さて、今回のプログラムは以下です。
ヴァイオリン:庄司紗矢香
指揮:ヤニック・ネゼ=セガン
管弦楽:ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団
シューマン:歌劇「ゲノフェーファ」序曲 Op.81
プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番ト短調 Op.63
《アンコール》
J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番ト短調からアダージョ
《休憩》
ブラームス:交響曲第4番ホ短調 Op.98
《アンコール》
ブラームス:セレナード第1番からスケルツォ
まず、シューマンの歌劇「ゲノフェーファ」序曲です。曲名こそ知っていますが、これまで聴いたことがありません。急遽、クーベリック指揮ベルリン・フィルのCDで予習しましたが、シューマンらしいロマンに満ちた、よい曲ではありませんか。
セガンもロッテルダム・フィルも初聴きなので、緊張して、第1音を待ちます。期待を上回る響きが聴こえてきました。いかにもシューマンらしい響きが聴こえてきました。音楽的な表現も完璧に余すところなく、シューマンを表現しています。幽玄たるロマンの香り、祝祭的なフィナーレ、すべて満足です。このまま、シューマンの交響曲を聴いてみたいものです。第1番あたりがよさそうです。この日、最高の演奏だったかもしれません。そういえば、ロッテルダムと言えば、ライン川が大西洋に流れ込む河口の街。そのライン川を遡ったボンの街にシューマン夫妻は眠っています。ライン川つながりで、このオーケストラとシューマンは結ばれているのかもしれません。saraiもきたる4月には、ロッテルダムからライン川の旅を始め、ボンでロベルトとクララのシューマン夫妻のお墓参りをする予定です。saraiはシューマンを大好きですからね。
次はお目当ての庄司紗矢香が登場して、プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第2番です。真っ赤なドレスに身を包み、以前よりもさらにスリムになった印象があります。昨年末のリサイタルでは、素晴らしいシューベルトを聴かせてくれ、今や、絶好調の感もあります。
第1楽章、冒頭のヴァイオリン独奏もすっと、難なく、美しい音色で弾ききります。もはや、緊張感はありません。余裕の演奏ですね。そのヴァイオリンの音色はますます、響きが美しくなってきました。これ以上の響きで聴かせてくれる人はそうはいません。もう、ヒラリー・ハーンにも肉薄してきましたね。プロコフィエフらしく、緩急が目まぐるしく、交錯する複雑な曲想を余裕たっぷりに演奏します。音色が崩れることはなく、叙情的な部分での音色の素晴らしいこと、彼女の心境著しいことをうかがわせます。難を言えば、余裕がありすぎて、演奏にスリリングさがあまり感じられないことです。この先、さらに上を目指して、意欲的なテンポの崩しや即興性もお願いしたいところです。
第2楽章はもう、うっとりとリリシズムに酔いしれるのみです。テンポは少しスローでしたが、ヴァイオリンがもたれることはなく、粘らずにすっきりと弾いたのは素晴らしい解釈です。この曲の伝道者であったハイフェッツの無機的な演奏よりも、静謐な抒情を感じられた庄司紗矢香に軍配を上げたいと思います。彼女は最近はこういう魂のこもった演奏をするようになりました。それも力まずにです。大変な音楽家になってきました。
第3楽章はスペイン風のパッセージをばりばりと弾き、気持ちよく、フィナーレ。
全体に力まず、軽く、ヴァイオリンの響きに細心の心配りをしながらの余裕の難曲演奏でした。さすがの演奏であったと言っておきましょう。
次はいよいよ、5月のウィーン・デビューです。今の彼女なら、素晴らしい演奏でウィーンッ子をうならせてくれるでしょう。久々のブラームスのコンチェルト、楽しみです。
あっ・・・、アンコールもありました。庄司紗矢香らしいバッハの無伴奏でした。何よりも、響きの素晴らしさに尽きます。表情の付け方も個性があって、よかったのではないでしょうか。sarai的には、もう少し、オーソドックスなスタイルのほうが好きですが・・・。
休憩後、ブラームスの交響曲第4番です。前半の第1楽章、第2楽章は非常に抑えた演奏で、室内オーケストラなのかと思うほど、耳をそばだてて聴くような繊細な演奏です。ドイツ的な重厚さは微塵もない演奏です。じっくりと聴くと、これはこれでなかなか味があります。
ところが後半の第3楽章、第4楽章ははじけるような演奏。指揮者のセガンが全体をそういう構成に仕立て上げたようです。こういう構成もあるかもしれませんが、saraiは第1楽章から全開モードで行ってほしかったと感じました。まあ、いっそのこと、最後まで抑えきって、枯れた室内交響曲にするのも面白かったかもしれません。どっちつかずはどうもね。オーケストラの響き自体は、音量はともかく、美しい澄みきった響きで、なかなかのものでした。第4楽章も後半の長いフルートソロが素晴らしく、その後の木管、金管の響きは、秋の侘しさを十分に感じさせてくれました。やはり、この曲は秋に聴くと風情がありますね。冬は季節外れかな・・・。
庄司紗矢香のヴァイオリンも聴け、楽しいコンサートでした。しばらく、2月末まではコンサート通いはお休みです。次はいよいよ、ハーゲン・カルテットのベートーヴェン弦楽四重奏曲全曲チクルスが始まります。連日、古今東西の名演奏を聴いて、予習に余念がありません。
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