鉄道で行くか、車で行くか、考えましたが、車で行けば、ついでに途中のドライブも楽しめそうです。地図を広げて検討すると、途中、那須を通りますが、これは何度も行っているのでパス。そういえば、会津とか猪苗代のあたりは行ったことがありません。その辺で温泉を探してみると、裏磐梯高原というキーワード。なんだか、よさそうです。福島市からも車でわずか1時間ちょっとでいけそうです。安い宿を探すと、裏磐梯ロイヤルホテルがシニアプランというのをやっていて、リーズナブルな料金で泊まれそうなので、これに決定。
当日の朝、横浜から湾岸、中環、東北道をひたはしり、予定の4時間は無理でしたが、5時間ほどで福島に到着。途中、宇都宮近くのサービスエリアで昼食代わりに宇都宮餃子を食べました。羽根つき餃子なんですね。美味しかった。

そのまま、福島県立美術館に向かいます。
美術館は小高い山の麓にありました。とても綺麗な建物です。それ以上にびっくりしたのは、平日だというのに人で賑わっていることです。

やはり、テレビで紹介番組が流されたことで人気なんでしょうか。それとも、今や、世の中は若冲ブーム?
何とか駐車場に車を停めらることができて、美術館の入り口に向かいます。

これが美術館の入り口。

チケットの窓口は行列になっています。

そう待たずにチケットをゲット。

パンフレットもいただきました。この若冲展は「若冲が来てくれました」という名称だったようです。今更ながらですが・・・(笑い)。

美術館のロビーは吹き抜けになっていて、綺麗で広々としていますが、人・人・人です。

さあ、いよいよ、入場します。

ここから先は撮影禁止区域です。若冲展ですから、ずらーっと若冲の作品が並んでいるのかと思っていたら、江戸時代の若冲以外の作家の作品が並んでいます。鈴木其一、長澤芦雪、曽我蕭白、河鍋暁斎、酒井抱一、円山応挙という錚々たる画家の作品が綺羅星のごとく、並びますが、やはり、若冲が気になります。
最後に若冲の部屋がありました。ほとんどが墨絵です。若冲は墨絵もいいのですが、saraiはやはり、色絵が好きなんです。最後の最後にお目当ての大作、「鳥獣花木図屏風」がありました。ご覧ください。素晴らしいですね。六曲一双の巨大な屏風で一挙にはお見せできないので、左隻、右隻を順にご紹介します。
これが左隻。様々な鳥が描かれています。

これが右隻。こちらは獣、すなわち動物が描かれていますが白象の存在感が圧倒的です。

白象の部分だけ取り出すと、こんな感じ。

この写真では分かり難いかもしれませんが、小さな四角いブロックを並べることで、絵が出来上がっています。升目描きという技法です。若冲の升目描きの技法で描かれた作品で現存する作品は3点しかありません。若冲の作品の特徴はそもそも、実に精細に描き込まれて超写実的であることです。鶏の絵に代表されるものです。今回も素晴らしい作品、「紫陽花双鶏図」が出品されています。凄い作品です。

この超写実画に比べると、升目描きで描かれた「鳥獣花木図屏風」がいかに特異な存在であるか、分かります。実は升目描きの技法の3作品のうち、若冲の真作だと確認されているのは「白象群獣図」(個人蔵)だけです。
それがこれ(静岡県立美術館のサイトから借用)。

また、鳥獣花木図屏風によく似た作品「樹花鳥獣図屏風」(静岡県立美術館蔵)は若冲の下絵をもとに弟子たちが描いた作品だとされています。
それがこれ(静岡県立美術館のサイトから借用)。

ここからはsaraiの個人的感想です。この「鳥獣花木図屏風」と「樹花鳥獣図屏風」は若冲の真作であろうとなかろうと、ユニークで素晴らしい作品だと思っています。若冲の美点は精密な絵画を描く点はもちろんですが、絵画の構成の素晴らしさ、そして、色彩感覚の見事さが挙げられます。そして、この2作品は構成と色彩の2点で卓越した作品だと感じました。言い忘れましたが、「樹花鳥獣図屏風」と「白象群獣図」は2010年の若冲展@静岡県立美術館で見ました。
いずれも何故か白い象の描かれた升目描きの技法の3作品は若冲の到達した高みを実感させる素晴らしい作品であることを確信しています。
今回、この「鳥獣花木図屏風」を見て、ふっと思い出したのはクレーです。クレーの最高傑作「パルナッソス山へ」と描き方、発想が似ていると感じます。そういえば、クレーは若冲の作品に発想を得た作品も描いています。現在、当ブログで進行中のラインの旅でベルンに行きましたが、そこにあるクレーセンターで《ジャポニズムとクレー》展をやっていて、若冲が与えたクレーへの影響についての展示もありました。近日中にこれについても書く予定です。ともあれ、若冲に関心を寄せていたクレーにこの「鳥獣花木図屏風」、あるいは「樹花鳥獣図屏風」を見せたら、きっと、クレーは嬉しくなって、笑い出すに違いないというのが、このときにsaraiが想像してしまったことです。想像しているsaraiまでが思わず、嬉しくなって笑ってしまったんですからね。
やはり、この若冲展に来てよかった。満足して、会場を後にしました。夕暮れの道をドライブして、裏磐梯に向かいました。この日は温泉にゆっくりと浸かって、疲れを癒しました。明日は裏磐梯の自然を楽しみます。
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