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荒れ狂う嵐!ベートーヴェン弦楽四重奏曲チクルス⑥:ハーゲン・カルテット@トッパンホール 2013.10.1

凄まじい嵐、狂奔する精神、一体、これが音楽と言えるのかどうかも分かりません。ただただ、その嵐のもとに身を置いて、強烈な音の風と同調するのみです。ハーゲン・カルテットのベートーヴェン・チクルスのラストは想像だにしなかった恐ろしいほどの演奏で幕になりました。
後半のプログラム、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第13番は静かに精妙な和音で始まりました。何か、凄いことが起きそうだと感じ始めたのは第4楽章。いつもはすっと聴いてしまう第4楽章が妙に心に響いてきます。そして、第5楽章のカヴァティーナ。その優しく、悲しい旋律に心を打たれ、うっすらと涙が滲みます。この素晴らしいカヴァティーナの後には、いつものフィナーレではなく、大フーガ。そう、それしかないでしょう。このカヴァティーナの後をあっさりとしたフィナーレで閉じてはいけません。ベートーヴェンが最初に意図した通りの大フーガこそ、ふさわしい音楽です。しかし、意外におとなしい演奏で始まりました。これは静かなカヴァティーナにあまりの飛躍で大フーガを演奏すると、連続性が損なわれるという意図かもしれません。しかし、それも一時のこと。当時としては革命的であったであろう不協和音の激しい嵐が襲ってきます。不協和音が収まっても、嵐が静まることはありません。凄絶な精神の叫びが響き渡ります。もう、これは音楽という枠で捉えられない人間の原初的な精神の昇華です。厳密なソナタ形式を確立したベートーヴェン自身が、芸術の根本に立ち返って、音楽の規則や形式から自由を獲得して、自らの内面をさらけだしたものです。それをハーゲン・カルテットが芸術の使徒として、我々、聴衆に提示してくれたんだと思います。この精神の嵐に対して、saraiはもう無防備に立ち尽くし、涙がとめどなく流れ落ちるに任せるだけ。それ以上、何ができるでしょう。ベートーヴェンの魂がハーゲン・カルテットの魂を通して、saraiの魂に流れ込んできます。魂の一体化、芸術の神髄ですね。
今回のチクルスでは、正直言って、出来、不出来はありました。でも、今日のような演奏をできる団体はsaraiの知る限り、誰もいません。きっぱりと断言できます。恐ろしいほどの実力を持った弦楽四重奏団であることをはっきりと思い知らされました。ベートーヴェン後期の3曲の弦楽四重奏曲、第13番、第14番、第15番は不滅の音楽ですが、それらをハーゲン・カルテットが超絶的なレベルで演奏してくれました。これらを聴いたのはsaraiの人生の財産とも言えます。彼らのCDを販売していましたが、ある意味、恐くて聴けそうにもないというのが正直なところ。いつの日か、気持ちも落ち着いたら、聴いてみましょう。

これ以上、もう書けませんが、今日のプログラムだけは紹介しておきます。

弦楽四重奏曲第9番ハ長調Op.59-3《ラズモフスキー第3番》

《休憩》

弦楽四重奏曲第13番変ロ長調Op.130 + 大フーガ 変ロ長調Op.133

そうそう、このコンサートは今年のベストをハイティンク+コンセルトヘボウ管のブルックナー交響曲第8番と競うことになりそうです。今年は本当に音楽の当たり年でとても嬉しい!!

なお、これまでのチクルスについては、前期シリーズの1日目はここ、2日目はここ、3日目はここ、そして、後期シリーズの1日目はここ、2日目はここをご覧ください。


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       ハーゲン・カルテット,  

ラインの旅:スイス編~ベルンの朝

2013年4月14日日曜日@スイス・ベルン/1回目

旅の11日目です。

ライン川を遡ってスイスのバーゼルまで来ましたが、ラインの旅は1日だけお休みして、ちょっとベルンに寄り道。目的はクレーの名画たちに再会するためです。とりわけ、最高傑作とも言える《パルナッソス山へ》がお目当てです。
明日からはまたライン川の旅の最終段階に戻ります。

朝はいつも通り、saraiは遅くまで朝寝。配偶者は早くから起き出したようです。ホテルの部屋には、小さなバルコニーがついています。


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バルコニーに出て通りを覘くと、まだ朝のこの時間は天気がはっきりしませんが、どうやら晴れるようです。やったね。


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朝食ルームに向かいます。とても清潔で綺麗なレストラン。壁には、クレーと思われる絵が飾られています。クレーの街に滞在している実感でいっぱいになります。


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シンプルなビュッフェに朝食が用意されています。


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軽く、こんなところを頂きましょう。


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朝食を終え部屋に戻りますが、部屋の前の廊下の壁には、何とクレーの《パルナッソス山へ》の複製画がかかっています。ベルンの街の宝とも言っていい絵画ですものね。


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再び部屋のバルコニーから外を眺めると、ベルンの朝は雲一つない青空が広がっています。先ほど眺めたときから2時間ほどで、こんなに爽やかな空になりました。


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気温もどんどん上がります。冬の気配よさらばっていうところです。通りの建物越しに教会のドームが頭をのぞかせています。


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駅に向かいます。立派な教会があります。精霊教会でしょうか。


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駅前から12番のバスに乗って、終点にあるパウル・クレー・センターに出かけます。ここへは2度目となるので、移動にも慣れています(その筈でした)。


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バスのチケットを買いましょう。操作方法にも慣れてきました。お金の表示を見て配偶者が一言・・・ここはスイスだからスイスフランだよ。saraiは、茫然。ちゃんと両替はしてきたのだけど、ここがスイスであることをすっかり忘れていました。バス停の隅で、saraiの腰に付けた貴重品袋からごそごそと配偶者がお金を取り出してくれます。ハイハイ、緊張して行動しますよ。無事にチケットが買えました。帰りの分も含めて、2人分で4枚購入。


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さあ、12番のバスを探しましょう。


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やって来るのが見えました。乗る前に確認すると、反対方向とのこと。運転手さんが指さす方向に移動します。12番のバス乗り場の表示があるので、そこで待ちますが、なんだか人が少ないような、いないような・・・。時刻になってもバスは来ません。あれ?・・・。saraiが時刻表の下に書いてある説明を読むと(ドイツ語だ!)、乗り場はK番と書いてあるような気がします。K番を探してウロウロすると、見つかりました。


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確かにここに12番のバスが来るみたいです。どうも道路工事の影響で変更になったような気がします。お願いだから、旅行者にもはっきり分かるようにしておいてね。お蔭でかなり時間をロスしてしまいました。
K番の標識の前で待っていると、バスはすぐに来ました。
駅前からクレーセンターへのバスの走るルートを地図で確認しておきましょう。アーレ川を渡って、町外れまで行きます。(大雑把なルートです。)


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旧市内の観光地のど真ん中の石畳の道をゴトゴトとバスは進み、アーレ川に差し掛かります。


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アーレ川にかかるニーデック橋をバスが渡っていきます。川は見えませんが、バラ公園の丘が綺麗です。


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橋を渡り切り、熊公園を抜け、バラ園への上り道を過ぎ、右折して、川沿いに坂道を上っていきます。すると、上から見下ろす形で、ようやくアーレ川とニーデック橋が見えます。右手の丘はバラ公園です。とても美しい眺めですね。


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バスは高級住宅街の高台を上がっていきます。バスの停留所案内の電子表示は分かりやすくて、とても参考になります。終点のクレーセンターはまだまだのようです。


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この記事へのコメント

1, レイネさん 2013/10/03 22:06
ベルンは、愛らしい街ですよね、首都らしさがなくて、こじんまりとして。
さて、さて、別件ですが、DNOの『ファウスト』マルグリット役が、ヨンチェヴァから別の歌手に変更になってるようです。本人のサイトのスケジュールに載ってなかったので怪しんでましたが、DNOでもキャストチェンジになってますので、彼女目当てでアムス遠征をご予定でしたら、変更された方がよろしいかと思います。METにジルダ役で出演が決まったようで、ご同慶。

2, saraiさん 2013/10/03 23:40
そうですね。ベルンの首都機能は観光客には気が付かない感じです。チューリッヒのほうがよっぽど、首都でもおかしくないですね。
ヨンチェヴァの情報ありがとうございます。結局、ガランチャもご懐妊で4月のウィーンの《ばらの騎士》もおじゃん。幸い、旅の準備はまったくしていないので、何も被害はありませんでした。また、白紙状態で来年の旅を企画します。
ヨンチェヴァのウィーン・デビューでフレミングが聴きに来ていたので、きっと、来年はMETデビューだと思っていました。もう、裏では話が決まっていたのでしょうね。まったく、ご同慶の至りです。これから、ヨンチェヴァ時代が始まるかも。ネトレプコは残念ながら、商業ベースに乗り過ぎて、まともなオペラファンが聴きたくても聴けない状態ですものね。

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ラインの旅:スイス編~アルプスの白銀とクレーセンター

2013年4月14日日曜日@スイス・ベルン/2回目

そろそろ美術館到着かなと思う頃、丘の向こうに白銀に輝くアルプスの峰々がくっきりと見えました。


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あまりの美しさに配偶者が歓声を上げると、向かいに座っていたおば様が綺麗でしょうとニッコリされました。美術館のバス停に着き(終点)、おば様と一緒にバスを降ります。今日は本当に素晴らしいお天気ですねと話しかけると、「長~い冬だったのよ」とぽつりとおっしゃいました。待ちわびた春だったんですね。一面、美しい草原が広がっています。


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駅前からのバスのルートをもう一度、地図で確認しておきましょう。


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クレーセンターのユニークなオブジェも見えます。これもクレーの作品をもとにしたものでしょう。


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クレーセンターの波を打つような独特の建物も近くなってきます。


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美しい緑の草原の向こうに白い雪山・・・対比の妙です。


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配偶者はクレーをとるかアルプスの眺めをとるか、究極の選択だと言います。とりあえずアルプスの眺めを写真に収めてクレーセンターに入るっていうのが、saraiのあれもこれもの答えです。
saraiはそれを実行に移すべく、近くの小高いところに登って、アルプスの方をじっと見やり写真に収めます。


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アルプスはこれで一応の幕。今度はクレーセンターに入りましょう。これがクレーセンターの真ん中から右手の建物。とてもインパクトがありますね。


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左手にも同様に続いています。


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クレーセンターの入り口は建物の波の低い部分にあります。アプローチがそこに続いています。


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建物に入ると、木製の床のロビーが左右にどこまでも広がっています。


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ロビーの一角にある窓口のカウンターでチケットを買おうとすると、受付の女性から統計をとっているのでどちらから来たのか教えて欲しいとのこと。日本からだと言うと、その受付の女性は少し興奮気味に何かを話し始めました。よく聞くと、ちょうどジャポニズム展をやっているそうで、是非楽しんでねっていうことです。これが購入したチケット。あっさりしている上に、印字までかすれています。お洒落なクレーセンターにそぐいまませんね。


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今日の特別展は《ジャポニズムとクレー》展と《ヤウレンスキーとクレー》展の2つです。


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まずは《ヤウレンスキーとクレー》展です。


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この2人はミュンヘンの芸術活動の青騎士の仲間ですが、かなり交流があったようで、作風の似た絵もあります。クレーの有名な作品はあまり展示されていませんが、それでもクレーの作品の質はどれも素晴らしいものです。ヤウレンスキーは独特な鮮やかな色彩を混ぜた大きな人間の顔の絵が印象的です。頭部を描いた作品はヤウレンスキーの後期のものですね。

続いて、階下での《ジャポニズムとクレー》展です。


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北斎、若冲、広重などの作品を完璧に理解し、それを自分の中で再構成したクレーの作品が見事の一語です。このエリアの係の人がどうも日本人っぽいので、ちょっと声を掛けてみると、ベルンに住んでいる日本人でボランティアをしているとのことです。大分日本語がたどたどしいので、こちらが長いのでしょうね、かなりご高齢ですし、これからもお元気で活躍してくださいね。

この後、《ジャポニズムとクレー》展の展示内容をご紹介していきます。基本的には、まず日本人画家の作品を示し、それをクレーがどう再構成したのかを見ていきます。こんな感じです。
これは葛飾北斎の作品。風景画です。


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それを昇華したのがこのクレーの作品。1900年の作品で無題。


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あくまでも基本的なプラン、風景の扱い方を参考にヨーロッパの風景に移し替えています。

こんな感じでご紹介していきますね。


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ラインの旅:スイス編~ベルンのクレーセンターの《ジャポニズムとクレー》展、その1

2013年4月14日日曜日@スイス・ベルン/3回目

ベルンのクレーセンター、《ジャポニズムとクレー》展の展示内容をご紹介していきます。

これは葛飾北斎の富嶽三十六景、東海道程ヶ谷。


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クレーはこんな風に構図だけを借用し、ヨーロッパの風景に仕立て上げました。1906年の作品で無題。


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これは歌川広重の名所江戸百景。


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クレーは一見、似ても似つかない絵に昇華させました。凄いイメージ想像・連想ですね。1908年の作品で《バルコニーからの広場の風景》。


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これは葛飾北斎の北斎漫画。


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クレーは一連のユーモラスな魚の絵を作り上げました。いずれも1901年の作品で無題。


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これも葛飾北斎の北斎漫画。色々な男の体の姿勢です。


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クレーはこれを線画で表現しようとしました。1905年の作品で《drei auf einem Bein tanzende Akte》。


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これも葛飾北斎の北斎漫画。色々な男たちの体の姿勢が続きます。


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クレーはこれを応用して、ユーモラスな光景を描きました。1906年の作品で《Mädchen, sich bueckend, von einem schlangenartigen Dackel gefolgt》。


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これは東洲斎写楽の役者絵。


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クレーはこれに線画で挑戦です。1906年の作品で《Auguren im Gespräch》。


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これは仏像。


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クレーは線画でグロテスクに表現しました。1905年の作品で《Grimasse mit Raubtiergebiss》。


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まだまだ、続きますよ。しばらく、付き合ってください。面白いでしょう?


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リディア・バイチ・ヴァイオリン・リサイタル@横浜上大岡ひまわりの郷 2013.10.5

ひまわりの郷コンサート・シリーズ2013年秋編の第1回です。
美貌のヴァイオリニスト、リディア・バイチのリサイタルです。
リディア・バイチはロシアのサンクト・ペテルブルグ生まれでオーストリア育ち。現在、ウィーン在住です。
今日のリサイタルは名曲アワーのようなものでしたが、彼女の実力の片鱗は聴き取れました。ただ、本格的な曲目を聴いてみないと、本当の実力は分かりませんね。ロリン・マゼールが評価していたそうですから、これからが注目かもしれません。

今日のプログラムは以下です。

 ヴァイオリン:リディア・バイチ Lidia Baich
 ピアノ:マティアス・フレッツベルガー Matthias Fletzberger


 プロコフィエフ:「ロメオとジュリエット」組曲
           前奏曲、少女ジュリエット、騎士たちの踊り、
           バルコニーの情景、マーキュシオ、決闘とティボルトの死
 ポンキエッリ: 時の踊り
 ブラームス(ヨアヒム編):ハンガリー舞曲集 第1番、第6番、第5番
 リスト:ハンガリー狂詩曲第2番

《休憩》

 ムソルグスキー: はげ山の一夜
 バイチ&フレッツベルガー:「ウィーンの森の物語」
                ヨハン・シュトラウスのテーマによるファンタジー
 リムスキー=コルサコフ: シェエラザード

《アンコール》
 ハチャトゥリアン:バレエ音楽「スパルタクス」より、アダージョ、変奏曲、バルカロール

  編曲はバイチ&フレッツベルガーによる(ブラームスを除く)


まず、プロコフィエフの「ロメオとジュリエット」組曲。笑顔の可愛いバイチですが、ヴァイオリンは力強い響きです。その豊かな響きに驚かされますが、愛用のヴァイオリンはガルネリ・デル・ジェスだそうです。特に低域のたっぷりした響きが印象深いところです。《騎士たちの踊り》の有名なメロディーはその力強い響きで圧巻の演奏です。バイチのヴァイオリンは自由奔放な感じの弾き方で、少し荒っぽくはありますが、突っ込みの鋭さには好感を抱きました。少々、ピアノとずれるのは、かえって小気味いいくらいです。おとなしく、合わせるだけの演奏はつまりませんからね。それでも、世界のトップクラスになるためには、演奏の精度を上げる必要はあるでしょう。

次はポンキエッリの「時の踊り」。あの「レモンのキッス」の原曲ですね。有名なメロディーは美しい演奏。終盤のアップテンポなパートはなかなかの迫力でした。

ブラームスのハンガリー舞曲はこの日一番の演奏。特にたっぷりした低音を響かせた第1番は素晴らしい演奏。ピアノとのずれは鑑賞上、まったく、気になりませんでした。

リストのハンガリー狂詩曲もブラームスのハンガリー舞曲と同様に素晴らしい演奏。耳馴染んだ旋律を楽しみことができました。バイチは濃厚なロマン派の演奏が得意なのではと思われます。

休憩後、後半の3曲は今一つ、集中して聴くことができませんでした。綺麗な演奏なのですが、インパクトに欠けるという感じ。シェエラザードのテーマは美しく響きましたが、全体として、ヴァイオリンとピアノでの演奏はちょっと無理のある感じでしょうか。

久しぶりの名曲コンサートとしては、美しい演奏で出色の出来。十分、楽しませてもらいました。


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天才バッハの音楽、ヴァイオリン・ソナタ全曲:ツィンマーマン@トッパンホール 2013.10.6

今日もトッパンホール。この1週間ほどで4回目です。すっかり、会場に通うのにも慣れました。

表題の通り、バッハの天才ぶりをまざまざと実感するリサイタルでした。ツィンマーマン(ヴァイオリニストの方)はそのバッハを美しく、そして、誇張することもなく、見事に表現。今日のリサイタルはチェンバロではなく、ピアノとの協演でした。ピアノよりもチェンバロのほうが華やかな響きだったでしょうが、ピアノのこもりがちな響きがヴァイオリンのピュアーな響きを引き立てて、かえって好感が持てる演奏でした。

今日のプログラムは以下です。

ヴァイオリン:フランク・ペーター・ツィンマーマン
ピアノ:エンリコ・パーチェ

ヨハン・セバスティアン・バッハ

ヴァイオリンとピアノのためのソナタ全曲

第1番ロ短調BWV1014
第2番イ長調BWV1015
第3番ホ長調BWV1016

《休憩》

第4番ハ短調BWV1017
第5番ヘ短調BWV1018
第6番ト長調BWV1019

《アンコール》

第6番ト長調BWV1019a(第6番初稿)より、第4楽章


まず、第1番。第1番から第5番までは、緩急緩急という4楽章の教会ソナタ形式です。第1楽章は短調の少し悲しげなメロディーの美しさに心が清められる思いです。第2楽章は一転して、活発な楽想に愉悦に浸って、心が躍ります。なかなか、好調な滑り出しです。

第2番。緩徐楽章の第3楽章は実に見事な演奏。うっとりと美しいメロディーに陶酔します。活発な第4楽章はまたしても、愉悦に浸る心楽しい演奏です。

第3番。この演奏がこの日の白眉でした。第3楽章の余りの美しさに心が耐え切れないほどの思いです。バッハの真髄を堪能させてもらい、天にも昇る心地。第4楽章は躍動する音楽に心が高揚。なんて素晴らしい音楽、そして、演奏。

休憩後、第4番。第1楽章の主題は、「マタイ受難曲」中、最高の名曲の名曲の第47曲(旧版の番号)のアルトの素晴らしいアリア、エルバルメ・ディッヒ、マイン・ゴット(憐れみたまえ、我が神よ)のオブリガート・ヴァイオリンの旋律と親近関係にある旋律です。
当然、うっとりとした演奏を期待しますが、ツィンマーマンは無情にも、速いテンポでさらっと弾きます。もしもsaraiがヴァイオリンを弾けたら、ぐっと感情を込めて弾きたいところですが、これがツィンマーマンの解釈なんですね。まあ、この曲が「マタイ受難曲」じゃないし、仕方ありません。第2楽章、第4楽章というアレグロの楽章に力点が置かれた演奏で、それはそれで素晴らしい演奏です。

第5番。これも第2楽章のアレグロ、第4楽章のヴィヴァーチェという速い楽章の演奏が見事。緩徐楽章の第3楽章のヴァイオリンの重音による和音のシンプルな進行も妙に心に響いてきました。

第6番。これは第5番までの緩急緩急という4楽章の教会ソナタ形式とは異なり、5楽章構成で第1楽章はアレグロという斬新なものになっています。また、中央の第3楽章はピアノ独奏になっています。全体にピアノが活躍する曲で、ピアノのパーチェの優れた演奏が目立ちました。第4楽章、第5楽章とヴァイオリンの響きもよく、圧巻のフィナーレになりました。

これで当然、お終いと思っていたら、何とアンコール曲が演奏されました。耳慣れない曲でしたが、これは珍しい第6番の初稿の第4楽章のアダージョ。初稿では、第3楽章と第4楽章が別のものであり、現在はBWV1019aとして、残されています。最終版の第6番BWV1019は、バッハが新たに現在の第3楽章(ピアノ独奏)、第4楽章、第5楽章を作曲しました。初稿では、第4楽章の後は第1楽章を繰り返す形だったようです。アンコールで演奏されたアダージョも美しい演奏でした。ところが、このアダージョは第4楽章で最後は半終止で終わります。本来は次の楽章、繰り返しの第1楽章に続くところです。ツィンマーマンはここで悪戯っぽく、目をきょろきょろさせます。聴衆もここで終わるのか、続くのか、様子を見ていましたが、笑いが起きて、ここでお終い。まさか、また、第1楽章を演奏するわけにはいきませんものね。残念・・・。

今日の聴衆の素晴らしさにも言及しておかないといけないでしょう。演奏者の登場前、まだ、客席の明かりが暗くなる前から、シーンと静まり返っています。これから始まる音楽への期待感を聴衆全員で共有。聴衆はヴァイオリンを弾く人が半分、バッハを愛する人が半分という構成のように感じられます。演奏者、聴衆、一体になった気持ちのよいリサイタルでした。

最後になりましたが、今回の予習について、述べておきましょう。定番中の定番、シェリングとヴァルヒャのヴァイオリンとチェンバロの録音を聴きました。これは素晴らしい演奏。やはり、チェンバロはいいです。アナログ・ディスクの数少ない所有盤で聴きましたが、実に美しい音です。これはsaraiの宝として自慢できますよ。
ただ、この予習で終えたら、今日のリサイタルのピアノに不満を持ちそうなので、ツィンマーマンとパーチェのDVDを聴いておきました。Kloster Pollingの図書室での演奏で画面もとても美しいものでした。


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ラインの旅:スイス編~ベルンのクレーセンターの《ジャポニズムとクレー》展、その2

2013年4月14日日曜日@スイス・ベルン/4回目

ベルンのクレーセンター、《ジャポニズムとクレー》展の展示内容を前回からご紹介しています。

ところでこの特別展示は2009年に千葉市美術館、静岡県立美術館、横須賀美術館で開催した「パウル・クレー 東洋への夢」をベースとしたものだそうです。クレーセンターの奥田修さんとケルン東洋美術館の柿沼万里江さんが企画・監修されたそうです。今回の特別展の正式な名称は「ジャポニスムから禅まで パウル・クレーと東アジア」展です。

では、前回からの続きです。

これは葛飾北斎。


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クレーは子供たちの動きに置き換えて、線画で表現しました。1908年の作品で《Sechs Skizzen Blättchen nach Kindern im Freien》。


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これは渓斎 英泉(けいさい えいせん)の 『当世好物八契』。


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クレーはこの絵とは直接は関係ないのかもしれませんが、中国人と思われる女性を似たような構図で描いています。1927年の作品。


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これは相阿弥真相(そうあみ しんそう)の風景画。


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クレーはヨーロッパの風景を似たようなタッチで描いています。1910年の作品で《Kanal b.Sugiez》。


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これは賢江 祥啓( けんこうしょうけい)の風景画。


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クレーが描くとこうなります。1910年の作品で《Steg, bei Regen》。


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これは曽我蕭白の東屋のある風景画。


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これもクレーが描くとこうなります。1912年の作品で《Pension in d.Schweiz》。


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これは作者不詳の蒔絵。


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これはクレーの絵ではなく、青騎士の仲間のマルクの描いた得意の鹿の絵ですが、蒔絵風の表現が面白いですね。1913年の絵葉書。


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これは伊藤若冲の寒山拾得。


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クレーはこの絵などを咀嚼した上で、見事に子供の姿をデフォルメして描いています。1938年の作品で《Kindheit》。


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これは狩野秀信の水墨画。


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クレーはこの絵を再構成した上で、見事な作品を描きました。1940年の作品で《ein Amphibien-Streitross》。


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これは亀田 鵬斎(かめだ ぼうさい)の書。


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クレーはこの書をイメージとして捉え、素晴らしい抽象画を描きました。1938年の作品で《vorsicht Schlangenl》。


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まだまだ、続きますよ。クレーの素晴らしさが爆発していますね。


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義経千本桜:通し狂言@歌舞伎座 2013.10.8

今日は初の新歌舞伎座。まだ、こけら落とし公演が続いており、10月と11月は通し狂言の公演。3大名作歌舞伎の「義経千本桜」と「仮名手本忠臣蔵」です。今日は「義経千本桜」の通し狂言、全6幕を昼と夜の公演、ぶっ続けで見ます。オペラでも、こんな長大なものは見たことがありません。朝の11時から夜の9時前まで、延々と見続けました。面白かったの何のって、時間を忘れるほどでした。

朝10時半頃に地下鉄の東銀座駅に到着。駅からは歌舞伎座の地下に直結する通路ができていて、とても便利になりました。


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歌舞伎座の地下には地下街ができていて、大変混雑しています。ここからはエスカレーターで地上に出ます。


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地上に出ると、歌舞伎座の前に出ます。ここからの雰囲気は以前の歌舞伎座とそっくりな感じ。


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しかし、正面から上を見上げると、背後に巨大な歌舞伎座ビルが聳えています。やはり、新歌舞伎座になったんだなあという思いになります。


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歌舞伎座の中にはいると、中はピカピカ。ロビーも赤じゅうたんで立派。


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このロビーの壁にちょっとゆかりのある若手俳優の中村梅乃さんの名題昇進のあいさつが貼ってあり、嬉しく思います。今日も彼は2幕目に出演します。


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ホール内は広々としていて、真新しいです。1800も客席があるそうです。今日は1階席の3列目、4列目で鑑賞します。


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今日の公演内容は以下です。

通し狂言 義経千本桜

《昼の部》

序幕  鳥居前
2幕目 渡海屋
    大物浦
3幕目 道行初音旅

《夜の部》

4幕目 木の実
    小金吾討死
5幕目 すし屋
大詰  川連法眼館

この義経千本桜は、義経が頼朝に都を追われて、流浪する旅が底流にあり、源平合戦で討死した筈の平家方の知盛、維盛、そして、安徳天皇が生き延びているという設定で、さまざまな人間模様が描かれます。共通テーマは親子の色々な形の情愛です。まあ、よくぞ、こんなに複雑な筋を考え出したものだと感心するくらいのもので、当ブログで詳細なストーリーは語り尽くせません。詳細はここをご参照ください。

義経千本桜では、大きな役どころが3人。さすがにそれぞれを名優が見事に演じ切りました。

まず、銀平、実は平知盛役の中村吉右衛門。2幕目の渡海屋・大物浦で、存在感だけでも圧倒的。銀平役での吉右衛門らしい余裕のある演技で唸らせます。そして、知盛の姿の立派さ。最後に碇綱を巻き付けて、壮絶な最期を遂げるところは実に感動的です。吉右衛門は歌舞伎界の宝です。現代を代表する最高の名優だと感じます。

次は、いがみの権太役の片岡仁左衛門。5幕目のすし屋での、小悪党・善人を演じ分ける難しい役どころを見事にこなします。悪人が改心して善人になることを歌舞伎用語で「モドリ」というそうですが、そこが最高に素晴らしい場面です。この場面、バックに三味線と篠笛の素晴らしい音楽も聴こえてきて、仁左衛門の迫真の演技ともども、胸が熱くなります。いわゆる、世話物と呼ばれる、お涙頂戴の幕ですが、これに日本人的感性のsaraiは弱くて、涙もろくなってしまいます。そうそう、仁左衛門は関西の俳優。彼がこの役で登場したからには、セリフは当然、関西弁。これが違和感なく、すっとはいってくるところも凄い。

最後は、佐藤忠信、実は源九郎狐役の尾上菊五郎。大詰の川連法眼館での、ひょうきんで瑞々しい狐の演技が見事です。一体、おいくつなんでしょう。意外性のある立ち回り、そして、何とも立派なセリフ回しには感嘆。

このほか、義経役の中村梅玉は出番はそう多くはないものの風格のある存在感を示していました。また、銀平の女房お柳、実は典侍(すけ)の局(つぼね)役の中村芝雀の圧巻の演技にも泣かされました。

そして、浄瑠璃の語りと三味線の見事さには恐れ入りました。西洋音楽のトップクラスとも十分に渡り合える気魄に満ちた演奏は心に響きました。ついつい、視線が舞台から浄瑠璃の演奏者に移ってしまうこともしばしばでした。

ところで、《昼の部》が終わったところで、名題昇進した中村梅乃さんの楽屋を訪問。


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お祝いの言葉を述べさせてもらいました。女形の中村梅乃さんの素顔はさすがにハンサム!でした。
歌舞伎座の楽屋にはいるのはもちろん初めてです。廊下を通りながら、キョロキョロ。仁左衛門の楽屋は立派でした。


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舞台裏もちらっと見えました。


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食事ですが、昼食は館内でお弁当を買って、客席でいただきました。
夕食ははりこんで、豪華松花堂弁当を事前に予約。《夜の部》の5幕目の後の30分の休憩時間に館内のお食事処「鳳」でいただきました。とても美味しい夕食になりました。


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オペラ・オペレッタも素晴らしいですが、日本文化の歌舞伎も西洋文化に負けない芸術的感動があります。たまには歌舞伎に足を運んで、日本文化の精華を味わいものだと思った次第。


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ラインの旅:スイス編~ベルンのクレーセンターの《ジャポニズムとクレー》展、その3

2013年4月14日日曜日@スイス・ベルン/5回目

ベルンのクレーセンター、《ジャポニズムとクレー》展の展示内容のご紹介、3回目です。今回が最終回になります。

では、前回からの続きです。

これは本阿弥光悦に古今和歌集からの1首。


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クレーの作品には驚かされます。アルファベットでイメージを表現しています。とても面白いですね。1935年の作品で《Albumblatt》。


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これは作者不詳の 『源氏物語歌合せ』。


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クレーはこんなに面白い2つの作品を描いています。1926年、1925年の作品。


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これは作者不詳の仏像。


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クレーは珍しく、立体的な作品を作っています。うーん、これもクレーらしいものですが、思わず、笑ってしまいます。1920年の作品で無題。


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これは鎌倉時代の慶派仏師の康円の地蔵菩薩像。


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クレーは素晴らしい作品を描き上げました。素晴らしい作品にじっと見入るのみです。1935年の作品で《Büßer》。


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これは鎌倉における水墨画派の祖、仲安真康(ちゅうあん しんこう)の釈迦牟尼。前回登場した賢江祥啓(けんこう しょうけい)は彼の弟子。


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クレーのこの絵と直接つながりがあるかどうかは、saraiには判断できませんが、何とも穏やかな表情の作品ではありませんか。1938年の作品で《Abschied nehmend》。


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これは臨済宗黄檗派の僧(万福寺5代管長)の高泉性敦(こうせん しょうとん)の「達磨図」。


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クレーの有名な作品の「ティンパニ奏者」と関連あるのでしょうか。黒く太い力強い線、そして、ぎょろっとした眼は確かに達磨を思わせるところも感じないではありません。1940年の作品。


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これは備前国岡山藩の第5代藩主、池田 治政(いけだ はるまさ)の作品。書でしょうか、水墨画でしょうか。


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これはクレーの作品。直接の関連は分かりませんが、円を四角に置き換えたとも思えます。1940年の作品で《der Schrank》。


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ジャポニズムとクレーについてはこれで終了。なかなか、面白い展示でした。ますます、クレーに親近感がわきます。クレーは特に日本で評価の高い画家です。saraiも配偶者もファンです。

この後の展示は逆にクレーによる日本のアーティストへの影響についてです。これはざっと、ご紹介するに留めます。

これは武満徹の「マージナリア」。1976年作曲のオーケストラ曲。


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武満徹は色んなものに触発されて、この作品を創作しましたが、クレーのこの作品からも啓示を受けたと本人が語っています。クレーの1930年の作品《余白に(Ad Marginem)》。


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詩人の谷川俊太郎もクレーが大好きだったようです。「クレーの絵本」というクレーの絵に詩をつけた本を出しています。
「ティンパニ奏者」が再登場。


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次のような詩をこの絵に添えています。

どんなおおきなおとも
しずけさをこわすことはできない
どんなおおきなおとも
しずけさのなかでなりひびく
ことりのさえずりと
ミサイルのばくはつとを
しずけさはともにそのうでにだきとめる
しずけさはとわにそのうでに


次は「死と炎」(1940)です。


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次のような詩をこの絵に添えています。

かわりに死んでくれる人がいないので
わたしはじぶんでしなねばならない
だれのほねでもない
わたしはわたしのほねになる
かなしみ
かわのながれ
ひとびとのおしゃべり
あさつゆにぬれたくものす
そのどれひとつとして
わたしはたずさえてゆくことができない
せめてすきなうただけは
きこえていてはくれぬだろうか
わたしのほねのみみに


このほか、漫画にもなっていたようです。

とても面白いものを見ることができて、満足です。
これで2度目のクレーセンター訪問も完了です。次はクレーの《パルナッソス山へ》を見に行きましょう。


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ラインの旅:スイス編~《パルナッソス山へ》@ベルン市立美術館

2013年4月14日日曜日@スイス・ベルン/6回目

クレーセンターを出ると、また、アルプスの白銀が目に飛び込んできます。


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建物の屋根が少し邪魔になりますが、それがあまり気にならないくらいアルプスは綺麗に輝いています。


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これがクレーセンターの全景です。素晴らしい建築ですね。関空を設計したレンゾ・ピアノが設した近代的な建物です。


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クレーセンターの周りは緑の野原になっていて、散歩道も整備されています。時間があれば、ゆっくりしたいところです。


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アルプスにもクレーにも後ろ髪をひかれながら、またバスに乗り込みます。車窓からもアルプスが丸見えです。


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バスがアーレ川に近づくと、ベルンの旧市街の街並みが見えてきます。


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アーレ川のほとりの熊公園の横を過ぎます。


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ニーデック橋の上からは、緑色のアーレ川の美しい水面が見えます。


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橋を渡ると、旧市街。


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ベルン名物の噴水(泉)も点在しています。


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バスで駅前まで戻りました。


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次に、ベルン市立美術館に向かいます。途中、スイス連邦裁判所の前を通ります。ようやく、スイスの首都に来た実感がわきました。広場は子供たちの水遊び場にもなっているようですね。


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ベルンの市街地はちょっと道が複雑なのと、クレーセンターで長い時間楽しんだので、時間があまりありません。間違いは許されないので、通りがかりの女性に道を尋ねると、またまた親切に教えてくれました。本当にありがたいです。というわけで、最短時間でベルン市立美術館に到着。


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ベルン市立美術館を地図で確認しておきましょう。


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ここには、何と言ってもクレーの最高傑作《パルナッソス山へ》があります。単純であるようで、複雑な絵です。色彩の味わいが何とも言えず、輝くような作品です。天才にのみ、描ける作品です。


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それにしても、クレーの最高傑作をクレーセンターに置かないのは不便なことです。この市立美術館には、モディリアニの素晴らしい裸婦画。、


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マルクの代表作3点(そのうち、1点は馬を後ろから描いた絵で配偶者のお気に入りですが、残念ながら、ご紹介できません)。


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ピカソの傑作数点、ブラックの傑作。


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マティスの佳作3点。


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セザンヌ2点、ホドラーの大作。


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ミロの佳作、カンディンスキー。


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ゴッホのオランダ時代の農婦のごつごつした絵、美しいボッティチェリなどがあり、最後の展示室はキルヒナーの絵画で埋め尽くされ、壮観です。


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この中で、saraiが気に入ったのは、クレーは別格として、モディリアニ、ボッティチェリ、マティスあたりです。配偶者は、なんだか収蔵品に今一つ不満の様子。大好きな《パルナッソス山へ》があるにもかかわらず、もうここへは今後来ないだろうという気分だそうです。

ベルン市立美術館を出て、そろそろ、次の目的地チューリッヒに向かいましょう。予約した電車の時間が迫ってきました。


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ラインの旅:スイス編~ベルンの美しきアーレ川、そして、チューリッヒへの鉄道の旅

2013年4月14日日曜日@スイス・ベルン/7回目

ベルンの街ではクレーの絵画を楽しみました。クレーセンターとベルン市立美術館です。
ベルン市立美術館を出ると、もう電車の時間が迫っています。でも、ちょっとだけ市立美術館の裏の辺りのアーレ川の景色だけ楽しみましょう。ロレーヌ橋の袂に出ます。


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橋の上から、アーレ川を眺めます。川面の緑色が何とも美しいですね。


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アーレ川にかかるコルンハウス橋の向こうにはアルプスの白銀の山々が望めます。右手に見える塔は高さ100mのベルン大聖堂でしょう。


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再び、アーレ川の流れを見下ろします。何という美しさでしょう。


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アーレ川の美しさを目に焼き付けて、ロレーヌ橋を後にします。すると、ちょうどスイス国鉄の電車が走ってきました。その方向にベルン中央駅があります。そちらに向かって歩きます。


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道の傍らに道案内の道標があります。ベルン市立美術館の案内です。やはり、クレーの《パルナッソス山へ》が美術館の象徴です。もちろん、納得。ベルンに来ても、クレーを見ただけのようなものです。


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急いでホテルに戻り、荷物を持って出ます。もう、ホテルに迷うことはありません。


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一応、散策のルートを地図で確認しておきましょう。


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ベルン中央駅に到着。近代的なデザインの建物です。


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ベルンからは1時間半ほどかけてチューリッヒに移動します。チケットは既にネットで購入済。SuperSaverという格安チケットです。A4サイズの紙に自宅プリンターで印刷しましたが、ドイツ国鉄のチケットによく似ています。


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駅で、テイクアウトの野菜サラダを購入。それを食べながら、スイスの電車の旅を楽しみます。


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ベルン中央駅を出ると、アーレ川の美しい眺めが見えてきます。


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電車はセカンドクラス。至って、シンプルな作りですね。


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車窓からはアルプスの眺めを楽しめます。


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1時間以上走って、車窓に川の流れが見えてきました。リマト川またはジール川でしょうか。いずれにせよ、もうすぐチューリッヒに到着です。


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これで本来のラインの旅に復帰です。ライン川の全体図でベルンからチューリッヒへの移動を確認しておきましょう。


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夕方4時頃にチューリッヒ中央駅に到着。そこからSバーンに乗り換えて、チューリッヒ空港近くのホテルに向かいます。何故そんなところのホテルにしたのかといえば、この時期のスイスのホテルの料金がとても高くて、比較的リーズナブルな料金だったのがチューリッヒ空港近くのホテルだったんです。
まずは駅で市内交通の24時間乗り放題チケット(3ゾーン)を購入します。一人13.2スイスフランです。


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SバーンのS7に乗って、ホテルの最寄り駅のオプフィコン(Opfikon)まで向かいます。


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ラインの旅:スイス編~チューリッヒのホテルに到着、そして、素晴らしきオペラ《リナルド》

2013年4月14日日曜日@スイス・ベルン/8回目

チューリッヒ中央駅からSバーンに乗り換えて、チューリッヒ空港近くのホテルに向かいます。ホテルの最寄り駅はオプフィコン(Opfikon)です。
地図でSバーンのルートを確認しておきましょう。黄色いS7の路線です。


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駅は地下駅で、地上に出るとそこは公園になっていて、子供たちが遊んでいます。のんびり気分になりますね。


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荷物をガラガラ引きながら、歩いて5分ほどのホテルに向かいます。ホテルはNH Zurich Airport。ここに2泊します。早速、チェックイン。


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空港近くのビジネスホテルだけあって、ロビーはモダンな感じです。


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部屋は大きなベッドで清潔です。


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機能的です。


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事前にお願いしておいた通りバスタブがあります。これでゆったりできますね。


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とりあえず、2人ともベッドにもぐりこんで休憩。1時間ほど休んで、チューリッヒ歌劇場に向かいます。2度目の街というのは何だか様子が分かり、移動もスムーズです。最寄り駅オプフィコンからSバーンに乗って、乗り換えなしでチューリッヒ歌劇場の最寄り駅シュターデルホーフェンまで移動。
SバーンはS7に乗って、先ほどのチューリッヒ中央駅を通り越します。


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そこから勝手知った道を歩いて、問題なく歌劇場に到着。こんなに早くチューリッヒ歌劇場を再訪できるとは思ってもいなかったので、感慨深いです。それにしても、歌劇場前の大工事は全く進んでいる気配はありません。


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開場までに少し時間があるので、ちょっとチューリッヒ湖に行ってみます。歌劇場のすぐそばです。19時前の湖はまだまだ明るい光に包まれています。


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湖畔は大勢の若者たちで賑わっています。


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湖畔の道の傍らの花壇は花で一杯です。春たけなわです。


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歌劇場併設のレストランでちょっと何か頂きましょう。席に案内され、何か食べたいというとメニューを持ってきてくれました。が、30分程しか時間がありません。そのことを言うと、ステーキだってなんだってOkだよとのことですが、そちらは良くても食べる時間がないでしょ。早く出てきそうなスープをお願いして、料理を待ちます。レストランはお客さんで一杯です。


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まずは水は、出してくれました。


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注文したスープが運ばれてきました。たっぷりとしたスープで、立派な夕食になりました。


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いざ歌劇場に行くと、テクニカルトラブルで開演は30分遅れの8時からとのこと。エ~、早く言ってよ~。かなり待たされて、バロック・オペラ、ヘンデルの《リナルド》を観ました。これがネットで購入したチケットです。


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古楽オーケストラの響きが抜群で、ヘンデルの管弦楽曲を気持ち良く鑑賞し、さらにおまけにオペラが付いてきたような感覚でした。詳細記事はここです。

再びSバーンに乗ってホテルに戻ってきたのは夜中の12時。くたびれました。

明日はラインの旅の総仕上げ。ライン川が流れ出すボーデン湖をクルーズし、最後にシャフハウゼンに行きラインの滝を見る予定です。


次回を読む:12日目-1:ラインの起点、ボーデン湖

前回を読む:9~10日目:ストラスブールの1日




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ティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスへの助走:交響曲第7番①ウィーン・フィル以外1回目

ティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスの第3日(11月15日(金):交響曲第6番、第7番)のプログラムについて、聴いていきます。

なお、予習に向けての経緯はここ
交響曲第1番についてはここ
交響曲第2番についてはここ
交響曲第3番《英雄》についてはここ
交響曲第4番についてはここ
交響曲第5番《運命》については1回目はここ、2回目はここ、3回目はここ
交響曲第6番《田園》については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ
交響曲第7番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここ、5回目をここ、6回目をここ
交響曲第8番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ
交響曲第9番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここに書きました。

(全予習が完了したので、全予習へのリンクを上記に示します。参考にしてくださいね。)

今回からは交響曲第7番イ長調 Op.92について聴いていきます。
交響曲第7番は1811年から1812年にかけて作曲されました。前作の交響曲第6番《田園》と交響曲第5番は1808年に並行して書き上げられましたから、それから少し時間を置いて作曲されたことになります。初演は、1813年12月8日、ウィーンでベートーヴェン自身の指揮で行われました。
交響曲第5番と交響曲第6番は両方とも革新的な作品でしたが、この交響曲第7番は正統的な古典手法に回帰した作品だと言われています。それだけに実によく練り上げられ、明快で演奏効果も高い作品です。
saraiもベートーヴェンの交響曲の中でも、とりわけ大好きな作品です。この交響曲第7番は特別、力を入れて、予習していくことにします。巨匠たちの名演も多く残されています。

その名演の数々を聴いていきます。今回から6回に分けて、ご紹介します。
・ウィーン・フィル以外(15枚)
  1958年以前(5枚)、1970年以前(5枚)、1975年以降(5枚)
・フルトヴェングラー(4枚)
・ウィーン・フィル(9枚)
  1976年以前(5枚)、1978年以降(4枚)
計28枚と大量に聴きます。これまで予習できなかった指揮者たちにも登場してもらいましょう。

今回はウィーン・フィル以外の内、1939年から1958年までの5枚を聴きます。モノラル録音から、ステレオ録音の黎明期までになります。

以下、録音年順に感想を書いていきます。


トスカニーニ、NBC交響楽団 1939年録音 モノラル

 トスカニーニはNBC交響楽団との間でベートーヴェン交響曲全集を2回、録音しています。これは1回目の全集でこれまで聴いてこなかったものですが、名盤の誉れ高いものです。MEMORIESのレーベルから出ているものを入手しました。価格も安く、音質も非常によいものです。2回目の全集よりも10年以上も前の録音です。

 第1楽章、カンタービレのきいた演奏、そして、迫力のある演奏と、入れ代わり、立ち代わり、目まぐるしい変化の序奏です。いきなり序奏から、たっぷりと素晴らしい音楽が味わえます。古い録音なのに、素晴らしい音質にびっくりです。主部、とてもストレートな表現。精気に満ちた勢いのある演奏です。迫力で言えば、2回目の全集盤の方が上かもしれませんが、とても自然な演奏で無理がないところはこちらが上でしょう。また、それでいて、推進力もある演奏です。バランスのとれた名演です。
 第2楽章、なんとなく、この古めかしい演奏がこの曲にぴったりの雰囲気に思えてなりません。まるでヴィンテージものの音楽を聴いている感覚です。こういう音楽を聴いていると、贅沢な時間を過ごしている気持ちになります。
 第3楽章、シャープで見事な演奏です。
 第4楽章、歯切れがよいだけでなく、歌っているように感じられるのは凄い演奏です。激しさと内に秘めた抒情を併せ持つ、稀有な超名演です。
 全体的には、感動の度合いだけで言えば、2回目の全集盤に軍配があがりますが、この演奏も価値の高いものです。

トスカニーニ、NBC交響楽団 1951年録音 モノラル

 こちらは2回目の全集盤です。最近リリースされたトスカニーニ大全集からの1枚です。

 第1楽章、序奏からもう気魄が伝わってきます。そして、主部に入り、トゥッティの勢いの素晴らしさ。あとはもう凄い勢いで迫力ある音楽ががんがん進むのみ。圧倒的な演奏に感動!!
 第2楽章、哀愁を帯びたカンタービレ。胸に切々と迫ってくるものがあります。ドラマチックで、まるでオペラのよう・・・。
 第3楽章、力強く、節回しが見事。明晰な演奏です。トスカニーニらしく小気味よく感じます。
 第4楽章、これは凄い! 初めから血が騒ぐような演奏。次から次へと息をも継がせぬ圧倒的な迫力でぐいぐいと進んでいきます。興奮し、感動しっぱなしで、語る言葉なんて何もありません。最高の演奏です。

シューリヒト、パリ音楽院管弦楽団 1957年録音 モノラル

 シューリヒト、初登場です。本当はウィーン・フィルとの演奏で聴きたいところですが、何と、フランスのオーケストラを指揮したものしか残っていません。一体、どんな演奏になるんでしょう。これは全集盤からの1枚です。

 第1楽章、成程、序奏からフランスのオーケストラらしい明るい音色。主部は音の魅力に満ちた流麗な音楽です。
 第2楽章、気品に満ちた美しい音楽。彫琢されたまろやかさが素晴らしいと感じます。
 第3楽章、歯切れの良い音楽がテンポよく進みます。力強さも申し分、ありません。
 第4楽章、実に気魄に満ちた、力強い音楽。勢いも迫力も十分。速いテンポも心地よく感じます。
 全体として、とても爽快な名演です。結果的にフランスのオーケストラを指揮したことは成功だったようです。暇を見て、全集盤を聴き通したいと思います。

クリュイタンス、ベルリン・フィル 1958年録音

 クリュイタンスも初登場です。こちらはシューリヒトとパリ音楽院管弦楽団の逆で、フランス系の指揮者がドイツのオーケストラを指揮します。これは全集盤です。ベルリン・フィル初のステレオ録音のベートーヴェン全集です。

 第1楽章、スケールの大きい序奏。序奏から、ベルリン・フィルの美しい響きに陶然とします。主部は悠然とした構えの美しい響きの演奏です。
 第2楽章、悲愴な表情をたたえた美しい音楽。
 第3楽章、ベルリン・フィルの切れ味、響き、どこを取っても素晴らしいです。テンポは若干ゆっくりめです。
 第4楽章、これはテンポが速めで、最初は演奏がもつれ気味に聴こえて、あれっ・・・という感じ。その後は力強く迫力ある演奏になります。

ワルター、コロンビア交響楽団 1958年録音

 第1楽章、序奏は安定したテンポで柔らかい音楽。低音部の支えも十分です。主部、何と気品に満ちた音楽でしょう。こういうベートーヴェンはワルターしか表現できないものでしょう。別の音楽を聴いている感覚です。
 第2楽章、暗く沈みこんだ始まり。重い歩みは続きます。つらく困難な道のりを行くかのごとくです。これはまるで、十字架を背負って歩むキリストのようです。
 第3楽章、テンポ、響き、節回し、すべてパーフェクト。力強さもあります。
 第4楽章、小気味よいテンポのきびきびした音楽。凄み・迫力以上に、品格高い音楽です。

次回はこの交響曲第7番のウィーン・フィル以外の演奏、1959年から1970年までの録音を聴きます。


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ティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスへの助走:交響曲第7番②ウィーン・フィル以外2回目

ティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスの第3日(11月15日(金):交響曲第6番、第7番)のプログラムについて、聴いていきます。

なお、予習に向けての経緯はここ
交響曲第1番についてはここ
交響曲第2番についてはここ
交響曲第3番《英雄》についてはここ
交響曲第4番についてはここ
交響曲第5番《運命》については1回目はここ、2回目はここ、3回目はここ
交響曲第6番《田園》については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ
交響曲第7番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここ、5回目をここ、6回目をここ
交響曲第8番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ
交響曲第9番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここに書きました。

(全予習が完了したので、全予習へのリンクを上記に示します。参考にしてくださいね。)


今回は交響曲第7番イ長調 Op.92の2回目、ウィーン・フィル以外のCDのうち、1959年から1970年までの録音を聴いていきます。

では、録音年順に感想を書いていきます。


コンヴィチュニー、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 1959年録音

 全集盤からの1枚です。

 第1楽章、序奏からライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の素晴らしい響き。主部で、素晴らしいフルート独奏、そして、深い響きのトゥッティ、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の美しい演奏が続きます。悠然としたテンポですが、テンポの遅さを感じさせないほど、充実の響きです。演奏スタイルは実にオーソドックスなものです。ただ、ディテールの表情付けはきっちりとできています。
 第2楽章、インテンポで淡々と進んでいきます。実に生真面目さが浮き出ている演奏です。そういう朴訥としたところに味わいが感じられます。誤解のないように言いますが、オーケストラの響きは実に美しいんです。
 第3楽章、繰り返しがあるので、全体の演奏時間は長くなっていますが、テンポは速くて、きびきびした演奏です。深くて、切れのよい響きが耳に残ります。
 第4楽章、怒涛のような迫力の響きが鳴り渡ります。推進力に満ちた演奏です。さらに終盤の迫力は凄いものです。とても熱い演奏です。

フリッチャイ、ベルリン・フィル 1960年録音

 第1楽章、序奏、ベルリン・フィルの各パートの響きが素晴らしいです。主部、トゥッティで奏される主題が颯爽として素晴らしく感じます。終始、安定した演奏が繰り広げられます。
 第2楽章、静かに波紋が広がっていくような静謐な演奏。実に見事な演奏ですし、そして、表現力が優れています。
 第3楽章、ゆったりと明確なリズムを刻む、張りのある演奏。
 第4楽章、悠然として、彫りの深い音楽。アクセントが明確で切れもよい演奏です。終盤、息も継がせぬ展開は素晴らしいものです。

バーンスタイン、ニューヨーク・フィル 1964年録音

 バーンスタインの旧盤の全集からの1枚です。ウィーン・フィルとの全集に先立つこと、20年以上も前の録音です。saraiが初めて購入した第7番のLPレコードがこの演奏でした。第7番と言えば、この演奏が刷り込まれています。久しぶりに聴いてみましょう。なお、バーンスタインはファイナルコンサートでボストン交響楽団とこの第7番を演奏し、CD化されています。これも素晴らしい演奏でした。

 第1楽章、序奏、意外に重量感のある表現。主部、これは素晴らしいです。颯爽としたレニーらしい演奏です。提示部は繰り返します。繰り返しの提示部はさらに颯爽として素晴らしいです。テンポは意外に普通で落ち着いています。
 第2楽章、低弦のはいりがとてもいいです。そのため、高弦へのバトンタッチがスムーズです。悲しみを湛えた、何とも言えない、郷愁を帯びたような音楽です。若きバーンスタインの思いは何だったんでしょうか。
 第3楽章、明快な演奏。繰り返しがあります。
 第4楽章、最初から気魄が伝わってきます。素晴らしいとしか、言いようがない音楽が続きます。トスカニーニを少し、柔らかくしたような演奏で、息を継がせぬ緊迫感は同じです。高揚感を味わえる素晴らしい演奏です。感動!!

カザルス、マールボロ祝祭管弦楽団 1969年録音

 カザルス、初登場です。チェロの巨匠も晩年は指揮者としても活躍しました。

 第1楽章、序奏は他の演奏とは異なる独特の歌い回し。かなり、ゆっくり目です。主部にはいり、音楽は整然として進んでいきます。自然な表現が印象的です。
 第2楽章、心穏やかな音楽です。永遠の平安を願うような気持ちが感じられます。温もりのある音楽です。終盤近くの弦楽合奏は見事な演奏です。室内楽的な魅力が感じられます。
 第3楽章、細かくリズムを刻んでいくような独特の表現が見事です。かなり、アクセントを明確にした演奏です。この曲では、それがよく合っています。節回しも見事です。
 第4楽章、歯切れよく、最初から、ガンガン鳴らしていきます。ちょっと平板に感じなくもありません。それでも、アクセントの強調された演奏は次第に熱を帯びていきます。コーダの盛り上がりは凄いです。力演です。

クーベリック、バイエルン放送交響楽団 1970年録音

 これは全集盤ではなく、手兵のバイエルン放送交響楽団との録音です。現在、廃盤で入手の難しい演奏ですが、亡くなった叔父から譲られたLPレコードの中から見つけました。なお、全集盤はウィーン・フィルとの演奏なので、ウィーン・フィル編で取り上げる予定です。

 第1楽章、伸びやかな序奏。強弱の幅の大きい、スケール感のある演奏です。主部、美しいフルートのソロ。続くトゥッティも伸びやかで素晴らしいです。爽やかで瑞々しい美しい演奏にうっとりします。素晴らしい音楽に感動します。
 第2楽章、風格漂う美しい演奏。あくまで自然な表現です。インテンポで貫かれた素晴らしく充実した音楽です。
 第3楽章、きびきびと躍動感のある演奏です。そして、トリオでの繊細、かつダイナミックな表現は見事。
 第4楽章、速いテンポで流麗、かつダイナミックな音楽が進行していきます。スリリングな緊張感のある熱い演奏です。そして、感動のフィナーレ。凄い名演です。廃盤なんて、もったいない演奏です。

次回はこの交響曲第7番のウィーン・フィル以外の演奏、1971年以降の録音を聴きます。


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ティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスへの助走:交響曲第7番③ウィーン・フィル以外3回目

ティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスの第3日(11月15日(金):交響曲第6番、第7番)のプログラムについて、聴いていきます。

なお、予習に向けての経緯はここ
交響曲第1番についてはここ
交響曲第2番についてはここ
交響曲第3番《英雄》についてはここ
交響曲第4番についてはここ
交響曲第5番《運命》については1回目はここ、2回目はここ、3回目はここ
交響曲第6番《田園》については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ
交響曲第7番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここ、5回目をここ、6回目をここ
交響曲第8番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ
交響曲第9番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここに書きました。

(全予習が完了したので、全予習へのリンクを上記に示します。参考にしてくださいね。)

今回は交響曲第7番イ長調 Op.92の3回目、ウィーン・フィル以外のCDのうち、1971年以降の録音を聴いていきます。

では、録音年順に感想を書いていきます。


ジュリーニ、シカゴ交響楽団 1971年録音

 ジュリーニはシカゴ交響楽団と共演して、ベートーヴェンは第7番だけを録音しています。もっと、第3番、第5番、第9番あたりも録音しておいてほしかったところです。それだけに、この第7番の録音はとても貴重です。

 第1楽章、序奏、シカゴ交響楽団の深い響き、スケールの大きさ、凄い迫力です。主部、見事なフルート独奏に続く素晴らしい高揚感のトゥッティ。シカゴ交響楽団のシャープで深い響きには圧倒されます。ジュリーニの指揮がとても素晴らしく、音楽は堂々として、かつ、よく歌います。まさに理想的な演奏です。これ以上、何も注文はありません。最高の名演です。あまりの凄さに涙が滲むほどです。
 第2楽章、最高の弦楽合奏。これ以上、望むべくもない演奏です。全編、深い響きの歌が続いていきます。これはオーケストラ演奏の極致にも思えます。
 第3楽章、これまた、素晴らしい演奏。スケールが大きく、切れ味抜群でパーフェクト!
 第4楽章、何という豊穣の音楽でしょう。あふれる音楽の海に沈み込んでしまいそうです。

 超弩級の超名演。ベートーヴェン演奏の頂点とも言える演奏に感動しきりのsaraiでした。

ブロムシュテット、シュターツカペレ・ドレスデン 1975年録音

 ブロムシュテット、初登場です。シュターツカペレ・ドレスデンも初登場。これは全集盤からの1枚です。ブロムシュテットはライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の来日公演で、この第7番の実演に接しましたが、その誠実な演奏に好感を覚えたことが記憶に残っています。

 第1楽章、気宇壮大な序奏でびっくり。シュターツカペレ・ドレスデンの響きの素晴らしさに圧倒されます。主部、出だしのフルートのソロはいのですが、続くトゥッティはもっと勢いがほしいところ。以後、落ち着いた堅実な演奏が続きますが、何か乗り切れない感じです。
 第2楽章、これは素晴らしいです。ゆったりしたテンポで大きなスケールの演奏。何よりも悲しみを湛えているところに惹かれます。
 第3楽章、一転して、きびきびした切れのよい音楽。シュターツカペレ・ドレスデンの響きも素晴らしいです。小気味いい好演です。
 第4楽章、これもテンポよい迫力ある演奏。気魄あふれる堂々の演奏。ぐんぐん前進していく力を感じます。素晴らしい快演。

クライバー、バイエルン国立管弦楽団 1982年録音

 クライバーはヴィデオも含めると3回の録音を残しています。これはウィーン・フィルとの録音の6年後のものです。

 第1楽章、木管の響きが印象的な序奏。弦が活躍すると颯爽としたスタイルになります。主部、ここでも木管、特にフルートの響きがいいです。トゥッティでの突進力はさすがです。以後、クライバーらしいスマートで迫力のある演奏が続きます。バイエルン国立歌劇場でコンビを組んできたオーケストラとも息がぴったり。クライバーの面目躍如の素晴らしい演奏です。
 第2楽章、低弦の重々しい開始に続き、高弦の参加で明るさを増していきます。だんだん、霧が晴れていくようなビジュアル感を持った演奏です。動きが実にスムーズなのが印象的です。ユニークでありながら、よく考え抜かれた見事な演奏です。
 第3楽章、メリハリのきいたノリノリの演奏。超快速でたたみかけるような、凄い迫力の演奏です。
 第4楽章、クライバーの勢いはもう誰にも止められません。凄い速さで駆け抜けていきます。聴き手は置いてけぼりにならないように必死で食らいついていくだけです。そうして、彼に着いていった者には、素晴らしい感動が待っています。いや、凄いです。クライバーだけの唯一無二の演奏です。

コリン・デイヴィス、シュターツカペレ・ドレスデン 1992年録音

 コリン・デイヴィス、初登場です。これは全集盤からの1枚です。コリン・デイヴィスは本年4月に85歳の生涯を閉じました。ご冥福を祈りながら、演奏を聴きましょう。

 第1楽章、高弦の伸びやかな序奏。主部、ゆったりと堂々たる構えの演奏です。知情意、バランスのとれた素晴らしい演奏。非の打ちどころはありませんが、決定的な魅力に欠けるのが唯一の泣き所でしょうか。
 第2楽章、実に静かに音楽が始まり、やわらかで優しい音楽が紡ぎ出されます。美しい気品に満ちた演奏です。心が癒される思いになります。
 第3楽章、精気に満ち溢れた小気味よい演奏。
 第4楽章、気魄を込めた熱い演奏。歯切れのよいアンサンブルはさすがのシュターツカペレ・ドレスデンの実力。堂々の熱いフィナーレで終わります。

 シュターツカペレ・ドレスデンとしては、17年前のブロムシュテット以来の録音ですが、同じオーケストラだけに似たようなスタイルの演奏です。トータルには、このコリン・デイヴィスの演奏が上回ると感じました。

ハイティンク、ロンドン交響楽団 2005年録音

 ハイティンク、ロンドン交響楽団の第7番と言えば、今年3月の来日公演では、期待を裏切られましたが、そのときの予習では、このCDは素晴らしい演奏でした。再度、聴いてみましょう。

 第1楽章、とてもすっきりした序奏。あっさりしていると言ってもいいかもしれません。実にユニークな演奏ですが、悪くありません。主部、爽やかなフルートのソロ。続くトゥッティも伸びやか。提示部は繰り返しますが、繰り返しでは伸びやかさが増した感じです。力強い展開部。アクセントの強い表現が興を盛り上げます。終始、テンポのよいリズミックな演奏で気持ちよく聴かせてくれます。
 第2楽章、室内オーケストラのような弦楽の響きが実に心地よく感じます。
 第3楽章、弾むようなノリの良い演奏。歯切れのよいこと、この上なしという感じです。
 第4楽章、超快速! 引き締まった表現はトスカニーニの演奏を思い起こしますが、スピードはさらに速いようです。来日公演でもこういう演奏を聴きたかったものです。とても残念! そう思うほど凄い演奏です。一糸乱れずに猛進していきます。そのまま、スピード違反の速さでコーダを駆け抜けていきます。熱く高揚した演奏です。

 ハイティンクの全集では、第5番と対をなすスタイルの演奏で実に痛快な演奏です。高く評価したい名演奏だと思います。

ここまで、ウィーン・フィル以外の15枚の録音を聴いてきましたが、何と言っても、ジュリーニ、シカゴ交響楽団の演奏が断トツに素晴らしく、次いで、トスカニーニ、クライバー、ハイティンクが並びます。他も僅差で素晴らしい演奏ばかりでした。

次回はこの交響曲第7番のフルトヴェングラーの演奏、ベルリン・フィルとウィーン・フィルの録音を2枚ずつ聴きます。


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この記事へのコメント

1, kafu_hideさん 2013/10/18 12:18
sarai様  kafu-hideと申します。昨年10月のインバル・都響マーラー3番のコメントで全くsarai様と同様な気持ちで感動し、本日またハイティングベートーベン7番のコメントを、なんだコンセルトヘボウであんなによかったハイティング(私はハイティングを初めて生で聞きました)が私の大好きなベト7番であの程度かと思っていましたらsarai様
も同様に面白く思われなかったようで全く同感でした。私は50代に突入したクラシック若輩者ですが、又ステキナブログをお願い致します。
インバルは一様20年来のフアンで、2年前のベートーネンの5番も素晴らしく、マーラーだけでなく、インバルのバルトーク・第9のコメントも
宜しくお願い致します。

2, saraiさん 2013/10/19 00:21
kafu_hideさん、初めまして。saraiです。

インバルのマーラーは素晴らしいですね。都響も絶好調だし。第6番以降が楽しみです。最後の第9番は2回も聴く予定です。
ハイティンクの来日公演はベートーヴェンとブルックナーの出来が違い過ぎました。LSOの来日メンバーに問題があったのではと勘ぐっています。

インバルのバルトークは大震災で流れた公演で待ちに待ったものです。庄司紗矢香も楽しみです。ベートーヴェンの第9番は残念ながら聴きません。ティーレマン+ウィーン・フィルの第9番の感想をご覧くださいね。
また、コメント、お寄せくださいね。

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小山実稚恵の圧倒的なプロコフィエフ:クリスチャン・ヤルヴィ+東京都響@サントリーホール 2013.10.16

今日は東京都交響楽団の定期演奏会。大型台風の影響が心配でしたが、半日ずれたお蔭でセーフ。
今日の主役はピアノの小山実稚恵と指揮のクリスチャン・ヤルヴィ。もちろん、それを支えた都響のアンサンブルも健在。

小山実稚恵はコンサート前は、実はあらっぽい演奏になるのではないかと心配していました。何せ、超難曲のプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番ですからね。しかし、結果的には、素晴らしく精度が高く、迫力に満ちた演奏でsaraiの杞憂を払拭してくれました。saraiの不明をお詫びしたい気持ちで一杯です。ここまで、この超難曲を弾きこなすとは、実力あってのことでしょうが、やはり、随分、弾き込んだんでしょうね。今日の演奏は大変興奮させられる気魄のこもった力演でした。

指揮のクリスチャン・ヤルヴィは後半のストラヴィンスキーのバレエ組曲「火の鳥」でやってくれました。ウィーンのお友達のはっぱさんがいつも「やんちゃ坊主」と評しているクリスチャン(父ネーメ、兄パーヴォと区別するためにファーストネームで呼ぶことにします)は、その通り、やりたい放題の指揮で八面六臂の大活躍。バレエ組曲「火の鳥」を指揮者自身が踊ってしまったような感じです。当たり前ですが、音楽にぴったりと合った指揮というか、ダンスの見事なこと。音楽自体もきらめきに満ちた素晴らしいものです。

都響もますます実力を伸ばし、従来からの最強の弦楽セクションだけでなく、管楽セクションも素晴らしい演奏をするようになったと感じます。お得意のマーラーばかりでなく、今日のような近代ものの超弩級オーケストラ作品も納得の演奏をするようになったと思います。実に幅広く、どんな音楽にも対応して、優れた演奏を聴かせてくれるようになったと感じています。

長い前置きでほとんど書いてしまいましたが、軽く、今日のコンサート全体について触れておきましょう。

この日のプログラムは以下の内容です。

 指揮:クリスチャン・ヤルヴィ
 ピアノ:小山実稚恵
 管弦楽:東京都交響楽団

ラフマニノフ:コレッリの主題による変奏曲(管弦楽版/日本初演)
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番ハ長調
 《アンコール》
   プロコフィエフ:前奏曲Op.12-7

  《休憩》

ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」(1945年版)

最初のラフマニノフの《コレッリの主題による変奏曲》はピアノ独奏の作品を管弦楽用に編曲したものです。クリスチャンの父ネーメ・ヤルヴィが世界初録音のCDを出していますから、クリスチャンにとってもゆかりのある作品なのかもしれません。原曲のピアノ独奏曲は名曲として知られており、来年2月の上原彩子のサントリーホールでのリサイタルでも取り上げられることになっており、今から楽しみに待っているところです。
この管弦楽版は何と言うか、少し間延びをしたように感じる曲で必ずしも編曲がうまくいったような気はしません。しかし、編曲者もそのあたりは心得た上で、こういう全く趣の異なる作品に仕立て上げたのでしょう。その編曲の狙いがどのあたりにあるのかはよく分かりません。
この管弦楽版では、原曲と同じく、コレッリの主題が3度登場しますが、弦楽合奏での演奏はさすがに美しいです。しかし、これはラフマニノフというよりも、コレッリの原曲に負うところが大きいので、その評価は難しいところです。ネーメ・ヤルヴィのCDでは、ピアノ独奏曲に比べて、ロシアの土俗的な雰囲気が醸し出されていたので、それなりの面白さがありました。クリスチャンの表現はそういうところはなくて、現代風(近代風?)のバレエ曲のような雰囲気です。聴いていて退屈はしませんが、これではむしろ、原曲のピアノ曲を聴きたくなってしまうというのが正直なところです。都響のアンサンブルの響きは素晴らしかったんですけどね。今日のコンサートマスターの矢部達哉の終盤のソロはとても見事でした。

次にプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番です。これは新古典主義の極致をいくような作品です。冒頭のクラリネットソロの侘しげなメロディーに続いて、弦が加わり、そして、ピアノが素晴らしい勢いで飛び込んでくると、もう、プロコフィエフ・ワールド。そうそう、その前に、弦が勢いづいてくるあたりで、その弦に体を同調させるように小山実稚恵が手を膝に置いたままで、体を揺すらせていたのが印象的でした。いかにもセッションに参加すべく、助走を始めたような感じでノリノリの様子。ピアノを弾き始める前に既に音楽はスタートしていました。ピアノが第1主題を演奏し始めると、次第に音楽はヒートアップ。激しく叩きつけるような打鍵でピアノが唸りを上げ、興奮の坩堝と化していきます。小山実稚恵の正確で、それでいて、奔放なピアノ演奏に呆気にとられます。彼女は硬質のタッチではなく、深い響きのタッチで、一見、こういう曲には向かない感じですが、さすがに一流のピアニストは違いますね。見事にそのタッチを活かして、強烈な響きの音楽を作り上げます。そして、乾いた感じの音楽になりやすいところを、潤いのある音楽に作り上げていくところはさすがとしか言いようがありません。コンサート前に予習したのは、アルゲリッチ(アバドと共演した1回目の録音)、上原彩子(キタエンコ指揮NHK交響楽団と共演した放送録画)、ユジャ・ワン(アバドとルツェルン音楽祭で共演したDVD)というところで、いずれもプロコフィエフを得意とする超絶技巧の持ち主揃い。コンサート前に聴くと、耳がリッチになり過ぎて、演奏レベルのハードルが高くなってしまいます。しかし、今日の小山実稚恵は絶好調で、ライブゆえの迫力で、予習した演奏なんぞは問題にならない快演です。途中、思わず、感動しそうになってしまうほど。この曲は興奮しても、感動するような曲ではない筈なのにね。第3楽章の終盤の演奏の美しさには絶句。圧巻のフィナーレでした。
コンサートの前には、配偶者に、この曲は上原彩子か、小川典子のほうが向いているのになあと軽口を叩いた自分の愚かしさを恥じています。

休憩後、ストラヴィンスキーのバレエ組曲「火の鳥」です。1945年版の組曲って、多分、聴くのは初めてです。たいていは全曲か、1919年版の組曲を聴いている筈です。今日は珍しい曲が聴けて、幸せです。全曲は別にして、組曲はやはり、1919年版がコンパクトで精選した曲ばかりでベストではないかと感じました。まあ、そういう音楽的な感想はぶっ飛ばすような、この日の演奏でした。クリスチャンのダンス、いや、指揮を見ているだけで面白くてたまりません。演奏もノリノリで美しいものでした。これなら、全曲やってくれても、バレエなしでも面白く聴けたでしょう。

今日はまことに楽しいコンサートでした。都響はいよいよ、マーラーチクルスが迫ってきました。インバルがどんなマーラーを聴かせてくれるか、そわそわしています。その前に来週はいよいよペライアのリサイタルです。音楽の秋もどんどん、佳境にはいってきました。


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ティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスへの助走:交響曲第7番④フルトヴェングラー

ティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスの第3日(11月15日(金):交響曲第6番、第7番)のプログラムについて、聴いていきます。

なお、予習に向けての経緯はここ
交響曲第1番についてはここ
交響曲第2番についてはここ
交響曲第3番《英雄》についてはここ
交響曲第4番についてはここ
交響曲第5番《運命》については1回目はここ、2回目はここ、3回目はここ
交響曲第6番《田園》については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ
交響曲第7番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここ、5回目をここ、6回目をここ
交響曲第8番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ
交響曲第9番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここに書きました。

(全予習が完了したので、全予習へのリンクを上記に示します。参考にしてくださいね。)


今回は交響曲第7番イ長調 Op.92の4回目、フルトヴェングラーのCDを聴いていきます。
フルトヴェングラーの交響曲第7番の録音は5種類のものが知られていて、今回はそのうち、1948年のストックホルム・フィルとの録音を除く4枚のCDを聴いていきます。

 1.1943年10月31日、ベルリン・フィル、ライヴ録音、ベルリン(メロディア)
 2.1950年1月25日/30日、ウィーン・フィル、スタジオ録音(EMI新リマスター盤)
 3.1953年4月14日、ベルリン・フィル、ライヴ録音(DG盤、The Originals)
 4.1954年8月30日、ウィーン・フィル、ライブ録音、ザルツブルグ音楽祭(ORFEO盤)

 1.は戦時中の録音です。このマスターテープもベルリンに進出したソ連軍がベルリンの放送局からソ連に持ち帰ったもので、それをもとにロシアのメロディアがリマスターしたCDです。
 2.はEMIのベートーヴェン交響曲全集の1枚で、ウィーン・フィルとのスタジオ録音です。EMIの全集では2番目の録音です。
 3.はこの年、1月早々、ウィーン・フィルとの第9演奏会の第3楽章の最中に倒れてしまいましたが、2月には復帰し、4月12~14日にベルリン・フィルとのコンサートの後、各地にコンサートツアーに出かけます。この録音はそのツアー直前のベルリンでのコンサートの演奏です。このコンサートでは第8番も演奏されました。
 4.は1954年8月30日のザルツブルグ音楽祭閉幕コンサートからのものです。その3カ月後、フルトヴェングラーは肺炎で他界します。なお、この8月には、バイロイト音楽祭、ルツェルン音楽祭で第9番を演奏しています。また、このコンサートの3週間後のベルリン・フィルとのコンサートが最後のコンサートになりました。

では、録音年順に感想を書いていきます。

1.1943年10月31日、ベルリン・フィル

 第1楽章、ゆったりと雄渾な序奏。何とスケールの大きい演奏でしょう! 戦時中の録音に共通している異様な緊張感、気魄に包まれており、音の少々の悪さは忘れてしまいます。主部は熱く、そして、美しい演奏です。コーダの高揚感の素晴らしいこと・・・感動です。
 第2楽章、落ち着いた、静謐とでも言ってよいような演奏がそのまま頂点にまで上り詰めていきます。悲しみを湛えた葬送の音楽にも聴こえてきます。その後、落ち着きを取り戻し、淡々と音楽は進んでいきます。終盤の盛り上がりも力を継続することはなく、消え入るように終わります。
 第3楽章、気概に満ちた壮大なスケールの音楽。
 第4楽章、物凄い推進力の快速の演奏。フルトヴェングラーの気魄に満ち溢れており、圧倒的!! コーダの迫力は凄まじく、感動するのみです。フルトヴェングラーのみにしかなし得ないベートーヴェン演奏の金字塔に脱帽です。

2.1950年1月25日/30日、ウィーン・フィル

 EMI全集からの1枚で、スタジオ録音です。
 
 第1楽章、ゆったりとたっぷりした序奏。最新リマスター盤の素晴らしい音質が光ります。主部にはいると、ウィーン・フィルの弦のしなやかで艶っぽい響きが美しいです。後半に向かって、徐々に迫力を増していきます。コーダの輝きは素晴らしいものです。
 第2楽章、美しい表情を付けた音楽がウィーン・フィルの弦の響きに乗って、徐々に高揚していく様はとても素晴らしいです。高揚が引いた後、丹念な演奏が続いていきます。ウィーン・フィルの各セクションの実力が発揮されます。
 第3楽章、ノリの良い磨き抜かれた音楽。テンポの幅が大きい演奏です。
 第4楽章、歯切れのよい推進力に富んだ演奏。白熱した演奏の迫力が凄いです。こんなに切れ込みのシャープなウィーン・フィルの演奏は聴いたことがありません。まるでベルリン・フィルの演奏を聴いているようです。圧倒的なコーダには、心躍らせられ、感動するのみです。

3.1953年4月14日、ベルリン・フィル

 第1楽章、何と響きが素晴らしく、スケールの大きな序奏でしょう。音質も最高です。主部は落ち着いたテンポで深い響きの音楽を聴かせてくれます。じっくりと聴き込める音楽です。音楽を聴く楽しみ、極めれりの感があります。そして、パーフェクトなコーダ!
 第2楽章、実に雰囲気のある美しい音楽がさりげなく、悲しみを湛えて、進んでいきます。深い感動を覚えます。美しく歌いあげられる旋律はそう強いフォルテには上り詰めませんが、それが自然に感動につながっていきます。その後も滋味深い音楽が続き、素晴らしさは増すばかり。最高の音楽・・・パーフェクト! こんなに深い音楽は聴いたことがありません。
 第3楽章、この楽章も素晴らしいです。テンポの速い部分は活力があり、テンポの遅い部分は深い響きに満ちています。
 第4楽章、テンポを抑え気味に開始しますが、すぐに歯切れの良い演奏に変容していきます。そして、ぐんぐん推進力を増していきます。終結部の素晴らしさといったら、どうでしょう。最高の感動で金縛りに合うようです。最初に突っ込み過ぎないで、最後にアッチェレランドした構成が素晴らしかったです。フルトヴェングラー渾身のベートーヴェンと言えます。

4.1954年8月30日、ウィーン・フィル

 死に先立つこと、3か月前のザルツブルク音楽祭の閉幕コンサートの録音で、最後の第7番でもあります。

 第1楽章、清新な響きの序奏。慈しむような感じも受けます。主部はかっての勢いのある演奏から、じっくりと落ち着いたものになり、深みのある演奏になっています。最晩年にふさわしいとも思えます。噛みしめるように演奏しているのがとても印象的です。
 第2楽章、足取りが重く、沈潜するような感じに思えます。美しく、そして、深い悲しみの音楽です。感動的な葬送の音楽であるかのごとく、聴こえます。次いで、瞑想的で枯淡の境地の響き。涙なしには聴けない演奏です。
 第3楽章、この楽章は精気に満ちています。トリオは抒情にあふれています。
 第4楽章、テンポは以前よりも遅いですが、重厚な迫力は健在。勢いにまかせた音楽ではなく、堂々たる歩みの音楽になっています。コーダの迫力は圧倒的です。これが巨匠の最後の第7番。ベートーヴェンの演奏も3週間後の第1番を残すのみです。素晴らしい音楽に鳥肌のたつ思いです。


これでフルトヴェングラーの4枚の演奏を聴き終えました。どれも驚異的に素晴らしい演奏です。この中から一つだけ選ぶなら、1953年のベルリン・フィルとの熟成した演奏を選びます。最後の1954年のウィーン・フィルの演奏も忘れ難いのですが・・・、とてもいつでも気軽には聴けません。

ここまでで、フルトヴェングラーの演奏とジュリーニ、シカゴ交響楽団の演奏が新旧並び立ちます。次いで、トスカニーニ、クライバー、ハイティンク。

次回はこの交響曲第7番のウィーン・フィルの演奏のうち、1976年までの録音を聴きます。


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ティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスへの助走:交響曲第7番⑤ウィーン・フィル1回目

ティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスの第3日(11月15日(金):交響曲第6番、第7番)のプログラムについて、聴いていきます。

なお、予習に向けての経緯はここ
交響曲第1番についてはここ
交響曲第2番についてはここ
交響曲第3番《英雄》についてはここ
交響曲第4番についてはここ
交響曲第5番《運命》については1回目はここ、2回目はここ、3回目はここ
交響曲第6番《田園》については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ
交響曲第7番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここ、5回目をここ、6回目をここ
交響曲第8番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ
交響曲第9番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここに書きました。

(全予習が完了したので、全予習へのリンクを上記に示します。参考にしてくださいね。)

今回は交響曲第7番イ長調 Op.92の5回目、ウィーン・フィルの演奏のうち、1976年までのものを聴いていきます。フルトヴェングラーの2枚のCDは前回、ご紹介しました。

では、録音年順に感想を書いていきます。

ショルティ 1958年録音

 ショルティ、初登場です。これはウィーン・フィルの初期のステレオ録音です。ショルティはこの時期、ウィーン・フィルとは他に第3番、第5番を録音しています。いっそのこと、全集にすれば、この時期のウィーン・フィルの素晴らしい響きでベートーヴェン全曲を聴けたのに残念です。ショルティはこの後、シカゴ交響楽団と2回にわたって、ベートーヴェンの交響曲全集を完成させています。

 第1楽章、雄大な序奏。とてもステレオ初期の録音とは思えないほど、広がりのよいDECCAの名録音です。低域から高域まで音の伸びも素晴らしいです。主部はオーソドックスな演奏です。ウィーン・フィルの分厚い響きを引き出していて、見事な指揮です。
 第2楽章、いやはや、ウィーン・フィルの弦の美しさには何も言う言葉はありません。
 第3楽章、この楽章も響きが素晴らしいです。特に弦は低弦から高弦までパーフェクト。トリオのアンサンブルも見事。
 第4楽章、速目のテンポで整然としたアンサンブルの見事な演奏。大変、聴き応えがあります。颯爽とした音楽に充足感が得られます。ショルティの自然な音楽の作りにも感銘を受けました。これからはショルティのCDにも注意を払っていこうと思います。

シュミット・イッセルシュテット 1969年録音

 全集からの1枚です。

 第1楽章、深い響きに満たされる序奏、実に雄渾です。奥行きのある音楽を感じます。主部、ショルティと同様にオーソドックスなスタイルですが、アンサンブルのバランスが微妙に異なり、ここはショルティの自然さに軍配を上げたいと感じます。イッセルシュテットの場合は少し硬さを感じてしまいます。
 第2楽章、ウィーン・フィルの弦の響きが格別です。
 第3楽章、躍動的で弾むような感じの活き活きした演奏です。
 第4楽章、シャープなアンサンブルで速めのテンポ。凄みはないものの聴きやすい好演。

ベーム 1972年録音

 全集盤からの1枚です。

 第1楽章、よく響き、よく歌う、柔らかい演奏で始まる序奏。素晴らしい始まりです。主部、美しいフルートソロ。続くトゥッティの瑞々しい躍動感は素晴らしいです。ウィーン・フィルの美しい弦を活かした見事な演奏です。コーダの盛り上がりも素晴らしいです。
 第2楽章、静謐な低弦の演奏で開始。美しい弦の響きを活かして、見事な変奏が続きます。あふれる詩情にうっとりと聴き入ってしまいます。素晴らしい演奏です。
 第3楽章、かっちりした演奏。アンサンブルも完璧です。
 第4楽章、隙のないアンサンブルでがっちりした演奏。バランスのとれた見事な演奏です。次第に演奏は白熱化。大変な迫力です。コーダは実に感動的です。

クーべリック 1974年録音

 全集盤からの1枚です。ウィーン・フィルはこの第7番だけです。

 第1楽章、深い響き、瑞々しい表現の序奏。主部、明るく沸き立つ喜びが心地よく感じます。力強く堂々とした表現で音楽は進行していきます。
 第2楽章、沈み込んだように音楽は始まります。次第に音楽は高潮していきますが、決して、気品を失うことはありません。
 第3楽章、きびきびした表現。トリオも粘らずにあっさりとした表現で頂点に上り詰めます。
 第4楽章、自然な表現で心地よく聴けます。

クライバー 1976年録音

 クライバーはウィーン・フィルとこの第7番と第5番だけ録音しています。第7番はこの録音の6年後にバイエルン国立管弦楽団と再録音しているほか、コンセルトヘボウ管弦楽団とヴィデオ録画を残しています。得意の曲だったんですね。

 第1楽章、なんという見事な序奏でしょう。自然で流れがスムーズ、雄渾で繊細。要するにバランスがいいということでしょうか。主部、木管は清新。弦は艶やか。提示部は繰り返します。溌剌とした表現で音楽は進行していきます。ちょっとオーケストラを鳴らし過ぎるのが気にはなります。クライバーなら、もっとスマートにやってほしいところです。
 第2楽章、とても美しい弦楽合奏。心が和まされる思いです。この思いはこの楽章全体で続いていきます。
 第3楽章、切れ込みの鋭いシャープな表現。
 第4楽章、速いテンポでノリの良い演奏を展開。音楽は後半にかけて、熱く高揚し、最後は猛スピードでコーダを駆け抜けていきます。


ウィーン・フィルの演奏はいずれも素晴らしいものばかりです。

次回はこの交響曲第7番のウィーン・フィルの演奏のうち、1978年以降の録音を聴きます。


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ティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスへの助走:交響曲第7番⑥ウィーン・フィル2回目

ティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスの第3日(11月15日(金):交響曲第6番、第7番)のプログラムについて、聴いていきます。

なお、予習に向けての経緯はここ
交響曲第1番についてはここ
交響曲第2番についてはここ
交響曲第3番《英雄》についてはここ
交響曲第4番についてはここ
交響曲第5番《運命》については1回目はここ、2回目はここ、3回目はここ
交響曲第6番《田園》については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ
交響曲第7番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここ、5回目をここ、6回目をここ
交響曲第8番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ
交響曲第9番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここに書きました。

(全予習が完了したので、全予習へのリンクを上記に示します。参考にしてくださいね。)

今回は交響曲第7番イ長調 Op.92の6回目、ウィーン・フィルの演奏のうち、1978年以降のものを聴いていきます。

では、録音年順に感想を書いていきます。

バーンスタイン 1978年録音

 全集からの1枚です。ニューヨーク・フィルとの旧盤の全集から14年後の録音になります。また、12年後の1990年にボストン交響楽団とのファイナルコンサートでこの第7番をライブ録音しています。亡くなる2カ月前でした。

 第1楽章、じっくりと腰をすえた感じの序奏。主部、溜めていたものを吐き出す感じで喜ばしげな音楽が始まります。提示部は繰り返します。一気呵成な感じの提示部。展開部後半のたたみかけるような演奏が素晴らしいです。コーダのまとめ上げかたも見事。
 第2楽章、静謐な弦楽合奏を積み上げて、しみじみとした抒情に至る表現。そのしみじみとした情感がこの楽章をずっと支配します。
 第3楽章、いきいきとしたリズムを刻みながら、音楽が進んでいきます。
 第4楽章、落ち着いたテンポでしっかりした進み。次第に火の玉のようになって高揚していきます。そして、アッチェレランドして、圧倒的なコーダ。感動のフィナーレです。

アバド 1987年録音

 全集からの1枚です。

 第1楽章、実にまろやかな響きの序奏。弦の響きが伸びやかで素晴らしいです。主部、音の響きは重厚ですが、音楽の運びは軽やかです。提示部は繰り返します。この楽章は爽やかに演奏されます。
 第2楽章、静かに厳かな雰囲気で演奏されます。弦楽合奏の美しさと言ったら、それはもう言葉で表現できないほどです。ロマンチックと言ってもいい表現で音楽は進行していきます。
 第3楽章、張りのある響きで、いきいきと音楽は進行していきます。トリオでのロマンチックな音楽の表現も聴きものです。
 第4楽章、前楽章と同様に張りのある響きが印象的。そして、きびきびした演奏で音楽が進行していきます。美しい響きを保ったまま、アッチェレランドして、高揚したコーダを終えます。

 無類の美しい演奏です。ロマンチックな雰囲気も素晴らしいです。この演奏がベートーヴェン演奏の規範ではないかもしれませんが、この美しさ故に名演であることは疑いないでしょう。

ラトル 2002年録音

 全集盤からの1枚です。

 第1楽章、ふんわりとした開始、そして、緩急の差をつけて、実にユニークな序奏。主部、普通のテンポでオーソドックスと言ってもいい演奏です。何か変わったことをやってくると思ったので、肩透かしにあったような気分。提示部は繰り返します。文句のつけようもないきちんとした演奏ではあります。
 第2楽章、かなり、抑えた表現で華美さを避けた演奏。古典的なスタイルを志向したのかもしれませんね。
 第3楽章、歯切れの良い、きびきびした演奏ですが、この楽章も至ってオーソドックス。
 第4楽章、普通よりもちょっとだけ早いテンポでの演奏ですが、これもオーソドックスな演奏。快速で小気味いい演奏が進行します。最後はさらにギヤを入れて、コーダに高速で突入。

ティーレマン 2009年録音

 もちろん、これを聴くのが目的! これを最後に聴きます。

 第1楽章、実に構えの大きな素晴らしい序奏。この時点で、この後に続く素晴らしい音楽を確信してしまう程です。主部、なんと晴れやかな表情の音楽でしょう。深い響きの堂々たる音楽です。ティーレマンらしく、ゆったりとしたテンポでひたひたと進んでいく迫力は大変なものです。コーダもテンポを落として、悠然たるフィナーレ。これで迫力を出せるのだから、凄いですね。
 第2楽章、素晴らしい弦楽合奏。広がりのある雄大な表現です。悠々せまらぬものがあります。ほとんどインテンポで、スケールの大きさを感じさせられる演奏です。何もしていないようで、しっかりオーケストラをコントロールしているのが分かります。実に見事な演奏です。
 第3楽章、力強く驀進していく音楽。重心の低い響きがとてもよいです。トリオの雄大さも素晴らしいです。
 第4楽章、重戦車が疾駆していくかのような勢いのある演奏。重量感があり、凄みのある演奏です。この勢いをさらに増して突っ込んでいくコーダには、ただただ圧倒されます。


今回聴いたウィーン・フィルの演奏もいずれも素晴らしいものばかりです。どれか、選ぶのなら、ティーレマンとアバドでしょうか。ベーム、クーベリック、クライバー、バーンスタインも捨てがたいところです。すべての演奏の中では、やはり、フルトヴェングラーの1953年のベルリン・フィルとの演奏とジュリーニのシカゴ交響楽団との演奏が最高です。次いで、ティーレマンとアバドのウィーン・フィルとの演奏、トスカニーニ、クライバー(バイエルン国立管弦楽団)、ハイティンク、バーンスタイン(ニューヨーク・フィル)、クーベリック(バイエルン放送交響楽団)あたりが並びます。

最後に肝心のティーレマンのベートーヴェン・チクルスの聴きどころです。

 1.スケールの大きい、重量感のある演奏を生で体感することが一番でしょう。
 2.ウィーン・フィルをどのようにコントロールし、反面、どれくらい自由に演奏させるかが聴きたいポイントの一つです。その指揮ぶりは大変興味深いところです。
 3.生の演奏に接して、どれほどの感動があるでしょうか。大変楽しみです。


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ティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスへの助走:交響曲第8番①ウィーン・フィル以外1回目

ティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスもいよいよ迫ってきました。予習も山場に差し掛かってきました。焦って、予習を進めていきます。

今回からはティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスの第4日(11月17日(日):交響曲第8番、第9番)のプログラムについて、聴いていきます。いよいよ、最終日のプログラムです。

なお、予習に向けての経緯はここ
交響曲第1番についてはここ
交響曲第2番についてはここ
交響曲第3番《英雄》についてはここ
交響曲第4番についてはここ
交響曲第5番《運命》については1回目はここ、2回目はここ、3回目はここ
交響曲第6番《田園》については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ
交響曲第7番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここ、5回目をここ、6回目をここ
交響曲第8番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ
交響曲第9番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここに書きました。

(全予習が完了したので、全予習へのリンクを上記に示します。参考にしてくださいね。)


今回からはまず、交響曲第8番ヘ長調 Op.93について聴いていきます。
交響曲第8番は1812年に作曲されました。前作の交響曲第7番とほぼ同時期に作曲されたことになります。非公開の初演はウィーンのルドルフ大公邸で1813年4月20日、交響曲第7番も一緒に行われました。交響曲第5番と交響曲第6番が同時に初演されたのと同じく、ペアのような関係の第7番と第8番です。交響曲第5番と交響曲第6番は両方とも革新的な作品でしたが、交響曲第7番と交響曲第8番は正統的な古典手法に回帰した作品です。公開初演は交響曲第7番に遅れて、1814年2月27日にウィーンで行われました。
この交響曲第8番は規模が小さく、地味な印象ですが、今回、改めて、聴きなおして、大変、優れた作品であることを再認識しました。規模は別にして、交響曲第7番と同等の作品です。実際、ベートーヴェン自身も大変、自信を持っていたそうです。

その名演の数々を聴いていきます。今回から3回に分けて、ご紹介します。

・ウィーン・フィル以外(11枚)
  1957年以前のモノラル盤(5枚)、1958年以降のステレオ盤(6枚)
・ウィーン・フィル(7枚)

計18枚聴きます。

今回はウィーン・フィル以外の内、1939年から1957年までの5枚を聴きます。すべて、モノラル録音になります。

以下、録音年順に感想を書いていきます。


トスカニーニ、NBC交響楽団 1939年録音 モノラル

 トスカニーニはNBC交響楽団との間でベートーヴェン交響曲全集を2回、録音しています。これは1回目の全集の録音です。

 第1楽章、まさに怒涛のような音の塊が響き渡ります。凄い気魄の演奏です。一気に気持ちが高揚させられます。トスカニーニは音楽の持つ根源的な力を知っているんですね。いやはや、凄い演奏です。
 第2楽章、実に歯切れがよくて、まるでヴェルディのオペラを聴いているような錯覚に陥ってしまいます。
 第3楽章、引き締まった表現で古典的な音楽を楽しませてくれます。アンサンブルが何とも見事です。
 第4楽章、流麗さと歯切れの良さを織り混ぜて、驚異的なアンサンブルを聴かせてくれます。この演奏を聴いて、第8番が他に劣らない名曲であることをはっきりと再認識させられました。

ワルター、ニューヨーク・フィル 1942年録音 モノラル

 ワルターの1回目のベートーヴェン交響曲全集です。フィラデルフィア交響楽団を指揮した交響曲第6番以外はニューヨーク・フィルを指揮しています。ワルターがニューヨーク・フィルを指揮したものを初めて聴いてみます。

 第1楽章、トゥッティの音の分離がよくないのが気になりますが、厳しい表現の中に柔らかさを持った演奏です。60代のワルターの覇気が感じられます。
 第2楽章、柔らかいリズムを刻みながら、潤いのある表現で音楽を展開していきます。
 第3楽章、ワルターらしく優美な演奏です。それでいて、芯の通った表現です。この曲の本質を突いていると感じました。
 第4楽章、力強さと優美さのバランスのとれた演奏。これがワルターの音楽の真髄なんでしょう。終盤の音楽の熱さにも驚きます。これもワルターなんですね。

トスカニーニ、NBC交響楽団 1952年録音 モノラル

 こちらは2回目の全集盤です。最近リリースされたトスカニーニ大全集からの1枚です。

 第1楽章、1939年の火の玉のような激しさは影をひそめましたが、アンサンブルの精度は高まり、力強く、美しい演奏です。中盤の弦楽合奏が素晴らしく、感動してしまいます。
 第2楽章、バランスのとれた見事なアンサンブルで比較的落ち着いた表現です。
 第3楽章、トスカニーニにしては、力強さの中にも典雅さを感じさせる表現に感銘を受けます。
 第4楽章、きびきびとリズムを刻みながらも旋律線を美しく表現するという実に見事な演奏。厳しい音楽の中にこそ、本当の美があることを教えられます。引き締まったコーダに大いなる感銘を受けます。

フルトヴェングラー、ベルリン・フィル 1953年録音 モノラル

 これはドイツ・グラモフォンから、The Originalsというシリーズで出ているCDで、交響曲第7番とセットになっています。亡くなる前年、晩年の演奏です。

 第1楽章、ベルリン・フィルの強力なアンサンブルが深々とした響きを轟かせます。堂々とした重量感のある、それでいて、美しい演奏。これがフルトヴェングラーのベートーヴェンです。何という雄々しい演奏でしょう。深く感動するだけです。
 第2楽章、艶やかな弦楽合奏を主体に粛々と厳かな音楽。聴き応え十分です。
 第3楽章、豊潤な音楽。祝祭的な気分さえ漂います。この曲から、こんなにたっぷりとしたものを引き出すとは驚きです。
 第4楽章、豊かな響きで始まった音楽も次第にアッチェレランドして、白熱化していきます。いったん、沈静化した嵐も終盤、激しく高揚してフィナーレ。素晴らしい演奏です。

シューリヒト、パリ音楽院管弦楽団 1957年録音 モノラル

 シューリヒトの全集盤、交響曲第7番の演奏が素晴らしかったので、全集版から、もう1曲聴いてみます。

 第1楽章、これがシューリヒトの第8番なのかと驚いてしまいます。何とも、まろやかで、ふわっとした明るい演奏です。まるで別の曲を聴いているような感じです。しかし、次第に、切れ味鋭い演奏であることにも気が付きます。だんだんと演奏に引き込まれていきます。とても素晴らしい演奏です。
 第2楽章、流麗でモダンとも言えるスタイルで古典音楽を浮き彫りにする演奏。実にスマートです。
 第3楽章、典雅なスタイルで古典音楽を見事に表現。まさに正統的な演奏です。
 第4楽章、高弦の美しい響きにのって、流麗で優美な音楽が耳に心地よく感じます。これもスマートな音楽です。こういう演奏もいいものです。


次回はこの交響曲第8番のウィーン・フィル以外の演奏、1958年以降のステレオ録音を聴きます。


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ティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスへの助走:交響曲第8番②ウィーン・フィル以外2回目

ティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスの第4日(11月17日(日):交響曲第8番、第9番)のプログラムについて、聴いていきます。

なお、予習に向けての経緯はここ
交響曲第1番についてはここ
交響曲第2番についてはここ
交響曲第3番《英雄》についてはここ
交響曲第4番についてはここ
交響曲第5番《運命》については1回目はここ、2回目はここ、3回目はここ
交響曲第6番《田園》については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ
交響曲第7番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここ、5回目をここ、6回目をここ
交響曲第8番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ
交響曲第9番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここに書きました。

(全予習が完了したので、全予習へのリンクを上記に示します。参考にしてくださいね。)

今回は前回に続いて、交響曲第8番ヘ長調 Op.93について聴きます。

今回はウィーン・フィル以外の内、1958年以降の6枚を聴きます。すべて、ステレオ録音になります。

以下、録音年順に感想を書いていきます。


ワルター、コロンビア交響楽団 1958年録音

 全集盤(2回目)からの1枚です。

 第1楽章、大変、明快な音楽。力みも思い入れもなく、自然な音楽がすっと流れていきます。名人だけがなし得る芸術。ワルターが芸術家として、大変なレベルに達していたことが窺い知れます。これがウィーン・フィル相手だとどうだったのかなとつい想像してしまいます。いずれにせよ、本当に見事な演奏です。感嘆してしまいます。
 第2楽章、無理のない柔らかい音楽がいとも簡単にさらっと流れていきます。これは規範となるべき演奏だと感じます。
 第3楽章、古典的で典雅な音楽をまさに一幅の絵にしたような完璧さに、それ以上言うべき言葉を持ちません。
 第4楽章、何と柔らかく気品のある演奏でしょう。ワルターの至芸にじっと耳を傾けるのみです。

コンヴィチュニー、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 1960年録音

 全集盤からの1枚です。

 第1楽章、生気みなぎる演奏。何よりもライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の響きの素晴らしさ。これはこの全集の中でも特に優れた演奏です。とても素晴らしいです。
 第2楽章、とても速いテンポ。さらっと通り過ぎていく感じです。
 第3楽章、これも速めのテンポ。重心の低い、がっちりした演奏。ここでもライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のアンサンブルの素晴らしさが印象的です。
 第4楽章、素晴らしい響きの音楽が展開されます。瑞々しい豊潤な音楽に魅了されます。これも名演です。

バーンスタイン、ニューヨーク・フィル 1963年録音

 バーンスタインの旧盤の全集からの1枚です。ウィーン・フィルとの全集に先立つこと、15年ほど前の録音です。現在から、ちょうど50年前の録音です。

 第1楽章、清新で瑞々しい演奏。この頃のバーンスタインは若くて勢いがあって、本当によかったです。こういうベートーヴェンの演奏にも心躍らされます。
 第2楽章、リズミックな音楽はバーンスタインが得意にするもの。実に心地よい音楽です。
 第3楽章、元気一杯の音楽。田園の宴という感じでしょうか。楽しげな雰囲気の音楽はとてもよいものです。
 第4楽章、躍動感のある演奏ですが、意外にテンポは落ち着いています。いかにも張りきった指揮で微笑ましく感じます。力感あふれるフィナーレは素直に気持ちがよいものです。

クーべリック、クリーブランド管弦楽団 1975年録音

 全集盤からの1枚です。すべて、異なるオーケストラを指揮した画期的な全集ですが、この第8番はクリーブランド管弦楽団を指揮しています。

 第1楽章、溌剌とした演奏ですが、柔らかい抒情も秘めているように感じます。やがて、熱情あふれる音楽になっていき、ぐっと気持ちが惹きつけられます。コーダの熱い盛り上がりも見事です。
 第2楽章、実に柔らかい優美な音楽。
 第3楽章、抒情的な歌い回しが見事でロマンチックな気分を味わわせてくれます。力感もありますけどね。
 第4楽章、勢いのある迫力と、瑞々しい感性の抒情が、バランスよくミックスされている素晴らしい表現です。何度でも聴きたくなるような超名演。

ハイティンク、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 1987年録音

 ハイティンクについてはロンドン交響楽団との3回目の全集を聴いてきましたが、やはり、手兵とも言えるアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団との2回目の全集についても聴いておきましょう。なお、1回目の全集はロンドン・フィルとのものですが、最近になって、ようやくCD化されるそうです。若いころのベートーヴェン演奏がどうだったのか、大変、興味深いですね。

 第1楽章、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団のまろやかで深い響きで真正のベートーヴェンの世界を紡いでいきます。この時期のハイティンクは個性がないという世評ですが、それは円熟してきたことの裏返しの表現ではないかと思います。作曲家のスコアにのみ奉仕していく厳しい姿勢が貫かれている素晴らしい演奏であると感じます。何といっても、この素晴らしい響きはどうでしょう。
 第2楽章、過不足のないバランスのよい演奏。
 第3楽章、こんなに無色透明なベートーヴェンも珍しいです。実にベートーヴェンに忠実な演奏です。
 第4楽章、この楽章は勢いのある演奏です。それもベートーヴェンの意図に沿ったものなのでしょう。

 ベートーヴェンの交響曲にリファレンスというものが存在するとすれば、まさにこれがそのリファレンス盤。また、この全集を第1番から聴き直してみないといけないなと感じた次第です。

ハイティンク、ロンドン交響楽団 2005/6年録音

 全集盤(3回目)からの1枚です。

 第1楽章、簡潔な表現できびきびした演奏。余計な装飾はすべて排除したような禁欲的とも思える演奏です。それでも、ロンドン交響楽団のアンサンブルは素晴らしく美しいです。何故か心に迫ってくる演奏です。
 第2楽章、流麗で美しい響きは何かの感情を呼び起こします。オペラ的な世界でしょうか。とても素晴らしい演奏です。
 第3楽章、トリオの部分の表情豊かな演奏が印象的です。
 第4楽章、ともかく見事な演奏。一言で内容を述べるのは困難です。柔らかい響きで、メロディーラインの美しさも際立っています。控え目でありそうで、迫力も感じさせられます。音楽的内容がぎっしりと詰まっている、熟成した、大人の音楽です。

 2回目と3回目の全集盤の違いは驚くほどです。ハイティンクの精神的な変容が感じられます。これは是非とも、1回目の全集も聴いてみなければという強い気持ちが湧いてきました。


次回はこの交響曲第8番の演奏について、ウィーン・フィルの1954年のフルトヴェングラーの演奏から、2009年のティーレマンの演奏まで、7種類の録音を聴きます。


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ティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスへの助走:交響曲第8番③ウィーン・フィル

ティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスの第4日(11月17日(日):交響曲第8番、第9番)のプログラムについて、聴いていきます。

なお、予習に向けての経緯はここ
交響曲第1番についてはここ
交響曲第2番についてはここ
交響曲第3番《英雄》についてはここ
交響曲第4番についてはここ
交響曲第5番《運命》については1回目はここ、2回目はここ、3回目はここ
交響曲第6番《田園》については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ
交響曲第7番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここ、5回目をここ、6回目をここ
交響曲第8番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ
交響曲第9番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここに書きました。

(全予習が完了したので、全予習へのリンクを上記に示します。参考にしてくださいね。)

今回は前回に続いて、交響曲第8番ヘ長調 Op.93について聴きます。

今回はウィーン・フィルの1954年から2009年までの7枚を聴きます。

以下、録音年順に感想を書いていきます。


フルトヴェングラー 1954年録音

 これは全集盤(EMI)ではなく、亡くなる僅か3か月前のザルツブルク音楽祭の閉幕コンサート(1954年8月30日)のライブ録音です。このコンサートでは、第7番も一緒に演奏されました。さらに大フーガの管弦楽版も演奏されました。本稿の意図からは外れますが、それも是非、取り上げたいので、以下に感想を書きます。第7番については既に感想を書きました。それにしても、この最晩年のフルトヴェングラーの孤高の境地たるや、恐ろしいほどのもので、ベートーヴェンの交響曲の第5番から第9番まで、大変な演奏ばかりです。実はこのザルツブルク音楽祭の閉幕コンサートの3週間後、ベルリン・フィルとの2回のコンサート(9月19日、20日)がフルトヴェングラーの最後のコンサートになりますが、このときにベートーヴェンの交響曲第1番を取り上げており、録音も残っているようです。これがフルトヴェングラー最後のベートーヴェンのようです。是非とも1度聴いてみたいものです。

 第1楽章、矢折れ、刀尽きた英雄が最後の力を振り絞っているかの如きの演奏に聴こえてしまいます。巨匠の死が迫っているのを知っている聴き手の感傷でしょうか。時折、平明な美しさが感じられます。
 第2楽章、ウィーン・フィルの美しい弦楽合奏による、たおやかな音楽です。
 第3楽章、古典的な造形美の音楽。ただ、音楽の歩みが重く感じられます。第1楽章と同様です。フルトヴェングラーの肉体・精神の状態を反映しているのでしょうか。
 第4楽章、これはとても気力が充実した演奏。文字通り、生命を燃焼するような演奏に思えてなりません。見事にフィナーレを締めくくります。

 次に大フーガが演奏されました。ベートーヴェンが9曲の交響曲を書き上げた後、後期の弦楽四重奏曲、5曲を作曲しますが、第13番の終楽章として、作曲された大フーガは中でも革新的で素晴らしい作品です。ポスト交響曲第9番として、この大フーガを巨匠の最晩年の演奏で聴いてみましょう。

 大フーガ、激しく切ない音楽です。ウィーン・フィルの弦楽セクションの見事なアンサンブルを駆使して、生命を燃やし尽くすような白鳥の歌。身もだえするような音楽が永遠に続いていくように感じます。そして、深く沈潜するような内面からの声が聞こえてきます。大変、深い感動を与えてくれる演奏でした。

シュミット・イッセルシュテット 1968年録音

 全集盤からの1枚です。

 第1楽章、とてもスケールの大きな演奏。ウィーン・フィルの美しいアンサンブルが響き渡ります。高弦の美しいこと、その艶っぽさに感銘を受けます。演奏の切れも素晴らしく、シュミット・イッセルシュテット会心の演奏と言えるでしょう。
 第2楽章、リズムの刻みとメロディーラインのバランスが絶妙でとても美しいです。
 第3楽章、響きのたっぷりしたリッチな音楽です。
 第4楽章、何も言うことなし。ともかく、愉悦に浸れる素晴らしい音楽が展開されます。弦はもとより、木管の美しい響きが印象的です。

ベーム 1972年録音

 全集盤からの1枚です。

 第1楽章、凝縮力の高い演奏。ちょっと、響きが硬い印象もあります。後半にかけて、音楽の展開がドラマティックに感じられます。それだけ、求心力が強い演奏とも言えるでしょう。
 第2楽章、ゆったりしていますが律動的な要素に重点を置いた表現です。
 第3楽章、力感に重点を置いた表現。トリオは牧歌的です。
 第4楽章、出だしは響きが混濁して聴こえますが、次第に響きが純化され、表現も美しくなっていきます。最後は力強さも増して、堂々としたフィナーレです。

バーンスタイン 1978年録音

 全集盤からの1枚です。

 第1楽章、まとまりはありますが、今一つのりきれていない印象。バーンスタインらしい溌剌さもさほど感じられず、ウィーン・フィルの響きの美しさも物足りない感じです。
 第2楽章、これももう一つ、リズミックさが物足りない感じです。バーンスタインとウィーン・フィルがお互いに遠慮しあったような中途半端さを感じます。
 第3楽章、これは響きも豊かでふわっとした音楽作りが美しいです。トリオの牧歌的な響きも美しいです。
 第4楽章、この楽章は響きも音楽の流麗さも申し分ありません。特にトゥッティでの精悍さは素晴らしいです。コーダのアンサンブルも最高です。終わりよければ、すべてよしというところですね。何といってもライブですからね。

アバド 1987年録音

 全集盤からの1枚です。

 第1楽章、ウィーン・フィルの柔らかい響きを存分に活かした演奏。アバドらしく、終始一貫続いていく美しい演奏には感銘を受けます。
 第2楽章、この楽章も美しいです。弦の奏でるメロディーが美しく響きます。満足です。
 第3楽章、たっぷりした美しい響きで堪能させてくれる演奏。トリオは憧れに満ちた音楽です。
 第4楽章、実に活き活きと勢いのある演奏。アバドの気魄めいたものも垣間見えます。

ラトル 2002年録音

 全集盤からの1枚です。

 第1楽章、細部にはユニークな表現もみられますが、全体としては意外にオーソドックスで美しい響きの演奏です。
 第2楽章、驚くほどクリアーな演奏。ウィーン・フィルの美質とラトルの洗練さがぴったり合ったものなのかしらね。。
 第3楽章、この楽章はもっとたっぷりと豊かな響きで満たしてほしかった感じに思えます。アバドの演奏スタイルのほうがよかったような・・・。
 第4楽章、これは素晴らしいです。響き、流れ、共に満足です。微妙な間や弱音の繊細さまで見事に決まっています。いかにもラトルらしい知的な音楽作りの技を見せつけられた思いです。

ティーレマン 2009年録音

 もちろん、これを聴くのが目的! これを最後に聴きます。

 第1楽章、驚くほど、柔らかな開始。優美な演奏が続いていきます。次第に精悍な顔に変容していきます。最後は整然としたコーダ。
 第2楽章、清潔感のある演奏です。バランスもとってもいいです。
 第3楽章、丁寧に表情付けをした細心の演奏。トリオも実に丁寧な演奏です。
 第4楽章、押しまくる演奏ではなく、流麗で優美な演奏。とても美しい演奏です。終盤、タメを作ったりして、やはり、ティーレマンらしい演奏ではありますが、もっと迫力のある演奏をしてくるだろうと思ったのは大外れでした。こういうティーレマンの演奏もいいですけどね。


今回聴いたウィーン・フィルの演奏もいずれも素晴らしいものばかりです。フルトヴェングラーの演奏は別格ですが、どれか、選ぶのなら、シュミット・イッセルシュテットとアバドでしょうか。ティーレマンもほぼ同レベルです。ウィーン・フィル以外の演奏にも名演が目白押し。トスカニーニ、ワルター、シューリヒトという3巨匠は格別ですし、ハイティンク、バーンスタイン(ニューヨーク・フィル)、クーベリック、コンヴィチュニーも見事な名演奏です。この第8番は何故か、素晴らしい演奏が多いようです。

最後に肝心のティーレマンのベートーヴェン・チクルスの聴きどころです。

 1.実演でも、こういう優美な演奏をするのか、それとも迫力ある演奏に変容するのか、とても興味深いところです。かなり即興性のあるティーレマンなので、その場にならないと分からないでしょう。
 2.もし、優美な演奏なら、ウィーン・フィルの美しい響きを思いっ切り楽しむことになりますね。
 3.いずれにせよ、この第8番の後に、休憩後とは言え、大曲の第9番が控えているので、あまり、この第8番に入れ込み過ぎると、聴き手のこちらの体力が持ちませんから、ほどほどにして、聴くことも肝要です。。


次回は遂に交響曲第9番に突入します。やはり、凄い演奏が目白押しです。


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ティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスへの助走:交響曲第9番①ウィーン・フィル以外

ティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスも遂に2週間ほどに迫りました。予習も最終段階です。

今回もティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスの第4日(11月17日(日):交響曲第8番、第9番)のプログラムについて、聴いていきます。

なお、予習に向けての経緯はここ
交響曲第1番についてはここ
交響曲第2番についてはここ
交響曲第3番《英雄》についてはここ
交響曲第4番についてはここ
交響曲第5番《運命》については1回目はここ、2回目はここ、3回目はここ
交響曲第6番《田園》については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ
交響曲第7番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここ、5回目をここ、6回目をここ
交響曲第8番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ
交響曲第9番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここに書きました。

(全予習が完了したので、全予習へのリンクを上記に示します。参考にしてくださいね。)

今回からは遂に、交響曲第9番ニ短調 Op.125について聴いていきます。
交響曲第9番は交響曲第8番が作曲された1812年から12年後の1824年に初稿が完成しました。大変な労作だったわけです。初演は1824年5月7日にウィーンで行われました。この第9番は規模も大きく、4人の独唱者と4部合唱を必要とするため、完全な形での演奏が困難で初演後、しばらくしてからは演奏されなくなりました。これを完全復活させたのは誰あろう、リヒャルト・ワーグナーです。それ以来、この第9番は傑作とされるようになりました。また、ワーグナーはバイロイト祝祭劇場の建設を始めるにあたり、その定礎を記念して、この第9番を演奏しました。その所以もあって、この第9番はバイロイト音楽祭で演奏される唯一のワーグナー以外の作品になっているそうです。今回取り上げる演奏として、フルトヴェングラーが第2次世界大戦後に復活した1951年のバイロイト音楽祭での演奏をありますが、これはそういう事情からのものです。フルトヴェングラー以外には、リヒャルト・シュトラウス、パウル・ヒンデミットがバイロイト音楽祭で第9番を演奏しています。そして、2001年にはティーレマンも演奏しました。フルトヴェングラー最後のバイロイト音楽祭での演奏は1954年ですから、ほぼ、半世紀後になります。こういう事実からも、今回のティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスは日本における大変重要な音楽的事件であることが分かります。

第9番については、語っても語りつくせないものがありますが、それ以上に名指揮者たちが全身全霊を込めた名演奏が多く残っていることが重要です。

その名演の数々を聴いていきます。今回から4回に分けて、ご紹介します。特に、フルトヴェングラーは最重要なので、2回に分けての特集です。

・ウィーン・フィル以外(6枚)
・フルトヴェングラー(7枚+)は2回シリーズで
・ウィーン・フィル(6枚)

計19枚以上聴きます。

今回はウィーン・フィル以外の6枚を聴きます。

以下、録音年順に感想を書いていきます。


トスカニーニ、NBC交響楽団 1952年録音 モノラル

 こちらは2回目の全集盤です。最近リリースされたトスカニーニ大全集からの1枚です。

 第1楽章、引き締まったアンサンブル。そして、明快なスタイル。トスカニーニは確信を持って、己が道を突き進みます。一気呵成な演奏です。
 第2楽章、素晴らしいアンサンブル。一糸乱れずに見事な響きです。
 第3楽章、天国的な美しい世界を描き切っています。ここまで、各楽章の性格を描き分けてみせたのは実に見事。天上からの美しい光が差してくるような素晴らしい演奏です。
 第4楽章、冒頭の素晴らしい響き・・・これは凄い。パーフェクトです。続く「歓喜」の主題も実に美しい演奏。バス独唱のはいりも立派です。独唱陣、合唱も加わり、素晴らしい高みに上っていきます。声楽陣も素晴らしく、音楽的頂点が続き、圧巻のフィナーレ。感動です。

ワルター、コロンビア交響楽団 1959年録音

 全集盤(2回目)からの1枚です。

 第1楽章、彫琢された素晴らしいとしか言いようもない音楽です。すべてを包み込んでくれるような大きさと格調の高さがあります。
 第2楽章、このオーケストラとしては最高のアンサンブルのパフォーマンスを発揮した見事な演奏。余程のメンバーを揃えたのでしょう。品格がある上に切れのよいアンサンブル。
 第3楽章、これはこれは何という演奏でしょう。音楽の“美”の頂点を極めたような演奏です。この演奏は少年時代から聴き続けてきたものですが、この歳になって、ようやく、この音楽の素晴らしさが実感できました。まあ、この音楽は子供には分からなかったかもしれません。体の奥底から静かな感動が湧き起ってきます。永遠の時を刻んでいくように感じる音楽です。
 第4楽章、これまでの静けさを打ち破るように強烈な響き。続く説得力のある音楽。見事なアンサンブルに耳を傾けるのみです。肌触りのよいこと、この上なし。管弦楽の演奏する「歓喜」の主題が頂点に達するところでは早くも感動。声楽とオーケストラが混然一体になっての演奏ではもう感動の嵐です。そして、フィナーレではどうしようもない感動に打ち震えます。

コンヴィチュニー、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 1959/61年録音

 全集盤からの1枚です。

 第1楽章、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の美しい響き。そのリッチなサウンドがゆったりとしたテンポで偉大な曲を紡いでいきます。これはとても素晴らしい演奏です。
 第2楽章、これもとんでもなく切れ味のよいライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の響き。ただただ、陶然として聴き惚れるだけです。
 第3楽章、これはこの曲の美しい雰囲気を出し切れずに少し硬い表情になっています。しばらくすると、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団本来の素晴らしい響きが聴こえてきます。弦主体の演奏は深い響きで魅了します。
 第4楽章、管弦楽の演奏する「歓喜」の主題は素晴らしい響きです。うっとりと聴き惚れます。テオ・アダムのバス独唱が素晴らしく充実しています。声楽陣が素晴らしく充実しており、圧倒されます。教会の合唱隊を思わせるような清らかな合唱に胸が熱くなります。最後の4重唱の素晴らしさ、続く合唱も素晴らしく、これでは感動するしかありません。圧巻のフィナーレです。

クーべリック、バイエルン放送交響楽団 1975年録音

 全集盤からの1枚です。すべて、異なるオーケストラを指揮した画期的な全集ですが、この第9番はバイエルン放送交響楽団を指揮しています。

 第1楽章、まさに世界の創造という感じの悠久の広がりのある演奏。成熟という言葉がしっくりくるような音楽であり、演奏です。
 第2楽章、リズム感に優れた表現で実に切れがよいです。中間部での木管の響きの美しさは特筆に値します。
 第3楽章、敬虔とでも言うような厳かな響きに実に心が清められる思いです。ワルターの演奏した究極の美を再び思い起こさせます。
 第4楽章、くっきりと曲想が浮かび上がる明確なメッセージ性を持った演奏です。気品も感じられます。トマス・スチュアートの独唱もさすが。豪華な歌手たちの4重唱もさすが。特にヘレン・ドナートの美声が素晴らしいです。フィナーレの大合唱とオーケストラの大音響がヘラクレスザール(多分ね)の強靭なホールに響き渡るのは凄い迫力です。

ジュリーニ、ベルリン・フィル 1989/90年録音

 ジュリーニが全集を残さなかったのはとても残念です。それでも第9番はこの録音があります。

 第1楽章、明快にして、雄渾。一点の曇りもありません。ベルリン・フィルのパーフェクトなアンサンブルにも感嘆の念を禁じえません。
 第2楽章、シンフォニックな演奏。豊かな響きです。
 第3楽章、ゆったりとした静かな演奏ですが、芯のしっかりした響き。弱音でさえもあくまでもシンフォニック。特に低弦の響きが美しいです。この曲では低弦の響きが音楽の持つ内面性をうまく表現できますね。
 第4楽章、ベルリン・フィルらしく、硬質の響きで隈取のはっきりした演奏。低弦の美しさが群を抜いています。声楽陣は可もなく不可もなしという出来に感じます。オーケストラの響きが上回っています。もったいないですね。それでも、後半では、合唱も段々と研ぎ澄まされて、純化してきます。コーダのオーケストラは凄い突っ込みです。

 全体の演奏の出来としては、ジュリーニならば、シカゴ交響楽団かウィーン・フィルと演奏すれば、もっとよかったのではないかというのが正直な感想です。

ハイティンク、ロンドン交響楽団 2006年録音

 全集盤(3回目)からの1枚です。

 第1楽章、活力あふれる演奏。ハイティンクの気力十分。ダイナミックレンジが大きくとられた優秀録音で、ボリューム大き目で聴く必要があります。
 第2楽章、精度の高い演奏です。ロンドン交響楽団のアンサンブルもよく揃っています。
 第3楽章、何とも肌触りの優しい音楽。過去・現在・未来、すべてを慈しむような優しさにあふれています。癒しでの音楽というよりも、すべてをそっと包み込んでくれるような音楽。ハイティンク畢生の名演です。
 第4楽章、ここまできて、ようやくオーケストラの配置が対向配置であることに気が付きました。それはそれとして、実に丁寧な演奏です。独唱、合唱、オーケストラのアンサンブルがとても素晴らしいです。じわじわと感動が込み上げてきます。後半の合唱も素晴らしく、もう感動しっぱなしです。10分間、涙の滲む思いでした。本当に素晴らし過ぎる最高の第9番でした。人生最高の名盤のひとつです。

ここまで凄い演奏ばかり。とりわけ、ハイティンク、ロンドン交響楽団の素晴らしさには圧倒されました。ワルター、トスカニーニも超名演です。

次回はこの交響曲第9番の一番の聴きもの、フルトヴェングラーの伝説の録音を聴きます。身が引き締まる思いです。


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この記事へのコメント

1, 和田さん 2013/11/18 10:55
ちょっと昨日の演奏について教えてください。 3列34番で聴いたのですが、人間の声より器楽の音が目立ち、フルトヴェングラーのLPや中之島のアバトの演奏に比べ肉声が主役になっていないと感じられました。これは、単に聴いた位置の問題であるのか、他の聴衆は違和感がなかったのでしょうか。 アバトの公演では、後ろに立った歌手が良く見えたのに反し、サントリーホールでは歌手が良く見えない低い位置にいるように感じたのですが ?

2, saraiさん 2013/11/18 15:47
和田さん、初めまして。

私は4列30番でした。同じような位置ですね。そんなに違和感は感じませんでしたが、人それぞれでしょう。合唱はよく聴こえてバランスがいいと感じました。4重唱は少し聴こえにくかったかもしれません。サントリーホールは前列に傾斜がないため、オーケストラ後方はよく見えません。木管奏者もほとんど見えません。音はちゃんと聴こえますけどね。
ちなみに4重唱では、ソプラノの声が通りにくく、あまり聴こえてきませんでした。CDと同じアネッテ・ダッシュが登場してくれればとは感じました。

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最高のシューベルト、マレイ・ペライア・ピアノ・リサイタル@サントリーホール 2013.10.24

わざわざ、ペライアのピアノが聴きたくて、ベルリンまで行ってから、もう、1年半経ちます。久々の美しいピアノの音色に耳を傾けましょう。ベルリンでのコンサートの記事はここ

表題に書いたシューベルトは実はアンコールの最初に弾かれた即興曲です。2年前のサントリーホールでのリサイタルでもアンコール曲として弾かれた曲です。余程、お気に入りの曲なんでしょう。本割にはシューベルトがなかったので、残念に思っていたら、アンコールでいきなり、耳馴染みのメロディーが弾かれたので、まずは嬉しや。そして、その素晴らしい演奏に気持ちが舞い上がってしまうようになります。体がとろけるような素晴らしい音楽でした。
で、本割ですが、ともかく、ペライアは絶好調でいつになく、がんがんとパワーフルにピアノを豊かに響かせます。これはちょっと、思いと違って、困惑してしまいました。saraiが好きなのは、ペライアのピュアーな美しいタッチなんです。今日は最前列で聴いているせいもあって、迫力は満点です。それは素晴らしいのですが、求めていたものが違うような・・・。
ベートーヴェンの熱情はまさに熱情的な演奏。後半のシューマンの《ウィーンの謝肉祭の道化》が一番、ぴったりくる演奏で、これはとても感銘を受けました。

今日のプログラムは以下です。

ヨハン・セバスティアン・バッハ:フランス組曲第4番ホ長調 BWV815
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調Op.57《熱情》

《休憩》

シューマン:ウィーンの謝肉祭の道化 Op.26
ショパン:即興曲第2番嬰ヘ長調 Op.36
ショパン:スケルツォ第2番変ロ長調 Op.31

《アンコール》

シューベルト:即興曲変ホ長調 Op.90-2(D899-2)
ショパン:練習曲Op.10-4
ショパン:練習曲Op.25-1 「エオリアン・ハープ」
ショパン:夜想曲Op.15-1


まず、バッハのフランス組曲第4番。予習しようと思って、ペライアの全曲CDボックスから探しますが、ありません。イギリス組曲は録音していましたが、フランス組曲は未録音だったんですね。後で調べると、最近、全曲録音したそうで、まだ、CD化されていません。おっつけ、リリースされるんでしょう。予習はシフの昔のCDの素晴らしい演奏で聴きました。今日の演奏は一つ一つの音がしっかりしたタッチで弾かれて、芯の通った音楽になっています。これがペライアのフランス組曲なんですね。当初の発表では、パルティータが弾かれることになっていましたが、同じような傾向の音楽なので、きっと、このような演奏になったんだろうなと思いました。もっと静謐な音楽を予想していましたが、分厚い響きの美しい演奏でした。趣味的に言えば、ペライアには、もっと力の抜けた演奏を期待していました。でも、満足ではあります。

次は、ベートーヴェンの熱情。これはかなり昔のペライアの録音で聴きました。合わせて、アラウの新盤でも聴きました。これがよくありませんでした。アラウの新盤はまったく熱情という題名からは程遠い演奏。しかし、第3楽章の美しさと言ったら、もう、天国的としか言えない味わいに満ちています。高齢に達したアラウの孤高の音楽です。ペライアの今日の演奏は凄い迫力の、まさに熱情らしい熱情です。第3楽章はもうミスタッチを恐れない勇気ある演奏。物凄い気魄の渾身の演奏です。普通なら、大興奮で感動するところでしょうが、saraiはアラウの毒に冒されています。ちょっと、引いてしまいました。予習はせめて、アラウの旧盤にしておけばよかったと後悔した始末です。それにしても、これがペライアとは信じられない、とても熱い演奏でした。

休憩後、シューマンの《ウィーンの謝肉祭の道化》です。これはとても素晴らしい演奏でした。第1曲のロンド主題の力強い美しさに魅了されます。それに1番目のエピソードが一転して静かな美しさで素晴らしいです。第2曲のロマンスも綺麗な演奏にうっとり。第3曲のスケルツィーノは元気さの中に悲哀も感じられます。第4曲のインテルメッツォは豊かな響きの音楽。最後の第5曲はエネルギーに満ちた力強い演奏で華やかに全曲を閉じます。何故か、ペライアのシューマンはとても素晴らしいです。ベルリンで聴いたピアノ協奏曲も前回のリサイタルで聴いた《子供の情景》もすべて最高の演奏。《ウィーンの謝肉祭の道化》はそんなに聴きこんでいない曲でしたが、素晴らしい名曲であることが認識できました。

次はショパンの即興曲第2番とスケルツォ第2番。続けて、演奏されました。即興曲第2番はショパンとしては地味な曲。最後に華やかなところもありますが、淡々とした演奏。スケルツォ第2番はショパンの中でもベストテンにはいる超有名曲。saraiも若いころ、人並みにこの曲に夢中になっていたことを思い出しました。激情もあり、繊細な美しさもあり、聴きどころ満載です。ここはペライアの見事な腕前に惚れ惚れしながら、じっと聴き入ります。素晴らしい響きにうっとりしました。

アンコールは何と4曲。ペライアはお疲れの様子でしたが、聴衆が沸き立ったので、それに応えてくれたようです。シューベルトの即興曲は前述した通り、最高の演奏。2番目に演奏されたショパンの練習曲Op.10-4は前回もアンコール曲でした。見事な演奏。3番目もショパンの練習曲。有名な「エオリアン・ハープ」です。これは素晴らしい演奏。演奏後、わっと歓声があがりました。最後を締めたのはショパンの夜想曲。静かな内省的な演奏。演奏後、会場も静まり返りました。これでおしまい。またまた、満足。

今日はペライアのエネルギーに満ち溢れた演奏に圧倒されました。彼はまだ66歳とピアニストとしては若いので、まだ枯れていくのは10年以上先でしょね。どう変容していくのか、同世代の人間として、見守っていきたいと思います。来年はアカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズを引き連れて、来日し、弾き振りするそうですが、これはパスです。どうも弾き振りは苦手です。モーツァルトかベートーヴェンのピアノ協奏曲でしょうか。


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       ペライア,  

ティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスへの助走:交響曲第9番②フルトヴェングラー1回目

今回もティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスの第4日(11月17日(日):交響曲第8番、第9番)のプログラムについて、聴いていきます。

なお、予習に向けての経緯はここ
交響曲第1番についてはここ
交響曲第2番についてはここ
交響曲第3番《英雄》についてはここ
交響曲第4番についてはここ
交響曲第5番《運命》については1回目はここ、2回目はここ、3回目はここ
交響曲第6番《田園》については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ
交響曲第7番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここ、5回目をここ、6回目をここ
交響曲第8番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ
交響曲第9番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここに書きました。

(全予習が完了したので、全予習へのリンクを上記に示します。参考にしてくださいね。)

今回も交響曲第9番ニ短調 Op.125について聴いていきます。
今回はフルトヴェングラーの1回目です。
フルトヴェングラーはこの第9番を1913年のリューベックでのコンサート以来、1954年8月22日のルツェルン音楽祭まで、計79回も指揮しました。フルトヴェングラーとベートーヴェンの交響曲第9番は切っても切り離されない関係にあります。
フルトヴェングラーの交響曲第9番の録音は最初の1937年の録音以来、12~13種類のものが知られていて、そのうち、7枚以上のCDを聴いていきます。今後、余裕があれば、さらにあと2枚(*のもの)を聴きたいと思っています。この2枚で戦後のフルトヴェングラーの交響曲第9番の録音は網羅できることになります(最近、1953年5月30日のものとされる録音がCD化されていますが、それは除きます)。

 1.1942年3月22日、ベルリン・フィル、ライヴ録音、ベルリン(メロディア)
 *1 1951年1月7日、ウィーン・フィル、ライヴ録音、ウィーン(ORFEO盤)
 2.1951年7月29日、バイロイト祝祭管弦楽団、ライヴ録音:編集盤?、バイロイト音楽祭(EMI新リマスター盤)
 3.1951年7月29日、バイロイト祝祭管弦楽団、ライヴ録音、バイロイト音楽祭(ORFEO盤)
 4.1951年8月31日、ウィーン・フィル、ライブ録音、ザルツブルグ音楽祭(ORFEO盤)
 5.1952年2月3日、ウィーン・フィル、ライブ録音、ニコライ記念コンサート(TAHRA盤)
 6.1953年5月31(30?)日、ウィーン・フィル、ライブ録音、ニコライ記念コンサート(ALTUS盤)
 *2 1954年8月9日、バイロイト祝祭管弦楽団、ライヴ録音、バイロイト音楽祭(ORFEO盤)
 7.1954年8月22日、フィルハーモニア管弦楽団、ライブ録音、ルツェルン音楽祭(ORFEO盤)

 1.は戦時中の録音です。このマスターテープはベルリンに進出したソ連軍がベルリンの放送局からソ連に持ち帰ったもので、それをもとにロシアのメロディアがリマスターしたCDです。なお、ベルリン・フィルとの録音は戦前のものしか残っていません。戦後に録音したものはフルトヴェングラー自身の希望で破棄されました。そのうちに、何らかの録音が蘇るかもしれませんね。
 *1は戦後の最初の録音でウィーン・フィルとの最初の録音です。この1951年は3種類もの演奏が残されています。この録音はコーダの最終部分のピッチが狂ったものしかCD化されていませんでしたが、専用のピッチ修正マシンが開発されて、この問題が解決したそうです。そのCDが最近出されたORFEO盤です。
 2.はEMIのベートーヴェン交響曲全集の1枚で、戦後再開した最初のバイロイト音楽祭の録音です。これはリハーサルの演奏も含めた編集がなされているようです。
 3.は上記のバイロイト音楽祭での実況録音盤。基本的には2と同じ演奏ですが、こちらは編集なしなので、細部に違いがあります。放送用の録音が残されていたのが発見されたそうです。
 4.は1951年のザルツブルグ音楽祭閉幕コンサートからのものです。オーケストラはウィーン・フィルです。なお、ウィーン・フィルとの録音は戦後のものしか残っていません。ベルリン・フィルと逆ですね。フルトヴェングラーは第9番をウィーン・フィルと52回も演奏しました。そのうち、38回は次のニコライ記念コンサートです。
 5.は1952年のニコライ記念コンサートからのものです。オーケストラはウィーン・フィルです。
 6.は1953年の延期されたニコライ記念コンサートからのものです。フルトヴェングラーはこの年の1月、ニコライ記念コンサートの演奏中に倒れたため、この5月に再度、演奏しました。5月30日、31日と演奏しましたが、この演奏がどちらのものかは諸説があり、もし、31日のものならば、これがウィーン・フィルとの最後の第9番の演奏になります。なお、5月30日の演奏とするものもCD化されています。
 *2は2度目のバイロイト音楽祭からのものであり、最後のルツェルン音楽祭の演奏の2週間ほど前のものです。音質は悪いそうですが、最晩年のフルトヴェングラーの演奏は貴重で聴き逃せません。
 7.は1954年のルツェルン音楽祭からのものです。これがフルトヴェングラー最後の第9番になりました。


では、録音年順に感想を書いていきます。今回は戦前の演奏、一つだけに絞ります。それほど、この演奏は感銘の度合いが強烈なもので、これを聴くと、もう、ほかの演奏が聴けなくくらい壮絶なものだと思います。

1.1942年3月22日、ベルリン・フィル

 以前はこの演奏はオーパス蔵盤で聴いていましたが、今回はマスターテープからリマスターしたメロディア盤を聴きます。戦時中のフルトヴェングラーの録音は異様な緊張感に包まれているのが特徴です。

 第1楽章、最初から、物凄く緊張度の高い、大迫力の演奏です。音質は最高です。さすがにメロディアの最新リマスター盤です。みなさんにも是非お勧めしたいところですが、なかなか入手が難しいのが問題です。この演奏はもう別次元としか言いようのない音楽を表現しています。完全燃焼の音楽にエクスタシーを感じてしまいます。第1楽章から、ここまでやられるとたまりません。これはまるで生命をかけたようなただ1度だけの芸術に思えます。生半可な気持ちでは、この演奏に相対することはできそうにありません。
 第2楽章、この楽章も大変凝集力のある演奏ですが、凄過ぎた第1楽章の演奏の後なので、ちょっと一息つける感じで助かります。聴く側のこちらの体力が持ちませんからね。
 第3楽章、この超スローテンポは何でしょう。まるでこれでは、マーラーのアダージョを聴いているようです。しかし、そこから紡ぎだされる音楽の美しさと言ったら、空前絶後のものです。悲しさ、侘しさ、まるで人生への決別を告げる歌です。やはり、マーラーの第9番と相通じるものがあります。マーラーのあのアダージョの前にベートーヴェンがこういう曲を書いていたとは、何故今まで気が付かなかったのでしょう。この曲はこういう思いっきりスローなテンポで演奏すると、こんな風に聴こえるんですね。必ずしもベートーヴェンの作曲意図とは外れるかもしれない後期ロマン派的な演奏かなとも思いますが、実際に聴いている最中は頭が真っ白になって、美し過ぎる音楽にもうたまりません。
 後半は、希望、人生の美しさを感じさせる生の喜びを歌いあげます。やはり、ベートーヴェンは凄いですね。今更ながら、その天才芸術家だったことに畏敬の念を禁じ得ません。そして、それを如実に教えてくれたのはフルトヴェングラーです。この第9番はこの楽章で終わっても、不滅の金字塔のような作品だったでしょう。しかし、第9番はまだ続いていき、さらなる高みに達していきます。
 第4楽章、凄い気魄! 圧倒的です。冒頭の管弦楽パートが終わり、声楽が加わって、音楽はますます輝きを放っていきます。独唱者たちも素晴らしく、それ以上にコーラスが大迫力です。管弦楽だけでのフガートから、いよいよ佳境にはいっていきます。凄い勢いで管弦楽が一気に突進。そして、物凄い大合唱で歓喜の歌が歌われます。鳥肌の立つような迫力です。テンポを落として、美しい合唱。女声合唱は天上からの天使の歌声のように降り注いできます。女声合唱に導かれた2重フーガで、また、音楽は勢いを取り戻します。そして、4重唱。もう、終局は近くなってきました。音楽は凄い高みに達していきます。ただただ、圧倒されるだけです。4重唱が美しいソプラノの声を聴きながら終わると、アッチェレランドしたオーケストラが物凄い勢いで突進し、合唱もその後に続きます。いったん、テンポを落とすのももどかしく、合唱が頂点を極めると、その後はオーケストラはもうメチャクチャ。単なる音響の塊になって、フィナーレになだれ込みます。このあたり、もう、音楽になっていませんが、もう、音楽を超えた何かです。

 究極の音楽を聴きました。ティーレマンのベートーヴェン・チクルスの予習に名を借りてのベートーヴェンの全交響曲を聴く企ても、この演奏に辿り着くためのものだったと自分の胸の内で悟りました。予習はもうここで切り上げても後悔の念は残りそうにありません。しかし、それも読者のみなさんに大変失礼ですよね。ここからは番外編のつもりで聴いていきましょう。もう、残りは少しです。


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ティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスへの助走:交響曲第9番③フルトヴェングラー2回目

今回もティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスの第4日(11月17日(日):交響曲第8番、第9番)のプログラムについて、聴いていきます。

なお、予習に向けての経緯はここ
交響曲第1番についてはここ
交響曲第2番についてはここ
交響曲第3番《英雄》についてはここ
交響曲第4番についてはここ
交響曲第5番《運命》については1回目はここ、2回目はここ、3回目はここ
交響曲第6番《田園》については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ
交響曲第7番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここ、5回目をここ、6回目をここ
交響曲第8番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ
交響曲第9番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここに書きました。

(全予習が完了したので、全予習へのリンクを上記に示します。参考にしてくださいね。)

今回も交響曲第9番ニ短調 Op.125について聴いていきます。
今回はフルトヴェングラーの2回目です。
前回もご紹介した通り、フルトヴェングラーの交響曲第9番の全録音、12~13種類のうち、7枚以上のCDを聴きます。さらにあと2枚(*のもの)を聴きたいと思っています。以下がそのリストです。前回は1.だけを聴きました。

 1.1942年3月22日、ベルリン・フィル、ライヴ録音、ベルリン(メロディア)
 *1 1951年1月7日、ウィーン・フィル、ライヴ録音、ウィーン(ORFEO盤)
 2.1951年7月29日、バイロイト祝祭管弦楽団、ライヴ録音:編集盤?、バイロイト音楽祭(EMI新リマスター盤)
 3.1951年7月29日、バイロイト祝祭管弦楽団、ライヴ録音、バイロイト音楽祭(ORFEO盤)
 4.1951年8月31日、ウィーン・フィル、ライブ録音、ザルツブルグ音楽祭(ORFEO盤)
 5.1952年2月3日、ウィーン・フィル、ライブ録音、ニコライ記念コンサート(TAHRA盤)
 6.1953年5月31(30?)日、ウィーン・フィル、ライブ録音、ニコライ記念コンサート(ALTUS盤)
 *2 1954年8月9日、バイロイト祝祭管弦楽団、ライヴ録音、バイロイト音楽祭(ORFEO盤)
 7.1954年8月22日、フィルハーモニア管弦楽団、ライブ録音、ルツェルン音楽祭(ORFEO盤)

今回は前回紹介した1.の録音以外、残りの6つの録音を聴いていきます。


では、録音年順に感想を書いていきます。今回は戦後の演奏です。最後の1954年のルツェルン音楽祭の演奏まで聴き進めます。

*1 1951年1月7日、ウィーン・フィル

 これは戦後、最初に録音されたフルトヴェングラーの第9番です。ウィーン・フィルとの最初の録音でもあります。この録音はこれまでコーダの最終部分のピッチが狂ったものしかCD化されていませんでしたが、専用のピッチ修正マシンが開発されて、この問題が解決したそうです。そのCDが最近出たORFEO盤です。これは今のところ、1944年-1954年のフルトヴェングラーのウィーンでのコンサートをまとめて18枚組のセットにしたORFEO盤しかありません。単売が望まれますね。
 
 第1楽章、壮大な開始。重々しい荘厳な音楽。次第にウィーン・フィルの美しい響きが輝き始めます。フルトヴェングラー指揮のウィーン・フィルの響きは格別です。終盤には、この響きが悲劇性を帯びてきます。
 第2楽章、ロマンチックに演奏されるスケルツォ。ウィーン・フィルの響きが際立って美しいです。
 第3楽章、静謐で安寧に満ちた最高級の音楽。賛辞を送っても送り切れません。素晴らしい音楽です。もう、涙して、演奏に耳を傾けるしかありません。人間が作り出した最高の音楽です。
 第4楽章、雄弁な音楽が荘重に語られます。歓喜の主題はそれはもう美しい演奏です。聴きなれた旋律が格別な美しさに輝きます。軽くアッチェレランドして、トゥッティで歌い上げられるのは見事としか、言いようがありません。エーデルマンのソロは実に壮大。4重唱でのゼーフリートの歌唱も輝くようです。美しく荘厳なコーラスが続いていきます。中でも、2重フーガの素晴らしいこと。終盤の4重唱も素晴らしいです。繊細を極めた表現にうっとりと聴き入ります。フィナーレの突進も凄まじいばかり。

1952年、1953年のウィーン・フィルの第9番とも比肩できる素晴らしい演奏です。

2.1951年7月29日、バイロイト祝祭管弦楽団、編集版?

 EMI全集からの1枚ですが、これは1951年に再開されたバイロイト音楽祭のライブ録音です。一般的には、フルトヴェングラー最高の第9番、ということは史上最高の第9番と評されることが多いものです。もちろん、saraiの愛聴盤です。以前はEMIの旧リマスター盤、あっ、その前はもちろんアナログ・ディスクで聴いていましたし、今まではEMIの最新リマスター盤で聴いていました。今回は新たに第2世代のLPレコードからの復刻盤というふれこみのDELTA盤で聴きます。
 
 第1楽章、壮大なスケールの演奏。やはり、噂通り、この復刻盤は素晴らしい音質です。LPレコードからの復刻と言ってもスクラッチノイズもありません。厚みのある響きで堂々とした音楽です。ただ、1942年盤を聴いた後では、あの凄味は感じません。ある意味、落ち着いて、巨大な音楽を楽しむことができます。
 第2楽章、重厚な響きで、ぐいぐいと何かを駆り立てていくような勢いの音楽。中間部では優しい響きも聴かれます。
 第3楽章、これは美しい演奏。とても優しくて温かみにあふれています。何かを回想するような音楽です。懐かしい思い出とか・・・。深く心に刻みつけられる音楽です。
 第4楽章、ドラマチックな音楽・表現です。管弦楽の演奏する「歓喜」の主題もアッチェレランドして迫力が凄いです。エーデルマンの堂々たるバス独唱も素晴らしいです。4重唱のシュヴァルツコップの美声にうっとり。コーラスも威力十分。管弦楽のみで演奏されるフガートの演奏の凄いこと。その後の大合唱も凄いです。劇的でかつ美しいです。天上の世界に飛翔してしまいそうです。最後の4重唱ではまたシュヴァルツコップが素晴らしく、パーフェクト! 最後に異常に長く伸びるソプラノの響きは驚嘆すべきものです。第9番ではシュヴァルツコップを超えるソプラノを聴いたことがありません。その後、最後の突進!! 圧倒的なコーダ。またしても、なだれこむようなフィナーレです。これはこの伝説的な名演の中でも、誰もが賞賛する感動のフィナーレですね。燃えるフルトヴェングラーの指揮は彼の頭の中で疾風のように突き進み、オーケストラのメンバーは誰も着いていけなかったと思える演奏です。

3.1951年7月29日、バイロイト祝祭管弦楽団、実況録音版?

 これは基本的には、2.の演奏と同じもの。しかし、編集なしの本番の実況録音版ということです。ということで、2.との違いの確認を中心に第4楽章だけを聴いてみます。

 第4楽章、音質はまあまあよくて、それ程、聴く上での遜色はありません。ただ、音の輝かしさが少し足りないかなという感じです。管弦楽の演奏する「歓喜」の主題は2.ほどはアッチェレランドしないので迫力感に欠けます。また、シュヴァルツコップの輝かしい美声も聴こえてこないので4重唱の美しさに欠けます。しかし、終盤の4重唱ではシュヴァルツコップの美声が聴こえ、素晴らしいです。コーダでは管弦楽がそれほどは崩壊しませんが、これでも迫力十分かなと思います。基本的には、もちろん、同じ演奏なので、素晴らしいし、無編集ということなので、資料的な価値も高いと思います。ただ、やっぱり、ずっと聴き通すと、音質が劣るのが分かります。それが一番の問題でしょうか。ORFEOがさらなる音質向上に成功すると、ずっと価値が高まるでしょう。

4.1951年8月31日、ウィーン・フィル

 1951年のザルツブルク音楽祭の閉幕コンサートの録音です。2.と3.のバイロイト音楽祭の1か月後の演奏で、こちらはウィーン・フィルとなれば、とても期待してしまいます。

 第1楽章、ウィーン・フィルらしい柔らかい響きで落ち着いた演奏です。やはり、フルトヴェングラーの指揮するウィーン・フィルのベートーヴェンは素晴らしいです。フルトヴェングラーのロマンチックな感性とウィーン・フィルのしなやかな美しい響きが合っているんでしょう。ウィーン・フィルの柔らかい美しい響きがフルトヴェングラーにインスパイアされて、白熱していくのが感動的です。
 第2楽章、キレよりもしなやかさを感じますが、迫力ある演奏でもあります。これはとても素晴らしい演奏です。フルトヴェングラーとウィーン・フィルならではでしょう。スケールが大きく、偉大な音楽になっています。
 第3楽章、これはあまり情緒に流されずにしっかりと音楽を鳴らしています。その分、雰囲気に乏しくも感じます。それでも美しく、流麗な音楽ではあります。
 第4楽章、これは体にズシンと響いてくるような大迫力で始まります。この日のウィーン・フィルはずい分、しっかりした響きです。管弦楽の演奏する「歓喜」の主題は軽くアッチェレランドします。グラインドル(バス)の独唱は堂々として素晴らしいです。4重唱では、ゼーフリート(ソプラノ)の美声も素晴らしいです。合唱の迫力も凄まじいものです。やがて、最終の合唱に突入します。やはり凄まじいです。管弦楽のコーダはやはり凄いとしか言えません。

5.1952年2月3日、ウィーン・フィル

 これは《ニコライの第9》として知られる名演です。フルトヴェングラーの第9番として、最高だと推す声も多いようです。
 
 第1楽章、実に雄渾で壮大で素晴らしいです。そして、ウィーン・フィルの美しい響きが加わるのですから、これ以上望めないような素晴らしい演奏になっています。ここでは、激情ではなく、ロマン性が全体をおおっており、悲愴さまでも感じられます。
 第2楽章、引き締まってはいますが、たっぷりとした音楽的要素がぎっしりと詰まった素晴らしい演奏です。ザルツブルグの表現をさらに一歩進めたもので、理想的とも思える音楽です。何という音楽的充実度でしょう。中間部も美しく、とても魅力的です。まるで熟した果実のようです。音楽的緊張感は最後まで続き、とても素晴らしいです。
 第3楽章、もう最初からグッときてしまいます。静かな感動です。美しいとかどうとかのレベルではありません。生身の人間としてのベートーヴェン、そして、フルトヴェングラーが到達した安らかな境地。この一端を味わわせてもらえる幸せだけでもう胸が一杯で何も言えません。思わず涙の滴が落ちてきます。ただじっと、この奇跡のような芸術に耳を傾けましょう。
 第4楽章、前楽章の感動から覚めやらぬ前に、雄弁な音楽が始まってしまいます。それにしても、いつにない、この雄弁さにはたじろいてしまいます。管弦楽の演奏する「歓喜」の主題の優美さはいかばかりでしょう。それがアッチェレランドして、感動的に上り詰めていきます。ペル(バス)の独唱もこの雰囲気を十分に引き継ぎます。コーラスも強力です。4重唱も見事です。管弦楽のみで演奏されるフガートの演奏も凄い演奏です。気魄が伝わってきます。そして、素晴らしい大合唱で頂点へ。なおも分厚い合唱が続いていきます。最後の4重唱も終わり、コーダに向けて、物凄い演奏となり、フィナーレ。深い感動!

6.1953年5月31(30?)日、ウィーン・フィル

 1953年1月のニコライ記念コンサートがフルトヴェングラーが途中で倒れて中止になり、その代替コンサートが4カ月後の5月30日、31日に行われた際の録音です。従来からある録音が大方、31日のものとされていますが、30日と記載されている資料もあり、どちらかややこしい状況にあります。そこへ、30日のものだというORF(オーストリア放送協会)のマスターテープが発見され、新たにCD化されました。これで両方、揃ったことになりますが、依然として、どちらが30日でどちらが31日なのかという疑念ははっきりしたわけではなさそうです。ここでは、従来からあった5月31日の録音を聴きます。ALTUS盤で聴きますが、このCDには5月30日の演奏と明記されています。困ったものです。いずれにせよ、この2日間がフルトヴェングラーとウィーン・フィルの最後の第9番の演奏になってしまったようです。

 第1楽章、まさに世界の始まり。幽玄の中から忽然と明るい光がぱっと差し込んできます。いつもより、さらに遅いテンポのゆったりした演奏です。荘重な音楽です。ウィーン・フィルはいつも通り、美しい響きですが、重厚さを増している印象があります。曲の性格上、そう聴こえるのかもしれませんけどね。
 第2楽章、何とも気魄にみちた演奏です。推進力のある演奏ですが、ロマン性も感じられます。中間部は束の間の休息。優しい音楽が流れます。再び、力強い音楽に復帰して、曲を閉じます。
 第3楽章、抑えた味わい深い音楽。この音楽を聴いて、何を思うのかは、その聴き手の人生そのものに寄るでしょう。その人のこれまでの歩みがそれを決めるのではないかと思います。カタルシスを感じさせる音楽です。すべて心を解き放ち、俗事から自由になりましょう。何故って、こんなに生きている世界も人生も美しいのだから・・・そう、優しく語りかけてくる音楽です。こういう音楽を私たちに残してくれたベートーヴェンとフルトヴェングラーに感謝するのみです。
 第4楽章、間を置かずに雄弁な音楽が開始。実に見事な演奏です。管弦楽の演奏する「歓喜」の主題は、素晴らしい弦の響きで奏で続けられます。ちょっとテンポを速めて、トゥッティで輝かしく歌い上げられます。実に格調高い演奏です。シェフラー(バリトン)の気持ちを込めた独唱は見事です。4重唱ではゼーフリートの美声がひときわ響きます。管弦楽のみで演奏されるフガートでのシャープで流麗な弦の響きは素晴らしいです。そして、壮麗な大合唱で歓喜の主題。感動! 続く、まるで教会音楽のような美しいコーラスに胸がしめつけられる思いです。最後の4重唱でもゼーフリートの天使のような声にうっとりします。その後、フィナーレに突入。コーダはいつもよりもさらに激しく、音楽を超えた表現です。ウィーン・フィルとの最後の第9番にふさわしい名演です。

*2 1954年8月9日、バイロイト祝祭管弦楽団

 2度目のバイロイト音楽祭からのものであり、最後のルツェルン音楽祭の演奏の2週間ほど前のものです。音質は悪いなりにORFEO盤は聴ける水準にまで改善されています。最晩年のフルトヴェングラーの演奏は貴重で聴き逃せません。それも第9番とくれば、なおさらです。なお、この演奏はかの吉田秀和が実際にその場で聴き、後年、絶賛したことでも知られています。(これは誰が聴いても絶賛するでしょうけどね。あっ、茶々を入れているわけではありませんよ。)

 第1楽章、いかにも力のみなぎった演奏でフルトヴェングラーの気力の充実ぶりがうかがえます。一拍一拍に気合が感じられます。多分、体調はもうよくなかった筈です。その体力の衰えた自らを奮い立たせるかのようにも感じられます。
 第2楽章、これもまた力のこもった突進力のある演奏。中間部は長閑な気分の演奏で、聴く側のこちらもしばしの休憩です。
 第3楽章、安らぎに満ちた、何とも言えない音楽。本当にフルトヴェングラーのみに許された、平安と瞑想の、哲学的とも思える超絶的な音楽。もう、音質がいいの、悪いのというのは関係ありません。ただただ、感動で胸が一杯になって何も言えません。何て素晴らしいのでしょう。たゆたう音の波にゆったりと身を任せて、音楽の神髄を聴き入るのみでした。
 第4楽章、強烈な、そして、鮮烈な響きで音楽が始まります。まず、一音一音が意味を持って迫ってきます。歓喜の主題は最高です! アッチェレランドも凄いです。これ以上の演奏は聴いたことがありません。ヴィントガッセンの独唱もこの演奏にふさわしい素晴らしさです。かなり、力がはいった、前のめりの歌唱になっていますが、これはこれで、いたしかたのないところでしょう。声楽陣もこの雰囲気に入り込み、凄まじい歌唱です。ウェーバーのヘルデン・テノールも大迫力です。高らかに歌われる歓喜の主題はもう歴史に残る素晴らしさ。オーケストラも声楽も完全に忘我の境地でフルトヴェングラーの世界に入り込んでいることが分かります。(かくいうsaraiもその世界に入り込んでいます。) 空前絶後の演奏です。そして、最後は最高のコーダ。もう言うことなしです。

 音質は声楽とオーケストラの音量バランスもおかしいし、音質最低ですが、ORFEOができるだけの改善はしたようです。演奏はこれ以上ない最高のもの。もし、素晴らしい音楽を聴きたければ、少々の音の悪さは我慢しないといけません。そこには、考えられない感動が待っています。

7.1954年8月22日、フィルハーモニア管弦楽団

 死に先立つこと、3か月前のルツェルン音楽祭からの録音で、最後の第9番でもあります。これもフルトヴェングラーの最高の第9番という声も多い有名な演奏です。

 第1楽章、明快な響きでの素晴らしい滑り出し。何と明澄な音楽でしょう。3か月後に死を迎えるフルトヴェングラーは大変高い境地に達しており、すべてを見通したかのような音楽を作り出します。フィルハーモニア管弦楽団も実に素晴らしい響き。こんなに素晴らしいオーケストラだったのでしょうか。常に増して、悲劇性が強く感じられる演奏に大きな感銘を受けます。音楽はどんどん純化していきます。胸に迫るものがあります。劇的に曲は閉じられます。
 第2楽章、実に冴え渡った音楽。これも明快な響きに満ちています。最高に素晴らしい音楽です。音楽の要素はシンプルなものに絞り込まれて、余計なものは一切ありません。純化された要素だけが残された音楽です。中間部になっても、演奏は本質的に変わらず、実にシンプルそのものです。シンプルという言葉は“自然な”という言葉にも置き換えられるものです。
 第3楽章、最初の弦の長いフレーズの第1音を聴いただけで、もう、聴き手の心は彼岸に飛ばされてしまいます。まさに白鳥の歌です。心が純化されていく思いです。この音楽に出会うために自分がこれまで生きてきたことを実感させられます。この音楽に優しく包まれて、もう、自分は・・・・これ以上は書けません。絶句・・・。
 第4楽章、夢のような音楽から現実に引き戻されます。夢のままで終わりたかったという願望が募ります。やがて、「歓喜」の主題。闇の底から響いてきます。だんだん光が満ちてきます。高弦の響きで明るい光が差してきます。そして、「歓喜」の頂点へ。続いて、エーデルマンの登場。さすがの堂々たる歌唱。力強さと輝きに満ちています。次いで、豪華な独唱者たちによる4重唱。やはり、シュヴァルツコップの輝きは群を抜いています。合唱の素晴らしさも凄い! ヘフリガーの若々しい歌唱。ヘルデン・テノールではありませんが、素晴らしいです。続く管弦楽のみで演奏されるフガートでの切迫した響きが胸を揺さぶります。そして、大合唱の「歓喜」の主題の歌声。圧倒されるのみです。美しい合唱が続いていきます。もう陶酔の極です。遂に最後の4重唱。凄い迫力で、そして、美しいです。シュヴァルツコップの絶唱は何て素晴らしいんでしょう。そして、フィナーレです。恐ろしいほどの凄さ。これほどの高みはいまだかってありませんでした。そして、同時にこれがフルトヴェングラーの第9番の本当のフィナーレでもありました。

 巨匠の最後の第9番にふさわしい超名演。これだけの演奏を聴かせてくれれば、もうこれだけで十分です。合掌!!


これでフルトヴェングラーの7つの第9番の演奏を聴き終えました。どれも凄い演奏です。この中から一つだけ選ぶなら、ということはなしです。全部聴かないといけません。未聴の分も早々に聴きます。いずれも音楽的文化遺産です。

こんなフルトヴェングラーの演奏を聴いた後で聴く演奏ってありえませんが、それでも次回はこの交響曲第9番のウィーン・フィルの演奏を聴いて、予習の幕を閉じます。後はティーレマンの来日を待つだけです。


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ティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスへの助走:交響曲第9番④ウィーン・フィル

今回で、この予習も完了です。何とか、ティーレマンの来日公演前に終えることができました。
今回はティーレマン+ウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスの第4日(11月17日(日):交響曲第8番、第9番)のプログラムについて、聴きます。

なお、予習に向けての経緯はここ
交響曲第1番についてはここ
交響曲第2番についてはここ
交響曲第3番《英雄》についてはここ
交響曲第4番についてはここ
交響曲第5番《運命》については1回目はここ、2回目はここ、3回目はここ
交響曲第6番《田園》については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ
交響曲第7番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここ、5回目をここ、6回目をここ
交響曲第8番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ
交響曲第9番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここに書きました。

(全予習が完了したので、全予習へのリンクを上記に示します。参考にしてくださいね。)

今回も交響曲第9番ニ短調 Op.125について聴いていきます。
今回はウィーン・フィルの演奏の6枚を聴きます。

以下、録音年順に感想を書いていきます。


シュミット・イッセルシュテット 1965年録音

 全集盤からの1枚です。

 第1楽章、素晴らしい響きの演奏を堪能。量感のたっぷりした演奏に満足。気持ちよく聴けます。ここぞというところの気魄のこもった表現も素晴らしいです。特に終盤の緊迫感に満ちた演奏には強く引き込まれてしまいます。
 第2楽章、ここはウィーン・フィルの引き締まった美しいアンサンブルが聴きものです。
 第3楽章、とても美しい演奏にうっとりと聴き惚れてしまいます。非常に精神性も高い、素晴らしい演奏です。今更ながら、シュミット・イッセルシュテットは凄い指揮者だったんですね。このアダージョでここまでの演奏をするとは思ってもいませんでした。考えてみれば、この世代の指揮者は間近にフルトヴェングラーの演奏を聴く機会も多く、その薫陶・影響を受けてきたのかもしれません。もちろん、ウィーン・フィルの団員も12年ほど前にはフルトヴェングラーの指揮で演奏していたわけですから、しっかり、その音楽が頭に刻み付けられていたでしょうしね。これはフルトヴェングラーの遺産とも言える演奏なんでしょう。
 第4楽章、冒頭から素晴らしい響きです。「歓喜」の主題は美しい録音です。そして、美しい演奏で聴けるのは格別の喜びに感じます。タルヴェラ(バス)のたっぷりした美声の独唱は見事。4重唱は豪華な歌手陣ですが、少し、固い歌唱に思えます。特にサザーランドはもっと伸びやかに歌ってもらいたかったところです。ジェイムズ・キング(テノール)の独唱は張りのある声で素晴らしいです。大合唱の「歓喜」の主題は素晴らしい響きです。続く合唱も美しさの極致、いや、素晴らしい! 終盤の4重唱は素晴らしいです。サザーランドも柔らかく美声を発揮しています。フィナーレは圧倒的です。

ベーム 1970年録音

 全集盤からの1枚です。

 第1楽章、力強く、美しい開始。そのまま、輝かしく、重厚な演奏が続きます。十分な気魄が感じられます。一瞬の隙もない演奏です。緊張感を持続したまま、コーダ。
 第2楽章、力強く堂々としたスケルツォ。中間部も弛緩せずに緊張感のある演奏です。
 第3楽章、ウィーン・フィルの演奏はまことに美しいです。ロマンと抒情に満ち溢れています。少し、内面性に欠けるきらいもありますが、それを補って余りある美しい響き。感動するというよりもうっとりとして聴く感じです。
 第4楽章、低弦の朗々とした響きに誘われて、音楽が進行していきます。リッダーブッシュ(バス)の独唱は実に力強くて素晴らしいです。4重唱はさすがにギネス・ジョーンズの力強い歌声が素晴らしいです。ジェス・トーマスの力感あふれるテノール独唱もよいです。エネルギーに満ちた弦楽合奏も素晴らしいです。合唱はシュターツオーパー合唱団の響きが素晴らしいですが、何かテンポ感が自分に合わず、ゆったりし過ぎの感じです。終盤の4重唱はギネス・ジョーンズがますます素晴らしいです。爆発的なエネルギーの噴出するフィナーレも圧巻です。

バーンスタイン 1979年録音

 全集盤からの1枚です。

 第1楽章、気魄に満ち、輝かしく、タメの聴いた演奏です。一瞬一瞬の表情の変化が素晴らしいです。さすがにバーンスタイン渾身の演奏。よくよくスコアを読み込んだと思われる納得の演奏です。知的でかつ、情熱的な凄い演奏です。
 第2楽章、バーンスタインお得意のリズミックな演奏。これぞスケルツォという感じのノリノリの演奏です。中間部も実に明快な演奏。こういう演奏もあるのかと目を開かせられる思いです。
 第3楽章、自分の内面に何かを問い掛けるような、そして、何かを祈るような複雑な音楽です。そういう思いを振り払うように内面での葛藤が続きます。やがて、カタルシスに至ります。みな、自分に向かい合って、生きていかねばならない。そして、己の信じた道を進んでいくんだ・・・そんな風に優しく、語りかけてくれるような音楽です。これは彼のヒロイズムなのでしょう。彼だけの音楽観を持ったバーンスタイン。やはり、20世紀を代表する芸術家だったことをまた再認識させられました。これは聴き手を勇気づけ、励ましてくれる愛の音楽です。ヒューマンな音楽に静かに感動しましょう。
 第4楽章、ヒューマンな愛の音楽に続き、ダイナミックな愛のメッセージが始まります。これまでの第1楽章から第3楽章までを否定するのではなく、すべてをアウフヘーベンして、もっと高みをめざそうというメッセージです。バーンスタインが描き出すのは、歓喜の歌ではなく、愛と共感の歌です。あふれる思いが高らかに管弦楽で高らかに歌い上げられます。続いて、クルト・モルが哲学的とも思える声で厳粛に独唱。4重唱では、ギネス・ジョーンズが輝きを放ちます。シュターツオーパー合唱団のコーラスも感動的です。素晴らしい!! ヘルデン・テノールのルネ・コロの独唱も素晴らしいです。管弦楽のみで演奏されるフガートでは、弦楽合奏の清々しく力強い響きに魅了されます。見事な演奏です。最高です! 大合唱の歌う「歓喜」の主題は何て素晴らしいんでしょう。合唱の響きに魅惑されるのみです。続く合唱の美しさ・力強さに感動! 繊細を極める音楽表現に感銘を受けるのみです。もう、この後は頭が真っ白になって聴いていました。大変な音楽です。フルトヴェングラー以降にこんな音楽が可能だったとは・・・今まで、何を聴いていたのでしょう。感動で胸が張り裂けんばかりの思いになりました。

アバド 1986年録音

 全集盤からの1枚です。

 第1楽章、ともかく美しい音楽です。おおらかでスケールも大きいです。明快でもあります。そして、頂点では激情も披露してくれます。脈々として、ロマンチシズムの香りも漂ってきます。素晴らしい音楽です。
 第2楽章、溌剌として、爽やかな演奏です。まるでロマン派の音楽を先取りしたような感じに思えます。中間部はきびきびとして、速いテンポで演奏されます。決して、爽やかさを損ねることはありません。
 第3楽章、憧憬を感じさせるロマンに満ち溢れた美しい音楽です。内面的な美しさが表現しているのは、心の平安でしょうか。表現しようとしているものが掴めそうで掴めないもどかしさを感じてしまいます。あくまでも音楽はどこまでも美しいのだけれども・・・。
 第4楽章、堂々として劇的な表現。管弦楽の演奏する「歓喜」の主題は優しさに満ちた表現です。ヘルマン・プライはよく響く声で独特の表現。ちょっとくせのある表現になっています。管弦楽のみで演奏されるフガートでは、ウィーン・フィルの弦楽合奏は美しく、切迫感のある表現は素晴らしいです。大合唱の「歓喜」の主題に続く、美しい合唱は祈りの声にも似て、とても厳粛で教会に響く合唱を思わせます。連続する合唱はともかく素晴らしく、聴き応え十分です。

ラトル 2002年録音

 全集盤からの1枚です。

 第1楽章、自然で活き活きした演奏です。盛り上がるところは強烈ですが、やはり、自然な演奏です。ともかく、無理のない演奏です。
 第2楽章、自然な流れの躍動感のある演奏です。中間部はノリのよい演奏。
 第3楽章、温もりのある響きで爽やかな演奏。精神性は感じられますが、深い滋味までには至りません。アバドもそうですが、彼らがもっと年齢を重ねた演奏を聴いてみたいものです。
 第4楽章、冒頭はそう大げさに構えないであっさりとした演奏。管弦楽の演奏する「歓喜」の主題もさらっとした演奏です。ハンプソンはいつになく、力のこもった歌唱。「歓喜」の主題では、ようやく彼らしい柔らかい歌唱になります。4重唱では、バーバラ・ボニーの透き通った美声が素晴らしいです。合唱はいつものシュターツオーパー合唱団ではなく、ラトルが連れてきたバーミンガムの合唱団です。明るく明瞭な響きが印象的です。いつもながら、ウィーン・フィルの弦楽合奏の響きは素晴らしいです。「歓喜」の主題の大合唱はとても勢いのあるものです。若々しい素晴らしい合唱に満足です。ともかく、元気あふれる合唱です。フィナーレは合唱の勢いと迫力が素晴らしいです。

ティーレマン 2010年録音

 もちろん、これを聴くのが目的! これを最後に聴きます。

 第1楽章、柔らかい響きで壮麗に音楽を開始。荘重な響きですが、前進していくエネルギーが凄いと感じます。ごつごつした骨のある音楽です。
 第2楽章、ずっしりとした演奏です。中間部はゆったりした伸びやかな演奏。こんな重々しいスケルツォはなかなか聴けるものではありません。とても重心の低い演奏です。
 第3楽章、これはとても心に沁みてくるような音楽です。実に繊細さを極めたような演奏で感性を揺さぶられます。胸の奥底にまで忍び寄ってくる優しさがあります。色々な思いがかき立てられます。心の中から静かな感動が湧き起ってきます。後は静かに耳を傾けていきましょう。
 第4楽章、冒頭は実に深々とした響き。「歓喜」の主題は県弦楽の冴え冴えとした流麗な演奏から、管弦楽合奏の頂点に軽くアッチェレランドして、上り詰めます。そして、輝かしいバス独唱。4重唱はアンネッテ・ダッシュの力強いソプラノが素晴らしいです。合唱の頂点は素晴らしい高みです。ベチャーラはリリックとも思える美しいテノール独唱。そして、管弦楽のみで演奏されるフガートでは、弦楽合奏は一段と歩みを速めて、素晴らしい前進力。ここでぐっと溜めて、大合唱で「歓喜」の主題。実に輝かしいです。そして、教会の大伽藍に鳴り響くような美しいコーラス。まるで、聖シュテファン大聖堂で聴いているかのようです。哀切極まりない、繊細なコーラスの響き。2重フーガの合唱の美しさと迫力も凄いです。終盤の4重唱、やはり、アンネッテ・ダッシュが素晴らしいです。フィナーレの迫力は半端でなく、凄いです。思わず、雄叫びを上げたくなるほどです。


前回までに聴いたフルトヴェングラーの演奏する第9番が圧倒的でしたが、今回、ウィーン・フィルを指揮したバーンスタインの演奏もそれに劣らず、新しい表現の圧倒的な超名演でした。それにしても、この偉大な第9番の歴代の名演を続けざまに聴くのはとても許されない行為だったような気もします。もっと、大事に聴くべき曲ですね。

最後に肝心のティーレマンのベートーヴェン・チクルスの聴きどころです。

 1.何といっても、第3楽章以降が聴きものです。第3楽章でどれほど内面をえぐれるか。そして、輝かしい第4楽章。フィナーレでは文句なく感動の大波に呑み込まれるでしょう。
 2.ほかには、何も考えずに白紙の状態で最後の音楽に臨みたいものです。まるで決意表明のようになりましたが(笑い)、至極、本気です。


万全な予習を完了しました。こんなにベートーヴェンをまとめて聴いたのは初めてです。これで予習の幕を閉じます。ティーレマンとウィーン・フィルのベートーヴェン交響曲チクルスを楽しみに待ちましょう。


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ラインの旅:スイス編~ボーデン湖畔の街コンスタンツ

2013年4月15日月曜日@スイス・チューリッヒ~ボーデン湖~ラインの滝/1回目

旅の12日目です。

オランダから続けてきたラインの旅も、前日はスイスのベルンに寄り道でライン川とはちょっと離れてしまいましたが、この日はまた、チューリッヒからライン川の旅に戻ります。ライン川を遡っての旅も、遂にその源流といわれているボーデン湖Bodenseeを訪れます。実際にはボーデン湖にライン川の上流が流れ込んでおり、その源はアルプスまで達するようですが、どうもそれは感性に合わないので、sarai的にはライン川の源流はボーデン湖ということで旅のしめくくりをしたいと勝手に思っています。

昨日に続いて快晴の朝です。saraiがこの旅で一番晴れて欲しいと願っていたのがこの日です。期待通り晴れ上がりました。配偶者のお蔭ですっ! 配偶者は無類の晴れ女ですからね。
このチューリッヒ空港近くのホテルには朝食は付いていないので、さっさと着替えて出かけます。朝食が付いていないと、時間の節約にはなりますね。
出かける間際に、今日のコースは、ややこしいことにスイスとドイツにまたがるエリアを移動することに気付きました。スイスフランとユーロの両方を持っていかないとダメなのです。気が付いて良かったです。

このホテルは空港までの送迎バスがあります。それを利用して、空港駅から今日の行動は始まります。
まずは空港内のパン屋さんで朝食のパンとジュースを買います。


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いざ、ボーデン湖畔の街コンスタンツKonstanzに向けて、空港の地下駅から電車に乗り込みます。事前にネットで購入済みのチケットは、出発地がチューリッヒ空港駅Zürich Flughafenで到着地が同じチューリッヒ空港駅。つまり、ぐるっと巡回するチケットです。途中駅はヴィンタートゥールWinterthur、ヴァインフェルデンWeinfelden、コンスタンツKonstanz、クロイツリンゲンKreuzlingen、シャフハウゼンSchaffhausen、ヴィンタートゥールです。このチケットは通常料金チケットですが、全行程を一括して購入することで、区間ごとに購入するよりも大幅に安く購入することができました。1人53スイスフランです。


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鉄道移動の全行程を鉄道路線図で確認しておきましょう。


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空港駅で、予定通りのインターシティICに乗車します。


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すぐに電車は地上に出て、快晴の中を美しい平原を走ります。


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早速、朝食をいただきます。美味しそうでしょう。


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線路近くにアパートが見えます。日本のマンションと似たような建物ですね。


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広々とした畑の中を電車は快調に走っていきます。


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乗換駅のヴァインフェルデンWeinfeldenに到着。


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ここでコンスタンツKonstanz行の電車に乗り換えます。


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車内は空いていて、ゆったりと座れます。


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車窓に美しい教会が見えます。


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コンスタンツに近づくと、遥かに美しいアルプスが見えます。


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緑の美しいスイスらしい風景の中に、チーズ工場なども見られます。


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ようやく車窓に湖の姿が見えてきました。きっと、ボーデン湖でしょう。


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予定通りコンスタンツに到着です。ところで、日本で準備したはずのコンスタンツの情報をプリントした紙が、昨夜どこを探しても見つからず、コンスタンツ到着の最初の用事はツーリスト・インフォメーション探しとなりました。でも、これは駅舎のすぐ隣にあり一安心。


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地図は0.5ユーロです。電車に乗ったのはスイスで、電車を降りたコンスタンツはドイツなんです。ツーリスト・インフォメーションの女性に、スイスフラン?ユーロ?ややこしいたらありゃしないねっていうと、そうなのよねと笑っていました。


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これがその地図。地図を見ると、駅のすぐ前がボーデン湖のクルーズ船乗り場(地図右下の方の赤丸の5番)です。


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到着したコンスタンツは、ライン川の源流と言われているボーデン湖畔の街なのです。いきなり目の前にボーデン湖が広がります。湖の向こうにはアルプスが見え、美しいったらありゃしない。その遥か向こう辺りはもうオーストリアです。ボーデン湖はドイツ、オーストリア、スイスの3つの国に接しているのです。あまりに大きな湖でライン川の源流というイメージは全くありません。
ライン川は、ボーデン湖の遥か向こうに見えるアルプスの山々の水が集まり作られた小さな湖のトーマ湖一体を源流域と呼び、トーマ湖から流れ出た一筋の川が、もう一つの流れと合流し、リヒテンシュタインやオーストリアとスイスとの国境を成しボーデン湖に流れ込むまでを上ライン、このボーデン湖から下流をライン川(下ライン)と呼ぶそうです。というわけで、源流域や上ラインを辿ることは旅行者としては不可能なので、今日このボーデン湖を訪れることで、saraiのライン川を遡る旅は完結すると考えています。あまりにも大きな美しいボーデン湖に源流というイメージはありませんが、あまり源流という言葉にはこだわらずに湖を楽しみましょう。
ボーデン湖クルーズを楽しむために船乗り場に急ぎます。


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これから、ラインの旅を締めくくるボーデン湖クルーズです。


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ラインの旅:スイス編~コンスタンツ港からボーデン湖のクルーズに出航

2013年4月15日月曜日@スイス・チューリッヒ~ボーデン湖~ラインの滝/2回目

コンスタンツのボーデン湖畔のクルーズ船乗り場に向かいます。港の前の建物にクルーズ船のチケット売り場があります。


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これが売り場にあったボーデン湖クルーズのパンフレットです。


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これがパンフレットに掲載されているボーデン湖のクルーズ船の航路図です。ボーデン湖の端から端まで航路はカバーしています。ドイツ、オーストリア、スイス3国に跨る航路です。今回はその中のほんの一部、コンスタンツからマイナウ島までのクルーズを楽しみます。


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航路図を拡大して、これから乗船するルートを確認しておきましょう。コンスタンツからメールスブルクMeersburgを経由してマイナウ島Insel Mainauまでの短いクルーズです。


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ということで、コンスタンツとマイナウ島の往復チケット(コンビチケット:マイナウ島の入島料も含む)を購入します。1人29.9ユーロです。


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10時出航のクルーズ船は既に係留中です。そちらに急ぎましょう。


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もう、乗船中です。我々も乗り込みます。


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乗船し、最上階の甲板に陣取ります。まだ観光客はそれほど多くはありません。港の出入り口を航行している船が見えます。


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港の岸辺のほうを眺めます。BSB(ボーデン湖クルーズ船)のチケットオフィスの向こうにコンスタンツ駅の建物が見えます。


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クルーズ船乗り場の隣はヨットハーバーになっていて、多くのヨットが係留中です。


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港の先には、ボーデン湖の広大な湖面が朝日に輝いています。


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港には、高速船も出発を待っています。これはフリードリヒスハーフェン行でしょうか。フリードリヒスハーフェンFriedrichshafenに行けば、飛行船に乗ることができるので魅力的ですが、今回はパスです。


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10時になり、クルーズ船は出航します。正面に見えている建物は《和議の館》Konzilgebaeudeです。統一ローマ教皇を選び、ヤン・フスの異端審議をしたことで有名なコンスタンツ宗教会議の舞台となった建物です。


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港の出口に近づくと、異様な像が見えてきます。


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その像に近づき、横を通り過ぎます。


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この像はインペリアの像(1993年に建造)です。この像はゆっくり回転しているんです(3分間で1回転)。この像のモデルになったインぺリアはコンスタンツ宗教会議の際に多くの男たちに寵愛された高級娼婦だそうです。そういう女性を観光に役立てるというのは凄い感性ですね。両手に持っているのは教皇と皇帝。それも裸の姿です。道徳的な退廃を揶揄っているんですね。


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港の外に出ました。《和議の館》の右には、市民公園が見えます。大勢の人たちで賑わっています。コンスタンツはとてつもなく立派な保養地です。


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のんびりとしたクルーズが始まります。コーヒーを飲みながら、クルーズを楽しみましょう。


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かなりコンスタンツの沖合に出てきました。一緒に乗っている人たちも楽しそうにしています。この数日で一気に春になったので、軽装でも寒くありません。


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それにしても、雲一つない青空とアルプスの山並みと穏やかな湖面にうっとりします。


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コンスタンツの街も遠くなり、豆粒のようになってきました。


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さすがに船のオープンな甲板は航行中は風が吹き抜けるので、次々に乗客が下のデッキの船室に退却しますが、sarai&配偶者は平気で(やせ我慢)耐え抜きます。湖の向こうの雄大な雪を抱いたアルプスの絶景にシャッターを切り続けます。


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ボーデン湖の絶景です。


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目を凝らすと、真っ白なアルプスの切り立った山々が見えます。


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ボーデン湖の素晴らしい景色に酔いながら、クルーズを楽しみます。


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ラインの旅:スイス編~ボーデン湖クルーズ、メールスブルグ経由でマイナウ島に到着

2013年4月15日月曜日@スイス・チューリッヒ~ボーデン湖~ラインの滝/3回目

コンスタンツを出航してボーデン湖の眺めを楽しんでいるうちに、対岸の街に近づいてきました。


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ついつい、視線は遥か彼方のアルプスの方向に引き付けれてしまいます。


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対岸の街の建物がはっきりと見えてきました。


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再び、アルプスの姿を拝見。やはり、美しいですね。


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もうすぐ、対岸のメールスブルグMeersburgに着きます。コンスタンツから30分ほどでした。色とりどりの建物が綺麗です。


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接岸すると、乗船する人の長蛇の列。ここから、花の島と呼ばれるマイナウ島に向かうのです。急に賑やかになりました。


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メールスブルグの街は綺麗な街です。時間があれば、ちょっと歩いてみたい街です。


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港には、こんなに美しいオブジェがあります。その背後には、遠くアルプスも見えています。


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湖面上を白鳥が気持ちよさそうに泳いでいます。ボーデン湖と白鳥、なかなか似合っています。


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メールスブルグを出航し、すぐ近くに見えているマイナウ島に向かいます。


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アルプスを横手に見ながら、クルーズ船は進んでいきます。


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もう、メールスブルグは遠く離れていきます。


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マイナウ島の美しいバロック宮殿が見えてきました。


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クルーズ船は宮殿の先の方に回り込んでいきます。


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接岸が近くなって、船のスタッフが甲板に集まってきました。


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マイナウ島の船着き場に接近していきます。


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コンスタンツから1時間ほどでマイナウ島Insel Mainauに到着です。長い接岸用ブリッジを渡って、島に上陸します。


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コンスタンツからここまでの航路をもう一度、確認しておきましょう。


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クルーズ船から、たくさんの観光客がぞろぞろと下りてきます。マイナウ島は観光のメッカのようです。


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接岸用ブリッジからはボーデン湖の美しい湖面とその先に対岸のメールスブルクの街も見えています。


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マイナウ島から見るボーデン湖の湖水は綺麗に透き通って、湖の底まで見通せます。太陽の光が湖面にきらきらと煌めいていて、美しい風景を作っています。


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これから島に上陸して、花の島を散策します。


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ラインの旅:スイス編~ボーデン湖の花の島、マイナウ島を散策

2013年4月15日月曜日@スイス・チューリッヒ~ボーデン湖~ラインの滝/4回目

クルーズ船から美しい湖水の上の接岸用ブリッジを通って、大勢の人がマイナウ島に渡ってきます。


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マイナウ島の入り口でマイナウ島案内パンフレットをもらって、その地図を見ながら島内の散策に出発します。


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島の入り口付近には、綺麗なスノードロップやクロッカスが咲き乱れています。マイナウ島は花の島です。


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次の花壇には、チューリップやスイセンが咲いています。


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島はお城を中心に公園のように整備されています。春の花々が綺麗に咲き乱れる中を気持のよい散策です。


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島の岸辺に出ると、ボーデン湖の向こうにアルプスが輝いています。


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岸辺に向かってパラソル付きのデッキチェアが置いてあり、そこで寛いでいる人たち。ゆったりした過ごし方に感心します。


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花壇が奇妙な形になっています。よくよく観察すると、上の方がボーデン湖で、下の方へライン川が流れだしている模様になっています。思わず、笑みがこぼれてしまいました。


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色とりどりのチューリップが綺麗に咲いています。


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丘の斜面もすべて花畑になっています。膨大な花の量に圧倒されます。


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花々越しに見るボーデン湖の眺めは美しい限りです。


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丘の斜面の花畑に沿って、散策を楽しみます。散策している人達もみな、穏やかな表情です。


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湖畔の緑が陽光に映えています。


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ベビーカーを押す人、グループでぶらぶらする人、様々な人たちが花の島の散策を楽しんでいます。


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丘の斜面に沿って石段が続いています。その周りは花盛り。石段を上っていきます。


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石段の真ん中には、丘の上から清冽な水が流れ落ちてきます。花と水の流れはよく似合います。


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花の石段はずっと湖畔まで続いています。綺麗ですね。


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石段をどんどん上り、丘の上まできました。そこからの花の石段の全景です。


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丘の上は大きな広場になっています。広場の先には温室やお城が見えます。


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この丘の上の広場を散策します。


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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
たまには、旅ブログも書きます。

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金婚式、おめでとうございます!!!
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京都には年に2回もお越しでも、青春を過ごし

10/07 08:57 堀内えり

 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

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