ところで、ブルックナーの前に演奏したモーツァルトのピアノ協奏曲、大変、気持ちのよい演奏でした。児玉桃のピアノはモーツァルトらしい溌剌としたタッチ、都響はシンプルな響きで、これぞ、モーツァルトという快演でした。
この日のプログラムは以下の内容です。
指揮:エリアフ・インバル
ピアノ:児玉桃
管弦楽:東京都交響楽団
モーツァルト:ピアノ協奏曲第9番変ホ長調《ジュノム》
《休憩》
ブルックナー:交響曲第9番ニ短調(ノヴァーク版)
初めに演奏されたモーツァルトのピアノ協奏曲は上に書いた通り、素晴らしい演奏でした。ピアノの児玉桃は初聴きですが、モーツァルトにぴったりの小気味いいタッチで好感が持てます。都響はコンパクトな編成で、インバルの軽やかな指揮のもと、ほどよく力の抜けた美しいアンサンブルです。ピアノとオーケストラの息もあっています。ピアノ独奏パートの美しさ、ピアノとオーケストラの協奏パートのアンサンブルのよさ、オーケストラの響き、どれを取っても1級品の演奏でした。モーツァルト好きにはたまらない演奏です。
休憩後、いよいよ、ブルックナーの交響曲第9番です。息を飲んで、第1楽章を聴き始めますが、えっという感じ。美しい筈の都響の弦楽セクションの響きが妙に薄っぺらく感じます。アンサンブルも乱れ気味。響きはよく言えば、明るいとも感じますが、これじゃ、ブルックナーにはなりません。このまま終わるのは嫌だなと思っていたら、第2楽章から、巻き返し。第2楽章のスケルツォはのりのりの演奏で、響きもよくなりました。特に弦楽セクションの響きが美しくなりました。重厚というよりも美しい響き。こういうブルックナーも好きです。第2楽章だけで言えば、特上の演奏です。リズム感に満ちて、颯爽とした演奏。これだけの演奏はなかなか聴けません。第3楽章も弦楽セクションの美しい響きが続きます。トータルには、少し完成度に欠ける面もありますが、素晴らしい演奏と言えるでしょう。難を言えば、もっと内面に踏み込んだ聖化された響きが聴きたかったところだけが課題です。技術的には問題ないので、今後、もっと弾き込めば、上がめざせそうです。
日本のオーケストラでこれほどのブルックナーが演奏できれば、上々でしょう。もう少しで、ヨーロッパのオーケストラの演奏に肉薄できそうだと感じました。頑張れ!都響。
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