後半のブラームスは、変な言い方ですが、真正のブラームスでした。ウィーンのオーケストラの体幹の通った美しい響きはブラームスそのものです。変な小細工不要の堂々たるブラームスに終始、魅了されました。
大野和士の指揮、まだ、ウィーン交響楽団を完全にコントロールしている印象はありません。お互いに折り合うところを模索している感じですが、それも面白くは感じます。
この日のプログラムは以下の内容です。
指揮:大野和士
ヴァイオリン:庄司紗矢香
管弦楽:ウィーン交響楽団
モーツァルト:『フィガロの結婚』序曲
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 Op.77
《アンコール》 マックス・レーガー:プレリュード ト短調
《休憩》
ブラームス:交響曲第4番ホ短調 Op.98
《アンコール》
J.シュトラウスⅡ:ワルツ『春の声』
J.シュトラウスⅡ:トリッチ・トラッチ・ポルカ
J.シュトラウスⅡ:『雷鳴と稲妻』
最初はモーツァルトの『フィガロの結婚』序曲です。やたら早いテンポで始まり、さすがのウィーン交響楽団もアンサンブルが揃いません。それでも、次第に合ってきました。大編成での演奏ですから、そうぴったりというわけにはいきませんが、シンフォニーでも聴いているような堂々たる演奏。あまり、オペラの序曲のようなワクワク感はありません。ただ、saraiの趣味にはありませんが、こういう演奏も有りでしょう。
次は一番楽しみな庄司紗矢香のブラームス。第1楽章の後半あたりから、ヴァイオリンの音色の冴えが目立ち始めます。高音の美しさは若い頃はなかった輝きです。カデンツァは美音をベースに内省的な演奏でうっとりと聴かせます。フィナーレは高揚感のある響きで、思わず、禁断の拍手をしたくなります。
第2楽章は最高でした。見事な高音の響き、そして、精神的に充実した演奏。最近の庄司紗矢香はこういうところで、決めてくるようになりました。
第3楽章はもともと得意の勢いあふれる演奏です。これは文句なし。
庄司紗矢香はもともと、彼女のこのブラームスの協奏曲を聴いたのが、彼女にのめりこむきっかけでした。そのころも素晴らしいブラームスを聴かせてくれました。しかし、今はその頃とは次元の異なる高みに達しました。今後、ますます、上をめざして、精進してくれることでしょう。
そうそう、アンコールのレーガーも見事な演奏。最近、レパートリーに加えた曲で、彼女の成熟を感じさせる曲でもあります。
休憩後のブラームスの交響曲第4番はブラームスの響きに酔いしれました。それだけで十分でした。アンサンブルの少々の乱れなど、取るに足りない瑣末なことです。やはり、これがウィーンのブラームスですね。
アンコールのウィンナーワルツは実に見事・・・ウィーンらしい沸き立つような演奏で会場を盛り上げました。
ウィーンの音楽文化を今日も満喫。
また、来月はウィーンの本拠地コンツェルトハウスでツェムリンスキーの《人魚姫》とシェーンベルクの大曲《グレの歌》の2回のコンサートを聴かせてもらう予定です。
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