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快演!庄司紗矢香のシマノフスキ・・・大野和士+東京都響@サントリーホール 2012.6.18

何と幸福なことでしょう。10日前にヒラリー・ハーンの素晴らしいメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を聴いたばかりですが、今日は庄司紗矢香の実に見事なシマノフスキのヴァイオリン協奏曲が聴けました。saraiがこれまで聴いた庄司紗矢香の演奏でも最高のものでした。
実は今日のコンサートは期待はしていましたが、不安感も半分ありました。シマノフスキのヴァイオリン協奏曲って、独奏ヴァイオリンの高音域の美しい響きが不可欠ですが、庄司紗矢香は結構これまで、その音域での響きがもう一つに感じていました。それに最近の演奏では、響きを意識的に抑えた内向的な演奏が目立っていました。それはそれで高い精神性を感じさせる演奏で彼女の音楽的充実ぶりを示すものでしたが、その傾向の演奏ではシマノフスキの曲には合わないだろうとも恐れたのです。結果的には、saraiの不安感は杞憂に終わりました。庄司紗矢香の奏でるヴァイオリンの高音域の響きはとっても美しく、感動的でさえありました。このところの庄司紗矢香の充実ぶりは目を見張るものがあります。演奏曲によって、響きを変えて、抑えるべきところは思い切って抑え、歌わせるところは歌わせ、内省的な演奏から熱い演奏まで、実に自在です。彼女はどこかふっきれたようなところもあり、そして、人間的な成長も感じさせられます。これから海外でも評価されていくことでしょう。本当に楽しみで目の離せない音楽家になりました。

というところで、まず、今日のプログラムを紹介します。

  ヴァイオリン:庄司紗矢香
  指揮:大野和士
  管弦楽:東京都交響楽団

  シェーンベルク:浄められた夜 Op.4
  シマノフスキ:ヴァイオリン協奏曲第1番 Op.35

《休憩》

  バルトーク:管弦楽のための協奏曲

まず、シェーンベルクです。シェーンベルクといっても、まだ、無調の作品を書く20年も前の作品です。半音階は多いものの調性はしっかり感じられます。まあ、そんなに解説しなくても有名な曲ですから、演奏内容にはいりましょう。
今日の都響はコンサートマスターが矢部達哉で、第1ヴァイオリンは彼以外はほぼ女性奏者。名人たちですから、今日の演奏は期待できます。忍ぶような低弦の響きが続き、その後、だんだん、熱い響きに変わっていきます。美しい響きですが、心がかき乱されるような演奏です。指揮の大野和士はほとんど大きな動きは見せずに冷静な指揮です。大きな波が2度ほど押し寄せてきて、最後はだんだん沈静化していきます。最後はニ長調の響きです。不意に人間的な温もりのある優しい響きが感じられます。見事なエンディングです。この曲でこういう温もりを感じたことはありませんでした。あくまでも世紀末の爛熟した響きだけだと感じていました。二短調で開始し、ニ長調で終わることで、シェーンブルクはドラマを見事に作りあげていたんですね。こういう調性の申し子のような彼が20年後には、12音技法を発明するのですから、分からないものです。

次はいよいよ庄司紗矢香が登場してのシマノフスキです。協奏曲とはいえ、大規模なオーケストラが控えます。木管楽器の元気のよいフレーズが続き、いよいよ、独奏ヴァイオリンの息の長い高音域の響きが演奏されます。その美しい響きに魅了されます。見事としか言えない庄司紗矢香のヴァイオリンです。オーケストラとの音の融合もパーフェクト。なんと素晴らしい演奏でしょう。この曲は幽玄な響きの音楽だと感じていましたが、かなり弾きこんできたと思われる庄司紗矢香のヴァイオリンは古典的な曲を思わせる安定した響きを奏でます。このあたりが評価のポイントになるでしょうが、saraiは完璧に弾きこなす彼女のヴァイオリンにとても魅力を感じました。なによりも明快な演奏です。1点の曇りもない素晴らしい演奏です。アップテンポでリズミカルに演奏するフレーズも気魄十分で申し分なし。これが庄司紗矢香のシマノフスキの音楽なんですね。とても感動しました。こういう演奏を聴くと、何故か、ベルクのヴァイオリン協奏曲も聴きたくなってしまいます。30分ほどの曲があっという間に終わってしまったような感覚を覚えるくらい、集中して音楽に没入できました。
次は10月に彼女のリサイタルを2回聴く予定です。また、まったく違うスタイルの演奏を聴かせてくれるでしょう。楽しみです。

休憩後、バルトークです。この曲は学生時代、夢中になって、下宿の部屋でヘッドフォンをかぶって、フリッツ・ライナー指揮シカゴ響のLPレコードを繰り返し、繰り返し、盤がすりきれるほど聴いた曲です。もっとも、カップリングしていた《弦と打とチェレスタの音楽》のほうがもっとsaraiの心を捉えていました。そういう刷り込みのある音楽ですから、余程の演奏をしてくれない限り、saraiの心が打ち震えることはありません。今日の都響の演奏は技術的は素晴らしく、特に第5楽章の充実度には驚かされましたが、先鋭的で切迫感のあるバルトークからは遠いものでした。もっと心にズシンとくるような演奏を期待したいものです。誤解のないように言うと、バルトークには思い入れが強くて、とても高いハードルをたててしまいます。今日の演奏も一般的には良い演奏でしたが、saraiには物足りなかったということです。

今日は庄司紗矢香の素晴らしいヴァイオリンが聴けただけで十分満足したコンサートでした。



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たまには、旅ブログも書きます。

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10/07 08:57 堀内えり

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じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
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07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
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07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

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