結果的になかなか感銘を受けたというか、とても楽しいリサイタルでした。
まず、今日のプログラムは以下です。
ヴァイオリン:ミドリ・ザイラー
チェンバロ:クリスティアン・リーガー
オール・J.S.バッハ・プログラム
ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ホ短調 BWV.1023
無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番 ホ長調 BWV.1006
ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ト長調 BWV.1021
《休憩》
チェンバロのためのパルティータ第1番 変ロ長調 BWV.825
ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ第6番 ト長調 BWV.1019
《アンコール》ピゼンデル(バッハ作か?):ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ ト短調 よりアダージョ
まず、ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ・ホ短調です。緩徐楽章はピリオド奏法の特徴が目立ち、アタックの強いアクセントには慣れるまで少し違和感を覚えます。もちろん、ノンヴィブラートですが、こちらはそう気になりません。ミドリ・ザイラーのヴァイオリンの響きそのものはクリアーで美しいです。チェンバロのクリスティアン・リーガーは通奏低音を受け持ち、伴奏に徹しており、ヴァイオリンが前面に出た演奏です。緩徐楽章は振幅の大きな表現で、ヴァイオリンの響きがまるでソプラノ歌手のように聴こえ、バロックオペラのアリアを聴いている感覚になります。バロックオペラですから、バッハというより、ヘンデルの曲を聴いている感じです。モダーン楽器・奏法の場合はバッハはバッハにしか聴こえませんが、こうしてみると、同時代のバッハとヘンデルは実は類似点があったんですね。変な感想ではありますが、要はまるでバロックオペラを聴いているような感じで楽しく鑑賞できたということです。
次はミドリ・ザイラーだけが再登場し、無伴奏パルティータを演奏します。速い曲はそんなにモダーン楽器での演奏とイメージが異なるわけではありません。さすがに緩徐楽章になると、かなり違ってきます。前日にヒラリー・ハーンのヴァイオリンでバッハの無伴奏ソナタを聴いたばかりですが、同じバッハではあるものの、まったく違う聴こえ方なので、演奏の良し悪しを比較できるものではないという印象です。好き嫌いは分かれるでしょうが、saraiはどちらも音楽として評価できます。モダーン楽器では、すっきり爽やかという感じで、ピリオド楽器・奏法では陰影がくっきりとした感じです。どちらにせよ、バッハの音楽は芯がしっかりしているので、楽器・奏法でびくともしないと感じます。もちろん、saraiは現時点で無伴奏の全曲を聴きたいのはモダーンとかバロックとかではなくて、ヒラリー・ハーンのヴァイオリンが聴きたいんですけどね。ともあれ、ミドリ・ザイラーのバロックヴァイオリンを楽しく聴かせてもらいました。
次はまたヴァイオリンと通奏低音のためのソナタです。先ほどのホ短調よりもこのト長調のほうが耳に美しく響きました。ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタって、ほとんど聴いていませんので、ここでまとめて2曲も聴けたのは嬉しい限りです。贅沢をいえば、通奏低音にヴィオラ・ダ・ガンバが加わってほしかったとろです。
休憩後はチェンバロ曲です。有名なパルティータ第1番です。saraiもパルティータはバッハの鍵盤楽器の曲の中で一番好きなので、ずい分、CDを聴きこんでいます。でも、ほとんどはピアノ演奏です。チェンバロの演奏は限られた人の演奏だけを好んで聴いています。一番好きなのは天才奏者のスコット・ロスです。クリアーな響きのチェンバロ演奏が大好きなんです。クリスティアン・リーガーの演奏はどうでしょう。おーっ、まるでスコット・ロスのチェンバロを聴いている感じです。小音量ですが、実にクリアーな響きのチェンバロです。音楽表現もきっちりしていて素晴らしい。この演奏を聴けただけでも今日のリサイタルに来た甲斐がありました。できれば、彼の演奏でパルティータ全6曲を聴きたいものです。ついでにゴールドベルグ変奏曲もね。まあ、そんなに贅沢を言わずとも、せめてパルティータ第2番も聴きたいものです。この「ひまわりの郷」のコンサートシリーズを企画しているかたに是非ともご検討いただきたいなあと思います。
最後は再びお二人でヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ第6番です。これも素晴らしい演奏でした。特にチェンバロ独奏の楽章には聴き惚れてしまいました。
アンコールはまったく知らない曲ですが、これはバッハでしょう。ところが、あとでスタッフのかたに伺うと、ピゼンデル作曲ということです。ただ、演奏したお二人はバッハの作と確信しているとのことです。saraiもそれに1票です。あとでピゼンデルという作曲家について調べてみると、バッハとも親交のあったヴァイオリン奏者でドレスデン宮廷楽団の楽長をしていた人で、無伴奏ヴァイオリン・ソナタが有名なようです。バッハの無伴奏ソナタもその影響を受けて作曲されたそうです。ということは、やはり、このアンコール曲はどちらの作曲か、藪の中ですね。美しい響きの曲だったので、素人のsaraiにはどうでもよいことに思えます。音楽は美しく楽しければ、すべてよしです。
とても楽しいリサイタルだったので、ご機嫌で会場をあとにしました。配偶者がこの日も貯めに貯めたポイントを気前よく放出してくれたので、高野フルーツのカフェで美味しいフルーツパフェをいただくことができ、ますますご機嫌なsaraiでした。

耳も舌も満足できる日が続き、幸福です。
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