今年の1月にサントリーホールで
上原彩子のピアノ・リサイタルを聴きましたが、また今日、その時と半分同じ曲目のプログラムのピアノ・リサイタルを聴きます。1月のサントリーホールでのピアノ・リサイタルについてはここに書きました。
サントリーホールとは前半がまったく同じプログラムです。
今日のプログラムは以下です。
べートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番 ハ短調 op.13 「悲愴」
リスト:『詩的で宗教的な調べ』から第3曲「孤独のなかの神の祝福」
リスト:リゴレット・パラフレーズ
《休憩》
ムソルグスキー:展覧会の絵
《アンコール》
リスト:愛の夢 第3番
チャイコフスキー:《18の小品》より 第16曲〈5拍子のワルツ〉
サントリーホールでのピアノ・リサイタルの記事にも書きましたが、べートーヴェンの「悲愴」のサントリーホールでの演奏がまったく不満で、もう一度、みなとみらいホールで聴き直さないと気が済まない感じだったんです。サントリーホールでのリストは素晴らしい演奏だったので、これは何度聴いてもいい感じです。要は良くても悪くても何度も聴きたいっていうことですね(笑い)。
まずは問題のべートーヴェンの「悲愴」です。
上原彩子はどきっとするほどの真っ赤なドレスで登場です。
固唾を飲んで、演奏を待ちます。まず、第1楽章の序奏ですが、かなり遅いテンポでの入りです。演奏はオーソドックスなものです。サントリーホールではYAMAHAのピアノでしたが、今日はスタインウェイ。そのせいか、響きが華やかに感じます。演奏は切れのある感じではありませんが、無難にまとめたものでサントリーホールでの演奏の不満は払拭してくれました。テンポは終始、少し遅めでした。第3楽章の中間あたりから、タッチも良くなり、気持ちよく聴けました。お陰で今日は気持ちよく拍手できました。ただ、今日の演奏が
上原彩子のベストかと言えば、決して、そうは感じられません。彼女なら、もっと弾ける筈です。しかし、「悲愴」はもうこのあたりでいいでしょう。彼女もあまり、「悲愴」には思い入れがないのかも知れません。べートーヴェンは後期のソナタに期待したいところです。
リストの「孤独のなかの神の祝福」は前回同様、うっとりする演奏でした。難を言えば、演奏が美し過ぎることでしょうか。じゃあ、何を望むのかと言えば、何もありません。リストは美しい演奏が一番重要ですからね。妙に神秘的な演奏というのもsaraiの趣味ではありません。予習で聴いたアラウとボレットという巨匠の演奏に引けを取らない美しい演奏で大満足です。第1部での盛り上がるところ、フィナーレでの自在な弾きこなし、すべてが美しいリストになっていました。右手の高音部の美しいタッチには改めて驚かされました。これからも彼女がこの曲を熟成させていくのを聴き続けていきたいと思わせられる演奏でした。
続く《リゴレット・パラフレーズ》も素晴らしいリスト演奏でしたが、曲そのものが「孤独のなかの神の祝福」に比べると深みに欠けます。選曲上、こういう楽しい曲もプログラムに入れたのかも知れませんが、やはり、以前聴いて素晴らしかった「ペトラルカのソネット」104番あたりを聴きたかったですね。
上原彩子のリストは実に素晴らしいです。ロ短調ソナタあたりも今後是非聴きたいですね。
休憩後、ムソルグスキーの《展覧会の絵》です。これはCDでも聴いている曲です。ある意味、安心して聴けます。彼女の《展覧会の絵》は少しアップテンポな感じですが、実に気魄に満ちた演奏です。スタインウェイの華やかな響きを最大限に活かした素晴らしい演奏です。彼女なりの独自性も秘めた演奏で最後まで面白く聴けました。フィナーレの激しい打鍵には、saraiも思わず熱くなり、感動してしまいました。
上原彩子、入魂の演奏で彼女のすべての力を出し尽くした演奏でした。さすがに演奏後、
上原彩子もへとへとっていう感じでした。
ということで、もしかしたら、アンコールはなしかなと思いましたし、それでもいいと思ったほどの燃焼度の高い演奏でした。
しかし、彼女はピアノの前に座り、アンコール曲を弾こうとしました。手を鍵盤に置く直前、saraiは不意にアンコール曲は《愛の夢》しかないと確信しました。事実、彼女は《愛の夢》を弾き始めました。《展覧会の絵》の激しい演奏の後に精神的な意味も含めてクールダウンするには《愛の夢》しかありませんね。「孤独のなかの神の祝福」以上に大変美しい演奏でした。食事の後の極上のデザートをいただいた思いです。ボレットの名演にも匹敵する演奏でした。
極上のデザートの後は軽いドリンクしかありません。チャイコフスキーの可愛い曲で〆でした。
今日も「悲愴」は大満足とはいきませんでしたが、前回に比べると格段の出来で、何よりもリストも良かったし、《展覧会の絵》は感動しました。ご機嫌でホールを後にしたsaraiでした。
次に上原彩子の演奏を聴くのは来月のインバル指揮東京都響との共演でベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番です。これも楽しみです。
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この記事へのコメント 1, かずさん 2012/08/27 02:31
はじめまして。
私も本日、リサイタル鑑賞しました。悲愴はゆっくりでしたね。最初は違和感を感じましたが、最後はまとまった感じで良かったです。でもちょっと気になったのが、盛り上がったときの高音の早弾きの解像感が足りなかったような気がしました。リストではパラパラとしてたんですが。。。
展覧会の絵は迫力でしたね。上原さんの右手が見えなくて、いきなりプロムナードの大きな音で驚きました。
今日は確かにスタインウェイでしたね。やっぱり違いますかね。。。
私も今日の演奏は満足でした。
2, saraiさん 2012/08/27 09:22
かずさん、はじめまして。コメントありがとうございます。saraiです。
悲愴は確かにぼわーんとした響きで早いパッセージでの微妙なタッチのコントロールが良くなくて、リストとは大違いではありましたね。一言で言えば、弾きこみ不足なんでしょう。もっと繊細で切れのいい演奏を期待していました。全体としては満足の出来ではありましたが、上原彩子らしさがもうひとつでしたね。
展覧会の絵はプロムナードを大音量でクリアーに演奏したのも独自のスタイルですね。抑えるべきところは抑え、ダイナミックな演奏に痺れました。
上原彩子はやはりスタインウェイがいいです。プロコフィエフあたりはYAHAMAでもいいですけどね。
また、コメントお寄せください。
3, masaさん 2012/08/28 11:21
こんにちわ。
私も12月に上原彩子さんのリサイタルを聴きに行く予定です。
プログラムは
ラフマニノフ: 幻想的小品集Op.3より 第2番 前奏曲「鐘」
ラフマニノフ: ライラックOp.21-5
クライスラー=ラフマニノフ: 愛の悲しみ
クライスラー=ラフマニノフ: 愛の喜び
ラフマニノフ: ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調 Op.36
ムソルグスキー: 展覧会の絵
です。
展覧会の絵が素晴らしかった、と聞いて、今からとても楽しみです!
4, saraiさん 2012/08/29 00:25
masaさん、お久しぶりですね。saraiです。
12月のリサイタル、プログラムがいいですね。ラフマニノフと展覧会の絵だったら、素晴らしい演奏になることが確実です。スタインウェイを弾けば、響きがいいんですけどね。名古屋のリサイタルですか?
テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽