賞します。
明日は気合を入れて、聴きたいと思っています。
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